JP5979038B2 - 固定金具及び壁面材の固定構造 - Google Patents

固定金具及び壁面材の固定構造 Download PDF

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Description

本発明は、固定金具及びこの固定金具を用いた壁面材の固定構造に関する。
住宅その他の建築物に採用される高断熱型の内壁構造として、鉄骨軸組躯体の屋内側に、枠体と断熱材とを一体化した内壁パネルを取り付け、その屋内側に石こうボードや壁紙等の内壁仕上げ材を施工する構造が知られている。本出願人も、その種の内壁パネルや、内壁パネルを利用した内壁構造の施工技術を、例えば特許文献1、2等において提案し実用化している。
特許文献1、2に開示された技術は、木材からなる桟材を矩形に枠組みして木製の内壁下地枠を構成し、その屋外側に、例えばアルミニウム蒸着した樹脂フィルム等からなる防湿シートを貼設し、さらに、その屋外側に、グラスウールやロックウール等からなる繊維状の断熱材を樹脂フィルム等からなる袋体に封入したものを重ねて内壁パネルが構成されている。内壁パネルは、鉄骨軸組構造からなる躯体の屋内側に配設され、上記断熱材を軸組躯体との間に挟み込むよう配設されて、一定の断熱性能が確保される。
また、内壁パネルを固定するための固定金具として、金具本体と、この金具本体の屋外側に取り付けられたバネ部材と、金具本体の屋内側に嵌合可能とされたふかし部材と、金具本体を軸柱に止め付けるための止め付け部材と、内壁パネルにおける隣り合う縦枠材を押し付け固定するための押し付け部材とを備えた構成が開示されている。
この種の固定金具では、止め付け部材が、隣接する壁軸組における隣り合う軸柱間に挿通される。金具本体は、軸柱の屋内側の内側面にバネ部材を介して押し付けられる。この状態から金具本体が90度回転されて、止め付け部材の係止部が軸柱の屋外側に係止される。このとき、バネ部材の弾性復帰力によって止め付け部材が屋内方向に付勢され、止め付け部材の係止部が軸柱の屋外側に押し付けられ、金具本体の脱落が防止される。また、内壁パネルを壁軸組の屋内側に配設した状態で、金具本体に螺合された押し付け材の固定ボルトを締め付けることで、内壁パネルにおける隣り合う縦枠材をふかし部材に押し付け固定する。これにより、内壁パネルが固定金具を介して壁軸組の屋内側に固定される。
特開平10−237976号公報 特開2012−31611号公報
前記従来の内壁構造によって、高い断熱性能を確保した建物を構成することが可能となるが、近年では、さらに、多様な居室空間への要望に対応するため、天井高を高くしたり、壁面に大開口を設けたりする例があり、壁軸組の配設スパンを拡張させ、より一層の構造強度を要する鉄骨軸組構造とすべき場合がある。このような場合、軸柱の本数を増やし、3本又は4本の軸柱を隣接させて壁軸組を構成することが好ましく、奥行方向に複数本の軸柱が隣接して配設されることとなる。そうすると、従来よりも壁軸組に要する厚みが増加し、内壁仕上げ材を屋内側にふかし、居室面積を削減したり、あるいは軸組の屋内側に配設する断熱材等の厚みを抑えたりしなければならないという問題点があった。
また、一方で、省エネルギーに対する要請から、高い水準の断熱性能が求められるようになっており、従来にも増して施工性を向上させるとともに、スペース効率を高めつつ、構造躯体と壁面材との間に熱橋が生じるのを回避して、十分な断熱性能を発揮しうる内壁の納まり構造とすることが要望された。
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、壁軸組に対して内壁パネル等の壁面材を簡単かつ良好に固定するとともに、高い断熱性能を確保しつつ壁体内でのスペース効率を高めた固定金具及びこれを用いた壁面材の固定構造を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、軸組柱に取り付けられ、壁面材を固定する固定金具を前提とする。この固定金具に対し、軸組柱の屋内側の側面に沿って配設される帯板状の連結板部と、前記連結板部の一端縁に延設され、軸組柱の屋内側の側面に隣接する他の側面に沿って配設される係止板部と、前記連結板部の他端縁に、軸組柱の屋内側方向に延設され、壁面材との取付面を有する接合板部とを一体に設けている。そして、前記連結板部として、軸組柱の屋内側の側面における柱幅と同等以上の延設長さを備えさせ、前記係止板部には、下方に開口し、軸組柱に貫通するボルトの軸部に係止される係止溝を設けた構成としている。
このような特定事項により、固定金具は、軸組柱の屋内側の側面と壁面材の辺縁部とが重なり合わないように、壁面材を、軸組柱を含む構面内に配設することが可能となる。これにより、軸組柱が奥行方向に複数本配置される場合であっても、省スペースで壁面材を配設することが可能となり、内壁仕上げ材等をふかすことなく、軸組柱の屋内側面に断熱材の配設空間を形成し得るものとなる。
前記固定金具のより具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記固定金具として、前記連結板部を、前記係止板部に対して略L字状をなすように延設した構成とすることが好ましい。
これにより、極めて簡単な構造で、軸組柱を含む構面内に壁面材を配設することが可能となる。また、かかる固定金具によれば、例えば1本の軸組柱が単独で配置された場合や、3本の軸組柱が隣接して配置された場合などのように、軸組柱同士の隙間に係止板部を差し込んで固定しない場合であっても、軸組柱に固定金具を安定的に取り付けて使用することが可能となり、どのような納まり構造にも対応することが可能となる。
また、前記固定金具において、前記連結板部を、前記係止板部に対して複数方向に設けて第1連結板部と第2連結板部とを備えさせ、第1連結板部の他端縁及び第2連結板部の他端縁にそれぞれ接合板部を延設した構成であってもよい。
これによれば、相互に隙間を設けて配置された2本一組の軸柱に対して、固定金具の係止板部を前記隙間に嵌挿して取り付けて、一つの固定金具で複数の壁面材を各軸柱の屋内側に固定することが可能となる。
また、前記固定金具において、前記第1連結板部と前記第2連結板部とを、前記係止板部に対し略T字状をなすように延設した構成であってもよい。
これにより、固定金具を極めて簡単な構成として、少ない材料で全体を形成するとともに、簡単な加工により形成することが可能となる。
また、前記固定金具において、前記第1連結板部と前記第2連結板部とを、軸組柱に対する高さ位置が相互に異なるように延設した構成であってもよい。
これにより、第1連結板部に延設された接合板部と、第2連結板部に延設された接合板部とが異なる高さ位置となり、壁面材と接合する際の作業性が向上する。
また、前記固定金具において、前記連結板部と前記係止板部とのなす角度を鋭角となるように形成してもよい。
これにより、軸組柱の側面に固定金具が配設されたとき、連結板部と係止板部とのなす角度が押し拡げられるように作用する。そのため、配設された固定金具は、軸組柱の側面に対してがたつきを生じにくいものとなり、軸組柱に対して良好で安定的な固定状態を維持することができる。
また、前記固定金具において、さらに、壁面材が備える矩形に枠組みされた枠体に係止させる位置決め片を備えさせてもよい。
これにより、壁面材の取り付け作業を簡単に行うことが可能となり、施工性を向上させることができる。
上述した各解決手段に係る固定金具を使用した壁面材の固定構造も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、矩形に枠組みされた枠体に断熱材が取り付けられてなる壁面材を、前記固定金具を用いて、建物躯体を構成する軸組柱に固定する壁面材の固定構造を前提とする。そして、壁面材の固定構造として、軸組柱の側面を貫通させて該軸組柱にボルトが固定され、該側面に固定金具の係止板部が添設されるとともに、該係止板部の係止溝が前記ボルトの軸部に嵌入されて該固定金具が軸組柱に取り付けられ、軸組柱の屋内側の側面に沿って固定金具の連結板部が配設されるとともに、軸組柱よりも屋内側に固定金具の接合板部が配設され、軸組柱を含む構面内に壁面材が配設されて、固定金具の接合板部が壁面材の枠体の外側面に当接され、これらの接合板部と枠体とが止着され、軸組柱の屋内側の側面と、前記壁面材の枠体とが、重なり合わないように配設されて、軸組柱の屋内側に断熱材の配設空間が設けられた構成とする。
かかる壁面材の固定構造において、前記軸組柱は、相互に隙間を設けて配置された2本一組の軸柱を備え、これらの軸柱の相互間にボルトが配設され、前記固定金具の係止板部は、前記軸柱の隙間に嵌挿されて、前記ボルトの軸部に係止された構成であってもよい。
このような特定事項により、建物躯体を構成する軸組柱の屋内側を、従来構造よりも省スペースで形成することが可能となり、かつ断熱材の配設空間を設けることができる。すなわち、軸組柱に対して壁面材を簡単かつ好適に固定することができるだけでなく、壁体内でのスペース効率を高めることが可能となり、屋内側にふかして居室面積を削減したり、軸組柱の屋内側に配設する断熱材の厚みを抑えたりする必要がなくなり、高い断熱性を確保しつつ良好な納まり構造とすることが可能となる。
本発明では、軸組柱の屋内側の側面に沿って配設される帯板状の連結板部と、前記連結板部の一端縁に延設され、軸組柱の屋内側の側面に隣接する他の側面に沿って配設される係止板部と、前記連結板部の他端縁に、軸組柱の屋内側方向に延設され、壁面材との取付面を有する接合板部とを一体に有し、前記連結板部は、軸組柱の屋内側の側面における柱幅と同等以上の延設長さを有して形成し、前記係止板部には、下方に開口する係止溝を備えさせ、前記接合板部には、壁面材の辺縁部と該接合板部とを結合する止着具の挿通孔を備えさせ、軸組柱を含む構面内に壁面材を配設する構成としている。このため、軸組柱に対して内壁パネル等の壁面材を簡単かつ良好に固定することができ、壁体内でのスペース効率を高めることが可能となる。したがって、内壁仕上げ材を屋内側にふかして居室面積を削減したり、軸組の屋内側に配設する断熱材等の厚みを抑えたりするといった納まり上の制約を受けることが回避され、高い断熱性を確保した良好な壁面材の固定構造を実現することができる。
本発明の実施形態1に係る固定金具の斜視図である。 図1に示す固定金具を反対側から見た斜視図である。 前記固定金具を構成する金具本体の斜視図である。 図3に示す金具本体を反対側から見た斜視図である。 前記固定金具を用いた壁面材の固定構造の一例を示す断面図である。 前記固定金具を用いた壁面材の施工方法を示す説明図である。 前記固定金具を用いた壁面材の固定構造の他の例を示す断面図である。 本発明の実施形態2に係る固定金具の斜視図である。 図8に示す固定金具を反対側から見た斜視図である。 前記固定金具を用いた壁面材の施工方法を示す説明図である。 本発明の実施形態3に係る固定金具を示す斜視図である。 図11に示す固定金具を反対側から見た斜視図である。 本発明の実施形態4に係る固定金具を示す斜視図である。 図13に示す固定金具を反対側から見た斜視図である。 実施形態4に係る固定金具を軸組柱に取り付けた状態を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態に係る固定金具、及び固定金具を用いた壁面材の固定構造について、図面を参照しつつ説明する。
本発明において固定金具及び壁面材の固定構造は、多様な形態により実施することが可能である。以下の説明では、これらの多様な形態うちのいくつかの実施形態を例に挙げて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る固定金具1を示し、図1は固定金具1の斜視図、図2は図1の固定金具1を反対側から見た斜視図である。図3は固定金具1を構成する金具本体11を示す斜視図であり、図4は金具本体11を反対側から見た斜視図である。また、図5は固定金具1を用いた内壁パネル7の固定構造を示す断面図であり、図6は固定金具1を用いて内壁パネル7を固定する方法を示す説明図である。
固定金具1は、図5に示すように、軸組柱81に取り付けられて、壁面材としての内壁パネル7を固定するのに用いられる。
壁軸組8は、縦材としての左右一対の軸組柱81と、図示しない上弦材や下弦材を方形枠状に組み付けてなる軸組架構に、耐力ブレース等を架けわたすことよって構成されている。例示の形態では、左右一対の軸組柱81が奥行方向に2組、つまり4本の軸組柱81によって壁軸組8の縦材が組まれている。軸組柱81、上弦材、及び下弦材は、例えばリップ溝形鋼からなり、各々開放部分が構面の内側を向くように組み付けられる。複数の壁軸組8は横並びに配置されて、隣接する壁軸組8同士がボルト等によって連結されている。これら壁軸組8の屋外側には、複数の外壁材83が横並びに取り付けられる。
壁面材としての内壁パネル7は、縦枠材72及び横桟材が矩形に枠組みされた枠体71に断熱材が取り付けられてなる。枠体71は、例えば木製の角材からなり、縦枠材72においては、枠体71の内側の側面を切り欠いて溝状の切欠部73が形成されている。断熱材には、枠体71の内側に充填された発泡系断熱材74と、枠体71の屋外側に覆設された繊維系断熱材75とが含まれる。発泡系断熱材74と繊維系断熱材75との間には、防湿シート77が介装されている。内壁パネル7の屋内側には、例えば石膏ボード等からなる複数の内壁材84が横並びに取り付けられる。
図1に示すように、固定金具1は、係止板部2と、係止板部2に連設された連結板部3と、連結板部3に延設された接合板部4とを備えている。また、固定金具1は、図3、図4に示すように、係止板部2、連結板部3、及び接合板部4を、一枚の帯板状の鋼材を打ち抜き、各部を屈曲させて形成した金具本体11から構成されている。
金具本体11において、係止板部2は、軸組柱81に貫通させたボルト82の軸部に係止される係止溝21を備えている。係止溝21は、下方に開口して形成されて、ボルト82の軸部を軸方向と交差させて挿入可能とされている。例示の形態では、係止溝21は、ボルト82の軸部に対応する溝幅で、逆L字状に形成されている。
この係止板部2は、軸組柱81の奥行方向の側面に沿って配設される。係止溝21の縁部には、軸組柱81の側面に当接させるエンボス部22が設けられている。エンボス部22は、例えば金具本体11の板厚と同等の突出量をもって形成されている。
連結板部3は、係止板部2に対し、略直交するように延設されており、軸組柱81の屋内側の側面に沿って配設される。また、連結板部3は、係止板部2の端縁部から接合板部4の端縁部までを繋ぎ、その延設長さが、軸組柱81の屋内側の側面における柱幅と同等以上の長さとなるように形成されている。そのため、この帯板状の連結板部3は、軸組柱81の屋内側の側面に対して、該側面と略平行に、かつ該側面を横断する方向に配設される。
接合板部4は、連結板部3の端縁部に略直角をなすように配設され、係止板部2と略平行で反対向きに延設されている。接合板部4は、内壁パネル7の枠体71に当接させる取付面43を備える。接合板部4は、連結板部3の端縁部からの延設長さが、内壁パネル7との接合強度を保持できる程度に確保されており、係止板部2よりも短い。また、接合板部4には、内壁パネル7の枠体71と、この接合板部4とを結合するための止着具の挿通孔44が設けられている。挿通孔44は上下に離間させて2つ設けられ、一方の挿通孔44は横長孔とされ、他方の挿通孔44は丸孔とされている。
固定金具1には、内壁パネル7が備える縦枠材72の屋外側のエッジ部に係止させる位置決め片5が設けられていてもよい。例示の形態では、位置決め片5は、連結板部3の端縁部に延設されている。位置決め片5の先端部は、略直角に屈曲され、接合板部4と略平行に延設されている。位置決め片5と接合板部4とは、ともに、連結板部3に連続する一枚の帯板材の一部をなし、上方部分と下方部分とがそれぞれ折曲されて形成されている。
すなわち、金具本体11を構成する帯板材を、連結板部3の端縁部において上方側の一部を接合板部4として折曲形成し、下方側の一部を位置決め片5として折曲形成して、金具本体11の各部が設けられている。金具本体11は、このように、一枚の帯板材を折曲し、切欠き、プレス加工等することにより形成することができる。
固定金具1は、上述のように構成された左右対称形の一対の金具本体11を、図1及び図2に示すように、係止板部2を背合わせに結合することにより形成される。これにより、固定金具1は、一体とされた係止板部2に対して複数方向に連結板部3が配設された構成となる。係止板部2に対して略T字状をなすように配設された連結板部3の一方は、第1連結板部31とされて、他方は第2連結板部32とされている。
第1連結板部31の端縁部及び第2連結板部32の端縁部には、それぞれ接合板部4と位置決め片5とが、左右対称形に延設された形態となる。これらの第1連結板部31と第2連結板部32とは、隣り合って配置された一対の軸組柱81の、屋内側の側面に沿って略平行に、それぞれ配設されるものとなる。また、これら2つの接合板部4は、隣り合って配設される内壁パネル7の各枠体71にそれぞれ接合されるものとなる(図5参照)。
次に、上記構成の固定金具1を使用して、壁軸組8に内壁パネル7を固定する方法と、その固定構造について説明する。
図5に示すように、固定金具1は、隣り合わせに配置された軸組柱81同士の隙間に嵌挿されて配設される。このとき、まず、隣接する一対の軸組柱81間に形成された隙間に対して、複数の固定金具1を上下方向に間隔をあけて取り付ける。
それぞれの固定金具1の取り付けに際しては、係止板部2の係止溝21の開口が下方を向くように固定金具1を保持して、その係止板部2を屋内側から軸組柱81の隙間に嵌挿する。軸組柱81の背合わせに配設されたウェブ部には、ボルト82が貫通されてナット結合されている。固定金具1は、軸組柱81に固定されたボルト82の上方から隙間に嵌挿される。
ここで、固定金具1の係止板部2は、軸組柱81の隙間寸法よりも0.5mm〜1.0mm程度厚くなるように形成されている。すなわち、係止板部2は、エンボス部22の突出量により、軸組柱81の隙間よりも大きい厚みを有するように形成されている。
このため、固定金具1の係止板部2を、軸組柱81の隙間に配設する際、軸組柱81のボルト82に対して斜め上方から差し込み、ボルト82の軸部に係止溝21を係止させつつ、木槌等の工具を用いて槌打ちして嵌挿する。これにより、係止板部2が軸組柱81の奥行方向の側面に沿って配設されるとともに、係止溝21がボルト82の軸部に係止されて固定金具1が軸組柱81の隙間に固定される。係止板部2は、軸組柱81に挟持された状態となるので、係止溝21とボルト82の軸部との係止状態が良好に保持され、固定金具1は、がたつき等を生じることなく、壁軸組8に安定した状態で強固に固定されたものとなる。
また、この状態で、固定金具1は、第1連結板部31及び第2連結板部32が軸組柱81の屋内側の側面に沿って略平行に配設され、これらの各連結板部31、32に延設された接合板部4が、軸組柱81の屋内側の側面よりもさらに屋内側に配設される。第1連結板部31及び第2連結板部32は、それぞれ、軸組柱81の屋内側の側面における柱幅よりも長い延設長さを有して形成されているので、各接合板部4は、軸組柱81を含む構面の内側方向に配設される。軸組柱81の屋内側の側面には、帯板状の連結板部3が配設されるだけであり固定金具1を極めて省スペースで取り付けることができる。
次に、図6に示すように、内壁パネル7を順に配設し、固定金具1を介して内壁パネル7を壁軸組8に固定する。
図示するように、内壁パネル7の両端部に位置する縦枠材72の屋外側の側面を、隣り合う軸組柱81間に配設した複数の固定金具1における位置決め片5に当接させるようにして取り付ける。また、固定金具1の接合板部4に、内壁パネル7の縦枠材72の奥行方向の側面を当接させる。
この状態で、固定金具1の接合板部4と内壁パネル7の縦枠材72とを止着具により接合し、固定する。接合板部4の挿通孔44は、一方が長孔とされているので、この長孔を利用してビス等の止着具を仮止めし、内壁パネル7を適正な配置となるように調整し、その後、本締めすることにより接合固定することができる。このように固定した内壁パネル7に隣接させて、上述の手順と同様に、新たな内壁パネル7を配設し、固定金具1を介して壁軸組8に固定する。
これにより、図5に示すように、枠体71に断熱材が取り付けられてなる内壁パネル7を、複数の固定金具1を用いて、軸組柱81を含む構面内に容易に固定することができる。また、軸組柱81の屋内側の側面と、内壁パネル7の縦枠材72とは、奥行方向(図5における図中上下方向)に重なり合わずに配設され、軸組柱81、81の屋内側には、空間が設けられる。
固定金具1の第1連結板部31、第2連結板部32、及び接合板部4によって規定される軸組柱81の屋内側の当該空間は、断熱材配設空間として用いられる。この断熱材配設空間には、例えば発泡系断熱材や真空系断熱材が隙間なく充填される。これにより、軸組柱81の屋内側の側面を断熱材76で覆うことができ、軸組柱81を介した熱橋の発生を抑制することができる。内壁パネル7及び断熱材76の屋内側には、防湿シート77が介装されて、石膏ボード等の内壁材84が配設される。
このように、固定金具1を用いた内壁パネル7の固定構造とすることで、屋内側に配設された一対の軸組柱81の屋内側を、従来構造よりも省スペースで形成することができ、かつ断熱材配設空間を設けることができる。すなわち、軸組柱81に対して内壁パネル7を簡単かつ良好に固定することができるだけでなく、壁体内でのスペース効率を高めることが可能となり、内壁材84を屋内側にふかして居室面積を削減したり、軸組柱81の屋内側に配設する断熱材76の厚みを抑えたりする制約が回避され、高い断熱性を確保した良好な納まりを実現することができる。
なお、固定金具1は、4本の軸組柱81が組み付けられた軸組架構に用いられるだけではなく、例えば、3本の軸組柱が隣接して配置された場合にも好適に用いることができる。この場合、図7に示すように、壁軸組8は、縦材として屋外側に一対の軸組柱81を備え、これらの軸組柱81の一方の屋内側に重合させて、軸組柱81が単独で配設されている。各軸組柱81はリップ溝形鋼からなり、各々開放部分が構面の内側を向くように組み付けられている。
屋内側に単独で配設された軸組柱81は、ウェブ部に貫通してボルト82が設けられている。固定金具1は、ボルト82の軸部に係止板部2の係止溝21が係止され、ボルト82に螺合するナットが締め付けられて、軸組柱81の奥行方向の側面に固定される。したがって、このように固定された固定金具1を介して、図5に示した形態と同様に、複数の内壁パネル7を壁軸組8に固定することができる。
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る固定金具1を示す斜視図であり、図9は、図8の固定金具1を反対側から見た斜視図である。また、図10は、実施形態2に係る固定金具1を用いた内壁パネル7の施工方法を示す説明図である。
なお、以下で説明する実施形態2〜4に係る固定金具1は、前記実施形態1に係る固定金具1の構成と基本構成においては共通する。そこで、以下の説明では各形態における固定金具1の特徴的構成について詳述し、前記実施形態1と共通する他の構成については共通符号を用いて説明を簡略する。
固定金具1は、実施形態1と同様に、左右対称形の一対の金具本体11を係止板部2において背合わせに結合一体化して形成されている。これにより、連結板部3は、かかる係止板部2に対して複数方向に延設されており、第1連結板部31と第2連結板部32とを備えている。第1連結板部31と第2連結板部32とは、係止板部2に対して略T字状をなすように延設されている。第1連結板部31の他端縁及び第2連結板部32の他端縁には、それぞれ接合板部4が延設されている。
係止板部2の係止溝21は、図示するように、下方に開口されたストレート形状に形成されてもよい。係止溝21の縁部には、軸組柱81の側面に当接させるエンボス部22が、逆U字状に設けられている。
この形態に係る固定金具1では、位置決め片5が別体として形成され、連結板部3に接合されて一体に配設されている。図8に示すように、連結板部3と接合板部4とが連設される、固定金具1の左右両端の屈曲部には、開口部51が設けられている。位置決め片5は、金具本体11を構成する帯板状の鋼材よりも細幅の帯板部材52の両端部に形成されている。すなわち、位置決め片5を含む帯板部材52は、プレス加工により一枚の鋼板の両端を略L字状に折り曲げて形成される。帯板部材52は、固定金具1の2つの開口部51に嵌め込まれて、連結板部3にカシメ接合されて一体に取り付けられている。
このように形成されることにより、位置決め片5は、連結板部3の端縁部に略直角に配設され、係止板部2と略平行で反対方向に延設されている。固定金具1は、図10に示すように、軸組柱81に設けられたボルト82の上方から隙間に嵌挿され、壁軸組8に固定される。第1連結板部31及び第2連結板部32は、軸組柱81の屋内側の側面に沿って略平行に配設され、これらの各連結板部31、32に延設された接合板部4が、軸組柱81の屋内側の側面よりもさらに屋内側に配設される。したがって、実施形態2に係る固定金具1によっても、図5に示した形態と同様の納まりにより、内壁パネル7を壁軸組8に固定することができる。
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係る固定金具1を示す斜視図であり、図12は、図11の固定金具1を反対側から見た斜視図である。
この形態に係る固定金具1は、実施形態2に係る固定金具1に対し、開口部51と帯板部材52とを備えない点で特徴を有する。すなわち、この固定金具1は、係止板部2と、係止板部2に連設された連結板部3と、連結板部3に延設された接合板部4とを備えているのに対し、位置決め片5は設けられていない。
これにより、固定金具1は、よりシンプルな構成であることによって少ない材料で全体を構成でき、簡単な加工により形成することができる。また、固定金具1は、内壁パネル7の枠体71との取付位置を限定しないので、多様な大きさの縦枠材72に対応させることが可能となり、施工現場での留め付けの自由度が大きくなる。
(実施形態4)
図13は、実施形態4に係る固定金具1を示す斜視図であり、図14は、図13の固定金具1を反対側から見た斜視図である。また、図15は、実施形態4に係る固定金具1を軸組柱81に取り付けた状態を示す説明図である。
この形態に係る固定金具1は、係止板部2、連結板部3、接合板部4、及び位置決め片5の各構成部分が、一枚の鋼製板材から打ち抜かれ、折曲加工又はプレス加工することにより一体的に形成されている。
固定金具1の係止板部2には、ボルト82の軸部を軸方向と垂直に挿入可能な係止溝21が下方に開口して形成されている。係止溝21の縁部にはエンボス部22が逆U字状に設けられている。
係止板部2に延設された連結板部3は、係止板部2に対して複数方向に屈曲され、第1連結板部31と第2連結板部32とを備える。第1連結板部31と第2連結板部32とは、軸組柱81に対する高さ位置が相互に異なるように、帯板材が上下方向に分割されて、それぞれ延設されている。
第1連結板部31は、帯板状の係止板部2に対して上方側の略半部が、軸組柱81の屋内側の側面に沿って屈曲されている。これに対し、第2連結板部32は、係止板部2に対して下方側の略半部が、隣接する軸組柱81の屋内側の側面に沿って、第1連結板部31とは反対側に屈曲されている。
第1連結板部31の端縁部には、第1接合板部41が延設されている。第1接合板部41は、軸組柱81の屋内側方向に屈曲させて形成されている。第1接合板部41には、内壁パネル7の枠体71と接合するための止着具の挿通孔として、長孔状と丸孔状の2つの挿通孔44が設けられている。また、第1接合板部41は、第1連結板部31に対して上方に長く形成され、2つの挿通孔44が上下に均等に配置されている。
第2連結板部32の端縁部には、第2接合板部42が延設されている。第2接合板部42は、隣り合う軸組柱81の屋内側方向に屈曲させて形成されている。この第2接合板部42にも、内壁パネル7の枠体71と接合するための止着具の挿通孔として、長孔状と丸孔状の2つの挿通孔44が設けられている。第2接合板部42は、第2連結板部32に対して下方に長く形成されている。
第1連結板部31の途中部には、上方へ延設された拡張板部53が設けられている。拡張板部53は、第1連結板部31と同様に軸組柱81の屋内側の側面に沿って配設される。拡張板部53の上端部には、位置決め片5が延設されている。位置決め片5は、第1接合板部41に取り付けられる内壁パネル7の枠体71の屋外側の角部を保持しうるように、拡張板部53の上端部から略直角方向に延設され、さらにその先端部が略直角方向に屈曲されている。また、第2連結板部32の途中部にも、同様に、拡張板部53が下方へ延設されて位置決め片5が設けられている。
このように構成される固定金具1も、前記実施形態の固定金具1と同様に、係止板部2が、隣り合わせて配置された軸組柱81同士の隙間に嵌挿されて配設される。図15に示すように、固定金具1は、軸組柱81の屋内側の側面に沿って配設された第1接合板部41と第2接合板部42とが、互いに異なる高さ位置に配設されることとなる。したがって、第1接合板部41及び第2接合板部42と内壁パネル7とを接合する際の作業が極めて行いやすくなり、施工性を向上させることができる。また、かかる固定金具1においても、図5及び図7に示すような内壁パネル7の固定構造を実現することができ、壁体内でのスペース効率を高めることが可能となり、内壁材84を屋内側にふかして居室面積を削減したり、軸組柱81の屋内側に配設する断熱材76の厚みを抑えたりする制約が回避され、高い断熱性を確保することができる。
なお、本発明において、固定金具1及び壁面材の固定構造は、上記形態により構成されるに限らず、次のように構成されてもよい。すなわち、固定金具1において、連結板部3と係止板部2とのなす角度は、直角とされるに限らず、直角よりも3〜5度程度小さい、鋭角となるように形成されてもよい。これにより、いずれの形態に係る固定金具1においても、軸組柱81の側面に固定金具1が配設されたとき、連結板部3と係止板部2とのなす角度が押し拡げられるように作用する。そのため、固定金具1は、より一層、緩みやがたつきを生じにくいものとされ、軸組柱81に対して良好に安定的に固定される。
したがって、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明に係る固定金具1によって壁軸組8に固定する壁面材としては、内壁パネル7に限定されず、開口部用の枠材や各種の下地材等であっても良い。また、固定金具1として、金具本体11を単独で用いることも可能であり、軸組柱81の一方側に壁面材を固定するのに用いてもよい。
本発明は、壁軸組に対して壁面材を簡単かつ良好に固定する固定金具及び固定構造として好適に利用可能である。
1 固定金具
11 金具本体
2 係止板部
21 係止溝
22 エンボス部
3 連結板部
31 第1連結板部
32 第2連結板部
4 接合板部
43 取付面
44 挿通孔
5 位置決め片
7 内壁パネル
71 枠体
72 縦枠材
76 断熱材
8 壁軸組
81 軸組柱
82 ボルト
83 外壁材
84 内壁材

Claims (9)

  1. 軸組柱に取り付けられ、壁面材を固定する固定金具であって、
    軸組柱の屋内側の側面に沿って配設される帯板状の連結板部と、
    前記連結板部の一端縁に延設され、軸組柱の屋内側の側面に隣接する他の側面に沿って配設される係止板部と、
    前記連結板部の他端縁に、軸組柱の屋内側方向に延設され、壁面材との取付面を有する接合板部とを一体に有し、
    前記連結板部は、軸組柱の屋内側の側面における柱幅と同等以上の延設長さを有して形成され、
    前記係止板部は、下方に開口し、軸組柱に貫通するボルトの軸部に係止される係止溝を備えることを特徴とする固定金具。
  2. 請求項1に記載の固定金具において、
    前記連結板部は、前記係止板部に対して略L字状をなすように延設されたことを特徴とする固定金具。
  3. 請求項1に記載の固定金具において、
    前記連結板部は、前記係止板部に対して複数方向に設けられて第1連結板部と第2連結板部とを備えており、第1連結板部の他端縁及び第2連結板部の他端縁にそれぞれ接合板部が延設されたことを特徴とする固定金具。
  4. 請求項3に記載の固定金具において、
    前記第1連結板部と前記第2連結板部とは、前記係止板部に対し略T字状をなすように延設されたことを特徴とする固定金具。
  5. 請求項3に記載の固定金具において、
    前記第1連結板部と前記第2連結板部とは、軸組柱に対する高さ位置を相互に異ならせて延設されたことを特徴とする固定金具。
  6. 請求項2〜5のいずれか一つの請求項に記載の固定金具において、
    前記連結板部と前記係止板部とのなす角度が鋭角となるように形成されたことを特徴とする固定金具。
  7. 請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の固定金具において、
    壁面材が備える矩形に枠組みされた枠体に係止させる位置決め片を有することを特徴とする固定金具。
  8. 矩形に枠組みされた枠体に断熱材が取り付けられてなる壁面材を、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の固定金具を用いて、建物躯体を構成する軸組柱に固定する壁面材の固定構造であって、
    軸組柱の側面を貫通させて該軸組柱にボルトが固定され、該側面に固定金具の係止板部が添設されるとともに、該係止板部の係止溝が前記ボルトの軸部に嵌入されて該固定金具が軸組柱に取り付けられ、
    軸組柱の屋内側の側面に沿って固定金具の連結板部が配設されるとともに、軸組柱よりも屋内側に固定金具の接合板部が配設され、
    軸組柱を含む構面内に壁面材が配設されて、固定金具の接合板部が壁面材の枠体の外側面に当接され、これらの接合板部と枠体とが止着され、
    軸組柱の屋内側の側面と、前記壁面材の枠体とが、重なり合わないように配設されて、軸組柱の屋内側に断熱材の配設空間が設けられたことを特徴とする壁面材の固定構造。
  9. 請求項8に記載の壁面材の固定構造において、
    前記軸組柱は、相互に隙間を設けて配置された2本一組の軸柱を備え、これらの軸柱の相互間にボルトが配設され、
    前記固定金具の係止板部は、前記軸柱の隙間に嵌挿されて、前記ボルトの軸部に係止されたことを特徴とする壁面材の固定構造。
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