JP5974687B2 - 高炉操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉羽口から微粉炭などの固体還元材と、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)などの易燃性還元材とを吹込んで、燃焼温度を上昇させることにより生産性の向上及び還元材原単位の低減を図る高炉の操業方法に関するものである。
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出CO2の抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reducing Agent Rateの略で、銑鉄1t製造当たりの、羽口からの吹込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主にコークス及び羽口から吹込む微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては炭酸ガス排出抑制を達成するためにはコークスなどを廃プラ、LNG、重油等の水素含有率の高い還元材で置換する方策が有効である。下記特許文献1では、羽口から還元材を吹込むランスを二本以上用い、LNGなどの易燃性還元材と微粉炭などの固体還元材とを異なるランスから吹込む場合、易燃性還元材を吹込むランスの延長線と固体還元材を吹込むランスの延長線とが交差しないようにそれらのランスを配置することが記載されている。
特開2006−291251号公報
前記特許文献1に記載される高炉操業方法も、従来の微粉炭だけを羽口から吹込む方法に比べれば、燃焼温度の向上や還元材原単位の低減に効果があるものの、更なる改良の余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る高炉操業方法は、羽口から還元材を吹き込むためのランスを二本以上用い、固体還元材と易燃性還元材とを異なるランスから吹込む場合、前記固体還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線と前記易燃性還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とが交差し且つ吹込まれる固体還元材の主流と吹込まれる易燃性還元材の主流とが重なるように固体還元材を吹込むランスと易燃性還元材を吹込むランスとを配置し、前記羽口の軸心に垂直な方向における前記固体還元材を吹込むランスの軸線と前記易燃性還元材を吹込むランスの軸線との径方向の相対距離が20mm以下で軸線が交差し、前記易燃性還元材がLNG、シェールガス、都市ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とするものである。
た、前記相対距離が13mm以下で軸線が交差していることを特徴とするものである。
また、前記相対距離が10mm以下で軸線が交差していることを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を吹込むランスと易燃性還元材を吹込むランスの径方向の相対距離が0で軸線が交差していることを特徴とするものである。
また、前記ランスうち、固体還元材を吹込むランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を吹込むランスを二重管ランスとし、当該二重管ランスの内側管から固体還元材を吹込むと共に当該二重管ランスの外側管から支燃性ガスを吹込み、易燃性還元材を単管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
また、前記二重管ランスの外側管の出口流速及び前記単管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、バイオマスを混合することを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、バイオマスを混合使用することを特徴とするものである
而して、本発明の一態様に係る高炉操業方法によれば、異なるランスから吹込まれる易燃性還元材と固体還元材との流れが重なり、易燃性還元材がO2に接触して先に燃焼することで爆発的に拡散すると共に固体還元材が大幅に温度上昇し、これにより燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
また、ランスから吹込まれるガスの出口流速を20〜120m/sec以上とすることにより、昇温によるランスの変形を防止することができる。
また、固体還元材を吹込むランスを二重管ランスとし、二重管ランスの内側管から固体還元材を吹込み、外側管から支燃性ガスを吹込むことにより、固体還元材の燃焼に必要な酸素を確保することができる。
また、二重管ランスの外側管の出口流速及び前記単管ランスの出口流速を20〜120m/secとすることにより、昇温によるランスの変形を防止することができる。
本発明の高炉操業方法が適用された高炉の一実施形態を示す縦断面図である。 図1のランスから微粉炭だけを吹込んだときの燃焼状態の説明図である。 図2の微粉炭の燃焼メカニズムの説明図である。 微粉炭とLNGを吹込んだときの燃焼メカニズムの説明図である。 燃焼実験装置の説明図である。 燃焼実験結果の説明図である。 ランス同士の径方向の相対距離を変化させたときの着火点までの距離の説明図である。 二本のランスの径方向の相対距離が大きいときの微粉炭流及びLNG流の概念図である。 二本のランスの径方向の相対距離が小さいときの微粉炭流及びLNG流の概念図である。 ランスの延長線が交差する場合としない場合の燃焼温度の説明図である。 二重管ランスの延長線が交差する場合としない場合の燃焼温度の説明図である。 ランスの出口流速とランス表面温度の関係を示す説明図である。
次に、本発明の高炉操業方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉操業方法が適用された高炉の全体図である。図に示すように、高炉1の羽口3には、熱風を送風するための送風管2が接続され、この送風管2を貫通してランス4が設置されている。羽口3の熱風送風方向先方のコークス堆積層には、レースウエイ5と呼ばれる燃焼空間が存在し、主として、この燃焼空間で鉄鉱石の還元、即ち造銑が行われる。
図2には、ランス4から固体還元材として微粉炭6だけを吹込んだときの燃焼状態を示す。ランス4から羽口3を通過し、レースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、コークス7と共に、その揮発分と固定炭素が燃焼し、揮発分が放出されて残った、一般にチャーと呼ばれる炭素と灰分の集合体は、レースウエイから未燃チャー8として排出される。羽口3の熱風送風方向先方における熱風速度は約200m/secであり、ランス4の先端からレースウエイ5内におけるOの存在領域は約0.3〜0.5mとされているので、実質的に1/1000秒のレベルで微粉炭粒子の昇温及びO2との接触効率(分散性)の改善が必要となる。
図3は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC:Pulverized Coal)6のみを吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。羽口3からレースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、レースウエイ5内の火炎からの輻射伝熱によって粒子が加熱し、更に輻射伝熱、伝導伝熱によって粒子が急激に温度上昇し、300℃以上昇温した時点から熱分解が開始し、揮発分に着火して火炎が形成され、燃焼温度は1400〜1700℃に達する。揮発分が放出してしまうと、前述したチャー8となる。チャー8は、主に固定炭素であるので、燃焼反応と共に、炭素溶解反応と呼ばれる反応も生じる。
図4は、ランス4から送風管2内に微粉炭6と共に易燃性還元材としてLNG9を吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。微粉炭6とLNG9の吹込み方法は、単純に平行に吹込んだ場合を示している。なお、図中の二点鎖線は、図3に示した微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度を参考に示している。このように微粉炭とLNGを同時に吹込む場合、気体ガスのLNGが優先的に燃焼し、この燃焼熱によって微粉炭が急速に加熱、昇温すると考えられ、これによりランスに近い位置で燃焼温度が更に上昇する。
このような知見に基づき、図5に示す燃焼実験装置を用いて燃焼実験を行った。実験炉11内にはコークスが充填されており、覗き窓からレースウエイ15の内部を観察することができる。送風管12にはランス14が差し込まれ、燃焼バーナ13で生じた熱風を実験炉11内に所定の送風量で送風することができる。また、この送風管12では、送風の酸素富化量を調整することも可能である。ランス14は、微粉炭及びLNGの何れか一方又は双方を送風管12内に吹込むことができる。実験炉11内で生じた排ガスは、サイクロンと呼ばれる分離装置16で排ガスとダストに分離され、排ガスは助燃炉などの排ガス処理設備に送給され、ダストは捕集箱17に捕集される。
燃焼実験には、ランス4に単管ランスと二重管ランスの二種類を用い、単管ランスを用いて微粉炭のみを吹込んだ場合、二重管ランスを用い、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管からLNGを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々について覗き窓から2色温度計による燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性を測定した。2色温度計は、周知のように、熱放射(高温物体から低温物体への電磁波の移動)を利用して温度計測を行う放射温度計であり、温度が高くなると波長分布が短波長側にずれていくことに着目して、波長分布の温度の変化を計測することで温度を求める波長分布形の一つであり、中でも波長分布を捉えるため、2つの波長における放射エネルギーを計測し、比率から温度を測定するものである。未燃チャーの燃焼状況は、実験炉11の送風管12内のランス14先から150mm、300mmの位置にてプローブで未燃チャーを回収して、樹脂埋め、研磨後、画像解析によってチャー内空隙率を測定し、判定した。
微粉炭の諸元は、固定炭素(FC:Fixed Carbon)77.8%、揮発分(VM:Volatile Matter)13.6%、灰分(Ash)8.6%で、吹込み条件は29.8kg/h(溶銑1t当たり100kgに相当)とした。また、LNGの吹込み条件は、3.6kg/h(5Nm3/h、溶銑1t当たり10kgに相当)とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量300Nm3/h、流速70m/s、O2富化+5.5(酸素濃度26.5%、空気中酸素濃度21%に対し、5.5%の富化)とした。少ないガス量で粉体、つまり微粉炭を輸送する方式(高濃度搬送)では固気比10〜25kg/Nm3、多量のガスで輸送する方式(低濃度輸送)では固気比5〜10kg/Nm3である。搬送ガスには空気を用いることもできる。実験結果の評価は、単管から微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性(主として微粉炭)を基準とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管からLNGを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々を評価した。評価は、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
図6には、前述した燃焼実験の結果を示す。同図から明らかなように、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管からLNGを吹込む場合には、燃焼位置については改善が見られたが、その他の項目については変化が見られない。これは、微粉炭の外側のLNGが先にO2と接触して速やかに燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の加熱速度が上昇したものの、LNGの燃焼にO2が消費されてしまい、微粉炭の燃焼に必要なO2が減少して、十分な燃焼温度上昇に至らず、未燃チャーの燃焼状況も改善されなかったと考えられる。一方、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、外側管から微粉炭を吹込む場合には、燃焼温度、未燃チャーの燃焼状況について改善が見られ、拡散性については大幅な改善が見られたものの、燃焼位置については変化が見られない。これは、外側の微粉炭領域を通じた内側のLNGまでのO2の拡散に時間を要したものの、内側の易燃性のLNGが燃焼すれば、爆発的な拡散が生じ、LNGの燃焼熱で微粉炭が加熱されて燃焼温度も上昇し、未燃チャーの燃焼状況も改善されたものと考えられる。
本願発明者は、この実験結果を踏まえて、前述の燃焼実験装置を用い、羽口送風管内に二本の単管ランスを互いに対向する側、例えば炉内側に向けて上下から差し込み、一方のランスからは微粉炭を、他方のランスからはLNGを吹込み、二本のランスの径方向の相対距離を種々に変更して微粉炭吹込みランスから着火点までの距離を測定した。送風には酸素を富化した。測定結果を図7に示す。図の下部の円は、送風管内を送風方向手前側から見たランスの状態を示している。二本のランスの径方向の相対距離とは、図の符号Dに相当する。
図8には、二本のランスの径方向の相対距離Dが大きいときの微粉炭流及びLNG流の概念図を、図9には、二本のランスの径方向の相対距離Dが小さいときの微粉炭流及びLNG流の概念図を示す。二本のランスの径方向の相対距離Dが小さくランス同士が接近すると、二本のランスから吹込まれる微粉炭とLNGの主流が重なり始め、微粉炭流がLNGの燃焼場に直接包まれる。その結果、LNGの燃焼高温領域で微粉炭は急速に昇温され、また着火燃焼するため、着火時間が短くなる現象を生じる。
図7から明らかなように、二本のランスの径方向の相対距離Dが小さいほど、微粉炭を吹込むランス(図ではPCランス)先端から着火点までの距離が小さい、即ち燃焼開始時間が短くなるのである。これは、二本のランスの径方向の相対距離が小さいほど、吹込まれる微粉炭の主流とLNGの主流とが重なり易く、その重なる部分で、前述のようなLNGの燃焼に伴う拡散や温度上昇が発生し、微粉炭が燃焼し易くなるものと考えられる。更に、燃焼開始時間が短ければ、燃焼温度も高くなると考えられた。
この二本のランスの径方向の相対距離短縮に伴う着火時間短縮のためには、微粉炭を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とLNGを吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とが交差する必要があるが、完全交差の必要はなく、二本のランスの径方向の相対距離Dで見るとき、微粉炭を吹込むランスの軸線とLNGを吹込むランスの軸線の相対距離Dが20mm以内であれば着火時間短縮を図ることができる。また、好ましくは相対距離Dを13mm以内、より好ましくは相対距離Dを10mm以内とすることにより、着火時間短縮のほか、バラツキも低下できる。そして、二本のランスの径方向の相対距離が0になると、ランスの延長線、つまりランス先端から延長した当該ランスの軸線同士が完全に交差し、そのとき着火時間が最短となる。
また、LNGを吹込むランスを、微粉炭を吹込むランスより炉側(図のLNG炉側)、つまり送風方向先方に配置しても着火時間が短くなる現象を生じるが、LNGを吹込むランスと微粉炭を吹込むランスの吹込み先端位置を一致(図の先端合わせ)させた場合、更にLNGを吹込むランスの先端位置が微粉炭を吹込むランスの先端位置より送風側(図のLNG送風側)、つまり送風方向手前側に配置した場合、即ち微粉炭を吹込むランスがLNGを吹込むランスより送風方向先方にあるときが、より着火時間が短縮される結果を得た。即ち、LNGを吹込むランスと微粉炭を吹込むランスの吹込み先端位置が送風方向で一致、或いはLNGを吹込むランスの先端位置が、微粉炭を吹込むランスの先端位置より送風方向手前側にあるとき、始めに吹込まれたLNGの燃焼主流内に微粉炭が吹込まれることになり、LNGの燃焼主流内の高温場により吹込まれた微粉炭は急速に昇温し、着火時間短縮が実現されるのである。
そこで、次にランスに単管ランスを用い、二本のランスの延長線が交差しない状態で二本のランスから微粉炭のみを吹込んだ場合、同じく二本のランスの延長線が交差しない状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合、二本のランスの延長線が20mm以下で交差する状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合の夫々のランス先端からの距離と燃焼温度を測定した。測定結果を図10に示す。図のPC偏芯ダブルが二本のランスの延長線が交差しない状態で二本のランスから微粉炭のみを吹込んだ場合を示し、PC,LNG偏芯が二本のランスの延長線が交差しない状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合を示し、PC,LNG同軸が二本のランスの延長線が交差する状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合を示す。同図から明らかなように、二本のランスの延長線が交差する状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合の燃焼温度が最も高い。
更に、微粉炭の燃焼効率を向上するため、微粉炭を吹込むランスに二重管ランスも用い、二重管ランスを用いる場合は、その二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管から支燃性ガスとしてO2を吹込んで、微粉炭吹込み用二重管ランス先端からの距離と燃焼温度を測定した。LNGは単管ランスから吹込んだ。微粉炭のみを吹込む場合も単管ランスを用いた。測定結果を図11に示す。図のPC×2(交差せず)は、二本の単管ランスの延長線が交差しない状態で二本のランスから微粉炭のみを吹込んだ場合を示す。また、図のPC,LNG(交差せず)は、二本の単管ランスの延長線が交差しない状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合を示す。また、図のPC,LNG(交差)は、二本の単管ランスの延長線が交差する状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合を示す。また、図のPC+O2,LNG(交差)は、二重管ランスの延長線と単管ランスの延長線が交差する状態で二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、その外側管からO2を吹込み、単管ランスからLNGを吹込んだ場合を示す。同図から明らかなように、二本のランスの延長線が交差する状態で一方のランスから微粉炭を吹込み、他方のランスからLNGを吹込んだ場合の燃焼温度が高く、二本のランスの延長線が交差する状態で二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、その外側管からO2を吹込み、他方の単管ランスからLNGを吹込んだ場合が最も高い。これは、先に燃焼するLNGで消費される送風中のO2を補って、微粉炭の燃焼に必要なO2を確保するためであると考えられる。
ところで、前述のような燃焼温度の上昇に伴って、ランスは高温に晒され易くなる。ランスは、例えばステンレス鋼鋼管で構成される。勿論、ランスには所謂ウォータージャケットと呼ばれる水冷が施されているが、ランス先端までは覆うことができない。特に、この水冷の及ばないランスの先端部が熱で変形し易いことが分かった。また、LNGを吹込むランス先端が微粉炭を吹込むランス先端より送風方向手前側(送風側)にあるとき、微粉炭を吹込むランス先端は、LNGの燃焼高温領域に入るため、よりランスが変形し易くなる。ランスが変形する、つまり曲がると所望部位に微粉炭やLNGを吹込むことができないし、消耗品であるランスの交換作業に支障がある。また、微粉炭の流れが変化して羽口に当たることも考えられ、そのような場合には羽口が損傷する恐れがある。ランスが曲がって閉塞され、その結果、ランス内のガスが流れなくなると、ランスが溶損し、場合によっては送風管が破損する可能性もある。ランスが変形したり損耗したりすると、前述のような燃焼温度を確保することができなくなり、ひいては還元材原単位を低減することもできない。
水冷できないランスを冷却するためには、内部に送給されるガスで放熱するしかない。内部に流れるガスに放熱してランス自体を冷却する場合、ガスの流速がランス温度に影響を与えると考えられる。そこで、本発明者等は、ランスから吹込まれるガスの流速を種々に変更してランス表面の温度を測定した。実験には二重管ランスを用い、二重管ランスの外側管からOを吹込み、内側管から微粉炭を吹込んで行い、ガスの流速調整は、外側管から吹込まれるOの供給量を加減した。なお、Oは、酸素富化空気でもよく、2%以上、好ましくは10%以上の酸素富化空気を使用する。酸素富化空気を使用することによって、冷却の他、微粉炭の燃焼性の向上を図る。測定結果を図12に示す。
二重管ランスの外側管には、20Aスケジュール5Sと呼ばれる鋼管を用いた。また、二重管ランスの内側管には、15Aスケジュール90と呼ばれる鋼管を用い、外側管から吹込まれるOとNの合計流速を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ちなみに、「15A」、「20A」はJIS G 3459に規定する鋼管外径の称呼寸法であり、15Aは外径21.7mm、20Aは外径27.2mmである。また、「スケジュール」はJIS G 3459に規定する鋼管の肉厚の称呼寸法であり、20Aスケジュール5Sは1.65mm、15Aスケジュール90は3.70mmである。なお、ステンレス鋼鋼管の他、普通鋼も利用できる。その場合の鋼管の外径はJIS G 3452に規定され、肉厚はJIS G 3454に規定される。
同図に二点鎖線で示すように、二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの流速の増加に伴ってランス表面の温度が反比例的に低下している。鋼管を二重管ランスに使用する場合、二重管ランスの表面温度が880℃を上回るとクリープ変形が起こり、二重管ランスが曲がってしまう。従って、二重管ランスの外側管に20Aスケジュール5Sの鋼管を用い、二重管ランスの表面温度が880℃以下である場合の二重管ランスの外側管の出口流速は20m/sec以上となる。そして、二重管ランスの外側管の出口流速が20m/sec以上である場合には二重管ランスに変形や曲がりは生じない。一方、二重管ランスの外側管の出口流速が120m/secを超えたりすると、設備の運用コストの点で実用的でないので、二重管ランスの外側管の出口流速の上限を120m/secとした。この結果は、同じく水冷の及ばない単管ランスの先端部でも同様に作用するため、単管ランスの出口流速も20〜120m/secと規定した。なお、単管ランスは二重管ランスに比べて熱負荷が少ないため、必要に応じ、出口流速を20m/sec以上とすればよい。
前記実施形態では、微粉炭の平均粒子径は10〜100μmで使用されるが、燃焼性を確保し、ランスからの送給並びにランスまでの供給性を考慮したとき、好ましくは20〜50μmとするとよい。微粉炭の平均粒子径が20μm未満では、燃焼性は優れるが、微粉炭輸送時(気体輸送)にランスが詰まり易く、50μmを超えると微粉炭燃焼性が悪化する恐れがある。
また、吹込む固体還元材には、微粉炭を主として、その中に廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材を混合使用してもよい。混合使用の際は、微粉炭の全固体還元材に対する比は80mass%以上とするのが好ましい。即ち、微粉炭と、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材などでは反応による熱量が異なるため、互いの使用比率が近くなると燃焼に偏りが生じ易くなり、操業の不安定となり易い。また、微粉炭と比して、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材等は燃焼反応による発熱量が低位であるため、多量に吹込むと炉頂より装入される固体還元材に対する代替効率が低下するため、微粉炭の割合を80mass%以上とするのが好ましいのである。
なお、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材は、6mm以下、好ましくは3mm以下の細粒として微粉炭と混合使用できる。微粉炭との割合は、搬送ガスにより気送される微粉炭と合流させることで混合可能である。予め微粉炭と混合して使用しても構わない。
更に、前記実施形態では、易燃性還元材としてLNGを用いて説明したが、都市ガスも使用可能であり、他の易燃性還元材としては、都市ガス、LNG以外に、プロパンガス、水素の他、製鉄所で発生する転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスを用いることもできる。なお、LNGと等価としてシェールガス(shale gas)も利用できる。シェールガスは頁岩(シェール)層から採取される天然ガスであり、従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在来型天然ガス資源と呼ばれているものである。
このように、本実施形態の高炉操業方法では、羽口から還元材を吹込むランスを二本以上用い、LNG(易燃性還元材)を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線と微粉炭(固体還元材)を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とが交差するようにランスを配置したため、異なるランスから吹込まれるLNG(易燃性還元材)と微粉炭(固体還元材)との主流が重なり、LNG(易燃性還元材)がO2に接触して先に燃焼することで爆発的に拡散すると共に微粉炭(固体還元材)の温度が大幅に上昇し、これにより燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
また、ランスのうち、微粉炭(固体還元材)を吹込むランスから吹込まれるガスの出口流速を20〜120m/sec以上とすることにより、昇温によるランスの変形を防止することができる。
また、微粉炭(固体還元材)を吹込むランスを二重管ランスとし、二重管ランスの内側管から微粉炭(固体還元材)を吹込み、外側管から酸素(支燃性ガス)を吹込むことにより、固体還元材の燃焼に必要な酸素を確保することができる。
また、二重管ランスの外側管の出口流速及び前記単管ランスの出口流速を20〜120m/secとすることにより、昇温によるランスの変形を防止することができる。
なお、前記実施形態では、還元材を吹込むランスを二本使用したが、ランスは二本以上であれば何本用いてもよい。また、ランスには二重管ランスを用いてもよい。二重管ランスを用いる場合には、酸素などの支燃性ガスと易燃性還元材とを吹込むようにしてもよい。必要なのは、そのうちの易燃性還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線と、固体還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とが交差し且つ吹込まれる易燃性還元材の主流と固体還元材の主流とが重なるようにランスを配置することである。
1は高炉、2は送風管、3は羽口、4はランス、5はレースウエイ、6は微粉炭(固体還元材)、7はコークス、8はチャー、9はLNG(易燃性還元材)

Claims (10)

  1. 羽口から還元材を吹き込むためのランスを二本以上用い、固体還元材と易燃性還元材とを異なるランスから吹込む場合、前記固体還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線と前記易燃性還元材を吹込むランスの先端から延長した当該ランスの軸線とが交差し且つ吹込まれる固体還元材の主流と吹込まれる易燃性還元材の主流とが重なるように固体還元材を吹込むランスと易燃性還元材を吹込むランスとを配置し、前記羽口の軸心に垂直な方向における前記固体還元材を吹込むランスの軸線と前記易燃性還元材を吹込むランスの軸線との径方向の相対距離が20mm以下で軸線が交差し、前記易燃性還元材がLNG、シェールガス、都市ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とする高炉操業方法。
  2. 記相対距離が13mm以下で軸線が交差していることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
  3. 記相対距離が10mm以下で軸線が交差していることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉操業方法。
  4. 前記固体還元材を吹込むランスと易燃性還元材を吹込むランスの径方向の相対距離が0で軸線が交差していることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の高炉操業方法。
  5. 前記ランスのうち、固体還元材を吹込むランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の高炉操業方法。
  6. 前記固体還元材を吹込むランスを二重管ランスとし、当該二重管ランスの内側管から固体還元材を吹込むと共に当該二重管ランスの外側管から支燃性ガスを吹込み、易燃性還元材を単管ランスから吹込むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の高炉操業方法。
  7. 前記二重管ランスの外側管の出口流速及び前記単管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とする請求項に記載の高炉操業方法。
  8. 前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の高炉操業方法。
  9. 前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、バイオマスを混合することを特徴とする請求項に記載の高炉操業方法。
  10. 前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、バイオマスを混合使用することを特徴とする請求項に記載の高炉操業方法
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