JP5956413B2 - ペプチドの多種多様なファミリーのメンバーとしての、遺伝的パッケージの提示ライブラリーを構築する方法 - Google Patents

ペプチドの多種多様なファミリーのメンバーとしての、遺伝的パッケージの提示ライブラリーを構築する方法 Download PDF

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Description

本発明は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多様なファミリーのメンバーを提示し、そしてこのファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に提示する、遺伝的パッケージのライブラリーを構築することに関する。好ましい実施形態では、提示されるポリペプチドはヒトFabである。
より詳細には、本発明は、一本鎖核酸を選択された位置で切断する方法に関し、この切断された核酸は、本発明のライブラリーの遺伝的パッケージ上に提示されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を少なくとも部分的にコードする。好ましい実施形態では、この遺伝的パッケージは、糸状ファージまたはファージミドである。
本発明はさらに、有用なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を提示する遺伝的パッケージのライブラリーをスクリーニングする方法、ならびにこのようなスクリーニングによって同定されたペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関する。
(発明の背景)
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多様なファミリーのメンバーを提示し、そしてこのファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に提示する、遺伝的パッケージのライブラリーを調製することは現在、当該分野において一般的な方法である。多くの通常のライブラリーでは、提示されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、抗体に関連する。しばしば、これらはFabまたは単鎖抗体である。
一般に、提示されるべきファミリーのメンバーをコードするDNAは、クローニングされて遺伝的パッケージの表面に所望のメンバーを提示するように使用される前に増幅されなければならない。このような増幅は代表的に、正方向プライマーおよび逆方向プライマーを利用する。
このようなプライマーは、増幅されるべきDNAに対してネイティブな配列に対して相補的であり得るか、またはそのDNAの5’末端もしくは3’末端に結合したオリゴヌクレオチドに対して相補的であり得る。増幅されるべきDNAに対してネイティブである配列に相補的であるプライマーは、提示されるべきファミリーのメンバーを偏らせるという点で不利である。ネイティブなDNA中にこのプライマーに対して実質的に相補的である配列を含むメンバーのみが増幅される。そうでないメンバーはこのファミリーから存在しなくなる。増幅されるメンバーについては、プライマー領域内の何らかの多様性が抑制される。
例えば、特許文献1では、使用されるプライマーは、抗体遺伝子のV領域の5’末端に存在する。これは、ネイティブなDNA中の、単一種内で「充分によく保存された」と呼ばれる配列領域にアニーリングする。このようなプライマーは、増幅されるメンバーを、この「保存された」領域を有するメンバーに偏らせる。この領域内の何らかの多様性は失われる。
ヒトの抗体遺伝子が、VおよびJ、またはV、DおよびJの組合せ選択、続いて体細胞変異を含むプロセスを通して生じることが一般に受け入れられている。大部分の多様性は相補性決定領域(CDR)に生じるが、多様性はまた、より保存されたフレームワーク領域(FR)において生じ、そしてこの多様性の少なくともいくつかは、抗原(Ag)に対する特異的結合を付与または増強する。その結果、ライブラリーは、可能な限り多くのCDRおよびFR多様性を含むべきである。
コードするペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の遺伝的パッケージ上での提示のために、増幅されたDNAをクローニングするために、DNAは、ベクターへの連結のために適切な末端を生じるように切断されなければならない。このような切断は一般に、プライマーに保有された制限エンドヌクレアーゼ認識部位を用いてもたらされる。RNAの逆転写から生成されるDNAの5’末端にプライマーが存在する場合、このような制限処理は、増幅されたDNA中に有害な5’非翻訳領域を残す。これらの領域は、クローニングされた遺伝子の発現を妨害し、従って、これらによってコードされるペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の提示を妨害する。
欧州特許第368,684号明細書
(発明の要旨)
本発明の目的は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多様なファミリーのメンバーを提示し、そしてこのファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に提示する、遺伝的パッケージのライブラリーを構築するための新規方法を提供することである。これらの方法は、増幅のために用いられるプライマーに相補的であるネイティブな配列を含むDNAには偏っていない。これらの方法はまた、発現に有害であり得る任意の配列が、クローニングおよび提示の前に、増幅されたDNAから除去されることを可能にする。
本発明の別の目的は、一本鎖核酸配列を所望の位置で切断するための方法を提供することであり、この方法は、以下の工程を包含する:
(i)この核酸を一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、このオリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域においてこの核酸に機能的に相補的であり、そしてその核酸中の相補体とともに、制限処理の際に所望の位置での核酸の切断をもたらす制限エンドヌクレアーゼ認識部位を形成する配列を含む、工程;および
(ii)この核酸のみを、この核酸とこのオリゴヌクレオチドとの相補によって形成された認識部位で切断する工程;
接触工程および切断工程は、実質的に一本鎖形態の核酸を維持するに充分な温度で行われ、このオリゴヌクレオチドは、二本の鎖が会合し、その結果、選択された温度および所望の位置で切断が生じ得るのを可能にするに充分に大きな領域にわたってこの核酸に対して機能的に相補的であり、そして切断は、選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを用いて行われる。
本発明のさらなる目的は、一本鎖核酸配列を所望の位置で切断するための代替的な方法を提供することであり、この方法は以下の工程を包含する:
(i)この核酸を部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、このオリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される領域においてこの核酸に機能的に相補的であり、そしてこのオリゴヌクレオチドの二本鎖領域は、II−S型制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、その切断部位は、この認識部位から既知の距離に位置する、工程;および
(ii)この核酸のみを、この核酸とこのオリゴヌクレオチドの一本鎖領域との相補によって形成された切断部位で切断する工程;接触工程および切断工程は、実質的に一本鎖形態の核酸を維持するに充分な温度で行われ、このオリゴヌクレオチドは、二本の鎖が会合し、その結果、選択された温度および所望の位置で切断が生じ得るのを可能にするに充分に大きな領域にわたってこの核酸に対して機能的に相補的であり、そして切断は、選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを用いて行われる。
本発明の別の目的は、DNAの多様なファミリーのメンバーを含み、そしてこのファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に含む、DNA分子を捕獲する方法を提供することである。一本鎖形態のこれらのDNA分子は、本発明の方法のうちの1つによって切断されている。この方法は、このファミリーの個々の一本鎖DNAメンバーを、部分的に二重鎖のDNA複合体に連結することを含む。この方法は以下の工程を包含する:
(i)制限エンドヌクレアーゼで切断された一本鎖核酸配列を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、このオリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断後に残る領域においてこの核酸に対して機能的に相補的であり、このオリゴヌクレオチドの二本鎖領域は、切断後に残っている配列を、発現に適切なリーディングフレームに戻すために必要な任意の配列を含み、そしてこれらの配列の5’側に制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、工程;および
(ii)この部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチド配列のみを、この部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの二本鎖領域内に含まれる制限エンドヌクレアーゼ認識部位で切断する工程。
本発明の別の目的は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多様なファミリーを提示し、そしてこのファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に提示する、ライブラリーを、上記の方法およびDNAを用いて調製することである。
本発明の目的は、これらのライブラリーをスクリーニングして、有用なペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を同定し、そしてこれらの物質をヒトの治療において使用することである。たとえば、本発明は以下を提供する:
(項目1) 一本鎖核酸配列を所望の位置で切断するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)該核酸を、一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、そして制限の際に該核酸の該所望の位置での切断を生じる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、その補体を用いて該核酸中に形成する配列を含む、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの相補性によって形成される該認識部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含し、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、方法。
(項目2) 一本鎖核酸配列を所望の位置で切断するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)該核酸を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される該領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、そして該オリゴヌクレオチドの二本鎖領域は、II型−S制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、該切断部位は、該認識部位から既知の距離に位置する、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域の相補性によって形成されるII型−S切断部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含し、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、方法。
(項目3) 遺伝的パッケージの表面上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する方法であって、改善が、提示されるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の少なくとも一部が、
以下の工程:
(i)核酸を、一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、そして制限の際に該核酸の所望の位置での切断を生じる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、その補体を用いて該核酸中に形成する配列を含む、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの相補性によって形成される該認識部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含する方法によって所望の位置で切断される該核酸によって、少なくとも一部がコードされることを特徴とし、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、方法。
(項目4) 遺伝的パッケージの表面上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する方法であって、改善が、提示されるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、以下の工程:
(i)該核酸を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該二本鎖領域は、II型−S制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、該切断部位は、該認識部位から既知の距離に位置する、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域の相補性によって形成されるII型−S切断部位で、該核酸を単独で切断する工程;
によって所望の位置で切断される核酸を含むDNA配列によってコードされることを特徴とし、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、方法。
(項目5) 遺伝的パッケージの表面上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)該多種多様なファミリーのメンバーの少なくとも一部をコードする核酸の収集物を調製する工程;
(ii)該核酸を一本鎖にする工程;
(iii)以下の工程:
(a)該核酸を、一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、そして制限の際に該核酸の所望の位置での切断を生じる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、その補体を用いて該核酸中に形成する配列を含む、工程;および
(b)該核酸および該オリゴヌクレオチドの相補性によって形成される該認識部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含する方法によって、所望の位置で該一本鎖核酸を切断する工程であって、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、工程;ならびに
(iv)該遺伝的パッケージの該表面上の該切断された核酸によって少なくとも一部がコードされるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の該ファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの該多様性の少なくとも一部を提示する工程、
を包含する、方法。
(項目6) 遺伝的パッケージの表面上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する方法であって、
該方法は、以下の工程:
(i)該多種多様なファミリーのメンバーの少なくとも一部をコードする核酸の収集物を調製する工程;
(ii)該核酸を一本鎖にする工程;
(iii)以下の工程:
(a)該核酸を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該二本鎖領域は、II型−S制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、該切断部位は、該認識部位から既知の距離に位置する、工程;および
(b)該核酸および該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域の相補性によって形成されるII型−S切断部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含する方法によって、所望の位置で該一本鎖核酸を切断する工程であって、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である切断エンドヌクレアーゼを使用して、該制限が行われる、工程;ならびに;
(iv)該遺伝的パッケージの該表面上の該切断された核酸によって少なくとも一部がコードされるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の該ファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する工程、
を包含する、方法。
(項目7) ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示する遺伝的パッケージの収集物を含に、そして集合的に、該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示するライブラリーであって、該ライブラリーは、項目3、4、5または6に記載の方法を使用して作製される、ライブラリー。
(項目8) ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該ファミリーの少なくとも一部を提示する遺伝的パッケージの収集物を含むライブラリーであって、該提示されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、以下の工程:
(i)該核酸を、一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、そして制限の際に該核酸の所望の位置での切断を生じる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、その補体を用いて該核酸中に形成する配列を含む、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの相補性によって形成される該認識部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含する方法によって、所望の位置で一本鎖核酸配列を切断することによって生成される配列の少なくとも一部を含むDNA配列によってコードされ、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、ライブラリー。
(項目9) ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして集合的に、該提示されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の該ファミリーの多様性の少なくとも一部を提示する遺伝的パッケージの収集物を含むライブラリーであって、該提示されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、以下の工程:
(i)該核酸を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される領域において該核酸に対して機能的に相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該二本鎖領域は、II型−S制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、該切断部位は、該核酸の該切断が所望される該認識部位から既知の距離に位置する、工程;および
(ii)該核酸および該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域の相補性によって形成されるII型−S切断部位で、該核酸を単独で切断する工程;
を包含する方法によって、所望の位置で一本鎖核酸配列を切断することによって生成される配列の少なくとも一部を含むDNA配列によってコードされ、該接触工程および該切断工程は、該核酸を実質的に一本鎖形態で維持するために十分な温度で行われ、該オリゴヌクレオチドは、切断が選択された該温度および該所望の位置で起こり得るように、該二本の鎖の会合を可能にするために十分大きな領域にわたって該核酸と機能的に相補的であり、そして該選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して、該切断が行われる、ライブラリー。
(項目10) 前記核酸が、免疫グロブリンの少なくとも一部をコードする、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11) 前記免疫グロブリンが、Fabまたは単鎖Fvを含む、請求項10に記載の方法。
(項目12) 前記免疫グロブリンが、重鎖の少なくとも部分を含む、請求項10または11に記載の方法。
(項目13) 前記重鎖の少なくとも一部がヒトである、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記免疫グロブリンが、FR1の少なくとも一部を含む、項目10または11に記載の方法。
(項目15) 前記FR1の少なくとも一部がヒトである、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記免疫グロブリンが、軽鎖の少なくとも一部を含む、請求項10または11に記載の方法。
(項目17) 前記軽鎖の少なくとも一部がヒトである、項目16に記載の方法。
(項目18) 前記核酸配列の少なくとも一部が、少なくとも1つの自己免疫疾患および/または癌に罹患した患者由来である、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項目19) 前記自己免疫疾患が、狼瘡、エリテマトーデス、全身性硬化症、慢性関節リウマチ、抗リン脂質症候群、または脈管炎からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記核酸の少なくとも一部が、末梢血球、骨髄細胞、脾臓細胞またはリンパ節細胞からなる群から単離される、項目18に記載の方法。
(項目21) さらに、核酸の増幅工程を、工程(i)と工程(ii)との間、工程(ii)と工程(iii)との間、または工程(iii)と工程(iv)との間に包含する、項目5または6に記載の方法。
(項目22) 前記増幅工程が、geneRACETMを使用する、請求項21に記載の方法。
(項目23) 前記温度が、45℃と75℃との間である、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項目24) 前記温度が、50℃と60℃との間である、項目23に記載の方法。
(項目25) 前記温度が、55℃と60℃との間である、項目24に記載の方法。
(項目26) 前記一本鎖オリゴヌクレオチドの長さが、17塩基と30塩基との間である、項目1、3、5または8に記載の方法。
(項目27) 前記一本鎖オリゴヌクレオチドの長さが、18塩基と24塩基との間である、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記制限エンドヌクレアーゼが、MaeIII、Tsp451、HphI、BsaJI、AluI、BlpI、DdeI、BglII、MslI、BsiEI、EaeI、EagI、HaeIII、Bst4CI、HpyCH4III、HinfI、MlyI、PleI、MnlI、HpyCH4V、BsmAI、BpmI、XmnI、またはSacIからなる群から選択される、項目1、3、5または8に記載の方法。
(項目29) 前記制限エンドヌクレアーゼが、Bst4CI、TaaI、HpyCH4III、BlpI、HpyCH4VまたはMslIを含む群から選択される、項目28に記載の方法。
(項目30) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖領域の長さが、14塩基と22塩基との間である、項目2、4、6または9に記載の方法。
(項目31) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖領域の長さが、14塩基と17塩基との間である、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記オリゴヌクレオチドの前記一本鎖領域の長さが、18塩基と20塩基との間である、項目31に記載の方法。
(項目33) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記二本鎖領域の長さが、幹およびそのパリンドロームによって形成される10塩基対と14塩基対との間である、項目2、4、6または9に記載の方法。
(項目34) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドが、前記幹と前記パリンドロームとの間に、3〜8塩基のループを含む、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記II型−S制限エンドヌクレアーゼが、AarICAC、AceIII、Bbr7I、BbvI、BbvII、Bce831、BceAI、BcefI、BciVI、BfiI、BinI、BscAI、BseRI、BsmFI、BspMI、EciI、Eco57I、FauI、FokI、GsuI、HgaI、HphI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、PleI、RleAI、SfaNI、SspD5I、Sthl32I、StsI、TaqII、Tth111II、またはUbaPIを含む群から選択される、請求項2、4、6または9に記載の方法。
(項目36) 前記II型−S制限エンドヌクレアーゼが、FokIである、項目35に記載の方法。
(項目37) ベクターにクローニングするための一本鎖核酸を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)制限エンドヌクレアーゼで切断された一本鎖核酸配列を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断の後に残る領域において該核酸と機能的に相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該二本鎖領域は、発現のために切断後に残る配列を適切かつ本来のリーディングフレームに戻すのに必要とされる任意の配列を含み、そしてこれらの配列の制限エンドヌクレアーゼ認識部位5’を含む、工程;および
(ii)該部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの該二本鎖領域内に含まれる該制限エンドヌクレアーゼ認識部位で、単独で該部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチド配列を切断する工程、
を包含する、方法。
(項目38) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖部分の長さが、2塩基と15塩基との間である、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖部分の長さが、7塩基と10塩基との間である、項目38に記載の方法。
(項目40) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記二本鎖部分の長さが、12塩基対と100塩基対との間である、項目37に記載の方法。
(項目41) 前記部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの前記二本鎖部分の長さが、20塩基対と100塩基対との間である、項目40に記載の方法。
図1は、VH配列に特異的なプライマーを用いることなくVH遺伝子を増幅するために用いられ得る種々の方法の模式図である。 図2は、VL配列を用いることなくVL遺伝子を増幅するために用いられ得る種々の方法の模式図である。 図3は、実施例2からの切断されたκDNAのゲル分析を示す。 図4は、実施例2からの切断されたκDNAのゲル分析を示す。 図5は、実施例2からの増幅されたκDNAのゲル分析を示す。 図6は、実施例2からの、ゲル精製された増幅されたκDNAを示す。
(用語)
この出願では、以下の用語および略号を用いる:
センス鎖:通常記載されるように、ds DNAの上の鎖(upper strand)。センス鎖では、5’−ATG−3’はMetをコードする。
アンチセンス鎖:通常記載されるように、ds DNAの下の鎖(lower strand)。アンチセンス鎖では、3’−TAC−5’は、センス鎖におけるMetコドンに対応する。
正方向(forward)プライマー:「正方向」プライマーは、センス鎖の一部に対して相補的であり、そして新たなアンチセンス鎖分子の合成を開始する。「正方向プライマー」および「下の鎖のプライマー」は等価である。
逆方向(backward)プライマー:「逆方向」プライマーは、アンチセンス鎖の一部に対して相補的であり、そして新たなセンス鎖分子の合成を開始する。「逆方向プライマー」および「上の鎖のプライマー」は等価である。
塩基:塩基は、コドンおよび塩基による遺伝子内のそれらの位置として、ベクターまたは遺伝子のいずれかにおけるそれらの位置によって特定される。例えば、「89.1」は、コドン89の最初の塩基であり、89.2は、コドン89の二番目の塩基である。
Sv:ストレプトアビジン。
Ap:アンピシリン。
ap:アンピシリン耐性を付与する遺伝子。
RE:制限エンドヌクレアーゼ。
URE:一般的な制限エンドヌクレアーゼ。
機能的に相補的:2つの配列が、選択された条件下でアニールするように十分に相補的である。
RERS:制限エンドヌクレアーゼ認識部位。
AA:アミノ酸。
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応。
GLG:生殖系列遺伝子。
Ab:抗体:免疫グロブリン。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質をカバーする。この定義内の抗体のいくつかの例は、特に、免疫グロブリンンアイソタイプならびにFab、F(ab、scfv、Fv、dAbおよびFdフラグメント。
Fab:Abの軽鎖および重鎖の部分を含む二鎖分子。
scFv:VH::リンカー::VLまたはVL::リンカーVHのいずれか
を含む単鎖Ab。
w.t.:野生型。
HC:重鎖。
LC:軽鎖。
VK:κ軽鎖の可変領域。
VH:重鎖の可変領域。
VL:λ軽鎖の可変領域。
本願において、参照される全ての参考文献は、参考として詳細に援用される。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の方法において有用である核酸配列(すなわち、本発明の遺伝子パッケージに関して示される、少なくとも一部の個々のペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質)は、天然に存在する配列、合成配列またはその組み合わせであり得る。これらは、mRNA、DNAまたはcDNAであり得る。好ましい実施形態において、核酸は抗体をコードする。最も好ましくは、これらはFabをコードする。
本発明において有用な核酸は、天然に多様性であり、合成多様性は、これらの天然に多様性のメンバーに導入され得るか、またはこの多様性は、全体的に合成であり得る。例えば、合成多様性は、抗体遺伝子の1つ以上のCDRに導入され得る。
合成多様性は、例えば、TRIM技術(米国特許第5,869,644号)の
使用を介して作製され得る。TRIM技術は、変化される位置で、どのアミノ酸型が可能で、そしてどんな割合でかを正確に制御することが可能である。TRIM技術において、多様化されるコドンは、三ヌクレオチドの混合物を使用して合成される。これは、任意の組のアミノ酸型が、任意の位置に含まれるのを可能にする。
多様化されたDNAを作製するために使用され得る別の代替法は、混合オリゴヌクレオチド合成である。TRIM技術を用いて、AlaおよびTrpが可能であり得る。混合オリゴヌクレオチド合成を用いて、AlaおよびTrpを含む混合物はまた、SerおよびGlyもまた必然的に含む。変性された位置において可能なアミノ酸型は、抗体の構造、または他のペプチド、ファミリーのポリペプチドまたはタンパク質、生殖系列遺伝子において観察された多様性、頻繁に観察される観察された体細胞変異、および変性の所望の領域および型を参照して選択される。
本発明の好ましい実施形態において、ファミリーのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の少なくとも1つのCDRまたは他の領域の核酸配列は、mRNAからの逆転写によって生成されたcDNAである。より好ましくは、mRNAは、関連遺伝子の天然に多様性の組のメンバーを発現する末梢血液細胞、骨髄細胞、脾臓細胞またはリンパ節細胞(例えば、Bリンパ球細胞またはプラズマ細胞)から得られ得る。より好ましくは、mRNAは、抗体の多様なファミリーをコードする。最も好ましくは、mRNAは、少なくとも1つの自己免疫障害または癌に罹患する患者から得られる。好ましくは、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、慢性関節リウマチ、抗リン脂質症候群および脈管炎)の高い多様性を含むmRNAが使用される。
本発明の好ましい実施形態において、cDNAは、逆転写を使用してmRNAから生成される。この好ましい実施形態において、mRNAは、細胞から分離され、標準的な方法を使用して分解され、その結果、全長(すなわち、キャップされた)mRNAのみが残る。次いで、キャップは除去され、そしてcDNAを生成するために逆転写が使用される。
第1(アンチセンス)鎖の逆転写は、任意の適切なプライマーを用いて任意の様式で行なわれ得る。例えば、HJ de Haardら、Journal of Biological Chemistry,274(26):18218−30(1999)を参照のこと。mRNAが抗体をコードする本発明の好ましい実施形態において、抗体遺伝子の定常領域に相補的なプライマーが使用され得る。これらのプライマーは有用である。なぜなら、これらは、抗体のサブクラスに対して偏りを生じないためである。別の実施例において、ポリdTプライマーが使用され得る(そして重鎖遺伝子に対して好ましくあり得る)。あるいは、プライマーに相補的な配列は、アンチセンス鎖の末端に付加され得る。
本発明の1つの好ましい実施形態において、逆転写プライマーは、ビオチン化プライマーであり得、従って、cDNA産物がストレプトアビジン(Sv)ビーズに固定されるのを可能にする。固定化はまた、a)遊離アミノ基、b)チオール、c)カルボン酸、またはd)不溶性媒体の既知のパートナーに対して強力な結合を形成するように反応し得るDNAにおいて見出されない別の基、のうちの1つを用いて5’末端において標識されたプライマーを使用して行なわれ得る。例えば、遊離アミン(好ましくは、主にアミン)が、DNAプライマーの5’末端において提供される場合、このアミンは、標準的なアミド形成化学を使用して、ポリマービーズ上のカルボン酸と反応され得る。このような好ましい固定が、逆転写の間に使用される場合、上方鎖RNAは、固定の前または後に、周知の酵素(例えば、RNAseHおよびRNAseAの組み合わせ)を使用して分解される。
本発明において有用な核酸配列は、一般に、これらがコードするペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を表示するために使用される前に増幅される。増幅の前に、一本鎖DNAは、前に記載された方法のいずれかを使用して切断され得る。あるいは、一本鎖DNAは増幅され得、次いで、これらの方法のうちの1つを使用して切断される。
核酸配列を増幅するための周知の方法のいずれかが、このような増幅のために使用され得る。多様性を最大化し、偏らせない方法が好ましい。核酸配列が、抗体遺伝子に由来する本発明の好ましい実施形態において、本発明は、好ましくは、重鎖および軽鎖遺伝子の定常領域中のプライマーならびにセンス鎖の5’末端に付加された合成配列に対するプライマーを利用する。このような合成配列におけるプライミングは、抗体遺伝子の可変領域内の配列の使用を回避する。これらの可変領域プライミング部位は、まれなサブクラスのいずれかであるか、またはプライミング部位において変異されたV遺伝子に対する偏りを生じる。この偏りは、プライマー領域内の多様性の抑制に部分的に起因し、そして多数の変異がプライマーに相補的な領域中に存在する場合のプライミングの欠如に部分的に起因する。本発明において開示された方法は、特定のV遺伝子型についての増幅された抗体遺伝子の集団を偏らせない利点を有する。
合成配列は、DNA配列を共に連結させるために周知の種々の方法によってDNA鎖の5’末端に付加され得る。RTキャップ伸長CapExtentionは、1つの好ましい方法である。
RTキャップ伸長(Smart RCR(TM)に由来する)において、短い重複(上方鎖プライマー(USP−GGG)における5’−...GGG−3’は、下方鎖における3’−CCC....5’を補完する)および逆転写酵素を使用して、上方鎖プライマーの逆相補体が、下方鎖に付加される。
本発明の好ましい実施形態において、上方鎖および下方鎖プライマーはまた、a)遊離アミノ基、b)チオール、c)カルボン酸、またはd)不溶性媒体の既知のパートナーに対して強力な結合を形成するように反応し得るDNAにおいて見出されない別の基、のうちの1つを用いて、5’末端においてビオチン化または標識され得る。次いで、これらは、増幅後の標識された鎖を固定するために使用され得る。固定されたDNAは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。
図1は、VH遺伝子の増幅の概略図を示す。図1、パネルAは、第1の下方鎖の3’UTRプライミング合成のポリdT領域に特異的なプライマーを示す。定常領域において結合するプライマーもまた、適切である。パネルBは、mRNAに相補的でない3つのCによって、その3’末端において伸長した下方鎖を示す。パネルCは、3’末端のCCCにハイブリダイズする3つのGGGにおける合成上方鎖プライマーのアニーリング、および合成プライマー配列の逆相補体による下方鎖を伸長する逆転写の伸長の結果を示す。パネルDは、パネルCの合成プライマーの5’末端を複製する5’ビオチン化合成上方鎖プライマーおよび定常ドメインの部分に相補的な下方鎖プライマーを使用するPCR増幅の結果を示す。パネルEは、5’ビオチン化上方鎖プライマーを使用することによって得られた固定二本鎖(ds)cDNAを示す。
図2は、VL遺伝子の増幅のための同様の概略図を示す。図2、パネルAは、第1の下方鎖の3’末端プライミング合成の領域またはその近くの定常領域に特異的なプライマーを示す。ポリdT領域において結合するプライマーはまた、適切である。パネルBは、mRNAに相補的でない3つのCによって、その3’末端において伸長した下方鎖を示す。パネルCは、3’末端のCCCにハイブリダイズする3つのGGGにおける合成上方鎖プライマーのアニーリング、および合成プライマー配列の逆相補体による下方鎖を伸長する逆転写の伸長の結果を示す。パネルDは、パネルCの合成プライマーの5’末端を複製する5’ビオチン化合成上方鎖プライマーおよび定常ドメインの部分に相補的な下方鎖プライマーを使用するPCR増幅の結果を示す。下方鎖プライマーはまた、有用な制限エンドヌクレアーゼ部位(例えば、AscI)を含む。パネルEは、5’ビオチン化上方鎖プライマーを使用することによって得られた固定ds cDNAを示す。
図1および2において、各V遺伝子は、5’非翻訳領域(UTR)および分泌シグナル(これには可変領域が続き、これには定常領域が続き、これには3’非翻訳領域(これは、代表的にはポリAで終わる)が続く)からなる。逆転写のための最初のプライマーは、定常領域または3’UTRのポリAセグメントに対して相補的であり得る。ヒト重鎖遺伝子については、15Tプライマーが好ましい。逆転写酵素は、新しく合成されたDNAの3’末端にいくつかのC残基を付加する。RTキャップ伸長は、この特徴を利用する。逆転写反応は、第1に、下方鎖プライマーのみと作動される。約1時間後、プライマーは、GGG(USP−GGG)で終了し、そして多くのRTaseが添加される。これは、下方鎖cDNAが、USP−GGGの逆相補体によって最終GGGまで伸長されることを引き起こす。付加された合成配列の部分に同一な1つのプライマーおよびセンス鎖の3’末端における既知の配列の領域に相補的な第2のプライマーを使用して、全てのV遺伝子は、それらのV遺伝子サブクラスに関わらず、増幅される。
増幅後、本発明のDNAは、一本鎖とされる。例えば、この鎖は、ビオチン化プライマーを使用すること、ストレプトアビジン樹脂上のビオチン化産物を捕獲することによって、DNAを変成することによって、および相補的な鎖を洗い流すことによって、分離され得る。捕獲されたDNAのどの末端が望まれているかに依存して、上方(センス)鎖または下方(アンチセンス)鎖のいずれかを固定することを選択する。
これらのDNAによって(少なくとも部分的に)コードされるポリペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の表示を行なうために、遺伝子パッケージへのクローニングのための一本鎖増幅DNAを調製し、クローニングおよび発現のために適切な末端を提供するように操作されなければならない。詳細には、任意の5’非翻訳領域および最小のシグナル配列が除去され、そしてインフレームで、表示宿主において機能する適切なシグナル配列によって置換され得る。さらに、可変ドメイン(抗体遺伝子における)の部分は、除去され、そして合成多様性を含む合成セグメントによって置換される。他の遺伝子ファミリーの多様性は、同様に、合成多様性を用いて拡大され得る。
本発明の方法に従って、クローニングのための一本鎖増幅DNAを操作するための2つの方法が存在する。第1の方法は、以下の工程:
(i)核酸と一本鎖オリゴヌクレオチドとを接触させる工程であって、オリゴヌクレオチドが、切断が望ましい領域における核酸に機能的に相補的であり、そして制限が核酸の切断を所望の位置で生じる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を形成する核酸中にその相補体を有する配列を含む、工程;および
(ii)核酸およびオリゴヌクレオチドの補完によって形成された認識部位のみで核酸を切断する工程;
を包含し、接触および切断工程は、実質的に一本鎖形態で核酸を維持するのに十分な温度で行なわれ、オリゴヌクレオチドは、切断が選択された温度および所望の位置で生じ得るように、2つの鎖が会合するのを可能にするのに十分に大きい領域にわたって核酸と機能的に相補的であり、そして切断は、選択された温度で活性である制限エンドヌクレアーゼを使用して行なわれる。
この第1の方法において、短いオリゴヌクレオチドを、1本鎖DNAにアニールさせ、現在の局部的なDNAの2本鎖領域内に形成される制限エンドヌクレアーゼ認識部位を切断し得る。特に、1本鎖DNAの実質的な画分の同じ位置に生じる認識部位は同一である。
抗体遺伝子に関して、これは、生殖系列(germline)配列のカタログを用いてなされ得る。例えば、「http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ok.html.」を参照のこと。アップデータは、表題「Amino acid and nucleotide sequence alignments」の下でこのサイトから獲得され得る。他のファミリーに関して、類似の比較が存在し、そして切断のための適切な領域を選択するために、および多様性を維持するために用いられ得る。
例えば、表195は、51の公知のヒトVH生殖系列遺伝子のFR3領域のDNA配列を示す。この領域において、この遺伝子は、表200に示される制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む。同じ部位で生殖系列遺伝子の大画分を切断する制限エンドヌクレアーゼは、種々の部位で切断するエンドヌクレアーゼ以上に好ましい。さらに、1本鎖DNA上で短いオリゴヌクレオチドが結合する領域(例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識部位のいずれかの側面の約10塩基)内に制限エンドヌクレアーゼのための1つのみの部位が存在することが好ましい。
FR3における下流を切断する酵素もまた、より好ましい。なぜならば、それは、フレームワークにおける少数の変異を捕捉するからである。このことは、いくつかの場合、有利であり得る。しかし、フレームワークの変異が存在し、そして抗体結合を付与しそして増強することが周知である。本発明は、適切な制限部位の選択により、FR3の多様性の全てまたは一部を捕捉することを可能とする。従って、この方法はまた、広範囲の多様性を捕捉することを可能とする。
最後に、本発明の方法において、約45℃と約75℃との間で活性な制限エンドヌクレアーゼが用いられる。好ましくは、50℃以上で活性な酵素、より好ましくは、約55℃で活性な酵素が用いられる。このような温度は、核酸配列が、実質的に1本鎖形態で切断されることを維持する。
表200に示される、単一の位置で重鎖FR3生殖系列遺伝子の多くを切断する酵素として、以下が挙げられる:MaeIII(24@4)、Tsp45I(21@4)、HphI(44@5)、BsaJI(23@65)、AluI(23@47)、BlpI(21@48)、DdeI(29@58)、BglII(10@61)、MslI(44@72)、BsiEI(23@74)、EaeI(23@74)、EagI(23@74)、HaeIII(25@75)、Bst4CI(51@86)、HpyCH4III(51@86)、HinfI(38@2)、MlyI(18@2)、PleI(18@2)、MnlI(31@67)、HpyCH4V(21@44)、BsmAI(16@11)、BpmI(19@12)、XmnI(12@30)、およびSacI(11@51)(使用される表記は、例えば、BsmAIが、FR3の塩基11で開始する制限エンドヌクレアーゼ認識部位で16のFR3生殖系列遺伝子を切断することを意味する)。
FR3におけるヒト重鎖の切断について、好ましい制限エンドヌクレアーゼは、以下のようなものである:Bst4CI(またはTaaIもしくはHpyCH4III)、BlpI、HpyCH4V、およびMslI。ACNGT(Bst4CI、TaaI、およびHpyCH4IIIのための制限エンドヌクレアーゼ認識部位)は、全てのヒトFR3生殖系列遺伝子において一致する部位に見出されるため、これらの酵素の1つは、重鎖CDR3の多様性の捕捉のために最も好ましい。BlpIおよびHpyCH4Vは相補的である。BlpIは、VH1およびVH4ファミリーのほとんどのメンバーを切断し、HpyCH4Vは、VH3、VH5、VH6、およびVH7のファミリーのほとんどのメンバーを切断する。両方の酵素ともVH2を切断しないが、これは非常に小さいファミリーであり、3つのメンバーを含むのみである。従って、これらの酵素はまた、本発明の方法の好ましい実施形態において用いられ得る。
制限エンドヌクレアーゼHpyCH4III、Bst4CI、およびTaaIは全て、5’―ACnGT―3’を認識し、そしてnの後の上方のストランドDNAおよびnに相補的な塩基の前の下方ストランドDNAを切断する。これは、ヒト重鎖上でのこの方法のために最も好ましい制限エンドヌクレアーゼ認識部位である。なぜならば、それは、全ての生殖系列遺伝子において見出されるからである。さらに、制限エンドヌクレアーゼ認識領域(ACnGT)は、表206に示されるような、チロシンコドン(tay)およびそれに続くシステインコドン(tgy)の第2および第3の塩基に適合する。これらのコドン(特に、成熟抗体遺伝子におけるシステイン)は、高度に保存されている。
表250Eは、長さ22塩基(長さ20の最後の1つを除く)の別個のオリゴヌクレオチドを示す。表255Cは、1617の実際の重鎖抗体遺伝子の分析を示す。これらの中で、1511つはこの部位を有し、そして4つの不適合内で候補オリゴヌクレオチドの1つに適合する。8つのオリゴヌクレオチドが、ほとんどの適合の原因であり、表250F.1.に示す。8つのオリゴヌクレオチドは非常に類似しており、その結果、満足のいく切断が、温度、pH、塩分などを調整することにより、1つのみのオリゴヌクレオチド(例えば、H43.77.97.1−02#1)を用いて達成されるようである。1つまたは2つのオリゴヌクレオチドは、生殖系列遺伝子配列がごくわずかしか異ならない場合であっても、そして特に切断される制限エンドヌクレアーゼ認識領域付近でごくわずかしか異ならない場合、同様に満足し得る。表255Dは、8つの選択されたオリゴヌクレオチドのみを用いた、1617つの実際の重鎖抗体遺伝子の反復分析を示す。これは、1463つの配列が、4つの不適合内で少なくとも1つのオリゴヌクレオチドで適合すること、および期待するような部位を有することを示す。7つの配列のみが、この領域内に第2のHpyCH4III制限エンドヌクレアーゼ認識領域を有する。
適切な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を選択する別の説明は、ヒト重鎖のFR1における切断に関する。FR1における切断は、重鎖のCDRの多様性全体の捕捉を可能にする。
ヒト重鎖FR1についての生殖系列遺伝子を表217に示す。表220は、ヒト生殖系列遺伝子FR1において見出される制限エンドヌクレアーゼ認識部位を示す。好まし部位は、BsgI(GTGCAG;39@4)、BsoFI(GCngc;43@6、11@9、2@3、1@12)、TseI(Gcwgc;43@6、11@9、2@3、1@12)、MspAlI(CMGckg;46@7、2@1)、PvuII(CAGctg;46@7、2@1)、AluI(AGct;48@82@2)、DdeI(Ctnag;22@52、9@48)、HphI(tcacc;22@80)、BssKI(Nccngg;35@39、2@40)、BsaJI(Ccnngg;32@40、2@41)、BstNI(CCwgg;33@40)、ScrFI(CCngg;35@40、2@41)、Eco0109I(RGgnccy;22@46、11@43)、Sau96I(Ggncc;23@47、11@44)、AvaII(Ggwcc;23@47、4@44)、PpuMI(RGgwccy;22@46、4@43)、BsmFI(gtccc;20@48)、HinfI(Gantc;34@16、21@56、21@77)、TfiI(21@77)、MlyI(GAGTC;34@16)、MlyI(gactc;21@56)、およびAlwNI(CAGnnnctg;22@68)である。より好ましい部位は、MspAIおよびPvuIIである。MspAIおよびPvuIIは、7〜12での46つの部位および1〜6での2つの部位を有する。両方の部位での切断を回避するために、1〜6での部位を完全に覆わないオリゴヌクレオチドが用いられる。従って、DNAは、その部位で切断されない。本発明者らは、PvuII部位を超えて3、4、または5塩基延びるDNAが効果的に切断され得ることを示した。
適切な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を選択する別の説明は、ヒトκ軽鎖のFR1における切断に関する。表300は、ヒトκFR1生殖系列を示し、そして表302は、一致する部位で実質的に多くのヒトκFR1生殖系列遺伝子において見出される制限エンドヌクレアーゼ認識部位を示す。列挙される制限エンドヌクレアーゼ認識部位の中で、BsmAIおよびPflFIが最も好ましい酵素である。BsmAI部位は、40の生殖系列遺伝子の中の35において塩基18にて見出される。PflFI部位は、40の生殖系列遺伝子の中の35において塩基12にて見出される。
適切な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を選択する別の例は、ヒトλ軽鎖のFR1における切断に関する。表400は、31の公知のヒトλFR1生殖系列遺伝子配列を示す。表405は、ヒトλFR1生殖系列遺伝子において見出される制限エンドヌクレアーゼ認識部位を示す。HinfIおよびDdeIが、FR1におけるヒトλ鎖を切断するための最も好ましい制限エンドヌクレアーゼである。
切断のための1つかまたは複数の適切な部位が選択された後に、1つ以上の短いオリゴヌクレオチドが、1つかまたは組み合わせて、選択された認識部位を機能的に補うために調製される。このオリゴヌクレオチドはまた、増幅された遺伝子の大部分において認識部位に隣接する配列を含む。この隣接配列は、この配列が、選択された部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼにより切断されるのに十分に、1本鎖DNAにアニールすることを可能にする。
このオリゴヌクレオチドの実際の長さおよび配列は、認識部位ならびに接触および切断のために用いられる状態に依存する。この長さは、オリゴヌクレオチドが、2つのストランドが結合し、その結果、選択された温度および所望の位置のみでの切断が生じるのに十分大きな領域にわたって、1本鎖DNAに機能的に相補性であるために十分でなければならない。
代表的に、本発明の好ましい方法のオリゴヌクレオチドは、約17〜約30ヌクレオチド長である。約17塩基未満では、アニーリングが弱すぎ、そして30塩基より上では、特異性の喪失が存在し得る。好ましい長さは、18〜24塩基である。
この長さのオリゴヌクレオチドは、生殖系列遺伝子の同一の相補体である必要はない。むしろ、生じる数個の不適合が寛容され得る。しかし、好ましくは、1〜3の不適合のみが許容される。このような不適合は、1本鎖DNAに対するこのオリゴヌクレオチドのアニーリングに逆に影響しない。従って、この2つのDNAは、機能的に相補性であると呼ばれる。
クローニングのために本発明の増幅した1本鎖DNAを操作するための第2の方法は、以下の工程を包含する:
(i)核酸と部分的に2本鎖のオリゴヌクレオチドを接触される工程であって、このオリゴヌクレオチドの1本鎖領域が、切断が所望される領域においてこの核酸に機能的に相補的であり、そしてこのオリゴヌクレオチドの2本鎖領域が、II−S型制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、それらの切断部位が、認識部位から既知の距離で配置される、工程;および
(ii)核酸とオリゴヌクレオチドの1本鎖領域との補完により形成される切断部位のみでこの核酸を切断する工程。
接触工程および切断工程は、この核酸を実質的に1本鎖形態で維持するために十分な温度にて実施され、オリゴヌクレオチドは、2つのストランドが結合し、その結果、選択された温度および所望の位置で切断が生じ得るのに十分に大きな領域にわたってこの核酸に対して機能的に相補性であり、そして切断は、選択された温度で活性な制限エンドヌクレアーゼを用いて実施される。
この第2の方法は、ユニバーサル制限エンドヌクレアーゼ(「URE」)を用いる。UREは、部分的に2本鎖オリゴヌクレオチドである。1本鎖部分またはUREの重複は、1本鎖DNAにおいて切断されるためにこの配列に対して機能的に相補性であるDNAアダプターからなる。2本鎖部分は、II−S型制限エンドヌクレアーゼ認識部位でからなる。
本発明のURE方法は、特異的かつ正確であり、そして相補領域においていくつか(例えば、1〜3)の不適合を寛容し得る(すなわち、それはその領域に対して機能的に相補性である)。さらに、UREが用いられる条件が調整され、その結果、増幅されるほとんどの遺伝子が切断され、それらの遺伝子から生成されるライブラリー中の偏りを減少させ得る。
1本鎖DNAアダプターの配列またはUREの重複部分は、代表的に、約14〜22塩基からなる。しかし、より長いかまたはより短いアダプターが用いられ得る。大きさは、アダプターが1本鎖DNAの機能的な相補体と結合する能力、ならびにII−S型酵素を用いてこのDNAを切断するために用いられる温度にてUREと1本鎖DNAを接触させるために用いられる温度に依存する。アダプターは、2つのストランドが結合し、その結果、選択された温度および所望の位置で切断が生じ得るのに十分に大きな領域にわたって1本鎖DNAに対して機能的に相補性でなければならない。本発明者らは、14〜17塩基長、より好ましくは18〜20塩基長の1本鎖部分または重複部分を好む。
UREを用いて切断のために選択される部位は、好ましくは、増幅されたDNAのファミリーにおいて実質的に保存される部位である。本発明の第1の切断方法と比較する場合、これらの部位は、エンドヌクレアーゼ認識部位である必要がない。しかし、第1の方法のように、選択される部位は、ネイティブのDNAに存在するというよりも合成性であり得る。このような部位は、公知の抗体または遺伝子の他のファミリーの配列に関する参照により選択され得る。例えば、多くの生殖系列遺伝子の配列は、http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ok.htmlにて報告されている。例えば、1つの好ましい部位は、FR3の末端付近(コドン89〜コドン93の第2の塩基)で生じる。CDR3は、コドン95で開始する。
79のヒト重鎖遺伝子の配列もまた、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entre2/nucleotide.htmlにて利用可能である。このサイトは、本発明の方法に従うURE切断のための適切な配列を同定するために用いられ得る。例えば、表8Bを参照のこと。
最も好ましくは、1つ以上の配列が、これらのサイトまたは他の利用可能な配列情報を用いて同定される。これらの配列は、共に、増幅されたDNAの実質的な画分に存在する。例えば、複数の配列が、生殖系列遺伝子における公知の多様性または頻度の高い体細胞変異を可能にするために用いられ得る。合成性の変性配列もまた、用いられ得る。好ましくは、2〜3の不適合のみを有する試験された遺伝子の少なくとも65%において生じる配列が、選択される。
次いで、URE1本鎖アダプターまたは重複は、選択される領域に相補性であるように作製される。UREを使用する条件は、経験的に決定される。これらの条件は、2〜3の不適合のみを有する機能的に相補性の配列を含むDNAの切断を可能にするが、このような配列を欠くDNAの切断を可能にしない。
上記のように、UREの二本鎖部分として、II−S型エンドヌクレアーゼ認識部位が挙げられる。一本鎖DNAを実質的にその形態で保持し、そして一本鎖DNAが所望される部位で切断されるのを可能にするために、UREの一本鎖DNAアダプター部分が十分な長さでアニーリングすることを可能にするのに必要な温度で活性な任意のII−S型酵素が使用され得る。
本発明のURE方法での使用のための好ましいII−S型酵素は、一本鎖DNAの非対称的な切断を提供する。とりわけ、表800にこれらの酵素を列挙する。もっとも好ましいII−S型酵素が、FokIである。
好ましいFokIを含むUREが使用される場合、切断を起こすためのいくつかの条件を使用することが好ましい:
1)酵素を活性化するための標的DNA全体のUREの発現が存在するべきである。標的DNAに対して等モル量しか存在しないUREは、ssDNAの少ない切断を生じる。なぜなら、利用可能な活性な酵素の量は限られているからである。
2)アクチベーターを使用してFokI酵素の一部を活性化し、切断を生じることなく二量体化させ得る。適切なアクチベーターの例を、表510に示す。
3)切断の制限は、45℃〜75℃の間の温度、好ましくは50℃より高い温度、そして最も好ましくは55℃より高い温度で実施される。
先行技術で使用されているUREは、14の塩基の一本鎖セグメント、10の塩基のステム(FokI部位を含む)、それに続く10塩基のステムのパリンドロームを含んだ。このようなUREを本発明の本方法で使用し得るが、本発明の好ましいUREはまた、セグメントを含むFokI制限エンドヌクレアーゼ認識部位の間の3〜8塩基(1つのループ)のセグメントも含む。好ましい実施形態において、ステム(FokI部位を含む)およびそのパリンドロームはまた、10塩基よりも長い。好ましくは、これらは、10〜14塩基長である。これらの「ロリポップ(lollipop)」UREアダプターの例を表5に示す。
UREを使用して、一本鎖DNAを切断する1つの例としては、ヒト重鎖のFR3領域が挙げられる。表508は、示されるURE認識配列を有する840の全長成熟ヒト重鎖の分析を示す。大部分(718/840=0.85)は、5つのURE(VHS881−1.1、VHS881−1.2、VHS881−2.1、VHS881−4.1、およびVHS881−9.1)を使用して、2以下のミスマッチを認識される。これらのそれぞれは、生殖系列の遺伝子に相補的な20塩基のアダプター配列、FokI部位を含む10塩基のステムセグメント、5つの塩基ループ、および第一のステムセグメントの逆の相補体を有する。これらのアダプターを、単独でまたは組合せて一本鎖アンチセンス重鎖DNAにアニーリングし、そして例えば、アクチベーターFOKIactの存在下でFokIを用いて処理することによって、指示された位置でアンチセンス鎖の切断を生じる。
UREを使用して一本鎖DNAを切断する別の例としては、ヒトκ軽鎖のFR1領域が挙げられる。表512は、4つの示された19塩基のプローブ配列による一致についての182の全長ヒトκ鎖の分析を示す。96%の配列は、2以下のミスマッチを有するプローブの1つと一致する。表512に示されるUREアダプターは、κ鎖のセンス鎖の切断のためである。従って、アダプター配列は、生殖系列の遺伝子配列の逆の相補体である。UREは、10塩基のステム、5塩基のループ、ステムの逆の相補体およびその相補配列から構成される。ループは、ここではTTGTTを示すが、他の配列が使用され得る。その機能は、ロリポップ単量体の形成が二量体化よりも好まれるように、ステムのパリンドロームを妨げることである。表512はまた、センス鎖が切断される場所を示している。
UREを使用して一本鎖DNAを切断する別の例としては、ヒトλ軽鎖が挙げられる。表515は、4つの示された19塩基のプローブを一致させるための128のヒトλ軽鎖の分析を示している。3以下のミスマッチを有し、128のうちの88(69%)の鎖がプローブの1つと一致する。表515はまた、これらのプローブに対応するUREアダプターを示している。これらのアダプターを、λ鎖の上側の鎖ssDNAにアニーリングし、そしてFOKIactの存在下、45℃またはそれより高い温度で、FokIで処理することによって、これらの鎖の特異的かつ正確な切断が生じる。
第一の方法の短いオリゴヌクレオチド配列および第二の方法のUREが、一本鎖DNAと接触する条件下で、経験的に決定され得る。この条件は、一本鎖DNAが、実質的に一本鎖の形態で保持されるようでなければならない。より詳細には、これらの条件は、一本鎖DNAが、ループを形成しないような条件でなければならず、このループは、それが関係するオリゴヌクレオチド配列もしくはUREを妨害し得るか、または選択的制限エンドヌクレアーゼによってループ自身が切断の部位を提供し得る。
短いオリゴヌクレオチド(第一の方法)およびURE(第二の方法)の効率および特異性は、UREアダプター/オリゴヌクレオチドならびに基質DNAの濃度、温度、pH、金属イオン濃度、イオン強度、カオトロープ(chaotrope)(例えば、尿素およびホルムアミド)の濃度、制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)の濃度、および消化の時間を制御することによって調整され得る。これらの条件は、以下を有する合成オリゴヌクレオチドを用いて最適化され得る:1)標的生殖系列遺伝子配列、2)成熟標的遺伝子配列、または3)幾分関連する非標的配列。目標は、標的配列のほとんどを切断しかつ非標的の最小量を切断することである。
本発明の好ましい実施形態において、一本鎖DNAは、45℃〜75℃の間の温度を使用して、実質的に一本鎖DNAの形態で維持される。より好ましくは、50℃〜60℃の間であり、最も好ましくは55℃〜60℃の間の温度が使用される。これらの温度は、DNAがオリゴヌクレオチドまたはUREと接触する場合、および本発明の方法を使用してDNAを切断する場合の両方で使用される。
本発明の2つの切断方法は、いくつかの利点を有する。第一の方法は、一本鎖DNAのファミリーの個々のメンバーを、1つの実質的に保存されたエンドヌクレアーゼ認識部位で単独に切断することを可能にする。この方法はまた、逆転写または増幅プライマーに構築されるエンドヌクレアーゼ認識部位を必要としない。ファミリー中の任意のネイティブな部位または合成部位が使用され得る。
第二の方法は、これらの利点の両方を有する。さらに、UREの方法は、一本鎖DNAが、天然に存在するか、または合成で構築されたエンドヌクレアーゼ認識部位を有さない位置で切断されることを可能にする。
最も重要なことは、両方の切断方法が、多様性を最大にするように5’および3’プライマーの使用を可能にし、次いでクローニングおよびディスプレイの前に所望でないか、または有害な配列を除去するような切断を可能にする。
増幅されたDNAを、本発明の方法の1つを使用して切断した後、このDNAはクローニングのために調製される。これは、部分的に二重鎖の合成DNAアダプター(この末端配列は、特定の切断部位に基づいており、増幅されたDNAは、この部位で切断される)を使用することによってなされる。
合成DNAは、切断された一本鎖DNAに連結される場合、DNAが、所望のペプチド、ポリペプチドまたは遺伝子パッケージの表面タンパク質をディスプレイするように正確なリーディングフレームに発現されることを可能にするように設計される。好ましくは、アダプターの二本鎖部分は、ペプチド、ポリペプチドまたは切断部位までのタンパク質のファミリーのアミノ酸配列の特徴をコードするいくつかのコドン配列を含む。ヒト重鎖について、好ましくは、3〜23のフレームワークのアミノ酸を使用して、切断されたDNAの発現に必要な配列を提供する。
好ましくは、アダプターの二本鎖部分は、約12〜100塩基長である。より好ましくは、約20〜100塩基が使用される。アダプターの二本鎖領域はまた、好ましくは、DNAを適切なディスプレイベクター(または多様性を保存するために使用されるレシピエントベクター)にクローニングするために有用な少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ認識部位を含む。このエンドヌクレアーゼ制限部位は、DNA配列を伸長するために使用される生殖系列遺伝子配列に対してネイティブであり得る。これはまた、ネイティブな生殖系列遺伝子配列に対して縮重した配列を使用して構築され得る。または、これは全合成であり得る。
アダプターの一本鎖部分は、一本鎖DNAにおける切断領域に相補的である。このオーバーラップは、約2塩基〜約15塩基までであり得る。オーバーラップがより長くなるにつれて、連結がより効率的になるようである。オーバーラップについて好ましい長さは、7〜10である。これは、領域における多様性が捕捉され得るようにこの領域のいくつかのミスマッチを可能にする。
一本鎖領域または部分的二重鎖のアダプターのオーバーラップが有利である。なぜなら、これは、DNAが選択された部位で切断されることを可能にするが、捕捉される他のフラグメントは切断されないからである。このようなフラグメントは、適切な抗体に折り畳まれず、そして非特異的粘着性であるらしい遺伝子コード配列を有するライブラリーを汚染する。
本発明の方法における部分的二重鎖のアダプターの使用の1つの例示としては、このようなアダプターを上記のように、5’−ACnGT−3’において、HpyCH4III、Bst4CIまたはTaaIを使用して切断されるヒトFR3領域に連結する工程を包含する。
表250F.2は、切断された下側の鎖であるDNAに連結するためにアダプターの二本鎖部分の下側の鎖を示している。HpyCH4III部位は、右(表206に示されるような)に対して非常に遠いので、AflII部位およびXbaI部位を含む配列が、付加され得る。部分的に二重鎖のアダプターのこの下側の鎖部分(H43.XAExt)は、XbaIおよびAflII部位の両方を組込む。アダプターの二重鎖部分の上側の鎖は、いずれの部位も有さない(H43.XAExtのXbaIおよびAflII部位に逆のセグメントにおける計画されたミスマッチのため)が、H43.XAExtに非常に強固アニーリングする。H43AExtは、AflII部位のみを含み、そして上側鎖H43.ABr1およびH43.ABr2(これは、AflII部位を破壊するために意図的な変更を有する)とともに使用される。
連結後に、所望の捕獲されたDNAは、さらにPCR増幅され得、所望である場合、好ましい実施形態において、抗体遺伝子の下流の定常領域に対するプライマー、およびアダプターの二本鎖領域の部分に対するプライマーを使用する。これらのプライマーはまた、増幅されたDNAのクローニングに使用するための制限エンドヌクレアーゼ部位を保有する。
部分的な二本鎖アダプターの一本鎖増幅DNAへの連結、およびおそらく増幅の後、複合体DNAは、選択された5’側および3’側エンドヌクレアーゼ認識部位で切断される。
クローニングに有用な切断部位は、カセットが挿入されるファージまたはファージミドおよび抗体遺伝子におけるその利用可能な部位に依存する。表1は、75のヒト軽鎖についての制限エンドヌクレアーゼのデータを提供する。表2は、79のヒト重鎖についての対応するデータを示す。各表において、エンドヌクレアーゼは、切断の頻度が増す順番で並べられている。これらの表において、Nchは、酵素によって切断される鎖の数であり、Nsは、部位の数(いくつかの鎖は1より多い部位を有する)である。
この分析から、SfiI、NotI、AflII、ApaLIおよびAscIが非常に適切である。SfiIおよびNotIは、好ましくは、重鎖ディスプレイセグメントを挿入するためのpCES1において使用される。ApaLIおよびAscIは、好ましくは、軽鎖ディスプレイセグメントを挿入するためにpCES1において使用される。
BstEII部位は、生殖系列JH遺伝子の97%に生じる。再配列されたV遺伝子において、重鎖遺伝子の54/79(68%)のみが、BstEII部位を含み、そしてこれらの7/61が、2つの部位を含む。従って、47/79(59%)が、1つのBstEII部位を含む。BstEIIを使用することの代替策は、JH末端でのUREを介する切断、およびCH1の部分をコードする合成オリゴヌクレオチドへの連結である。
本発明の方法を使用するDNA配列のファミリーを調製する1つの例として、ヒトCDR3多様性を捕捉することが挙げられる。上記のように、種々の自己免疫の患者からのmRNAは、cDNAへ逆転写される。mRNAが分解された後、cDNAを固定化し、そして短いオリゴヌクレオチドを使用してcDNA上流のCDR3を切断する。次いで、部分的に二重鎖の合成DNAアダプターは、DNAにアニーリングされ、そしてこのDNAは、アダプターに対するプライマーおよび定常領域(FR4の後)に対するプライマーを使用して増幅される。次いで、DNAはBstEII(FR4中)および部分的二本鎖アダプター(例えば、XbaIおよびAflII(FR3中))に適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して切断される。次いで、DNAは合成VH骨格(例えば、3〜23)に連結される。
URE方法を使用して切断された一本鎖DNAを調製する1つの例として、ヒトκ鎖が挙げられる。この鎖のセンス鎖の切断部位は、表512に示される。オリゴヌクレオチドkapextUREは、オリゴヌクレオチド(kaBR01UR、kaBR02UR、kaBR03UR、およびkaBR04UR)にアニーリングされて部分的二重鎖DNAを形成する。次いで、このDNAは、切断された可溶性のκ鎖に連結される。次いで、連結産物は、プライマーkapextUREPCRおよびCKForeAsc(これは、Cκ末端後のAscI部位に挿入する)を使用して増幅される。次いで、この産物は、ApaLIおよびAscIを用いて切断され、そして同様にレシピエントベクターを切断するために連結される。
別の例としては、表515に示される切断が挙げられる。切断後、エクステンダー(extender)(ON_LamEx133)オリゴヌクレオチドおよび4つのブリッジ(bridge)オリゴヌクレオチド(ON_LamB1−133、ON_LamB2−133、ON_LamB3−133およびON_LamB4−133)は、アニーリングされて部分的二重鎖DNAを形成する。このDNAは、切断されたλ鎖センス鎖に連結される。連結後、DNAは、ON_Lam133PCRおよびλ定常ドメインに特異的な前進プライマー(例えば、CL2ForeAscまたはCL7ForeAsc(表130))を用いて増幅される。
ヒト重鎖において、FR4のほとんど全ての遺伝子は、ヒト重鎖V遺伝子の非常に大きな画分中の定常位置で生じるBstEII部位で切断され得る(下流、すなわち、CDR3のセンス鎖の3’末端へ向かって)。次いで、CDR3の多様性のみが捕捉される場合、FR3中の部位が、CDR2およびCDR3の多様性が所望される場合、FR2中の部位が、またはCDRの多様性全てが所望される場合、FR1中の部位が必要である。これらの部位は、好ましくは、部分的二重鎖のアダプターの一部として挿入される。
本発明の好ましいプロセスは、軽鎖または重鎖のいずれかのクローニングを可能にする部位を有するレシピエントベクターを提供することである。このようなベクターは、周知であり、当該分野で広く使用される。本発明に従った好ましいファージ提示ベクターは、ファージMALIA3である。これは、遺伝子IIIにおいて提示する。ファージMALIA3の配列を、表120A(注釈付)および表120B(要約)に示す。
軽鎖または重鎖の選択された領域をコードするDNAを、軽鎖または重鎖のいずれかを非常に稀にしか切断しないエンドヌクレアーゼを使用してベクターに移入し得る。例えば、軽鎖は、ApaLIおよびAscIによって捕捉される。重鎖遺伝子は、好ましくは、SfiI、NcoI、XbaI、AflII、BstEII、ApaIおよびNotI部位を有するレシピエントベクターにクローニングされる。軽鎖は、好ましくは、ApaLI−AscIフラグメントとしてライブラリー中に移される。重鎖は、好ましくは、SfiI−NotIフラグメントとしてライブラリーに移される。
最も好ましくは、この提示は、M13ファージの誘導体の表面上に有される。最も好ましいベクターは、M13の全ての遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、および提示カセットを含む。好ましいベクターは、遺伝子の多様なファミリーのメンバーの導入および切除を可能にする制限部位をカセットとして提供される。好ましいベクターは、ファージを増幅させるために使用される増殖条件下での再編成に対して安定である。
本発明の別の実施形態において、本発明の方法によって捕捉される多様性は、IIIタンパク質上にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を提示するファスミドベクター(例えば、pCES1)において提示され得る。このようなベクターはまた、他のベクターまたはファージを使用する引き続く提示のための多様性を保存するために使用され得る。
別の実施形態において、提示の様式は、3つの可能性のあるアンカードメインに対する短いリンカーを介し得る。M13 III(「IIIスタンプ」)の最終部分である1つのアンカードメイン、全長III成熟タンパク質である第二のアンカー、およびM13 VIII成熟タンパク質である第三のアンカー。
IIIスタンプフラグメントは、ファージに構築するためのM13 IIIを十分に含むが、感染性の媒介に関するドメインを含まない。野生型のIIIおよびVIIIタンパク質が存在することから、このファージは、抗体遺伝子を除去しないようであるが、非常に低い増殖の利点のみを受けるこれらのセグメントを欠失する。各々のアンカードメインのために、このDNAは野生型のAA配列をコードするが、非常に高い程度で野生型のDNA配列とは異なる。これは、提示アンカーと野生型遺伝子(これもまた存在する)との間の相同組換えの可能性を非常に減少させる。
最も好ましくは、本発明は、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子)および提示カセットを保有する完全なファージを使用する。野生型iiiおよびviii遺伝子が存在することから、野生型タンパク質もまた存在する。この提示カセットは、調節可能なプロモーター(例えば、PLacZ)から転写される。調節可能なプロモーターの使用は、対応する野生型コートタンパク質に対する融合提示遺伝子の比を制御することを可能にする。この比は、ファージ(またはファスミド)粒子当たりの提示融合の平均コピー数を決定する。
本発明の別の局面は、糸状ファージ上にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(および特にFab)を提示する方法である。最も好ましい実施形態において、この方法は、FABを提示し、以下を包含する:
a)以下のエレメントをコードするDNAの断片の送達を捕捉するカセットを得る工程:
reg::RBS1::SS1::VL::CL::停止::RBS2::SS2::VH::CH1::リンカー::アンカー::停止::、
ここで、Pregは、調節可能なプロモーターであり、PBS1は、第一のリボソーム結合部位であり、SS1は、宿主株において作動可能なシグナル配列であり、VLは、軽鎖可変領域の種々のセットのメンバーであり、CLは、軽鎖定常領域であり、停止は、1以上の停止コドンであり、PBS2は、第二のリボソーム結合部位であり、SS2は、宿主株において作動可能な第二のシグナル配列であり、VHは、重鎖可変領域の種々のセットのメンバーであり、CH1は、抗体重鎖の第一の定常領域であり、リンカーは、1〜約50残基のアミノ酸の配列であり、アンカーは、糸状ファージ粒子に構築されるタンパク質であり、そして停止は、1以上の停止コドンの第二の例である;ならびに
b)ファージの生存性を最大化し、そしてこのカセットまたはその部分の欠失の可能性を最小化するためにファージゲノム内にカセットを配置する工程。
上記の好ましいカセット中のアンカータンパク質をコードするDNAは、同じ(または密接に関連する)アミノ酸配列(ファージのコートタンパク質の1つに見出されるような)をコードするが、別個のDNA配列を有するように設計される。これは、野生型遺伝子との望まない相同組換えを防止する。さらに、このカセットは、遺伝子間領域に配置されるべきである。提示カセットの配置および方向は、ファージの挙動に影響し得る。
本発明の1つの実施形態において、転写ターミネーターは、上記の提示カセットの第二の停止(例えば、Trp)の後に配置され得る。これは、提示カセットとファージ抗体提示ベクター(PADV)中の他の遺伝子との間の相互作用を減少させる。
本発明の方法の別の実施形態において、このファージまたはファージミドは、Fab以外のタンパク質を、他のタンパク質遺伝子で置換することによって、上記のFab部分を提示し得る。
種々の宿主を、本発明の提示ファージまたはファージミドの増殖のために使用し得る。このような宿主は、当該分野で周知である。好ましい実施形態において、Fabが提示される場合、好ましい宿主は30℃で増殖し、そしてRecA(望まない遺伝子組み換えを減少させるため)およびEndA(RF DNAの回収を容易化するため)であり得る。エレクトロポレーションによって容易に形質転換される宿主株もまた好ましい。
XL1−Blue MRF’は、これらの好ましさのほとんどを満足させるが、30℃ではあまり増殖しない。XL1−Blue MRF’は、38℃でゆっくりと増殖し、従って、許容可能な宿主である。TG−1はまた、中間宿主としてより好ましいが、RecAおよびEndAである。XL1−Blue MRF’は、ライブラリーの最終構築の前の多様性を蓄積するために使用される中間宿主としてより好ましい。
提示後、本発明のライブラリーを、周知かつ慣用的に使用される技術を使用してスクリーニングし得る。次いで、選択されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、疾患を処置するために使用し得る。一般に、治療または薬学的組成物における使用のためのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、選択されるライブラリーのメンバーから所望のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNAを単離することによって生成する。次いで、このDNAを、慣用的な方法において使用して、適切な宿主細胞、好ましくは、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)においてコードされるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を生成する。単離後、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、単独でか、または疾患を処置するための治療において薬学的に受容可能な組成物と共に使用する。
(実施例)
(実施例1:BsmAIを用いるκ鎖の捕捉)
ヒトκ鎖mRNAのレパートリーを、種々の自己免疫疾患を有する患者の集団から単離した総RNAまたはポリ(A+)RNAを仔ウシ腸ホスファターゼで処理して、例えば、リボソームRNA、フラグメント化mRNA、tRNAおよびゲノムDNAを有する全ての分子から5’−リン酸を除去することによって調製した。全長のmRNA(保護的7−メチルキャップ構造を含む)は、影響されない。次いで、RNAを、タバコ酸ピロホスファターゼで処理して、5’−一リン酸基を残して全長のmRNAからキャップ構造を除去する。
全長のmRNAを、5’末端でアダプターによって改変し、次いで、逆転写し、そしてGenerRACETM方法およびキット(Invitrogen)を使用して増幅した。アダプターに相補的な5’ビオチン化プライマー、および構築物の領域の一部に相補的な3’プライマーを使用した。
上方の鎖の5’末端にビオチンを結合した約2マイクログラム(μg)のヒトκ鎖(Igκ)遺伝子RACE材料を、200マイクロリットル(μL)のSeradyn磁気ビーズ上に固定した。下方の鎖を、2アリコートの200μLの0.1M NaOH(pH13)で、第一のアリコートについて3分間、次いで第二のアリコートについて30秒間、DNAを洗浄することによって除去した。これらのビーズを、200μLの10mM Tris(pH7.5)100mM NaClで中和した。表525に示した短いオリゴヌクレオチドを、100μLのNEB緩衝液2(50mM NaCl、10mM Tris−HCl、10mM MgCl、1mM ジチオトレイトール pH7.9)中に40倍モル過剰に、乾燥ビーズに添加した。この混合物を、95℃で5分間インキュベートし、次いで、30分かけて55℃まで冷却した。過剰なオリゴヌクレオチドを、NEB緩衝液3(100mM NaCl、50mM Tris−HCl、10mM MgCl、1mM ジチオトレイトール pH7.9)で2回洗浄して除去した。10単位のBsmAI(NEB)を、NEB緩衝液3に添加し、そして55℃で1時間インキュベートした。切断された下流のDNAを、収集し、そしてQiagen PCR精製カラムで精製した(図3および図4)。
部分的に二本鎖のアダプターを、表525に示したオリゴヌクレオチドを使用して調製した。このアダプターを、1000単位のT4 DNAリガーゼ(NEB)と共に100倍モル過剰に一本鎖DNAに添加し、そして16℃で一晩インキュベートした。過剰なオリゴヌクレオチドを、Qiagen PCR精製カラムで除去した。この連結材料を、表525に示したプライマーkapPCRt1およびkapforを使用するPCRによって、表530に示したプログラムで10サイクル増幅した。
可溶性PCR産物を、ゲルで泳動し、そして予測されるような約700nのバンドを示した(図5および図6)。このDNAを、酵素ApaLIおよびAscIで切断し、ゲル精製し、そして同様に切断したベクターpCES1に連結した。正確なサイズの挿入物の存在を、図15に示したように、いくつかのクローンでPCRによってチェックした。
表500は、この手順によって捕捉されたκ軽鎖のDNA配列を示す。表501は、この手順によって捕捉された第二の配列を示す。最も近い架橋配列は、配列5’−agccacc−3’に相補的であったが、捕捉された配列は5’−Tgccacc−3’と読め、これは、重複領域中にいくつかのミスマッチを寛容したことを示す。
(実施例2:V−3−23 VHフレームワークにおける合成CDR1およびCDR2の多様性の構築)
合成相補性決定基領域(CDR)1および2の多様性を、二段階のプロセスで3−23 VHフレームワークにおいて構築した:第一に、3−23 VHフレームワークを含むベクターを構築し、次いで、合成CDR1および2を、構築してこのベクター中にクローニングした。
V3−23フレームワークの構築のために、重複する8つのオリゴおよび2つのPCRプライマー(表600に示した長いオリゴヌクレオチド:TOPFR1A、BOTFR1B、BOTFR2、BOTFR3、F06、BOTFR4、ON−vgC1、およびON−vgC2ならびにプライマー:SFPREMTおよびBOTPCRPRIM)を、V323 VHのGenbankの配列に基づいて設計した。この設計は、表600に示されるような、各々のフレームワークにおける少なくとも1つの有用な制限部位を取り込んだ。表600において、合成された断片を太字として示し、重複する領域に下線を付し、そして各末端でのPCRプライマー領域に下線を付した。これら8つのオリゴの混合物を、20μlのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応中の2.5μMの最終濃度で組み合わせた。このPCR混合物は、200μM dNTP、2.5mM MgCl、0.02U Pfu TurboTMDNAポリメラーゼ、1U Qiagen HotStart Taq DNA ポリメラーゼ、および1×Qiagen PCR緩衝液を含んだ。このPCRプログラムは、94℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で30秒の10サイクルからなった。次いで、100μl PCR反応における最初のPCRからの10倍希釈の2.5μlを使用して、構築されたV3−23 DNA配列を増幅した。このPCR反応は、200μM dNTP、2.5mM MgCl、0.02U Pfu TurboTMDNAポリメラーゼ、1U Qiagen HotStart Taq DNA ポリメラーゼ、1×Qiagen PCR緩衝液、および1μMの濃度での2つの外側のプライマー(SFPRMETおよびBOTPCRPRIM)を含んだ。このPCRプログラムは、94℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で60秒の23サイクルからなった。このV3−23 VH DNA配列を、設計し、そしてSfiIおよびBstEII制限エンドヌクレアーゼ部位を使用してpCES1(ファスミドベクター)にクローニングした(本明細書中で記載した全ての制限酵素は、New England BioLabs、Beverly、MAによって供給され、そして製造業者の指示通りに使用した)。
CDR1/CDR2多様性のクローニング前に、スタッファー(stuffer)配列(表610および表620に示す)を、pCES1に導入してCDR1/CDR2配列(BspEI制限酵素部位とXbaI制限酵素部位との間の900塩基)およびCDR3配列(AflIIとBstEIIとの間の358塩基)を置換した。新規のベクターは、pCES5であり、そしてその配列を、表620に与える。CDRの代わりにスタッファーを有することは、親配列がライブラリーにおいて過剰に提示される危険性を回避する。このCDR1−2スタッファーは、BglII、Bsu36I、BclI、XcmI、MluI、PvuII、HpaIおよびHincIIについての制限部位、ベクターpCES5内に独自である、強調された領域を含む。CDR3を置換するこのスタッファーは、独自の制限エンドヌクレアーゼ部位、RsrIIを含む。このスタッファー配列は、E.coliのペニシリン遺伝子由来のフラグメントである。
CDR1およびCDR2多様性の構築のために、CDR1/2および隣接領域をコードする4つの重複オリゴヌクレオチド(表600および表630に示したON−vgC1、ON_Br12、ON_CD2Xba、およびON−vgC2)を設計した。これら4つのオリゴの混合物を、40μl PCR反応物中2.5μMの最終濃度で組み合わせた。4つのオリゴのうち2つは、CDR1およびCDR2に位置する、変化させた配列を含んだ。このPCR混合物は、200μM dNTP、2.5U Pwo DNAポリメラーゼ(Roche)、および2mM MgSOを含む1×Pwo PCR緩衝液を含んだ。このPCRプログラムは、94℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で60秒の10サイクルからなった。これは、100μl PCR反応物中の2.5μlの混合物を使用して、増幅されたCDR1/2 DNA配列を構築した。このPCR反応物は、200μM dNTP、2.5U Pwo DNAポリメラーゼ、2mM MgSOを含む1×Pwo PCR緩衝液、および1μMの濃度で2つの外側のプライマーを含んだ。このPCRプログラムは、94℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で60秒の10サイクルからなった。これらの変化された配列を、消化し、そしてCDR1/2スタッファーの代わりにV3−23フレームワーク中にクローニングした。
本発明者らは、約7×10の独立形質転換体を得た。この多様性に、本発明者らは、ドナー集団または合成DNAのいずれかからCDR3多様性をクローニングし得る。
上記は、本発明の原理を例示するのみであり、そして本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者によって種々の改変がなされ得ることが理解される。
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Claims (13)

  1. ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の多種多様なファミリーのメンバーを提示し、そして該ファミリーの少なくとも一部を集合的に提示する、遺伝的パッケージの収集物を含むライブラリーであって、該提示されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、免疫グロブリンの少なくとも一部をコードする複数の核酸によってコードされ、該核酸は、以下:
    (a)式S−X1−Y−X2−M−X3−のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1であって、ここで、X1、X2およびX3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より独立して選択される、重鎖CDR1、ならびに
    (b)式X4−I−X5−X6−S−G−G−X7−T−X8−Y−A−D−S−V−K−G−のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2であって、ここで、X4およびX5は、Y、R、W、V、GおよびSからなる群より独立して選択され、X6は、PおよびSからなる群より選択され、そして、X7およびX8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より独立して選択される、重鎖CDR2
    をコードする配列を含む、ライブラリー。
  2. 請求項1に記載のライブラリーを調製する方法であって、以下の工程:
    (i)プライマーを用いて核酸を増幅する工程であって、ここで、該プライマーのうちの1つは、該核酸に結合された合成配列の少なくとも一部に対して相補的である、工程;
    (ii)該増幅した核酸を一本鎖にする工程;
    (iii)該増幅した一本鎖核酸を、一本鎖オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、ここで、該オリゴヌクレオチドは、切断が所望される領域において該一本鎖核酸に対して相補的であり、ここで、該一本鎖核酸と該一本鎖オリゴヌクレオチドとが会合して、該一本鎖核酸の局部的に二本鎖の領域を形成し、そしてここで該局部的に二本鎖の領域は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、工程;および
    (iv)該核酸を該制限エンドヌクレアーゼ認識部位で切断する工程であって、ここで、該切断工程は、制限エンドヌクレアーゼを該局部的に二本鎖の領域に接触させる工程を含み、ここで、該制限エンドヌクレアーゼは、該制限エンドヌクレアーゼ認識部位に特異的であり、そして該切断は、該核酸から全ての望ましくない5’ヌクレオチドを除去する、工程;
    を包含
    該接触工程および該切断工程は、ある温度で行われ、ここで、該該一本鎖核酸と該一本鎖オリゴヌクレオチドとが会合して、該一本鎖核酸の局部的に二本鎖の領域を形成し、ここで、該一本鎖核酸の残部は一本鎖であり、そしてここで、該制限エンドヌクレアーゼは、該温度で活性である、方法
  3. 請求項1に記載のライブラリーを調製する方法であって、以下の工程:
    (i)プライマーを用いて核酸を増幅する工程であって、ここで、該プライマーのうちの1つは、該核酸に結合された合成配列の少なくとも一部に対して相補的である、工程;
    (ii)該増幅した核酸を一本鎖にする工程;
    (iii)該増幅した一本鎖核酸を、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、ここで、該オリゴヌクレオチドの一本鎖領域は、切断が所望される領域において該一本鎖核酸に対して相補的であり、ここで、該オリゴヌクレオチドの二本鎖領域は、II−S型制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し、ここで、該一本鎖核酸と該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域とが会合して、該一本鎖核酸の局部的に二本鎖の領域を形成し、そしてここで該局部的に二本鎖の領域は、II−S型切断部位を含む、工程;ならびに
    (iv)該核酸を該II−S型切断部位で切断する工程であって、該切断工程は、II−S型制限エンドヌクレアーゼを、該一本鎖核酸の該局部的に二本鎖の領域に接触させる工程を含み、ここで、該II−S型制限エンドヌクレアーゼは、II−S型制限エンドヌクレアーゼ認識部位に特異的である、工程;
    を包含
    該接触工程および該切断工程は、ある温度で行われ、ここで、該一本鎖核酸と該オリゴヌクレオチドの該一本鎖領域とが会合して、該一本鎖核酸の局部的に二本鎖の領域を形成し、ここで、該一本鎖核酸の残部は一本鎖であり、そしてここで、該II−S型制限エンドヌクレアーゼは、該温度で活性である、方法
  4. 前記方法が、工程(i)における増幅の前に、前記多種多様なファミリーのメンバーをコードする核酸の収集物を調製する工程をさらに含む、請求項2または請求項3に記載の方法
  5. 前記方法が、工程(iv)における切断の後に、前記切断された核酸によって少なくとも部分的にコードされるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のファミリーのメンバーを、前記遺伝的パッケージの表面上に提示し、そして該ファミリーの多様性の少なくとも一部を集合的に提示する工程をさらに含む、請求項2または請求項3に記載の方法
  6. 前記核酸が、Fabまたは単鎖Fvをコードする、請求項1記載のライブラリー。
  7. 前記核酸が、軽鎖の少なくとも一部をコードする配列をさらに含む、請求項1記載のライブラリー。
  8. 前記核酸配列の少なくとも一部が、少なくとも1つの自己免疫疾患および/またはがんを罹患した患者由来である、請求項1記載のライブラリー。
  9. 前記制限エンドヌクレアーゼが、MaeIII、Tsp45I、HphI、BsaJI、AluI、BlpI、DdeI、BglII、MslI、BsiEI、EaeI、EagI、HaeIII、Bst4CI、HpyCH4III、HinfI、MlyI、PleI、MnlI、HpyCH4V、BsmAI、BpmI、XmnI、およびSacIからなる群から選択される、請求項2または請求項3に記載の方法
  10. 前記II−S型制限エンドヌクレアーゼが、AarICAC、AceIII、Bbr7I、BbvI、BbvII、Bce83I、BceAI、BcefI、BciVI、BfiI、BinI、BscAI、BseRI、BsmFI、BspMI、EciI、Eco57I、FauI、FokI、GsuI、HgaI、HphI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、PleI、RleAI、SfaNI、SspD5I、Sth132I、StsI、TaqII、Tth111II、およびUbaPIからなる群から選択される、請求項3に記載の方法
  11. 前記核酸が、VH 3−23のフレームワーク領域をコードする配列をさらに含む、請求項1記載のライブラリー。
  12. 前記遺伝的パッケージがM13ファージである、請求項1記載のライブラリー。
  13. 前記核酸が、ファージベクターまたはファージミドベクター中にある、請求項1記載のライブラリー。
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