JP5954540B2 - 原子セルモジュール、量子干渉装置、電子機器及び原子セルの磁界制御方法 - Google Patents

原子セルモジュール、量子干渉装置、電子機器及び原子セルの磁界制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、原子セルモジュール、量子干渉装置、電子機器及び原子セルの磁界制御方法に関する。
アルカリ金属原子の一種であるセシウム原子は、図20に示すように、6S1/2の基底準位と、6P1/2、6P3/2の2つの励起準位とを有することが知られている。さらに、6S1/2、6P1/2、6P3/2の各準位は、複数のエネルギー準位に分裂した超微細構造を有している。具体的には、6S1/2はF=3,4の2つの基底準位を持ち、6P1/2はF=3,4の2つの励起準位を持ち、6P3/2はF=2,3,4,5の4つの励起準位を持っている。
例えば、6S1/2のF=3の基底準位にあるセシウム原子は、D2線を吸収することで、6P3/2のF=2,3,4のいずれかの励起準位に遷移することができるが、F=5の励起準位に遷移することはできない。6S1/2のF=4の基底準位にあるセシウム原子は、D2線を吸収することで、6P3/2のF=3,4,5のいずれかの励起準位に遷移することができるが、F=2の励起準位に遷移することはできない。これらは、電気双極子遷移を仮定した場合の遷移選択則による。逆に、6P3/2のF=3,4のいずれかの励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して6S1/2のF=3又はF=4の基底準位(元の基底準位又は他方の基底準位のいずれか)に遷移することができる。ここで、6S1/2のF=3,4の2つの基底準位と6P3/2のF=3,4のいずれかの励起準位からなる3準位(2つの基底準位と1つの励起準位からなる)は、D2線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であることからΛ型3準位と呼ばれる。同様に、6S1/2のF=3,4の2つの基底準位と6P1/2のF=3,4のいずれかの励起準位からなる3準位は、D1線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であるからΛ型3準位を形成する。
これに対して、6P3/2のF=2の励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して必ず6S1/2のF=3の基底準位(元の基底準位)に遷移し、同様に、6P3/2のF=5の励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して必ず6S1/2のF=4の基底準位(元の基底準位)に遷移する。すなわち、6S1/2のF=3,4の2つの基底準位と6P3/2のF=2又はF=5の励起準位からなる3準位は、D2線の吸収・放出によるΛ型の遷移が不可能であることからΛ型3準位を形成しない。なお、セシウム原子以外のアルカリ金属原子も、同様に、Λ型3準位を形成する2つの基底準位と励起準位を有することが知られている。
ところで、気体状のアルカリ金属原子に、Λ型3準位を形成する第1の基底準位(セシウム原子の場合、6S1/2のF=3の基底準位)と励起準位(セシウム原子の場合、例えば6P3/2のF=4の励起準位)とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光1とする)と、第2の基底準位(セシウム原子の場合、6S1/2のF=4の基底準位)と励起準位とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光2とする)とを同時に照射すると、2つの基底準位の重ね合わせ状態、即ち量子コヒーレンス状態(暗状態)になり、励起準位への励起が停止する電磁誘起透過(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象(CPT(Coherent Population Trapping)と呼ばれることもある)が起こることが知られている。このEIT現象を起こす共鳴光対(共鳴光1と共鳴光2)の周波数差はアルカリ金属原子の2つの基底準位の
エネルギー差ΔE12に相当する周波数と正確に一致する。例えば、セシウム原子は、2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数は9.192631770GHzであるので、セシウム原子に、周波数差が9.192631770GHzの2種類のD1線又はD2線のレーザー光を同時に照射すると、EIT現象が起こる。
従って、図21に示すように、周波数がfの光と周波数がfの光を気体状のアルカリ金属原子に同時に照射したとき、この2光波が共鳴光対となってアルカリ金属原子がEIT現象を起こすか否かでアルカリ金属原子を透過する光の強度が急峻に変化する。この急峻に変化する透過光の強度を示す信号はEIT信号(共鳴信号)と呼ばれ、共鳴光対の周波数差f−fがΔE12に相当する周波数f12と正確に一致するときにEIT信号のレベルがピーク値を示す。そこで、気体状のアルカリ金属原子を封入した原子セル(ガスセル)に2光波を照射し、光検出器によりEIT信号のピークトップを検出するように、すなわち、2光波の周波数差f−fがΔE12に相当する周波数f12と正確に一致するように制御することで、高精度な発振器を実現することができる。このような原子発振器に関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
米国特許第6320472号明細書
ところで、アルカリ金属原子に磁場がかかると各エネルギー準位がゼーマン分裂する。例えば、図22(A)に示すように、セシウム原子の場合、6S1/2,F=3の基底準位や6P3/2,F=3の励起準位は、磁気量子数mF=0,±1,±2,±3に対応する7つの準位に分裂し、6S1/2,F=4の基底準位や6P3/2,F=4の励起準位は、磁気量子数mF=0,±1,±2,±3,±4に対応する9つの準位に分裂する。そして、アルカリ金属原子は、2つの基底準位の磁気量子数mFが同じゼーマン準位間のエネルギー差(周波数差)に相当する周波数差の2光波を共鳴光対としてEIT現象を起こす。すなわち、アルカリ金属原子に磁場がかかった状態では、2光波の周波数差をスイープすると、アルカリ金属原子を透過する光の強度に複数のピーク、すなわち複数のEIT信号が観測される。例えば、図22(B)に示すように、セシウム原子の場合、磁気量子数mF=0,±1,±2,±3に対応する7つのEIT信号が観測される。図22(B)に示すように、一般に、mF=0に対応するEIT信号の強度が最も高いので、多くの原子発振器では、ガスセルに一様な定常磁場を印加し、mF=0に対応するEIT信号が発生するように、共鳴光対の周波数差が制御されている。しかしながら、原子発振器を小型化すると、ガスセル周辺の容積が小さくなり、ガスセルに安定した磁場をかけることが難しくなる。また、ガスセルにはある程度の温度をかける必要があり、ヒーターを併設するが、外気温度の変化に応じてヒーター電流が変動するため、ヒーター電流により発生する磁場も変動する。その結果、外気温度の変動によりガスセルに印加される磁場が変動することになる。そうすると、図23に示すように、2つの基底準位の磁気量子数mFが同じゼーマン準位間のエネルギー差(周波数差)は、磁場の変動に対して2次関数的に変動するため、原子発振器の周波数安定度(特に温度特性)が劣化するという問題が生じる。さらに、原子発振器を小型にするとガスセルが小さくなり、EIT現象を起こす原子の総量が減ることでEIT信号の強度が小さくなってしまうという問題もある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、原子セルの内部に発生する磁界の少なくとも一部を打ち消すことで原子に対する共鳴光の周波数変動幅を低減することができる原子セルモジュール及び原子セルの磁界制御方法、並びに、当該原子セルモジュールを用いた周波数安定度の高い量子干渉装置及
び電子機器を提供することができる。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係る原子セルモジュールは、原子が封入されている原子セルと、電流が流れることにより発熱し、前記原子セルを加熱する発熱部と、前記原子セルの内部に磁界を発生させる磁界発生部と、を含み、前記磁界発生部により発生する前記原子セルの内部の所定位置の磁界が、前記発熱部に流れる電流に基づいて発生する前記所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含む。
前記所定位置は、前記原子セルの内部の光路上の位置であるようにしてもよい。また、前記磁界発生部により発生する前記原子セルの内部の光路上の所定位置の磁界が、前記発熱部に流れる電流に基づいて発生する前記所定位置の磁界と逆向きかつ同じ強度になるようにしてもよい。
本適用例に係る原子セルモジュールによれば、発熱部に流れる電流に基づいて原子セル内部に発生する磁界の少なくとも一部を、磁界発生部により発生する磁界によって打ち消すことができる。従って、発熱部に流れる電流の変動により原子セル内部の磁界強度が変動する範囲をより小さくすることができ、その結果、原子セルに封入されている原子に対する共鳴光の周波数変動幅をより小さくすることができる。
[適用例2]
上記適用例に係る原子セルモジュールにおいて、前記磁界発生部は、前記発熱部に流れる電流の少なくとも一部が流れることにより、前記原子セルの内部に磁界を発生させるようにしてもよい。
本適用例に係る原子セルモジュールによれば、発熱部に流れる電流が変動しても、それに応じて磁界発生部が発生させる磁界も変動するので、発熱部に流れる電流に基づいて発生する磁界の少なくとも一部を効果的に打ち消すことができる。
[適用例3]
上記適用例に係る原子セルモジュールは、前記原子セル、前記発熱部及び前記磁界発生部を外部の磁場から遮蔽する磁気遮蔽部を含むようにしてもよい。
本適用例に係る原子セルモジュールによれば、原子セルモジュールの外部磁場の影響による共鳴光の周波数変動幅の増加を抑制することができる。
[適用例4]
本適用例に係る量子干渉装置は、上記のいずれかの原子セルモジュールと、共鳴光を含む光を発生させ、前記原子セルに照射する光発生部と、前記原子セルを透過した光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出信号に基づいて前記共鳴光の周波数を制御する制御部と、を含み、前記共鳴光によって前記原子に量子干渉状態を生じさせる。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、原子に対する共鳴光の周波数変動幅をより小さくする原子セルモジュールを用いることで、光検出部の検出信号に、縮退された信号強度の高いEIT信号を発生させることができる。従って、この縮退されたEIT信号にロックするようにフィードバック制御を行うことで、周波数安定度の高い量子干渉装置を実現
することができる。
[適用例5]
上記適用例に係る量子干渉装置は、前記発熱部に流れる電流の変動に起因する前記所定位置の磁界の変動量を低減させるように、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御する磁界制御部を含むようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、発熱部に流れる電流が変動しても、原子セル内部の磁界の変動量を低減することで縮退された信号強度の高いEIT信号を安定して発生させることができる。
[適用例6]
上記適用例に係る量子干渉装置は、前記発熱部に流れる電流に基づいて発生する磁界の強度変化を検出可能な位置に設けられている磁気検出部を含み、前記磁界制御部は、前記磁気検出部の検出信号に応じて、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御するようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、発熱部に流れる電流の変動に起因して磁界強度が変動しても、磁気検出部により磁界の強度変化を検出し、検出結果に応じて原子セル内部の磁界の変動量を低減させることができるので、縮退された信号強度の高いEIT信号を安定して発生させることができる。
また、本適用例に係る量子干渉装置によれば、磁気検出部が原子セルモジュールの外部磁場による磁界も含めて検出するので、外部磁場が変動しても縮退された信号強度の高いEIT信号を安定して発生させることができる。
[適用例7]
上記適用例に係る量子干渉装置において、前記磁気検出部は、前記発熱部に接するように配置されているようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、温度がほぼ一定に保たれる発熱部に接するように磁気検出部を配置することで、磁気検出部の温度特性を補正しなくても高い周波数安定度を実現することができる。
[適用例8]
上記適用例に係る量子干渉装置は、前記発熱部に流れる電流を検出する電流検出部を含み、前記磁界制御部は、前記電流検出部の検出信号に応じて、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御するようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、発熱部に流れる電流の変動に起因して磁界強度が変動しても、電流検出部により発熱部に流れる電流を検出し、検出結果に応じて原子セル内部の磁界の変動量を低減させることができるので、縮退された信号強度の高いEIT信号を安定して発生させることができる。
[適用例9]
本適用例に係る電子機器は、上記のいずれかの量子干渉装置を備える。
[適用例10]
本適用例に係る原子セルの磁界制御方法は、原子が封入されている原子セルの内部の磁界を制御する原子セルの磁界制御方法であって、前記原子セルを加熱する発熱部に流れる
電流に基づいて発生する前記原子セルの内部の所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含む磁界を、磁界発生部により前記所定位置に発生させる。
第1実施形態の原子発振器の機能ブロック図。 第1実施形態の原子発振器の具体的な構成例を示す図。 第1実施形態におけるガスセルモジュールの構造の一例を示す図。 半導体レーザーの出射光の周波数スペクトラムの一例を示す概略図。 ヒーター及びコイルに流れる電流の向きとガスセルの内部に発生する磁界の向きの関係の一例を示す図。 図6(A)は外気温度とヒーター電流の関係を示す図であり、図6(B)はヒーター電流と磁界強度の関係を示す図であり、図6(C)はコイル電流と磁界強度の関係を示す図。 ガスセルモジュールの調整方法の一例を示すフローチャート図。 図8(A)は分裂したEIT信号の一例を示す図であり、図8(B)は縮退したEIT信号の一例を示す図。 第2実施形態の原子発振器の機能ブロック図。 第2実施形態の原子発振器の具体的な構成例を示す図。 第2実施形態におけるガスセルモジュールの構造の一例を示す図。 制御情報の作成方法の一例を示すフローチャート図。 第3実施形態の原子発振器の機能ブロック図。 第3実施形態の原子発振器の具体的な構成例を示す図。 第3実施形態におけるガスセルモジュールの構造の一例を示す図。 制御情報の作成方法の一例を示すフローチャート図。 本実施形態の電子機器の機能ブロック図。 本実施形態の電子機器の模式図。 変形例における半導体レーザーの出射光の周波数スペクトルを示す概略図。 セシウム原子のエネルギー準位を模式的に示す図。 EIT信号の一例を示す概略図。 図22(A)はゼーマン分裂したエネルギー準位を示す図であり、図22(B)は分裂したEIT信号の一例を示す図。 磁界強度と共鳴光対の周波数差の関係を示す図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、量子干渉装置の一例である原子発振器を例に挙げて説明する。
1.原子発振器
1−1.第1実施形態
[原子発振器の機能構成]
図1は、第1実施形態の原子発振器の機能ブロック図である。図1に示すように、第1実施形態の原子発振器1は、原子セルモジュール10、光発生部20、光検出部30及び制御部40を含んで構成されている。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図1の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
原子セルモジュール10は、原子セル11、発熱部12、磁界発生部13及び温度検出部14を含んで構成されている。原子セルモジュール10は、磁気遮蔽部15をさらに含んでいてもよい。
原子セル11は、ガラス等の透明部材でできた容器中にΛ型3準位を有する原子(例えば、ナトリウム(Na)原子、ルビジウム(Rb)原子、セシウム(Cs)原子等のアルカリ金属原子)が封入されたものである。原子セル11には、光発生部20が発生させた光が入射し、入射光の一部が原子セル11を透過する。
発熱部12は、電流が流れることにより発熱し、原子セル11を加熱するものである。発熱部12は、例えば、電流量に応じた熱量を発生させるヒーターで実現することができる。例えば、原子セル11の光の入射面及び出射面に、導電性と光透過性を有するヒーターを配置してもよい。このような導電性と光透過性を有するヒーターは、ITO(Indium
Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の透明電極材料を用いて実現することができる。
磁界発生部13は、原子セル11の内部に磁界を発生させるものである。特に、本実施形態では、磁界発生部13は、発熱部12に流れる電流の少なくとも一部が流れることにより、原子セル11の内部に磁界を発生させる。この磁界発生部13により発生する原子セル11の内部の所定位置(例えば、原子セル11の内部の光路上の位置)の磁界は、発熱部12に流れる電流に基づいて発生する当該所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含む。このような磁界発生部13は、例えば、発熱部12の給電線の一部を巻いたコイルで実現することができる。コイルの位置や形状(コイルの巻き数や直径等)、コイルに流す電流の向き(あるいは、コイルを巻く方向)や電流の大きさを変更することで、原子セル11の内部の所定位置における磁界の向きや大きさを調整することができる。例えば、原子セル11の内部における光路上の所定位置において、発熱部12により発生する磁界と磁界発生部13により発生する磁界が互いに打ち消しあうように(磁界強度が0に近づくように)調整してもよい。
温度検出部14は、所定の位置に配置され、温度を検出する。温度検出部14は、例えば、発熱部12又は原子セル11に接するように配置されていてもよい。温度検出部14は、例えば、サーミスターや熱電対等の温度センサーで実現することができる。
磁気遮蔽部15は、少なくとも、原子セル11、発熱部12及び磁界発生部13を外部の磁場から遮蔽し、さらに温度検出部14も外部の磁場から遮蔽してもよい。
光発生部20は、原子セル11に封入されている原子を共鳴させる共鳴光を含む光を発生させ、原子セル11に照射する。光発生部20は、例えば、半導体レーザーで実現することができる。半導体レーザーとしては、端面発光レーザー(E dge Emitting Laser)や、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーなどを用いることができる。
光検出部30は、原子セル11を透過した光を検出する。光検出部30は、例えば、受光した光の強度に応じた検出信号を出力するフォトダイオード(PD:Photo Diode)を用いて実現することができる。
制御部40は、発熱制御部41及び発振制御部42を含んで構成されており、例えば、汎用のマイクロプロセッサーや専用回路で実現することができる。
発熱制御部41は、温度検出部14の検出信号に応じて発熱部12に流れる電流を制御
する。この発熱制御部41により、原子セル11の内部温度をほぼ一定に保つように、発熱部12の発熱量が制御される。
発振制御部42は、光検出部30の検出信号に基づいて、光発生部20が発生させる光の周波数が制御する。この発振制御部42により、光発生部20が共鳴光を発生させるように制御される。
なお、このような原子発振器としては、例えば、光発生部20に、原子セル11に封入されている原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対を発生させるように制御するものであってもよいし、原子セル11を空洞共振器(マイクロ波キャビティー)に収容し、光発生部20に、原子セル11に封入されている原子に対する共鳴光を発生させるように制御するとともに、空洞共振器にマイクロ波を印加することで発生する光マイクロ2重共鳴現象を利用するものであってもよい。
[原子発振器の具体的構成]
図2は、第1実施形態の原子発振器1の具体的な構成例を示す図である。図2に示すように、原子発振器1は、ガスセルモジュール100、半導体レーザー200、光検出器210、検波回路220、変調回路230、低周波発振器240、検波回路250、電圧制御水晶発振器(VCXO)260、変調回路270、低周波発振器280、周波数変換回路290、駆動回路300及びヒーター電流制御回路310を含んで構成されている。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図2の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
ガスセルモジュール100は、図1の原子セルモジュール10に対応し、ガスセル110、ヒーター120a,120b、コイル130a,130b、温度センサー140及び磁気シールド150を含んで構成されている。図3(A)及び図3(B)に、ガスセルモジュール100の構造の一例を示す。図3(A)は、ガスセルモジュール100の斜視図であり、図3(B)は、ガスセルモジュール100の側面図である。図3(A)及び図3(B)において、説明の便宜上、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)を併記しており、図3(B)は、X軸の正方向から見たガスセルモジュール100の側面図である。
ガスセル110は、図1の原子セル11に対応し、ガラス等の透明部材でできた容器中に気体状のアルカリ金属原子が封入されたものである。本実施形態では、ガスセル110は、直方体の形状であり、Z軸と直交する一方の面(入射面)111の所定位置(例えば中心点)から光が入射し、ガスセル110を透過した光が他方の面(出射面)112の所定位置(例えば中心点)から出射する。なお、ガスセル110は、円柱等の他の形状であってもよい。
2つのヒーター120a,120bは、ともに平板形状であり、ガスセル110の入射面111と出射面112にそれぞれ重なるように設けられている。ヒーター120aの両端には、それぞれ電極121a及び122aが設けられており、本実施形態では、電極121aから電極122aの向きに電流が流れることによりヒーター120aが発熱し、ガスセル110を加熱する。ヒーター120bの両端には、それぞれ電極121b及び122bが設けられており、本実施形態では、電極122bから電極121bの向きに電流が流れることにより発熱し、ガスセル110を加熱する。本実施形態では、ヒーター120a,120bは、透明導電膜を用いて構成されており、ヒーター120aを透過した光がガスセル110に入射し、ガスセル110を透過した光がヒーター120bを透過して出射する。この2つのヒーター120a,120bは、図1の発熱部12に対応し、ガスセル110の内部には、ヒーター120a,120bに流れる電流に応じた磁界が発生する。
温度センサー140は、図1の温度検出部14に対応し、本実施形態では、ヒーター120bの表面に配置されている。ただし、温度センサー140を、ヒーター120a又はガスセル110の表面に配置してもよい。
2つのコイル130a,130bは、ガスセル110の入射面111と出射面112の両方に直交する(Y軸と直交する)2つの面113,114とそれぞれ対向するように配置されている。コイル130aの一端は、ヒーター120aの電極121aと接続されている。また、コイル130bの一端は、ヒーター120aの電極122aと接続されている。そして、図2のヒーター電流制御回路310の制御により、温度センサー140の出力信号に応じた大きさの電流が、コイル130aを流れた後、ヒーター120aを電極121aから電極122aまで流れ、さらにコイル130bを流れる。あるいは、温度センサー140の出力信号に応じた大きさの電流が、コイル130bを流れた後、ヒーター120aを電極122aから電極121aまで流れ、さらにコイル130aを流れる。この2つのコイル130a,130bは、図1の磁界発生部13に対応し、当該2つのコイル130a,130bに流れる電流によりガスセル110の内部の所定位置に、2つのヒーター120a,120bに流れる電流により発生する磁界と逆向きの磁界を発生させるように、その位置や形状(巻き数や直径)が調整されている。
なお、本実施形態では、コイル130a,130bにはヒーター120aに流れる電流の全部が流れるが、ヒーター120aに流れる電流の一部のみを分流してコイル130a,130bに流すような構造にしてもよい。
また、本実施形態では、コイル130a,130bは、ヒーター120bと電気的に接続されておらず、ヒーター120bには、温度センサー140の出力信号に応じた大きさの電流が、電極122bから電極121bの向きあるいはその逆向きに、ヒーター電流制御回路310から直接供給される。ただし、ヒーター120bは、コイル130a,130bの少なくとも一方と電気的に接続されていてもよい。
ガスセル110、ヒーター120a,120b、コイル130a,130b及び温度センサー140は、磁気シールド150で覆われている。磁気シールド150は、図1の磁気遮蔽部15に対応する。なお、磁気シールド150は、通常、透明色ではないが、図3(A)では、ガスセルモジュール100の構造を示すために、磁気シールド150を透明に図示している。また、図3(B)では、磁気シールド150の図示を省略している。
図2に戻り、半導体レーザー200は、図1の光発生部20に対応し、ガスセル110に含まれるアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる2光波を含む光を発生させる。半導体レーザー200が発生させた光は、ガスセル110に入射する。
光検出器210は、図1の光検出部30に対応し、ガスセル110を透過した光が入射し、入射した光の強度に応じた検出信号を出力する。光検出器210の出力信号は検波回路220と検波回路250に入力される。
検波回路220は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器240の発振信号を用いて光検出器210の出力信号を同期検波する。変調回路230は、検波回路220による同期検波を可能とするために、低周波発振器240の発振信号(検波回路220に供給される発振信号と同じ信号)を変調信号として検波回路220の出力信号を変調して駆動回路300に出力する。変調回路230は、周波数混合器(ミキサー)、周波数変調(FM:Frequency Modulation)回路、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)回路等により実現することができる。
検波回路250は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器280の発振信号を用いて光検出器210の出力信号を同期検波する。そして、検波回路250の出力信号の大きさに応じて、電圧制御水晶発振器(VCXO)260の発振周波数が微調整される。電圧制御水晶発振器(VCXO)260は、例えば、数MHz〜数10MHz程度で発振する。
変調回路270は、検波回路250による同期検波を可能とするために、低周波発振器280の発振信号(検波回路250に供給される発振信号と同じ信号)を変調信号として電圧制御水晶発振器(VCXO)260の出力信号を変調する。変調回路270は、周波数混合器(ミキサー)、周波数変調(FM)回路、振幅変調(AM)回路等により実現することができる。
周波数変換回路290は、一定の周波数変換率で変調回路270の出力信号を周波数変換して駆動回路300に出力する。周波数変換回路290は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路により実現することができる。
駆動回路300は、半導体レーザー200のバイアス電流を設定するとともに、変調回路230の出力信号に応じて当該バイアス電流を微調整して半導体レーザー200に供給する。すなわち、半導体レーザー200、ガスセル110、光検出器210、検波回路220、変調回路230、駆動回路300を通るフィードバックループ(第1のフィードバックループ)により、半導体レーザー200が発生させる光の中心波長λ(中心周波数f)が微調整される。具体的には、第1のフィードバックループにより、アルカリ金属原子の励起準位と一方の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(=v/f:vは光の速度)、励起準位と他方の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(=v/f)に対して、半導体レーザー200の出射光の中心波長λ(=v/f)が(λ+λ)/2とほぼ一致する(中心周波数fが(f+f)/2とほぼ一致する)ようにフィードバック制御がかかる。
駆動回路300は、さらに、バイアス電流に、周波数変換回路290の出力周波数成分(変調周波数f)の電流(変調電流)を重畳して半導体レーザー200に供給する。この変調電流により、半導体レーザー200に周波数変調がかかり、中心周波数fの光とともに、その両側にそれぞれ周波数がfだけずれた周波数f±f、f±2f、・・・の光を発生させる。そして、半導体レーザー200、ガスセル110、光検出器210、検波回路250、電圧制御水晶発振器(VCXO)260、変調回路270、周波数変換回路290、駆動回路300を通るフィードバックループ(第2のフィードバックループ)により、周波数f+fの光と周波数f−fの光がガスセル110に封入されているアルカリ金属原子にEIT現象を発生させる共鳴光対となるように微調整される。例えば、アルカリ金属原子がセシウム原子であれば、ΔE12に相当する周波数が9.192631770GHzなので、周波数変換回路290の出力信号の周波数が4.596315885GHzと一致した状態で安定する。図4に、半導体レーザー200の出射光の周波数スペクトラムの一例を示す。図4において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。
なお、検波回路220、変調回路230、低周波発振器240、検波回路250、電圧制御水晶発振器(VCXO)260、変調回路270、低周波発振器280、周波数変換回路290、駆動回路300により構成される回路は、図1の発振制御部42に対応する。
ヒーター電流制御回路310は、図1の発熱制御部41に対応し、ガスセル110の温
度を一定に保つように、温度センサー140の検出温度に応じてヒーター120a,120bに流す電流を制御する。具体的には、ヒーター電流制御回路310は、外気温度が上昇することで温度センサー140の検出温度がわずかに上昇するとヒーター120a,120bに流す電流を減少させ、逆に外気温度が低下することで温度センサー140の検出温度がわずかに低下するとヒーター120a,120bに流す電流を増加させる。
ヒーター120a,120bに流れる電流はコイル130a,130bにも流れるので、ガスセル110の内部には、ヒーター120a,120bに流れる電流(ヒーター電流)による磁界とコイル130a,130bに流れる電流(コイル電流)による磁界が発生する。図5は、ヒーター120a,120b及びコイル130a,130bに流れる電流の向きとガスセル110の内部に発生する磁界の向きの関係の一例を示す図である。図5は、図3(A)及び図3(B)のガスセルモジュール100をYZ平面に平行かつ光路を含む面で切り、X軸の正方向から見た断面図である。なお、図5では、磁気シールド150の図示を省略している。
図5に示すように、ヒーター120aには、例えば、+X方向に(電極121aから電極122aに)電流が流れ、これによりガスセル110の内部の光路上にあるP点(例えば、ガスセル110の内部の中心位置)には+Y方向の磁界G1が発生する。一方、ヒーター120bには、−X方向に(電極122bから電極121bに)電流が流れ、これによりP点には+Y方向の磁界G2が発生する。
コイル130aには、例えば、+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G3が発生する。同様に、コイル130bにも+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G4が発生する。
このように、P点において、コイル130a,130bに流れる電流(コイル電流)により発生する磁界G3,G4の向きは、ヒーター120a,120bに流れる電流(ヒーター電流)により発生する磁界G1,G2の向きと逆向きになる。
ここで、ヒーター電流は、ガスセル110をほぼ一定温度に保つために、温度の上昇に対してほぼ線形に減少する(図6(A)参照)。磁界G1+G2は、ヒーター電流の増加に対してほぼ線形に増加し(図6(B)参照)、磁界G3+G4は、コイル電流の増加に対してほぼ線形に増加する(図6(C)参照)。本実施形態では、磁界G3,G4の向きが磁界G1,G2と逆向きになり、かつ、磁界G3+G4が磁界G1+G2とほぼ一致するように、ガスセルモジュール100(特に、コイル130a,130bの位置や形状)が調整されている。
[ガスセルモジュールの調整方法]
図7は、ガスセルモジュール100の調整方法の一例を示すフローチャート図である。
まず、ヒーター120a,120bに流すヒーター電流を所定値に設定する(S10)。
次に、周波数差をスイープしながら2光波を原子セルに照射し、原子セルの透過光の検出信号をモニターする(S12)。例えば図5のP点において、ヒーター電流により発生する磁場G1+G2の強度とコイル電流により発生する磁場G3+G4の強度が異なっていれば、その強度差に応じた周波数間隔でEIT信号が分裂する(図8(A)参照)。一方、磁場G1+G2の強度と磁場G3+G4の強度がほぼ一致すれば、EIT信号は1つに縮退する(図8(B)参照)。
ステップS12のモニターの結果、EIT信号が縮退していない場合(S14のN)、分裂したEIT信号に応じて、コイル130a,130bの巻き数、直径、位置の一部または全部を変更し(S18)、ステップS12のモニターを再び行う。
ステップS12のモニターの結果、EIT信号が縮退している場合(S14のY)、EIT信号の幅が許容範囲でなければ(S16のN)、コイル130a,130bの巻き数、直径、位置の一部または全部を変更し(S18)、ステップS12のモニターを再び行う。一方、EIT信号の幅が許容範囲であれば(S16の)、コイル130a,130bの巻き数、直径、位置を固定し(S20)、ガスセルモジュール100の調整を終了する。
以上に説明したように、第1実施形態の原子発振器によれば、例えば図7のフローチャートに従ってガスセルモジュール100が調整されており、ヒーター電流が所定値の時、ガスセル110の内部の光路上の所定位置(例えば、ガスセル110の内部の中心位置)において、コイル130a,130bに流れるコイル電流により発生する磁界が、ヒーター120a,120bに流れる電流により発生する磁界と逆向きかつほぼ同じ強度になって互いに打ち消しあい、その結果、縮退された信号強度の高いEIT信号が得られる。本実施形態では、外気温度の変動に応じてヒーター電流による磁界強度が変動しても、コイ
ル電流による磁界強度も同様に変動して打ち消しあうので、外気温度によらず縮退された信号強度の高いEIT信号が得られる。従って、この縮退されたEIT信号にロックするようにフィードバック制御を行うことで、周波数安定度の高い原子発振器を実現することができる。
1−2.第2実施形態
[原子発振器の機能構成]
図9は、第2実施形態の原子発振器の機能ブロック図である。図9において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図9の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
図9に示すように、第2実施形態の原子発振器1では、第1実施形態の原子発振器1に対して、原子セルモジュール10に磁気検出部16が追加されるとともに、制御部40に磁界制御部43が追加されている。また、磁界発生部13の機能が第1実施形態と異なる。
磁界発生部13は、原子セル11の内部に磁界を発生させるものであり、磁界発生部13により発生する原子セル11の内部の所定位置(例えば、原子セル11の内部の光路上の位置)の磁界が、発熱部12に流れる電流に基づいて発生する当該所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含むように、磁界発生部13の形状や配置が決定される。このような磁界発生部13は、例えば、コイルで実現することができる。コイルの位置や形状(コイルの巻き数や直径等)、コイルに流す電流の向き(あるいは、コイルを巻く方向)や電流の大きさを変更することで、原子セル11の内部の所定位置における磁界の向きや大きさを調整することができる。例えば、原子セル11の内部における光路上の所定位置において、発熱部12により発生する磁界と磁界発生部13により発生する磁界が互いに打ち消しあうように(磁界強度が0に近づくように)調整してもよい。
磁気検出部16は、発熱部12に流れる電流に基づいて発生する磁界の強度変化を検出可能な位置に設けられている。磁気検出部16は、例えば、発熱部12又は原子セル11に接するように配置されていてもよい。磁気検出部16は、例えば、コイルやホール素子等の磁気センサーで実現することができる。
磁界制御部43は、発熱部12に流れる電流の変動に起因する原子セル11の内部における所定位置の磁界の変動量を低減させるように、磁界発生部13が発生させる磁界を制御する。特に、本実施形態では、磁界制御部43は、磁気検出部16の検出信号に応じて、磁界発生部13が発生させる磁界を制御する。例えば、磁界制御部43は、磁気検出部16が検出する磁界が強いほど、磁界発生部13が発生させる磁界を強くするように制御してもよい。
第2実施形態の原子発振器1のその他の機能構成については、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
[原子発振器の具体的構成]
図10は、第2実施形態の原子発振器1の具体的な構成例を示す図である。図10において、図2と同じ構成要素には同じ符号を付している。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図10の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
図10に示すように、第2実施形態の原子発振器1では、第1実施形態の原子発振器1に対して、コイル電流制御回路320が追加されるとともに、ガスセルモジュール100に磁気センサー160が追加されている。図11(A)及び図11(B)に、本実施形態におけるガスセルモジュール100の構造の一例を示す。図11(A)は、ガスセルモジュール100の斜視図であり、図11(B)は、ガスセルモジュール100の側面図である。図11(A)及び図11(B)において、説明の便宜上、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)を併記しており、図11(B)は、X軸の正方向から見たガスセルモジュール100の側面図である。
ガスセル110、ヒーター120a,120b及び温度センサー140の構造及び配置は、第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
磁気センサー160は、図9の磁気検出部16に対応し、磁気シールド150の内部の所定位置に設けられている。本実施形態では、磁気センサー160は、ヒーター120bの表面に配置されているが、ヒーター120a又はガスセル110の表面に配置してもよいし、ガスセル110の内部に配置してもよい。ヒーター120a,120bの表面の温度やガスセル110の表面及び内部の温度はほぼ一定に保たれるので、磁気センサー160をこれらのいずれかに配置することで磁気センサー160の温度特性を補正する必要がなくなる。
2つのコイル130a,130bは、ガスセル110の入射面111と出射面112の両方に直交する(Y軸と直交する)2つの面113,114とそれぞれ対向するように配置されているが、第1実施形態と異なり、ヒーター120a,120bと電気的に接続されていない。コイル130a,130bには、図10のコイル電流制御回路320の制御により、磁気センサー160の出力信号に応じた大きさの電流が流れる。この2つのコイル130a,130bは、図9の磁界発生部13に対応し、当該2つのコイル130a,130bに流れる電流によりガスセル110の内部の所定位置に、2つのヒーター120a,120bに流れる電流により発生する磁界と逆向きの磁界を発生させるように、その位置や形状(巻き数や直径)が調整されている。
図10に戻り、メモリー330は、不揮発性のメモリーであり、制御情報332が記憶されている。制御情報332は、磁気センサー160の検出値とコイル電流の設定値との対応関係が定義された情報である。
コイル電流制御回路320は、図9の磁界制御部43に対応し、磁気センサー160の検出値と制御情報332に基づいて、コイル130a,130bに流す電流(コイル電流)を制御する。具体的には、コイル電流制御回路320は、磁気センサー160の検出値が所定量以上変化した場合、コイル電流を、制御情報332において磁気センサー160の検出値に対応づけられている設定値に変更する。制御情報332において磁気センサー160の検出値に対応するコイル電流の設定値が定義されていない場合は、線形補間等の手法を用いてコイル電流の設定値を算出すればよい。
第2実施形態の原子発振器1のその他の具体的構成については、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
ガスセル110の内部には、ヒーター電流による磁界とコイル電流による磁界が発生する。本実施形態では、ヒーター120aには、例えば、+X方向に(電極121aから電極122aに)電流が流れ、これによりガスセル110の内部の光路上にあるP点(例えば、ガスセル110の内部の中心位置)には+Y方向の磁界G1が発生する。一方、ヒーター120bには、−X方向に(電極122bから電極121bに)電流が流れ、これによりP点には+Y方向の磁界G2が発生する。
コイル130aには、例えば、+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G3が発生する。同様に、コイル130bにも+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G4が発生する。
なお、ヒーター電流とコイル電流の向き及び磁界G1,G2,G3,G4の向きは、図5と同じであるため、その図示を省略する。
このように、P点において、コイル130a,130bに流れる電流(コイル電流)により発生する磁界G3,G4の向きは、ヒーター120a,120bに流れる電流(ヒーター電流)により発生する磁界G1,G2の向きと逆向きになる。本実施形態では、コイル電流制御回路320により、外気温度の変動範囲に対して常に磁界G3+G4が磁界G1+G2とほぼ一致するようにコイル電流が制御される。
[制御情報の作成方法]
図12は、制御情報332の作成方法の一例を示すフローチャート図である。
まず、ヒーター120a,120bに流すヒーター電流とコイル130a,130bに流すコイル電流を所定値に設定する(S100)。
次に、周波数差をスイープしながら2光波を原子セルに照射し、原子セルの透過光の検出信号をモニターする(S102)。
ステップS102のモニターの結果、EIT信号が縮退していない場合(S104のN)、分裂したEIT信号に応じて、コイル電流の設定値を変更し(S108)、ステップS102のモニターを再び行う。
ステップS102のモニターの結果、EIT信号が縮退している場合(S104のY)、EIT信号の幅が許容範囲でなければ(S106のN)、コイル電流の設定値を変更し(S108)、ステップS102のモニターを再び行う。一方、EIT信号の幅が許容範囲であれば(S106の)、磁気センサー160の検出値とコイル電流の設定値を取得する(S110)。
そして、所定数のヒーター電流値に対してステップS102〜S110の処理が未終了であれば(S112のN)、ヒーター電流を次の所定値に設定し(S114)、ステップS102〜S110の処理を行う。
一方、所定数のヒーター電流値に対してステップS102〜S110の処理が終了すれば(S112のY)、ステップS110で取得した磁気センサー160の検出値とコイル電流の設定値とを対応づけて制御情報332を作成し、メモリー330に記憶する(S116)し、処理を終了する。
以上に説明したように、第2実施形態の原子発振器によれば、例えば図12のフローチャートに従って作成した制御情報332に従い、磁気センサー160の検出値に応じてコイル電流の設定値を変更することで、外気温度の変動に応じてヒーター電流による磁界強度が変動しても、コイル電流による磁界強度も同様に変動して打ち消しあうので、外気温度によらず縮退された信号強度の高いEIT信号が得られる。
また、原子発振器1が小型化されると、ガスセルモジュール100に十分な磁気シールド150を設けることができない場合もあるが、本実施形態の原子発振器によれば、磁気センサー160はヒーター電流やコイル電流による磁界だけでなく外部磁場による磁界も含めて検出する。従って、制御情報332を用いてコイル電流を制御することで、外部磁場が変動しても常に縮退された信号強度の高いEIT信号が得られる。
従って、この縮退されたEIT信号にロックするようにフィードバック制御を行うことで、周波数安定度の高い原子発振器を実現することができる。
1−3.第3実施形態
[原子発振器の機能構成]
図13は、第3実施形態の原子発振器の機能ブロック図である。図13において、図9と同じ構成要素には同じ符号を付している。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図13の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
図13に示すように、第3実施形態の原子発振器1では、第2実施形態の原子発振器1に対して、原子セルモジュール10の磁気検出部16の代わりに制御部40に電流検出部44が追加されている。また、磁界制御部43の機能が第2実施形態と異なる。
電流検出部44は、発熱部12に流れる電流を検出する。
磁界制御部43は、電流検出部44の検出信号に応じて、磁界発生部13が発生させる磁界を制御する。例えば、磁界制御部43は、電流検出部44が検出する電流が大きいほど、磁界発生部13が発生させる磁界を強くするように制御してもよい。
第3実施形態の原子発振器1のその他の機能構成については、第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
[原子発振器の具体的構成]
図14は、第3実施形態の原子発振器1の具体的な構成例を示す図である。図14において、図10と同じ構成要素には同じ符号を付している。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図14の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
図14に示すように、第3実施形態の原子発振器1では、第2実施形態の原子発振器1に対して、磁気センサー160の代わりに電流検出回路340が設けられている。
電流検出回路340は、図13の電流検出部44に対応し、ヒーター120a,120bの一方又は両方に流れるヒーター電流を検出する。
本実施形態では、制御情報332は、第2実施形態と異なり、電流検出回路340の検出値とコイル電流の設定値との対応関係が定義された情報である。
コイル電流制御回路320は、図13の磁界制御部43に対応し、電流検出回路340の検出値と制御情報332に基づいて、コイル130a,130bに流す電流(コイル電流)を制御する。具体的には、コイル電流制御回路320は、電流検出回路340の検出
値が所定量以上変化した場合、コイル電流を、制御情報332において電流検出回路340の検出値に対応づけられている設定値に変更する。制御情報332において電流検出回路340の検出値に対応するコイル電流の設定値が定義されていない場合は、線形補間等の手法を用いてコイル電流の設定値を算出すればよい。
なお、図15(A)及び図15(B)に示すように、本実施形態におけるガスセルモジュール100の構造は、磁気センサー160が削除されていることを除き、第2実施形態のガスセルモジュール100(図11(A)及び図11(B)参照)と同じであるため、その説明を省略する。
第3実施形態の原子発振器1のその他の具体的構成については、第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
ガスセル110の内部には、ヒーター電流による磁界とコイル電流による磁界が発生する。本実施形態では、ヒーター120aには、例えば、+X方向に(電極121aから電極122aに)電流が流れ、これによりガスセル110の内部の光路上にあるP点(例えば、ガスセル110の内部の中心位置)には+Y方向の磁界G1が発生する。一方、ヒーター120bには、−X方向に(電極122bから電極121bに)電流が流れ、これによりP点には+Y方向の磁界G2が発生する。
コイル130aには、例えば、+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G3が発生する。同様に、コイル130bにも+Y方向から見て時計周りに電流が流れ、これによりP点には−Y方向の磁界G4が発生する。
なお、ヒーター電流とコイル電流の向き及び磁界G1,G2,G3,G4の向きは、図5と同じであるため、その図示を省略する。
このように、P点において、コイル130a,130bに流れる電流(コイル電流)により発生する磁界G3,G4の向きは、ヒーター120a,120bに流れる電流(ヒーター電流)により発生する磁界G1,G2の向きと逆向きになる。本実施形態では、コイル電流制御回路320により、外気温度の変動範囲に対して常に磁界G3+G4が磁界G1+G2とほぼ一致するようにコイル電流が制御される。
[制御情報の作成方法]
図16は、制御情報332の作成方法の一例を示すフローチャート図である。
まず、ヒーター120a,120bに流すヒーター電流とコイル130a,130bに
流すコイル電流を所定値に設定する(S200)。
次に、周波数差をスイープしながら2光波を原子セルに照射し、原子セルの透過光の検出信号をモニターする(S202)。
ステップS202のモニターの結果、EIT信号が縮退していない場合(S204のN)、分裂したEIT信号に応じて、コイル電流の設定値を変更し(S208)、ステップS202のモニターを再び行う。
ステップS202のモニターの結果、EIT信号が縮退している場合(S204のY)、EIT信号の幅が許容範囲でなければ(S206のN)、コイル電流の設定値を変更し(S208)、ステップS202のモニターを再び行う。一方、EIT信号の幅が許容範囲であれば(S206の)、電流検出回路340の検出値とコイル電流の設定値を取得する(S210)。
そして、所定数のヒーター電流値に対してステップS202〜S210の処理が未終了であれば(S212のN)、ヒーター電流を次の所定値に設定し(S214)、ステップS202〜S210の処理を行う。
一方、所定数のヒーター電流値に対してステップS202〜S210の処理が終了すれば(S212のY)、ステップS210で取得した電流検出回路340の検出値とコイル電流の設定値とを対応づけて制御情報332を作成し、メモリー330に記憶する(S216)し、処理を終了する。
以上に説明したように、第3実施形態の原子発振器によれば、例えば図16のフローチャートに従って作成した制御情報332に従い、電流検出回路340の検出値に応じてコイル電流の設定値を変更することで、外気温度の変動に応じてヒーター電流による磁界強度が変動しても、コイル電流による磁界強度も同様に変動して打ち消しあうので、外気温度によらず縮退された信号強度の高いEIT信号が得られる。従って、この縮退されたEIT信号にロックするようにフィードバック制御を行うことで、周波数安定度の高い原子発振器を実現することができる。
2.電子機器
図17は、本実施形態の電子機器の機能ブロック図である。本実施形態の電子機器400は、クロック生成部410、MPU(Micro Processing Unit)420、操作部430、ROM(Read Only Memory)440、RAM(Random Access Memory)450、通信部460、表示部470、音出力部480を含んで構成されている。なお、本実施形態の電子機器は、図17の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
クロック生成部410は、原子発振器412の発振信号を原振クロックとして、各種のクロック信号を生成する。原子発振器412は、例えば、前述した実施形態の原子発振器1である。
MPU420は、ROM440等に記憶されているプログラムに従い、クロック生成部410が生成する各種のクロック信号を用いて各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、MPU420は、操作部430からの操作信号に応じた各種の処理、外部とデータ通信を行うために通信部460を制御する処理、表示部470に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、音出力部480に各種の音を出力させる処理等を行う。
操作部430は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号をMPU420に出力する。
ROM440は、MPU420が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。
RAM450は、MPU420の作業領域として用いられ、ROM440から読み出されたプログラムやデータ、操作部430から入力されたデータ、PU420が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。
通信部460は、PU420と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
表示部470は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、MPU420から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
音出力部480は、スピーカー等の音を出力する装置である。
原子発振器412として本実施形態の原子発振器1を組み込むことにより、より信頼性の高い電子機器を実現することができる。
図18に、本実施形態の電子機器の一例として原子発振器を搭載した電子機器(携帯端末)の模式図を示す。図18において、携帯端末500(PHS、スマートフォンを含む)(電子機器400の一例)は、複数の操作ボタン502(操作部430の一例)、受話口504及び送話口506を備え、操作ボタン502と受話口504との間には表示部508(表示部470の一例)が配置されている。最近では、このような携帯端末500においてもGPS機能を備えている。そこで、携帯端末500には、GPS回路のクロック源として本実施形態の原子発振器が内蔵されている。
本実施形態の電子機器としては、この他にも種々の電子機器が考えられ、例えば、パーソナルコンピューター(例えば、モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター)、携帯電話機などの移動体端末、ディジタルスチールカメラ、インクジェット式吐出装置(例えば、インクジェットプリンター)、ルーターやスイッチなどのストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲーム用コントローラー、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレーター、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(歩行者位置方位計測)等が挙げられる。
3.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
[変形例1]
図12のフローチャートにおいて、ヒーター電流の設定値を振る代わりに外気温度を振って、磁気センサー160の検出値とコイル電流の設定値とを取得し、制御情報332を
作成するようにしてもよい。同様に、図16のフローチャートにおいて、ヒーター電流の設定値を振る代わりに外気温度を振って、電流検出回路340の検出値とコイル電流の設定値とを取得し、制御情報332を作成するようにしてもよい。
[変形例2]
本実施形態の原子発振器において、第1のフィードバックループにより、半導体レーザー200の出射光の中心波長λ(中心周波数f)が、ガスセル110に封入されたアルカリ金属原子の励起準位と一方の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(周波数f)、励起準位と他方の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(周波数f)に対して、λ又はλとほぼ一致する(中心周波数fがf又はfとほぼ一致する)ように制御するとともに、第2のフィードバックループにより、周波数変換回路290が変調回路270の出力信号をΔE12に相当する周波数に等しい周波数の信号に変換するように変形してもよい。
図19(A)は、中心波長λがλと一致するケースの半導体レーザー200の出射光の周波数スペクトルを示す概略図であり、図19(B)は、中心波長λがλと一致するケースの半導体レーザー200の出射光の周波数スペクトルを示す概略図である。図19(A)及び図19(B)において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。図19(A)の場合は、周波数f+fの光と周波数fの光の周波数差fがΔE12に相当する周波数に等しく、かつ、f+fがfにほぼ等しく、かつ、fがfにほぼ等しいので、周波数f+fの光と周波数fの光がガスセル110に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。一方、図19(B)の場合は、周波数fの光と周波数f−fの光の周波数差fがΔE12に相当する周波数にほぼ等しく、かつ、fがfにほぼ等しく、かつ、f−fがfにほぼ等しいので、周波数fの光と周波数f−fの光がガスセル110に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。
[変形例3]
本実施形態の原子発振器を電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)を用いた構成に変形してもよい。すなわち、半導体レーザー200は、周波数変換回路290の出力信号(変調信号)による変調がかけられず、設定されたバイアス電流に応じた単一周波数fの光を発生させる。この周波数fの光は、電気光学変調器(EOM)に入射し、周波数変換回路290の出力信号(変調信号)によって変調がかけられる。その結果、図4と同様の周波数スペクトルを有する光を発生させることができる。そして、この電気光学変調器(EOM)が発生させる光がガスセル110に照射される。この原子発振器では、半導体レーザー200と電気光学変調器(EOM)による構成が図1、図9又は図13の光発生部20に相当する。
なお、電気光学変調器(EOM)の代わりに、音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)を用いてもよい。
4.応用例
本実施形態又は変形例の原子発振器の構成は、共鳴光によって原子に量子干渉状態を生じさせる様々な量子干渉装置に応用することができる。
[応用例1]
例えば、本実施形態又は変形例の原子発振器において、磁気シールド150を無くすことにより、ガスセルモジュール100の周辺の磁場の変化に追従して電圧制御水晶発振器(VCXO)260の発振周波数が変化する。従って、ガスセルモジュール100の近傍に磁気測定対象物を配置することで磁気センサー(量子干渉装置の一例)を実現すること
ができる。
[応用例2]
また、例えば、本実施形態又は変形例の原子発振器と同様の構成により、極めて安定した金属原子の量子干渉状態(量子コヒーレンス状態)を作り出すことができるので、ガスセル110に入射する共鳴光対を取り出すことで、量子コンピュータ、量子メモリー、量子暗号システム等の量子情報機器に用いる光源(量子干渉装置の一例)を実現することもできる。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 原子発振器、10 原子セルモジュール、11 原子セル、12 発熱部、13 磁界発生部、14 温度検出部、15 磁気遮蔽部、16 磁気検出部、20 光発生部、30 光検出部、40 制御部、41 発熱制御部、42 発振制御部、43 磁界制御部、44 電流検出部、100 ガスセルモジュール、110 ガスセル、120a,120b ヒーター、121a,121b 電極、122a,122b 電極、130a,130b コイル、140 温度センサー、150 磁気シールド、160 磁気センサー、200 半導体レーザー、210 光検出器、220 検波回路、230 変調回路、240 低周波発振器、250 検波回路、260 電圧制御水晶発振器(VCXO)、270 変調回路、280 低周波発振器、290 周波数変換回路、300 駆動回路、310 ヒーター電流制御回路、320 コイル電流制御回路、330 メモリー、332 制御情報、340 電流検出回路、400 電子機器、410 クロック生成部、412 原子発振器、420 MPU、430 操作部、440 ROM、450 RAM、460 通信部、470 表示部、480 音出力部、500 携帯端末、502
操作ボタン、504 受話口、506 送話口、508 表示部

Claims (10)

  1. 原子が封入されている原子セルと、
    電流が流れることにより発熱し、前記原子セルを加熱する発熱部と、
    前記原子セルの内部に磁界を発生させる磁界発生部と、を含み、
    前記磁界発生部により発生する前記原子セルの内部の所定位置の磁界が、前記発熱部に流れる電流に基づいて発生する前記所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含む、原子セルモジュール。
  2. 請求項1において、
    前記磁界発生部は、
    前記発熱部に流れる電流の少なくとも一部が流れることにより、前記原子セルの内部に磁界を発生させる、原子セルモジュール。
  3. 請求項1又は2において、
    前記原子セル、前記発熱部及び前記磁界発生部を外部の磁場から遮蔽する磁気遮蔽部を含む、原子セルモジュール。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の原子セルモジュールと、
    共鳴光を含む光を発生させ、前記原子セルに照射する光発生部と、
    前記原子セルを透過した光を検出する光検出部と、
    前記光検出部の検出信号に基づいて前記共鳴光の周波数を制御する制御部と、を含み、
    前記共鳴光によって前記原子に量子干渉状態を生じさせる、量子干渉装置。
  5. 請求項4において、
    前記発熱部に流れる電流の変動に起因する前記所定位置の磁界の変動量を低減させるように、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御する磁界制御部を含む、量子干渉装置。
  6. 請求項5において、
    前記原子セルモジュールは、
    前記発熱部に流れる電流に基づいて発生する磁界の強度変化を検出可能な位置に設けられている磁気検出部を含み、
    前記磁界制御部は、
    前記磁気検出部の検出信号に応じて、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御する、量子干渉装置。
  7. 請求項6において、
    前記磁気検出部は、前記発熱部に接するように配置されている、量子干渉装置。
  8. 請求項5において、
    前記発熱部に流れる電流を検出する電流検出部を含み、
    前記磁界制御部は、
    前記電流検出部の検出信号に応じて、前記磁界発生部が発生させる磁界を制御する、量子干渉装置。
  9. 請求項4乃至8のいずれか一項に記載の量子干渉装置を備えた、電子機器。
  10. 原子が封入されている原子セルの内部の磁界を制御する原子セルの磁界制御方法であって、
    前記原子セルを加熱する発熱部に流れる電流に基づいて発生する前記原子セルの内部の
    所定位置の磁界と逆向きの磁界成分を含む磁界を、磁界発生部により前記所定位置に発生させる、原子セルの磁界制御方法。
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