JP6447443B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
特許文献2には、キャリパの爪部において、先端部の剛性が基端部の剛性より弱くされたディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキにおいて、アウタパッドの、爪部の剛性が変化する部分に対応する部分が最も強く押圧されることになる。そのため、爪部の剛性が変化する位置を調整すれば、偏摩耗を良好に抑制することができる。
特許文献3には、キャリパの爪部が、ピストンの中心に対応する部分より内径側まで伸びたディスクブレーキが記載されている。それにより、爪部の剛性不足に起因するブレーキ鳴きを抑制することができる。
特許文献4には、一対のスライドピンの一方であるメインピンがガイド穴にがたなく配設され、一対のスライドピンの他方であるサブピンがガイド穴との間に隙間を有して配設されたディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキにおいては、一対のスライドピンの間、一対のガイド穴の間の誤差を良好に吸収することができる。
ブレーキの作動時に、ピストンとインナパッドとの接触部の図心(インナパッドの面圧中心)よりキャリパの爪部とアウタパッドとの接触部の図心(アウタパッドの面圧中心)が内周側に位置することに起因して、キャリパにモーメントが作用する。キャリパの回動により、爪部が外周側へ移動させられ、それに伴ってアウタパッドが外周側へ移動させられる。それにより、アウタパッドをマウンティングに安定的に拘束させることが可能となり、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
なお、本実施形態に用いる図面において、隙間、傾き角度等は、実際より大きめに示されている。発明を明確に示すためである。
また、図1に示すように、キャリパ18の駆動部22(ディスクロータ12の内側)には、円周方向に突出した一対の突部48,48が設けられ、突部48の各々には、それぞれ、前述のスライドピン16が、回転軸線Qと平行な方向に伸びた姿勢でピンボルト49によって固定されている。
図3,4に示すように、スライドピン16の基部と、アーム部54,55のガイド穴56の開口部との間には、ゴム等の可撓性部材で作成された筒状のピンブーツ58が取り付けられている。ピンブーツ58のスライドピン16を保持する部分である保持部58bは、外径がガイド穴56の内径より大きく、締め代を有するものである。また、スライドピン16の先端部と、ガイド穴56との間にはゴムブッシュ60が設けられる。ゴムブッシュ60の外径もガイド穴56の内径より大きく、締め代を有するものである。
換言すれば、本実施例においては、キャリパ18等およびマウンティング14の諸元が、キャリパ18等の重心PGが、回転軸線Qと平行な方向において、スライドピン16の2つの支持点P1,P2の中点同士を通る線G上に位置するように設計されるのである。
本キャリパ18においては、爪部24iの各々のアウタパッド34に対向する面であるパッド対向面24fの回転軸線Qと直交する面H(ディスクロータ12の回転面と平行な面であり、以下、単に直交面Hと略称する)とのなす角度θcyが0よりわずかに大きい角度とされている。そのため、爪部24i各々の先端部においてアウタパッド34に当接することが多い。また、爪部24iの各々が、半径方向において、アウタパッド34の内周側の縁近傍まで、すなわち、ピストン30の中心(Xp)より内周側まで伸びている。そのため、爪部24iの各々のアウタパッド34と接触する先端部の図心Xciが図心Xpより内周側に位置する。
なお、製造バラツキ等に起因して、爪部24iのアウタパッド34と接触する部分は常に同じになるとは限らず、爪部24iの各々の基端部付近がアウタパッド34と接触したり、ほぼ全面において接触したりすることもある。それに対して、アウタパッド34が、内周側の部分が外周側の部分より厚いものである場合には、爪部24の先端部においてアウタパッド34と接触することが多い。本実施例においては、アウタパッド34が、内周側の部分が外周側の部分より厚みが厚いものに限定されないが、内周側の部分の方が厚いものである場合には、より確実に爪部24iの先端部においてアウタパッド34と接触することになる。
さらに、スライドピン16はガイド穴56に対して角度θpinだけ傾斜可能に取り付けられる。角度θpinは、図6(b)に示すように、ゴムブッシュ60、ゴムブーツの保持部58bを弾性変形させて傾斜可能な角度である。
そして、上述の爪部24のパッド対向面24fの傾斜角度θcy、スライドピン16の傾斜可能角度θpin、ピストン30の傾斜可能角度θpisの間には、以下の関係が成立する。
θcy<θpin・・・(1)
θpin<θpis・・・(2)
ディスクブレーキにおいて、シリンダボア22sに液圧が供給されると、ピストン30が前進させられ、インナパッド32が押付力Fpにより内側摺動面12aに押し付けられる。それにより、キャリパ18が回転軸線Qとほぼ平行な方向へ移動させられ、爪部24によりブレーキパッド34が外側摺動面12bに押付力Fcで押し付けられるのであり、ディスクブレーキが作動させられる。
キャリパ18には、図2に示すように、重心PGの回り、換言すれば、重心を含む直線Gの回りに、これら押付力Fp,Fcの反力により、下式で表されるモーメントMが作用する。
M=Fc・Lb−Fp・La・・・(3)
上式において、La、Lbは、それぞれ、重心PGと図心Xp,Xcとの間の距離である。なお、ピストン30がインナパッド32を押し付ける押付力Fpと爪部24がアウタパッド34を押し付ける力Fcは同じである(Fp=Fc)。そのため、距離Lbが距離Laより長い場合は図4のR方向のモーメントが作用し、短い場合にはR方向と逆向きのモーメント(以下、このモーメントを図心差に基づくモーメントと称する)が作用する。
アウタパッド34は、ディスクロータ12に摺接させられることにより、ディスクロータ12の回転方向に移動させられる。図5(a)、(b)に示すように、本体39の回出側の端部39cがトルク受け部54f(マウンティング14のガイド部43の開口部近傍)に当接し、接線方向の力Fsを受ける。また、トルク受け部54fの回り、厳密にいうと、トルク受け部54fと回出側の端部39cとの接触部の図心(パッドの回動中心点)Psの回りに、押付力による摩擦力Fμに起因するモーメント(以下、このモーメントを摩擦力に基づくモーメントと称する)が作用する。
アウタパッド304において、回入側の耳部306には、図心差に基づくモーメントにより、内周側へ向かう力が作用するとともに、摩擦力Fμに起因するパッドモーメントにより外周側へ向かう力が作用する。そのため、回入側の耳部306はマウンティングのガイド部308の外周側壁部310に当接するとは限らず、アウタパッド304に安定して拘束させ得るとは限らない。そのため、アウタパッド304のマウンティングへの拘束が不安定となり易く、ブレーキ鳴きが生じ易くなる。
また、アウタパッド34において、図5(a)に示すように、パッドの回動中心点Psと図心Xcとの間の距離が短くなるため、摩擦力Fμに基づくモーメントが非常に小さくなる。そのため、アウタパッド34を、図心差に基づくモーメントに起因する爪部24の外周側への移動に伴って、外周側へ移動させることが可能となる。
その結果、特許文献1に記載のディスクブレーキに比較して、耳部40をガイド部42の外周側壁部42fに安定して当接させることが可能となり、アウタパッド34を、接線方向の力Fsと半径方向の力Fhとにより、マウンティング14に、安定的に拘束させることが可能となる。それにより、アウタパッド34の拘束が不安定であることに起因するブレーキ鳴きを生じ難くすることができる。
特に、本実施例においては、スライドピン16がガイド穴56に傾斜可能とされているため、ディスクブレーキの作動開始時に(わずかな液圧が加えられた状態において)、キャリパ18の回動が許容される。その結果、ブレーキ作動開始時に生じ易い鳴きを良好に抑制することができる。また、キャリパ18の回動時に生じるスライドピン16のこじりに起因する制動力不足を抑制し得、安定して制動力を付与することが可能となる。
ブレーキ液圧が高くなれば、キャリパ18の弾性変形等に起因して一対の爪部24の大部分がアウタパッド34と当接することになるが、本実施例においては、ブレーキ液圧が低い状態から大部分を当接させることが可能となるのであり、それにより、ブレーキを安定的に作動させることができる。
さらに、上記(2)式が示すように、ピストン30の傾斜可能角度θpisよりスライドピン16の傾斜可能角度θpinの方が大きくされている。その結果、キャリパ18がスライドピン16の傾斜可能角度θpin、回動させられても、ピストン30がシリンダボア22sに当接しないようにされているのであり、キャリパ18が回動させられても、ピストン30の回転軸線Qと平行な方向のスムーズな移動が許容される。
それに対して、ゴムブッシュを2つ向けることは不可欠ではなく、例えば、実施例1において設けられていたゴムブッシュ60は省略することができる。その場合であっても、スライドピンを傾斜可能に設けることは可能である。
図7,8に示すように、キャリパ100の駆動部102に形成されたシリンダボア104には、ピストン106がピストンシール107を介して、相対回転不能かつ回転軸線Qと平行な方向に摺動可能に嵌合される。ピストン106の内周側には、ナット部材108が、キーおよびキー溝等により、相対回転不能かつ回転軸線Qと平行な方向に相対移動可能に係合されられる。また、ピストン106はシリンダボア104に対して角度θpin傾き可能であるが、この傾きは、図8に示すように、ピストン106の内周面とナット部材108の外周面との間に形成された隙間zと、ナット部材108の前進側端面とピストン106の内周側の底面との間の隙間yとにより許容される。サービスブレーキの作動時にキャリパ100が回動可能とされ、ピストン106が傾斜可能とされるが、サービスブレーキの作動時には、ナット部材108は後退端位置にあるため、ナット部材108の前進側端面とピストン106の内周側の底面との間に隙間yが存在するのである。
キャリパ100の爪部140は、実施例1における場合と同様に、ピストン106の中心Xpより内周側まで伸ばされたものであり、液圧のサービスブレーキの非作動状態、または、わずかに液圧が加えられた状態において、爪部140とアウタパッド34との接触部の図心Xcは、ピストン106とインナパッド32との接触部の図心Xpより内周側に位置する(図5参照)。
上述のように、キャリパ100の駆動部102には、電動モータ110、伝達部112、ピストン106、ナット部材108、スピンドル114等が保持される。そのため、実施例1のキャリパ18に比較して、キャリパ100等の内側の部分の重量が大きくなり、キャリパ100等の重心PGは、実施例1のキャリパ18等の重心PGより内側に位置する。それに応じてマウンティング130の一対のガイド部132も、実施例1のマウンティング14のガイド部54より内側に設けられるのであり、本実施例においては、実施例1における場合と同様に、キャリパ100の重心PGが、スライドピン16の中心同士を通る直線G(図7参照)上に位置するようにされている。
サービスブレーキの作動時には、シリンダボア104に供給された液圧によりピストン106がナット部材108に対して相対的に前進させられる。インナパッド32がディスクロータ12の内側摺動面12aに押し付けられ、アウタパッド34が爪部140により外側摺動面12bに押し付けられる。インナパッド32、アウタパッド34がディスクロータ12に押し付けられる。
キャリパ100のR方向の回動により、爪部140が外周側へ移動させられ、アウタパッド34もインナパッド32も外周側へ移動させられる。アウタパッド34にもインナパッド32にも、図5(b)に示すように、耳部40において、外周側壁面42fから半径方向の力Fhが安定的に作用するため、マウンティング130に安定的に拘束され得る。それにより、鳴きを良好に抑制することができる。
また、アウタパッド34と一対の爪部24との接触部の図心がブレーキ作動時に回転軸線Qから遠ざかる向きに移動させられることは不可欠ではなく、少なくとも、回転軸線Qに近づかないようにすればよい。そのため、アウタパッド34と一対の爪部24との接触部の図心が、インナパッド32とピストンとの接触部の図心と半径方向の同じ位置(Δh=0)となるように、キャリパ等を設計することもできる。その場合には、爪部24の直交面Hに対する傾斜角度θcyは0でもよい。
さらに、本発明は、電動モータの駆動力により作動させられるサービスブレーキにも適用することができる。
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心が前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心より前記ホイールの回転軸線に近い側に位置することを特徴とするディスクブレーキ。
(2)ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
当該ディスクブレーキの作動時に、前記キャリパが、前記爪部が前記ディスクロータの回転軸線から遠ざかる向きに、回動可能とされたことを特徴とするディスクブレーキ。
(3)前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが、移動可能に保持され、
当該ディスクブレーキの非作動状態における前記爪部の前記アウタパッドに対向する面の前記ディスクロータに対する傾斜角度である爪角度θcyが、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度θpinより小さくされた(1)項または(2)項に記載のディスクブレーキ。
(4)前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが、前記回転軸線と平行な方向に移動可能に保持され、
前記ピストンが前記キャリパに形成されたシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合され、
前記ピストンの前記シリンダボアに対する傾斜許容角度であるピストン角度θpisが、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度θpinより大きくされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のディスクブレーキ。
(5)ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心と、前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心との、前記ホイールの半径方向の位置がほぼ同じであることを特徴とするディスクブレーキ。
本項に記載のディスクブレーキにおいては、ディスクブレーキの作動時に、爪部のホイールの回転軸線に近づく向きへの移動を防止することができる。
Claims (1)
- ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
当該ディスクブレーキの作動時に、前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心が前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心より前記ホイールの回転軸線に近い側に位置し、前記キャリパが、前記爪部が前記回転軸線から遠ざかる向きに回動可能とされ、
前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが移動可能に嵌合され、
前記ピストンが前記キャリパに形成されたシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合され、
前記爪部の前記アウタパッドに対向する面の前記ディスクロータに対する傾斜角度である爪角度が、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度より小さくされ、かつ、前記ピストンの前記シリンダボアに対する傾斜許容角度であるピストン角度が、前記ピン角度より大きくされたことを特徴とするディスクブレーキ。
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