JP5978159B2 - ディスクブレーキ - Google Patents

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Description

本発明は、ディスクブレーキに関する。
ディスクブレーキには、摩擦パッドのクサビ効果によるディスク回入側の偏摩耗を抑制するべく、ピストンの摩擦パッド対向面のディスク回入側位置に切欠を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−140227号公報
上記のディスクブレーキでは、摩擦パッドが新品の状態では、摩擦パッド回入側の偏摩耗を抑制できるが、摩擦パッドが摩耗してクサビ効果が低減してしまうと、摩擦パッド回出側に偏摩耗が発生するという課題があった。
したがって、本発明は、ライニングの偏摩耗を抑制することができるディスクブレーキの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るディスクブレーキは、ピストンに摩擦パッドとの対向面に該摩擦パッドを押圧しない非押圧部位を形成し、該ピストンがシリンダに対して前記摩擦パッドの摩耗に応じて一方向に回動するように構成した。
本発明に係るディスクブレーキによれば、ライニングの偏摩耗を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係るディスクブレーキを示す平面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキを示す一部を破断した正面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの新品押圧状態を示す側断面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの限度押圧状態を示す側断面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの新品押圧状態でのピストンを示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のX1−X1断面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの限度押圧状態でのピストンを示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のX2−X2断面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの新品押圧状態での取付部材および摩擦パッドに対するピストンを透過状態で示す背面図である。 本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの限度押圧状態での取付部材および摩擦パッドに対するピストンを透過状態で示す背面図である。
本発明の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。図1〜図4に示す本実施形態に係るディスクブレーキ10は、自動車等の車両制動用のもので、取付部材11と、一対の摩擦パッド12,13と、キャリパ14とを備えている。
図1および図2に示すように、取付部材11は、制動対象となる図示略の車輪とともに回転するディスク15の径方向の外周側を跨ぐように配置されるもので、この状態で車両の非回転部に固定される。一対の摩擦パッド12,13は、ディスク15の両面に対向配置された状態でディスク15の軸線方向に移動可能となるように取付部材11に支持されている。キャリパ14は、ディスク15の径方向の外周側を跨いだ状態でディスク15の軸線方向に移動可能となるように取付部材11に支持されている。なお、以下においては、ディスク15の径方向をディスク径方向と称し、ディスク15の軸線方向をディスク軸方向と称し、ディスク15の回転方向(周方向)をディスク回転方向と称す。また、車両の前進時におけるディスク回転方向Rの入口側をディスク回入側と称し、車両の前進時におけるディスク回転方向Rの出口側をディスク回出側と称す。
図3に示すように、一対の摩擦パッド12,13は、裏板17と、この裏板17に貼付されたライニング18と、裏板17のライニング18とは反対側に装着されたシム19とを有している。一対の摩擦パッド12,13は、いずれもディスク15にライニング18を対向させた状態でディスク15とは反対側の裏板17において取付部材11に支持されている。そして、この状態で、シム19を介して裏板17がディスク15とは反対側からキャリパ14により押圧されることによってライニング18がディスク15に接触する。
キャリパ14は、ディスク15を跨いだ状態で、図1に示すディスク回転方向両側の摺動案内部22,22を介して取付部材11に支持されるキャリパボディ20と、図3に示すようにキャリパボディ20内に保持されてディスク15の一面側に対向するように配置されるピストン21とを有している。キャリパ14は、図1に示す摺動案内部22,22によって取付部材11に対してディスク軸方向に摺動する、いわゆるフローティング型のキャリパとなっている。
図3に示すように、キャリパボディ20は、ディスク15の一方の面側に対向配置されてピストン21を移動可能に保持するシリンダ部25と、ディスク15の径方向外側を跨ぐブリッジ部26と、ディスク15の他方の面側に対向配置される爪部27とを有する一体成形品となっている。言い換えれば、キャリパ14は、ピストン21をシリンダ部25内に移動可能に配置している。
シリンダ部25は、ディスク軸方向に沿う筒部30と、筒部30のディスク15とは反対側を閉塞する底部31とを有しており、その結果、内側にディスク15側に開口するようにディスク軸方向に沿うボア32が一つ形成された有底筒状をなしている。シリンダ部25の底部31には、爪部27とは反対側に突出するボス部35が中央近傍に形成されており、このボス部35には、爪部27とは反対側にさらに突出する係止突起36が形成されている。
シリンダ部25の底部31には、ボス部35の位置に、ボア32と同軸をなして貫通孔38が形成されている。貫通孔38は両端に中間部分よりも大径の座ぐりが形成されている。
貫通孔38には、ボルト部材44がユニオンボルト45によってブレーキ配管46と共締めされている。ボルト部材44は、軸方向の一端側から順に、貫通孔38の中間部分に嵌合する嵌合軸部48と、嵌合軸部48より大径で貫通孔38のボア32側の座ぐりに嵌合するフランジ部49と、嵌合軸部48より小径の中間軸部50と、中間軸部50より大径のオネジ51が形成されたネジ軸部52とを有している。ボルト部材44には、その中心部分に、嵌合軸部48側の端面からネジ穴54が形成されている。また、ボルト部材44には、ネジ穴54の底部位置にネジ穴54と同軸をなして通路穴55が形成されており、この通路穴55と直交してフランジ部49の位置に開口する通路穴56が形成されている。
ボルト部材44の嵌合軸部48には外周面にシールリング60が装着されており、このシールリング60がフランジ部49と貫通孔38のボア32側の座ぐりの底面とで挟持されている。また、ボルト部材44の嵌合軸部48の外側には、シールリング61、ブレーキ配管46のプラグ62、シールリング63がこの順に配置され、これらを通って、ユニオンボルト45がボルト部材44のネジ穴54に螺合されることで、これらがユニオンボルト45の頭部とボルト部材44とに挟持されている。このようにして、ボルト部材44とブレーキ配管46とがキャリパボディ20に共締めされ、その結果、ボルト部材44がキャリパボディ20に回転不能に固定される。
この状態で、ブレーキ配管46内の通路65が、ユニオンボルト45に形成された通路66とボルト部材44のネジ穴54と通路穴55と通路穴56とを介してボア32内に連通する。シールリング60は、嵌合軸部48と貫通孔38との隙間を密封し、シールリング61はボルト部材44とブレーキ配管46のプラグ62との隙間を密封し、シールリング63はプラグ62とユニオンボルト45との隙間を密封する。なお、シリンダ部25の底部31の係止突起36は、ブレーキ配管46のプラグ62を係止してその回転を規制する。
ボルト部材44は、上記のようにシリンダ部25の底部31に取り付けられた状態で、ネジ軸部52が、底部31からボア32内に突出し、ボア32内においてボア32と同軸に配置されることになる。ボア32の内周面には、底部31とは反対側に、径方向外方に凹む円環状の装着溝69が形成されており、この装着溝69の底部31側の近傍位置に、径方向外方に凹む円環状のシール溝70が形成されている。
ピストン21は、筒部74と、筒部74の軸方向一側を閉塞する底部75と、底部75の径方向の中央から軸方向に筒部74と同側に延出する延出部76とを有する一体成形品である。底部75および延出部76には、その中心位置にネジ穴77が、底部75側から延出部76の途中位置まで形成されている。ピストン21は、底部75をディスク15とは反対側に配置した状態で、延出部76のメネジ78をボルト部材44のオネジ51に螺合させながら、筒部74においてシリンダ部25のボア32内に嵌合される。よって、ピストン21は、ボルト部材44の案内でシリンダ部25に対し周方向に回転しながらディスク軸方向に移動する。オネジ51とメネジ78とが、シリンダ部25に対しピストン21を、回転しつつディスク軸方向に摺動するように連結する螺合部79となっている。ピストン21の底部75とは反対側の外周部には、径方向内方に凹む円環状の装着溝80が形成されている。
ここで、螺合部79を構成するボルト部材44のオネジ51とピストン21のメネジ78とは、リードが長く軸方向にクリアランスがあるスクリューネジとなっている。つまり、ピストン21は、その移動量がクリアランスの範囲内であれば、キャリパボディ20に固定されたボルト部材44に対して無回転で軸方向に移動可能となっている。また、ピストン21の移動量がライニング18の摩耗によって上記クリアランスを超えると、ピストン21は、ボルト部材44に対し回転しながら軸方向に移動することになるが、軸方向の移動量に対する回転量は比較的小さくなっている。
ピストン21は、螺合部79の螺旋の方向から、ボア32からの突出量が大きくなるにしたがってシリンダ部25に対して一方向に回動することになる。図4に示すピストン21の突出進行回転方向rであるこの一方向は、図2に示す車両の前進時におけるディスク15の回転方向Rと同様の方向となっている。ピストン21は、図3から図4に示すように、ディスク15との間にある摩擦パッド12の摩耗が進行し、その厚さが減るにしたがってボア32からの突出量が大きくなる。このため、ピストン21は、シリンダ部25に対して摩擦パッド12の摩耗に応じて回動することになり、摩耗の進行が進むにしたがって、摩擦パッド12の新品状態時である初期状態からの回転量がだんだんと大きくなるように上記した突出進行回転方向rに回動する。
シリンダ部25には、そのシール溝70にピストンシール81が装着されている。このピストンシール81は、シリンダ部25のボア32とピストン21との隙間をシールする。また、シリンダ部25には、その装着溝69に伸縮可能なブーツ82の一端が装着されており、このブーツ82の他端はピストン21の装着溝80に装着されている。ブーツ82は、ピストン21とシリンダ部25との隙間への異物の混入を防ぐ。
ピストン21のディスク軸方向のディスク15側の端部には、切欠部85が形成されている。これにより、底部75のディスク15側の端部には、切欠部85と、切欠部85よりもディスク軸方向のディスク15側に突出する突出部86とが形成されている。
切欠部85は、図5(b)および図6(b)に示すようにディスク軸方向から見て円弧状をなし図5(a),(b)および図6(a),(b)に示すようにディスク軸方向の位置が一定となる段差面87と、段差面87の周方向の両端部からディスク軸方向に沿って立ち上がる壁面88,88とを含んでおり、よって、切欠部85もディスク軸方向から見て円弧状をなしている。また、突出部86は、図5(b)および図6(b)に示すようにディスク軸方向から見て円弧状をなし図5(a),(b)および図6(a),(b)に示すようにディスク軸方向の位置が一定となる先端面89と、先端面89の周方向の両端部からディスク軸方向に沿って下がる上記壁面88,88とを含んでいる。よって、突出部86もディスク軸方向から見て円弧状をなしている。切欠部85の段差面87および突出部86の先端面89は、ピストン21とディスク15との間の摩擦パッド12に対向する対向面90となっており、この対向面90は、ディスク軸方向から見て円形をなしている。
図7および図8に示すように、ピストン21は、先端面89を含む突出部86のうち、ディスク軸方向に見てインナ側の摩擦パッド12のシム19に重なり、これに当接して摩擦パッド12を押圧する部分が押圧部位A(図7における網掛け部分)となる。また、ピストン21は、段差面87を含む切欠部85のうちディスク軸方向に見てインナ側の摩擦パッド12のシム19に重なる部分がシム19に当接せず摩擦パッド12を押圧しない非押圧部位Bとなる。なお、図8に示すように、切欠部85のうちディスク軸方向に見てインナ側の摩擦パッド12のシム19に重ならない部分はパッド外部位Cとなり、突出部86のうち、ディスク軸方向に見てインナ側の摩擦パッド12のシム19に重ならず、これに当接しない部分は、パッド外部位Dとなる。切欠部85の中心角は、突出部86の中心角よりも小さくなっており、具体的には略直角となっている。
図3に示すように、ブリッジ部26は、ディスク15を跨ぐためにシリンダ部25のディスク径方向外側からディスク軸方向へ延びて形成されている。爪部27は、ブリッジ部26のシリンダ部25とは反対側からディスク径方向内方に延出してディスク15の他方の面側に対向するようになっている。つまり、爪部27は、ディスク15に対してピストン21の反対側に設けられている。
キャリパ14は、図示せぬマスタシリンダや液圧制御ユニットからブレーキ配管46を介してボア32内に導入されるブレーキ液によってピストン21をディスク15側に前進させ、このピストン21で一対の摩擦パッド12,13のうちのインナ側の摩擦パッド12のシム19を押圧してこの摩擦パッド12のライニング18をディスク15に接触させる。また、キャリパ14は、ピストン21の押圧反力で取付部材11に対してキャリパボディ20を、そのシリンダ部25がディスク15から離れる方向に移動させて、爪部27で一対の摩擦パッド12,13のうちのアウタ側の摩擦パッド12のシム19を押圧してこの摩擦パッド12のライニング18をディスク15に接触させる。このようにして、ピストン21と爪部27とで両側の摩擦パッド12,13を挟持しディスク15に向かって押圧してディスク15に摩擦抵抗を発生させ、制動力を発生させる。
ピストン21は、そのメネジ78において、シリンダ部25に固定されたボルト部材44のオネジ51に螺合しているため、シリンダ部25に対するディスク軸方向の位置に応じて回転位置が決められる。ピストン21は、図3に示すように新品の摩擦パッド12をディスク15へ押圧する図5,図7にも示す新品押圧状態から、図4に示すように使用限度まで摩耗した摩擦パッド12をディスク15へ押圧する図6,図8にも示す限度押圧状態まで、切欠部85を常にディスク回入側に配置し、よって、非押圧部位Bを常にディスク回入側に配置するようになっている。
より詳しくは、新品押圧状態では、図7に示すように、ピストン21は、ディスク軸方向に見て切欠部85の全体が摩擦パッド12のシム19と重なり、摩擦パッド12を押圧しない非押圧部位Bがディスク回入側にて最大面積となる。言い換えれば、ピストン21は、突出部86のシム19に重なる部分つまりシム19に当接する押圧部位Aが、ディスク回入側にて最大面積切り欠かれた状態となる。そして、この状態から、図8に示す限度押圧状態に近づくほど、ピストン21は、ディスク軸方向に見て切欠部85の一部が摩擦パッド12のシム19よりもディスク径方向の外側に移動し、摩擦パッド12を押圧しない非押圧部位Bがディスク回入側にてディスク径方向の外側に移動してその面積を減らすようになっている。言い換えれば、新品押圧状態から限度押圧状態に近づくほど、ピストン21は、突出部86のシム19に重なる押圧部位Aの面積が、摩擦パッド12のロータ径方向内側にてディスク回入側に増大するようになっている。
ここで、摩擦パッド12は、そのディスク15側のライニング18がディスク15から回転方向の力を受け、ディスク15とは反対側の裏板17が取付部材11のトルク受け部位から上記とは逆向きの反力を受けることになる。このため、摩擦パッド12には、ディスク回入側がディスク15に近づきディスク回出側がディスク15から離れる方向のモーメントを発生する、いわゆるクサビ効果が生じる。このクサビ効果で、摩擦パッド12には、ディスク回入側がディスク回出側よりも大きな力でディスク15に押し付けられることになり、その結果、ライニング18のディスク回入側がディスク回出側よりも摩耗量が多くなる、ディスク回転方向における偏摩耗を生じてしまう可能性がある。
上記した特許文献1では、この偏摩耗を防止するため、摩擦パッドの裏金のディスク回入側に凹部を設けてピストンのディスク回入側の押圧力を下げるようにしている。しかしながら、摩擦パッドのライニングの摩耗が進むと、ディスクから力を受ける位置と反力を受ける位置との間隔が短くなり、クサビ効果によるモーメントは、減少することになる。その結果、摩擦パッドのディスク回入側の押し付け力とディスク回出側の押し付け力との差が小さくなる。よって、特許文献1の構造を採用すると、摩擦パッドのライニングの摩耗が進んだ場合に、逆に、ディスク回入側の押圧力が低くなり過ぎて、ディスク回出側がディスク回入側よりも摩耗量が多くなる、ディスク回転方向における偏摩耗を生じてしまう可能性がある。このような偏摩耗を生じても、摩擦パッドの面圧分布を悪化させ、ブレーキ鳴きの一因となる可能性がある。
これに対して、本実施形態のディスクブレーキ10によれば、ピストン21の摩擦パッド12との対向面90に摩擦パッド12を押圧しない切欠部85による非押圧部位Bが形成され、ピストン21が、シリンダ部25に対し、摩擦パッド12の摩耗に応じて突出進行回転方向rに回動して非押圧部位Bを回動させる。具体的には、クサビ効果によるモーメントが大きい新品押圧状態では、ピストン21の切欠部85による摩擦パッド12を押圧しない非押圧部位Bがディスク回入側にて最大面積となってディスク回入側の押圧力を低くする。また、この状態から、限度押圧状態に近づくほど、ピストン21の切欠部85による非押圧部位Bがディスク回入側にてその面積を減らし、それに伴って、シム19に重なる突出部86つまり押圧部位Aの面積が、ディスク回入側にて増えるようになり、ディスク回入側の押圧力を徐々に高くする。これにより、摩擦パッド12のライニング18の摩耗が進んだ場合に、ディスク回入側の押圧力が低くなり過ぎることを抑制する。これにより、ディスク回出側がディスク回入側よりも摩耗量が多くなる、ディスク回転方向における偏摩耗の発生を抑制することができる。したがって、ライニング18の偏摩耗を良好に抑制できる。
ディスク15は、ディスクブレーキの非制動時に、その中心側よりも外周側が大きくディスク軸方向に振動する、いわゆる面ブレが生じることが知られている。このような面ブレが生じている状態でディスクブレーキによる制動が行われると、摩擦パッドのディスク径方向内方側よりも外方側が多くディスクに当接することになり、制動を繰り返すことで、摩擦パッドのディスク径方向外方側が内方側よりも摩耗量が多くなる、ディスク径方向の偏摩耗が生じることがある。
本実施形態のディスクブレーキ10では、新品押圧状態では、ピストン21の切欠部85による摩擦パッド12を押圧する押圧部位Aがディスク径方向外方部位で大きくなっており、ディスク径方向外方部位の押圧力を高い状態としている。そして、この状態から、限度押圧状態に近づくほど、ピストン21の切欠部85による非押圧部位Bがディスク径方向外方部位の面積を減らし、それに伴って、シム19に重なる突出部86つまり押圧部位Aの面積が、ディスク径方向外方部位にて減るようになり、ディスク回入側の押圧力を徐々に低くする。これにより、制動を繰り返すことで摩擦パッド12のライニング18の摩耗が進んだ場合に、ディスク径方向外方部位の押圧力が低くなり、ライニング18のディスク径方向外方部位おける摩耗を抑制することができる。よって、摩擦パッドのディスク径方向外方側が内方側よりも摩耗量が多くなる、ディスク径方向の偏摩耗を抑制することが可能になる。
また、ピストン21の切欠部85による摩擦パッド12を押圧しない非押圧部位Bは、常にディスク回入側に配置されているため、クサビ効果によるモーメントを増大するような押圧力を発生させることはない。したがって、ライニング18の偏摩耗を一層良好に抑制できる。
また、ピストン21の回動は、車両の前進時におけるディスク回転方向Rと同様の回転方向rとなっているため、摩擦パッド12に対して制動時のライニング18のディスク当接面の図心を中心とする回転モーメントがかかる方向と、ピストン21の回動方向とが同じになるので、ピストン21をスムーズに回動させることができる。
また、ピストン21が回転することにより、摩擦パッド12の摩耗量の増大にしたがって突出部86つまり押圧部位Aの面積をディスク径方向内側にて増大させることになるが、摩擦パッド12の制動時の仕事量は、ディスク径方向外側の方がディスク径方向内側よりも大きいため、ピストン21の押圧力がディスク径方向内側において高まることで、摩擦パッド12のディスク径方向内方の押圧力を高めることになり、ディスク径方向内外の仕事量を均等化することになって、ディスク径方向での偏摩耗をも抑制することになる。
また、螺合するボルト部材44のオネジ51とピストン21のメネジ78との間に、軸方向のクリアランスが形成されているため、オネジ51とメネジ78との噛み込みを抑制できる。また、ボア32の液圧が低下すると、クリアランスの分、オネジ51とメネジ78とに摩擦を生じる回転を伴うことなく、ピストン21が後退できることになり、摩擦パッド12のディスク15への引きずりを抑制できる。
以上においては、フローティング型のキャリパを例にとり説明したが、これに限らず、ディスクの両側にピストンを有してディスクに対して移動しない対向ピストン型のキャリパにも本発明を適用可能である。つまり、一対の摩擦パッドのうち少なくとも一方の摩擦パッドを押圧するピストンをシリンダ内に移動可能に配置するキャリパを有するディスクブレーキに本発明を適用可能である。
以上の実施形態のディスクブレーキは、ディスクの両面に配置される一対の摩擦パッドと、該一対の摩擦パッドのうち少なくとも一方の摩擦パッドを押圧するピストンをシリンダ内に移動可能に配置するキャリパと、を有し、前記ピストンは、前記一方の摩擦パッドとの対向面に該一方の摩擦パッドを押圧しない非押圧部位が形成され、前記シリンダに対して前記摩擦パッドの摩耗に応じて一方向に回動することを特徴とする。これにより、ライニングの偏摩耗を抑制することができる。
また、前記非押圧部位は、車両の前進時におけるディスク回転方向の回入側に配置されていることから、ライニングの偏摩耗を一層良好に抑制できる。
また、前記ピストンの回動は、車両の前進時におけるディスク回転方向と同様の方向となっているため、摩擦パッドに対して制動時のライニングのディスク当接面の図心を中心とする回転モーメントがかかる方向と、ピストンの回動する方向とが同じになるため、ピストンがスムーズに回動するようになっている。
10 ディスクブレーキ
12 摩擦パッド(一方の摩擦パッド)
13 摩擦パッド
14 キャリパ
15 ディスク
21 ピストン
25 シリンダ部
A 押圧部位
B 非押圧部位

Claims (3)

  1. ディスクの両面に配置される一対の摩擦パッドと、
    該一対の摩擦パッドのうち少なくとも一方の摩擦パッドを押圧するピストンをシリンダ内に移動可能に配置するキャリパと、を有し、
    前記ピストンは、前記一方の摩擦パッドとの対向面に該一方の摩擦パッドを押圧しない非押圧部位が形成され、前記シリンダに対して前記摩擦パッドの摩耗に応じて一方向に回動することを特徴とするディスクブレーキ。
  2. 前記非押圧部位は、車両の前進時におけるディスク回転方向の回入側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のディスクブレーキ。
  3. 前記ピストンの回動は、車両の前進時におけるディスク回転方向と同様の方向となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
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