JP5987149B2 - 有機el素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機EL素子の製造方法に関する。
有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は、有機材料への電荷の注入による発光を伴う物理現象を利用した発光素子であり、フレキシブル化や塗布プロセスを利用した製造が可能な発光素子として注目され、盛んに研究が進められている。
有機EL素子は、一般に、透明電極と金属電極とにより発光層を挟み込んだ構造を有しており、自発光および面発光、ならびに薄型化が可能であり、発光色の制御性も優れていることから、特に、ディスプレイや照明などの発光装置への応用を目指した研究開発が進められている。
これらの有機EL素子に用いる材料としては、様々な材料が提案されており、印刷可能で、かつPL(フォトルミネッセンス)量子収率が100%に近いポリマーやデンドリマー、低分子材料の合成もなされているものの、製造コストが高く、ポリマーなどを溶解させる溶媒の種類や濃度に対する制約も大きいという問題がある。
また、例えば、特許文献1では、高純度な有機材料として、非常に精密に分子設計されたπ電子系化合物を有機材料として用いることが提案されている。
しかしながら、π電子系化合物は、その複雑な分子構造ゆえ、合成過程が複雑となり、また、所望の高純度を実現するための昇華精製プロセスが必要となるため、高コストとなってしまい、このことが有機EL素子の低コスト化を妨げていた。さらに、高純度が必要とされるゆえに微量な不純物によるデバイス不良が懸念されるため、信頼性が低く、大量生産には向いていなかった。
特開2009−96809号公報
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、低コスト化を実現した有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。
その結果、本発明者らは、例えば製鉄プロセスにおける副産物である石炭ピッチといった、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を有機EL素子の発光層の材料として用いることにより、有機材料の大幅な低コスト化を達成し、これにより有機EL素子の大幅なコスト削減を実現することができるという新規知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は、以下の通りである
ここで、本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上に、少なくとも陽極、発光層、および陰極を有する有機EL素子の製造方法であって、
基板上に陽極及び陰極のうちいずれか一方を形成する工程と、
前記陽極又は陰極上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に陽極及び陰極のうちいずれか他方を形成する工程と、を含み、
前記発光層は、有機溶媒に溶解させた石炭ピッチが成膜されてなることを特徴とする。
これにより、発光層に廉価な材料を用いて、低コストで有機EL素子を製造することができる。
特に、石炭ピッチは、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物であり、製鉄プロセスにおける副産物として、特に大量かつ廉価に入手することができ、有機EL素子を低コストで製造するのに有利だからである。
さらに、本発明の有機EL素子の製造方法では、前記発光層を形成する工程は、
前記石炭ピッチを有機溶媒に溶解させて、該石炭ピッチが含有する複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製し、該調製した溶液を用いて発光層を成膜することが好ましい。
有機溶媒によって複数種類のうち一部の種類の多環式芳香族分子を抽出して、発光特性を向上させることができるからである。
なお、上記混合物を溶解させることのできる有機溶媒は、任意の種類の有機溶媒を用いることができる。
ここで、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ピリジン、キノリン、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、ベンゼンのいずれかを含む有機溶媒であることが好ましい。
例として、これらの様々な種類の有機溶媒を用いて上記抽出を行うことができるからである。また、有機溶媒の種類によって、溶解する多環式芳香族分子の種類が異なるため、この抽出工程において、有機EL素子の発光特性を変化させることができるからである。
特に、前記有機溶媒は、テトラヒドロフランを含む有機溶媒であることが好ましい。
特に優れた発光特性を有する有機EL素子を製造することができるからである。
さらに、前記発光層を形成する工程は、
前記石炭ピッチを有機溶媒に溶解させて、該石炭ピッチが含有する複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製した後、該調製した溶液から前記複数種類のうち一部の種類を分離し、該分離後の溶液を用いて発光層を成膜することが好ましい。
これにより、一部の種類の多環式芳香族分子を取り除いて、発光特性を向上させることができるからである。また分取により、発光波長を変化させることができるからである。
ここで、前記分離は、クロマトグラフィを用いることが好ましい。特に、シリカゲルクロマトグラフィまたはゲル浸透クロマトグラフィを用いることがより好ましい。
これらのクロマトグラフィを用いて分離を行うことにより、一部の種類の多環式芳香族分子を取り除いて、輝度の向上や発光波長の変化が可能になるからである。
また、本発明の有機EL素子の製造方法においては、前記発光層を形成する工程を経た後、アニール処理を行う工程をさらに含むことが好ましい。
これにより、発光特性を向上させることができるからである。
本発明によれば、低コスト化を実現した有機EL素子の製造方法を提供することができる。
機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。 石炭ピッチを抽出する溶媒ごとの電流密度−電圧特性を示す図である。 石炭ピッチを抽出する溶媒ごとの輝度−電圧特性を示す図である。 発光層を成膜後の熱処理温度ごとの電流密度−電圧特性を示す図である。 発光層を成膜後の熱処理温度ごとの輝度−電圧特性を示す図である。 発光層を成膜後の熱処理時間ごとの電流密度−電圧特性を示す図である。 発光層を成膜後の熱処理時間ごとの輝度−電圧特性を示す図である。 ゲル浸透クロマトグラフィの保持時間ごとの電流密度−電圧特性を示す図である。 ゲル浸透クロマトグラフィの保持時間ごとの輝度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィのRf値ごとの電流密度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィのRf値ごとの輝度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィで2回分取を行った場合の電流密度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィで2回分取を行った場合の輝度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィで2回分取を行った場合の電流密度−電圧特性を示す図である。 シリカゲル薄層クロマトグラフィで2回分取を行った場合の輝度−電圧特性を示す図である。
<有機EL素子>
以下、有機EL素子について、図面を参照して詳細に例示説明する。
図1は、有機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板2上に、陽極3と、陽極バッファ層4と、発光層5と、陰極6とが順に積層されている。
図示例では、ガラス基板2上にITO(酸化インジウム錫)からなる陽極3が形成され、該陽極3上にPEDOT/PSS(ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸))からなる陽極バッファ層4が形成されている。さらに、該陽極バッファ層4上には、石炭ピッチからなる発光層5が形成され、該発光層5上には、LiF/Alからなる陰極6が形成されている。
そして、発光層5の材料として、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いることが肝要である。
その中でも特に、発光層5の材料として、本実施形態のように、石炭ピッチを用いることが好ましい。
なお、発光層5の厚さは、特には限定しないが、例えば20〜300nmとすることができる。
ここで、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物とは、具体的には、例えばコールタール、石炭ピッチ、石油ピッチ等が挙げられる。
そして、上記縮合多環式芳香族分子は、特に限定されるのもではないが、芳香環を4つ以上含む多環式芳香族分子であることが好ましい。概して、廉価で入手可能な混合物は、芳香環を4つ以上含む多環式芳香族分子を含むことが多いからである。
また、上記複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物は、例えば炭素系の原料の精製における副産物として常法により得ることができるものである。
例えば、例えばコールタールは、コークス製造時に石炭より分離して製造することができる。
また、石炭ピッチは、製鉄プロセスの残留物である石炭系コールタールから蒸留により軽質分を除去することにより製造することができる。
さらに、例えば石油ピッチは、石油を蒸留したときの残渣として製造することができる。
従って、これらコールタール、石炭ピッチ、石油ピッチは、それぞれ石炭および石油の精製の際の副産物として得ることができるものである。
なお、石炭ピッチは、特には限定しないが、例えば、コールタール蒸留後に熱処理を経て生成されたものを用いることができる。また、石炭ピッチは、特には限定しないが、例えば軟化点が40〜120℃のものを用いることができる。
また、石油ピッチは、特には限定しないが、例えば、石油蒸留残渣をさらに熱処理することで生成されたものを用いることができる。また、石油ピッチは、特には限定しないが、例えば軟化点が40〜120℃のものを用いることができる。
そして、有機EL素子によれば、発光層に用いる材料に複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いているため、低コストの有機EL素子を提供することができる。複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物は、製鉄や製油プロセス等において大量に得ることのできる石炭ピッチや石油ピッチが例として挙げられるように、廉価で入手可能であるため、これらを材料として発光層を形成することにより、低コストの有機EL素子を実現することができる。
また、発光層に用いる材料に複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いているため、材料としての安定性が高く、少量の不純物の混入によるデバイス不良を回避して信頼性の高い有機EL素子を提供することができる。
上述のように、発光層に用いる材料としては、石炭ピッチが好ましい。石炭ピッチは、製鉄プロセスにおける副産物として、特に大量かつ廉価に入手することができるため、有機EL素子の低コスト化に特に有利だからである。
また、有機EL素子は、上述したように、発光層の材料として、有機溶媒に溶解させた、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いたものであることが好ましい。
有機溶媒によって複数種類のうち一部の種類の多環式芳香族分子を抽出した材料を用いることで、発光特性を向上させることができるからである。
なお、基板2、陽極3、陽極バッファ層4、および陰極6は様々な種類の材料で形成することができる。
基板2は、例えば、透明なガラス、プラスチック、シリコン等で構成することができる。
陽極3は、ITOの他に、例えば、IZO(酸化インジウム亜鉛)や亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物、酸化スズ(SnO)や、酸化亜鉛(ZnO)、導電性高分子などを用いることができる。
陽極バッファ層4は、PEDOT/PSSの他、例えば、ポリアリーレン誘導体、ポリオキサゾール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体などの高分子材料を例示することができる。
陰極6は、LiF/Alの他、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体やこれらと金、銀などの安定な金属との合金または多層体を用いることができる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。
また、これらの材料は、発光層からの発光が有機EL素子の外部から視認可能なように、例えば、発光層の少なくとも片側にある層の全てが透明又は半透明であればよい。
機EL素子は、上記実施形態に限定されることなく様々な変形が可能である。
例えば、上記の実施形態の有機EL素子は、発光性能を向上させるための陽極バッファ層4を有しているが、有機EL素子は、陽極バッファ層4を備えずに、発光層5が、陽極3と陰極6との間に直接挟まれた構造であってもよい。あるいは、有機EL素子は、発光層5と陰極6との間に、発光性能を向上させるための陰極バッファ層をさらに備えていても良い。
また、例えば、上記の実施形態では、基板2側に陽極を配置する場合で説明したが、有機EL素子は、基板2側に陰極を配置する構成とすることもできる。
<有機EL素子の製造方法>
以下、本発明の一実施形態にかかる有機EL素子の製造方法について説明する。
本実施形態の有機EL素子の製造方法では、まず、適切なサイズに切り取ったガラス基板を用意し、この基板上にITOからなる陽極を形成する。
ITO陽極の形成は、例えばスパッタ法を用いて行うことができる。
なお、ITO陽極の膜厚は、例えば、100〜200nmとすることができる。ITO陽極の膜厚が100nmよりも薄い場合には、抵抗が大きくなり有機EL素子の発光特性が悪化する。また、200nmよりも厚い場合にはITO陽極の表面粗さが大きくなり、ITO陽極と陰極6の間が短絡してしまうおそれがあるからである。
次いで、上記ITO付きガラス基板を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコール等で超音波洗浄を行う。
その後、UVオゾンクリーナーや酸素プラズマアッシング等を用いて表面残留有機物を除去する。
次に、本実施形態では、上記洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素で充填したグローブボックス内へ移動してPEDOT/PSSの成膜を行い、陽極バッファ層を形成する。
上記PEDOT/PSSの成膜は、例えばスピンコート法を用いて行うことができ、この場合、例えば、500〜6000rpmの速度で30秒〜2分間スピンコートを行うことが好ましい。
陽極バッファ層の膜厚は、特には限定しないが、例えば10〜100nmとすることができる。
次いで、本実施形態では、PEDOT/PSSの陽極バッファ層上にテトラヒドロフランを用いて抽出を行った石炭ピッチを成膜して、発光層を形成する。
石炭ピッチの抽出は、例えば、一部の種類の縮合多環式芳香族分子が残留するように適量の石炭ピッチを脱水テトラヒドロフランに溶解させた溶液の溶媒を留去(蒸留除去)し、その後、成膜できるようにするため、得られた固体の石炭ピッチを再び脱水テトラヒドロフランに溶解させることにより行うことができる。
溶液中の石炭ピッチの濃度は、上記留去後に得られる固体の石炭ピッチの質量に対して、再び溶解させるテトラヒドロフランの体積を適宜調整することによって、所望の範囲にすることができ、該濃度は、1〜20mg/mLとすることが好ましい。
また、石炭ピッチのテトラヒドロフラン溶液を成膜するに当たっては、スピンコート法を用いることが好ましく、この場合、1000〜6000rpmの速度で30秒間〜2分間スピンコートを行うことが好ましい。
なお、発光層の厚さ(膜厚)は、上述したように、特には限定しないが、例えば20〜100nmとすることができる。
次に、本実施形態では、発光層形成後の中間構造体を真空チャンバーへ移動し、LiF/Alからなる陰極を形成して、有機EL素子を作製する。
ここで、LiF/Al陰極は、例えば、LiFを0.4〜2nm真空蒸着した後、Alを80〜200nm真空蒸着することにより形成することができる。
このように、本発明の有機EL素子の製造方法にあっては、発光層の材料として、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いることが肝要である。
複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物としては、上述したように、コールタール、石炭ピッチ、石油ピッチ等を用いることができるが、本実施形態のように、石炭ピッチを用いることが特に好ましい。
そして、本発明の有機EL素子の製造方法によれば、発光層に用いる材料に複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いるため、低コストで有機EL素子を製造することができる。すなわち、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物は、製鉄や製油プロセス等において大量に得ることのできる副産物である石炭ピッチや石油ピッチを例として挙げられるように、廉価で入手可能であり、これらを材料として発光層を形成することにより、低コストで有機EL素子を製造することができる。
また、発光層に用いる材料に複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いているため、材料としての安定性が高く、少量の不純物の混入によるデバイス不良を回避して信頼性の高い有機EL素子を製造することができる。
さらに、本発明の有機ELの製造方法によれば、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を用いるため、材料を高純度にするための昇華精製プロセスが不要となり、このことによっても有機EL素子の低コストでの製造が可能になる。
発光層に用いる材料としては、本実施形態のように、石炭ピッチが好ましい。石炭ピッチは、製鉄プロセスにおける副産物として、特に大量かつ廉価に入手することができるため、有機EL素子を低コストで製造するのに特に有利だからである。
ここで、本発明の有機EL素子の製造方法において、発光層を形成する工程は、上記実施形態のように、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を有機溶媒に溶解させて、該複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製し、該調製した溶液を用いて発光層を形成することが好ましい。
有機溶媒によって一部の種類の多環式芳香族分子を抽出して、これにより発光特性を向上させることができるからである。
また、上記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ピリジン、キノリン、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、ベンゼンのいずれかを含むことが好ましく、テトラヒドロフランを含むことが特に好ましい。しかし、縮合多環式芳香族分子を溶かすことのできる有機溶媒であれば、これらに限定されない。
例えば、これらの様々な種類の有機溶媒を用いて抽出を行うことができるからである。さらに、これら有機溶媒の種類によって、溶解する多環式芳香族分子の種類が異なるため、この抽出工程において、有機EL素子の発光色特性を変化させることができるからである。すなわち、有機溶媒の種類を変えて抽出を行うという簡易な方法で発光色特性を変化させることができるからである。これにより有機EL素子のフルカラーディスプレー、白色蛍光灯などへの応用がさらに有利になる。
また、特にテトラヒドロフランを用いることにより、優れた発光特性を有する有機EL素子を製造することができる。
なお、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を、有機溶媒に溶解させずに発光層を形成する場合は、パルスレーザーでポジション法、スパッタ法などによって発光層の形成を行うことができる。
さらに、上記実施形態では、スピンコート法を用いて石炭ピッチ溶液を成膜したが、これに限定されるものではなく、他にも例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット法、ディッピング法、キャスト法、ラングミュアブロジェット法、マイクロコンタクトプリント法といった手法により成膜を行うことができる。
ここで、本発明の有機EL素子の製造方法にあっては、発光層を形成する工程は、複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物を有機溶媒に溶解させて、該複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製した後、該調製した溶液から複数種類の縮合多環式芳香族分子のさらに一部の種類を分離し、該分離後の溶液を用いて発光層を形成することが好ましい。
そして、この分離工程はクロマトグラフィ(シリカゲルクロマトグラフィ・アルミナクロマトグラフィ・ゲル浸透クロマトグラフィなど)により行うことができる。
これにより、複数種類のうち一部の種類の多環式芳香族分子を取り除いて、発光特性を向上させることができるからである。また分取により、発光波長を変化させることができるからである。すなわち、分離という簡易な方法で発光色特性を変化させることができるからである。これにより有機EL素子のフルカラーディスプレー、白色蛍光灯などへの応用がさらに有利になる。
ここで、シリカゲルクロマトグラフィにおいて、展開溶媒としては、通常用いられる展開溶媒を用いることができ、例えば、エーテルとヘキサンの混合溶媒や、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を用いることができる。混合溶媒の体積比についても、適宜設定することができる。
そして、シリカゲルクロマトグラフィを用いて分離を行う場合、発光特性を向上させる観点からは、展開した溶液中から適切なバンドを分取して、その成分を用いることが好ましい。
バンドごとに発光特性が異なるため、発光層に用いる複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物の種類、溶媒の種類や、展開溶媒の種類等に応じて適切なバンドを選定して分取することにより、発光特性を向上させることができるからである。
同様に、分離した溶液の複数の成分の中から、Rf値を基準として、最も発光特性が良くなる成分を分取することもできる。
また、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて分離を行う場合、発光特性を向上させる観点からは、異なる保持時間によって生じる画分のうち、適切な画分を分取して、その成分を用いることが好ましい。
画分ごとに発光特性が異なるため、発光層に用いる複数種類の縮合多環式芳香族分子を含む混合物の種類、溶媒の種類等に応じて適切な画分を選定して分取することにより、発光特性を向上させることができるからである。
さらに、本発明の有機EL素子の製造方法にあっては、発光層を形成した後、陰極を形成する前に、アニール処理を行う工程をさらに含むことが好ましい。
これにより、発光特性を向上させることができるからである。
ここで、アニール温度は、30℃超80℃未満とすることが好ましい。この範囲で発光特性をより向上させることができるからである。すなわち、30℃以下だと、発光特性を向上させる効果が十分でなく、一方で、80℃以上でも却って発光特性の向上効果が低下してしまうからである。
また、アニール時間は、特には限定しないが、例えば、10分〜90分とすることができる。
なお、アニール処理は、発光層の形成後、他の層の形成前に行うことが好ましく、例えば、陰極バッファ層を形成する場合には、発光層の形成後、陰極バッファ層の形成前にアニール処理を行うことが好ましい。
本発明の有機EL素子の製造方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、基板、陽極、陽極バッファ層、陰極等は、それぞれ本実施形態で説明した方法以外にも既知の様々な方法で形成することができる。また、基板、陽極、陽極バッファ層、陰極等は、上述した様々な材料を用いて形成することができる。
さらに、本発明の有機EL素子の製造方法では、有機EL素子の構造に応じて工程の順序を適宜変更することができ、例えば、基板側に陰極を配置する構造とする場合には、基板上に陰極を形成した後、発光層、陽極を順に形成することができる。
また、本発明の有機EL素子の製造方法は、他の工程を含んでいても良く、例えば、陰極バッファ層を有する有機EL素子を製造する場合には、発光層の形成後に陰極バッファ層を形成する工程を含むことができる。また、例えば封止工程などの既知の工程をさらに含んでいても良い。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1:溶媒依存性)
図1に示す断面構造を有する有機EL素子の作製を行った。基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサン、tert−ブチルメチルエーテル、クロロホルム、ベンゼンでそれぞれ抽出した石炭ピッチの溶液を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。石炭ピッチを溶解させた各溶液1〜6の調製手順は下記の通りである。なお、各溶媒に溶解させる石炭ピッチは、軟化点80〜100℃のものを使用した。
(1)テトラヒドロフラン溶液
5.0gの石炭ピッチを円筒ろ紙に秤量した後、ソックスレー抽出器内に設置した。これに還流冷却器および磁気回転子を装備した三ツ口フラスコを取り付け、系内をアルゴン置換した後に、安定剤無添加の脱水テトラヒドロフランを250mL加えた。オイルバスの温度を100℃に設定、11日間還流後、室温まで冷却した。得られた石炭ピッチ溶液を風袋のわかるナスフラスコに移し、溶媒を留去したところ、3.37gの固体が得られた。これを安定剤無添加の脱水テトラヒドロフラン337mLに溶かして、石炭ピッチの濃度10mg/mLのテトラヒドロフラン溶液を調製した(溶液1)。
(2)シクロペンチルメチルエーテル溶液
0.50gの石炭ピッチを秤量した後、シクロペンチルメチルエーテルを100mL加えた。室温で100分間撹拌後、ろ過して得られたろ液から溶媒を留去したところ、0.38gの固体が得られた。これをシクロペンチルメチルエーテル38mLに溶かして、石炭ピッチの濃度10mg/mLのシクロペンチルメチルエーテル溶液を調製した(溶液2)。
(3)シクロヘキサン溶液
0.50gの石炭ピッチを秤量した後、シクロヘキサンを100mL加えた。室温で100分間撹拌後、ろ過して得られたろ液から溶媒を留去したところ、0.17gの固体が得られた。これをシクロヘキサン68mLに溶かして、石炭ピッチの濃度2.5mg/mLのシクロヘキサン溶液を調製した(溶液3)。
(4)tert−ブチルメチルエーテル溶液
0.50gの石炭ピッチを秤量した後、tert−ブチルメチルエーテルを100mL加えた。室温で100分間撹拌後、ろ過して得られたろ液から溶媒を留去したところ、0.27gの固体が得られた。これをtert−ブチルメチルエーテル54mLに溶かして、石炭ピッチの濃度5mg/mLのtert−ブチルメチルエーテル溶液を調製した(溶液4)。
(5)クロロホルム溶液
0.50gの石炭ピッチを秤量した後、クロロホルムを200mL加えた。室温で3時間撹拌後、ろ過して得られたろ液から溶媒を留去したところ、0.39gの固体が得られた。これをクロロホルム39mLに溶かして、石炭ピッチの濃度10mg/mLのクロロホルム溶液を調製した(溶液5)。
(6)ベンゼン溶液
0.50gの石炭ピッチを秤量した後、ベンゼンを200mL加えた。室温で3時間撹拌後、ろ過して得られたろ液から溶媒を留去したところ、0.38gの固体が得られた。これをベンゼン38mLに溶かして、石炭ピッチの濃度10mg/mLのベンゼン溶液を調製した(溶液6)。
次に、石炭ピッチ層を形成した中間構造体を真空チャンバーへ移動してLiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図2に示し、輝度−電圧特性を図3に示す。
図3に示すように、石炭ピッチを抽出した溶媒の中でテトラヒドロフランを用いた場合が最も高い輝度を示した。
(実施例2:熱処理温度依存性)
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、テトラヒドロフランで抽出した石炭ピッチの溶液を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。なお、テトラヒドロフランに溶解させる石炭ピッチは、軟化点80〜100℃のものを使用した。
ここで、石炭ピッチをスピンコートして発光層を形成した後に、ホットプレートを用いて40℃から100℃の各温度条件で10分間熱処理を行った。
次に熱処理後の中間構造物を真空チャンバーへ移動してLiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図4に示し、輝度−電圧特性を図5に示す。
図5に示すように、石炭ピッチをスピンコートした後の熱処理温度が80℃以上になると輝度が低下した。
(実施例3:熱処理時間依存性)
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、テトラヒドロフランで抽出した石炭ピッチの溶液を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。なお、テトラヒドロフランに溶解させる石炭ピッチは、軟化点80〜100℃のものを使用した。
ここで、石炭ピッチをスピンコートして発光層を形成した後に、ホットプレートを用いて、60℃で10分間から90分間の各熱処理時間条件で熱処理を行った。
次に熱処理後の中間構造物を真空チャンバーへ移動してLiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図6に示し、輝度−電圧特性を図7に示す。
図6および図7に示すように、石炭ピッチをスピンコートした後の熱処理時間を変化させても発光特性に大きな差異は見られなかった。
(実施例4:ゲル浸透クロマトグラフィによる分離の効果)
ゲル浸透クロマトグラフィカラム(Shodex KF−803、I.D.8.0×300mm)を備えた液体クロマトグラフ(ジーエルサイエンス・検出器UV620(254nm)、 オーブンmodel554, ポンプPU610、移動相テトラヒドロフラン:流量1mL/min)を用いて、前述のテトラヒドロフラン溶液1を20μL注入し、保持時間9.0〜10.0分、10.0〜11.0分、13.0〜14.0分に流出した画分を分取した。これを30回繰り返し、それぞれの画分を濃縮、秤量した後に、重量に合わせて安定剤無添加の脱水テトラヒドロフランを加えて溶液7〜9(溶液7:1mg/mL、溶液8:2mg/mL、溶液9:2mg/mL)を調製した。
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、ゲル浸透クロマトグラフィ処理した上記の石炭ピッチの溶液(溶液7〜9)を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。
次に、石炭ピッチ層の成膜後の中間構造物を真空チャンバーへ移動して、LiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図8に示し、輝度−電圧特性を図9に示す。
図9に示すように、13〜14分の保持時間で分取した石炭ピッチを用いた有機EL素子が最も強い発光を示した。
(実施例5:シリカゲルTLC(薄層クロマトグラフィ)による分離の効果その1)
シリカゲル(Wakogel B−5F)を用いて作成したPTLC(20×20cm、 4枚)に前述のテトラヒドロフラン溶液1(10mg/mL、1枚当たり5mL=石炭ピッチ50mg)を塗布し、エーテルとヘキサンとの混合溶媒(体積比は、エーテル:ヘキサン=1:4)を展開溶媒として用いて展開した。Rf値が0超0.25以下、0.25超0.50以下、0.50超0.75以下、0.75超1.0以下の成分をそれぞれ削り取り、それぞれの成分にテトラヒドロフランを加えてシリカゲルをろ過、ろ液を濃縮、残った固体の秤量を行った。それぞれの成分において、重量に合わせて安定剤無添加の脱水テトラヒドロフランを加えて、10mg/mLの溶液10(Rf=0超0.25以下)、溶液11(Rf=0.25超0.50以下)、溶液12(Rf=0.50超0.75以下)、溶液13(Rf=0.75超1.0以下)を調製した。
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、TLC処理した上記石炭ピッチの溶液(溶液10〜13)を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。
次に、石炭ピッチ層の成膜後の中間構造物を真空チャンバーへ移動して、LiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した素子の電流密度−電圧特性を図10に示し、輝度−電圧特性を図11に示す。
図11に示すように、Rf値が0.5超0.75以下で分取した石炭ピッチを用いた有機EL素子が最も強い発光を示した。
(実施例6:シリカゲルTLC(薄層クロマトグラフィ)による分離の効果その2)
シリカゲル(Wakogel B−5F)を用いて作成したPTLCに前述のテトラヒドロフランで溶解した石炭ピッチ溶液12(Rf=0.50超0.75以下)を塗布し、CH2Cl2(ジクロロメタン)とヘキサンとの混合溶液(体積比は、CH2Cl2:ヘキサン=3:1)を展開溶媒として用いて展開した。上から2番目の黄色のバンドと上から3番目のバンドを削り取り、それぞれの成分にテトラヒドロフランを加えてシリカゲルをろ過、ろ液を濃縮、残った固体の秤量を行った。それぞれの成分において、重量に合わせて安定剤無添加の脱水テトラヒドロフランを加えて、10mg/mLの溶液を調製した(溶液14、15)。
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、PTLCで分取した上記石炭ピッチの溶液(溶液14、15)を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。
次に、石炭ピッチ層の成膜後の中間構造物を真空チャンバーへ移動してLiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図12に示し、と輝度−電圧特性を図13に示す。
図13に示すように、2番目を分取した石炭ピッチ(溶液14)を用いた有機EL素子が最も強い発光を示した。
(実施例7:シリカゲルTLC(薄層クロマトグラフィ)による分離の効果その3)
シリカゲル(Wakogel B−5F)を用いて作成したPTLCに前述のテトラヒドロフラン溶液12(Rf=0.50超0.75以下)を塗布し、エーテルとヘキサンとの混合溶媒(体積比は、エーテル:ヘキサン=1:4)を展開溶媒として用いて展開した。上から2番目の青く発光するバンドと上から3番目の黄色のバンドを削り取り、それぞれの成分にテトラヒドロフランを加えてシリカゲルをろ過、ろ液を濃縮、残った固体の秤量を行った。それぞれの成分において、重量に合わせて安定剤無添加の脱水テトラヒドロフランを加えて10mg/mLの溶液を調製した(溶液16、17)。
基板として用いたITO付きソーダライムガラス(20mm×20mm×0.7mm)を界面活性剤入り洗剤、純水、アセトン、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を行った。その後、UVオゾンクリーナーを用いて表面残留有機物を除去した。なお、陽極であるITOは、スパッタ法を用いて、膜厚150nmとなるように形成したものである。
洗浄を行ったITO付きガラス基板を窒素を充填したグローブボックス内へ移動して、陽極バッファ層としてPEDOT/PSS(製品名:CleviosP CH 8000)の成膜を行った。成膜にはスピンコート法を用い、PEDOT/PSSを2000rpmで1分間スピンコートした。
次に、発光層となる石炭ピッチ層の成膜を行った。成膜は、PTLCで分取した上記石炭ピッチの溶液(溶液16、17)を、スピンコート法を用いて、2000rpmで1分間スピンコートすることにより行った。
次に、石炭ピッチ層の成膜後の中間構造物を真空チャンバーへ移動してLiFを0.5nm真空蒸着し、次いで、Alを120nm真空蒸着して、陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子の電流密度−電圧特性を図14に示し、輝度−電圧特性を図15に示す。
図15に示すように、3番目を分取した石炭ピッチ(溶液17)を用いた有機EL素子が最も強い発光を示した。
本発明によれば、低コスト化した有機EL素子を提供することができる。の有機EL素子は、ディスプレイや照明等に用いることができる。
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陽極バッファ層
5 発光層
6 陰極

Claims (7)

  1. 基板上に、少なくとも陽極、発光層、および陰極を有する有機EL素子の製造方法であって、
    基板上に陽極及び陰極のうちいずれか一方を形成する工程と、
    前記陽極又は陰極上に発光層を形成する工程と、
    前記発光層上に陽極及び陰極のうちいずれか他方を形成する工程と、を含み、
    前記発光層は、有機溶媒に溶解させた石炭ピッチが成膜されてなることを特徴とする、有機EL素子の製造方法。
  2. 前記発光層を形成する工程は、
    前記石炭ピッチを有機溶媒に溶解させて、該石炭ピッチが含有する複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製し、該調製した溶液を用いて発光層を成膜する、請求項に記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ピリジン、キノリン、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、ベンゼンのいずれかを含む有機溶媒である、請求項に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記有機溶媒は、テトラヒドロフランを含む有機溶媒である、請求項に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記発光層を形成する工程は、
    前記石炭ピッチを有機溶媒に溶解させて、該石炭ピッチが含有する複数種類の縮合多環式芳香族分子のうち少なくとも一部の種類を含む溶液を調製した後、該調製した溶液から前記複数種類のうち一部の種類を分離し、該分離後の溶液を用いて発光層を成膜する、請求項のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記分離は、クロマトグラフィを用いて行う、請求項に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記発光層を形成する工程を経た後、アニール処理を行う工程をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
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