JP5959102B2 - 樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法および成形体 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、ポリカーボネート97〜60重量%とポリメチルメタクリレート3〜40重量%からなる樹脂を、微量型高剪断成形加工機を用いてブレンドする溶融混練方法が開示されている。しかし、この方法で得られるブレンド物も、透明性の点で必ずしも十分ではない。
また、特許文献3には、芳香族ポリカーボネートと、メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートを共重合して得られるメタクリレート共重合体とからなる共重合体混合物が開示されている。しかし、この共重合体混合物も、透明性の点で必ずしも十分でない。
(1)アクリル系樹脂を50〜95重量%およびポリカーボネート系樹脂を5〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物であって、前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
2≦(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)≦50 (a)
(式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Waは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wbは樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。)を満足する、樹脂組成物。
(2)前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸シクロヘキシルおよびアクリル酸シクロヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)単官能単量体が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の樹脂組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂を含む樹脂混合物を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
(5)前記溶融混練が、180〜320℃の温度、および10〜500sec-1の剪断速度で行われる、(4)に記載の製造方法。
(6)上記(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
本発明に用いられるアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
また、アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
シクロアルキル基で置換されたアルキル基としては、例えば、少なくとも1つのH(水素原子)が上記炭素数5〜12のシクロアルキル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
アルキルシクロアルキル基としては、例えば、少なくとも1つのHが、上記炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
メタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルが好ましい。アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル)、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基を有するアクリル酸アルキルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。
なお、単官能単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系樹脂を構成する単量体成分中に、5〜50重量%の割合で含有され、好ましくは10〜40重量%の割合で含有される。式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの含有量が5重量%未満の場合、得られるアクリル系樹脂のポリカーボネート系樹脂に対する相溶性が低下し、樹脂組成物の透明性が低くなる。一方、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの含有量が50重量%を超える場合、相溶性(透明性)の低下に加え、樹脂組成物の耐候性も低下する。なお、透明性および耐候性に乏しい樹脂組成物を成形して得られる成形体も、透明性および耐候性が低下する。
また、単官能単量体は、アクリル系樹脂を構成する単量体成分中に、0.1〜20重量%の割合で含有され、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%の割合で含有される。単官能単量体の含有量が0.1重量%未満の場合、アクリル系樹脂の熱分解が起こりやすくなる場合がある。一方、単官能単量体の含有量が20重量%を超えると、透明性および耐熱性が低下する場合がある。
重合開始剤の使用量は、単量体の種類、単量体の割合などに応じて適宜決定されるが、単量体成分100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の割合で用いられる。
なお、重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、連鎖移動剤や架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下記の式(1)を用いて求められる。
lnMv={ln[η]−ln(4.8×10-5)}/0.8 (1)
式(1)中、[η]は極限粘度を表し、ISO 1628−6に準拠して測定される粘度数VNから、下記の式(2)を用いて求められる。
VN=[η]+0.4×[η]2 (2)
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂は、16000〜25000の粘度平均分子量を有するものであれば、特に限定されない。ポリカーボネート系樹脂は、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの;カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られるもの;環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるものなどが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、Schnellの式[η]=1.23×10-4Mv0.83を用いて、20℃塩化メチレン溶液の極限粘度[η]から、算出することができる。
本発明の樹脂組成物は、アクリル系樹脂を50〜95重量%およびポリカーボネート系樹脂を5〜50重量%の割合で含有する。例えば、ポリカーボネート系樹脂の含有量が5重量%未満の場合、機械的性質が不十分となる傾向にある。一方、ポリカーボネート系樹脂の含有量が50重量%を超える場合、樹脂組成物および成形して得られる成形体の透明性が低下する傾向にある。
アクリル系樹脂は、好ましくは50〜80重量%の割合で含有され、ポリカーボネート系樹脂は、好ましくは20〜50重量%の割合で含有される。
2≦(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)≦50 (a)
(式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Waは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wbは樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。)
式(a)を満足することで、優れた透明性を有する樹脂組成物が得られる。式(a)を満足しない場合、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との親和性が低下し、透明な樹脂組成物を得ることができない。
2.4≦(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)≦40 (a)’
本発明の樹脂組成物は、上述の特定のアクリル系樹脂と特定のポリカーボネート系樹脂を含む樹脂混合物を溶融混練して得られる。
これらの樹脂を均一に溶融混練するために、溶融混練は、通常180〜320℃、好ましくは200〜300℃の温度条件下、通常10〜500sec-1の剪断速度、好ましくは20〜300sec-1、より好ましくは30〜200sec-1の剪断速度で行われる。
本発明の樹脂組成物は、所望の形状に加工され、優れた透明性(光学的特性)および機械的強度を有する成形体に加工される。このような成形体は、例えば、電子光学材料、カバー材料、樹脂グレージング材料などとして有用である。
成形温度は、通常150〜350℃程度であり、好ましくは180〜320℃程度、より好ましくは180〜300℃程度である。
なお、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、得られた樹脂組成物および成形体の各種物性は、下記の方法によって測定および評価した。
JIS K7210に準拠して、230℃および3.8kg荷重で測定した。
ISO 1133に準拠して、300℃および1.2kg荷重で測定した。
ペレット状の樹脂組成物を目視で観察して、透明か否か(白濁)を評価した。
表1に示すように、89.7重量%のメタクリル酸メチル(MMA)、10重量%のメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、および0.3重量%のアクリル酸メチル(MA)を混合して単量体成分を得た。この単量体成分に、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.2重量%添加し、さらに連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタンを0.2重量%添加し、これらを単量体成分に溶解させて単量体混合物を得た。
反応容器に、この単量体混合物100重量部、イオン交換水285重量部、および懸濁安定剤として1.2重量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液0.18重量部を仕込み、80℃で3時間、縣濁重合を行った。得られたスラリー状の反応液を、脱水機で脱水し洗浄した後、乾燥してビーズ状のアクリル系樹脂を得た。
このビーズ状のアクリル系樹脂を、二軸混練機((株)日本製鋼所製、TEX−30)に仕込み、250℃および200rpmの回転数で溶融混練した。次いで、溶融物をストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターで切断してペレット状のアクリル系樹脂を得た。得られたアクリル系樹脂の粘度平均分子量(Mv)およびMFRを表1に示す。
表1に記載の成分を表1に記載の割合で用いたこと以外は、合成例1と同様の手順で、ペレット状のアクリル系樹脂を得た。得られたアクリル系樹脂の粘度平均分子量(Mv)およびMFRを表1に示す。
表3に示すように、70重量%の合成例1で得られたアクリル系樹脂と30重量%のPC−40とを、二軸混練押出機((株)日本製鋼所製、TEX−30SS、スクリューの長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D)は41)を用いて、シリンダー温度250℃および回転数100rpm(剪断速度81sec-1)で溶融混練した。二軸混練押出機のダイから吐出した直後の溶融物の温度を測定したところ、250〜255℃であった。なお、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との溶融粘度比(ηA/ηB)を、表3に示す。
溶融物をストランド状に押出して冷却後にストランドカッターで切断し、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の外観を目視で観察した結果を表3に示す。
次に、得られた樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械(株)製の「IS130FII」)を用いて、250℃のシリンダー温度、60℃設定の金型に射出成形して、50mm×50mm×3.4mmの板状成形体を得た。得られた板状成形体について、「(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)」の値を算出した。結果を表3に示す。
表3に記載の成分を表3に記載の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、それぞれ樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の外観を目視で観察した結果を表3に示す。
次に、得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の手順で板状成形体に成形し、「(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)」の値を算出した。結果を表3に示す。
次に、実施例1〜8、比較例1〜3および5で得られた板状成形体について、全光線透過率(Tt)、ビカット軟化温度(VST)および衝撃強度を測定した。
なお、合成例1、3および5で得られたアクリル系樹脂を、実施例1と同様の手順で成形した板状成形体についても、全光線透過率(Tt)、ビカット軟化温度(VST)および衝撃強度を測定した(参考例1〜3)。
透過率計(HR−100、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7361−1に準拠して、全光線透過率(Tt)を測定した。この数値が大きいほど、光線が透過しやすく透明性が高いことを示す。結果を表4に示す。
得られた成形体を、20mm×20mmの大きさに切断して試験片を作製した。得られた試験片についてJIS K7206のB50法に準拠して、荷重50Nおよび昇温速度50℃/時の条件で、ビカット軟化温度(VST)を測定した。この温度が高いほど、優れた耐熱性を有することを示す。結果を表4に示す。
JIS K7111−2に準拠してシャルピー衝撃試験を行い、衝撃強度を測定した。測定した成形体は、いずれもノッチ(切り込み)を入れていない。衝撃強度の値が大きいほど、優れた耐衝撃性を有することを示す。結果を表4に示す。
一方、比較例1〜3および5の樹脂組成物を成形して得られた成形体は、耐熱性および耐衝撃性について特に劣らないものの、Ttが著しく低く、透明でないことがわかる。
Claims (6)
- アクリル系樹脂を50〜95重量%およびポリカーボネート系樹脂を5〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物であって、
前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
で示される(メタ)アクリル酸エステル5〜50重量%と、これら以外の単官能単量体0.1〜20重量%とからなる単量体成分を重合させて得られる共重合体を含み、かつ80000〜300000の粘度平均分子量を有する樹脂であり、
前記ポリカーボネート系樹脂が、1種の二価フェノールとカルボニル化剤との反応物であり、16000〜25000の粘度平均分子量を有し、
温度240℃および剪断速度60sec-1におけるアクリル系樹脂の溶融粘度(ηA)と、温度240℃および剪断速度60sec-1におけるポリカーボネートの溶融粘度(ηB)との比(ηA/ηB)が0.40〜3.00であり、
下記式(a)
2≦(MVRPC×Wa×Wa)/(Wb×Wb)≦50 (a)
(式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Waは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wbは樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。)
を満足する、樹脂組成物。
- 前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸シクロヘキシルおよびアクリル酸シクロヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記単官能単量体が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂を含む樹脂混合物を溶融混練する工程
を含む、樹脂組成物の製造方法。 - 前記溶融混練が、180〜320℃の温度、および10〜500sec-1の剪断速度で行われる、請求項4に記載の製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
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