以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
(掘削補助装置の構造)
本発明の実施形態に係る掘削補助装置1は、図1に示すように、地盤Gに垂直方向の2辺を有する矩形面を開口面2fとする壁状体2を備える。壁状体2は、2辺を両端部とする帯状の矩形平板を、地盤Gに垂直な壁面をなすように筒状に折り曲げた形状をなしており、この筒状の壁面の内部に掘削作業空間Sを定義している。ここで、「筒状に折り曲げる」とは、トポロジーとして折り曲げられているということを意味している。即ち、「筒状に折り曲げる」とは、結果物の幾何学的形状を意味しているのであり、実際の板金加工等におけるプレスによる折り曲げ加工がされることを意味するものではない。したがって、筒状に折り曲げられたトポロジーは、溶接等の種々の加工手段で実現できるものであるが、プレスによる折り曲げ加工によって製造されることを除外するものでもない。
本発明の実施形態に係る掘削補助装置1の開口面2fには、開口面2fの全面を遮蔽するように複数枚のシャッター板(10a,10b,…)を組み合わせて、開口面2fに保持される。図1では、「組み合わせ」の一例としての5枚のシャッター板のセットが用いられる開口面2fの場合が例示されている。即ち、図1中においては、この5枚のシャッター板のうち2枚のシャッター板10a,10bが、便宜上示されている。掘削補助装置1は、掘削作業空間Sで掘削作業を継続して、空洞部を形成し、壁状体2を自重により、空洞部の内部へ斜面崩壊と共に沈降させる。その際、壁状体2の自重による空洞内部への沈降に応じ、複数枚のシャッター板(10a,10b,…)のそれぞれを下段側から順次、開口面2fに沿って積段し、開口面2fを順次覆うようにする。即ち、本発明の実施形態に係る掘削補助装置1においては、掘削作業空間Sの内部に空洞部を形成し、自重による掘削補助装置1の空洞部の内部への沈降に伴い、シャッター板を積段しながら、順次深くまで空洞部を掘削する。そして、最終的には、長尺物の下部を埋め込むことが可能な空洞部を掘削作業空間Sの内部に掘る。
開口面2fの左辺となる掘削補助装置1の左側の端部には、複数枚のシャッター板(10a,10b,…)のセットを着脱可能に保持する第1の保持機構3が設けられている。一方、開口面2fの右辺となる掘削補助装置1の右側の端部には、複数枚のシャッター板(10a,10b,…)のセットを着脱可能に保持する第2の保持機構が設けられている。第1の保持機構3は、第1のスライド溝3aを掘削補助装置1の左側の端部の長手方向に沿って備えたスライドレールを含んでおり、第2の保持機構4は、第2のスライド溝4aを掘削補助装置1の右側の端部の長手方向に沿って備えたスライドレールを含んでいる。図4に示すように、5枚のシャッター板10a〜10d,20のうちの最上段のシャッター板20を除く、4枚のシャッター板10a〜10dのそれぞれの左の端部が、第1のスライド溝3aに挿入され、4枚のシャッター板10a〜10dのそれぞれの右の端部が、第2のスライド溝4aに挿入される。
第1の保持機構3は、掘削補助装置1の左側の端部に沿って壁状体2の下端部の方向に向かって設けられている。第2の保持機構4は、掘削補助装置1の右側の端部に沿って壁状体2の下端部の方向に向かって設けられている。第1の保持機構3の一部を構成している第1のスライド溝3aの上端部は、5枚のシャッター板10a〜10d,20が開口面2fの全面を遮蔽するように積段された場合に、最上段のシャッター板20の下端が位置する箇所より下側に位置する。又、第2の保持機構4の一部を構成している第2のスライド溝4aの上端部は、5枚のシャッター板10a〜10d,20が開口面2fの全面を遮蔽するように積段された場合に、最上段のシャッター板20の下端が位置する箇所より下側に位置するように設けられている。
壁状体2は、図1中の右上側に示すように、滑らかな円弧状の後壁2cの左右にそれぞれ平板状の左側壁2aと右側壁2bとを連続したU字型の形状をなしている。左側壁2aの後壁2cと反対側の端部と、右側壁2bの後壁2cと反対側の端部とが、壁状体2の両端部を形成する。左側壁2a側の端部には第1の保持機構3が設けられ、右側壁2b側の端部には第2の保持機構4が設けられる。壁状体2の左側壁2a、右側壁2b及び後壁2cは、例えば鉄板で構成することが可能で、鉄板の場合は互いに溶接により一体化することができる。本発明の実施形態では、壁状体2の高さは、例えば約1.5〜2.5m程度に設定可能で、又、壁状体2の重量は、鉄板の厚さにもよるが、約300〜800kg程度に設定可能であるが、これらの例示した高さや重量等に限定されるものではない。例えば厚さ12mmの鉄板の場合914mm×1829mmで158kg程度であるので、この鉄板を3枚用いて構成すれば約474kgの総重量になる。
図1及び図4に示すように、上端部の開口面2fの幅W1よりも、下部の開口面2fの幅W2が極く僅か小さくすれば、斜面崩壊に伴う自重による掘削補助装置1の沈降が容易になるが、W1=W2でもよい。W1>W2とする場合は、W1とW2との差が第1のスライド溝3aの深さ及び第2のスライド溝4aの深さの1/2〜1/3以内となるように設定するのが好ましい。この場合、開口面2fの両側の2辺は、厳密には地盤Gに垂直ではないが、近似的には垂直とみなせる。更に、壁状体2の下端部は、図4中に左側壁2aの下端部及び右側壁2bの下端部の先端の形状で例示されるように、掘削補助装置1の前面からみた場合に、内壁側から外壁側に傾斜するような楔形の形状に形成し、掘削補助装置1の自重による空洞内部への沈降が促進できるようにされている。即ち、壁状体2の下端部の形状を、楔形の稜線が壁状体2の下端部に沿って連続するエッジをなすリッジ構造に構成しておくことにより、壁状体2の下端部が接している空洞部の側壁が崩れ易くなる。空洞部の側壁が斜面崩壊して崩れることに伴い、空洞部の側壁を滑り面として、掘削補助装置1が自重で空洞部の内部へ沈降する。
壁状体2の下端部が連続する楔型のエッジをなすリッジ構造を構成することにより、空洞部の側壁を滑り面として、掘削補助装置1が地盤G内部に降下するとき、壁状体2の下端部が地盤Gから受ける抵抗を低減できる。尚、壁状体2の下端部をなす左側壁2aの下端部、右側壁2bの下端部及び後壁2cの下端部の各形状は、図1及び図4に例示した形状に限定されるものではなく、先端が地盤G側に向かって楔型に類似な形状であれば他の形状でもよい。例えば、外壁面から内壁面に向かう傾斜面を有する片刃の楔の形状であってもよいし、又は外壁面及び内壁面の両面から互いに向かって形成された2つの傾斜面が先端で連結する両刃の楔の形状であってもよい。
又、左側壁2a及び右側壁2bの上端部には各々、図2に示すように、作業孔(2d1,2d2),(2d3,2d4)が形成されている。2個の作業孔が、左側壁2a及び右側壁2bの前側及び後側に各々1個ずつ開口されることにより、計4個の作業孔2d1〜2d4が形成されている。4個の作業孔2d1〜2d4は、長尺物埋込方法の説明で後述するように、地盤G内に降下させた掘削補助装置1を、地上に引き上げる際に用いられる。例えば、4個の作業孔2d1〜2d4にフック(図示省略。)を引っ掛け、このフックを用いてクレーン等を用いて引き上げる。このとき、4個の作業孔2d1〜2d4は、図18〜図20に示した段階で説明するように、最上段のシャッター板20が配設される位置よりも高い位置に形成されている。即ち図18及び図19に示すように、掘削補助装置1を地盤G内部に空洞部の側壁を滑り面として降下させたときに、4個の作業孔2d1〜2d4は地盤G内部に埋没しない。又4個の作業孔2d1〜2d4は、掘削補助装置1を柱状の長尺物40の外周から取り外す際に、例えば掘削補助装置1を牽引する際に用いられる。
以後の説明では、開口面2fの上端側の幅W1と下端側の幅W2とが等しいとして説明する。開口面2fは、図1及び図2に示すように、互いに平行な左側壁2aの端部と及び右側壁2bの端部との間に一定の幅W(=W1=W2)を有し、上下方向に亘る垂直面として形成されている。開口面2fの幅Wは、のバケット31の幅Bよりも80mm〜250mm程度長く設定するのが好ましい。例えば、バケット31の幅Bが約800mmである場合、開口面2fの幅Wは約900mm〜1000m程度に設定でき、バケット31の幅B=800mmより100〜200mm程度長い幅Wを選択できる。掘削機30の一例であるミニバックホーの標準バケット幅がB=600mmであるので、この場合はW=700mm程度に設定可能である。バケット31を壁状体2の掘削作業空間S内で動かす際、即ち、バケット31の幅方向の中心軸と掘削作業空間Sの幅方向の中心とが重なるように、バケット31を移動する場合、バケット31と壁状体2の左側壁2a及び右側壁2bとの間には、片側で50〜100mm程度のクリアランスを設定するのが好ましい。
片側クリアランスが50mm未満の場合、クリアランスが小さ過ぎ、バケット31が左側壁2a又は右側壁2bに衝突する可能性が高くなる。又、開口面2fの幅Wとバケット31の幅Bとの差が250mmより大きい場合、クリアランスが大き過ぎ、バケット31を幅方向に移動させる作業が増加する。即ち、開口面2fの幅Wは、掘削機30のバケット31の幅Bに応じて、バケット31を幅方向に移動させて掘削することなく、前後方向の掘削動作のみ行う場合に適した長さに予め設定することができる。
左側壁2a及び右側壁2bの、前後方向(図2中の上下方向)の長さLは、掘削補助装置1の掘削作業空間Sに深い孔を掘削する際に用いる掘削機30のバケット31の掘削動作に干渉しない長さに設定すればよい。例えばバケット容量0.11m3のミニバックホーを掘削機30とする場合は、L=1130mm程度に設定できる。長さLは、掘削機30の最大掘削半径と、最大地下揚程時作業半径との差を考慮して決めればよい。
掘削機30は、一般には、例えば、掘削機本体に取り付けられたブーム(図示省略。)と、ブームの先端に取り付けられたアーム(図示省略。)と、アームの先端に取り付けられたバケット31を備えている。バケット31の地盤Gにおける掘削範囲は、ブーム及びアームの操作により、バケット31の高さ位置及び前後(ブームに沿って作業者の手前から奥方向)の位置が調節されることで決定される。
掘削機30を用いて地盤Gを掘削する際には、バケット31の高さ位置及び前後位置の調節に基づきバケット31を下降させ、まずバケット31の爪先の先端を掘削作業空間S内の地盤Gに突き立てるように接触させ、地中方向に加圧して食い込ませる。その後、バケットシリンダによる回転モーメントによって、アームの先端のバケットヒンジピンを中心にバケット31の爪先を作業者側にかき込むように回転させることにより地盤Gを掘削する。開口面2fには、複数枚(5枚)のシャッター板10a〜10d,20が順次取り付け可能となっているので、一部のシャッター板が取り付けられていないことによって、口面2fに設けられるU字型の割れ目(開口部)が、アームシリンダによるアームの動作やブームシリンダによるブームの動作の許容範囲を拡げ、掘削作業空間S内の作業を容易にすることができる。バケット31の爪先が掘削作業空間S内の地盤Gに接触した時点の位置を、バケット31の掘削開始位置とする。続いて、開口面2fのU字型の割れ目(開口部)を利用して、アームシリンダによるアームの動作やブームシリンダによるブームの動作を伴いながら、バケット31の爪先を作業者側にかき込むように回転させる。バケット31の回転による掘削動作が停止した時点のバケット31の回転角度を保持したまま、アームシリンダ及びブームシリンダを操作して、バケット31を上方向に移動させる。その後、掘削機30のブームを機体上部と共に横方向に旋回して掘削土を掘削補助装置1の掘削作業空間Sの外側に運び、バケット31から掘削土を開放する。
掘削作業空間Sが非常に狭いので、アームシリンダによる掘削力よりもバケットシリンダによる掘削力を主に用いて、掘削補助装置1の掘削作業空間S内で、前後方向の移動が少なくなるようにして、掘削開始位置から掘削終了位置までの長さに対応した地盤Gが掘削される。即ち左側壁2a及び右側壁2bのそれぞれの長さLは、(最大掘削半径)−(最大地下揚程時作業半径)で決まる作業範囲内において、掘削機30のバケット31の掘削開始位置から掘削終了位置までのかき込み動作に伴うバケット31の爪先の円弧移動の範囲(バケット掘削力半径)を考慮して、予め設定しておく。但し、一部のシャッター板を取り付けないことによる開口面2fに設定されるU字型の割れ目(開口部)を利用できるので、アームシリンダによる掘削力も活用可能である。
左側壁2a側の第1の保持機構3及び右側壁2b側の第2の保持機構は、いずれも、それぞれの側壁の内側に端面に沿って鉛直に設けられたスライドレールを一部に含んでいる。2つのスライドレールは互いに平行且つ対称的に構成されている。即ち、第1の保持機構3及び第2の保持機構4の一部として、それぞれに所定の間隔を空けて互いに平行に配置された2枚の板状部材をスライドレールとして含んでいる。
左側壁2a側の第1の保持機構3は、図3に示すように、左側壁2aの端部に沿って左側壁2aの内面に帯状に設けられた前ガイド板5と、前ガイド板5より内側の左側壁2aの内面に離間して帯状に設けられた後ガイド板6と、前ガイド板5及び後ガイド板6のそれぞれの下端に同時に接触したストッパ3bを有する。
前ガイド板5は、平板帯状の鉄板で構成され、左側壁2aの端部の内面に溶接により固着されている。前ガイド板5の上端部の位置する箇所は、左側壁2aの上辺の高さより低い。前ガイド板5の上端部の位置が、スライド溝3aの上端部の位置に相当する。前ガイド板5の下端面は、溶接によりストッパ3bの上面の前側(図3中の左側)に固着されている。前ガイド板5には、上下方向に3個のシャッター板固定孔5a,5b,5cが、等間隔で形成されている。3個のシャッター板固定孔5a,5b,5cは、図4に示すように、3枚のシャッター板10a,10b,10cをそれぞれ固定するための固定ピン(図示省略。)を差し込むために用いられる。
後ガイド板6は、前ガイド板5の後側で、前板と一定の間隔を空けて、前ガイド板5と平行に設けられている。後ガイド板6は平板帯状の鉄板で構成され、左側壁2aに溶接により固着されている。後ガイド板6の上端部の位置する箇所は、図3に示すように、前ガイド板5の上端部よりも高いが、左側壁2aの上辺の高さよりも低い。後ガイド板6の下端面は、溶接によりストッパ3bの上面の後側(図3中の右側)に固着されている。
後ガイド板6には、図3に示すように、前ガイド板5の3個のシャッター板固定孔5a,5b,5cに対応して、上下方向に3個のシャッター板固定孔6a,6b,6cが、等間隔で開口されている。更に、3個のシャッター板固定孔6a,6b,6cの上に、2個のシャッター板固定孔6d,6eが等間隔で開口されている。5個のシャッター板固定孔6a,6b,6c,6d,6eは、5枚のシャッター板10a〜10d、20を固定するための固定ピン(図示省略。)を差し込むために用いられる。
ストッパ3bは、図3に示すように、例えば、壁状体2を図3の紙面の上方からみた場合、下側に凸の三角形の部材とすることが可能であり、鉄板で構成されている。ストッパ3bは、左側壁2aに溶接により固着されているとともに、前ガイド板5の下端面及び後ガイド板6の下端面にも溶接により固着されている。
スライド溝3aは、前ガイド板5と後ガイド板6との間隔で形成され、間隔は4枚のシャッター板10a〜10dの厚さより少し広い幅、例えば12.0mm程度とすることができる。又、スライド溝3aの下部は、ストッパ3bによって閉鎖されることより、最下段のシャッター板10aの位置が固定される。このため、スライド溝3aに上下方向に積段される5枚のシャッター板10a〜10d,20の積段位置がスライド溝3aにそれぞれ固定される。
尚、スライド溝3aは、5枚のシャッター板10a〜10d,20をスライド溝3aに固定できるように下部が閉鎖されればよく、本発明の実施形態のストッパ3bを用いた構成に限定されるものではない。例えば、前ガイド板5及び後ガイド板6の各下端部を互いに相手側へ屈曲させた上で延伸させ、両下端部の先端が接触した位置でこれらを溶接により固着させ、スライド溝3aの下部を閉鎖するように構成してもよい。
図3では図示を省略しているが、右側壁2b側の第2の保持機構4も、左側壁2a側の第1の保持機構3に対称的に構成されている。即ち第1の保持機構3の前ガイド板5に対応して、図1及び図2に示すように、前ガイド板7を有し、第1の保持機構3の後ガイド板6に対応して後ガイド板8を有する。又、ストッパ3bと同様に、第2の保持機構4もストッパを下端部に有する。
第1の保持機構3の前ガイド板5のシャッター板固定孔5a,5b,5cに対応して、第2の保持機構4の前ガイド板7は3個のシャッター板固定孔7a,7b,7cをそれぞれ有する。シャッター板固定孔5a,5b,5cと、シャッター板固定孔7a,7b,7cとは、各々同じ段において同じ高さに設けられている。
同様に、シャッター板固定孔6a〜6eに対応して後ガイド板8には、図示を省略しているが5個のシャッター板固定孔が設けられている。但し5個のシャッター板固定孔のうち最上段のシャッター板固定孔8eについては、図2中に例示されている。図示を省略しているが、図3に示した後ガイド板6の5個のシャッター板固定孔6a〜6eに対応して、後ガイド板8の5個のシャッター板固定孔は、各々同じ段において同じ高さ位置に開孔されている。
図4に示すように、最下段である1段目から4段目までの4枚のシャッター板10a〜10dは、いずれも同じ矩形の形状である。一方、最上段である5段目のシャッター板20は、構成上、他の4枚のシャッター板10a〜10dとは一部相違する点を有する。
最下段のシャッター板10aは鉄製の平板であり、図5に示すように、最下段のシャッター板10aの主面に垂直方向からみた平面形状が矩形である。矩形の4つの角がいずれも丸められている。図5中の左右方向の長さで表されるシャッター板10aの幅は、開口面2fの幅Wと同じか或いは僅かに短く構成され、例えば約750mmとすることができる。又、図5中の紙面の手前から奥方向の長さで表されるシャッター板10aの厚みは、スライド溝の間隔と同じか或いは僅かに薄く構成され、例えば約12.0mmとすることができる。
又、図5中の上下方向の長さで表される最下段のシャッター板10aの高さDaは、例えば約350mmとすることができる。開口面2fに対し着脱自在となるように、最下段のシャッター板10aは、左右の端部がスライド溝3a,4aに沿ってスライドするように挿入されている。最下段のシャッター板10aの左右の端部が2つのスライド溝3a,4aにそれぞれ挿入されると、開口面2fの最下段において、開口面2fにおける最下段のシャッター板10aの高さDa分の面積が遮蔽される。
最下段のシャッター板10aの幅方向の中央の下端部寄り位置には、凹部をなす差込孔13aが形成されている。差込孔13aは、例えば幅方向に横長の長孔形状とすることが可能で、最下段のシャッター板10aを壁状体2から着脱させる際に作業者が指先を入れて、最下段のシャッター板10aを持つ場合の作業用取手として用いられる。
又、最下段のシャッター板10aには、図5に示すように、挿通孔16aが左側の端部の上端部寄り位置に、挿通孔17aが右側の端部の上端部寄り位置に、それぞれ互いに同じ高さに開孔されている。2個の挿通孔16a、17aは互いに左右対称的に開孔され、最下段のシャッター板10aが2つのスライド溝3a,4aに挿入された際、前ガイド板5,7の最下段のシャッター板固定孔5a,7aと同じ高さとなる位置に調整されている(図3参照)。同様に、2個の挿通孔16a、17aは、最下段のシャッター板10aが2つのスライド溝3a,4aに挿入された際、後ガイド板6,8の最下段のシャッター板固定孔6a,8aと同じ高さとなる位置に調整されている(図3参照)。
即ち挿通孔16aとシャッター板固定孔5aとシャッター板固定孔6aとが前後方向に1本の孔として連続し、挿通孔17aとシャッター板固定孔7aとシャッター板固定孔8aとが前後方向に1本の孔として連続する。掘削作業空間S内に深い孔を掘削するときには、1本の孔として連続した箇所に固定ピンが左右各々挿し込まれ、最下段のシャッター板10aと左右2つのスライド溝3a,4aとを固定する。掘削補助装置1が地盤G内部に設けられた空洞部の側壁を滑り面として自重で降下する際に、最下段のシャッター板10aが、空洞部の側壁の圧力で、スライド溝3a,4aに沿って変位したり、変位に伴って、上側に隣接する二段目のシャッター板10bとの間に隙間を生じさせたりすることが抑制できる。
又、最下段のシャッター板10aの2個の挿通孔16a,17aの中央寄り位置には、それぞれ作業孔14a、15aが、互いに同じ高さに左右対称的に形成されている。2個の作業孔14a、15aは、例えば、2個の作業孔14a、15aにフックを引っ掛け、フックを介して最下段のシャッター板10aを上方へ引き上げ、壁状体2から取り外す作業に用いられる。
2段目〜4段目のシャッター板10b〜10dの構成は、最下段のシャッター板10aと同様である。又、2段目〜4段目のシャッター板10b〜10dにおける差込孔13b〜13dは、最下段のシャッター板10aの差込孔13aと同様である。又、各段の2個の挿通孔16b〜16d,17b〜17d及び2個の作業孔14b〜14d,15b〜15dについても、最下段のシャッター板10aの2個の挿通孔16a,17a及び2個の作業孔14a,15aと同様である。
尚、4段目のシャッター板10dの2個の挿通孔16d,17dの位置は、図3及び図4に示すように、2つのスライドレールの前ガイド板5及び7のそれぞれの上端部の位置より高い。又、4段目のシャッター板10dは、最下段のシャッター板10aと異なり、前ガイド板5,7との間では固定ピンで連結されず、後ガイド板6,8との間のみ固定ピンで固定されている。4段目のシャッター板10dの固定に固定ピンを用いないことにより、取り外し位置が比較的高所となる4段目のシャッター板10dを壁状体2から取り外す場合、取り外し作業の工数が少なくなるので、高所であっても作業が容易となる。
最上段のシャッター板20も鉄製であり、図9〜11に示すように、シャッター板本体20aと、2つの矩形板状のライナー21,22とを有し、2つのライナー21,22は、シャッター板本体20aの後面の幅方向(図9及び図10の左右方向)の両端に各々帯状の凸部として直交方向に、シャッター板本体20aの後面から突出している。最上段のシャッター板20は、最下段〜4段目の4枚のシャッター板10a〜10dと同様に、上下方向の高さ(図9の上下方向の長さ)Deの面積分、開口面2fを遮蔽する。一方、最上段のシャッター板20の両端部は、他の4枚のシャッター板10a〜10dと異なり、図4に示すように、スライド溝3a,4aに挿入されない。
最上段のシャッター板本体20aも、図9に示すように、主面に垂直方向からみた形状が矩形であり、矩形の4つの角は、最下段のシャッター板10aと同様にいずれも丸められている。シャッター板本体20aの幅方向の長さは、開口面2fの幅Wと同じか或いは僅かに短く構成され、例えば約750mmとすることができる。又、シャッター板本体20aの厚み(図10の上下方向の長さ)は、前ガイド板5と後ガイド板6との間隔と同じ程度でよく、例えば約12.0mmとすることができる。又、シャッター板本体20aの高さDeは、最下段〜4段目の4枚のシャッター板10a〜10dの高さDa〜Ddよりも短く、例えば約280mmとすることができる。しかし必ずしも他の4枚のシャッター板10a〜10dの高さDa〜Ddより短くする必要はなく、適宜設定されてよい。Da=Db=Dc=Dd=350mm、De=280mmとすれば、Da+Db+Dc+Dd+De=1680mmとなる。
最上段のシャッター板本体20aにも、図9に示すように、幅方向の中央の下端部寄り位置に、差込孔23が形成されている。差込孔23は、最下段〜4段目の4枚のシャッター板10a〜10dの差込孔13a〜13dと同様の目的で用いられる。
又、シャッター板本体20aには、2個の挿通孔26,27が左右両端部の上端部寄り位置にそれぞれ、同じ高さ位置に左右対称的に形成されている。2個の挿通孔26,27は、他の4枚のシャッター板10a〜10dの2個の挿通孔16a〜16d,17a〜17dと同様に用いられる。ここで、図4に示すように、各スライドレールの前ガイド板5,7の上端部は、いずれも最上段のシャッター板20の下端面よりも低い位置とされているので、最上段のシャッター板20の左右の端部は前ガイド板5,7に接触しない。最上段のシャッター板20は、4段目のシャッター板10dと同様、後ガイド板6,8との間でのみ固定ピンを介して固定される。
具体的には、最上段のシャッター板20の左側においては、図12の上面図に示すように、最上段のシャッター板20の挿通孔26と、第1の保持機構3の後ガイド板6のシャッター板固定孔6eとが、前後方向(図12の上下方向)に1本の孔として連続する。そして図示を省略した固定ピンが、この連続した1本の孔に挿入される。又、最上段のシャッター板20の右側においては、最上段のシャッター板20の挿通孔27と、第2の保持機構4の後ガイド板8に設けられたシャッター板固定孔(図示省略)とが、同様に前後方向に1本の孔として連続する。そして、図12に示した1本の孔と同様に、右側の1本の孔として連続した箇所にも固定ピンが挿入される。固定ピンにより、最上段のシャッター板20が、他の4枚のシャッター板10a〜10dと同様に、開口面2fに固定される。
又、図9に示すように、最上段のシャッター板20の2個の挿通孔26,27の中央寄り位置には、それぞれ作業孔24,25が、互いに同じ高さに左右対称的に形成されている。2個の作業孔24,25は、最下段のシャッター板10aの2個の作業孔14a、15aと同様にフックを引っ掛け、フックを介して最上段のシャッター板20を上方へ引き上げ、壁状体2から取り外す作業に用いられる。
最上段のシャッター板20のライナー21は、図11に示すように、シャッター板本体20aの上端面から下端面に亘って、縦方向に連続する帯状の凸部として、 シャッター板本体20aの後面に対し直交方向に突出した帯である。即ち、ライナー21は、図12に示すように、最上段のシャッター板本体20aの後面から、壁状体2の掘削作業空間S側(図12の上側)の方向へ、シャッター板本体20aの後面の直角方向へ突出している。図示を省略しているが、ライナー22もライナー21と同様に、最上段のシャッター板20の後面から直角方向へ突出し、最上段のシャッター板本体20aの上端面から下端面に向かって、シャッター板本体20aの後面に対して直交方向に突出した帯として設けられている。ライナー21,22は、後ガイド板6,8の端面(側面)に一定の摩擦力で接触するように設けられている。具体的には、図12に示すように、左側の第1の保持機構3側においては、ライナー21の左側の端面が、後ガイド板6の右側の端面に接触して、水平方向の位置がガイドされる。又、右側の第2の保持機構4側においても対称的に、ライナー22の右側の端面が、後ガイド板8の左側の端面に接触して、水平方向の位置がガイドされる。
2つのライナー21,22の外側の間隔を、後ガイド板6と後ガイド板8との内側の間隔に合わせることにより、最上段のシャッター板20と2枚の後ガイド板6,8との接触面積が増加し、最上段のシャッター板20と2枚の後ガイド板6,8との間の静止摩擦力が増大する。よって、スライド溝3a,4aが存在しなくても、最上段のシャッター板20を、第1の保持機構3及び第2の保持機構4に対し結合力を高めて保持することができる。
5枚のシャッター板10a〜10d,20がすべて開口面2fに取り付けられると、5枚のシャッター板10a〜10d,20の各外壁面による、上下方向に一体的となる連続した外壁面が構築される。連続した1面として外壁面を構成することにより、開口面2fが、5枚のシャッター板10a〜10d,20の高さの総和の高さ分遮蔽され、掘削補助装置1を地盤Gの内部に深く埋め込んだ段階においても、掘削作業空間Sと掘削補助装置1の外側とが分画される。又、5枚のシャッター板10a〜10d、20は、掘削補助装置1が地盤G内部に設けられた空洞部の側壁を滑り面として自重で降下する際に、いずれも上下のシャッター板間に隙間が生じないように上下方向の変位が抑制されているので、掘削時に隙間を介して外側から掘削作業空間Sに、地盤Gを構成する組成物である玉砂利等の侵入を強固に防止できる。
又、図1及び図4に示すように、前ガイド板5及び7のそれぞれの上端部の位置が、最上段のシャッター板20の下端面より低い位置であるため、最上段のシャッター板20を壁状体2から取り外す際には、シャッター板20を手前側に倒して壁状体2から簡単に取り外すことができる。即ち、最上段のシャッター板20を2つのスライド溝3a,4aに沿って上方に持ち上げる必要がない。加えて、2つのスライド溝3a,4aの上端の位置が低いので、最上段のシャッター板20を取り外した後に、最下段〜4段目の4枚のシャッター板10a〜10dを、開口面2fから取り外す際も、必要以上高く持ち上げる必要がない。4枚のシャッター板10a〜10dを、後ガイド板6,8の上端部,の高さ以上に押し上げる必要がないので、掘削補助装置1からの取り外し作業が容易となり、作業性が向上する。
(実施形態の変形例)
尚、5枚のシャッター板10a〜10d,20の各差込孔13a〜13d,23が形成される位置は、図4に示す位置に限定されるものではなく、作業者が持つことができる限り、他の位置に適宜変更されてよい。例えば、図6に例示した本発明の実施形態の変形例(第1変形例)に係るシャッター板70aのように、シャッター板70aの差込孔73aは、幅方向の中央位置且つ高さ方向の中央位置でもよい。又、差込孔の形状や構造も、図4に示した凹部13a〜13d及び23の形状や構造に限定されるものではない。例えば、図7及び図8に例示した本発明の実施形態の変形例(第2変形例)に係るシャッター板80のように、掘削作業空間Sから外側方向に張り出す凸部83をシャッター板80の前面側に設けてもよく、作業者が持つことができる形状や構造である限り、適宜変更されてよい。
(長尺物の埋込方法)
次に、本発明の実施形態に係る掘削方法、及びこの掘削方法を用いた長尺物の埋込方法を、図14〜図24を参照して説明する。以下の説明では、便宜上、長尺物の埋め込み予定地の地盤Gの土質を構成する主な組成物が、粒径が約40mm以下の玉砂利であるとして説明する。又、以下の本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法では、図1に示した掘削補助装置1を用いることを前提としている。
(a)先ず、図1に示した掘削補助装置1を、開口面2fが長尺物の埋め込み予定地の地盤Gの上面に対して垂直になるように配置し、開口面2fに設けられたスライド溝3a,4aに、最下段のシャッター板10aを挿入する。このとき、最下段のシャッター板10aの各挿通孔及び両端部のスライドレールの各シャッター板固定孔に固定ピンを用いて、最下段のシャッター板10aを第1の保持機構3及び第2の保持機構4の下部に取り付ける。
そして図14に示すように、掘削作業空間Sの内部の地盤Gを掘削機30のバケット31によって掘削する。開口面2fには、4枚のシャッター板10b〜10d,20が取り付けられていない段階であるので、開口面2fにはU字型の深い割れ目(開口部)が設定されている。開口面2fの開口部(割れ目)が利用できるので、掘削機30のバケット31による掘削に際しては、掘削機30のアームシリンダによるアームの動作、掘削機30のブームシリンダによるブームの動作の許容範囲を拡げることができる。掘削機30のバケット31で掘削されることにより、作業空間Sの内部には空洞部が形成される。空洞部は、掘削補助装置1が設定する掘削作業空間Sが地下方向に投影する面積よりも大きくなるように、掘削補助装置1の下において、多少張り出した中空形状となってもよい。作業空間Sの内部から地下方向に空洞部が形成されると空洞部の側壁が斜面崩壊する。空洞部の側壁が斜面崩壊することに伴い、空洞部の側壁を滑り面として、掘削補助装置1の壁状体2の下端部が自重で空洞部の内部に沈降する。このため、最下段のシャッター板10aの少なくとも一部が地盤Gに埋まる。尚、掘削補助装置1を地盤Gの内部の空洞部に沈降させるにあたっては、人間の力や他の力を加えて行ってもよい。
空洞部の内部に掘削補助装置1の下端部が沈降すると、図14に示すように、地盤Gは、掘削補助装置1の壁状体2の壁面とシャッター板10aによって、掘削作業空間S側の地盤Gと外側の地盤Gとに分画される。開口面2fの一部がシャッター板10aによって遮蔽されていることにより、玉砂利の流動性が高くても、掘削作業空間Sの外側においては、掘削補助装置1の壁状体2の壁面とシャッター板10aによって斜面崩壊が停止されている。したがって、壁状体2の壁面とシャッター板10aによって、掘削作業空間S側の地盤Gと外側の地盤Gとがいずれも相手側に移動することが防止できる。
掘削作業空間S内の玉砂利は流動性が高いので、掘削作業の進行中、掘削作業空間S内で地盤Gの一部がかき取られた箇所には、かき取られた箇所の周囲の玉砂利が斜面崩壊で流れ込む。一方、掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、掘削補助装置1の壁状体2とシャッター板10aに阻まれ、掘削作業空間Sに侵入できない。即ち玉砂利の斜面崩壊による流れ込みは、掘削補助装置1の壁状体2の下端部及びシャッター板10a下端部の下方にのみ限定することができる。
続けて、図14に示すように、バケット31の掘削によって、掘削作業空間Sの内部の地盤Gに更に深い空洞部を掘削することにより、掘削補助装置1の下端部が、空洞部の側壁を滑り面として更に沈降する。このようにして、バケット31によって掘削作業空間Sの内部の地盤Gを掘削し、最下段のシャッター板10aの更に他の一部が埋まる。掘削作業空間Sの内部の地盤Gを構成していた組織物はバケット31に収納され、掘削機30のアームシリンダによるアームの動作、掘削機30のブームシリンダによるブームの動作によって、バケット31を上昇させ、上昇後に、ブームを掘削機30の機体上部と共に旋回させることにより、掘削作業空間Sの外部に運ばれてバケット31から開放される。
(b)次に、開口面2fにおいて、最下段のシャッター板10aの上に2段目のシャッター板10bを保持させ、図15に示すように、開口面2fの他の一部を遮蔽し、掘削作業空間Sの内部の地盤Gを更に掘削する。2段目のシャッター板10bの取り付けにより掘削補助装置1の重量が増加するので、掘削補助装置1の下端部は空洞部の側壁を滑り面として若干の降下が進行する。この段階では、開口面2fには、未だ3枚のシャッター板10c,10d,20が取り付けられていないので、開口面2fの比較的深い開口部(U字型の割れ目)を利用したアームやブームの動作によって、より地下深くまでバケット31を進入させて掘削することができる。掘削作業の進行中、掘削作業空間S内で地盤Gの一部がバケット31によってかき取られた箇所には、かき取られた箇所の周囲の玉砂利が流れ込む。一方、掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、壁状体2とシャッター板10a、10bに阻まれ、壁状体2とシャッター板10a、10bに沿って、玉砂利の垂直な側壁が形成される。
バケット31の掘削によって、掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gに更に深い空洞部ができることにより、掘削補助装置1の下端部が、空洞部の側壁を滑り面として、更に自重で自動的に沈降する。自動的な沈降を伴いながら更に、バケット31による掘削を継続し、2段目のシャッター板10bの少なくとも一部が埋まるように掘削補助装置1の下端部を地盤Gに埋め込む。図15には、地盤Gの上面から飛び出すように、最下段のシャッター板10aの高さDaに2段目のシャッター板10bの高さDbを加えた高さの斜面崩壊遮蔽面が開口面2fに設定された状態が模式的に示されている。掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを構成していた組織物はバケット31に収納され、アームやブームの操作によって、バケット31を上昇させた後、ブームを機体上部と共に旋回させることにより、掘削作業空間Sの外部に運ばれてバケット31から開放され、外部に堆積される。
(c)図16及び図17に示すように、2段目のシャッター板10bの上に3段目のシャッター板10cを保持させ、開口面2fの更に他の一部が順次連続的に遮蔽された状態で掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを更に掘削する。3段目のシャッター板10cの取り付けにより掘削補助装置1の重量が更に増加するので、掘削補助装置1の下端部は空洞部の側壁を滑り面として若干の降下が進行する。この段階では、未だ開口面2fには、2枚のシャッター板10d,20が取り付けられていないので、開口面2fの開口部を利用したアームやブームの動作によって、より地下深くまでバケット31を進入させて掘削することができる。掘削作業の進行中、掘削作業空間S内で地盤Gの一部がバケット31によってかき取られた箇所には、かき取られた箇所の周囲の玉砂利が流れ込む。一方、掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、壁状体2とシャッター板10a、10b、10cに阻まれ、壁状体2とシャッター板10a、10b、10cに沿って、玉砂利の垂直な側壁が形成される。
バケット31の掘削によって、掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gに更に深い空洞部ができることにより、掘削補助装置1の下端部が、空洞部の側壁を滑り面として、更に自重で自動的に沈降する。自動的な沈降を伴いながら更に、バケット31による掘削を継続し、3段目のシャッター板10cの少なくとも一部が埋まるように掘削補助装置1を地盤Gに更に埋め込む。掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを構成していた組織物はバケット31に収納され、アームやブームの操作によって、バケット31を上昇させた後、ブームを機体上部と共に旋回させることにより、掘削作業空間Sの外部に運ばれてバケット31から開放され、外部に堆積される。
(d)3段目のシャッター板10cの上に4段目のシャッター板10dを保持させ、開口面2fの更に他の一部が順次連続的に遮蔽された状態で掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを更に掘削する。4段目のシャッター板10dの取り付けにより掘削補助装置1の重量が更に増加するので、掘削補助装置1の下端部は空洞部の側壁を滑り面として若干の降下が進行する。この段階では、未だ開口面2fには、最上段のシャッター板20が取り付けられていないので、開口面2fには浅い開口部がある。開口面2fの浅い開口部を利用したアームやブームの動作によって、より地下深くまでバケット31を進入させて掘削することができる。掘削作業の進行中、掘削作業空間S内で地盤Gの一部がバケット31によってかき取られた箇所には、かき取られた箇所の周囲の玉砂利が流れ込む。一方、掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、壁状体2とシャッター板10a、10b、10c、10dに阻まれ、壁状体2とシャッター板10a、10b、10c、10dに沿って、玉砂利の垂直な側壁が形成される。
バケット31の掘削によって、掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gに更に深い空洞部ができることにより、掘削補助装置1の下端部が更に自重で自動的に沈降する。自動的な沈降を伴いながら更に、バケット31による掘削を継続し、4段目のシャッター板10dの少なくとも一部が埋まるように掘削補助装置1を地盤Gに更に埋め込む。掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを構成していた組織物はバケット31に収納され、アームやブームの操作によって、バケット31を上昇させた後、ブームを機体上部と共に旋回させることにより、掘削作業空間Sの外部に運ばれてバケット31から開放され、外部に堆積される。
(e)4段目のシャッター板10dの上に最上段のシャッター板20を保持し、開口面2fの更に他の一部を順次連続的に遮蔽した状態で、掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを更に掘削する。最終段のシャッター板20の取り付けにより掘削補助装置1の重量が更に増加するので、掘削補助装置1の下端部は空洞部の側壁を滑り面として若干の降下が進行する。開口面2fはすべて遮蔽されるとともに、壁状体2の上面が地盤Gの上面から突出する部位が殆ど無くなるため、アームシリンダによるアームの動作やブームシリンダによるブームの動作は大きく妨げられることはない。
図18に示すように壁状体2の全体をほぼ地盤Gの内部に埋め込んだ状態での掘削作業の進行中、掘削作業空間S内で地盤Gの一部がバケット31によってかき取られた箇所には、かき取られた箇所の周囲の玉砂利が流れ込む。一方、掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、壁状体2とシャッター板10a〜10d及び20に阻まれ、掘削作業空間Sに侵入できないので、地盤Gの垂直な側壁が、壁状体2とシャッター板10a〜10d及び20に沿って実現される。バケット31の掘削によって、掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gに更に深い空洞部ができることにより、掘削補助装置1の下端部が、空洞部の側壁を滑り面として更に自重で自動的に沈降する。自動的な沈降を伴いながら更に、バケット31による掘削を継続し、最上段のシャッター板20の少なくとも一部が埋まるように掘削補助装置1を地盤Gに更に埋め込む。
掘削作業空間Sの内部及びその地下方向の地盤Gを構成していた組織物はバケット31に収納され、アームやブームの操作によって、バケット31を上昇させた後、ブームを機体上部と共に旋回させることにより、掘削作業空間Sの外部に運ばれてバケット31から開放され、外部に堆積される。そして、図18に示すように、地盤Gの上面から5枚のシャッター板10a〜10d、20の高さの総和の高さに相当する深さD(=Da+Db+Dc+Dd+De)の空洞部Saが完成する。掘削補助装置1の外側の地盤Gの玉砂利の斜面崩壊は、壁状体2とシャッター板10a〜10d及び20に阻まれ、空洞部Saの内部には侵入できないので、壁状体2とシャッター板10a〜10d及び20に沿って、玉砂利の垂直な側壁が形成される。
(f)更に、長尺物40を掘削作業空間Sの内部の空洞部Saに、クレーン等で吊り上げて搬送して、空洞部Saに落とし込んで設置する。長尺物40の下端が空洞部Saの底部に接するようにして、長尺物40をクレーン等で鉛直方向に立てる。図19では、長尺物40が電柱の場合を例に記載している。そして、掘削作業空間Sの外部に堆積されていた組成物をバケット31に再収納し、掘削機30のブームを横方向に旋回して、バケット31を掘削作業空間Sの外部から掘削作業空間Sの内部に運ぶ。掘削作業空間Sの内部において、長尺物40の下部に向かってバケット31から組成物を開放して長尺物40の下部に充填する。
(g)掘削機30のブームを旋回し掘削作業空間Sの内部にバケット31を移動して、組成物を開放し、長尺物40の下部に充填する作業を、図19に示すように、組成物が地盤Gの上面のレベルに充填されるまで続ける。このとき組成物は長尺物40が垂直に立った状態を保持できる程度に充填される。柱状の長尺物40は、周囲に埋め戻された組成物からの支持力により、図19に示すように鉛直に立った状態が保持され、傾斜することはない。
(h)フックを掘削補助装置1の4個の作業孔2d1〜2d4等に引っ掛け、クレーン等を用いて掘削補助装置1を、掘削補助装置1の下端部が地盤Gの上面のレベルに来るまで垂直な側壁に沿って、上方に引き上げ、図20に示すように、掘削補助装置1を組成物から引き抜く。掘削補助装置1が地盤Gから引き抜かれた直後の時点では、柱状の長尺物40の周囲は、図21に示すように壁状体2の内壁面及び5枚のシャッター板10a〜10d,20の内壁面によって隙間なく取り囲まれている。
(i)掘削補助装置1を組成物から地上に引き抜いた後、2つのスライドレールと5枚のシャッター板10a〜10d,20との間のそれぞれの固定ピンを抜く。次に、最上段のシャッター板20の差込孔23に手を差し込んで、シャッター板20を持つ。次に、開口面2fに保持された最上段のシャッター板20を開口面2fの前側(図21では左側が開口面2fの「前側」である。)に倒すようにして引き出し、図21に模式的に示すように、壁状体2の開口面2fからシャッター板20を離脱させる。
このとき、図1を用いて説明したとおり、2つのスライド溝3a,4aのそれぞれの上端部は、最上段のシャッター板20の下端面よりも低い位置とされているので、最上段のシャッター板20をそのままの高さで、開口面2fの前側に水平移動して、容易にシャッター板20を取り外すことができる。尚、図21のように最上段のシャッター板20を、4段目のシャッター板10dの上端面とシャッター板20の下端面が接触することにより定義される軸を回転軸として、シャッター板20の上端面を前側下方に向かって回転させるように倒して、シャッター板20を開口面2fから取り外してもよい。最下段〜4段目の4枚のシャッター板10a〜10dの高さDa〜Ddを、Da=Db=Dc=Dd=350mmと選定しておけば、Da+Db+Dc+Dd=1400mmであるので、通常の成人の作業者であれば、シャッター板20は、ほぼ成人の目の高さか、それよりも低い位置にあり、作業者の腕力も使い易い位置関係となる。よって、最上段のシャッター板20を、人力(腕力)によって、簡単に開口面2fから取り外す作業ができる。
次に、図4に示した4段目のシャッター板10dの差込孔13dに手を差し込んで、4段目のシャッター板10dを持ち、4段目のシャッター板10dを、図22に示すように、2つのスライド溝3a,4aに沿って上方向にスライドさせる。その後、最上段のシャッター板20の場合と同様に、4段目のシャッター板10dを2つのスライド溝3a,4aのそれぞれの上端部の上方で、前側に引き出して壁状体2の開口面2fから離脱させる。Da+Db+Dc+Dd=1400mm程度に設定されていれば、スライド溝3a,4aのそれぞれの上端部の位置は、地上1200〜1300mm程度の作業者の腕力が発揮し易い位置にあるので、4段目のシャッター板10dを、人力によって簡単に開口面2fから取り外すことができる。
以降、開口面2fに保持された3段目のシャッター板10c、2段目のシャッター板10b、最下段のシャッター板10aの順に、4段目のシャッター板10dと同様に、壁状体2の開口面2fから人力によって簡単に離脱させることができる。図23には、5枚のシャッター板10a〜10d、20が壁状体2から離脱し、開口面2fが上下方向にすべて開放された状態が模式的に示されている。
次に、掘削補助装置1を、開口面2fと反対側の方向(図23において右側の方向)へ移動させ、掘削補助装置1を柱状の長尺物40の外周から取り外す。このとき、図24に示すように、掘削補助装置1の開口面2fは上下方向にすべて開放され、壁状体2がU字型の構造になっているので、図23において右側の方向への掘削補助装置1の移動時には、掘削補助装置1と柱状の長尺物40とは互いに接触しない。尚、掘削補助装置1を柱状の長尺物40の外周から取り外した後、埋め戻された箇所の組成物を掘削機30のバケット31の壁面等を用いて適宜突き固めることにより、地盤Gの内部応力を高め、長尺物40に対する支持力を高めてもよい。
本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法によれば、玉砂利を組成物とする流動性の高い地盤Gに電柱を埋込む場合は、1日あたり平均3〜4本の電柱を埋込むことができる。しかしながら、本発明の実施形態に係る掘削補助装置1を用いない場合は、1本の電柱を埋め込むために1日以上かかり、或いは何日かけても全く埋め込むことができないので、本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法の顕著な有効性が示される。
本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法を用いれば、掘削作業空間Sは、壁状体2の内壁面及び5枚のシャッター板10a〜10d、20の内面だけで形成され、掘削作業空間S内に突出する部位は殆ど生じない。又、掘削補助装置1の掘削作業空間S内で、5枚のシャッター板10a〜10d、20を壁状体2に連結するための部材を用いる必要がない。そのため、掘削作業空間S内において、掘削機30の掘削動作に干渉する箇所を減少し、掘削作業を効率よく行うことができる。
又、本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法によれば、柱状の長尺物40を、掘削した孔に埋め込んだ後、掘削補助装置1に取り付けられた5枚のシャッター板10a〜10d、20を取り外すだけで、開口面2fの全面をすべて開放し、長尺物40の外周に隙間を形成できる。形成された隙間を介して掘削補助装置1を、地盤Gの表面に沿って水平方向に引きずって移動させるだけで良いので、長尺物40の周囲からの掘削補助装置1の取り外し作業が簡略化できる。即ち、本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法によれば、掘削補助装置1を長尺物40の上端部まで引き上げる作業が不要となるので、電柱のような8〜16m程度高さや、それ以上の高さのある長尺物40であっても、長尺物40の周囲から容易に掘削補助装置1を取り外すことができる。
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになろう。
例えば壁状体の形状は、図1及び図2等に示した円弧状の後壁2cを有するU字型の壁状体2のトポロジーに限定されるものではない。例えば図13に示すように、平板状の後壁52cを有する矩形の箱形の壁状体52の形状であってよい。又、第1及び第2の保持機構は、図1及び図2等に示したようなスライド溝3a,4aに限定されるものではない。図13に示した他の実施形態に係る掘削補助装置51の壁状体52のように、左側壁52aと右側壁52bに、各々対向する側壁側に突出して形成された2個の突出部53,54によって、第1及び第2の保持機構を構成してもよい。図13に示した他の実施形態に係る掘削補助装置51の壁状体52では、上面図として、2個の突出部53,54が上下方向に沿って形成されるとともに、2個の突出部53,54に対してスライドするように包み込む溝部61,62が掘られた最上段のシャッター板60が示されている。図示を省略しているが、図13中の最上段のシャッター板60と同様な溝部を両端部に有する他の複数のシャッター板をセットとして準備し、シャッター板60の下に順に積段し、シャッター板の連続した組み合わせによって掘削補助装置51の開口面を遮蔽するように構成してもよい。
又、上述した本発明の実施形態に係る長尺物の埋込方法の説明では、掘削補助装置1を地盤Gに降下させた後、再び地上に戻した後、5枚のシャッター板10a〜10d、20を地上において逐次的に壁状体2から取り外したが、取り外し方法は上記した方法に限定されるものではない。例えば、掘削補助装置1を地盤Gから引き抜く際、最上段のシャッター板20の高さDe分だけ引き抜いた時点で、最上段のシャッター板20のみを先行して壁状体2の開口面2fから取り外してもよい。その後、掘削補助装置1の引き抜き作業を続行し、4段目以降のシャッター板についても、最上段のシャッター板20と同様に、それぞれのシャッター板の高さ分だけ引き抜いた時点で、引き抜と並行して都度取り外すようにしてもよい。掘削補助装置1の引き抜中に並行してシャッター板を取り外すことにより、掘削補助装置1の重量が減少して引き抜き作業が容易になる。又、柱状の長尺物の埋め込み作業の時間を短縮できる。
更に、本発明に係る柱状の長尺物掘削補助装置が用いられる地盤の土質は玉砂利に限定されるものでなく、砂等他の流動性が高い組織物からなる土質の地盤にも適用できる。又、柱状の長尺物は電柱以外にも、看板設置用柱や基礎工事用の埋め込み柱等であってよく、柱状である必要はない。又、本発明に係るシャッター板の枚数は5枚に限定されず、3枚或いは7枚等、長尺物の埋め込み深さ等に応じて、適宜変更されてよい。例えば、長尺物としての電柱を埋め込む場合は、全長が15m以下の場合は全長の1/6以上、全長が15mを超える場合は2.5m以上の深さとなるように、図18に示したDa+Db+Dc+Dd+Deの長さを選ぶか、シャッター板の枚数を増減して設計すればよい。
即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。