以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置1の分解斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す上下方向及び左右方向を、それぞれ「多方向入力装置1の上下方向」及び「多方向入力装置1の左右方向」と呼ぶものとする。また、図1に示す紙面手前側を「多方向入力装置1の前方側」と呼び、図1に示す紙面奥側を「多方向入力装置1の後方側」と呼ぶものとする。
図1に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、概して箱状のハウジング2内に、多方向入力装置1の上下方向に延在する操作部材3と、操作部材3に対する傾倒操作に応じて回動する第1連動部材4及び第2連動部材5とを備える。また、多方向入力装置1は、操作部材3の傾倒に伴う第1連動部材4の回動動作を検出する第1回転型電気部品6と、操作部材3の傾倒に伴う第2連動部材5の回動動作を検出する第2回転型電気部品7と、操作部材3に対する押圧操作に応じて駆動されるプッシュスイッチ8とを備える。さらに、多方向入力装置1は、操作部材3を操作前の初期状態に復帰させると共に操作部材3を介して第1連動部材4及び第2連動部材5を初期状態に復帰させるコイルばね91及び駆動部材92を有する復帰機構9と、この復帰機構9のコイルばね91からの付勢力を利用して第1連動部材4を所定位置に位置決めする位置決め部材10とを備える。
ハウジング2は、図1に示すように、装置本体の底面部を構成する下側ケース21と、この下側ケース21に上側から被せられる上側ケース22と、位置決め部材10とから構成されている。下側ケース21は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成される。下側ケース21は、概して平板形状を有する矩形状の底面部211と、この底面部211の外縁部に設けられた側壁部212と、前方側の側壁部212から前方側に延出して設けられたスイッチ載置部213と、後方側、左方側及び右方側の側壁部212から上方側に延出して設けられた支持片214〜216とを有している。なお、支持片215の外側には、上側ケース22の位置決めに用いられる壁部217が設けられている。
底面部211の中央には、円形状の凸部211aが形成されている。凸部211aは、底面部211から上方側にドーム状に隆起するように設けられている。この凸部211aにおける傾斜面部は、復帰機構9のコイルばね91の付勢力を受けた駆動部材92を初期位置に復帰させる役割を果たす。
スイッチ載置部213は、底面部211と同一平面上に配置される底面部213aと、この底面部213aの外縁部(前方側、左方側及び右方側の外縁部)に設けられた側壁部213bとを有する。スイッチ載置部213においては、これらの側壁部213bと、下側ケース21の前方側の側壁部212とで形成される凹部にプッシュスイッチ8が載置可能に構成されている。底面部213aの四隅部近傍には、後述するプッシュスイッチ8の端子部83が挿通可能なスリットが形成されている。
支持片214の上端部には、上方側に開口した円弧形状を有する凹部214aが設けられている。この凹部214aは、多方向入力装置1が組み立てられた状態において、後述する第1連動部材4の連結片422を回動可能に支持する。また、凹部214aの一部は、操作部材3に対して押圧操作が行われた場合に第1連動部材4の上下方向の回動支点として機能する。
同様に、支持片215、216の上端部には、それぞれ上方側に開口した円弧形状を有する凹部215a、216aが設けられている。これらの凹部215a、216aは、多方向入力装置1が組み立てられた状態において、それぞれ後述する第2連動部材5の突出片523、板状部521aを回動可能に支持する。また、これらの凹部215a、216aは、操作部材3に対して押圧操作が行われた場合に第2連動部材5の下方側への移動を規制する役割を果たす。
上側ケース22は、例えば、金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施して構成され、概して下方側に開口した箱状に設けられている。上側ケース22は、円形状の開口部221aが形成された上面部221と、この上面部221の外縁部から垂下して設けられた4つの側面部222とを有している。
前方側に配置された側面部(以下、適宜「前面部」という)222の中央には、下方側に開口した開口部222aが形成されている。この開口部222aは、位置決め部材10を収容すると共に、下側ケース21との間で位置決め部材10を挟持する。開口部222aの側方側であって、前面部222の下端部には、一対の係合片222bが設けられている。これらの係合片222bは、下側ケース21の下面側に折り曲げられて、上側ケース22を下側ケース21に一体化する。なお、図1においては、折り曲げられた状態の係合片222bを示している。
後方側に配置された側面部(以下、適宜「後面部」という)222の中央には、下方側に開口した開口部222cが形成されている。この開口部222cは、後述する第1連動部材4の連結片422側の一端を収容可能に構成されている。開口部222cの側方側であって、後面部222の下端部には、一対の係合片222dが設けられている。これらの係合片222dは、上述した係合片222bと共に、下側ケース21の下面側に折り曲げられて、上側ケース22を下側ケース21に一体化する。また、後面部222の所定位置には、一対のスリット222eが形成されている(図1にて、右方側のスリット222eは不図示)。これらのスリット222eは、後述する第1回転型電気部品6の係合片641がスナップイン係合可能に構成されている。さらに、後面部222の所定位置には、円形状の位置決め孔222fが複数形成されている。これらの位置決め孔222fには、後述する第1回転型電気部品6の位置決め片642が挿通される。
右方側に配置された側面部(以下、適宜「右側面部」という)222の中央には、下方側に開口した開口部222gが形成されている。この開口部222gは、後述する第2連動部材5の板状部521aを収容可能に構成されている。開口部222gの側方側であって、右側面部222の下端部には、一対の挿通片222hが設けられている。これらの挿通片222hは、多方向入力装置1が実装される基板の位置決め孔に挿通され、装置本体の位置決めに利用される。また、右側面部222の所定位置には、一対のスリット222iが形成されている。これらのスリット222iは、後述する第2回転型電気部品7の係合片741がスナップイン係合可能に構成されている。さらに、右側面部222の所定位置には、円形状の位置決め孔222jが複数形成されている。これらの位置決め孔222jには、後述する第2回転型電気部品7の位置決め片742が挿通される。
左方側に配置された側面部(以下、適宜「左側面部」という)222の中央には、下方側に開口した開口部222kが形成されている。この開口部222kは、下側ケース21の壁部217を収容可能に構成されている。開口部222kの側方側であって、左側面部222の下端部には、一対の挿通片222lが設けられている。これらの挿通片222lは、上述した挿通片222hと同様に、多方向入力装置1が実装される基板の位置決め孔に挿通され、装置本体の位置決めに利用される。
ハウジング2の内部において、図1に示すように、操作部材3は、第1連動部材4及び第2連動部材5に挿通した状態で収納されている。ここで、これらの操作部材3、第1連動部材4及び第2連動部材5の構成について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する操作部材3、第1連動部材4及び第2連動部材5の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する操作部材3の断面図である。なお、図3においては、後述する操作部材3のリブ324を通過しない平面における断面を示している。より具体的には、図3は、第1連動部材4の軸線方向と第2連動部材5の軸線方向との間を通る平面で切断した場合における操作部材3の断面を示している。
操作部材3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して円筒形状の基部31と、この基部31の上端部から上方側に突出する突出部32と、基部31の外周面から側方側に突出する一対の軸部33とを有している。軸部33は、左右方向側に突出し、後述する第1連動部材4の挿通孔41aに挿通可能に構成されている。軸部33の側面の上方側には、これらの挿通孔41aへ挿通し易くするためのテーパ面が形成されている。
突出部32は、一対の平面状部分と、これらの平面状部分をそれぞれ連結する曲面状部分とから構成される。一対の平面状部分には、一対の凸部32aが設けられている。これらの凸部32aは、摺接部を構成するものであり、突出部32の平面状部分から外方に突出して設けられる。各凸部32aは、上下方向に垂直な平面における断面の外周部分が円弧形状を有するように構成される。これらの凸部32aは、後述する第2連動部材5のスリット孔51bに挿通された突出部32と、スリット孔51bを規定する枠状部51aとの間にクリアランスが生じることにより、突出部32がガタつくことを防ぐ役割を果たすものである。操作部材3の突出部32は、スリット孔51bを規定する枠状部51aと凸部32aとが摺接した状態でスリット孔51b内を移動する。
図3に示すように、操作部材3には、後述する復帰機構9のコイルばね91を収容する収容部311が設けられている。この収容部311は、基部31の内側において、下方側に開口して設けられている。収容部311内には、収容部311を規定する上面部から下方側に突出する筒状部312が設けられている。この筒状部312は、概して円筒形状を有し、その外周面が一定間隔を空けて基部31の内周面と対向して配置されている。後述する復帰機構9のコイルばね91は、この筒状部312の外周面と基部31の内周面との間にその上端部が収容される。
また、操作部材3には、基部31及び突出部32の内側において、上下方向に延在して孔部321が設けられている。この孔部321は、収容部311内に配置された筒状部312の下端から突出部32の上端部まで設けられている。また、孔部321の上方には、開口部322が設けられている。この開口部322は、突出部32の上端部に設けられ、孔部321と連通している。このように孔部321と開口部322とが連通することにより、操作部材3の内部には、基部31及び突出部32を貫通する貫通部が設けられた状態となっており、操作部材3全体として筒形状を有している。
なお、ここでは、孔部321と開口部322とが連通して操作部材3の内側に貫通部が形成される場合を示しているが、孔部321を筒状部312の下端から突出部32の上端(先端)まで貫通することなく設けるようにしても良い。すなわち、操作部材3の孔部321は、操作部材3の内側に筒状部312の下端から突出部32の上端部まで形成されており、孔部321の上端が閉じていても構わない。このように、孔部321の上部が塞がれた形態において、孔部321と連通しない開口部が形成されていても良く、また開口部を有さない構成であっても良い。しかしながら、本実施の形態のように操作部材3に孔部321を貫通して設けることにより、孔部321内の寸法測定が容易となり、後述する駆動部材92の軸部922の外周と孔部321の案内箇所との間のクリアランスの寸法精度を高めることが可能となる。
孔部321の上端部近傍には、段差部323が設けられている。この段差部323を挟んで上方側には小径部321aが設けられる一方、下方側には大径部321bが設けられている。大径部321bの内径は、小径部321aの内径よりも大径に構成されている。すなわち、孔部321は、段差部323の位置を挟んで、下方側部分が上方側部分よりも僅かに広い形状を有している。
大径部321bの内周面には、段差部323の下面から下方側に延びる複数のリブ324が設けられている。各リブ324の下端部は、大径部321bの内側において、基部31の上端部近傍の位置まで延びている。また、これらのリブ324は、大径部321bの内側に向けて僅かに突出して設けられている。各リブ324の内周側の端面は、小径部321aの内周面と略同一平面上に配置されている。なお、これらのリブ324は、回転規制部を構成するものであり、孔部321に挿入された駆動部材92の独立した回転を規制する役割を果たす。
小径部321aを規定する内壁面は、後述する軸部922の細軸部922cを案内する第1案内部325を構成する。一方、大径部321bを規定する内壁面の一部(下端部)は、後述する軸部922の太軸部922bを案内する第2案内部326を構成する。第1案内部325は、多角形状(本実施の形態において八角形)の内壁面を有する。この第1案内部325の内周寸法は、後述する軸部922の細軸部922cの外周寸法と略同一寸法に構成されている。第2案内部326は、孔部321の下端部近傍、より具体的には、筒状部312の内周部分に設けられている。この第2案内部326の内周寸法は、後述する軸部922の太軸部922bの外周寸法と略同一寸法に構成されている。
図2に示すように、第1連動部材4は、例えば、絶縁性の樹脂材料(例えば、ナイロン)を成形して構成され、対向して配置される長尺の一対の側面部41と、これらの側面部41の両端部同士を連結する連結部42とを有している。これらの側面部41及び連結部42の内側には、上面視にて矩形状の開口部43が設けられている。各側面部41の中央には、上述した操作部材3の軸部33が挿通する挿通孔41aが形成されている。軸部33が挿通孔41aに挿通されることにより、第1連動部材4は、操作部材3を回動可能に保持した状態となる。
前方側に配置された連結部42には、多方向入力装置1の前方側に突出して押圧片421が設けられている。この押圧片421は、プッシュスイッチ8の駆動に利用される。一方、後方側の連結部42には、多方向入力装置1の後方側に突出して連結片422が設けられている。この連結片422は、第1連動部材4と第1回転型電気部品6との連結に利用される。連結片422は、操作部材3の傾倒動作に伴う第1連動部材4の回動を第1回転型電気部品6に伝達する。第1連動部材4においては、押圧片421と連結片422とが軸線方向に沿って配設されている。
ここで、これらの押圧片421及び連結片422の構成について図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する第1連動部材4及び第1回転型電気部品6の説明図である。なお、図4及び図5においては、便宜上、第1回転型電気部品6を分解して示している。また、図4及び図5においては、それぞれ多方向入力装置1の前方側及び後方側から第1連動部材4及び第1回転型電気部品6を示している。
押圧片421は、図4に示すように、下面側に配置された軸部421aと、この軸部421aの基端部に配置され、概して円錐台形状を有する当接部421bと、軸部421aの先端部に配置され、上方側に突出する突出部421cとを有する。当接部421bは、押圧片421の先端に向けて小径になる構成を有する。なお、この当接部421bの円錐台形状部分には、テーパ部421dが設けられている。多方向入力装置1が組み立てられた状態において、当接部421bは、後述する位置決め部材10の受け部104aと当接して案内されるように構成されている。すなわち、当接部421bは、受け部104aによって第1連動部材4の軸線方向に沿った一方側への移動が案内される被案内部となっている。
連結片422は、図5に示すように、板状を有し、多方向入力装置1の上下方向に延在して設けられている。連結片422の一面(図5における右方側面)には、初期状態における操作部材3の突出部32の突出方向(多方向入力装置1の上下方向)に沿った平坦面で構成される平面部422aが設けられている。一方、連結片422の他面(図5における左方側面)には、平面部422aと平行な平面で構成される当接部422bが設けられている。この当接部422bは、後述する第1回転型電気部品6の摺動子受け62に設けられる弾性片625が弾接可能に構成されている。
なお、連結片422が設けられた連結部42の後面には、僅かに後方側に突出する一対の突出片423が設けられている。これらの突出片423は、規制部を構成するものであり、復帰機構9のコイルばね91からの付勢力に応じて第1連動部材4が後方側に移動する場合において、上側ケース22(より具体的には後面部222)の内壁面と当接して第1連動部材4の移動を規制する役割を果たす。なお、ここでは、突出片423が上側ケース22の内壁面と当接して第1連動部材4の移動が規制される場合について説明しているが、これに限定されるものではない。上側ケース22以外の部分(ハウジング2の一部)と当接して第1連動部材4の移動を規制することも可能である。
図2に示すように、第2連動部材5は、第1連動部材4に対して回動軸の軸線方向が直交するように配設されている。第2連動部材5は、例えば、絶縁性の樹脂材料などで構成される。第2連動部材5には、成形加工などにより図1に示す上方側に向かってアーチ状に湾曲形成された枠状部51aが設けられると共に、これらの枠状部51aの長手方向に沿ってスリット孔51bが形成されている。このスリット孔51bは、操作部材3の突出部32が挿通可能な寸法に設けられている。
第2連動部材5の長手方向の両端には、一対の側面部52が設けられている。これらの側面部52の外側には、下方側に突出する板状部521a、521bが設けられている。板状部521aの下面は、円弧形状を有しており、多方向入力装置1が組み立てられた状態において、下側ケース21の支持片216の凹部216a上に配置される。第2回転型電気部品7に対向して配置される板状部521aには、断面が長方形状の連結片522が設けられている。この連結片522は、操作部材3の傾倒動作に伴う第2連動部材5の回動を第2回転型電気部品7に伝達する。一方、第2回転型電気部品7の反対側の板状部521bには、概して円形状の突出片523が設けられている。この突出片523は、多方向入力装置1が組み立てられた状態において、下側ケース21の支持片215の凹部215a上に配置される。
第2連動部材5が有する連結片522は、第1連動部材4の連結片422と同一の構成を有する。すなわち、連結片522は、板状を有し、多方向入力装置1の上下方向に延在して設けられている。連結片522の一面(後面)には、初期状態における操作部材3の突出部32の突出方向(多方向入力装置1の上下方向)に沿った平坦面で構成される平面部522aが設けられている。一方、連結片522の他面(前面)には、平面部522aと平行な平面で構成される当接部522bが設けられている。この当接部522bは、後述する第2回転型電気部品7の摺動子受け72に設けられる弾性片725が弾接可能に構成されている。
第1回転型電気部品6は、第1連動部材4と連結され、その回動動作を検出する。第1回転型電気部品6は、図4及び図5に示すように、第1連動部材4の回動に伴って回転する摺動子61と、この摺動子61が保持される摺動子受け62と、摺動子61が摺接する抵抗体パターン631及び集電体パターン632が設けられる絶縁基板63と、絶縁基板63が一体化されると共に、摺動子61が保持された摺動子受け62を収容可能に構成されたケース64とを有している。
摺動子61は、導電性を有する金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施して形成される。摺動子61は、概して円環形状を有する円環形状部611と、この円環形状部611の上方側に設けられた弾接部612と、円環形状部611の開口部611a内に設けられた一対の摺接片613とを含んで構成されている。弾接部612及び摺接片613は、円環形状部611から僅かに後方側に延出して設けられ、それぞれ絶縁基板63の抵抗体パターン631及び集電体パターン632に摺接可能に構成されている。円環形状部611の所定位置には、摺動子61を摺動子受け62に取り付けるための複数の取付孔614が形成されている。
摺動子受け62は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して円板形状を有する基部621と、この基部621の中央から後方側に突出して設けられた軸部622とを含んで構成される。基部621の前面には、円環形状を有する突部623が設けられている。突部623は、基部621の前面から僅かに前方側に突出して設けられている。多方向入力装置1が組み立てられた状態において、突部623は、上側ケース22(より具体的には、後面部222)の外側面に当接可能に構成されている。
ハウジング2(上側ケース22)の外側面と当接可能な突部623が摺動子受け62の基部621に設けられることから、プッシュスイッチ8を駆動する際に摩擦等によって摺動子受け62に傾くような力が作用する場合においても、突部623がハウジング2の外側面に当接して摺動子受け62の傾きを抑制できるので、第1回転型電気部品6の出力精度を安定させることが可能となる。
軸部622は、円環形状を有する突部623の内側部分に設けられている。軸部622には、摺動子受け62を前後方向(軸方向)に貫通する孔部624が形成されている。孔部624内には、前後方向に延在する弾性片625が配置されている。この弾性片625は、軸部622の先端部(後端部)に設けられた連結部625a(図12参照)で軸部622の外周面と連結されている。弾性片625は、軸部622の一部を前方側に折り返すように形成されており、連結部625aを基端部とする一方、先端部(自由端部)を前方側に延出させた状態となっている。すなわち、弾性片625は、軸部622に片持ち状に形成され、第1連動部材4側の一部が自由端部を構成している。
弾性片625は、図4に示すように、板状を有し、多方向入力装置1の上下方向に延在して設けられている。軸部622内においては、この弾性片625に対向して支持面部624aが設けられている(図5参照)。この支持面部624aは、孔部624を規定する内壁面で構成される。支持面部624aは、初期状態における操作部材3の突出部32の突出方向(多方向入力装置1の上下方向)に沿った平坦面で構成されている。多方向入力装置1が組み立てられた状態において、支持面部624aが第1連動部材4の連結片422の平面部422aを対向配置される一方、弾性片625が内側の側面(左方側面)で第1連動部材4の連結片422の当接部422bを弾接可能に構成されている。
絶縁基板63の貫通孔63aに挿通された軸部622の先端部を連結部625aとして弾性片625が基部621側に延びる構成を採ることから、弾性片625の長さを確保できるので、良好な弾性力を長期間に亘って確保することが可能となる。しかも、弾性片625は、後述する一対の爪部627a、627bと異なる位置に設けられることから、これらの爪部627a、627bが干渉する位置に設けられる場合と比較して弾性片625の長さを確保でき、良好な弾性力を長期間に亘って確保することが可能となる。
軸部622の外周面の上部には、図5に示すように、一定距離離間して一対の切り欠き部626が形成されている。この切り欠き部626の間には、前方側に延出する爪部627aが設けられている。一対の切り欠き部626の間に設けられることにより、爪部627aは、軸部622の径方向(図5に示す上下方向)に僅かに揺動可能に構成されている。同様に、軸部622の外周面の下部には、一定距離離間して一対の切り欠き部626が形成されており、これらの間に爪部627bが設けられている。この爪部627bも軸部622の径方向(図5に示す上下方向)に僅かに揺動可能に構成されている。
これらの爪部627a、627bは、多方向入力装置1の上下方向に一定距離離間して配置されている。特に、爪部627a、627bは、軸部622に設けられた孔部624を挟んで対向して配置されている。爪部627a、627bの先端は、外側に突出した形状を有し、絶縁基板63の貫通孔63aに掛け止め可能に構成されている。このように爪部627a、627bで絶縁基板63に掛け止めされることで、摺動子61を固定した摺動子受け62と絶縁基板63が組み込まれたケース64とをユニット化できる。すなわち、第1回転型電気部品6がユニット化される。
摺動子受け62の軸部622に絶縁基板63の貫通孔63aに掛け止めされる一対の爪部627a、627bが設けられることから、摺動子61が保持された摺動子受け62を絶縁基板63に保持した状態で組立作業等を行うことができる。これにより、第1回転型電気部品6の取扱いを簡素化することが可能となる。
基部621の前面の所定位置には、複数の突起628が設けられている。これらの突起628は、摺動子61の取付孔614に対応する位置に配置されている。これらの突起628を取付孔614に挿通し、その先端部を例えば熱変形させることで摺動子61を摺動子受け62に固定できる。この場合、摺動子61は、軸部622を開口部611aに貫通させると共に、弾接部612及び摺接片613を絶縁基板63側に延出させた状態で摺動子受け62に固定される。
絶縁基板63は、例えば、ガラスエポキシ材料で構成される。絶縁基板63の中央には、図4に示すように、摺動子受け62の軸部622を回転可能に保持する円形状の貫通孔63aが形成されている。絶縁基板63の前面であって貫通孔63aの周囲には、抵抗体パターン631と集電体パターン632とが設けられている。例えば、抵抗体パターン631は、絶縁基板63に設けたカーボン層で構成され、集電体パターン632は、絶縁基板63に設けた銀印刷層にカーボン層を重ねて構成されている。抵抗体パターン631は、概して円弧形状(略C字形状)を、一方、集電体パターン632は、概して円環形状をなして、それぞれ絶縁基板63上に設けられている。
また、絶縁基板63には、抵抗体パターン631の両端部と導通して構成され、抵抗体パターン631に電圧を印加可能な一対の端子633と、集電体パターン632と導通して構成され、電気信号(検出電圧)を外部出力する端子634とが設けられている。これらの端子633及び端子634は、絶縁基板63と一体化されるケース64の下方側に導出され、多方向入力装置1が実装される基板に接続される。なお、絶縁基板63に設けられる抵抗体パターン631及び集電体パターン632、並びに、端子633及び端子634の構成については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
ケース64は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して前方側(第1連動部材4側)に開口した箱状に設けられている。ケース64の側面には、一対の係合片641が設けられている。これらの係合片641は、上側ケース22に対する第1回転型電気部品6の取付けに利用される。より具体的には、上側ケース22の後面部222に形成されたスリット222eにスナップイン係合可能に構成されている。また、ケース64の前面には、複数の位置決め片642が設けられている。これらの位置決め片642は、上側ケース22に対する第1回転型電気部品6の位置決めに利用される。より具体的には、上側ケース22の後面部222に形成された位置決め孔222fに挿通可能に構成されている。
一対の係合片641の内側には、円形状の凹部643が設けられている。この凹部643は、摺動子61が固定された摺動子受け62を収容可能な寸法に設けられている。この凹部643の底部に対応する位置に絶縁基板63が配置されている。絶縁基板63は、例えば、インサート成形等によりケース64と一体化されている。この場合、絶縁基板63は、凹部643内で抵抗体パターン631及び集電体パターン632を前方に露出した状態でケース64に組み込まれている。
なお、第2回転型電気部品7は、第1回転型電気部品6と共通する構成を有するため、その詳細な説明を省略する。すなわち、第2回転型電気部品7は、第2連動部材5の回動に伴って回転する摺動子71と、この摺動子71が固定される摺動子受け72と、摺動子71が摺接する抵抗体パターン及び集電体パターンが設けられる絶縁基板73と、絶縁基板73が一体化されると共に摺動子71が固定された摺動子受け72を収容可能に構成されたケース74とを有している(図10参照)。
プッシュスイッチ8は、概して立方体形状を有する筐体81と、この筐体81の上面から一部露出した状態で配置される押圧部であるスイッチ部82と、筐体81内に収容されるスイッチ回路に接続される端子部83とを有する。プッシュスイッチ8は、下側ケース21のスイッチ載置部213に載置される。端子部83は、スイッチ載置部213の底面部213aに形成されたスリットから下方側に導出される。端子部83は、多方向入力装置1が実装される基板に接続され、操作部材3に対する押圧操作に応じた信号を外部出力可能に構成されている。
復帰機構9は、付勢部材を構成するコイルばね91と、駆動部材92とから構成される。コイルばね91は、操作部材3の基部31に設けられた収容部311に収容される外径寸法を有すると共に、後述する駆動部材92の基部922aを収容可能な内径寸法を有している。コイルばね91は、操作部材3を操作前の初期状態に復帰させると共に操作部材3を介して第1連動部材4及び第2連動部材5を初期状態に復帰させる付勢力を提供する。
駆動部材92は、傾倒動作した操作部材3を初期位置に復帰させる役割を果たす。以下、図6を参照しながら、駆動部材92の構成について説明する。図6Aは、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する駆動部材92の斜視図であり、図6Bは、駆動部材92の上面図である。
図6Aに示すように、駆動部材92は、円盤形状部921と、この円盤形状部921の上面から突出する軸部922とを有する。円盤形状部921の上面には、上方側に突出する円環形状の凸部921aが設けられている。円盤形状部921の上面のうち、この凸部921aで囲まれた部分は、コイルばね91の一部を収容する収容部921bとして利用される。
円盤形状部921の下面には、下面視にて円形状を有する凹部921cが形成されると共に、凹部921cの周囲に球面形状部921dが設けられている(図9参照)。この凹部921cは、初期状態において、下側ケース21の底面部211に設けられた凸部211aを収容可能に構成されている。球面形状部921dは、操作部材3が傾倒動作した場合において、コイルばね91の付勢力により下側ケース21の凸部211aの傾斜面に付勢されることで、駆動部材92(これに連結された操作部材3)を初期位置に復帰させる役割を果たす。
軸部922は、円盤形状部921の上面に設けられる基部922aと、この基部922aの上端に設けられる太軸部922bと、この太軸部922bの上端に設けられる細軸部922cとを有する。基部922a、太軸部922b及び細軸部922cは、いずれも略円柱形状を有している。基部922aの外径は、太軸部922bの外径よりも大径に構成されると共に、太軸部922bの外径は、細軸部922cの外径よりも大径に構成されている。太軸部922bと細軸部922cとの間には、段差部922dが形成されている。
細軸部922cの外周面には、段差部922dの上面から上方側に延びる複数の当接片922eが設けられている。各当接片922eの上端部は、細軸部922cの中央周辺まで延びている。また、これらの当接片922eは、細軸部922cの外側に向けて僅かに突出して設けられている。これらの当接片922eは、軸部922の当接部を構成するものであり、操作部材3(より具体的には大径部321b)の内壁面に設けられたリブ324と当接する。この場合において、図6Bに示すように、細軸部922cと当接片922eとを合わせた外径は、太軸部922bの外径を超えない寸法に構成されている。
このような駆動部材92の軸部922において、細軸部922c及び太軸部922bは、操作部材3の第1案内部325及び第2案内部326に案内される被案内部として機能する。これらの細軸部922c及び太軸部922bは、略円柱形状を有していることから、クリアランスの制御が容易である。また、駆動部材92は絶縁性の樹脂材料で形成されているため、細軸部922cにおける当接片922eは、例えば、成形加工等により形成することができる。この場合には、駆動部材92に対して高精度且つ容易に当接片922eを形成することができる。
位置決め部材10は、中間部材を構成するものであり、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成される。以下、図7を参照しながら、位置決め部材10の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する位置決め部材10の斜視図である。なお、図7Aにおいては、位置決め部材10を多方向入力装置1の前方側から示し、図7Bにおいては、位置決め部材10を多方向入力装置1の後方側から示している。
図7Aに示すように、位置決め部材10は、上下方向に延在する板状部101と、この板状部101の下端部に設けられた一対の脚部102とを有する。板状部101は、概して正面視して長方形状を有している。板状部101の上端部中央には、後方側に突出すると共に上方側に屈曲する突出片103が設けられている。一方、板状部101の下端部には、下方側に開口した円弧形状を有する凹部104が形成されている。
また、板状部101の後面には、図7Bに示すように、後方側に突出して設けられた突出壁部101aが設けられている。この突出壁部101aは、上側ケース22の前面部222の開口部222aの上端部の形状に対応する形状を有している。また、突出壁部101aには、凹部104と連続して受け部104aが設けられている。受け部104aは、概して円錐台形状を有しており、後方側に向けて大径になる構成を有する。受け部104aの円錐台形状部分の一部には、テーパ部104bが設けられている。このように合成樹脂製の位置決め部材10にテーパ部104bが設けられることから、テーパ部104bの加工が容易である。なお、このテーパ部104bを構成する傾斜面は、第1連動部材4の当接部421bに設けられたテーパ部421dに対応する形状を有している。
一対の脚部102は、凹部104の側方側で板状部101の下端部から下方側に延出して設けられている。これらの脚部102は、板状部101の前方側の位置において、板状部101と直交する平面で上下方向に延在して設けられている(図7A参照)。脚部102には、板状部101の下端部から前方側に延出する平面部105が設けられている。この平面部105は、プッシュスイッチ8の押え部を構成するものであり、プッシュスイッチ8の筐体81の上面と平行に延在して設けられている。また、脚部102には、板状部101よりも後方側の位置で上下に延在する一対の係合片106が設けられている。なお、これらの係合片106は、上側ケース22により保持される被保持片を構成する。
続いて、このような構成を有する多方向入力装置1を組み立てた状態について説明する。図8は、本実施の形態に係る多方向入力装置1を組み立てた状態の斜視図である。図9及び図10は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の断面図である。なお、図8〜図10においては、操作前の初期状態における多方向入力装置1を示している。また、図9においては、操作部材3及び第1連動部材4の中心を通過する断面を示し、図10においては、操作部材3及び第2連動部材5の中心を通過する断面を示している。
上記構成部材を組み立てた状態の多方向入力装置1においては、図8に示すように、下側ケース21と上側ケース22との内側に形成される空間に操作部材3、第1連動部材4、第2連動部材5及び復帰機構9が収納される。この場合において、操作部材3は、突出部32を上側ケース22の開口部221aから上方側に露出させた状態でハウジング2内に収納されている。また、第1連動部材4は、押圧片421及び連結片422を露出した状態でハウジング2内に収納されている(図9参照)。同様に、第2連動部材5は、連結片522及び突出片523を露出した状態でハウジング2内に収納されている(図10参照)。
プッシュスイッチ8、第1回転型電気部品6及び第2回転型電気部品7は、ハウジング2の外側に配置される。プッシュスイッチ8は、ハウジング2(上側ケース22)の前方側に配置されたスイッチ載置部213に載置される。この場合において、プッシュスイッチ8は、上側ケース22の前面部222と、下側ケース21のスイッチ載置部213との間に配置される位置決め部材10の平面部105で下方側に押さえられた状態で配置されている。この場合、第1連動部材4の押圧片421は、スイッチ部82上に載置された状態で配置されている。
位置決め部材10は、板状部101の上端部に設けられた突出片103及び一対の脚部102に設けられた係合片106を上側ケース22に保持された状態で固定されている。すなわち、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、下側ケース21に対して上側ケース22を取り付けるだけで位置決め部材10が保持されることから、複雑な作業工程を必要とすることなく位置決め部材10を下側ケース21及び上側ケース22と一体化することが可能となる。
第1回転型電気部品6は、一対の係合片641を上側ケース22の後面部222に形成されたスリット222eにスナップイン係合した状態でハウジング2に取り付けられている。同様に、第2回転型電気部品7は、一対の係合片741を上側ケース22の右側面部222に形成されたスリット222iにスナップイン係合した状態でハウジング2に取り付けられている。本実施の形態に係る多方向入力装置1は、このようにハウジング2内に構成部材を収納した状態で上側ケース22の係合片222b、222dを折り曲げて下側ケース21と一体化すると共に、上側ケース22に第1回転型電気部品6及び第2回転型電気部品7を取り付けることで完成する。
ハウジング2の内部において、操作部材3は、図9及び図10に示すように、第1連動部材4及び第2連動部材5に挿通した状態で収納されている。操作部材3は、軸部33を第1連動部材4の挿通孔41aに挿通した状態で配置される一方、突出部32を第2連動部材5のスリット孔51bに挿通した状態で配置される。この場合において、第2連動部材5は、第1連動部材4の上方側に配置されている。また、第1連動部材4と第2連動部材5とは、それぞれの軸線方向が互いに直交した状態で配置されている。
操作部材3の基部31に形成される収容部311には、基部922aでコイルばね91を保持した状態の駆動部材92の一部が収容されている。駆動部材92は、下側ケース21の底面部211に載置された状態となっている。基部922aに保持されたコイルばね91の下端部は、収容部921bを規定する円盤形状部921の上面に係止され、コイルばね91の上端部は、収容部311を規定する基部31の内壁面(天井面)に係止されている。初期状態において、コイルばね91は、僅かに押し縮められた状態で収容部311に収納されている。このため、操作部材3には、初期状態において、コイルばね91から上方側に付勢する付勢力が作用した状態となっている。また、駆動部材92には、初期状態において、コイルばね91から下方側(下側ケース21の底面部211側)に付勢する付勢力が作用した状態となっている。
操作部材3に設けられた孔部321には、軸部922を構成する太軸部922b及び細軸部922cの一部が挿通されている。このとき、細軸部922cの先端は、段差部323より上方に位置するように配置される。すなわち、細軸部922cは、その先端を含む一部が小径部321a内に位置し、残りの部分が大径部321b内に位置している。また、太軸部922bは、その一部が大径部321b内に位置し、残りの部分が収容部311内に位置している。
初期状態において、操作部材3の段差部323と軸部922の段差部922dとは上下に離間した状態で配置されている。操作部材3に対する傾倒操作に伴い、軸部922の細軸部922c及び太軸部922bは、第1案内部325及び第2案内部326に案内されて上下動する。
ここで、操作部材3と駆動部材92の結合状態について図11を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する操作部材3及び駆動部材92の断面図である。なお、図11においては、説明の便宜上、操作部材3及び駆動部材92のみを示している。また、図11においては、操作部材3及び駆動部材92を水平に通過する断面を示している。
図11に示すように、操作部材3の大径部321bに設けられたリブ324は、駆動部材92の軸部922における細軸部922cに設けられた当接片922eと噛み合うように配置されている。仮に、駆動部材92(軸部922)が回転しようとすると、当接片922eがリブ324の側面に当接することで、その回転が規制される。操作部材3の孔部321がリブ324を有さず、また、駆動部材92の軸部922が当接片922eを有さない場合には、孔部321内で駆動部材92(軸部922)が回転し、周辺部材との摩擦により駆動部材92が摩耗する事態が発生し得る。これに対し、本実施の形態では、操作部材3の孔部321に挿入された軸部922が操作部材3から独立して回転するのを規制できるので、周辺部材との間に発生する摩擦により駆動部材92が摩耗する事態を防止できる。
操作部材3に挿通された第1連動部材4は、押圧片421がプッシュスイッチ8のスイッチ部82に対向して配置されると共に、連結片422が形成された一端部を支持片214で回動可能に支持されている。この場合、押圧片421の当接部421bは、位置決め部材10の受け部104aに当接した状態となっている。上述のように、操作部材3には、上方側に付勢する力が作用している。操作部材3は、軸部33で第1連動部材4に回動可能に保持されていることから、操作部材3に作用する上方側への付勢力は、受け部104aにより後方側への付勢力に変換される。このため、第1連動部材4には、後方側(図9に示す右方側)に移動する付勢力が作用した状態となっている。このようにコイルばね91の付勢力により第1連動部材4を後方側に押圧することにより、第1連動部材4が前後方向にガタつくことが防止される。
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、位置決め部材10に設けられた受け部104a(テーパ部104b)に対して当接部421b(テーパ部421d)を当接させて第1連動部材4をその軸線方向に沿った一方側(本実施の形態においては、第1回転型電気部品6側)に移動できることから、第1連動部材4を介して操作部材3の位置を安定させることができる。これにより、第2連動部材5を介して操作される第2回転型電気部品7の出力精度を向上することが可能となる。なお、第1連動部材4の突出片423が上側ケース22(後面部222)の内壁面と当接することで、第1連動部材4の第1回転型電気部品6側への移動が規制されている。
特に、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、合成樹脂製の位置決め部材10に受け部104aが設けられることから、合成樹脂製の位置決め部材10の一部で第1回転型電気部品6側に第1連動部材4を移動することができる。これにより、第1回転型電気部品6側への移動に伴って第1連動部材4が削れる事態を抑制すると共に、第1回転型電気部品6側へ第1連動部材4を円滑に移動させることが可能となる。
また、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、第1連動部材4の一端部(連結片422)が第1回転型電気部品6と係合する一方、他端部(押圧片421)がプッシュスイッチ8と対向して配置され、位置決め部材10が第1連動部材4の他端部側に配置されることから、第1回転型電気部品6と干渉させることなく位置決め部材10を配置できるので、多方向入力装置1を小型化することが可能となる。
第1連動部材4の連結片422は、第1回転型電気部品6が有する摺動子受け62の軸部622に形成された孔部624に挿入されている。第1回転型電気部品6において、摺動子受け62は、絶縁基板63と対向配置されている。摺動子61は、摺動子受け62の前面に固定されており、その一部を絶縁基板63の抵抗体パターン631、集電体パターン632に摺接した状態となっている。また、摺動子受け62は、突部623で上側ケース22の後面部222に当接した状態となっている。
ここで、第1連動部材4と第1回転型電気部品6との連結状態について図12を参照しながら説明する。図12は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する第1連動部材4及び第1回転型電気部品6の断面図である。なお、図12においては、説明の便宜上、第1連動部材4及び第1回転型電気部品6のみを示している。また、図12においては、第1連動部材4の押圧片421及び連結片422の中心を水平に通過する断面を示している。
図12に示すように、軸部622の孔部624に挿入された連結片422は、平面部422aを支持面部624aで支持された状態で、当接部422bを弾性片625で弾接される。すなわち、連結片422は、軸部622内において、支持面部624aと弾性片625とにより挟持された状態となっている。このように弾性片625により支持面部624a側に弾接されることにより、連結片422は、クリアランスを介在しない状態で摺動子受け62に連結される。このため、操作部材3に対する傾倒操作に伴って第1連動部材4が回動する場合に、適切にその回動動作を第1回転型電気部品6に伝達できるものとなっている。
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、摺動子受け62の孔部624内に設けられた弾性片625により、第1連動部材4にその軸線方向への移動を許容しつつ、摺動子受け62が第1連動部材4の一端部に設けられた連結片422に弾性保持されることから、第1連動部材4と第1回転型電気部品6の摺動子受け62とをクリアランスを介在させることなく係合できるので、操作部材3に連動する第1連動部材4を回動させてプッシュスイッチ8を駆動する場合でも、第1連動部材4を介して操作される第1回転型電気部品6の出力精度を向上することが可能となる。
次に、本実施の形態に係る多方向入力装置1の動作について図13〜図15を用いて説明する。図13〜図15は、それぞれ本実施の形態に係る多方向入力装置1の動作の説明図である。図13〜図15においては、操作部材3に対して傾倒操作が行われた場合の多方向入力装置1の動作状態を示している。図13及び図14では多方向入力装置1の右方側に傾倒操作が行われた場合の動作状態を示し、図15では多方向入力装置1の後方側に傾倒操作が行われた場合の動作状態を示している。なお、図13及び図15においては、説明の便宜上、上側ケース22を省略している。さらに、図13においては、説明の便宜上、第2回転型電気部品7を省略している。
操作部材3に対して押圧操作が行われると、図8に示す多方向入力装置1において、軸部33で連結された第1連動部材4がハウジング2内で下方側に移動する。すなわち、第1連動部材4は、連結片422が形成された一端部と支持片214との当接部を支点として回動するように移動する。これに伴い、押圧片421も下方側に移動すると、これが載置されるプッシュスイッチ8のスイッチ部82が下方側に押圧される。これにより、プッシュスイッチ8内に収容されたスイッチ回路から端子部83を介して、例えば、プッシュスイッチ8のオン信号が外部出力される。
このように操作部材3に対して押圧操作が行われる場合において、操作部材3の移動が第2連動部材5の状態に影響を与えることはない。このため、第2連動部材5は、下側ケース21(より具体的には、支持片215、216)に支持されて初期位置を維持した状態となっている。また、操作部材3がハウジング2内に押し下げられるため、第1連動部材4がその軸線方向を中心として回動することもない。このため、第1連動部材4に連結された第1回転型電気部品6の摺動子61は、回転することもなく初期位置を維持した状態となっている。
また、多方向入力装置1の右方側に向けて操作部材3に対して傾倒操作が行われると、図14に示すように、軸部33で連結された第1連動部材4がハウジング2内で回動する。この場合、図13に示すように、第1連動部材4は、押圧片421をプッシュスイッチ8のスイッチ82に載置した状態で、下側ケース21の支持片214の凹部214aの一部を回動支点として回動する。この第1連動部材4の回動動作に伴って連結片422が回転すると、これに連結された摺動子受け62及びこれに固定された摺動子61が回転する。この摺動子61の回転動作に応じて弾接部612及び摺接片613が、それぞれ抵抗体パターン631及び集電体パターン632上を摺動する。これにより、弾接部612及び摺接片613の摺接位置に応じた信号が端子634を介して外部出力される。
このように操作部材3に対して傾倒操作が行われる場合において、操作部材3の移動が第2連動部材5の状態に影響を与えることはない。このため、第2連動部材5は、下側ケース21(より具体的には、支持片215、216)に支持されて初期位置を維持した状態となっている。また、操作部材3がハウジング2内の初期位置で傾倒するのみであるので、第1連動部材4が押し下げられることもない。このため、プッシュスイッチ8は、スイッチ部82が押し下げられることもなく初期位置を維持した状態となっている。
図14に示すように、操作部材3に対して傾倒操作が行われると、操作部材3と共に駆動部材92もハウジング2内を回動する。このとき、駆動部材92における円盤形状部921の球面形状部921dが下側ケース21の凸部211aの傾斜面部に乗り上げた状態となり、駆動部材92全体がコイルばね91の付勢力に抗して上方へ押し上げられる。このとき、駆動部材92の軸部922における細軸部922cは、第1案内部325に案内されて上方へ移動する。また、駆動部材92の軸部922における太軸部922bは、第2案内部326に案内されて上方へ移動する。
このように、駆動部材92の軸部922の軸線方向に沿った移動は、孔部321を規定する内壁面の一部によって構成される第1案内部325及び第2案内部326によって案内される。より具体的には、軸部922のうち細軸部922c(より具体的には、細軸部922cのうち当接片922eが設けられていない先端部分)は、小径部321aを規定する内壁面で構成される第1案内部325によって案内され、軸部922のうち太軸部922bは、大径部321bを規定する内壁面の一部によって構成される第2案内部326によって案内される。また、軸部922に設けられた当接片922eは、孔部321に設けられたリブ324間を上方に移動する。
細軸部922cの先端部分と太軸部922bの下部側部分(筒状部312の下端部に対応した部分)、すなわち軸部922において離間する2箇所の位置が、それぞれ第1案内部325又は第2案内部326によって案内されるため、案内される距離を長くすることができ、ガタつきを低減することが可能となる。特に、軸部922において離間する2箇所の位置を、孔部321を規定する内壁面の一部で案内するため、軸部922全体を孔部321によって案内する場合に比べて、軸部922の動きを円滑にすることが可能となると共に、クリアランスによる傾き角度を小さくすることが可能となる。
さらに、多方向入力装置1の後方側に向けて操作部材3に対して傾倒操作が行われると、図15に示すように、スリット孔51b内で突出部32が枠状部51aと当接して第2連動部材5がハウジング2内で回動する。この場合、第2連動部材5は、下側ケース21の支持片215、216の凹部215a、216aの一部を回動支点として回動する。この第2連動部材5の回動動作に伴って連結片522が回転すると、これに連結された摺動子受け72及びこれに固定された摺動子71が回転する。この摺動子71の回転動作に応じて弾接部712及び摺接片713が、それぞれ抵抗体パターン731及び集電体パターン732上を摺動する。これにより、弾接部712及び摺接片713の摺接位置に応じた信号が端子734を介して外部出力される。
このように操作部材3に対して傾倒操作が行われる場合において、操作部材3の軸部33は、第1連動部材4の挿通孔41a内で回転するのみであり、第1連動部材4が回動することはない。このため、第1連動部材4は、下側ケース21(より具体的には、支持片214)に支持されて初期位置を維持した状態となっている。また、操作部材3がハウジング2内の初期位置で傾倒するのみであるので、第1連動部材4が押し下げられることもない。このため、プッシュスイッチ8は、スイッチ部82が押し下げられることもなく初期位置を維持した状態となっている。
図13〜図15に示す状態のいずれの場合にも操作部材3に対する操作(押圧操作、傾倒操作)が解除されると、操作部材3は、コイルばね91の付勢力により初期位置(図8に示す状態)に復帰する。すなわち、操作部材3に対する押圧状態から押圧操作が解除された場合には、コイルばね91の付勢力により操作部材3が上方側に押し戻され、初期位置に復帰する。一方、図13及び図15に示す状態においては、駆動部材92の円盤形状部921に設けられた球面形状部921dの一部が下側ケース21の凸部211aの傾斜面部に乗り上げた状態となっている。図13及び図15に示す状態から操作部材3に対する傾倒操作が解除された場合、コイルばね91の付勢力は、凸部211aの傾斜面部に乗り上げた球面形状部921dの一部に作用し、凸部211aの傾斜面部を滑り下りる方向に摺動させる。これにより、操作部材3が傾倒動作方向とは反対側に傾倒し、初期位置に復帰する。なお、下側ケース21の底面部211に凸部211aが設けられていない構成であっても良い。底面部211に凸部211aを設けることにより、傾倒操作時の操作感触を良好なものとすることができるが、底面部211が平坦面であっても操作部材3は初期状態に復帰する。
以上説明したように、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、駆動部材92の軸部922の軸線方向に沿った移動が、操作部材3の孔部321における軸部922の上端部に対応する位置と、収容部311内を下方に突出して形成された筒状部312の下端部との間で案内されることから、駆動部材92の軸部922の案内される距離、すなわち、孔部321によって支持される距離を長くとることができるため、孔部321と軸部922との間のクリアランスに起因する駆動部材92のガタつきを低減することが可能となる。これにより、初期状態及び操作時における操作部材3の位置を安定させることができるので、操作部材3に対する傾倒操作に応じた第1連動部材4及び第2連動部材5の回動動作を検出する検出手段である第1回転型電気部品6及び第2回転型電気部品7の出力のばらつきを抑えることが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、位置決め部材10を、下側ケース21及び上側ケース22から独立した構成部材として説明している。しかしながら、ハウジング2の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、位置決め部材10を、ハウジング2を構成する下側ケース21又は上側ケース22の一部として構成しても良い。この場合、位置決め部材10を上側ケース22と一体化して設けることが考えられる。このように位置決め部材10をケースの一部に含む場合においても、上記実施の形態と同様に、第1連動部材の軸線方向に沿ったガタつきを低減することができるので、初期状態における第2連動部材の位置を安定させることができ、第2回転型電気部品の出力のばらつきを抑えることができる。
また、上記実施の形態においては、受け部104aに設けられたテーパ部104bにより、第1連動部材4がその軸線方向に沿って、第1回転型電気部品6側に移動する場合について説明している。しかしながら、第1連動部材4の移動方向はこれに限定されない。すなわち、受け部104aによって、第1連動部材4が第1回転型電気部品6とは反対側であるプッシュスイッチ8側へ移動するものでも良い。この場合には、受け部104aと当接部421bの傾斜の向きを逆にすることで構成できる。また、この場合、第1連動部材4の軸線方向に沿った移動を規制する規制部は、第1連動部材4の他端部である当接部421bの近傍に設けることができる。なお、受け部104a、当接部421bの形状は、円錐台形状に限定されず、例えば、半円弧形状やその他の形状であっても構わない。
さらに、上記実施の形態においては、位置決め部材10の受け部104aに設けられたテーパ部104bと、第1連動部材4の当接部421bに設けられたテーパ部421dとを接触させて第1連動部材4を軸線方向に移動させる場合について説明している。しかしながら、第1連動部材4を軸線方向に移動させる構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、位置決め部材10の受け部104a及び第1連動部材4の当接部421bの一方に設けたテーパ部と、他方に設けた被案内部とで第1連動部材4を軸線方向に移動させる構成を採用することもできる。この場合にも、第1連動部材4の軸線方向に沿ったガタつきを低減することができるので、初期状態における第2連動部材5の位置が定まり、第2回転型電気部品7の出力のばらつきを抑えることが可能となる。
また、上記実施の形態においては、操作部材3を初期位置に復帰させる復帰機構9の一例として、コイルばね91及び駆動部材92を備える場合について説明している。しかしながら、操作部材3を初期位置に復帰させる復帰機構9の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。すなわち、押圧操作又は傾倒操作が行われた状態から操作部材3を初期位置に復帰することができれば、いかなる構成であっても構わない。