JP5973307B2 - 内燃機関用イオン電流検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用イオン電流検出装置に関し、特に、メモリ回路の記憶領域へ入力データを作成させる際に用いて好適のものである。
近年、自動車に代表される輸送用内燃機関の技術分野では、燃費改善及びドライバビリティ向上といった様々な要請のもと、イオン電流の解析結果によって機関を好適に制御させる技術が検討されている。其の検討事項は、失火/燃焼判定,燻り判定,ノッキング判定,点火タイミング制御、排ガス循環制御等、多岐に及ぶものである。
かかる技術では、内燃機関用イオン電流検出装置を実現させる信号処理回路が用いられ、この信号処理回路には、CPU,A/D変換回路,メモリ回路,及び,これらの動作を規定し所望の機能を構築させるプログラムが構成されている。
特開平02−112650号公報(特許文献1)では、エンジンの電子制御装置が紹介されており、当該電子制御装置にはDMAC(Direct Memory Access Controler)が組込まれている。そして、当該電子制御装置によれば、DMACを介して入力データ(A/D入力)からメモリ回路へデータ転送を行い、一方、CPUを介して所定の入力データに基づく演算処理を実施させている。このように、特許文献1に係る電子制御装置では、データの作成処理をDMACに委ねることで、データ演算処理のバス占有率を確保し、演算処理の停滞を解消させている。
特開平02−112650号公報
上述の如く、特許文献1の技術によれば、入力データ(波形データ)の全てのサンプリングが完了してから、CPU経由による演算処理が実行されることになる。このため、複数種類の入力データ(波形データ)を取り扱う場合、入力データ(波形データ)の全てのサンプリングが終了してから各演算処理を実行させることになる。そうすると、運転サイクル(点火サイクル等)によって規定される残りの処理期間では、全ての演算処理を完了させることができなくなり、最新の情報を次回サイクルの制御動作へ反映させることが出来なくなるとの問題が生じる。
また、特許文献1では、入力データの作成処理を全てDMACに委ねてしまうので、複数種類の入力データ(波形データ)を取り扱う場合、CPUでの演算処理もこれに応じて増え、当該演算処理に与えるべき時間を十分に確保できなくなる。
本発明は上記課題に鑑み、CPUで実施される複数の演算処理を所定期間内に完了させ得る内燃機関用イオン電流検出装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明では次のような内燃機関用イオン電流検出装置の構成とする。即ち、CPUとDMACとメモリ回路とを備え、内燃機関で発生したイオン電流の検出信号に基づいて前記イオン電流の波形データを作成するイオン電流検出装置において、
前記CPUに構成されたデータレジスタを介して第1の波形データを前記メモリ回路へ作成させるCPUデータ作成処理と、前記DMACに構成されたデータレジスタを介して第2の波形データを前記メモリ回路へ作成させるDMACデータ作成処理とを機能させることとする。
好ましくは、前記DMACデータ作成処理は、点火サイクルに対してデータ作成期間と非データ作成期間とが設定されており、前記データ作成期間にて所定時間間隔毎に前記第2の波形データの構成データを作成させる処理であって、前記データ作成期間は、前記イオン電流の燃焼波形の全て含む時間的範囲に設定されていることとする。
好ましくは、前記CPUは、前記波形データの離散値情報に基づいて第1のパラメータを演算する波形成分抽出処理と、前記波形データの二値化情報に基づいて第2のパラメータを作成する矩形波処理とを機能させ、前記第2の波形データは、前記矩形波処理で用いられることとする。
好ましくは、前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間は、前記DMACデータ作成処理のデータ作成期間の一部期間に設定され、前記第1の波形データは、前記波形成分抽出処理で用いられることとする。
好ましくは、前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間は、前記点火サイクルのうち燃焼行程を含む期間として設定されることとする。特に、前記第1のパラメータは、ノッキングの状態を解析する際に用いられるパラメータであるのが好ましい。
好ましくは、前記波形成分抽出処理は、前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間満了後に起動され、前記矩形波処理は、前記DMACデータ作成処理のデータ作成期間満了後に起動されることとする。
本発明に係る内燃機関用イオン電流検出装置によると、CPUを経由するデータ作成処理とDMACを経由するデータ作成処理とを併設させ、複数の波形データを各々異なるルートでサンプリングさせることが可能となる。このため、波形データの性質に応じて好ましいルートを設定させ、CPUで実施される各種演算処理の集中を回避することが可能となる。
また、データ作成処理の処理期間(データ作成期間)が短い波形データをCPUデータ作成処理でデータ作成させることにより、当該CPU側のデータ作成処理期間が終了すると、DMACデータ作成処理の処理期間(データ作成期間)の終了を待たずして、CPUデータ作成処理によって得られたデータに基づく演算処理を開始させ、CPUにおける演算処理の分散化を図ることが可能となる。
内燃機関制御システムの構成を示す図。 電流検出回路の動作を説明する図。 実施の形態に係る信号処理回路の内部構成を示す図。 実施の形態に係るCPUデータ作成処理を説明する図。 実施の形態に係るDMACデータ作成処理を説明する図。 実施の形態に係る各波形及び処理期間のタイミングチャート。
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係る内燃機関制御システムが示されている。内燃機関制御システム10は、図示の如く、内燃機関制御装置110と、点火コイル120と、内燃機関用イオン電流検出装置130とから構成される。以下、内燃機関制御装置110をコントロールユニット110と呼び換え、内燃機関用イオン電流検出装置130を単にイオン電流検出装置130と呼び換えることとする。
コントロールユニット110は、回転数,吸気圧,車速,等の様々なパラメータが入力され、これらの情報に基づいて内燃機関の点火タイミングを規定する。コントロールユニット110は、所謂ECU(Engine Control Unit)と呼ばれる装置であり、情報処理回路及び情報通信回路を内蔵させている。コントロールユニット110は、エンジンの回転数情報Ne,吸気圧情報Pb,及び,充填効率情報ηc等を、車両各部位に配備されたセンサから受け取る。このうち、吸気圧情報Pbは、インテークマニホールドに配された圧力センサの検出信号,エアフローメータの検出信号,又は,スロットルポジションセンサの制御情報等によって特定される。また、回転数情報Neは、クランクポジションセンサ,カムポジションセンサ等によって特定される情報である。また、充填効率ηcは、シリンダー容積に対する混合気の実充填量を示すものであって、吸気圧情報Pbに基づいて算出される。更に、コントロールユニット110には、イオン電流検出装置130から情報INF(波形データを含む)が送られる。このようなデータ通信は、CAN(Control Area Network),LIN(Local Area Network),又は,シリアル通信規格,といった周知の通信規格を利用して、情報の送受信が行われる。
かかるコントロールユニット110では、各種センサから受け取った情報及びイオン電流検出装置130から受信した波形データに基づいて、波形データ失火/燃焼判定,燻り判定,ノッキング判定,点火タイミング制御等を行う。そして、これらの処理結果に基づき、点火信号SGを出力させている。
点火コイル120は、一次コイルL1及び二次コイルL2を具備するトランスCLと、パワートランジスタTrとから構成され、車載バッテリVbが一次コイルL1へ印加されている。点火コイル120は、入力された点火信号SGに応じてパワートランジスタTrが駆動され、二次コイルL2で高電圧を発生させる。尚、点火コイル120には、イグナイタを搭載させて、点火信号SGの波形を修正させるようにしても良い。この場合にあってもパワートランジスタTrは、点火信号SGによって駆動されることに変わりない。
イオン電流検出装置130は、図示の如く、電流検出回路131と信号処理回路132とから構成される。信号ラインLaは、電流検出回路131の出力端と信号処理回路132の入力端とを接続させ、電流検出回路131から出力された電圧信号Viを伝達させる。信号ラインLdは、信号処理回路132とコントロールユニット110との間に介在する通信ケーブルであって、イオン電流検出装置130から与えられた情報INFをコントロールユニット110へ伝送させる。尚、本実施の形態では、電流検出回路131を含めてイオン電流検出装置130としているが、特許請求の範囲におけるイオン電流検出装置は、これに限らず、信号処理回路132のみから成る形態をも含んでいる。
電流検出回路131は、ダイオードD1及びツェナーダイオードDz1及びツェナーダイオードDz2から成る直列回路、ツェナーダイオードDz1に並列接続されたコンデンサC1、接続端A及びCに並列接続された抵抗R1、抵抗R4を介して反転入力端子へ接続端Bが接続され非反転端子がグランド電位とされたオペアンプ131a、オペアンプ130aの出力ゲインを規定する増幅抵抗R2、オペアンプ131aの出力信号のオフセット量を規定する抵抗R3、及び、抵抗R1とオペアンプ131aの反転端子との間に接点を有するツェナーダイオードDz3、によって構成されている。このうち、オペアンプ131aは、検出信号の上限検出限界値が5〔V〕とされ、下限検出限界値が0〔V〕とされている。そして、電流検出回路131では、放電後に現れるイオン電流波形の変化を検出可能とする為、当該イオン電流波形が0〔V〕〜5〔V〕に収まるよう抵抗素子等の定数が設定されている。
尚、図示の如く、接続点AはダイオードD1のカソード側と抵抗R1との接点であり、接続点BはダイオードD1のアノード側とツェナーダイオードDz1のアノード側との接点であり、接続点CはツェナーダイオードDz1のカソード側とツェナーダイオードDz2のカソード側との接点である。また、オペアンプ131aの出力側には、接続点Dが設けられ、当該接点Dに信号ラインLaが接続されている。
ここで、図2を参照して、イオン電流検出装置130の動作について説明する。先ず、点火コイルCLの二次側に負の高電圧が生じた場合、点火プラグPGでは、プラグギャップで絶縁破壊を起こし、電流検出回路131にも放電電流Isを発生させることとなる。放電電流Isは、グランドGND→ツェナーダイオードDz2→ツェナーダイオードDz1→二次コイルL2を通じて、点火コイルPGに当該電流が流れる。このとき、コンデンサC1にも放電電流Isの一部が流れ込むため、当該コンデンサC1には、これに伴う電荷が蓄積される。また、この場面での接続点Bの電圧値は、マイナス数百〔V〕とされる為、増幅抵抗R2に流れる電流値Iqaは、イオン電流波形を検出しているときに比べ約1000倍程度の大きさとなる。この為、オペアンプ131aから出力される電圧信号Viは、非常に大きくなり、上限検出限界値Vimである5〔V〕へ容易に達してしまう。
一方、絶縁破壊が収束する頃、プラグギャップでは、其の周辺にラジカルな分子が分布することになるので、電荷の移動経路が形成されることとなる。このとき、電流検出回路130では、コンデンサCに蓄えられた電荷を消費させることで、コンデンサC1→抵抗R1→二次コイルL2→点火プラグPG→グランド(GND),という経路のイオン電流Irを発生させる。この場面での接続点Bの電圧値は、先の場面での電圧値に比べ十分に低下し、増幅抵抗R2に流れる電流値Iqbは、数μ〔A〕程度の大きさとなる。このとき、電流検出回路131から出力される電圧信号Viは、イオン電流に比例する凸状の波形を示すこととなる。
ここで、図1に戻り、信号処理回路132について説明する。信号処理回路132は、CPU,メモリ回路Me,DMAC(Direct Memory Access Controler),クロック回路(図示なし),AD変換回路,及び,I/O回路等が内蔵され、これらが内部バスによってデータ授受可能に接続されている。尚、本実施の形態の場合、メモリ回路Meは、不揮発性記憶装置(Read Only Memory/ROM)と揮発性記憶装置(Random Access Memory/RAM)とから構成される。
CPU10(Central Processing Unit)は、図3に示す如く、プログラムカウンタ11,命令レジスタ12,アドレスレジスタ13,データレジスタ14といった各種レジスタ(CPUレジスタ)を備えている。このうち、プログラムカウンタ11は、次回実行される命令プログラムのメモリ上のアドレス情報が格納される。命令レジスタ12は、フェッチされた命令プログラムが格納され、CPU10は、命令レジスタ12に格納された命令情報に応じて、データ入出力等の処理命令を行う。アドレスレジスタ13は、参照または書込むべき記憶領域(メモリ回路)のアドレスが格納される。データレジスタ14は、記憶領域から取得したデータ,又は,記憶領域へ格納するデータを一時的に格納する。当該データレジスタ14には、レジスタ内のデータについて基本演算させる機能も与えられている。
DMAC20(Direct Memory Access Controler)は、転送元レジスタ21,転送先レジスタ22,命令レジスタ23,データレジスタ24といった各種レジスタ(DMAレジスタ)を備えている。転送元レジスタ21には、A/D変換回路50に設けられているレジスタを特定させる情報が格納される。転送先レジスタ22には、A/D変換回路から情報転送させるべき記憶領域のアドレス情報が格納される。命令レジスタ23は、DMAデータ転送ルーチンの起動タイミング(割込みタイミング)等が設定されている。尚、本実施の形態にあっては、其の起動タイミングが20μsecとされている。また、DMAC20のデータレジスタ24は、A/D変換回路50で作成されたデータの一部を一時的に格納させる。
ROM30(Read Only Memory)は、適宜記憶領域が割当てられ、CPUルーチンを規定するプログラム,及び,その他の制御プログラムが記録されている。また、ROM30の記憶領域には、DMAC20の転送元レジスタ21,転送先レジスタ22,及び,命令レジスタ23の各々に与える情報(以下、DMA初期設定情報と呼ぶ)を格納させている。
RAM40(Random Access Memory)は、第1の波形データDt1を保持する記憶領域と、第2の波形データDt2を保持する記憶領域とが割り当てられている。これらの波形データDt1,Dt2は、所定波形の入力データに基づいて作成されるものであり、追って詳しく説明することとする。
A/D変換回路50は、ADレジスタ及びADポートを具備し、ADポートへ印加された電圧信号ViをADレジスタ内に格納させる。これにより、ADレジスタには、イオン電流に比例する情報(イオン電流の波形データ)が、電圧値情報として格納されることになる。A/D変換回路50は、CPU10又はDMACからの指令に応じて、データレジスタへ波形読込データを出力させる。このうち、CPU10のデータレジスタへは、ADレジスタの波形読込データに基づいて第1の波形データを出力させ、DMAC20のデータレジスタへも、A/Dレジスタの波形読込データに基づいて第2の波形データを出力させる。
また、上述したI/O回路は、適宜のプロトコルに基づき、I/Oポートを介してデータ通信を行う。そして、これらの回路が内部バス60によって適宜接続され、波形データ,アドレス情報,命令情報,タイミング情報等のやり取りが行われる。尚、内部バス60は、このような情報の送受信を行うため、データバス,DMA専用データバス,アドレスバス,及び,コントロールバスが構成されている。
CPUルーチン,及び,DMAデータ転送ルーチン等を規定する制御プログラムには、CPUデータ作成処理,DMACデータ作成処理,波形成分抽出処理(CPUで実施される演算処理の一形態),矩形波処理(CPUで実施される演算処理の一形態)等が含まれる。そして、このプログラムは、記述されている命令がシーケンス順に実行されることで、先のハードウェア資源と協働して所定の機能を構築させる。
次に、図4を参照し、CPUデータ作成処理について説明する。図示の如く、CPU10は、データ作成に係る命令情報をフェッチし、其の命令情報を命令レジスタ12へ格納させる。CPU10は、命令情報に規定される処理をシーケンス順に実行させることで、ADレジスタの波形読込データをデータレジスタ14へ格納させ、その後、データレジスタ14に格納された波形読込データをRAM40へ出力させる。この波形読込データは、RAM40の記憶領域に保持され、其の情報は第1の波形データとされる。このように、第1の波形データは、CPUデータ作成処理によって作成されるデータであって、CPUに構成されたデータレジスタを介してRAM40に記録される。
かかる第1の波形データは、上述の如く、命令情報のフェッチ→命令の実行→レジスタへのデータ読込→メモリへのデータ書込,という処理工程によってデータ作成される。従って、CPUデータ作成処理では、命令情報のフェッチという動作が常に必要となる。
次に、図5を参照し、DMACデータ作成処理について説明する。DMAC20の初期設定は、CPU10によって行われる処理である。例えば、転送元レジスタをDMAC20に初期設定させる場合、所期情報設定命令のフェッチ→転送元レジスタ情報のCPUレジスタ格納→転送元レジスタ情報のDMAレジスタへの出力,という処理をシーケンス順に実行させてゆく。また、かかる動作は、転送先レジスタ情報及び他の命令情報についても同様である。
本実施の形態の場合、DMAC20の初期設定は、内燃機関の点火サイクル毎にCPU10を介して設定変更される。そして、DMAC20では、起動タイミング毎(20μsec)にDMAデータ転送ルーチンを起動させ、データレジスタ24へのデータ格納→RAM40へのデータ出力,というデータ転送動作が繰り返される。このため、内燃機関の点火サイクルの期間内にあっては、初期設定が一度行われると、次回初期設定の到来時刻まで、波形データ転送に係るCPU10の処理は省略となる。
このように、DMAC20は、DMACに構成されたデータレジスタ24を介して波形読込データを転送させ、RAM40では、このルートで転送された波形データを第2の波形データとして、適宜の記憶領域へデータ作成する。従って、本実施の形態に係るRAM40には、共通の波形読込データに基づいて、複数の波形データ(第1の波形データ及び第2の波形データ)が作成されることとなる。
本実施の形態によると、CPUを経由するデータ作成処理とDMACを経由するデータ作成処理とを併設させ、複数の波形データを各々異なるルートでサンプリングさせることが可能となる。このため、イオン電流検出装置130では、波形データの性質に応じて好ましいルートが選択可能となり、CPUで実施される各種演算処理の集中を回避することができる。
次に、図6を参照して、CPUで実施される各種演算処理の起動タイミングについて説明する。図示の如く、内燃機関の点火システム100では、ECU110から点火信号SGが出力されると、当該信号SGのパルス期間tr〜tsに応じて点火コイル120に流れる一次電流I1が上昇し、時刻ts(信号SGの立下りエッジ)が到来すると、其の一次電流I1が瞬断される。この瞬間、点火プラグPGには数千kVの高電圧V2が加わり、プラグギャップに放電電流Isが流れる。
電流検出回路131では、この放電電流Isを検出すると共に、イオン電流Irを検出することとなる。尚、本実施の形態にあっては、ピーク値側の極性をグランド電位側とすることで、閾値th1に対するグランド電位変動の影響を低減させ、後述する矩形波の精度を向上させている。また、放電電流Isは、矩形波状に表現されているが、放電波形の現れ方によっては時間間隔の細かいパルス波が集合したものとなる場合もある。
CPU10では、図示の如く、データ作成期間(tx〜ty)を設定し、この期間についてCPUデータ作成処理を実行させる。データ作成期間(tx〜ty)は、内燃機関の回転数,吸気圧,未燃混合気の充填効率といったエンジンの運転条件に応じて適宜設定される。この設定は、点火サイクル毎に随時変更される。
CPUデータ作成処理は、上述したデータ作成期間(tx〜Ty)について、数μsec程度の所定時間間隔毎に波形データ(以下、第1の波形データDt1)の各構成データを作成させる。本実施の形態では、この所定時間間隔が20μsecに設定されている。CPUデータ作成処理は、データ作成期間(tx〜ty)において、構成データの各々を20μsec毎に順次作成してゆく。これにより、CPUデータ作成処理は、データ作成期間(tx〜ty)が終了すると、波形データDt1の全ての構成データを作成したことになる。
ここで作成される第1の波形データDt1は、イオン電流検出信号の生波形を離散化させた情報(離散値情報)であって、波形を所定解像度で表現させたデータ群である。CPU10では、CPUデータ作成処理が終了すると、図示の如く、演算処理PRC1を開始させる。当該演算処理PRC1は、このデータ群(第1の波形データ)に基づいて適宜の演算を実施させる処理である。
本実施の形態では、第1の波形データDt1は、ノック信号を抽出する検査対象として用いられる。このため、データ作成期間(tx〜ty)は、イオン電流Irのピーク値後段あたりに設定され、第1の波形データDt1は、この期間についてデータ作成されたものであるから、ノック振動の波形が反映されることになる。また、演算処理PRC1は、このノック波形に基づくパラメータ(第1パラメータ)を演算する処理であり、以下、波形成分抽出処理PRC1と呼ぶこととする。
波形成分抽出処理PRC1は、図示の如く、バンドパスフィルタによって高周波成分を抽出させた波形パラメータDkn1,この波形パラメータのうち閾値周波数を上回るデータをカウント(計数)したパラメータDkn2,等を算出する。これらパラメータは、全て、ノッキングの状態を解析する際に用いられる「第1のパラメータ」に属する。
第1の波形データDt1は、本実施の形態のように、点火サイクルに対して非常に短い期間のデータ群をサンプリングする際に適している。何故なら、CPU10では、波形成分抽出処理PRC1又は後述する矩形波処理PRC2といった演算処理を実施する都合上、データ作成期間の長い波形データを作成させると、其のデータ作成処理後に演算処理を完了させることが難しくなるからである。このため、本実施の形態では、ノック解析用のデータを第1の波形データDt1とし、後段での演算処理に要する時間を確保させている。
更に、CPU10では、図示の如く、データ作成期間(t1〜tn)を設定し、DMAC経由でデータ作成させる期間を規定する。この期間に属さない期間については、非データ作成期間と呼ぶ。データ作成期間(t1〜tn)については、内燃機関の回転数,吸気圧,未燃混合気の充填効率といったエンジンの運転条件に応じて適宜設定され、点火サイクル毎に随時設定変更される。以下、DMAC経由でデータ作成させる処理を、DMACデータ作成処理と呼ぶ。
DMACデータ作成処理は、CPUデータ作成処理と同期しながら、データ作成期間(t1〜tn)について波形データ(以下、第2の波形データDt2)の各構成データを作成させる。ここでのデータ作成期間(t1〜tn)は、始期が信号SGの立下り時刻tsとされ、終期が点火サイクルの中盤(約360CA)とされているところ、イオン電流Irの全てを含む時間的範囲に設定されることになる。本実施の形態に係るDMACデータ作成処理は、CPUデータ作成処理に同期して実行されるところ、第2の波形データを構成する各データも20μsec毎に作成される。そして、時刻tnを迎えた時点で、第2の波形データDt2を構成する全てのデータが作成されたことになる。
このように、第2の波形データDt2は、期間満了時刻が点火サイクルの中盤以後に差し掛かってしまう。このような性質の波形データDt2は、CPU経由でデータ作成させると、CPU内の命令レジスタに命令情報をフェッチさせる動作を伴うので、点火サイクル全般に亘り処理速度の低下を招くことになる。また、当該波形データDt2のデータ作成が完了するのを待って演算処理を開始していたのでは、其の演算処理が点火サイクル内に全てを終えることができないとの事態も招く。このため、本実施の形態にあっては、第2の波形データDt2をDMAC経由で作成させることで、データ転送に係る処理動作の簡素化と、CPU10における一部演算処理(波形成分抽出処理PRC1)の早期開始と、を実現させているのである。
ここで作成される第2の波形データDt2は、上述した離散値情報と同等の情報であるが、以降の処理で二値化処理されることが予定されているデータ群である。CPU10では、DMACデータ作成処理の処理期間が満了すると、図示の如く、矩形波処理PRC2を実行開始させる。当該矩形波処理PRC2は、波形データD2のデータ群に基づいて演算実施させるものであって、第2の波形データDt2の各構成データを二値化させる処理(二値化処理),この二値化情報の各々と閾値th1とを比較させ燃焼期間tf〜tgを特定する処理(燃焼期間特定処理),この他、二値化情報に基づいて波形情報を抽出する処理(二値化データ解析処理),を実行させる。
このうち、燃焼期間特例処理では、時間的なパラメータを作成することで、燃焼期間tf〜tgを表現する。また、二値化データ解析処理では、閾値時刻ta〜tcを設定し、其の期間に対応して各種パラメータを演算する。例えば、期間Δt1では、放電電流Isとイオン電流Irとが切換る時刻を求め、放電開始時刻を現すパラメータが作成される。また、期間Δt2では、主燃焼の収束時刻に関するパラメータが作成される。これら、燃焼期間特定処理及び二値化データ解析処理にて算出されるパラメータは、特許請求の範囲における第2のパラメータに属する。
本実施の形態によると、CPUデータ作成処理の期間満了時刻tyがDMACデータ作成処理の期間満了時刻tnよりも十分早い時刻とされる。このため、CPU10で実行されるべき演算処理の一つ(波形成分抽出処理PRC1)が早い段階で実行可能となる。このため、CPU10が矩形波処理PRC2を機能させる頃には、波形成分抽出処理PRC1を終えさせることが期待できる。仮に、矩形波処理PRC2の開始時刻までに波形成分抽出処理PRC1の全てを終えることができなくても、双方の処理を実行させる重複期間が短くなるので、結果として演算処理の全工程期間が短縮される。
このように、本実施の形態に係るイオン電流検出装置130によると、演算処理の一部を非常に速いタイミングで開始できるので、当該演算処理の分散化が図られ、次回点火信号SGの出力時前にCPU10での演算処理を全て完了させることが可能となる。
尚、本実施の形態によると、波形成分抽出処理PRC1がノック成分の抽出に関するものであるから、CPUデータ作成処理の期間満了時刻tyがDMACデータ作成処理の期間満了時刻tnよりも十分早い設定となる。しかし、このような条件を満たすのは、データ作成期間(t1〜tn)の一部期間にデータ作成期間(tx〜ty)が設定されるのだから、4サイクルエンジンにおける点火サイクルの燃焼行程を含む期間(燃焼行程の一部期間であっても良い)で波形成分抽出処理PRC1が行われれば、双方処理の終了時刻の関係が本実施の形態と同様となる。従って、例えば、波形の面積パラメータ等を算出する処理等、燃焼波形近傍の波形解析を行う処理であれば、CPUデータ作成処理の終了時刻tyがDMACデータ作成処理の終了時刻tnよりも十分早い設定となり、上述した各効果を享受できる。
100 内燃機関制御システム, 110 エンジン制御ユニット, Ne 回転数情報, Pb 吸気圧情報, 120 点火コイル, PG 点火プラグ, I1 放電電流, I2 イオン電流, 131 電流検出回路, 132 信号処理回路, 130 内燃機関用イオン電流検出装置, 10 CPU(Central Processing Unit), 14 データレジスタ, 20 DMAC(Direct Memory Access Controler), 21 データレジスタ, 30 ROM(Read Only Memory/メモリ回路の一つ), 31 CPUルーチンを規定するプログラム, 40 RAM(Random Access Memory/メモリ回路の一つ), Dt1 第1の波形データ, Dt2 第2の波形データ, 50 A/D, PRC1 波形成分抽出処理, PRC2 矩形波処理。

Claims (7)

  1. CPUとDMACとメモリ回路とを備え、内燃機関で発生したイオン電流の検出信号に基づいて前記イオン電流の波形データを作成するイオン電流検出装置において、
    前記CPUに構成されたデータレジスタを介して第1の波形データを前記メモリ回路へ作成させるCPUデータ作成処理と、前記DMACに構成されたデータレジスタを介して第2の波形データを前記メモリ回路へ作成させるDMACデータ作成処理と、を機能させることを特徴とする内燃機関用イオン電流検出装置。
  2. 前記DMACデータ作成処理は、点火サイクルに対してデータ作成期間と非データ作成期間とが設定されており、前記データ作成期間にて所定時間間隔毎に前記第2の波形データの構成データを作成させる処理であって、
    前記データ作成期間は、前記イオン電流の燃焼波形の全て含む時間的範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
  3. 前記CPUは、前記波形データの離散値情報に基づいて第1のパラメータを演算する波形成分抽出処理と、前記波形データの二値化情報に基づいて第2のパラメータを作成する矩形波処理と、を機能させ、
    前記第2の波形データは、前記矩形波処理で用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
  4. 前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間は、前記DMACデータ作成処理のデータ作成期間の一部期間に設定され、前記第1の波形データは、前記波形成分抽出処理で用いられることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
  5. 前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間は、前記点火サイクルのうち燃焼行程を含む期間として設定されることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
  6. 前記第1のパラメータは、ノッキングの状態を解析する際に用いられるパラメータであることを特徴とする請求項3乃至請求項4のうち何れか1項に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
  7. 前記波形成分抽出処理は、前記CPUデータ作成処理のデータ作成期間満了後に起動され、前記矩形波処理は、前記DMACデータ作成処理のデータ作成期間満了後に起動されることを特徴とする請求項3乃至請求項6のうち何れか1項に記載の内燃機関用イオン電流検出装置。
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