JP2011168885A - 高炉操業方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供する。
【解決手段】羽口3から燃料を吹き込むためのランス4を二重管とし、二重管ランス4の内側管から微粉炭6を吹込むと共に、二重管ランス4の外側管からLNG9を吹込み、且つ3羽口への送風の酸素過剰率を0.7〜1.3としたことにより、先に送風中のO2に接触するLNG9が燃焼することで、当該LNG9の内側の微粉炭6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭6の加熱速度が上昇するのであるが、このとき羽口3への送風の酸素過剰率を0.7〜1.3とすることで微粉炭6が十分に燃焼し、その結果、燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
【選択図】図7

Description

本発明は、高炉羽口から微粉炭などの固体燃料と、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)などの易燃性燃料とを吹込んで、燃焼温度を上昇させることにより生産性の向上及び還元材原単位の低減を図る高炉の操業方法に関するものである。
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出CO2の抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reduction Agent Ratioの略で、銑鉄1t製造当たりの、羽口からの吹込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主にコークス及び羽口から吹込む微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては炭酸ガス排出抑制を達成するためにはコークスなどを廃プラ、LNG、重油等の水素含有率の高い還元材で置換する方策が有効である。下記特許文献1では、羽口から燃料を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉端を吹込むことが提案されている。また、下記特許文献2では、同じく羽口から燃料を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管からLNGを吹込むことが提案されている。
特開第3176680号公報 特公平1−29847号公報
前記特許文献1に記載される高炉操業方法も、前記特許文献2に記載される高炉操業方法も、従来の微粉炭だけを羽口から吹込む方法に比べれば、燃焼温度の向上や還元材原単位の低減に効果があるものの、更なる改良の余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の高炉操業方法は、羽口から燃料を吹き込むためのランスを二重管とし、二重管ランスの内側管から固体燃料を吹込むと共に、二重管ランスの外側管から易燃性燃料を吹込み、且つ羽口への送風の酸素過剰率を0.7〜1.3としたことを特徴とするものである。
また、前記二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、当該外側管の出口流速を20m/sec以上としたことを特徴とするものである。
また、前記固体燃料が微粉炭であることを特徴とするものである。
また、前記易燃性燃料がLNGであることを特徴とするものである。
而して、本発明の高炉操業方法によれば、先に送風中のO2に接触する易燃性燃料が燃焼することで、当該易燃性燃料の内側の固体燃料の温度が大幅に上昇し、これにより固体燃料の加熱速度が上昇するのであるが、このとき羽口への送風の酸化過剰率を0.7〜1.3とすることで固体燃料が十分に燃焼し、その結果、燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
また、二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、当該外側管の出口流速を20m/sec以上とすることにより、昇温による二重管ランスの変形を防止することができる。
本発明の高炉操業方法が適用された高炉の一実施形態を示す縦断面図である。 図1のランスから微粉炭だけを吹込んだときの燃焼状態の説明図である。 図2の微粉炭の燃焼メカニズムの説明図である。 微粉端とLNGを吹込んだときの燃焼メカニズムの説明図である。 燃焼実験装置の説明図である。 燃焼実験結果の説明図である。 酸素過剰率を変化させたときの燃焼温度の説明図である。 二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの流量とランス表面温度の関係を示す説明図である。
次に、本発明の高炉操業方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉操業方法が適用された高炉の全体図である。図に示すように、高炉1の羽口3には、熱風を送風するための送風管2が接続され、この送風管2を貫通してランス4が設置されている。羽口3の熱風送風方向先方のコークス堆積層には、レースウエイ5と呼ばれる燃焼空間が存在し、主として、この燃焼空間で還元材の燃焼、ガス化が行われる。
図2には、ランス4から微粉炭6だけを吹込んだときの燃焼状態を示す。ランス4から羽口3を通過し、レースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、コークス7と共に、その揮発分が燃焼し、揮発分が放出されて残った、一般にチャーと呼ばれる炭と灰の集合体は、レースウエイから未燃チャー8として排出される。羽口3の熱風送風方向先方における熱風速度は約200m/secであり、ランス4の先端からレースウエイ5内におけるO2の存在領域は約0.3〜0.5mとされているので、実質的に1/1000秒のレベルで微粉炭粒子の昇温及びO2との接触効率(分散性)の改善が必要となる。
図3は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC:Pulverized Coal)6のみを吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。羽口3からレースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、レースウエイ5内の火炎からの輻射伝熱によって粒子が加熱し、更に輻射伝熱、伝導伝熱によって粒子が急激に温度上昇し、300℃以上昇温した時点から熱分解が開始し、揮発分に着火して火炎が形成され、燃焼温度は1400〜1700℃に達する。揮発分が放出してしまうと、前述したチャー8となる。チャー8は、主に固定炭素であるので、燃焼反応と共に、炭素溶解反応と呼ばれる反応も生じる。
図4は、ランス4から送風管2内に微粉炭6と共にLNG9を吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。微粉炭6とLNG9の吹込み方法は、単純に平行に吹込んだ場合を示している。なお、図中の二点鎖線は、図3に示した微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度を参考に示している。このように微粉炭とLNGを同時に吹込む場合、気体ガスのLNGが優先的に燃焼し、この燃焼熱によって微粉端が急速に加熱、昇温すると考えられ、これによりランスに近い位置で燃焼温度が更に上昇する。
このような知見に基づき、図5に示す燃焼実験装置を用いて燃焼実験を行った。実験炉11内にはコークスが充填されており、覗き窓からレースウエイ15の内部を観察することができる。送風管12にはランス14が差し込まれ、燃焼バーナ13で生じた熱風を実験炉11内に所定の送風量で送風することができる。また、この送風管12では、送風の酸素負荷量を調整することも可能である。ランス14は、微粉炭及びLNGの何れか一方又は双方を送風管12内に吹込むことができる。実験炉11内で生じた排ガスは、サイクロンと呼ばれる分離装置16で排ガスとダストに分離され、排ガスは助燃炉などの排ガス処理設備に送給され、ダストは捕集箱17に捕集される。
燃焼実験には、ランス4に単管ランスと二重管ランスの二種類を用い、単管ランスを用いて微粉炭のみを吹込んだ場合、二重管ランスを用い、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管からLNGを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々について覗き窓から2色温度計による燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性を測定した。2色温度計は、周知のように、熱放射(高温物体から低温物体への電磁波の移動)を利用して温度計測を行う放射温度計であり、温度が高くなると波長分布が短波長側にずれていくことに着目して、波長分布の温度の変化を計測することで温度を求める波長分布形の一つであり、中でも波長分布を捉えるため、2つの波長における放射エネルギーを計測し、比率から温度を測定するものである。未燃チャーの燃焼状況は、実験炉11の送風管12内のランス14先から150mm、300mmの位置にてプローブで未燃チャーを回収して、樹脂埋め、研磨後、画像解析によってチャー内空隙率を測定し、判定した。
微粉炭の諸元は、固定炭素(FC:Fixed Carbon)77.8%、揮発分(VM:Volatile Matter)13.6%、灰分(Ash)8.6%で、吹込み条件は29.8kg/h(製銑原単位で100kg/t相当)とした。また、LNGの吹込み条件は、3.6kg/h(5Nm3/h、製銑原単位で10kg/t相当)とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量300Nm3/h、流速70m/s、O2富化+5.5(酸素濃度26.5%、空気中酸素濃度21%に対し、5.5%の富化)とした。実験結果の評価は、単管から微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性(主として微粉炭)を基準とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管からLNGを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々を評価した。評価は、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
図6には、前述した燃焼実験の結果を示す。同図から明らかなように、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管からLNGを吹込む場合には、燃焼位置については改善が見られたが、その他の項目については変化が見られない。これは、微粉炭の外側のLNGが先にO2と接触して速やかに燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の加熱速度が上昇したものの、LNGの燃焼にO2が消費されてしまい、微粉炭の燃焼に必要なO2が減少して、十分な燃焼温度上昇に至らず、未燃チャーの燃焼状況も改善されなかったと考えられる。一方、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、外側管から微粉炭を吹込む場合には、燃焼温度、未燃チャーの燃焼状況について改善が見られ、拡散性については大幅な改善が見られたものの、燃焼位置については変化が見られない。これは、外側の微粉炭領域を通じた内側のLNGまでのO2の拡散に時間を要したものの、内側の易燃性のLNGが燃焼すれば、爆発的な拡散が生じ、LNGの燃焼熱で微粉炭が加熱されて燃焼温度も上昇し、未燃チャーの燃焼状況も改善されたものと考えられる。
本願発明者は、この実験結果を踏まえて、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管からLNGを吹込む場合に、特に燃焼温度を上昇するための検討を行い、送風への酸素富化、即ち酸素過剰率に着目した。そこで、前述の燃焼実験装置を用い、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込むと共に外側管からLNGを吹込み、酸素過剰率を種々に変更して燃焼温度と燃焼位置の測定を行った。この場合の酸素過剰率は、送風中の酸素量を、微粉炭の完全燃焼に必要な酸素量で除した値となり、数値が1なら完全燃焼し、1より小さいと完全燃焼できない。
実験結果を図7に示す。同図より明らかなように、単管ランスによる微粉炭のみの吹込みの場合に比して、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み且つ外側管からLNGを吹込む場合に、酸素過剰率が0.7以上であれば、何れの場合もランスに近い位置での燃焼温度が上昇している。特に、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み且つ外側管からLNGを吹込む場合に、酸素過剰率が1以上であれば、ランスからの如何なる位置でも燃焼温度が上昇している。このことから、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み且つ外側管からLNGを吹込む場合、酸素過剰率0.7以上を下限とし、酸素過剰率1.3以下を上限とする。酸素過剰率を増大すれば、更なる燃焼温度上昇を期待できるが、酸素製造コストに鑑みて、酸素過剰率の上限を1.3とした。
ところで、前述のような燃焼温度の上昇に伴って、二重管ランスの外側管は高温に晒され易くなる。二重管ランスは、例えばステンレス鋼鋼管で構成される。勿論、二重管ランスの外側管には所謂ウォータージャケットと呼ばれる水冷が施されているが、ランス先端までは覆うことができない。特に、この水冷の及ばない二重管ランスの外側管の先端部が熱で変形することが分かった。二重管ランスの外側管が変形する、つまり曲がると所望部位に微粉炭やLNGを吹込むことができないし、消耗品であるランスの交換作業に支障がある。また、微粉炭の流れが変化して羽口に当たることも考えられ、そのような場合には羽口が損傷する恐れがある。二重管ランスの外側管が曲がると、内側管との隙間が閉塞され、外側管からガスが流れなくなると、二重管ランスの外側管が溶損し、場合によっては送風管が破損する可能性もある。
水冷できない二重管ランスの外側管を冷却するためには、内部に送給されるガスで放熱するしかない。内部に流れるガスに放熱して二重管ランスの外側管自体を冷却する場合、ガスの流量がランス温度に影響を与えると考えられる。そこで、本発明者等は、二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ガスの流量調整は、本来、本実施形態で二重管ランスの外側管から吹込まれるLNGに不活性ガスとしてN2を加減した。なお、N2は、微粉炭を搬送するためのキャリアガスの一部を流用するようにしてもよい。測定結果を図8に示す。
二重管ランスの外側管には、20Aスケジュール5Sと呼ばれる鋼管、及び25Aスケジュール5Sと呼ばれる鋼管の2種類を用いた。また、二重管ランスの内側管には、15Aスケジュール90と呼ばれる鋼管、1種類を用い、N2とLNGの合計流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ちなみに、「15A」、「20A」、「25A」はJIS G 3459に規定する鋼管外径の称呼寸法であり、15Aは外径21.7mm、20Aは外径27.2mm、25Aは外径34.0mmである。また、「スケジュール」はJIS G 3459に規定する鋼管の肉厚の称呼寸法であり、スケジュール5Sは1.65mm、15Aスケジュール90は3.70mmである。二重管ランスの外側管に鋼管を用いる場合、上記の2種類程度の外径を有する鋼管とすることが現実的である。また、20Aスケジュール90(肉厚:3.9mm)、25Aスケジュール90(肉厚:4.5mm)を用いることも可能である。なお、ステンレス鋼鋼管の他、普通鋼も利用できる。その場合の鋼管の外径はJIS G 3452に規定され、肉厚はJIS G 3454に規定される。
同図に二点鎖線で示すように、サイズの異なる鋼管毎に、二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの合計流量の増加に伴ってランス表面の温度が反比例的に低下している。これは、鋼管のサイズが違うと、同じガス合計流量でもガスの流速が異なるためである。鋼管を二重管ランスに使用する場合、二重管ランスの表面温度が880℃を上回るとクリープ変形が起こり、二重管ランスが曲がってしまう。従って、二重管ランスの外側管に20Aスケジュール5S、或いは25Aスケジュール5Sの鋼管を用い、二重管ランスの表面温度が880℃以下である場合の外側管からの吹込みガスの合計流量は85Nm3/h以上であり、それらの鋼管を用いた場合の二重管ランスの外側管の出口流速は20m/sec以上となる。そして、二重管ランスの外側管の吹込みガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、二重管ランスの外側管の出口流速が20m/sec以上である場合には二重管ランスに変形や曲がりは生じない。
このように、本実施形態の高炉操業方法では、羽口3から燃料を吹き込むためのランス4を二重管とし、二重管ランス4の内側管から微粉炭(固体燃料)6を吹込むと共に、二重管ランス4の外側管からLNG(易燃性燃料)9を吹込み、且つ3羽口への送風の酸素過剰率を0.7〜1.3としたことにより、先に送風中のO2に接触するLNG(易燃性燃料)9が燃焼することで、当該LNG(易燃性燃料)9の内側の微粉炭(固体燃料)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体燃料)6の加熱速度が上昇するのであるが、このとき羽口3への送風の酸化過剰率を0.7〜1.3とすることで微粉炭(固体燃料)6が十分に燃焼し、その結果、燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
また、二重管ランス4の外側管から吹込まれるガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、当該二重管ランス4の外側管の出口流速を20m/sec以上とすることにより、昇温による二重管ランス4の変形を防止することができる。
1は高炉、2は送風管、3は羽口、4はランス、5はレースウエイ、6は微粉炭(固体燃料)、7はコークス、8はチャー、9はLNG(易燃性燃料)

Claims (4)

  1. 羽口から燃料を吹き込むためのランスを二重管とし、二重管ランスの内側管から固体燃料を吹込むと共に、二重管ランスの外側管から易燃性燃料を吹込み、且つ羽口への送風の酸素過剰率を0.7〜1.3としたことを特徴とする高炉操業方法。
  2. 前記二重管ランスの外側管から吹込まれるガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、当該外側管の出口流速を20m/sec以上としたことを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
  3. 前記固体燃料が微粉炭であることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
  4. 前記易燃性燃料がLNGであることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
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