JP5979487B2 - ポリオレフィン系樹脂製のブロー成形壜体 - Google Patents
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また、内容液の殺菌を必要とする用途では、90℃前後の温度で内容液を壜体に充填し、キャップをして密封後冷却する、所謂、高温充填と呼ばれる方法が採用されている。
この充填方法では壜体内がかなりの減圧状態となり、側周壁が局部的に陥没変形すると云う問題がある。特に、省資源あるいはコスト低減の観点から壜体を軽量化すると、その分、側周壁が薄肉化し、上記のような減圧時における局部的な変形の問題が顕著に発生するようになる。
たとえば特許文献1には胴部の側周壁に6ケの縦長矩形状の減圧吸収パネルを周方向に並列配設した壜体についての記載がある。
また特許文献2には、複数のパネルを周方向に稜線部を介して連結させて胴部の周壁を形成した正多角形筒状のペットボトルが記載されており、隣接するパネルの連結部である稜線部により壜体の柱部としての機能が発揮され、各パネルが左右に位置する稜線部を基端部として陥没状に変形し、減圧吸収機能が発揮されるとしている。
ダイレクトブロー成形によれば、周壁の全体に亘って積層構造を有する壜体の成形を比較的容易に成形することが可能である。
たとえば、高いガスバリア性を有するエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂を中間層としてPE樹脂製の外層と内層の間にサンドイッチ状に積層することにより、ペットボトルに比較して高いガスバリア性を有する壜体を提供することができる。また遮光性を有する層を周壁全体に積層することにより、高いレベルの遮光性を実現することが可能となる。
このため、例えば前述した引用文献2に記載されるように、正多角形筒状の壜体を成形し、隣接するパネルの連結部である稜線部により壜体の柱部としての機能を発揮させ、この稜線部を基端としたパネルの陥没変形により減圧吸収機能を発揮させようとしても、柱部が局部的に座屈状に陥没変形してしまうと云う問題がある。
すなわち、PO系ブローボトルで減圧吸収機能を発揮させるにあたって、ペットボトルと同様な側周壁の形状設計では対応が難しく、PO系ブローボトルの特性を考慮した減圧吸収機能に係る形状設計を要する。
ポリオレフィン系樹脂製のブロー成形壜体において、
胴部の側周壁が、前面側から側面にかけての部分を周方向に沿って湾曲状に形成する湾曲状部分と、背面側を平坦状に形成する平坦部分と、湾曲状部分と平坦部分を連結する角部から構成され、
平坦部分の外周縁の内側に、この外周縁に沿って環状の溝リブが形成され、
平坦部分の左右に位置する一対の溝リブの底部から角部に至る端部領域の壁厚の平均値が、一対の溝リブの間に位置する中央領域の壁厚の平均値に比較して薄肉である、と云うものである。
ここで、ダイレクトブロー成形では、押出成形した円筒状の溶融状態にあるパリソンの端部をピンチ状にシールした状態で、このパリソンをブローエアにより膨張させて割金型のキャビティ形状に沿って賦形し、壜体を成形する。
割金型の壜体の背面側の平坦部分を形成する平坦キャビティ面での賦形の様子をみると、膨張するパリソンの周壁を形成する溶融樹脂は、まず平坦キャビティ面の左右中央位置に当接し、この当接が、左右方向に壜体の角部を形成するコーナー面に向かって進行し、壜体の賦形が進展していく。
ここで、平坦キャビティ面の左右端部近傍には高さ方向の溝リブを形成するための突条が配設されており、この突条を利用して賦形の進展の堰としての機能を発揮させることができ、これによりコーナー面方向への溶融樹脂の、所謂、肉周りを少なくすることができ、溝リブの底部から角部に至る端部領域の壁厚を薄肉化することができる。
但し、溝リブの配設位置を角部に近づけすぎると、平坦部分の陥没変形の起点となる端部領域を十分に確保できなくなり減圧吸収機能の向上効果が低減するため、全体的なバランスを考慮すると、胴部の中央高さ位置における平坦部分の左右に位置する一対の溝リブの底部間の寸法を、左右の角部間の寸法の60%〜90%の範囲とするのが好ましい。
端部領域の薄肉化は、溝リブの溝深さ等の形状やその配設位置によりブロー成形時に可能であるが、薄肉化の程度の下限は、減圧度が上昇した際における当該端部領域での座屈変形の発生し易さを考慮して決めることができる。
結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン/エチレンランダム共重合体、結晶性プロピレン/α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンと、エチレン及び/又はα−オレフィンとの結晶性ブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂、さらにはエチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン成分を主体とした共重合体、またポリオレフィン樹脂成分を主体としたブレンド樹脂が含まれる。
また、本発明においてポリオレフィン系樹脂製ブロー成形壜体は、上記したポリオレフィン樹脂からなる層を主体として、たとえばEVOH樹脂やナイロン樹脂等のポリオレフィン系樹脂とは異なる合成樹脂製の層を積層した積層体とすることもできる。
すなわち、パリソンのブロー成形に係る、所謂、溶融樹脂の肉周りのメカニズムを利用し、壜体の裏面側を形成する平坦部分の溝リブの底部から角部に至る端部領域の壁厚を薄肉化することができ、
壜体の内部の減圧度が上昇した際には、左右に位置する角部を基端、すなわち固定点として上記のように薄肉に形成された端部領域が可動域として壜体の内部方向に変形し、すなわち端部領域を起点として平坦部分全体を陥没状に変形させることが可能となり、十分に大きな減圧吸収機能を発揮させることができる。
図1〜図5は本発明のブロー成形壜体の一実施例を示すもので、図1は正面図、図2は側面図、図3は背面図、図4(a)は平面図、図4(b)は底面図、図5(a)は図1中のA−A線に沿った胴部4の中央高さ位置における平断面図、図5(b)はその拡大図である。
この壜体1はポリプロピレン樹脂製のダイレクトブロー成形品(以下、単にブロー成形品と記載する。)であり、口筒部2、肩部3、胴部4、底部5を有し、全高さが97mm、図1の正面図における胴部4の最大横幅が69mm、重量が15g、容量が100mlの比較的小型のものである。
また、底部5の底面壁にはブロー成形中におけるパリソンのピンチオフによるシール部6が形成されている。
また、図3に示されるように平坦部分12の外周縁12pの内側近傍に、この外周縁12pの形状に沿って側周壁を屈曲させて環状に溝リブ13を形成している。
なお、溝リブ13の溝深さは2mmである。
また、左右に位置する一対の溝リブ13の底部13bから角部14に至る端部領域Reの壁厚の平均値は0.43mm、溝リブ13の間に位置する中央領域Rcの壁厚の平均値は1.2mmで、端部領域Reの壁厚は中央領域Rcの壁厚の36%で、左右の端部領域Reは薄肉に形成されている。(図3、図5(b)参照)
割金型31のキャビティ面32の図中、上辺には平坦部分12を形成する平坦キャビティ面32aが配設され、この平坦キャビティ面32aの左右端部には角部14を形成するコーナー部34、またこのコーナー部34の近傍には溝リブ13を形成するための突条33が配設されている。
ここで、パリソンPを形成する溶融樹脂の平坦キャビティ面32aへの当接が左右に進展する際には、突条33により樹脂の変形を留める、堰としての機能が発揮され(変形態様P2参照)、突条33の頂部から基部、そしてコーナー部34への賦形の進行、所謂、肉周りを少なくすることができ、その結果、図5(b)に示したように端部領域Reを薄肉化することができる。
図5(b)に示すように、左右に位置する角部14を基端、すなわち固定点として上記のように薄肉に形成された平坦部分12の端部領域Reが可動域として、
図中、二点鎖線で示したように壜体1の内部方向に変形し、すなわち端部領域Reを起点として平坦部分12全体を、図中、黒矢印で示したように陥没状に変形させることができ、十分に大きな減圧吸収機能を発揮させることが可能となる。
なお、このように胴部4の背面4b側の平坦部分12で十分に大きな減圧吸収機能を発揮させることができると、胴部4の前面4f側から側面4sにかけての湾曲状部分11は壜体1内の減圧度の上昇により変形する心配がなく、この広い面積を有する湾曲状部分11をラベルの貼付面として活用することができる。
横軸を壜体内の減圧度(kPa)、縦軸を体積変化量(吸収容量)(ml)としたグラフであり、実施例1、2の壜体の測定結果をT1、T2の線で示し、比較例1、2の壜体の測定結果をC1、C2の線で示している。
なお、図7は比較例の壜体の図1中のA−A線に沿った平断面図である。
・実施例1の15gの壜体;88.9kPa、14.1ml
・実施例2の13gの壜体;66.1kPa、11.7ml
・比較例1の15gの壜体;57.9kPa、9.9ml
・比較例2の13gの壜体;31.0kPa、6.6ml
一方、比較例1、2の壜体において不正変形が発生するPc1、Pc2で示した点では、図7中、白抜き矢印示した位置、すなわち壜体1の側面4sで、二点鎖線で示したように局部的な陥没状の変形が発生する。
また、図1に示した形状の壜体での85℃の水を充填する高温充填試験によれば、実用上必要とされる減圧吸収量は7ml程度であり、上記解析結果によれば、実施例1の15gの壜体は勿論のこと、実施例2の13gの壜体でも実用上、十分な減圧吸収機能が発揮されることが判った。
一方、溝リブ13のない比較例1の15gの壜体では、上記条件での使用は可能であるが、さらに厳しい条件下での使用は難しいものと推定され、さらに比較例2の解析結果が6.6mlであることから分かるように壜体の軽量化は困難である。
たとえば、実施例では容量が100mlのPP樹脂製のブロー成形壜体について説明したが、さらに大きな容量の壜体とすることもできる。
また壜体の形状についても、背面側を平坦状に形成する平坦部分とする等の範疇のなかで、外観デザイン等を考慮してさまざまなバリエーションのものとすることが可能である。
さらに、本発明のブロー成形壜体は、ポリオレフィン樹脂からなる層を主体として、たとえばEVOH樹脂やナイロン樹脂等のポリオレフィン系樹脂とは異なる合成樹脂製の層を積層した積層体とすることもできる。
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
4b;背面
4f;前面
4s;側面
5 ;底部
6 ;シール部
11;湾曲状部分
12;平坦部分
12p;外周縁
13;溝リブ
13b;底部
14;角部
La、Lb;寸法
Rc;中央領域
Re;端部領域
31;割金型
32;キャビティ面
32a;平坦キャビティ面
33;突条
34;コーナー部
P ;パリソン
P1、P2;変形態様
Claims (3)
- 胴部(4)の側周壁が、前面(4f)側から側面(4s)にかけての部分を周方向に沿って湾曲状に形成する湾曲状部分(11)と、背面(4b)側を平坦状に形成する平坦部分(12)と、前記湾曲状部分(11)と平坦部分(12)を連結する角部(14)から構成され、前記平坦部分(12)の外周縁(12p)の内側に該外周縁(12p)に沿って環状の溝リブ(13)が形成され、前記平坦部分(12)の左右に位置する一対の溝リブ(13)の底部(13b)から角部(14)に至る端部領域(Re)の壁厚の平均値が、前記一対の溝リブ(13)の間に位置する中央領域(Rc)の壁厚の平均値に比較して薄肉であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂製のブロー成形壜体。
- 胴部(4)の中央高さ位置における平坦部分(12)の左右に位置する一対の溝リブ(13)の底部(13b)間の寸法(Lb)が、左右の角部(14)間の寸法(La)の60%〜90%の範囲である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂製のブロー成形壜体。
- 胴部(4)の中央高さ位置における端部領域(Re)の壁厚の平均値が、中央領域(Rc)の壁厚の平均値の50%以下である請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂製のブロー成形壜体。
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