JP6447443B2 - ディスクブレーキ - Google Patents

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Description

本発明は、キャリパ浮動型のディスクブレーキに関するものである。
特許文献1には、キャリパの爪部によるアウタパッドの押圧領域の図心6e1が、アウタパッドの摺動面の図心6d1よりホイールの回転軸線側に位置し、かつ、ピストンによるインナパッドの押圧領域の図心(ピストン中心)5e1より半径方向外側に位置するディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキにおいては、ブレーキ作動時に、キャリパの回動により、キャリパの爪部が回転軸線側へ移動させられる。それにより、アウタパッドの内径側の部分を良好に押圧することが可能となり、アウタパッドの偏摩耗を抑制することができる。
特許文献2には、キャリパの爪部において、先端部の剛性が基端部の剛性より弱くされたディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキにおいて、アウタパッドの、爪部の剛性が変化する部分に対応する部分が最も強く押圧されることになる。そのため、爪部の剛性が変化する位置を調整すれば、偏摩耗を良好に抑制することができる。
特許文献3には、キャリパの爪部が、ピストンの中心に対応する部分より内径側まで伸びたディスクブレーキが記載されている。それにより、爪部の剛性不足に起因するブレーキ鳴きを抑制することができる。
特許文献4には、一対のスライドピンの一方であるメインピンがガイド穴にがたなく配設され、一対のスライドピンの他方であるサブピンがガイド穴との間に隙間を有して配設されたディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキにおいては、一対のスライドピンの間、一対のガイド穴の間の誤差を良好に吸収することができる。
特開2009−185837 特開2007−064239 特開2010−281429 特開2012−072842
本発明の課題は、ディスクブレーキの改良であり、例えば、パッドの拘束が不安定であることに起因して生じるブレーキ鳴き(以下、単に鳴きと称する場合がある)を抑制することである。
課題を解決するための手段および効果
本願発明に係るディスクブレーキは、ブレーキ作動時に、爪部が回転軸線から遠ざかる向きに、キャリパが回動可能な構造を成す。
ブレーキの作動時に、ピストンとインナパッドとの接触部の図心(インナパッドの面圧中心)よりキャリパの爪部とアウタパッドとの接触部の図心(アウタパッドの面圧中心)が内周側に位置することに起因して、キャリパにモーメントが作用する。キャリパの回動により、爪部が外周側へ移動させられ、それに伴ってアウタパッドが外周側へ移動させられる。それにより、アウタパッドをマウンティングに安定的に拘束させることが可能となり、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
本発明の実施例1に係るディスクブレーキの斜視図である。 上記ディスクブレーキのキャリパ等の断面図である。 上記ディスクブレーキのマウンティングの一部断面図である。 上記キャリパ等の断面図(回動した状態)である。 (a)上記キャリパの回動前の爪部とアウタパッドとの接触部を示す図である。(b)上記キャリパの回動後の爪部とアウタパッドとの接触部を示す図である。 上記マウンティング部の一部断面図である。(a)上記キャリパの回動前の状態を示す図である。(b)上記キャリパの回動後の状態を示す図である。 本発明の実施例2に係るディスクブレーキのマウンティングの一部断面図である。 上記ディスクブレーキのキャリパ等の断面図である。 従来のディスクブレーキの一部を示す図である。
発明の実施形態
以下、本発明の一実施形態に係るディスクブレーキについて図面に基づいて詳細に説明する。ディスクブレーキは、押圧部材が液圧または電気的駆動力により作動させられるサービスブレーキであっても、押圧部材が液圧または電気的駆動力により作動させられるサービスブレーキと電気的駆動力により、または、機械的に作動させられるパーキングブレーキとに共通に用いられるビルトインブレーキであってもよい。
なお、本実施形態に用いる図面において、隙間、傾き角度等は、実際より大きめに示されている。発明を明確に示すためである。
実施例1に係るディスクブレーキは、押圧部材であるピストンが液圧により作動させられるサービスブレーキである。ディスクブレーキは、図1に示すように、(a)ホイール(図示省略)と一体的に回転するディスクロータ12と、(b)非回転体である車体のサスペンションパーツ等(図示省略)に支持されてディスクロータ12の外周部を跨ぐ状態で配置されたマウンティング14と、(c)マウンティング14に、一対のスライドピン16,16(図3参照)を介して、ホイールの回転軸線Qとほぼ平行な方向にスライド可能に保持された浮動式のキャリパ18とを含む。
キャリパ18は、図2に示すように、ディスクロータ12の外周部を跨ぐ状態で配設されたものであり、(i)ディスクロータ12の内側摺動面12aに対向して位置する駆動部22と、(ii)外側摺動面12bに対向して位置する一対の爪部24と、(iii)これら駆動部22と一対の爪部24とを連結するブリッジ部26とを含む。駆動部22に形成されたシリンダボア22sにはピストン30がピストシール31を介して液密かつ摺動可能に嵌合され、液圧によりディスクロータ12の回転軸線Qとほぼ平行な方向に移動可能とされる。一対の爪部24は、ホイールの円周方向に隔てて設けられた2つの爪部24i(図1,5参照)を含む。
ピストン30と、ディスクロータ12の内側摺動面12aとの間にはインナパッド32が配設され、一対の爪部24とディスクロータ12の外側摺動面12bとの間にはアウタパッド34が配設される。インナパッド32,アウタパッド34は、それぞれ、内側摺動面12a、外側摺動面12bに対向する摩擦部材36a,36bと、摩擦部材36a,36bを保持する裏板38a,38bとを含む。裏板38a,38bは、図5に示すように、それぞれ、本体39と一対の耳部40,41とを有する形状を成す。耳部40,41は、本体39の円周方向の両端部に、それぞれ、円周方向に突出して設けられたものであり、マウンティング14に形成された一対のガイド部42,43にそれぞれ係合させられる。耳部40,41とガイド部42,43との係合により、インナパッド32,アウタパッド34の回転軸線Qと平行な方向の移動がガイドされる。
また、図1に示すように、キャリパ18の駆動部22(ディスクロータ12の内側)には、円周方向に突出した一対の突部48,48が設けられ、突部48の各々には、それぞれ、前述のスライドピン16が、回転軸線Qと平行な方向に伸びた姿勢でピンボルト49によって固定されている。
マウンティング14は、図3に示すように、円周方向に隔たって、回転軸線Qと平行な方向に伸びたアーム部54,54を含む。アーム部54,54には、それぞれ、回転軸線Qと平行に伸びたガイド穴56が形成され、上述のスライドピン16が移動可能に保持される。
図3,4に示すように、スライドピン16の基部と、アーム部54,55のガイド穴56の開口部との間には、ゴム等の可撓性部材で作成された筒状のピンブーツ58が取り付けられている。ピンブーツ58のスライドピン16を保持する部分である保持部58bは、外径がガイド穴56の内径より大きく、締め代を有するものである。また、スライドピン16の先端部と、ガイド穴56との間にはゴムブッシュ60が設けられる。ゴムブッシュ60の外径もガイド穴56の内径より大きく、締め代を有するものである。
このように、スライドピン16は、アーム部54に、保持部58bとゴムブッシュ60とを介して、すなわち、回転軸線Qと平行な方向に隔たって設けられた2つの支持点(ゴムブッシュ60、保持部58bの各々の回転軸線Qと平行な方向の中点P、P)において支持される。キャリパ18が、マウンティング14に、2本のスライドピン16を介して、それぞれ、2つずつの支持点で保持されるのであり、キャリパ18等(キャリパ18およびキャリパ18に保持された部材を含む。以下、同様とする)の重心Pは、回転軸線Qと平行な方向において、2つ支持点P,Pの中点同士を通る直線G(図3参照)上に位置する。
換言すれば、本実施例においては、キャリパ18等およびマウンティング14の諸元が、キャリパ18等の重心Pが、回転軸線Qと平行な方向において、スライドピン16の2つの支持点P,Pの中点同士を通る線G上に位置するように設計されるのである。
また、図2,5(a)に示すように、ディスクブレーキの非作動状態、または、わずかに液圧が加えられた状態における、アウタパッド34と一対の爪部24との接触部の図心Xcは、インナパッド32とピストン30との接触部の図心Xp(ピストン30の中心)よりΔh内周側(回転軸線Qに近い側)に位置する。図心Xcは、アウタパッド34と爪部24iの各々との接触部Aの図心Xci同士の中点である。
本キャリパ18においては、爪部24iの各々のアウタパッド34に対向する面であるパッド対向面24fの回転軸線Qと直交する面H(ディスクロータ12の回転面と平行な面であり、以下、単に直交面Hと略称する)とのなす角度θcyが0よりわずかに大きい角度とされている。そのため、爪部24i各々の先端部においてアウタパッド34に当接することが多い。また、爪部24iの各々が、半径方向において、アウタパッド34の内周側の縁近傍まで、すなわち、ピストン30の中心(Xp)より内周側まで伸びている。そのため、爪部24iの各々のアウタパッド34と接触する先端部の図心Xciが図心Xpより内周側に位置する。
なお、製造バラツキ等に起因して、爪部24iのアウタパッド34と接触する部分は常に同じになるとは限らず、爪部24iの各々の基端部付近がアウタパッド34と接触したり、ほぼ全面において接触したりすることもある。それに対して、アウタパッド34が、内周側の部分が外周側の部分より厚いものである場合には、爪部24の先端部においてアウタパッド34と接触することが多い。本実施例においては、アウタパッド34が、内周側の部分が外周側の部分より厚みが厚いものに限定されないが、内周側の部分の方が厚いものである場合には、より確実に爪部24iの先端部においてアウタパッド34と接触することになる。
また、本キャリパ18において、ピストン30がシリンダボア22sに傾斜可能に嵌合されていて、その傾斜可能角度がθpisとされている。
さらに、スライドピン16はガイド穴56に対して角度θpinだけ傾斜可能に取り付けられる。角度θpinは、図6(b)に示すように、ゴムブッシュ60、ゴムブーツの保持部58bを弾性変形させて傾斜可能な角度である。
そして、上述の爪部24のパッド対向面24fの傾斜角度θcy、スライドピン16の傾斜可能角度θpin、ピストン30の傾斜可能角度θpisの間には、以下の関係が成立する。
θcy<θpin・・・(1)
θpin<θpis・・・(2)
次に、ディスクブレーキの作動について説明する。
ディスクブレーキにおいて、シリンダボア22sに液圧が供給されると、ピストン30が前進させられ、インナパッド32が押付力Fpにより内側摺動面12aに押し付けられる。それにより、キャリパ18が回転軸線Qとほぼ平行な方向へ移動させられ、爪部24によりブレーキパッド34が外側摺動面12bに押付力Fcで押し付けられるのであり、ディスクブレーキが作動させられる。
キャリパ18には、図2に示すように、重心Pの回り、換言すれば、重心を含む直線Gの回りに、これら押付力Fp,Fcの反力により、下式で表されるモーメントMが作用する。
M=Fc・Lb−Fp・La・・・(3)
上式において、La、Lbは、それぞれ、重心Pと図心Xp,Xcとの間の距離である。なお、ピストン30がインナパッド32を押し付ける押付力Fpと爪部24がアウタパッド34を押し付ける力Fcは同じである(Fp=Fc)。そのため、距離Lbが距離Laより長い場合は図4のR方向のモーメントが作用し、短い場合にはR方向と逆向きのモーメント(以下、このモーメントを図心差に基づくモーメントと称する)が作用する。
アウタパッド34は、ディスクロータ12に摺接させられることにより、ディスクロータ12の回転方向に移動させられる。図5(a)、(b)に示すように、本体39の回出側の端部39cがトルク受け部54f(マウンティング14のガイド部43の開口部近傍)に当接し、接線方向の力Fsを受ける。また、トルク受け部54fの回り、厳密にいうと、トルク受け部54fと回出側の端部39cとの接触部の図心(パッドの回動中心点)Psの回りに、押付力による摩擦力Fμに起因するモーメント(以下、このモーメントを摩擦力に基づくモーメントと称する)が作用する。
図9に示すように、特許文献1に記載のように、キャリパ300の爪部302とアウタパッド304との接触部の図心X1がピストンとインナパッドとの接触部の図心Xpより外周側に位置するディスクブレーキにおいては、距離Lbが距離Laより短くなる。上記(3)式の値が負となるため、キャリパ300には、R方向とは逆向き、すなわち、爪部302が回転軸線Qに近づく向きの図心差に基づくモーメントが作用する。一方、アウタパッド304には、摩擦力に基づくモーメントが、図心X1とパッドの回動中心点Psとの間の距離δと摩擦力Fμとにより、時計方向に作用する。
アウタパッド304において、回入側の耳部306には、図心差に基づくモーメントにより、内周側へ向かう力が作用するとともに、摩擦力Fμに起因するパッドモーメントにより外周側へ向かう力が作用する。そのため、回入側の耳部306はマウンティングのガイド部308の外周側壁部310に当接するとは限らず、アウタパッド304に安定して拘束させ得るとは限らない。そのため、アウタパッド304のマウンティングへの拘束が不安定となり易く、ブレーキ鳴きが生じ易くなる。
それに対して、本実施例においては、図5(a)に示すように、図心Xcは図心Xpより内周側に位置するため、距離Lbは距離Laより長くなる。そのため、(3)式は正の値となり、図心差に基づくモーメントMの向きは、図4に示すようにR方向、すなわち、爪部24が回転軸線Qから遠ざかる(外周側へ向かう)方向となる。
また、アウタパッド34において、図5(a)に示すように、パッドの回動中心点Psと図心Xcとの間の距離が短くなるため、摩擦力Fμに基づくモーメントが非常に小さくなる。そのため、アウタパッド34を、図心差に基づくモーメントに起因する爪部24の外周側への移動に伴って、外周側へ移動させることが可能となる。
その結果、特許文献1に記載のディスクブレーキに比較して、耳部40をガイド部42の外周側壁部42fに安定して当接させることが可能となり、アウタパッド34を、接線方向の力Fsと半径方向の力Fhとにより、マウンティング14に、安定的に拘束させることが可能となる。それにより、アウタパッド34の拘束が不安定であることに起因するブレーキ鳴きを生じ難くすることができる。
特に、本実施例においては、スライドピン16がガイド穴56に傾斜可能とされているため、ディスクブレーキの作動開始時に(わずかな液圧が加えられた状態において)、キャリパ18の回動が許容される。その結果、ブレーキ作動開始時に生じ易い鳴きを良好に抑制することができる。また、キャリパ18の回動時に生じるスライドピン16のこじりに起因する制動力不足を抑制し得、安定して制動力を付与することが可能となる。
さらに、図4、図5(b)に示すように、キャリパ18のR方向の回動によりアウタパッド34と爪部24iの各々との接触部Bの面積が大きくなる。図5(b)に示すように、図心Xc´が図心Xc{図5(a)参照}より外周側へ移動させられ、図心Xpに近づけられる(Δh>Δh´)。その結果、インナパッド32、アウタパッド34の各々の中心部付近を良好にディスクロータ12に押し付けることが可能となり、これらインナパッド32、アウタパッド34の偏摩耗を良好に抑制することができる。
ブレーキ液圧が高くなれば、キャリパ18の弾性変形等に起因して一対の爪部24の大部分がアウタパッド34と当接することになるが、本実施例においては、ブレーキ液圧が低い状態から大部分を当接させることが可能となるのであり、それにより、ブレーキを安定的に作動させることができる。
また、キャリパ18の回動はスライドピン16によって制限されるが、上記(1)式が示すように、爪部24の傾き角度θcyよりスライドピン16のガイド穴56に対する傾斜可能角度θpinの方が大きくされている。その結果、パッド対向面34fの大部分がアウタパッド34に接触可能となるまで、キャリパ18の回動が許容され得る。
さらに、上記(2)式が示すように、ピストン30の傾斜可能角度θpisよりスライドピン16の傾斜可能角度θpinの方が大きくされている。その結果、キャリパ18がスライドピン16の傾斜可能角度θpin、回動させられても、ピストン30がシリンダボア22sに当接しないようにされているのであり、キャリパ18が回動させられても、ピストン30の回転軸線Qと平行な方向のスムーズな移動が許容される。
また、スライドピン16とガイド穴56との間にゴムブッシュを2つ設けることによって、スライドピン16とガイド穴56との間の隙間を確保することが可能となり、スライドピン16の傾斜可能角度を大きくできる。
それに対して、ゴムブッシュを2つ向けることは不可欠ではなく、例えば、実施例1において設けられていたゴムブッシュ60は省略することができる。その場合であっても、スライドピンを傾斜可能に設けることは可能である。
本実施例に係るディスクブレーキはビルトインブレーキである。ビルトインブレーキと実施例1に係る液圧のサービスブレーキとで同じ作用を奏する構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
図7,8に示すように、キャリパ100の駆動部102に形成されたシリンダボア104には、ピストン106がピストンシール107を介して、相対回転不能かつ回転軸線Qと平行な方向に摺動可能に嵌合される。ピストン106の内周側には、ナット部材108が、キーおよびキー溝等により、相対回転不能かつ回転軸線Qと平行な方向に相対移動可能に係合されられる。また、ピストン106はシリンダボア104に対して角度θpin傾き可能であるが、この傾きは、図8に示すように、ピストン106の内周面とナット部材108の外周面との間に形成された隙間zと、ナット部材108の前進側端面とピストン106の内周側の底面との間の隙間yとにより許容される。サービスブレーキの作動時にキャリパ100が回動可能とされ、ピストン106が傾斜可能とされるが、サービスブレーキの作動時には、ナット部材108は後退端位置にあるため、ナット部材108の前進側端面とピストン106の内周側の底面との間に隙間yが存在するのである。
駆動部102には、電動モータ110、複数のギアを含む伝達部112が保持されるとともに、スピンドル114が一対のベアリング116を介して回転可能に保持される。スピンドル114は回転軸線Qと平行な方向に伸びたものであり、ナット部材108に螺合させられる。
キャリパ100の爪部140は、実施例1における場合と同様に、ピストン106の中心Xpより内周側まで伸ばされたものであり、液圧のサービスブレーキの非作動状態、または、わずかに液圧が加えられた状態において、爪部140とアウタパッド34との接触部の図心Xcは、ピストン106とインナパッド32との接触部の図心Xpより内周側に位置する(図5参照)。
キャリパ100はマウンティング130に、スライドピン16とアーム部132に設けられたガイド穴56とにより回転軸線Qと平行な方向に相対移動可能に支持される。スライドピン16は、アーム部132に、ゴムブッシュ60、ピンブーツ58を介して支持されるのであり、実施例1における場合と同様、図6(b)に示すように、ガイド穴56に対して角度θpin傾き可能とされる。
上述のように、キャリパ100の駆動部102には、電動モータ110、伝達部112、ピストン106、ナット部材108、スピンドル114等が保持される。そのため、実施例1のキャリパ18に比較して、キャリパ100等の内側の部分の重量が大きくなり、キャリパ100等の重心Pは、実施例1のキャリパ18等の重心Pより内側に位置する。それに応じてマウンティング130の一対のガイド部132も、実施例1のマウンティング14のガイド部54より内側に設けられるのであり、本実施例においては、実施例1における場合と同様に、キャリパ100の重心Pが、スライドピン16の中心同士を通る直線G(図7参照)上に位置するようにされている。
以上のように構成されたビルトインブレーキにおいて、パーキングブレーキの作動時には、電動モータ110の出力が、伝達部112を介してスピンドル114に伝達され、スピンドル114が回転させられる。スピンドル114の回転によりナット部材108がピストン106に対して相対的に前進させられ、ピストン106に当接し、ピストン106が前進させられる。インナパッド32がディスクロータ12の内側摺動面12aに押し付けられ、アウタパッド34が爪部140により外側摺動面12bに押し付けられる。
サービスブレーキの作動時には、シリンダボア104に供給された液圧によりピストン106がナット部材108に対して相対的に前進させられる。インナパッド32がディスクロータ12の内側摺動面12aに押し付けられ、アウタパッド34が爪部140により外側摺動面12bに押し付けられる。インナパッド32、アウタパッド34がディスクロータ12に押し付けられる。
仮に、爪部が短く、爪部とアウタパッド34との接触部の図心が、ピストンとインナパッド32との接触部の図心Xpより外周側に位置する場合には、キャリパに作用する図心差に基づくモーメントにより、爪部が内周側へ移動させられ、アウタパッド34もインナパッド32も内周側へ移動させられる。その結果、アウタパッド34も、インナパッド32もマウンティングに良好に拘束させることが困難となり、鳴きが生じ易くなる。特に、ビルトインブレーキにおいては、重心Pがインナパッド32より内側に位置するため、重心Pと、アウタパッド34の爪部140との接触部、インナパッド32とピストン106との接触部との間の回転軸線Qと平行な方向における距離Lap,Lbpが長くなる。その結果、アウタパッド34、インナパッド32の内周側への移動量が大きくなり、拘束が不安定になり易い。
それに対して、本実施例においては、ブレーキ作動時の爪部140とアウタパッド34との接触部の図心Xcが、ピストン106とインナパッド32との接触部の図心Xpより内周側に位置するため、図心差に基づくモーメントの向きはR方向となる。
キャリパ100のR方向の回動により、爪部140が外周側へ移動させられ、アウタパッド34もインナパッド32も外周側へ移動させられる。アウタパッド34にもインナパッド32にも、図5(b)に示すように、耳部40において、外周側壁面42fから半径方向の力Fhが安定的に作用するため、マウンティング130に安定的に拘束され得る。それにより、鳴きを良好に抑制することができる。
また、キャリパ100等の重量が大きい場合には、非ブレーキ作動時において、ゴムブッシュ60、ピンブーツの保持部58bが重力により鉛直方向に弾性変形させられることがあるが、図1に示すように、ディスクブレーキはディスクロータ12に、鉛直方向に対して傾斜した姿勢で設けられることが多い。そのため、スライドピン16がガイド穴56に対して傾斜可能に設けられていれば、キャリパの回転軸線に沿った回動が許容されるのであり、良好にブレーキ鳴きを抑制することができる。
なお、キャリパ100等の重心がスライドピン16から外れるビルトインブレーキにおいては、非ブレーキ作動時に、スライドピン16が傾斜し、キャリパ100が傾く場合がある。それに対して、スライドピン16が支持点P1,P2の2点で支持される場合には、これらゴムブッシュ60、ピンブーツ58の保持部58b設計により、非ブレーキ作動時におけるスライドピン16の傾きを抑制し、キャリパ100の傾斜を抑制することができる。
また、アウタパッド34と一対の爪部24との接触部の図心がブレーキ作動時に回転軸線Qから遠ざかる向きに移動させられることは不可欠ではなく、少なくとも、回転軸線Qに近づかないようにすればよい。そのため、アウタパッド34と一対の爪部24との接触部の図心が、インナパッド32とピストンとの接触部の図心と半径方向の同じ位置(Δh=0)となるように、キャリパ等を設計することもできる。その場合には、爪部24の直交面Hに対する傾斜角度θcyは0でもよい。
さらに、本発明は、電動モータの駆動力により作動させられるサービスブレーキにも適用することができる。
以上のように、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
12:ディスクロータ 14,130:マウンティング、 16:スライドピン 18,100:キャリパ 22,102:駆動部 24,140:爪部 30,106:ピストン 32:インナパッド 34:アウタパッド 40,41:耳部 42f:トルク受け部 56:ガイド穴 58:ゴムブーツ 60:ゴムブッシュ 108:ナット部材
特許請求可能な発明
以下、本願において特許請求が可能と認識されている発明、あるいは、発明の特徴点について説明する。
(1)ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心が前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心より前記ホイールの回転軸線に近い側に位置することを特徴とするディスクブレーキ。
(2)ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
当該ディスクブレーキの作動時に、前記キャリパが、前記爪部が前記ディスクロータの回転軸線から遠ざかる向きに、回動可能とされたことを特徴とするディスクブレーキ。
(3)前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが、移動可能に保持され、
当該ディスクブレーキの非作動状態における前記爪部の前記アウタパッドに対向する面の前記ディスクロータに対する傾斜角度である爪角度θcyが、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度θpinより小さくされた(1)項または(2)項に記載のディスクブレーキ。
(4)前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが、前記回転軸線と平行な方向に移動可能に保持され、
前記ピストンが前記キャリパに形成されたシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合され、
前記ピストンの前記シリンダボアに対する傾斜許容角度であるピストン角度θpisが、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度θpinより大きくされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のディスクブレーキ。
(5)ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
を含むディスクブレーキであって、
前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心と、前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心との、前記ホイールの半径方向の位置がほぼ同じであることを特徴とするディスクブレーキ。
本項に記載のディスクブレーキにおいては、ディスクブレーキの作動時に、爪部のホイールの回転軸線に近づく向きへの移動を防止することができる。

Claims (1)

  1. ホイールと一体的に回転可能なディスクロータの両側に配設されたインナパッドおよびアウタパッドと、
    前記ディスクロータを跨いで設けられ、前記インナパッドを前記ディスクロータの内側面に押し付けるピストンと、前記アウタパッドを前記ディスクロータの外側面に押し付ける爪部とを有するキャリパと、
    非回転体に設けられ、前記キャリパを移動可能に支持するマウンティングと
    を含むディスクブレーキであって、
    当該ディスクブレーキの作動時に、前記爪部と前記アウタパッドとの接触部の図心が前記ピストンと前記インナパッドとの接触部の図心より前記ホイールの回転軸線に近い側に位置し、前記キャリパが、前記爪部が前記回転軸線から遠ざかる向きに回動可能とされ
    前記マウンティングと前記キャリパとの一方に形成されたガイド穴に、前記マウンティングと前記キャリパとの他方に固定的に設けられたスライドピンが移動可能に嵌合され、
    前記ピストンが前記キャリパに形成されたシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合され、
    前記爪部の前記アウタパッドに対向する面の前記ディスクロータに対する傾斜角度である爪角度が、前記スライドピンの前記ガイド穴に対する傾斜許容角度であるピン角度より小さくされ、かつ、前記ピストンの前記シリンダボアに対する傾斜許容角度であるピストン角度が、前記ピン角度より大きくされたことを特徴とするディスクブレーキ。
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