JP5983293B2 - 高炉操業方法及びランス - Google Patents

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Description

本発明は、高炉羽口から微粉炭などの固体還元材と、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)などの気体還元材とを吹き込んで、燃焼温度を上昇させることにより生産性の向上及び還元材原単位の低減を図る高炉の操業方法及びそれに用いられるランスに関するものである。
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出COの抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reduction Agent Ratioの略で、銑鉄1t製造当たりの、羽口からの吹き込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主にコークス及び微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては炭酸ガス排出抑制を達成するためにはコークスなどを廃プラ、LNG、重油等の水素含有率の高い還元材で置換する方策が有効である。下記特許文献1では、複数のランスを用いて固体還元材、気体還元材、支燃性ガスを同時に吹き込むことで、気体還元材の燃焼場により固体還元材の昇温が促進されることで固体還元材の燃焼率が向上し、未燃粉やコークス粉の発生が抑制され、通気が改善することで還元材比が削減できるとされている。また、下記特許文献2では、ランスを二重管型とし、例えば内管から支燃性ガスを吹き込み、内管と外管との間から気体還元材と固体還元材とを吹き込むようにしている。また、下記特許文献3では、ランス内に複数の小径の吹き込み管を並列に配置するようにしている。また、下記特許文献4では、溶融還元炉に支燃性ガスと燃料を吹き込む場合に、吹き込み管を並列に配置し、各吹き込み管のノズルを円形とすることで、片側のノズルが損耗しても支燃性ガスと燃料の混合状態を維持できるとしている。
特開2007−162038号公報 特開2011−174171号公報 特開平11−12613号公報 実開平3−38344号公報
前記特許文献1に記載される高炉操業方法は、従来の微粉炭だけを羽口から吹き込む方法に比べれば、燃焼温度の向上や還元材原単位の低減に効果があり、特に固体状の還元材を吹き込む場合に有効である。しかしながら、前記特許文献2に記載されるようにランスを重管型とする場合、ランスの冷却能確保のため、外側の吹き込み速度を高位に保つ必要があり、そのためには内側管との隙間を極端に狭くしなければならず、設備制約上、所定のガス量を流すことができず、燃焼性向上の効果を得られない恐れがある。また、ガス量と流速を両立させようとした場合、ランスの径が極端に増大し、送風管(ブローパイプ)の送風量が低下して出銑量が低下したり、ランス差し込み口の径拡大に伴う周辺耐火物の破損リスクが増大したりすることが懸念される。一方、前記特許文献3に記載されるようにランス中に小径の吹き込み管を複数配置した場合、冷却能低下による吹き込み管の閉塞のリスクが高まるだけでなく、ランスの加工コストの増加といった問題が生じる。また、重管を途中から並列管に変化させているため、圧力損失と径の増加の問題を解消できていない。また、前述のように、高炉では送風管と羽口を通して炉内に熱風を送り込んでおり、固体還元材と支燃性ガスはこの熱風によって炉内へと運ばれる。このとき、固体還元材と支燃性ガスを二重管ランスから吹き込み、この二重管ランスと気体還元材を吹き込む単管ランスを特許文献4に記載されるような並列型ランスに配置すると、送風管及び羽口の断面積に対する並列型ランスの専有面積が大きく、送風圧力の増加によるランニングコストの増加、及び羽口の背面に設置されている炉内観察窓の視野減少の元となる。また、送風管にランスを挿入する部分(ガイド管)の大径化によりガイド管部と送風管との接着面が減少し、ガイド管部の剥離が生じやすくなってしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、ランスの径を極端に増加させることなく、冷却能の確保と燃焼性の向上の両立、及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法及びランスを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る高炉操業方法は、羽口から固体還元材をランスで吹き込む高炉操業方法において、気体還元材及び支燃性ガスを前記固体還元材と同時に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ固体還元材を吹き込む吹き込み管と支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管が気体還元材を吹き込む吹き込み管に内包された構造のランスを使用することを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、前記支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向下側に位置するように前記ランスを配置することを特徴とするものである。
また、本発明の一態様に係るランスは、羽口から還元材を吹き込むためのランスにおいて、気体還元材及び支燃性ガスを前記固体還元材と同時に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ固体還元材を吹き込む吹き込み管と支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管が気体還元材を吹き込む吹き込み管に内包されたことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、前記支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向下側に位置することを特徴とするものである。
また、夫々の吹き込み管の内径が少なくとも7mm以上、30mm以下であることを特徴とするものである。
而して、本発明の高炉操業方法及びランスによれば、固体還元材、気体還元材、支燃性ガスをランスから同時に羽口に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ固体還元材を吹き込む吹き込み管と支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管が気体還元材を吹き込む吹き込み管に内包されたランスを使用することで、ランスの外径を極端に増加させることなく、吹き込み管同士の隙間を大きく保つことができ、よって冷却能の確保と燃焼性の向上を両立することができ、その結果、還元材原単位を低減することができる。
また、固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向下側に位置するようにすることで、支燃性ガスと固体還元材との混合が促進されると共に、支燃性ガスと気体還元材との燃焼場によって固体還元材が昇温され、燃焼性が向上する。
本発明の高炉操業方法が適用された高炉の一実施形態を示す縦断面図である。 図1のランスから微粉炭だけを吹き込んだときの燃焼状態の説明図である。 図2の微粉炭の燃焼メカニズムの説明図である。 微粉炭とLNGと酸素とを吹き込んだときの燃焼メカニズムの説明図である。 燃焼実験装置の説明図である。 ランス内の吹き込み管の説明図である。 ランスの外観及び配置の説明図である。 ランスの周方向の角度を種々に変更した説明図である。 燃焼実験結果の燃焼率の説明図である。 ランスからの吹き込み状態の説明図である。 燃焼実験結果の圧力損失の説明図である。 燃焼実験結果のランス表面温度の説明図である。 ランスの外径の説明図である。 ランスの出口流速とランス表面温度の関係を示す説明図である。
次に、本発明の高炉操業方法及びランスの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉操業方法が適用された高炉の全体図である。図に示すように、高炉1の羽口3には、熱風を送風するための送風管2が接続され、この送風管2を貫通してランス4が設置されている。羽口3の熱風送風方向先方のコークス堆積層には、レースウエイ5と呼ばれる燃焼空間が存在し、主として、この燃焼空間で鉄鉱石の還元、即ち造銑が行われる。
図2には、ランス4から微粉炭6だけを吹き込んだときの燃焼状態を示す。ランス4から羽口3を通過し、レースウエイ5内に吹き込まれた微粉炭6は、コークス7と共に、その揮発分と固定炭素が燃焼し、燃焼しきれずに残った、一般にチャーと呼ばれる炭素と灰分の集合体は、レースウエイから未燃チャー8として排出される。羽口3の熱風送風方向先方における熱風速度は約200m/secであり、ランス4の先端からレースウエイ5内におけるOの存在領域は約0.3〜0.5mとされているので、実質的に1/1000秒のレベルで微粉炭粒子の昇温及びOとの接触効率(分散性)の改善が必要となる。
図3は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC:Pulverized Coal)6のみを吹き込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。羽口3からレースウエイ5内に吹き込まれた微粉炭6は、レースウエイ5内の火炎からの輻射伝熱によって粒子が加熱し、更に輻射伝熱、伝導伝熱によって粒子が急激に温度上昇し、300℃以上昇温した時点から熱分解が開始し、揮発分に着火して火炎が形成され、燃焼温度は1400〜1700℃に達する。揮発分が放出してしまうと、前述したチャー8となる。チャー8は、主に固定炭素であるので、燃焼反応と共に、炭素溶解反応と呼ばれる反応も生じる。
図4は、ランス4から送風管2内に微粉炭6と共にLNG9と酸素(酸素は図示せず)とを吹き込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。微粉炭6とLNG9と酸素との吹き込み方法は、単純に平行に吹き込んだ場合を示している。なお、図中の二点鎖線は、図3に示した微粉炭のみを吹き込んだ場合の燃焼温度を参考に示している。このように微粉炭とLNGと酸素とを同時に吹き込む場合、ガスの拡散に伴って微粉炭が分散し、LNGとO2の接触によってLNGが燃焼し、その燃焼熱によって微粉炭が急速に加熱、昇温すると考えられ、これによりランスに近い位置で微粉炭が燃焼する。
このような知見に基づき、図5に示す燃焼実験装置を用いて燃焼実験を行った。実験炉11内にはコークスが充填されており、覗き窓からレースウエイ15の内部を観察することができる。送風管12にはランス4が差し込まれ、燃焼バーナ13で生じた熱風を実験炉11内に所定の送風量で送風することができる。また、この送風管12では、送風の酸素富化量を調整することも可能である。ランス4は、微粉炭及びLNG及び酸素の何れか一つ又は二以上を送風管12内に吹き込むことができる。実験炉11内で生じた排ガスは、サイクロンと呼ばれる分離装置16で排ガスとダストに分離され、排ガスは助燃炉などの排ガス処理設備に送給され、ダストは捕集箱17に捕集される。
燃焼実験では、ランス4に単管ランス、三重管ランス(以下、重管型ランスとも記す)、2本の吹き込み管を並列に束ねて外側の吹き込み管に内包した並列型ランスを用いた。そして、単管ランスから微粉炭のみを吹き込んだ場合をベースとして、重管型ランスの内管から微粉炭を吹き込み、内管と中管の隙間から酸素を吹き込み、中管と外管の隙間からLNGを吹き込んだ場合、並列型ランスの1本の吹き込み管から微粉炭を吹き込み、1本の吹き込み管から酸素を吹き込み、外側の吹き込み管(内側2本の吹き込み管と外側の吹き込み管との間の隙間)からLNGを吹き込んだ場合の夫々について、燃焼率、ランス内圧力損失、ランス表面温度、並びにランスの外径を測定した。燃焼率については、酸素の吹き込み流速を変化させて測定した。燃焼率は、レースウエイの後方からプローブで未燃チャーを回収し、その未燃量から求めた。
図6aには重管形ランスの諸元を、図6bには並列型ランスの諸元を示す。重管形ランスでは、内管Iに呼び径8A、呼び厚さスケジュール10Sのステンレス鋼管を、中管Mに呼び径15A、呼び厚さスケジュール40のステンレス鋼管を、外管Oに呼び径20A、呼び厚さスケジュール10Sのステンレス鋼管を用い三重管構造とした。この三重管構造は、微粉炭を吹き込む内管I、酸素を吹き込む内管Iと中管Mの間隙、LNGを吹き込む中管Mと外管Oの間隙構造である。各ステンレス鋼管の諸元は図に示す通りである。そして、その結果、内管Iと中管Mの隙間は1.15mm、中管Mと外管Oの隙間は0.65mmとなった。また、並列型ランスでは、微粉炭を吹き込む第1管21に呼び径8A、呼び厚さスケジュール10Sのステンレス鋼管を、酸素を吹き込む第2管22に呼び径6A、呼び厚さスケジュール10Sのステンレス鋼管を、LNGを吹き込む第3管(外側管)23に呼び径20A、呼び厚さスケジュール10Sのステンレス鋼管を用い、それらを最密構造に束ねた。ここにいう最密構造とは、吹き込み管を最も密に配列できる空間構造を意味し、本発明では第3管23を外側管として、外側管内に第1管21、第2管22を内装する形をとった。各ステンレス鋼管の諸元は図に示す通りである。
実験では、図7aに示すように、並列型ランスの第1管21から微粉炭(PC)を吹き込み、第2管22から酸素を吹き込み、第3管23(第1管21及び第2管22と第3管23との隙間)からLNGを吹き込んだ。なお、夫々のランスの送風管(ブローパイプ)への差し込み長さは、図7bに示すように、50mmとした。また、並列型ランスでは、例えば吹き込み先端構造を調整することにより、微粉炭流、酸素流、LNG流を夫々調整することができる。吹き込み管の先端構造としては、例えば先端を斜めに切除したものや、先端を曲げた構造のものが適用できる。また、送風に対する各吹き込み管先端位置を調整することでも、種々の混合状態を形成することができる。
燃焼実験では、ランスの周方向の角度を種々に変更して、燃焼率を測定した。具体的には、例えば図8に示すように微粉炭を吹き込む第1管21のランス外縁部を点Aとしたとき、即ち最上部とし、その下部位置に第2管22を配置して酸素を吹込み、それらの外側の第3管23(第1管21及び第2管22と第3管23との隙間)からLNGを吹き込むようにしたとき(図8a)、その点Aとランスの中心を結ぶ線分(以下、単に微粉炭吹き込みランス外縁部とも記す)が鉛直線となす角度を0°(図8bのケース)、20°(図8cのケース)、30°(図8dのケース)、45°(図8eのケース)、60°(図8fのケース)、90°(図8gのケース)と変化させ、夫々の燃焼率を測定した。
微粉炭の諸元は、固定炭素(FC:Fixed Carbon)71.3%、揮発分(VM:Volatile Matter)19.6%、灰分(Ash)9.1%で、吹き込み条件は50.0kg/h(製銑原単位で158kg/t相当)とした。また、LNGの吹き込み条件は、3.6kg/h(5.0Nm/h、製銑原単位で11kg/t相当)とした。送風条件は、送風温度1100℃、流量350Nm/h、流速80m/s、O富化+3.7(酸素濃度24.7%、空気中酸素濃度21%に対し、3.7%の富化)とした。
図9には、燃焼実験による燃焼率の結果を示す。同図から明らかなように、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が45°を超える範囲では燃焼率が低下し、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が45°以下の範囲では燃焼率が高く、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が0°のときに燃焼率が最も高い。例えば、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が0°のときには、図8a、図8b及び図10aに示すように、酸素の吹き込み管である第2管22が微粉炭の吹き込み管である第1管21よりも送風方向下側に位置する。
また、このケースでは、LNGを吹き込む吹き込み管、即ち第1管21及び第2管22と第3管23との隙間も、第1管21よりも送風方向下側に位置することになり、第1管21から吹込まれる微粉炭は、その下部を流れる第2管22からの酸素及び/又はLNG流に随伴されて高炉炉内に送給されることになり、微粉炭と、酸素及び/又はLNGとの混合が促進されると共に、酸素とLNGとの燃焼場によって微粉炭が昇温され、燃焼性が向上する。
また、図8cのときは、酸素の吹き込み管である第2管22が微粉炭の吹き込み管である第1管21よりも送風方向下側に位置するとともに第3管23も送風方向下側に位置することになり、第1管21から吹込まれる微粉炭は、その下部を流れる第2管22及び第3管23からの酸素及びLNG流に随伴されて高炉炉内に送給されることになり、酸素及びLNGとの混合が促進されると共に、酸素とLNGとの燃焼場によって微粉炭が昇温され、燃焼性が向上する。図8dも同様である。
また、図8eでは、第1管21から吹込まれる微粉炭は、その送風方向下側に位置する第3管23からのLNG流のみに随伴されて高炉炉内に送給されることになり、随伴効果が図8b、図8c、図8dに比べて弱くなり、図8fでは、酸素及びLNGとの混合が促進されると共に、第1管21から吹込まれる微粉炭は、その送風方向下側に位置する第3管23のLNG流との重なりが減少するため、随伴効果がさらに減少する。また、図8gでは、第1管21から吹込まれる微粉炭は、その下側に随伴流がなくなるため、所謂重力沈降しつつ送風管内を流れて高炉内に吹込まれるため、酸素及び/又はLNGとの混合が弱くなり、他のケースより燃焼性が悪化する。
前記したように、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が45°を超える範囲では燃焼率が低下し、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が45°以下の範囲では燃焼率が高く、微粉炭吹き込み管ランス外縁部の鉛直線となす角度が0°のときに燃焼率が最も高いものとなったと推察される。従って本発明では、微粉炭、即ち固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、酸素、即ち支燃性ガス及び/又はLNG、即ち気体還元材を吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向下側に位置するように配置することで燃焼性を向上させるのである。
なお、LNGを吹き込む吹き込み管は、第3管23内の空隙、即ち、第3管23内面と第3管23内に配置された第1管21及び第2管22の外面で構成される空隙部分であるが、その空隙面積は充填材を挿入することで調整でき、使用される気体還元材の吹き込み量、吹き込み速度により、空隙面積を調整すればよい。本発明の並列型ランスでは、酸素は円管である第2管22を流れ、LNGは、第3管23内面と第3管23内に配置された第1管21及び第2管22の外面で構成される空隙部分を流れるため、重管型ランスでの外輪で構成される隙間を流れる場合と比べ圧力損失が大幅に低下できることになる。
なお、図10で、並列型ランスの各管の先端は平坦状態で示しているが、酸素及び/又はLNGを吹き込む吹き込み管の先端は微粉炭を吹込む吹き込み管に向けて斜めに切り欠いた形状としたり、先細り形状にしたりすることで、酸素及び/又はLNGの噴流の一部を微粉炭流に向け混合を促進するようにしてもよい。例えば、第1管21から吹込まれる噴流(微粉炭流)に対し、第2管22の先端面が斜めに切り欠いた先端として、切り欠き面を第1管21方向に向けることにより、第2管22から吹込まれる噴流(酸素流)は、微粉炭流側に拡大することから噴出直後から一部が混合し始め、微粉炭燃焼性向上に効果を発揮する。また、第1管21から吹込まれる噴流(微粉炭流)に対し、第3管23の先端部を先細りに絞った先端として、先端面を第1管21方向に向けることにより、第3管23から吹込まれる噴流(LNG流)は微粉炭流側に拡大することから、噴出直後から一部が混合し始め、LNG合流により微粉炭燃焼性向上に効果を発揮する。これらは、何れか一方だけでもよいが、双方を組合せたときに微粉炭燃焼性向上に最も効果を発揮する。なお、先端面が斜めに切り欠いた先端構造にかえ、第1管21に向けて先端面を曲げても同じ効果が発揮できる。
図11には、重管型ランスと並列型ランスの圧力損失の測定結果を示す。同図から明らかなように、並列型ランスは重管型ランスに比べ、同じ断面積における圧力損失が低下している。これは、隙間の間隔が大きくなることで通気抵抗が減少したものと考えられる。
図12には、ランスの冷却能の実験結果を示す。同図から明らかなように、並列型ランスは重管型ランスに比べ、同じ圧力損失における冷却能が高くなっている。これは、通気抵抗が低いため、同じ圧力損失において流すことのできる流量が大きいためだと考えられる。
図13には、ランスの外径を示す。図13aは非水冷型、図13bは水冷型のランスの外径である。同図から明らかなように、並列型ランスは重管型ランスに比べ、ランスの外径が小さくなっている。これは、並列型ランスでは重管型ランスに比べ、流路、管の厚さ、及び水冷部の断面積を低減可能なためであると考えられる。
図12に示すように、同じ圧力損失において冷却能が高くなっていることは、ランス冷却に有利である。前述のような燃焼温度の上昇に伴って、ランスは高温に晒され易くなる。ランスは、例えばステンレス鋼鋼管で構成される。ランスの外側には所謂ウォータージャケットと呼ばれる水冷が施されている例もあるが、ランス先端までは覆うことができない。特に、この水冷の及ばないランスの先端部が熱で変形し易いことが分かった。ランスが変形する、つまり曲がると所望部位にガスや微粉炭を吹込むことができないし、消耗品であるランスの交換作業に支障がある。また、微粉炭の流れが変化して羽口に当たることも考えられ、そのような場合には羽口が損傷する恐れがある。また、例えば重管型ランスの外側管が曲がると、内側管との隙間が閉塞され、外側管からガスが流れなくなると、重管型ランスの外側管が溶損し、場合によっては送風管が破損する可能性もある。ランスが変形したり損耗したりすると、前述のような燃焼温度を確保することができなくなり、ひいては還元材原単位を低減することもできない。
水冷できないランスを冷却するためには、内部に流れるガスで冷却するしかない。内部に流れるガスに放熱して例えばランス自体を冷却する場合、ガスの流速がランス温度に影響を与えると考えられる。そこで、本発明者等は、ランスから吹込まれるガスの流速を種々に変更してランス表面の温度を測定した。実験は、二重管ランスの外側管から酸素を吹込み、内側管から微粉炭を吹込んで行い、ガスの流速調整は、外側管から吹込まれる酸素の供給量を加減した。なお、酸素は、酸素富化空気でもよく、2%以上、好ましくは10%以上の酸素富化空気を使用する。酸素富化空気を使用することによって、冷却の他、微粉炭の燃焼性の向上を図る。測定結果を図15に示す。
二重管ランスの外側管には、20Aスケジュール5Sと呼ばれる鋼管を用いた。また、二重管ランスの内側管には、15Aスケジュール90と呼ばれる鋼管を用い、外側管から吹込まれる酸素と窒素の合計流速を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ちなみに、「15A」、「20A」はJIS G 3459に規定する鋼管外径の称呼寸法であり、15Aは外径21.7mm、20Aは外径27.2mmである。また、「スケジュール」はJIS G 3459に規定する鋼管の肉厚の称呼寸法であり、20Aスケジュール5Sは1.65mm、15Aスケジュール90は3.70mmである。なお、ステンレス鋼鋼管の他、普通鋼も利用できる。その場合の鋼管の外径はJIS G 3452に規定され、肉厚はJIS G 3454に規定される。
同図に二点鎖線で示すように、二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの流速の増加に伴ってランス表面の温度が反比例的に低下している。鋼管を二重管ランスに使用する場合、二重管ランスの表面温度が880℃を上回るとクリープ変形が起こり、二重管ランスが曲がってしまう。従って、二重管ランスの外側管に20Aスケジュール5Sの鋼管を用い、二重管ランスの表面温度が880℃以下である場合の二重管ランスの外側管の出口流速は20m/sec以上となる。そして、二重管ランスの外側管の出口流速が20m/sec以上である場合には二重管ランスに変形や曲がりは生じない。一方、二重管ランスの外側管の出口流速が120m/secを超えたりすると、設備の運用コストの点で実用的でないので、二重管ランスの外側管の出口流速の上限を120m/secとした。この結果は、同じ水冷の及ばない単管ランスの先端部でも同様に作用するため、単管ランスの出口流速も同様に20〜120m/secとした。ちなみに、単管ランスは二重管ランスに比べて熱負荷が少ないため、必要に応じ、出口流速を20m/sec以上とすればよい。
また、本実施形態では、ランスを構成する吹き込み管の内径を7mm以上、30mm以下と規定している。微粉炭の詰まりなどを考慮したとき、吹き込み管の内径が7mm未満では詰まりが発生しやすく、そのため微粉炭を吹き込む吹き込み管を含め、組み合わせる吹き込み管の内径を7mm以上とする。また、前述のように吹き込み管内を流れるガスで当該吹き込み管を冷却することを考慮したとき、吹き込み管の内径が30mmを超えるとガス流速の増加が困難となり、結果的に冷却不足となるため、吹き込み管の内径は30mm以下とする。好ましくは、8mm以上、25mm以下とする。
このように、本実施形態の高炉操業方法では、微粉炭(固体還元材)、LNG(気体還元材)、酸素(支燃性ガス)をランス4から同時に羽口に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ微粉炭(固体還元材)を吹き込む第1管21と酸素(支燃性ガス)を吹き込む第2管22が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管21、22がLNG(気体還元材)を吹き込む第3管23に内包されたランス4を使用することで、ランス4の外径を極端に増加させることなく、吹き込み管同士の隙間を大きく保つことができ、よって冷却能の確保と燃焼性の向上を両立することができ、その結果、還元材原単位を低減することができる。
また、微粉炭(固体還元材)を吹き込む第1管21に対し、酸素(支燃性ガス)を吹き込む第2管22(第3管空隙部分)が送風管内で送風方向下側に位置するようにすることで、酸素(支燃性ガス)と微粉炭(固体還元材)との混合を促進されると共に、酸素(支燃性ガス)とLNG(気体還元材)との燃焼場によって微粉炭(固体還元材)が昇温され、燃焼性が向上する。
前記実施形態では、気体還元材としてLNGを用いて説明したが、都市ガスも使用可能であり、他の気体還元材としては、都市ガス、LNG以外に、プロパンガス、水素の他、製鉄所で発生する転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスを用いることもできる。なお、LNGと等価としてシェールガス(shale gas)も利用できる。シェールガスは、頁岩(シェール)層から採取される天然ガスであり、従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在来型天然ガス資源と呼ばれているものである。
1は高炉、2は送風管、3は羽口、4はランス、5はレースウエイ、6は微粉炭(固体還元材)、7はコークス、8はチャー、9はLNG(気体還元材)、21は第1管、22は第2管、23は第3管

Claims (5)

  1. 羽口から固体還元材をランスで吹き込む高炉操業方法において、気体還元材及び支燃性ガスを前記固体還元材と同時に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ固体還元材を吹き込む吹き込み管と支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管が気体還元材を吹き込む吹き込み管に内包された構造のランスを使用することを特徴とする高炉操業方法。
  2. 前記固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、前記支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向側に位置するように前記ランスを配置することを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
  3. 羽口から還元材を吹き込むためのランスにおいて、気体還元材及び支燃性ガスを固体還元材と同時に吹き込む場合、吹き込み経路が3つで且つ固体還元材を吹き込む吹き込み管と支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が並列に配置され且つそれらの2つの吹き込み管が気体還元材を吹き込む吹き込み管に内包されたことを特徴とするランス。
  4. 前記固体還元材を吹き込む吹き込み管に対し、前記支燃性ガスを吹き込む吹き込み管が送風管内で送風方向側に位置することを特徴とする請求項3に記載のランス。
  5. 夫々の吹き込み管の内径が少なくとも7mm以上、30mm以下であることを特徴とする請求項4に記載のランス。
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