JP5981757B2 - 動力伝達装置、及び車両 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関が機関出力軸から出力した機械的動力を駆動輪に向けて伝達する動力伝達装置に関し、特に、内燃機関の作動を車両の走行状態に応じて自動的に停止する機能を備えた車両の動力伝達装置に関する。
自動車等の車両に用いられる動力伝達装置には、例えば、自動変速機など、入力軸で受けた機械的動力を、変速機構により変速して(回転速度及びトルクを変化させて)出力軸に伝達するものがある。変速機構には、複数の変速段のうちいずれか一つにより変速する変速機構や、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機構などがある。
また、自動車に原動機として搭載された内燃機関の燃料消費を抑制するため、アイドリング状態で作動している内燃機関を、所定の条件が成立した場合に自動的に停止させる機能、いわゆるアイドリングストップ機能を備えた車両が知られている。
上述のような動力伝達装置には、一般的に、油圧を受けて作動するクラッチやブレーキが設けられており、さらに、これらクラッチやブレーキに油圧を供給するためのオイルポンプが動力伝達装置や車両に設けられている。オイルポンプには、内燃機関からの機械的動力を受けて作動するものや、電気モータ等に駆動される電動オイルポンプが用いられる。アイドリングストップ車両の場合には、車両停止中に内燃機関の作動を停止させることが多いため、電気モータにより駆動されるオイルポンプ、いわゆる電動オイルポンプを用いることが多い。
また、下記の特許文献1には、油圧を受けて作動するクラッチのピストンに皿ばねを組み付け、油圧が供給されていない場合であっても、皿ばねの付勢力によりクラッチを係合状態となるよう構成された動力伝達装置が提案されている。
特開2006−9973号公報
上述のようなアイドリングストップ車両においては、アイドリングストップ機能により内燃機関の作動を停止させている状態(非作動状態)から、内燃機関を始動した後、即座に車両を発進させたいという要望がある。このため、内燃機関の機関出力軸と駆動輪との間における動力伝達を遮断可能なクラッチやブレーキを有する動力伝達装置においては、内燃機関が始動した直後の車両の発進に備えるため、予め内燃機関の非作動状態において当該クラッチ等を(滑りが生じる状態を含む)係合状態にしておくことが好ましい。
上述した機関出力軸と駆動輪との間における動力伝達を遮断可能なクラッチ等が、油圧の供給を受けて作動するものであり、且つ当該油圧を供給するオイルポンプが、機関出力軸からの機械的動力を受けて作動するものである場合、内燃機関の非作動状態において、当該クラッチ等を係合状態にするためには、当該クラッチ等に油圧を供給し続ける、又は当該クラッチ等において油圧を所定の値に保つ必要がある。このため、従来の車両においては、内燃機関の非作動状態においては、電動オイルポンプを作動させることにより、クラッチ等に油圧を供給していた。
しかし、動力伝達装置のクラッチ等に油圧を供給するオイルポンプに、電動オイルポンプを用いると、比較的コストが高いという問題がある。一方、内燃機関からの機械的動力を受けて作動するオイルポンプを用いる場合には、内燃機関の非作動状態において動力伝達装置を構成するクラッチやブレーキに供給するための油圧を発生させることができず、内燃機関の始動直後の車両発進に備えることが困難である。このため、特許文献1に記載の動力伝達装置においては、クラッチに油圧が供給されていない場合であっても、皿ばねの付勢力により、摩擦板が僅かに係合する状態、又は係合直前の状態(解放状態)となるよう構成することが提案されている。
ところで、上述のような車両においては、その走行中に駆動輪と路面との間における動摩擦係数が急激に変化することがあり、動力伝達装置の変速機構において伝達されるトルクが急激に変化することがある。変速機構において伝達されるトルクが急激に変化すると、変速機構を構成する部品に不必要な負荷がかかることがある。特に、変速機構として連続可変変速機構が用いられている場合に、当該変速機構を構成する部品を傷つける虞がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、変速機構に急激なトルク変動が作用することを抑制して、変速機構を保護することが可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る動力伝達装置は、内燃機関が機関出力軸から出力した機械的動力を、駆動輪に向けて伝達する動力伝達装置であって、油圧制御装置と、変速機構と、常閉クラッチとを備え、内燃機関は、所定の停止条件が成立した場合に作動が停止するよう制御され、且つ所定の始動条件が成立した場合に始動するよう制御されるものであり、前記油圧制御装置は、前記機関出力軸からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプを含み、且つ、前記常閉クラッチに油圧を供給可能であり、前記変速機構は、前記常閉クラッチからの機械的動力を、回転速度を変化させて前記駆動輪に向けて伝達し、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機構であり、前記常閉クラッチは、前記機関出力軸と前記駆動輪との間において前記変速機構に伝達される急激な動力伝達を遮断可能であり、且つ、前記油圧制御装置から油圧が供給されていない場合は付勢部材による付勢力で係合状態になり、前記油圧制御装置から油圧が供給された場合は解放状態になり、前記常閉クラッチは、係合状態において伝達可能なトルクの最大値が、前記変速機構が伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう構成されていることを特徴とする。
上記の動力伝達装置において、前記変速機構は、前記常閉クラッチと前記駆動輪との間に配置されている。
上記の動力伝達装置において、前記常閉クラッチは、前記内燃機関からの機械的動力を受けて作動する前記油圧制御装置から油圧の供給を受けることにより、係合状態と解放状態とを切替える動作を行うことが可能となるものとすることができる。
上記の動力伝達装置において、前記機関出力軸からの機械的動力を、回転速度及び回転方向を変化させることなく前記常閉クラッチに伝達する前進作動状態と、前記機関出力軸からの機械的動力を、回転方向を逆向きに変化させて前記常閉クラッチに伝達する後進作動状態と、前記機関出力軸からの機械的動力を、前記常閉クラッチに伝達しないニュートラル作動状態と、を切替え可能な前後進切替機構をさらに備えるものとすることができる。
また、本発明に係る車両は、内燃機関が機関出力軸から出力した機械的動力を、動力伝達装置を介して駆動輪に伝達する車両であって、所定の停止条件が成立した場合に、前記内燃機関が作動を停止するよう制御し、且つ所定の始動条件が成立した場合に、前記内燃機関が始動するよう制御する制御装置を備え、前記動力伝達装置は、油圧制御装置と、変速機構と、常閉クラッチとを備え、前記油圧制御装置は、前記機関出力軸からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプを含み、且つ、前記常閉クラッチに油圧を供給可能であり、前記変速機構は、前記常閉クラッチからの機械的動力を、回転速度を変化させて前記駆動輪に向けて伝達し、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機構であり、前記常閉クラッチは、前記機関出力軸と前記駆動輪との間において前記変速機構に伝達される急激な動力伝達を遮断可能であり、且つ、前記油圧制御装置から油圧が供給されていない場合は付勢部材による付勢力で係合状態になり、前記油圧制御装置から油圧が供給された場合は解放状態になり、前記常閉クラッチは、係合状態において伝達可能なトルクの最大値が、前記変速機構が伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう構成されているものとすることができる。
本発明に係る車両において、前記変速機構は、前記常閉クラッチと前記駆動輪との間に配置されているものとすることができる。
本発明によれば、駆動輪と機関出力軸との間に急激なトルク変動が作用した場合であっても、当該トルクが、変速機構において伝達可能なトルクの最大値に達する前に、常閉クラッチにおいて伝達可能なトルクの最大値に達して、摩擦クラッチである常閉クラッチにおいて滑りを生じさせることができる。これにより、変速機構において急激なトルク変動が作用することを抑制して、変速機構を保護することができる。
実施形態に係る車両及び動力伝達装置の構成を示す模式図である。 実施形態に係る動力伝達装置の構成を示す模式図であり、常閉クラッチの詳細を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」と記す)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。まず、本実施形態に係る車両と動力伝達装置の構成の概略について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る車両及び動力伝達装置の構成を示す模式図である。
車両1には、駆動輪9を駆動するための原動機として内燃機関5が設けられている。内燃機関5は、燃料のエネルギを機械的エネルギに変換して出力する熱機関であり、本実施形態においては、シリンダ内をピストンが往復運動するピストン往復動機関である。内燃機関5は、機関出力軸6から機械的動力を出力する。機関出力軸6は、動力伝達装置10の入力軸11と結合されている。なお、以下の説明において、内燃機関5が機関出力軸6から出力した機械的動力を「機関出力」と記す。内燃機関5が機関出力軸6から出力する機関出力は、後述する制御装置100により制御される。また、内燃機関5は、制御装置100により、所定の停止条件が成立した場合に作動が停止するよう制御され、且つ所定の始動条件が成立した場合に始動するよう制御される。
車両1には、内燃機関5が機関出力軸6から出力した機械的動力を、入力軸11で受けて、駆動輪9に向けて伝達する動力伝達装置10が設けられている。本実施形態において、動力伝達装置10は、内燃機関5からの機械的動力を、作動流体を介してトルクを増大可能なトルクコンバータ20と、トルクコンバータ20からの機械的動力を回転方向を切替えて伝達可能な前後進切替機構30と、内燃機関5と駆動輪9との間における動力伝達を遮断可能な常閉クラッチ60と、内燃機関5からの機械的動力を回転速度を変化させて駆動輪9に向けて伝達可能な変速機構70とを有している。以下にこれらの詳細について、図1及び図2を用いて説明する。図2は、実施形態に係る動力伝達装置の構成を説明する模式図である。
トルクコンバータ20は、ポンプインペラ22とタービンランナ24とステータ25とを有し、ポンプインペラ22からの機械的動力を、作動流体を介してトルクを増大させてタービンランナ24に伝達可能な流体伝動装置である。トルクコンバータ20は、ポンプインペラ22で受けた機械的動力を、作動流体(例えば、ATF:自動変速機用フルード)を介してタービンランナ24に伝達する。ポンプインペラ22からタービンランナ24に流れた作動流体は、ステータ25により流動方向を変えられて、再びポンプインペラ22に流入する。トルクコンバータ20は、ポンプインペラ22からタービンランナ24に伝達されるトルクを増大させることが可能に構成されている。
ポンプインペラ22は、トルクコンバータ20のうち入力側を構成する部材、すなわち動力伝達装置10の入力軸11に結合されており、入力軸11は、ポンプインペラ22と一体に回転する。一方、タービンランナ24は、前後進切替機構30の入力軸31に結合されている。ステータ25は、ワンウェイクラッチ27に結合されており、当該ワンウェイクラッチ27は、動力伝達装置10を構成する部材のうち静止している部材(以下、静止部材と記す)に係合可能に構成されている。なお、静止部材には、動力伝達装置10の外装をなすハウジング等がある。
なお、本実施形態において、トルクコンバータ20は、ポンプインペラ22とタービンランナ24とを連結させることが可能なクラッチであるロックアップクラッチ28を有している。ロックアップクラッチ28が連結状態にある場合、ポンプインペラ22とタービンランナ24は、一体に回転し、内燃機関5からの機関出力は、そのままタービンランナ24から前後進切替機構30に伝達される。
なお、本明細書において、クラッチ(例えば、ロックアップクラッチ28、前進クラッチ40、常閉クラッチ60)を作動させず、駆動側の回転部材と被駆動側の回転部材との間における動力伝達が遮断された状態を「解放状態」と記す。一方、クラッチを作動させて、駆動側の回転部材と被駆動側の回転部材が同一の回転速度で一体に回転する状態を「連結状態」と記す。また、駆動側の回転部材と被駆動側の回転部材が係合して、これら回転部材の間においてトルクの伝達がある状態を「係合状態」と記す。つまり「係合状態」には、上述した「連結状態」が含まれる。
また、本明細書において、ブレーキ(例えば、後進ブレーキ50)を作動させて運動体の回転を止めて静止させた状態を「停止状態」と記す。一方、当該ブレーキを作動させておらず、静止体に対して運動体が自由に回転する状態を「非作動状態」と記す。また、運動体と静止体が接して運動体の回転が制動される状態を「制動状態」と記す。つまり「制動状態」には、上述した「停止状態」が含まれる。
前後進切替機構30は、ダブルピニオン式(デュアルプラネタリー式)の遊星歯車33を有している。遊星歯車33は、入力軸31に結合されたサンギア34と、当該サンギア34と噛み合う内側プラネタリピニオン35と、内側プラネタリピニオン35と噛み合う外側プラネタリピニオン36と、内側プラネタリピニオン35と外側プラネタリピニオン36を回転可能に支持するプラネタリキャリア38と、外側プラネタリピニオン36と噛み合うリングギア39とを有している。プラネタリキャリア38は、後述する常閉クラッチ60の入力軸61に結合されている。
また、前後進切替機構30は、遊星歯車33のうちサンギア34とプラネタリキャリア38を連結可能なクラッチである「前進クラッチ」40と、遊星歯車33のリングギア39の回転を制動可能なブレーキである「後進ブレーキ」50とを有している。
前進クラッチ40は、多板式のクラッチとして構成されており、回転中心軸の軸方向に摩擦材41が複数配列されている。前進クラッチ40は、摩擦材41に生じる摩擦力により、駆動側の回転部材と被駆動側の回転部材が係合して係合状態となる、いわゆる「摩擦クラッチ」である。前進クラッチ40においては、サンギア34とプラネタリキャリア38のうち、一方が駆動側の回転部材となり、他方が被駆動側の回転部材となる。つまり、前進クラッチ40が連結状態に操作されると、サンギア34とプラネタリキャリア38は、連結されて一体に回転する。前進クラッチ40は、解放状態に操作されると、サンギア34とプラネタリキャリア38との間における機械的動力の伝達が遮断されて、サンギア34とプラネタリキャリア38は、それぞれ別個に回転することができる。
なお、前進クラッチ40は、電磁作動によって係合状態となる「電磁クラッチ」として構成されており、通電することにより磁界を生じさせる電磁石44と、電磁石44が生じさせた磁界に引き付けられて摩擦材41を押す部材(以下、押し部材と記す)46と、押し部材46を摩擦材41が係合しない向きに付勢する付勢部材(以下、リターンスプリングと記す)48を有している。電磁石44を通電させると、押し部材46が、リターンスプリング48の付勢力に抗して摩擦材41を押し、回転中心軸の軸方向に隣り合う摩擦材41の間に摩擦力が生じる。このようにして、前進クラッチ40は、サンギア34とプラネタリキャリア38が完全に係合する連結状態となる。一方、電磁石44に通電していない場合、押し部材46は、リターンスプリング48の付勢力により、摩擦材41を押す向きとは逆向きに付勢されて移動し、前進クラッチ40は、解放状態となる。電磁石44への通電の有無、すなわち前進クラッチ40の連結状態と解放状態との切替操作は、制御装置100により制御される。
後進ブレーキ50は、多板式のブレーキとして構成されており、回転中心軸の軸方向に摩擦材51が複数配列されている。後進ブレーキ50は、摩擦材51に生じる摩擦力により、運動体であるリングギア39と静止部材(例えば、動力伝達装置10のハウジング)が係合して、運動体の回転が制動される制動状態となる、いわゆる「摩擦ブレーキ」である。
なお、後進ブレーキ50は、電磁作動によって制動状態となる「電磁クラッチ」として構成されており、通電することにより磁界を生じさせる電磁石53と、電磁石53が生じさせた磁界に引き付けられて摩擦材51を押す部材(以下、押し部材と記す)55と、押し部材55を摩擦材51が係合しない向きに付勢する付勢部材(以下、リターンスプリングと記す)57とを有している。電磁石53を通電させると、押し部材55が、リターンスプリング57の付勢力に抗して摩擦材51を押し、回転中心軸の軸方に隣り合う摩擦材51の間に摩擦力が生じる。このようにして、後進ブレーキ50は、リングギア39の回転が完全に止まる停止状態となる。一方、電磁石53に通電していない場合、押し部材55は、リターンスプリング57の付勢力により、摩擦材51を押す向きとは逆向きに付勢されて移動し、後進ブレーキ50は、非作動状態となる。電磁石53への通電の有無、すなわち後進ブレーキ50の停止状態と非作動状態との切替操作は、制御装置100により制御される。
以上のように構成された前後進切替機構30は、前進クラッチ40が係合状態(連結状態含む)に操作されると共に後進ブレーキ50が解放状態に操作されることにより、サンギア34とプラネタリキャリア38とリングギア39が一体に回転する。これにより、前後進切替機構30は、入力軸31で受けた機関出力を、回転方向及び回転速度を変化させることなく、常閉クラッチ60の入力軸61に伝達することが可能となっている。このような前後進切替機構30の作動状態を、以下に「前進作動状態」と記す。
一方、前進クラッチ40が解放状態に操作されると共に後進ブレーキ50が停止状態に操作されることにより、プラネタリキャリア38は、サンギア34の回転方向とは逆向きに回転する。これにより、前後進切替機構30は、入力軸31で受けた機関出力を、回転方向を逆向きに変化させて、常閉クラッチ60の入力軸61に伝達することが可能となっている。このような前後進切替機構30の作動状態を、以下に「後進作動状態」と記す。
また、前進クラッチ40が解放状態に操作されると共に後進ブレーキ50が解放状態に操作されることにより、サンギア34と、プラネタリキャリア38との間における機械的動力の伝達が遮断される。これにより、前後進切替機構30は、入力軸31で受けた機関出力を、常閉クラッチ60の入力軸61に伝達することがなくなる。このような前後進切替機構30の作動状態を、以下に「ニュートラル作動状態」と記す。
以上のように、前後進切替機構30は、前進クラッチ40の連結状態/解放状態と後進ブレーキ50の停止状態/非作動状態が制御されることにより、内燃機関5の機関出力軸6からの機械的動力(機関出力)を、回転速度及び回転方向を変化させることなく常閉クラッチ60に伝達する前進作動と、機関出力を回転方向を逆向きに変化させて常閉クラッチ60に伝達する後進運転と、機関出力を、常閉クラッチ60に伝達しないニュートラル運転を切替え可能に構成されている。前進クラッチ40の連結状態/解放状態と、後進ブレーキ50の停止状態/非作動状態は、制御装置100により協調して制御される。
常閉クラッチ60は、その係合状態と解放状態とを切替える動作(以下、「係合/解放動作」と記す)を操作する力が作用していないときに係合状態となるよう構成されたクラッチ、いわゆるノーマルクローズ(normally closed)式のクラッチとして構成されている。常閉クラッチ60の詳細について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る動力伝達装置の構成を示す模式図であり、常閉クラッチの詳細を説明するための図である。
なお、以下の説明において、常閉クラッチ60の回転中心軸の軸方向のうち、隣り合う摩擦材62を係合させる向き(軸方向内側)を「軸方向係合側」と記して、図に矢印Eで示す。一方、回転中心軸の軸方向のうち軸方向係合側とは逆向き、すなわち隣り合う摩擦材62を係合させない向き(軸方向外側)を「軸方向解放側」と記して、図に矢印Dで示す。
図2に示すように、常閉クラッチ60は、多板式のクラッチとして構成されており、回転中心軸の軸方向に摩擦材62が複数配列されている。常閉クラッチ60は、摩擦材62に生じる摩擦力により、駆動側の回転部材と被駆動側の回転部材が係合して係合状態となる、いわゆる「摩擦クラッチ」である。常閉クラッチ60においては、その入力軸61と、変速機構70の入力軸71のうち、一方が駆動側の回転部材となり、他方が被駆動側の回転部材となる。つまり、常閉クラッチ60が連結状態に操作されると、その入力軸61と変速機構70の入力軸71が連結されて一体に回転する。常閉クラッチ60は、解放状態に操作されると、その入力軸61と変速機構70の入力軸71との間における機械的動力の伝達が遮断される。
常閉クラッチ60は、油圧を受けて作動し、回転中心軸の軸方向係合側に移動することにより、摩擦材62を押すことが可能な部材(以下、油圧ピストン部材と記す)64と、隣り合う摩擦材62を係合させる向きに(軸方向係合側に)油圧ピストン部材64を付勢する付勢部材(以下、単に「スプリング」と記す)66とを有している。常閉クラッチ60は、油圧供給装置110から油圧の供給を受ける。
油圧供給装置110は、図1に示すように、機関出力軸6からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプPを含んでいる。本実施形態において、オイルポンプPは、機関出力軸6からの機械的動力を、トルクコンバータ20のポンプインペラ22を介して受けて作動し、油圧を発生させる。油圧供給装置110は、オイルポンプPが発生した油圧を、常閉クラッチ60に油圧を供給することで、常閉クラッチ60の係合/解放動作を操作可能に構成されている。油圧供給装置110による、常閉クラッチ60の係合/解放動作の操作は、制御装置100により制御される。
スプリング66は、回転中心軸の軸方向係合側に、すなわち常閉クラッチ60が係合状態となる向きに、油圧ピストン部材64を付勢している。油圧ピストン部材64は、スプリング66により油圧ピストン部材64に作用する力(以下、付勢力と記す)を受けて、軸方向係合側に移動して摩擦材62を押す。スプリング66の付勢力は、内燃機関5が非作動状態にあるため油圧供給装置110が作動しておらず、油圧供給装置110から常閉クラッチ60に油圧が供給されていない状態において、常閉クラッチ60において「滑り」が生じつつも、入力軸61から変速機構70の入力軸71に機械的動力を伝達可能に設定されている。
なお、常閉クラッチ60の「滑り」とは、常閉クラッチ60の入力軸61と変速機構70の入力軸71との間に回転速度差が生じて、入力軸61からの機械的動力の一部が、摩擦材62において熱として放散されて、残りの機械的動力が変速機構70の入力軸71に伝達されるような状態を意味している。
内燃機関5からの機械的動力を受けて油圧供給装置110が作動している場合、常閉クラッチ60は、油圧ピストン部材64を軸方向係合側に移動させるための油圧室(以下、係合側油圧室と記す)68、又は油圧ピストン部材64を軸方向解放側に移動させるための油圧室(以下、解放側油圧室と記す)67に、油圧供給装置110から油圧の供給を受ける。図2に二点鎖線Cで示すように、油圧供給装置110が係合側油圧室68に油圧を供給すると、油圧ピストン部材64は、係合側油圧室68の油圧を受け、軸方向係合側に操作されて、摩擦材62を押す。このように油圧を制御することにより、常閉クラッチ60を連結状態にすることが可能となっている。
一方、図2に二点鎖線Aで示すように、油圧供給装置110が解放側油圧室67に油圧を供給すると、油圧ピストン部材64は、解放側油圧室67の油圧を受けて、軸方向解放側に操作される。このとき、油圧ピストン部材64は、スプリング66の付勢力に抗して軸方向解放側に移動する。このように油圧を制御することにより、常閉クラッチ60を解放状態にすることが可能となっている。
以上のように、常閉クラッチ60は、油圧供給装置110から油圧の供給を受けることにより、係合/解放動作を行うことが可能となっている。一方、油圧供給装置110から油圧の供給を受けていない場合、常閉クラッチ60は、係合/解放動作を行うことができなくなっている。しかし、常閉クラッチ60は、油圧供給装置110から油圧の供給を受けておらず、その係合/解放動作を操作する操作力が作用していない場合であっても、スプリング66による付勢力が油圧ピストン部材64に作用することにより、係合状態となるように構成されている。これにより、後述する内燃機関5を始動した直後の車両1の発進に備えている。常閉クラッチ60のうち出力側、すなわち駆動輪9側には、変速機構70の入力軸71が結合されている。
変速機構70は、変速比を連続的に変化させることが可能な連速可変変速機(いわゆるCVT)として構成されている。変速機構70は、常閉クラッチ60からの機械的動力を受ける入力軸71と、入力軸71と同軸に設けられ、当該入力軸71と同期回転する入力側プーリ72と、入力軸71に対して所定の間隔をあけて平行に設けられ、減速機構80(図1参照)に機械的動力を出力する出力軸73と、出力軸73と同軸に設けられ、当該出力軸73と同期回転する出力側プーリ74と、入力側プーリ72及び出力側プーリ74に巻き掛けられて、入力軸71からの機械的動力を出力軸73に伝達する動力伝達部材75(図に破線で示す)とを有している。なお、動力伝達部材75には、金属製のベルトやチェーン等を用いることができる。
変速機構70は、図示しない油圧アクチュエータにより駆動されて、入力側プーリ72のプーリ幅を変化させることで、当該入力側プーリ72に巻き掛けられた動力伝達部材75がなす「巻き掛け径」を変化させることが可能に構成されている。同様に、変速機構70は、出力側プーリ74のプーリ幅を変化させることで、当該出力側プーリ74に巻き掛けられた動力伝達部材75がなす「巻き掛け径」を変化させることが可能に構成されている。このような変速機構70は、制御装置100により制御されて、入力側プーリ72のプーリ幅と、出力側プーリ74のプーリ幅を変化させることで、それぞれのプーリ72,74において、動力伝達部材75の巻き掛け径を変化させる。出力側プーリ74における動力伝達部材75の巻き掛け径Roと入力側プーリ72における動力伝達部材75の巻き掛け径Riとの比率(Ro/Ri)が、入力軸71の回転速度Niと出力軸73の回転速度Noの比率である変速比(Ni/No)となる。変速機構70は、入力側プーリ72と出力側プーリ74のうち少なくとも一方のプーリ幅を連続的に変化させることにより、変速比(Ni/No)を連続的に変化させることが可能となっている。
変速機構70が入力軸71で受けた機械的動力は、図1に示すように、入力側プーリ72と出力側プーリ74との間で、回転速度を変化させて(すなわちトルクを変化させて)減速機構80に伝達される。変速機構70から減速機構80に伝達された機械的動力は、差動装置90により左右の駆動軸に分配されて駆動輪9に伝達される。駆動輪9と車両1が走行する路面との間には、車両1を駆動する駆動力[N]が生じる。このようにして、変速機構70は、常閉クラッチ60からの機械的動力を、回転速度を変化させて駆動輪9に向けて伝達する。変速機構70の出力軸73及び入力軸71は、駆動輪9に連動して回転する。
以上のように構成された動力伝達装置10において、常閉クラッチ60は、解放状態に操作されることにより、機関出力軸6と駆動輪9との間における機械的動力の伝達(以下、単に「動力伝達」と記す)を遮断することが可能に構成されている。また、常閉クラッチ60は、油圧供給装置110による、当該常閉クラッチ60の係合/解放動作を操作する力(以下、操作力と記す)が作用することにより解放状態となるよう構成されている。また、常閉クラッチ60は、当該常閉クラッチ60の係合/解放動作を操作する操作力が作用していない場合であっても、付勢部材であるスプリング66による付勢力が油圧ピストン部材64に作用することにより、油圧ピストン部材64が摩擦材62を押す向きに付勢されて、係合状態(連結状態を含む)となるよう構成されている。
なお、車両1の運転者によりパーキングレンジ又はニュートラルレンジが選択されている場合、常閉クラッチ60は、解放状態に操作される。一方、ドライブレンジ又はリバースレンジが選択されている場合には、常閉クラッチ60は、連結状態に操作される。
動力伝達装置10は、原動機としての内燃機関5と結合されて車両1に搭載される。車両1は、内燃機関5における燃料消費を抑制するため、アイドリング状態で作動している内燃機関5を、所定の条件が成立した場合に自動的にその作動を停止させる機能(以下、アイドリングストップ機能と記す)を備えている。車両1には、アイドリングストップ機能を実現するために、内燃機関5及び動力伝達装置10を協調して制御する制御手段として、車両1用の電子制御装置(単に「制御装置」と記す)100が設けられている。
制御装置100は、演算処理装置としてCPU、主記憶装置としてのRAM、補助記憶装置としてのROM等(図示せず)を有している。上述した各種の制御対象を制御する制御処理を示したプログラム、及び当該制御処理プログラムにおいて予め設定されている定数(以下、制御定数と記す)は、制御装置100のROMに予め記憶されている。なお、上述の制御処理においてRAMに設定される変数を「制御変数」と記す。
また、制御装置100は、駆動輪9の回転速度を検出可能な車輪速センサ102から、駆動輪9の回転速度に係る信号を受けており、車両1の走行速度(以下、車速と記す)を制御変数として推定している。また、制御装置100は、アクセルペダルの操作位置を検出するアクセルペダセンサ104から、アクセルペダルの操作位置に係る信号を受けており、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル操作量と記す)を制御変数として推定している。また、制御装置100は、ブレーキペダルの操作を検出するブレーキペダルセンサ106から、ブレーキペダルの操作の有無に係る信号を受けており、ブレーキペダルの操作の有無を、制御変数(制御フラグ)として検出している。
制御装置100は、車速、アクセル操作量、ブレーキペダルの操作の有無等を制御変数として取得し、所定の停止条件が成立した場合には、アイドリングストップ機能により、内燃機関5の作動を停止する。なお、アイドリングストップ機能により、内燃機関5の作動を停止させている状態を、以下に「非作動状態」と記す。これに対して、内燃機関5が作動している状態を、単に「作動状態」と記す。停止条件には、例えば、車速がゼロであり、且つブレーキペダルが操作されている(踏み込まれている)という条件がある。また、制御装置100は、車両1が走行している間(以下、単に「車両走行中」と記す)であっても、アクセルペダルが操作されていない、且つブレーキペダルが操作されている等の条件により、上述の停止条件が成立した場合には、内燃機関5が作動を停止するよう制御し、内燃機関5を非作動状態にする。
一方、制御装置100は、アイドリングストップ機能により内燃機関5が非作動状態となった場合において、車速、アクセル操作量、ブレーキペダルの操作の有無等を制御変数として取得し、所定の始動条件が成立した場合には、非作動状態にある内燃機関5が始動するように制御し、内燃機関5を作動状態にする。始動条件には、例えば、ブレーキペダルが操作されておらず、且つアクセルペダルが操作されている(アクセルペダルが踏み込まれた)という条件がある。このような場合、制御装置100は、内燃機関5を始動して、機関出力軸6から再び機械的動力を出力させる。以上のようにして、制御装置100は、所定の停止条件が成立した場合に、内燃機関が作動を停止するよう制御し、且つ所定の始動条件が成立した場合に、内燃機関が始動するよう制御する。
ところで、上述のような車両1においては、車両走行中において、路面の状態が変化した場合など、駆動輪9と路面との間における動摩擦係数が急激に変化することがある。このとき、動力伝達装置10の変速機構70において伝達されるトルクが急激に変化する。変速機構70において伝達されるトルクが急激に変化すると、変速機構70を構成する部品、例えば、入力側プーリ72及び出力側プーリ74と、動力伝達部材75に不必要な負荷がかかり、これら部品を傷つける虞がある。
そこで、本実施形態に係る動力伝達装置10においては、常閉クラッチ60において伝達可能なトルクの最大値が、変速機構70において伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう、常閉クラッチ60及び変速機構70を構成することで、変速機構70において伝達されるトルクに急激な変動が生じることを抑制しており、以下に図2を用いて説明する。
変速機構70において伝達可能なトルクの最大値(以下、変速機構最大伝達トルクと記す)は、動力伝達部材75と入力側プーリ72との間及び動力伝達部材75と出力側プーリ74との間において、各プーリ72,74の周方向に滑りを生じさせることなく伝達可能なトルクの最大値である。なお、変速機構最大伝達トルクは、変速機構70の入力軸71において計測される値である。
一方、常閉クラッチ60において伝達可能なトルクの最大値(以下、常閉クラッチ最大伝達トルクと記す)は、連結状態にある常閉クラッチ60の入力軸61と常閉クラッチ60の出力軸に相当する入力軸71との間において回転速度差を生じさせることなく伝達可能なトルクの最大値である。本実施形態の動力伝達装置10においては、常閉クラッチ最大伝達トルクが、変速機構最大伝達トルクに比べて低くなるように、常閉クラッチ60を構成するスプリング66のばね定数(すなわちスプリング66の付勢力)を設定している。
なお、常閉クラッチ最大伝達トルクは、スプリング66の付勢力が油圧ピストン部材64に作用しており、さらに、油圧供給装置110が係合側油圧室68に油圧を最大限に供給することにより、油圧ピストン部材64が、当該油圧による操作力とスプリング66の付勢力とを受けて、摩擦材62を押している状態で計測される値である。
このように常閉クラッチ最大伝達トルクが変速機構最大伝達トルクに比べて低くなるように、常閉クラッチ60を構成している。これにより、車両走行中に駆動輪9と路面との間の動摩擦係数の急激な変動など、駆動輪9と動力伝達装置10の入力軸11との間において作用するトルクが急激に増大しても、当該トルクが、変速機構最大伝達トルクに達するよりも前に、常閉クラッチ最大伝達トルクに達する。すなわち、変速機構70の各プーリ72,74と動力伝達部材75との間に当該プーリ72,74の周方向の滑りが生じるより前に、摩擦クラッチである常閉クラッチ60の摩擦材62において滑りが生じることとなる。駆動輪9に連動した回転する変速機構70の出力軸73と、常閉クラッチ60の入力軸61との間において伝達される機械的動力の一部は、常閉クラッチ60において生じる摩擦熱として放散される。このように常閉クラッチ(摩擦クラッチ)60を構成することにより、変速機構70に高い伝達トルクが作用することを抑制することができ、変速機構70を構成する各部品を保護することができる。
以上に説明したように本実施形態の動力伝達装置10は、内燃機関5が機関出力軸6から出力した機械的動力(機関出力)を、駆動輪9に向けて伝達するものである。内燃機関5は、所定の停止条件が成立した場合に作動が停止するよう制御され、且つ所定の始動条件が成立した場合に始動するよう制御されるものである。動力伝達装置10は、機関出力軸6と駆動輪9との間における動力伝達を遮断可能であり、且つ係合/解放動作を操作する力が作用していない場合であっても、付勢部材(スプリング66)による付勢力が作用することにより係合状態となるよう構成されている摩擦クラッチである常閉クラッチ60と、常閉クラッチ60からの機械的動力を、回転速度を変化させて駆動輪9に向けて伝達する変速機構70と、機関出力軸6からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプPを含み、当該常閉クラッチ60に油圧を供給可能な油圧供給装置110とを備えている。動力伝達装置10において、常閉クラッチ60は、当該常閉クラッチ60において伝達可能なトルクの最大値(常閉クラッチ最大伝達トルク)が、変速機構70が伝達可能なトルクの最大値(変速機構最大伝達トルク)に比べて低くなるよう構成されているものとした。駆動輪9と機関出力軸6との間に急激なトルク変動が作用した場合であっても、当該トルクが、変速機構最大伝達トルクに達する前に、常閉クラッチ最大伝達トルクに達して、摩擦クラッチである常閉クラッチ60において滑りを生じさせることができる。これにより、変速機構70において急激なトルク変動が作用することを抑制して、変速機構70を保護することができる。
また、本実施形態の動力伝達装置10において、変速機構70は、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機(いわゆるCVT)であるものとした。CVTを構成するプーリ72,74や動力伝達部材75等の摩擦により動力を伝達する部品に高い負荷が生じることを抑制することができる。
なお、上述した実施形態においては、変速機構70は、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機(CVT)であるものとしたが、本発明に係る変速機構の態様は、これに限定されるものではない。本発明の変速機構は、常閉クラッチ60からの機械的動力を、回転速度を変化させて駆動輪9に向けて伝達可能なものであれば良く、例えば、入力軸で受けた機械的動力を、複数の変速段のうちいずれか一つにより回転速度を変化させて、駆動輪に向けて伝達する、いわゆる有段の自動変速機を用いるものとしても良い。
また、本実施形態の動力伝達装置10において、内燃機関5は、所定の条件(停止条件)が成立した場合に、その作動を停止するよう制御されるものであり、常閉クラッチ60は、内燃機関5からの機械的動力を受けて作動する油圧供給装置110からの油圧の供給を受けることにより、解放状態に操作可能に構成されているものとした。所定の条件(停止条件)が成立して内燃機関5の作動が停止することにより、常閉クラッチ60が、油圧供給装置110から油圧の供給を受けられなくなり、係合/解放動作を行うことができなくなっても、付勢部材(スプリング)66による付勢力が作用することにより係合状態となるよう構成されているため、非作動状態にある内燃機関5を再び始動した直後で、油圧供給装置110から十分な油圧が常閉クラッチ60に供給されていなくても、車両1を即座に発進させることが可能となる。
また、本実施形態の動力伝達装置10は、機関出力軸6からの機械的動力を、回転速度及び回転方向を変化させることなく常閉クラッチ60に伝達する前進作動と、機関出力軸6からの機械的動力を、回転方向を逆向きに変化させて常閉クラッチ60に伝達する後進作動と、機関出力軸6からの機械的動力を、常閉クラッチ60に伝達しないニュートラル作動を切替え可能な前後進切替機構30をさらに備えるものとした。このような前後進切替機構30を備えることで、原動機として内燃機関を備え、且つ変速機構70として連続可変変速機を備えた車両1を実現することができる。
また、本実施形態の車両1は、内燃機関5が機関出力軸6から出力した機械的動力を、動力伝達装置10を介して駆動輪9に伝達する車両1であって、所定の停止条件が成立した場合に、内燃機関5が作動を停止するよう制御し、且つ所定の始動条件が成立した場合に、内燃機関5が始動するよう制御する制御装置100を備え、動力伝達装置10は、機関出力軸6と駆動輪9との間における動力伝達を遮断可能であり、且つ、係合状態と解放状態とを切替える動作を操作する力が作用していない場合であっても付勢部材(スプリング)66による付勢力が作用することにより係合状態となるよう構成されている摩擦クラッチである常閉クラッチ60と、常閉クラッチ60からの機械的動力を、回転速度を変化させて駆動輪に向けて伝達する変速機構70と、機関出力軸6からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプPを含み、当該常閉クラッチ60に油圧を供給可能な油圧供給装置110とを有し、常閉クラッチ60は、当該常閉クラッチ60において伝達可能なトルクの最大値が、変速機構70が伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう構成されているものとした。駆動輪9と機関出力軸6との間に急激なトルク変動が作用した場合であっても、当該トルクが、変速機構最大伝達トルクに達する前に、常閉クラッチ最大伝達トルクに達して、摩擦クラッチである常閉クラッチ60において滑りを生じさせることができる。これにより、変速機構70において急激なトルク変動が作用することを抑制して、変速機構70を保護することができる。なお、本実施形態において、変速機構70は、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機である。
なお、上述した実施形態においては、変速機構70は、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機(CVT)であるものとしたが、本発明に係る変速機構の態様は、これに限定されるものではない。本発明の変速機構は、常閉クラッチ60からの機械的動力を、回転速度を変化させて駆動輪9に向けて伝達可能なものであれば良く、例えば、入力軸で受けた機械的動力を、複数の変速段のうちいずれか一つにより回転速度を変化させて、駆動輪に向けて伝達する、いわゆる有段の自動変速機を用いるものとしても良い。
また、上述した実施形態においては、動力伝達装置10は、内燃機関5からの機械的動力を、作動流体を介してトルクを増大させるトルクコンバータ20と、内燃機関5からの機械的動力を回転方向を切替えて駆動輪9に向けて伝達可能な前後進切替機構30とを有するものとしたが、本発明を適用可能な動力伝達装置の態様は、これに限定されるものではない。内燃機関が出力した機械的動力を、駆動輪に向けて出力可能な動力伝達装置であれば良く、例えば、平行軸歯車装置を有する手動変速機にも、本発明を適用することができる。
1 車両
5 内燃機関
6 機関出力軸
9 駆動輪
10 動力伝達装置
20 トルクコンバータ
30 前後進切替機構
33 遊星歯車
40 前進クラッチ
50 後進ブレーキ
60 常閉クラッチ
61 常閉クラッチの入力軸
64 油圧ピストン部材
66 スプリング(付勢部材)
70 変速機構(連続可変変速機)
80 減速機構
90 差動装置
100 制御装置(制御手段、車両用電子制御装置)
110 油圧供給装置

Claims (6)

  1. 内燃機関が機関出力軸から出力した機械的動力を、駆動輪に向けて伝達する動力伝達装置であって、
    油圧制御装置と、変速機構と、常閉クラッチとを備え、
    内燃機関は、所定の停止条件が成立した場合に作動が停止するよう制御され、且つ所定の始動条件が成立した場合に始動するよう制御されるものであり、
    前記油圧制御装置は、前記機関出力軸からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプを含み、且つ、前記常閉クラッチに油圧を供給可能であり、
    前記変速機構は、前記常閉クラッチからの機械的動力を、回転速度を変化させて前記駆動輪に向けて伝達し、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機構であり、
    前記常閉クラッチは、前記機関出力軸と前記駆動輪との間において前記変速機構に伝達される急激な動力伝達を遮断可能であり、且つ、前記油圧制御装置から油圧が供給されていない場合は付勢部材による付勢力で係合状態になり、前記油圧制御装置から油圧が供給された場合は解放状態になり、
    前記常閉クラッチは、係合状態において伝達可能なトルクの最大値が、前記変速機構が伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
  2. 請求項1に記載の動力伝達装置において、
    前記変速機構は、前記常閉クラッチと前記駆動輪との間に配置されている動力伝達装置。
  3. 請求項1又は2に記載の動力伝達装置において、
    前記常閉クラッチは、前記内燃機関からの機械的動力を受けて作動する前記油圧制御装置から油圧の供給を受けることにより、係合状態と解放状態とを切替える動作を行うことが可能となるものである動力伝達装置。
  4. 請求項2又は3に記載の動力伝達装置において、
    前記機関出力軸からの機械的動力を、回転速度及び回転方向を変化させることなく前記常閉クラッチに伝達する前進作動状態と、
    前記機関出力軸からの機械的動力を、回転方向を逆向きに変化させて前記常閉クラッチに伝達する後進作動状態と、
    前記機関出力軸からの機械的動力を、前記常閉クラッチに伝達しないニュートラル作動状態と、を切替え可能な前後進切替機構をさらに備える動力伝達装置。
  5. 内燃機関が機関出力軸から出力した機械的動力を、動力伝達装置を介して駆動輪に伝達する車両であって、
    所定の停止条件が成立した場合に、前記内燃機関が作動を停止するよう制御し、且つ所定の始動条件が成立した場合に、前記内燃機関が始動するよう制御する制御装置を備え、
    前記動力伝達装置は、
    油圧制御装置と、変速機構と、常閉クラッチとを備え、
    前記油圧制御装置は、前記機関出力軸からの機械的動力を受けて作動可能なオイルポンプを含み、且つ、前記常閉クラッチに油圧を供給可能であり、
    前記変速機構は、前記常閉クラッチからの機械的動力を、回転速度を変化させて前記駆動輪に向けて伝達し、変速比を連続的に変化させることが可能な連続可変変速機構であり、
    前記常閉クラッチは、前記機関出力軸と前記駆動輪との間において前記変速機構に伝達される急激な動力伝達を遮断可能であり、且つ、前記油圧制御装置から油圧が供給されていない場合は付勢部材による付勢力で係合状態になり、前記油圧制御装置から油圧が供給された場合は解放状態になり、
    前記常閉クラッチは、係合状態において伝達可能なトルクの最大値が、前記変速機構が伝達可能なトルクの最大値に比べて低くなるよう構成されていることを特徴とする車両。
  6. 請求項5に記載の車両において、
    前記変速機構は、前記常閉クラッチと前記駆動輪との間に配置されている車両。
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