JP2010147367A - 原子発振器およびその周波数安定化方法 - Google Patents

原子発振器およびその周波数安定化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外部磁場の変動によっても発振周波数の安定した小型の原子発振器および発振周
波数を安定化する方法を提供すること。
【解決手段】ガスセル2に封入されたアルカリ金属元素に、磁場発生手段4によって磁場
を印加することにより、アルカリ金属元素の基底準位がゼーマン分裂を起こす。ゼーマン
分裂後の基底準位間のエネルギー差△E12のうち一部は、磁場の強度に対して極小値を
持つ。基底準位間のエネルギー差△E12が極小値付近となるように磁場は印加される。
極小値付近では、印加される磁場が変動してもエネルギー差△E12の変動が少なく安定
している。磁場による変動の少ない準位間のエネルギー差△E12を利用して、基準周波
数を制御しているので、磁気シールド等が不要で、発振周波数の安定した小型の原子発振
器10を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子のエネルギー準位間の遷移を利用した原子発振器およびその周波数安定
化方法に関する。
原子のエネルギー準位間の遷移を利用した原子発振器として、二重共鳴方式またはCP
T(Coherent Population Trapping)方式を用いたものが知られている。いずれの方法
も、励起用の電磁波を用い、Cs(セシウム)、Rb(ルビジウム)等のアルカリ金属元
素の2つの基底準位間のエネルギー差を利用して、基準発振源の周波数を安定制御してい
る。
原子のエネルギー準位は、例えば地磁気のような外部磁場による外乱で、ゼーマン分裂
の程度が変化するため、2つの基底準位間のエネルギー差に広がりや揺らぎを生じる。エ
ネルギー差に広がりや揺らぎが生じると、周波数基準も揺らぎ、原子発振器の発振する基
準周波数が不安定となる。
外部磁場による影響を排除するために、二重共鳴ユニットが磁気シールドされている原
子発振器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、約0mT〜1mTの弱磁場をアルカリ金属元素に印加して予めゼーマン分裂させ
、ゼーマン分裂後のエネルギー準位を利用することによって、2つの基底準位間のエネル
ギー差の揺らぎを減少させる装置および方法が知られている(例えば、特許文献2参照)

さらに、アルカリ金属元素に印加する磁場を制御して、アルカリ金属元素に加わる磁場
を一定とする装置および方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許第3349571号公報(3頁、図9、段落番号[0013]) 特公平7−54909号公報(5頁) 米国特許第6265945号明細書(5頁、図3)
しかしながら、磁気シールドを設けると、原子発振器の小型化が困難になる。
図2に、Csの2つの基底準位におけるゼーマン分裂の様子を示した。
図2において、基底準位1および基底準位2は、磁場が印加されることにより、磁気量
子数mfに応じてゼーマン分裂する。分裂後の各準位間のエネルギー差の組み合わせは、
2つの励起用電磁波が互いに同一の偏光の場合の選択則により、同じ磁気量子数mfの準
位間から選ばれる。
図7には、弱磁場をCsに印加した場合の磁場の強度とゼーマン分裂後の基底準位間の
エネルギー差との関係を示した。横軸は磁場の強度であり、縦軸は磁場が印加されていな
い状態での基底準位間のエネルギー差(9.2GHz)を基準値としたときのずれ値を表
している。mfは、選択可能な磁気量子数を表している。
図7において、約0mT〜1mTの弱磁場を印加してもゼーマン分裂前の基準値からの
ずれが少なく、0.5mT程度の地磁気の影響で、ゼーマン分裂の程度が変化し、エネル
ギー差に広がりや揺らぎを生じることがわかる。
また、ゼーマン分裂後の磁気量子数mf=0におけるずれ値は、厳密には磁場の強度に
対してわずかに傾いており変化する。したがって、弱磁場を印加した状態で、磁気量子数
mf=0の2つの基底準位間のエネルギー差を利用しても、磁場変動によって2つのエネ
ルギー準位間の遷移エネルギーは変化し、揺らぎが生じる。
さらに、弱磁場における磁場の安定制御は困難である。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
電磁波を発生する電磁波発生手段と、前記電磁波が入射するアルカリ金属元素が封入さ
れたガスセルと、前記アルカリ金属元素がゼーマン分裂したときの基底準位間のエネルギ
ー差△E12が、磁場の強度変化に対して極小値付近となるような磁場を、前記アルカリ
金属元素に印加する磁場発生手段と、基準周波数の信号を発振し、該基準周波数から前記
エネルギー差△E12に相当する周波数の発振信号を生成する基準発振源と、前記エネル
ギー差△E12に相当する周波数の発振信号により前記電磁波を変調する電磁波変調手段
と、前記ガスセルを透過した透過電磁波を検出する電磁波検出手段と、前記電磁波検出手
段で検出された前記透過電磁波の強度分布が一定になるように、前記基準発振源の前記基
準周波数を制御する基準発振周波数制御手段とを備えたことを特徴とする原子発振器。
この適用例によれば、ガスセルに封入されたアルカリ金属元素に、磁場発生手段によっ
て磁場を印加することにより、アルカリ金属元素の基底準位がゼーマン分裂を起こす。ゼ
ーマン分裂後の基底準位間のエネルギー差△E12のうち一部は、磁場の強度に対して極
小値を持つ。ここで、基底準位間のエネルギー差△E12が極小値付近となるように磁場
は印加される。極小値付近では、印加される磁場が変動してもエネルギー差△E12の変
動が少なく安定している。
極小値付近のエネルギー差△E12に相当する周波数になるように逓倍された基準周波
数が重畳された電磁波が、ゼーマン分裂後のアルカリ金属元素が封入されたガスセルに入
射される。入射した電磁波は基底準位間のエネルギー差△E12に応じて吸収され透過す
る。ここで、電磁波検出手段で検出される透過電磁波の強度分布が一定になるように基準
発振周波数制御手段によって、基準発振源の発振する基準周波数を制御する。したがって
、磁場による変動の少ない準位間のエネルギー差△E12を利用して、基準周波数を制御
しているので、磁気シールド等が不要で、発振周波数の安定した小型の原子発振器が得ら
れる。
ここで、透過電磁波の強度分布を一定にするとは、厳密に一定とするものではなく、揺
らぎや測定誤差の範囲を含むものである。
[適用例2]
上記原子発振器であって、前記磁場発生手段は、50mT以上〜500mT未満の磁場
を発生することを特徴とする原子発振器。
この適用例では、発生させる磁場が、地磁気に対して50mT以上〜500mT未満の
強磁場であるので、磁場を安定して制御できる。また、印加する磁場が変動してもエネル
ギー差△E12の変動が少なく安定しているので、精密な磁場の制御の必要が少ない原子
発振器が得られる。
[適用例3]
上記原子発振器であって、前記電磁波発生手段はレーザー光を出力するレーザー光源で
あり、前記電磁波変調手段は前記レーザー光を変調するものであることを特徴とする原子
発振器。
この適用例では、レーザー光を逓倍された基準周波数で変調するCPT方式を用いてい
るので、より小型の原子発振器が得られる。
[適用例4]
上記原子発振器であって、前記電磁波変調手段は、電気光学変調器であることを特徴と
する原子発振器。
この適用例では、電気光学変調器を用いた前述の効果を有する原子発振器が得られる。
[適用例5]
上記原子発振器であって、前記電磁波変調手段は、音響光学変調器であることを特徴と
する原子発振器。
この適用例では、音響光学変調器を用いた前述の効果を有する原子発振器が得られる。
[適用例6]
基準発振源から基準周波数を発振させ、アルカリ金属元素がゼーマン分裂したときの基
底準位間のエネルギー差△E12が、磁場の強度変化に対して極小値付近となるような磁
場を、前記アルカリ金属元素に印加し、前記基準周波数を逓倍して前記エネルギー差△E
12に相当する周波数の発振信号を生成し、前記アルカリ金属元素に、前記エネルギー差
△E12に相当する周波数の発振信号によって変調された電磁波を入射し、前記アルカリ
金属元素と相互作用した後の透過電磁波を検出して、前記透過電磁波の強度分布が一定に
検出されるように前記基準発振源の発振周波数を制御し、基準周波数として取り出すこと
を特徴とする原子発振器の周波数安定化方法。
この適用例によれば、アルカリ金属元素に磁場を印加することにより、アルカリ金属元
素の基底準位がゼーマン分裂を起こす。ゼーマン分裂後の基底準位間のエネルギー差△E
12のうち一部は、磁場の強度に対して極小値を持つ。極小値付近では、印加される磁場
が変動してもエネルギー差△E12の変動が少なく安定している。入射した電磁波は基底
準位間のエネルギー差△E12に応じて吸収され透過する。
ここで、極小値付近のエネルギー差△E12に相当する周波数になるように逓倍された
基準周波数で変調された電磁波を、ゼーマン分裂後のアルカリ金属元素に入射させて、透
過電磁波の強度分布が一定になるように基準発振周波数制御手段によって、基準周波数を
制御する。したがって、磁場による変動の少ない準位間のエネルギー差△E12を利用し
て、基準周波数を制御しているので、磁気シールド等が不要で、発振周波数の安定した原
子発振器の周波数安定化方法が得られる。
[適用例7]
上記原子発振器の周波数安定化方法であって、印加される前記磁場は、50mT以上〜
500mT未満であることを特徴とする原子発振器の周波数安定化方法。
この適用例では、発生させる磁場が、地磁気に対して50mT以上〜500mT未満の
強磁場であるので、磁場を安定して制御できる。また、印加する磁場が変動してもエネル
ギー差△E12の変動が少なく安定しているので精密な磁場の制御が少ない原子発振器の
周波数安定化方法が得られる。
[適用例8]
上記原子発振器の周波数安定化方法であって、前記電磁波はレーザー光であり、逓倍さ
れた前記基準周波数の発振信号により、前記レーザー光を変調したものであることを特徴
とする原子発振器の周波数安定化方法。
この適用例では、レーザー光を逓倍された基準周波数で変調するCPT方式を用いた小
型の原子発振器の周波数安定化方法が得られる。
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における原子発振器10の駆動ブロック図を示した。本実施形態は
、いわゆるCPT方式の原子発振器10である。
原子発振器10は、レーザー光源としての半導体レーザー1と、ガスセル2と、電磁波
検出手段としてのフォトセンサー3と、磁場発生手段4と、基準発振周波数制御手段5と
、基準発振源6と、電磁波変調手段としてのレーザー変調手段7とを備えている。
半導体レーザー1は、直流バイアスの駆動電流に応じて周波数の変化した赤外領域のレ
ーザー光を放射する。
基準発振源6は、水晶振動子等から構成され、例えば10MHzの発振を行っている。
この発振は、逓倍回路によって例えば920倍され、レーザー変調手段7によってこの高
周波成分を直流バイアスに重畳し、半導体レーザー1に送る。半導体レーザー1からは、
周波数ν1のカップリング光と周波数ν2のプローブ光とが放射される。
ここで、2つの周波数の光は、両方ともに右偏光であるか、あるいは左偏光で揃ってい
る。
半導体レーザー1から放射されたレーザー光は、ガスセル2に入射する。
ガスセル2はレーザー光を透過する容器で構成され、アルカリ金属元素のガスが封入さ
れている。容器としては、例えばガラスなどの光透過性を有する材料からなる。
また、アルカリ金属元素としては、Rb,Cs等を用いることができる。アルカリ金属
元素は蒸気になりやすく、ガスセル2を、Csでは30℃程度、Rbでは80℃程度暖め
ることによって、ガス化させることができる。また、アルカリ金属元素のドップラー運動
やガスセル2の壁との衝突の影響を少なくするために、緩衝気体として、Ar,N2等を
含んでいてもよい。
ガスセル2には、磁場発生手段4によって50mT以上〜500mT未満の磁場が印加
されている。磁場発生手段4としては、ソレノイドコイルやヘルムホルツコイルを用いる
ことができる。
また、永久磁石を用いてもよい。永久磁石としては、フェライト系磁石、NdFeB系
磁石、SmFe系磁石、アルニコ系磁石を用いることができる。
ガスセル2に入射したレーザー光は、アルカリ金属元素と相互作用を起こし、アルカリ
金属元素のエネルギー準位間の電子遷移を誘起する。
図2は、Csにおけるエネルギー準位を表す図である。Csのエネルギー準位は、2つ
の基底準位1,2と励起準位とを含む。基底準位1と基底準位2とのエネルギー差△E1
2は、9.2GHzに相当する。また、基底準位1,2と励起準位との差は、略852n
mのレーザー光のエネルギーに相当する。
基底準位1,2は、磁場が印加されることにより、磁気量子数mfに応じて、複数の準
位にゼーマン分裂する。基底準位1は、七つの準位にゼーマン分裂し、基底準位2は、九
つの準位にゼーマン分裂する。ここで、ゼーマン分裂した準位間で選ばれるエネルギー差
△E12は、選択側にしたがって同じ磁気量子数mf間に限る。
図3に、Csにおけるゼーマン分裂した準位間のエネルギー差△E12の磁場依存性を
示した。横軸が印加される磁場の強度で、縦軸がエネルギー差△E12を表している。ゼ
ーマン分裂した各準位の磁気量子数mfの組み合わせごとにグラフにして示した。
このうち、磁気量子数mfの組み合わせが、(−1,−1)、(−2,−2)、(−3
,−3)については、なだらかな極小値を持ち、極小値付近は磁場の強度が変化してもエ
ネルギー差△E12がさほど変化しない。また、極小値は、9.2GHzよりも小さい値
をとる。
磁場発生手段4によって印加する磁場は、エネルギー差△E12が極小値をとる辺りの
磁場とする(図中矢印で示した)。実施形態では、磁気量子数mfの組み合わせが、(−
1,−1)、(−2,−2)、(−3,−3)のいずれかのエネルギー差△E12を利用
する。
2種類のレーザー光の周波数差に応じてガスセル2内での光吸収特性が変化する。周波
数ν1のカップリング光と周波数ν2のプローブ光のエネルギー差がエネルギー差△E1
2と同じになると、励起準位には励起せずに、入射レーザー光が透過する。この現象は、
EIT(Electromagnetically Induced Transparency)現象として知られている。
フォトセンサー3では、透過電磁波である透過レーザー光を検出する。フォトセンサー
3は、例えば太陽電池あるいはフォトダイオード等からなる。
フォトセンサー3で検出された透過レーザー光の強度分布が一定になるように、基準発
振源6の基準周波数を制御する。
具体的には、入射レーザー光が透過しない場合には、基準発振周波数制御手段5の出力
電圧が変化し、基準発振源6の発振周波数を変化させて、入射レーザー光が透過するよう
にフィードバック制御する。
フィードバックされて修正された基準発振源6の発振周波数が基準周波数8として取り
出される。
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)ガスセル2に封入されたアルカリ金属元素に、磁場発生手段4によって磁場を印
加することにより、アルカリ金属元素の基底準位がゼーマン分裂を起こす。ゼーマン分裂
後の基底準位間のエネルギー差△E12のうち一部は、磁場の強度に対して極小値を持つ
。基底準位間のエネルギー差△E12が極小値付近となるように磁場は印加される。極小
値付近では、印加される磁場が変動してもエネルギー差△E12の変動が少なく安定して
いる。入射した電磁波は基底準位間のエネルギー差△E12に応じて吸収され透過する。
極小値付近のエネルギー差△E12に相当する周波数になるように逓倍された基準周波
数が重畳された半導体レーザー1で発生した電磁波が、ゼーマン分裂後のアルカリ金属元
素が封入されたガスセル2に入射する。そして、フォトセンサー3で検出される透過電磁
波の強度分布が一定になるように基準発振周波数制御手段5によって、基準発振源6の発
振する基準周波数を制御する。したがって、磁場による変動の少ない準位間のエネルギー
差△E12を利用して、基準周波数を制御しているので、磁気シールド等が不要で、発振
周波数の安定した小型の原子発振器10および原子発振器10の周波数安定化方法を得る
ことができる。
(2)発生させる磁場が、地磁気に対して50mT以上〜500mT未満の強磁場であ
るので、磁場を安定して制御できる。また、印加する磁場が変動してもエネルギー差△E
12の変動が少なく安定しているので精密な磁場の制御の必要が少ない原子発振器10お
よび原子発振器10の周波数安定化方法を得ることができる。
(3)基準発振源6の発振周波数が環境や経時変化によってわずかにずれても、逓倍さ
れてレーザー光に重畳されているので透過レーザー光の強度分布として大きく現れ、フィ
ードバックが行いやすい。
(4)レーザー光に逓倍された基準周波数を重畳するCPT方式を用いているので、よ
り小型の原子発振器10および原子発振器10の周波数安定化方法を得ることができる。
以下は、波長の異なる電磁波の生成の方法が異なる以外は、第1実施形態と同様の構成
である。
(変形例1)
図4に、本変形例における原子発振器20の駆動ブロック図を示した。
図4において、単一波長のレーザー光路に電磁波変調手段としての電気光学変調器7(
Electro Optic Modulator)を配置することで異なる周波数のレーザー光を発生させて
いる。電気光学変調器7には、電気光学材料であるLiNbO3等が用いられる。
このような変形例によれば、以下の効果がある。
(5)電気光学変調器7を用いた前述の効果を有する原子発振器20および原子発振器
20の周波数安定化方法を得ることができる。
(変形例2)
図5に、本変形例における原子発振器30の駆動ブロック図を示した。
図5において、ハーフミラー11で二分割したビームの一方をミラー12で反射し電磁
波変調手段としての音響光学変調器7(Acousto Optic Modulator)で変調した後、再
度ハーフミラー11で合成し、ガスセル2に入射してもよい。
このような本変形例によれば、以下の効果がある。
(6)音響光学変調器7を用いた前述の効果を有する原子発振器30および原子発振器
30の周波数安定化方法を得ることができる。
(第2実施形態)
図6に本実施形態における原子発振器40の駆動ブロック図を示した。本実施形態は、
いわゆる二重共鳴方式といわれるものである。
原子発振器40は、半導体レーザー41と、ガスセル42と、電磁波検出手段43と、
磁場発生手段44と、基準発振周波数制御手段45と、基準発振源46と、電磁波発生手
段としてのマイクロ波発生手段47と定在波発生手段としての空洞共振器49とを備えて
いる。
半導体レーザー41は、ガスセル42に封入されたアルカリ金属元素ガスの基底状態1
と励起状態間のエネルギー差に相当する周波数のレーザー光を放射するように調整されて
いる。
ガスセル42には、磁場発生手段44によって、ゼーマン分裂した後の2つの基底準位
間のエネルギー差△E12が極小値付近となるように、50mT以上〜500mT未満の
磁場が印加されている。磁場発生手段44には、第1実施形態と同様のものを用いること
ができる。
半導体レーザー41から放射されたレーザー光は、例えば、アルカリ金属元素であるR
bが封入されたガスセル42に入射しつづけると、光ポンピングによる飽和が起こり、吸
収が停止する。
ガスセル42は、空洞共振器49に収められている。空洞共振器49には、マイクロ波
発生手段47によってマイクロ波が印加されている。
マイクロ波の周波数は、基準発振源46の逓倍次数で決まる。基準発振源46は、例え
ば10MHz程度の信号を出力している。
マイクロ波の周波数がゼーマン分裂した後の2つの基底準位間のエネルギー差△E12
と一致したところで、誘導放出を生じるので、停止していた吸収が再び起き、電磁波検出
手段43によって光・マイクロ波二重共鳴信号が得られる。
電磁波検出手段43から出力される光・マイクロ波二重共鳴信号の強度が一定になるよ
うに基準発振周波数制御手段45により基準発振源46の発振周波数を変化させる。
修正された基準発振源46の発振周波数が基準周波数48として取り出される。
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(7)二重共鳴方式の原子発振器40においても前述の効果を得ることができる。
上述した実施形態、変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、基準発振源6,46の発振周波数は、10Mzに限らない。また、エネルギー
差△E12の極小値は、9.2GHzよりも小さい値をとるため、より低周波での回路設
計が可能になり、回路設計が容易になる。
また、第1実施形態において、レーザー光源は、二波長レーザーであってもレーザーを
二つ使って、それぞれを制御してガスセル2にレーザー光を入射してもよい。
さらに、アルカリ金属元素以外の原子、分子にも応用可能である。
第1実施形態における原子発振器の駆動ブロック図。 Csにおけるエネルギー準位を表す図。 Csにおけるエネルギー差△E12の磁場依存性を示した図。 変形例1における原子発振器の駆動ブロック図。 変形例2における原子発振器の駆動ブロック図。 第2実施形態における原子発振器の駆動ブロック図。 弱磁場におけるCsのエネルギー差△E12の変動を示した図。
符号の説明
1,41…レーザー光源としての半導体レーザー、3…電磁波検出手段としてのフォト
センサー、4,44…磁場発生手段、5,45…基準発振周波数制御手段、6,46…基
準発振源、7…電磁波変調手段、43…電磁波検出手段、47…電磁波発生手段としての
マイクロ波発生手段、10,20,30,40…原子発振器。

Claims (8)

  1. 電磁波を発生する電磁波発生手段と、
    前記電磁波が入射するアルカリ金属元素が封入されたガスセルと、
    前記アルカリ金属元素がゼーマン分裂したときの基底準位間のエネルギー差△E12が
    、磁場の強度変化に対して極小値付近となるような磁場を、前記アルカリ金属元素に印加
    する磁場発生手段と、
    基準周波数の信号を発振し、該基準周波数から前記エネルギー差△E12に相当する周
    波数の発振信号を生成する基準発振源と、
    前記エネルギー差△E12に相当する周波数の発振信号により前記電磁波を変調する電
    磁波変調手段と、
    前記ガスセルを透過した透過電磁波を検出する電磁波検出手段と、
    前記電磁波検出手段で検出された前記透過電磁波の強度分布が一定になるように、前記
    基準発振源の前記基準周波数を制御する基準発振周波数制御手段とを備えた
    ことを特徴とする原子発振器。
  2. 請求項1に記載の原子発振器において、
    前記磁場発生手段は、50mT以上〜500mT未満の磁場を発生する
    ことを特徴とする原子発振器。
  3. 請求項1または請求項2に記載の原子発振器において、
    前記電磁波発生手段はレーザー光を出力するレーザー光源であり、前記電磁波変調手段
    は前記レーザー光を変調するものである
    ことを特徴とする原子発振器。
  4. 請求項3に記載の原子発振器において、
    前記電磁波変調手段は、電気光学変調器である
    ことを特徴とする原子発振器。
  5. 請求項3に記載の原子発振器において、
    前記電磁波変調手段は、音響光学変調器である
    ことを特徴とする原子発振器。
  6. 基準発振源から基準周波数を発振させ、
    アルカリ金属元素がゼーマン分裂したときの基底準位間のエネルギー差△E12が、磁
    場の強度変化に対して極小値付近となるような磁場を、前記アルカリ金属元素に印加し、
    前記基準周波数を逓倍して前記エネルギー差△E12に相当する周波数の発振信号を生
    成し、
    前記アルカリ金属元素に、前記エネルギー差△E12に相当する周波数の発振信号によ
    って変調された電磁波を入射し、
    前記アルカリ金属元素と相互作用した後の透過電磁波を検出して、
    前記透過電磁波の強度分布が一定に検出されるように前記基準発振源の発振周波数を制
    御し、基準周波数として取り出す
    ことを特徴とする原子発振器の周波数安定化方法。
  7. 請求項6に記載の原子発振器の周波数安定化方法において、
    印加される前記磁場は、50mT以上〜500mT未満である
    ことを特徴とする原子発振器の周波数安定化方法。
  8. 請求項6または請求項7に記載の原子発振器の周波数安定化方法において、
    前記電磁波はレーザー光であり、逓倍された前記基準周波数の発振信号により、前記レ
    ーザー光を変調したものである
    ことを特徴とする原子発振器の周波数安定化方法。
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