<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図21によって説明する。この実施形態1では、電気自動車の車両に搭載された二次電池からなるバッテリを充電するために用いられる充電コネクタ(コネクタ)CCについて例示する。この充電コネクタCCは、図1に示すように、給電設備(充電機器)側に配される給電側コネクタ(他方のコネクタ、充電側コネクタ)10と、電気自動車の車両(被充電機器)側に配される車両側コネクタ(一方のコネクタ、被充電側コネクタ)20とからなり、両コネクタ10,20が嵌合接続されることで車両のバッテリが充電されるようになっている。本実施形態では、通常充電部及び急速充電部を併有してなる「Combined Charging System(コンボ方式)」に適合した充電コネクタのうちの急速充電部のみを「充電コネクタCC」としている。この充電コネクタCCは、車両のバッテリを短時間で一定程度(例えば80%程度)まで充電することが可能な急速充電部であるため、例えば直流で250A程度の大電流を取り扱うものとされる。
なお、以下では、前後の記載について両コネクタ10,20の嵌合方向を基準とし、両コネクタ10,20における嵌合面側を前側とし、その反対側を後側とする。また、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれており、具体的にはX軸方向が両コネクタ10,20の嵌合方向と、Y軸方向が両コネクタ10,20の幅方向と、Z軸方向が両コネクタ10,20の高さ方向とそれぞれ一致している。
先に、給電側コネクタ10について説明する。給電側コネクタ10は、図2及び図5に示すように、給電側ハウジング(他方のコネクタハウジング)11と、給電側ハウジング11に収容される一対の給電側端子金具(他方の端子金具)12とを少なくとも備えている。給電側ハウジング11は、合成樹脂製とされており、給電側端子金具12を収容するとともに略ブロック状をなす給電側端子収容部11aと、給電側端子収容部11aの外縁から前方に向けて突出するとともに略筒状をなす給電側フード部11bとからなるものとされる。
給電側端子収容部11aには、図5に示すように、給電側端子金具12を後方から挿入可能な給電側キャビティ11a1が一対形成されている。給電側キャビティ11a1は、給電側端子収容部11aを嵌合方向(X軸方向)に沿って前後に貫通する形で形成されており、幅方向(Y軸方向)に沿って所定の間隔を空けた位置に並んで配されている。給電側端子収容部11aは、給電側フード部11b内に突き出す部分が一対の給電側端子金具12に対応付けて分けられており、一対のタワー部13を有している。一対のタワー部13は、共に略円筒状をなしており、幅方向に沿って中央側に所定の間隔を空けた形で並んで配されている。給電側端子収容部11aのうち、タワー部13よりも後側のブロック状をなす部分は、一対の給電側キャビティ11a1(給電側端子金具12)間を仕切る隔壁(仕切り壁)11a2を有している。給電側フード部11bは、正面から視て(嵌合方向に沿う方向から視て)横長な長円形状をなす筒体からなるものとされており、給電側端子収容部11aにおける一対のタワー部13を、間に所定の間隔を空けつつ一括して外側から取り囲む形で配されている。給電側フード部11bと一対のタワー部13との間に有される、正面から視て横長な略円環状をなす空間には、後述する車両側コネクタ20が有する車両側フード部21bが嵌合可能とされる。
給電側端子金具12は、金属製とされており、図2及び図5に示すように、軸線方向(長さ方向)が嵌合方向と一致するとともに、その前側部分が車両側端子金具22に接続される給電側接続部12aとされるのに対し、後側部分が図示しない電力ケーブル(電線)に接続されるケーブル接続部12bとされる。給電側接続部12aは、全体として嵌合方向に沿って延在する略円筒状をなすとともに、その周方向について所定の角度間隔を空けた位置にスリットが複数入れられることで、複数の弾性接触片12a1を有している。弾性接触片12a1は、嵌合方向に沿って延在するとともに後端側が基端、前端側が自由端とされた片持ち梁状をなしており、基端を支点として給電側接続部12aの径方向に沿って弾性変形することが可能とされる。従って、両コネクタ10,20の嵌合に伴って、給電側接続部12aの内側に有される空間に車両側端子金具22が挿入されると、各弾性接触片12a1が車両側端子金具22に対して弾性接触しつつ径方向に沿って外向きに拡開変形されるようになっている。弾性接触片12a1は、例えば8本が給電側接続部12aの周方向に沿ってほぼ等角度間隔に並んでいる。一対の給電側端子金具12は、給電側端子収容部11aの各給電側キャビティ11a1に個別に収容されることで、各タワー部13をなす周壁によってそれぞれ周りが取り囲まれる。従って、一対の給電側端子金具12の並び方向は、幅方向(Y軸方向)と一致している。一対の給電側端子金具12のうち、図5に示す奥側のものが正極側とされるのに対し、同図に示す手前側のものが負極側とされる。
次に、車両側コネクタ20について説明する。車両側コネクタ20は、図3に示すように、車両側ハウジング(一方のコネクタハウジング)21と、車両側ハウジング21に収容される一対の車両側端子金具(一方の端子金具)22とを少なくとも備えている。車両側ハウジング21は、合成樹脂製とされており、図3及び図4に示すように、車両側端子金具22を収容するとともに略ブロック状をなす車両側端子収容部21aと、車両側端子収容部21aの外縁から前方に向けて突出するとともに略筒状をなす車両側フード部21bとからなるものとされる。
車両側端子収容部21aは、図4に示すように、正面から視て横長な長円形状をなすブロック体からなるものとされている。車両側端子収容部21aには、図4及び図5に示すように、給電側コネクタ10が有する一対のタワー部13を嵌合可能な嵌合凹部24が一対、前方に開口する形で形成されている。一対の嵌合凹部24は、それぞれ正面から視て略円形状をなしており、車両側端子収容部21aにおいて幅方向(Y軸方向)について中央側に所定の間隔を空けた両端寄りの位置に配されている。一対の嵌合凹部24の間には、車両側端子収容部21aを構成する隔壁(仕切り壁)21a1が配されており、この隔壁21a1によって一対の嵌合凹部24(後述する一対の嵌合空間FS及び一対の車両側端子金具22)が仕切られている。隔壁21a1は、高さ方向(Z軸方向)についての中央側から高さ方向の両端側(図4に示す上下両端側)に向かうに連れてそれぞれ次第に厚み(幅寸法)が増す形状とされており、後述する一対の車両側端子金具22と対向する両側面が円弧状をなしている。車両側端子収容部21aにおける奥壁部には、車両側端子金具22を貫通させるための端子挿通孔25が、嵌合凹部24に連通する形で開口形成されている。従って、端子挿通孔25に挿通された車両側端子金具22は、嵌合凹部24内に突き出した形で配されるものとされ、その周りにタワー部13が前方から嵌合可能とされる嵌合空間FSが有されている。この嵌合空間FSは、車両側端子金具22(車両側接続部22a)の外周面と、車両側端子収容部21aにおける嵌合凹部24の内周面との間に有されるものであり、正面から視て円環状をなしている。車両側フード部21bは、正面から視て横長な長円形状をなす筒体からなるものとされており、車両側端子収容部21aを、間に所定の間隔を空けつつ外側から取り囲む形で配されている。車両側フード部21bと車両側端子収容部21aとの間に有される、正面から視て横長な略円環状をなす空間には、給電側コネクタ10が有する給電側フード部11bが嵌合可能とされる。
車両側端子金具22は、金属製とされており、図3及び図5に示すように、軸線方向(長さ方向)が嵌合方向と一致するとともに、その前側部分が給電側端子金具12に接続される車両側接続部22aとされるのに対し、後側部分が図示しない電力ケーブル(電線)に接続されるケーブル接続部22bとされる。車両側接続部22aは、中実な略円柱状をなしており、その外周面に対して給電側端子金具12が有する複数の弾性接触片12a1が弾性接触可能とされる。車両側接続部22aの先端部には、絶縁性を有する合成樹脂製の安全キャップ26が取り付けられており、この安全キャップ26により作業者(使用者)が誤って金属製の車両側端子金具22に直接触れる事態が回避されるようになっている。車両側端子収容部21aにおける一対の端子挿通孔25にそれぞれ個別に挿通された一対の車両側端子金具22は、幅方向(Y軸方向)について中央側に配される車両側端子収容部21aの隔壁21a1によって相互に絶縁状態に保たれる。一対の車両側端子金具22の並び方向は、幅方向(Y軸方向)と一致している。一対の車両側端子金具22のうち、図5に示す奥側のものが正極側とされるのに対し、同図に示す手前側のものが負極側とされる。また、両コネクタ10,20における高さ方向(Z軸方向)は、両コネクタ10,20の嵌合方向(X軸方向)と直交し、且つ一対の車両側端子金具22の並び方向(Y軸方向)と直交している。なお、以下では給電側端子金具12及び車両側端子金具22に関して正極及び負極の極性を区別する場合には、正極側のものの符号に添え字Pを、負極側のものの符号に添え字Nを付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
両コネクタ10,20が嵌合接続されて両端子金具12,22が通電されると、両端子金具12,22の軸線周りに磁界が発生し、その磁界を構成する端子磁力線TMLは、図8及び図9において相対的に細い一点鎖線により示される。なお、以下では端子磁力線TMLに関して、正極側の両端子金具12P,22Pの軸線周りに発生する端子磁力線については、符号を「TMLP」とし、負極側の両端子金具12N,22Nの軸線周りに発生する端子磁力線については、符号を「TMLN」とする。正極側の両端子金具12P,22Pの軸線周りに発生する端子磁力線TMLPは、図8では時計回り方向(図9では反時計回り方向)に向かうものとされるのに対し、負極側の両端子金具12N,22Nの軸線周りに発生する端子磁力線TMLNは、図8では反時計回り方向(図9では時計回り方向)に向かうものとされる。ここで、正極側の端子磁力線TMLP及び負極側の端子磁力線TMLNのうち、車両側コネクタ20において幅方向について一対の車両側端子金具22の間に有される内側領域IAを通る端子磁力線TMLN,TMLPは、いずれも図8及び図9に示す上向きとされるのに対し、内側領域IAに対して各車両側端子金具22を挟んで外側に配される一対の外側領域OAを通る端子磁力線TMLN,TMLPは、いずれも図8及び図9に示す下向きとされる。
さて、本実施形態に係る車両側コネクタ20には、両端子金具12,22が通電中にも拘わらず、車両側コネクタ20から給電側コネクタ10が離脱された場合に発生するアークに伴う不具合を軽減または解消すべく、図3に示すように、可動磁石23が一対備えられている。可動磁石23は、極めて強い磁力を有するネオジム磁石などの永久磁石からなるものとされる。可動磁石23は、嵌合方向(X軸方向)に沿って前後に延在する略円柱状(断面形状が円形となる棒状)をなすとともにその前後の端面が磁極となっており、一方の端面がN極面27とされるのに対し、他方の端面がS極面28とされる。また、可動磁石23の径寸法(幅方向及び高さ方向についての寸法)は、一対の車両側端子金具22の間の間隔(隔壁21a1の厚み)よりも小さなものとされる。また、可動磁石23には、その外周面の全域にわたって絶縁性を有する合成樹脂材(例えばアクリル樹脂材など)がコーティングされており、それにより絶縁性及び機械的な強度などが十分に確保されている。
車両側コネクタ20には、図3に示すように、上記のような構成の一対の可動磁石23に加えて、一対の車両側引っ張りコイルばね(付勢手段、一方の引っ張りコイルばね)32及び抜け止め部材33が備えられている。車両側引っ張りコイルばね32は、非磁性材料である合成樹脂材料からなるものとされており、その軸線方向が嵌合方向(X軸方向)と一致している。車両側引っ張りコイルばね32は、自然状態から軸線方向に沿って引っ張られて伸ばされると、元の自然状態に戻ろうと付勢力(弾性引っ張り力)を発揮することが可能とされる。車両側引っ張りコイルばね32は、可動磁石23に対して後側に配されるとともに、その前端部が可動磁石23の後面に固定されている。従って、自然状態とされた車両側引っ張りコイルばね32に対して可動磁石23が相対的に前方へ移動されると、車両側引っ張りコイルばね32は、可動磁石23を後退させるような付勢力を蓄積しつつ弾性的に伸長される(引っ張り伸ばされる)ようになっている。なお、抜け止め部材33については後に詳しく説明する。
これら可動磁石23及び車両側引っ張りコイルばね32は、図5及び図6に示すように、車両側ハウジング21を構成する車両側端子収容部21aに形成された可動磁石収容室(一方側収容室)29に収容されている。可動磁石収容室29は、車両側端子収容部21aのうち一対の車両側端子金具22を絶縁状態に隔てる隔壁21a1に形成されている。詳しくは、可動磁石収容室29は、隔壁21a1における前端部を残して車両側ハウジング21(車両側端子収容部21a)の後面に開口する形で形成されており、この残された前端部が前壁部29aを構成している。可動磁石収容室29は、車両側端子収容部21aにおいて可動磁石23の外形に倣って正面から視て略円形状をなすとともに、嵌合方向に沿ってほぼ真っ直ぐに後方に向けて開口する略袋状をなしている。可動磁石収容室29は、その長さ寸法が可動磁石23の長さ寸法と、自然状態とされた車両側引っ張りコイルばね32の長さ寸法とを足し合わせた寸法よりもさらに大きなものとされる。可動磁石収容室29は、上記隔壁21a1において可動磁石23及び車両側引っ張りコイルばね32を個別に収容するよう、一対が高さ方向(Z軸方向)、つまり一対の車両側端子金具22の並び方向と直交する方向について離間した位置に配されている。一対の可動磁石収容室29は、幅方向(Y軸方向)について一対の車両側端子金具22間のほぼ中央位置に配されている。また、一対の可動磁石収容室29は、高さ方向についての一対の可動磁石収容室29間の中央位置と、各車両側端子金具22の高さ位置とがほぼ一致するよう配されている。一対の可動磁石収容室29は、高さ方向についての全域が、車両側端子収容部21aにおける嵌合空間ISと高さ方向について重なり合うものの、車両側端子金具22とは高さ方向について重なり合わない位置に配されている。
上記のような構成の可動磁石収容室29には、図5から図7に示すように、可動磁石23が相対的に前側に位置し、車両側引っ張りコイルばね32が相対的に後側に位置するよう収容されている。そして、可動磁石収容室29内に収容された可動磁石23は、嵌合方向に沿って前後に移動可能とされている。具体的には、可動磁石23は、その前面が前壁部29aに接する前進位置(図10から図12を参照)と、前進位置よりも後側の後退位置との間を嵌合方向に沿って移動されるようになっており、後退位置においては可動磁石23と前壁部29aとの間に可動磁石23における移動ストローク分の間隔が空けられるとともに車両側引っ張りコイルばね32がほぼ自然状態とされる。つまり、可動磁石収容室29内において可動磁石23が後退位置よりも前方に配された状態では、車両側引っ張りコイルばね32が自然状態から引き伸ばされていて可動磁石23を後退位置へと引き戻すような付勢力が蓄積されており、その付勢力の大きさは可動磁石23における後退位置からの移動距離にほぼ比例するようになっている。従って、可動磁石23は、車両側引っ張りコイルばね32によって後退位置に至るよう常に付勢されるようになっているので、仮に車両側引っ張りコイルばねが用いられず、可動磁石が常に前進位置に配された場合に比べると、車両側コネクタ20が給電側コネクタ10と嵌合されていない状態において外部の金属粉などが可動磁石23の磁力によって引き寄せられて前壁部29aに付着する、といった事態が生じ難くなっている。後退位置とされた可動磁石23は、前面が車両側端子金具22の前端位置よりも前側に位置するのに対し、後面が車両側端子金具22の前端位置よりも僅かに後側に位置している(図7を参照)。一方、後退位置よりも前側の前進位置とされた可動磁石23は、後面が車両側端子金具22の前端位置よりも前側に位置する(図12を参照)。また、可動磁石23は、前壁部29aによって前進位置からの前止まりが図られている(図10から図12を参照)。一対の可動磁石23(車両側引っ張りコイルばね32)は、図4に示すように、一対の可動磁石収容室29にそれぞれ収容されることで、高さ方向、つまり一対の車両側端子金具22の並び方向と直交する方向について離間した位置に配されている。一対の可動磁石23は、幅方向について一対の車両側端子金具22間のほぼ中央位置に配されている。また、一対の可動磁石23は、高さ方向についての一対の可動磁石23間の中央位置と、各車両側端子金具22の高さ位置とがほぼ一致するよう配されている。一対の可動磁石23は、高さ方向についての全域が、車両側端子収容部21aにおける嵌合空間ISと高さ方向について重なり合うものの、車両側端子金具22とは高さ方向について重なり合わない位置に配されている。
抜け止め部材33は、合成樹脂製とされており、図3,図5及び図6に示すように、高さ方向に沿って延在する抜け止め本体部33aと、抜け止め本体部33aにおける長さ方向の両端部から嵌合方向に沿って前方に向けて延出する一対のロック片33bとからなるものとされる。抜け止め部材33は、車両側ハウジング21における後端部に対して後側から取り付けられており、取付状態では、抜け止め本体部33aにより一対の可動磁石収容室29の開口端を一括して閉塞するとともに可動磁石収容室29内に収容された可動磁石23及び車両側引っ張りコイルばね32を抜け止めすることが可能とされる。抜け止め本体部33aは、その幅寸法が可動磁石収容室29の開口径寸法よりも大きなものとされており、それにより可動磁石収容室29を全域にわたって閉塞可能とされる。この抜け止め本体部33aにより可動磁石収容室29内に後方外部から金属粉などが侵入するといった事態が生じ難いものとなっている。抜け止め本体部33aは、車両側引っ張りコイルばね32における後端部に当接されることで、車両側引っ張りコイルばね32を後側から支持している。ロック片33bは、抜け止め本体部33aにおける長さ方向の端部から前方に向けて延出する片持ち状をなしており、基端部を支点として高さ方向に沿って弾性変形可能とされる。車両側ハウジング21の後端部における幅方向の中央部には、上記したロック片33bが係止可能なロック部34が一対設けられている。ロック部34は、車両側ハウジング21の外面から高さ方向に沿って突出する形態とされており、その前縁にロック片33bの先端の爪部が係止されるようになっている。これにより、抜け止め部材33が車両側ハウジング21に対して取付状態に保持されるようになっている。
そして、一対の可動磁石収容室29のうち、図4及び図6に示す上側(内側領域IAにおいて端子磁力線TMLが向かう側)の可動磁石収容室29に収容される可動磁石23は、S極面28が前面となり、N極面27が後面となる姿勢とされるのに対し、図4及び図6に示す下側(内側領域IAにおいて端子磁力線TMLが向かう側とは反対側)の可動磁石収容室29に収容される可動磁石23は、N極面27が前面となり、S極面28が後面となる姿勢とされる。なお、以下では一対の可動磁石23を区別する場合には、S極面28が前面となり且つN極面27が後面となるものを「第1可動磁石」としてその符号にAを付し、N極面27が前面となり且つS極面28が後面となるものを「第2可動磁石」としてその符号に添え字Bを付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
このような構成では、図8及び図9に示すように、一対の可動磁石23における各極面27,28間を行き交う形で磁力線MLが発生するのであるが、このうち第2可動磁石23Bの前面であるN極面27から第1可動磁石23Aの前面であるS極面28に向かう磁力線MLについては、図8に示すように、一対の車両側端子金具22間に挟まれた内側領域IAを通るものが、端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1内側磁力線ML1とされるのに対し、内側領域IAに対して車両側端子金具22を挟んだ外側に位置する外側領域OAを通るものが、端子磁力線TMLとは反対側に向かう第1外側磁力線ML2とされている。これら第1内側磁力線ML1及び第1外側磁力線ML2は、各可動磁石23の前面から主に発生するものであるから、その大部分が各可動磁石23の前後位置に拘わらず常に車両側端子金具22よりも前側に存在するものとされる(図17,図18,図20及び図21を参照)。一方、第1可動磁石23Aの後面であるN極面27から第2可動磁石23Bの後面であるS極面28に向かう磁力線MLについては、図9に示すように、一対の車両側端子金具22間に挟まれた内側領域IAを通るものが、端子磁力線TMLとは反対側に向かう第2内側磁力線ML3とされるのに対し、内側領域IAに対して車両側端子金具22を挟んだ外側に位置する外側領域OAを通るものが、端子磁力線TMLと同じ側に向かう第2外側磁力線ML4とされている。これら第2内側磁力線ML3及び第2外側磁力線ML4は、各可動磁石23の後面から主に発生するものであるから、その大部分が各可動磁石23が前進位置に配された状態では、車両側端子金具22よりも前側に存在するのに対し(図17及び図18を参照)、各可動磁石23が後退位置に配された状態では、車両側端子金具22よりも後側に存在するものとされる(図20及び図21を参照)。なお、以下では磁力線MLに関して、第1内側磁力線については、符号を「ML1」とし、第1外側磁力線については、符号を「ML2」とし、第2内側磁力線については、符号を「ML3」とし、第2外側磁力線については、符号を「ML4」とする。
第2可動磁石23BのN極面27及び第1可動磁石23AのS極面28は、図8に示すように、第1内側磁力線ML1が発生する第1内側磁力線発生面30と、第1外側磁力線ML2が発生する第1外側磁力線発生面31とに区分することが可能とされる。このうち、第1内側磁力線発生面30は、第2可動磁石23BのN極面27及び第1可動磁石23AのS極面28のうち、内側領域IAに臨む部分により構成されるのに対し、第1外側磁力線発生面31は、第2可動磁石23BのN極面27及び第1可動磁石23AのS極面28のうち、第1内側磁力線発生面30を除いた残りの部分により構成される。詳しくは、第1内側磁力線発生面30と第1外側磁力線発生面31とは、正面から視て、各可動磁石23A,23Bの中心MCと、各車両側端子金具22の中心TCとを結ぶ線分LSにより区分されており、これら4本の線分LSにより構成される菱形と重畳する部分が第1内側磁力線発生面30とされ、同菱形とは非重畳とされる部分が第1外側磁力線発生面31とされる。なお、図8では、線分LSを二点鎖線により図示している。言い換えると、第1内側磁力線発生面30は、第2可動磁石23BのN極面27及び第1可動磁石23AのS極面28のうち、上記線分LSよりも高さ方向について中央側(車両側端子金具22に近い側)の部分により構成されるのに対し、第1外側磁力線発生面31は、上記線分LSよりも高さ方向について外側(車両側端子金具22から遠い側)の部分により構成される。第1内側磁力線発生面30は、第1外側磁力線発生面31よりも面積が小さなものとされており、第1外側磁力線発生面31の約半分程度とされる。
同様に、第1可動磁石23AのN極面27及び第2可動磁石23BのS極面28は、図9に示すように、第2内側磁力線ML3が発生する第2内側磁力線発生面35と、第2外側磁力線ML4が発生する第2外側磁力線発生面36とに区分することが可能とされる。このうち、第2内側磁力線発生面35は、第1可動磁石23AのN極面27及び第2可動磁石23BのS極面28のうち、内側領域IAに臨む部分により構成されるのに対し、第2外側磁力線発生面36は、第1可動磁石23AのN極面27及び第2可動磁石23BのS極面28のうち、第2内側磁力線発生面35を除いた残りの部分により構成される。詳しくは、第2内側磁力線発生面35と第2外側磁力線発生面36とは、正面から視て、各可動磁石23A,23Bの中心MCと、各車両側端子金具22の中心TCとを結ぶ線分LSにより区分されており、これら4本の線分LSにより構成される菱形と重畳する部分が第2内側磁力線発生面35とされ、同菱形とは非重畳とされる部分が第2外側磁力線発生面36とされる。なお、図9では、線分LSを二点鎖線により図示している。言い換えると、第2内側磁力線発生面35は、第1可動磁石23AのN極面27及び第2可動磁石23BのS極面28のうち、上記線分LSよりも高さ方向について中央側(車両側端子金具22に近い側)の部分により構成されるのに対し、第2外側磁力線発生面36は、上記線分LSよりも高さ方向について外側(車両側端子金具22から遠い側)の部分により構成される。第2内側磁力線発生面35は、第2外側磁力線発生面36よりも面積が小さなものとされており、第2外側磁力線発生面36の約半分程度とされる。
上記したように一対の可動磁石23における第1内側磁力線発生面30及び第1外側磁力線発生面31から第1内側磁力線ML1及び第1外側磁力線ML2が発生することで、図8に示すように、一対の車両側端子金具22間に挟まれた内側領域IAでは、端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1内側磁力線ML1が追加されることで磁束密度が高められる(密になる)のに対し、外側領域OAでは、端子磁力線TMLとその反対側に向かう外側磁力線ML2とが打ち消し合うことで磁束密度が低くされる(疎になる)。これにより、内側領域IAと外側領域OAとでは磁束密度の疎密に大きな差が生じることになるので、例えば充電中であるにも拘わらず、車両側コネクタ20から給電側コネクタ10が引き抜かれるとともに車両側端子金具22から給電側端子金具12が外されるのに伴い、両端子金具12,22間にアークが発生した場合でも、そのアークをなす電子には、磁束密度が高くなった内側領域IAから磁束密度が低くなった外側領域OAに向かう大きなローレンツ力が作用することでアークの回曲が図られるようになっている。さらには、一対の可動磁石23における第2内側磁力線発生面35及び第2外側磁力線発生面36から第2内側磁力線ML3及び第2外側磁力線ML4が発生することで、図9に示すように、一対の車両側端子金具22間に挟まれた内側領域IAでは、端子磁力線TMLとその反対側に向かう第2内側磁力線ML3とが打ち消し合うことで磁束密度が低くされる(疎になる)のに対し、外側領域OAでは、端子磁力線TMLと同じ側に向かう第2外側磁力線ML4が追加されることで磁束密度が高められる(密になる)。これにより、内側領域IAと外側領域OAとでは磁束密度の疎密に大きな差が生じることになるので、両端子金具12,22間にアークが発生した場合でも、そのアークをなす電子には、磁束密度が高くなった外側領域OAから磁束密度が低くなった内側領域IAに向かう大きなローレンツ力が作用することでアークの回曲が図られるようになっている。もって、アークによって一対の車両側端子金具22間が短絡される、いわゆるPN間短絡が発生する事態が生じ難くなる。
上記のような構成とされる車両側コネクタ20に対して嵌合される給電側コネクタ10には、図2に示すように、車両側引っ張りコイルばね32により後退位置へと付勢されている可動磁石23を前進位置へと引き寄せるための引き寄せ磁性部材37が一対備えられている。引き寄せ磁性部材37は、鉄などの磁性材料である金属材料からなるものとされており、可動磁石23の磁力により磁化可能とされる。引き寄せ磁性部材37は、略円盤状(略短円柱状)をなす磁性部材本体37aと、磁性部材本体37aの後面から後方に向けて突出する保持凸部37bとからなるものとされる。磁性部材本体37aの径寸法は、可動磁石23の径寸法と概ね同じ程度とされる。この引き寄せ磁性部材37は、両コネクタ10,20が嵌合された状態(図10から図12を参照)では、可動磁石23の磁力により磁化されることで前面及び後面が磁極となり、それにより可動磁石23を車両側引っ張りコイルばね32による付勢力に抗しつつ前方へと引き寄せて前進位置に至らせることが可能とされている。
給電側コネクタ10には、図2に示すように、上記のような構成の一対の引き寄せ磁性部材37に加えて、一対ずつの給電側引っ張りコイルばね(弾性支持部材、他方の引っ張りコイルばね)38及び非磁性部材39が備えられている。給電側引っ張りコイルばね38は、非磁性材料である合成樹脂材料からなるものとされており、その軸線方向が嵌合方向(X軸方向)と一致している。給電側引っ張りコイルばね38は、自然状態から軸線方向に沿って引っ張られて伸ばされると、元の自然状態に戻ろうと付勢力(弾性引っ張り力)を発揮することが可能とされる。給電側引っ張りコイルばね38は、引き寄せ磁性部材37に対して後側に配されるとともに、その前端部が非磁性部材39の後面に固定されている。非磁性部材39は、非磁性材料である合成樹脂材料からなるものとされており、嵌合方向に沿って延在する略円柱状(断面円形の棒状)をなしている。非磁性部材39の前面には、引き寄せ磁性部材37の保持凸部37bを凹凸嵌合可能な保持凹部39aが形成されており、この保持凹部39aにより引き寄せ磁性部材37を一体的に保持することが可能とされる。つまり、引き寄せ磁性部材37は、非磁性部材39を介して給電側引っ張りコイルばね38の前端に固定されている、と言える。従って、自然状態とされた給電側引っ張りコイルばね38に対して引き寄せ磁性部材37が相対的に前方へ移動されると、給電側引っ張りコイルばね38は、引き寄せ磁性部材37を後退させるような付勢力を蓄積しつつ弾性的に伸長される(引っ張り伸ばされる)ようになっている。
上記した引き寄せ磁性部材37、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39は、図5及び図6に示すように、給電側ハウジング11を構成する給電側端子収容部11aに形成された給電側収容室(他方側収容室、引き寄せ磁性部材収容室)40に収容可能とされる。給電側収容室40は、給電側端子収容部11aのうち隔壁11a2の一部について後端部を残して嵌合方向に沿って前方に向けて開口する略袋状をなしており、引き寄せ磁性部材37、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39の外形に倣って正面から視て略円形状をなしている。給電側収容室40は、その長さ寸法が引き寄せ磁性部材37の厚さ寸法と、自然状態とされた給電側引っ張りコイルばね38の長さ寸法と、非磁性部材39の長さ寸法とを足し合わせた寸法よりもさらに大きなものとされる。給電側収容室40は、上記隔壁11a2において引き寄せ磁性部材37、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39を個別に収容するよう、一対が高さ方向(Z軸方向)、つまり一対の給電側端子金具12の並び方向と直交する方向について離間した位置に配されている。一対の給電側収容室40は、幅方向(Y軸方向)について一対の給電側端子金具12間のほぼ中央位置に配されている。また、一対の給電側収容室40は、高さ方向についての一対の給電側収容室40の中央位置と、各給電側端子金具12の高さ位置とがほぼ一致するよう配されている。一対の給電側収容室40は、両コネクタ10,20の嵌合時には、車両側コネクタ20における一対の可動磁石収容室29と正対する配置とされている(図10から図12を参照)。
上記のような構成の給電側収容室40には、図5から図7に示すように、前側から引き寄せ磁性部材37、非磁性部材39、給電側引っ張りコイルばね38の順で収容されており、一体化された引き寄せ磁性部材37及び非磁性部材39が給電側収容室40内において嵌合方向に沿って前後に移動可能とされる。具体的には、引き寄せ磁性部材37は、その前面が隔壁11a2(給電側端子収容部11aのうちタワー部13よりも後側の部分)の前端面(タワー部13の奥端面)からやや後側に奥まった配置の後退位置と、全体が給電側収容室40の前方外部に突き出していてその前面が嵌合時における給電側コネクタ20の前壁部29aの前端面に当接した配置の前進位置(図10から図12を参照)との間を嵌合方向に沿って移動されるようになっている。引き寄せ磁性部材37に対して一体的に保持された非磁性部材39は、引き寄せ磁性部材37が後退位置に配された状態では、ほぼ自然状態とされた給電側引っ張りコイルばね38と共にその全体が給電側収容室40内に収容されているのに対し、引き寄せ磁性部材37が前進位置に配された状態では、前側部分が引き寄せ磁性部材37と共に給電側収容室40の前方外部に突き出すものの、後側部分が給電側収容室40内に収容されている。給電側引っ張りコイルばね38は、引き寄せ磁性部材37が後退位置に配された状態では、ほぼ自然状態とされるものの、引き寄せ磁性部材37が後退位置よりも前側に移動されると、自然状態から引き伸ばされて引き寄せ磁性部材37を後退位置へと引き戻すような付勢力が蓄積されるようになっており、その付勢力の大きさは引き寄せ磁性部材37における後退位置からの移動距離にほぼ比例するようになっている。
そして、両コネクタ10,20を嵌合するに際しては、嵌合が進行するのに伴い、共に後退位置とされた可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間の距離が小さくなり、所定の距離に達したところで可動磁石23の磁力によって引き寄せ磁性部材37が磁化され、可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間に磁力が作用する(図16から図18を参照)。このとき、可動磁石23及び引き寄せ磁性部材37は、両者の間に作用する磁力(吸引力)によって互いに引き寄せられることで共に前進位置に向けて移動するとともに、車両側引っ張りコイルばね32及び給電側引っ張りコイルばね38をそれぞれ弾性的に引き伸ばす。一方、嵌合した両コネクタ10,20を離脱させるに際しては、離脱が進行すると、引き寄せ磁性部材37が前進位置に保たれるのに対して給電側引っ張りコイルばね38がさらに弾性的に引き伸ばされることで、給電側引っ張りコイルばね38にはさらに大きな付勢力が蓄積される。そして、給電側引っ張りコイルばね38が所定の長さにまで伸ばされたところで、給電側引っ張りコイルばね38の付勢力が可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間に作用する磁力よりも大きくなるので、給電側引っ張りコイルばね38の付勢力により引き寄せ磁性部材37が後退位置へ向けて移動されるとともに、車両側引っ張りコイルばね32の付勢力により可動磁石23が後退位置へ向けて移動される(図19から図21を参照)。
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用を説明する。車両のバッテリを充電するには、車両側コネクタ20に対して給電側コネクタ10を嵌合する作業を行う。図4から図6に示す状態から、給電側コネクタ10における給電側フード部11bを、車両側コネクタ20における車両側端子収容部21aと車両側フード部21bとの間の空間に嵌め入れ(図19から図21を参照)、続いて給電側端子収容部11aの各タワー部13を、車両側端子収容部21aの各嵌合空間FS(各嵌合凹部24)内に嵌め入れる。このとき、車両側端子収容部21aの隔壁21a1が一対のタワー部13間に嵌め入れられる。このように嵌合が進行するのに伴い、共に後退位置とされた可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間の距離が次第に小さくなる。そして、両コネクタ10,20が所定の深さまで嵌合され、給電側端子金具12と車両側端子金具22とが接触する手前の段階において、可動磁石23の磁力によって引き寄せ磁性部材37が磁化され、可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間に互いに吸引し合うような磁力が作用することで、可動磁石23及び引き寄せ磁性部材37が前進位置へと移動される(図16から図18を参照)。この可動磁石23及び引き寄せ磁性部材37の前進に伴い、車両側引っ張りコイルばね32及び給電側引っ張りコイルばね38はそれぞれ付勢力を蓄積しつつ弾性的に引き伸ばされる。前進位置とされた一対の引き寄せ磁性部材37のうち、第1可動磁石23Aと対向状をなす引き寄せ磁性部材37は、その前面が第1可動磁石23AのS極面28によって磁化されてN極となるのに対し、後面がS極となる(図17を参照)。一方、第2可動磁石23Bと対向状をなす引き寄せ磁性部材37は、その前面が第2可動磁石23BのN極面27によって磁化されてS極となるのに対し、後面がN極となる(図17を参照)。両コネクタ10,20の嵌合がさらに進行すると、車両側端子金具22の車両側接続部22aが、給電側端子金具12の給電側接続部12a内に差し込まれるとともに、各弾性接触片12a1が径方向について弾性的に拡開される(図13から図15を参照)。そして、両コネクタ10,20が正規深さまで嵌合されると、図10から図12に示すように、各タワー部13が嵌合空間FSの奥深くまで嵌め込まれるとともに、車両側接続部22aの外周面に対して給電側接続部12aの各弾性接触片12a1が所定の接圧でもって弾性接触される。相互に電気的に接続された両端子金具12,22間に直流電流が流されることで、車両のバッテリの充電が図られる。
ここで、充電を行っている最中であるにも拘わらず、誤って給電側コネクタ10が車両側コネクタ20から引き抜かれるような事態が発生した場合には、離脱の進行に伴い、給電側端子金具12の給電側接続部12aに対する車両側端子金具22の車両側接続部22aの差し込み深さが浅くなり、図13及び図15に示すように、給電側接続部12aと車両側接続部22aとが非接触状態に至る。このとき、両端子金具12,22は通電された状態であるため、非接触状態とされた両端子金具12,22間にはアークARCが発生する。ここまでの間、離脱の進行に伴い、給電側引っ張りコイルばね38が付勢力を蓄積しつつ弾性的に引き伸ばされているのも拘わらず、可動磁石23及び引き寄せ磁性部材37は、図13から図15に示すように、共に前進位置に保たれている。前進位置とされた一対の可動磁石23A,23Bは、後面が共に車両側端子金具22の前端位置よりも前側に配されており、第1可動磁石23Aの後面であるN極面27から第2可動磁石23Bの後面であるS極面28へ向かう形で磁力線MLが発生している(図17を参照)。従って、図13及び図15に示す状態からさらに離脱が進行する間、両端子金具12,22間にアークARCが発生しても、一対の可動磁石23A,23Bの後面間を行き交う磁力線MLには、図9及び図17に示すように、内側領域IAにおいて端子磁力線TMLとは反対側に向かう第2内側磁力線ML3と、外側領域OAにおいて端子磁力線TMLと同じ側に向かう第2外側磁力線ML4とが含まれるから、内側領域IAでは磁束密度が低くなるのに対し、外側領域OAでは磁束密度が高められる。これにより、内側領域IAと外側領域OAとでは磁束密度の疎密に大きな差が生じることになるので、上記したように両端子金具12,22間にアークARCが発生していても、そのアークARCをなす電子には、図16に示すように、磁束密度が高くなった外側領域OAから磁束密度が低くなった内側領域IAに向かう大きなローレンツ力が作用する。このローレンツ力は、一対の可動磁石23A,23Bの並び方向である高さ方向と直交する幅方向(Y軸方向)、つまり一対の車両側端子金具22の並び方向に沿って外側領域OAから内側領域IAへ向けて作用するので、発生したアークARCがY軸方向に沿って内向き(隔壁21a1に接近する側)に回曲される。なお、図16では、可動磁石23A,23Bの磁力によって回曲されたアークARCを両端子金具12,22に繋がる太線によって図示している。また、図17では、各可動磁石23A,23Bの磁極(NまたはS)を前後の端部にそれぞれ記入している。
図16から図18に示す状態からさらに両コネクタ10,20の離脱が進行すると、給電側引っ張りコイルばね38は、前進位置に保たれている引き寄せ磁性部材37に対して固定された前端部と、給電側ハウジング11に固定された後端部との間の距離が増すことで、さらに弾性的に引き伸ばされるとともにさらに大きな付勢力が蓄積される。そして、給電側引っ張りコイルばね38の付勢力が可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間に作用する磁力よりも大きくなる状態にまで給電側引っ張りコイルばね38が引き伸ばされると、給電側引っ張りコイルばね38の付勢力により引き寄せ磁性部材37が前進位置から後退位置へと移動される(図19から図21を参照)。これに伴い車両側引っ張りコイルばね32の付勢力が開放されることで、可動磁石23は、前進位置から後退位置へと移動される(図19から図21を参照)。後退位置とされた可動磁石23は、前面が共に車両側端子金具22の前端位置よりも前側に配されており、第2可動磁石23Bの前面であるN極面27から第1可動磁石23Aの前面であるS極面28へ向かう形で磁力線MLが発生している(図20を参照)。従って、図16及び図18に示す状態からさらに離脱が進行する間、両端子金具12,22間にアークARCが発生しても、一対の可動磁石23A,23Bの前面間を行き交う磁力線MLには、図9及び図20に示すように、内側領域IAにおいて端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1内側磁力線ML1と、外側領域OAにおいて端子磁力線TMLとは反対側に向かう第1外側磁力線ML2とが含まれるから、内側領域IAでは磁束密度が高くなるのに対し、外側領域OAでは磁束密度が低くなる。これにより、内側領域IAと外側領域OAとでは磁束密度の疎密に大きな差が生じることになるので、上記したように両端子金具12,22間にアークARCが発生していても、そのアークARCをなす電子には、図19に示すように、磁束密度が高くなった内側領域IAから磁束密度が低くなった外側領域OAに向かう大きなローレンツ力が作用する。このローレンツ力は、一対の可動磁石23A,23Bの並び方向である高さ方向と直交する幅方向(Y軸方向)、つまり一対の車両側端子金具22の並び方向に沿って内側領域IAから外側領域OAへ向けて作用するので、発生したアークARCがY軸方向に沿って外向き(隔壁21a1から遠ざかる側)に回曲される。特に、図19から図21に示すように、給電側コネクタ10のタワー部13が嵌合空間FS外に達した状態では、両端子金具12,22間に生じたアークARCが隔壁21a1を超えて繋がってPN間短絡を生じさせるおそれがあるものの、上記したローレンツ力によってアークARCが互いに正反対となる方向に引き離されるようになっているので、PN間短絡を効果的に抑制または防止することができる。なお、図19では、可動磁石23A,23Bの磁力によって回曲されたアークARCを両端子金具12,22に繋がる太線によって図示している。また、図20では、各可動磁石23A,23Bの磁極(NまたはS)を前後の端部にそれぞれ記入している。
上記のようにして両コネクタ10,20が離脱された状態では、可動磁石23は、図5から図7に示すように、車両側引っ張りコイルばね32によって付勢されることで前壁部29aとの間に間隔を空けた後退位置に至らされているので、仮に可動磁石が常に前進位置に配された場合に比べると、外部の金属粉などが可動磁石23の磁力によって引き寄せられて前壁部29aに付着する、といった事態が生じ難くなっている。
以上説明したように本実施形態の充電コネクタ(コネクタ)CCは、車両側ハウジング(一方のコネクタハウジング)21と、車両側ハウジング21に対して嵌合可能とされる給電側ハウジング(他方のコネクタハウジング)11と、車両側ハウジング21に収容され、給電側ハウジング11との嵌合方向と直交する方向について離間した位置にそれぞれ配される一対の車両側端子金具(一方の端子金具)22と、給電側ハウジング11に収容され、一対の車両側端子金具22の並び方向について離間した位置にそれぞれ配されるとともに一対の車両側端子金具22と接続されることで通電される一対の給電側端子金具(他方の端子金具)12と、車両側ハウジング21に収容され、相対的に前側の前進位置と、相対的に後側の後退位置との間を嵌合方向に沿って移動可能とされる可動磁石23であって、一対の車両側端子金具22の間に挟まれた内側領域IAを通り且つ通電に伴って車両側端子金具22の軸線周りに発生する端子磁力線TMLと同じ側またはその反対側に向かう第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3(内側磁力線)と、一対の車両側端子金具22の並び方向について内側領域IAに対して車両側端子金具22を挟んだ外側に位置する外側領域OAを通り且つ端子磁力線TMLとは反対側または端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4(外側磁力線)との少なくともいずれか一方を発生させる可動磁石23と、車両側ハウジング21に備えられ、可動磁石23を後退位置へと付勢する車両側引っ張りコイルばね(付勢手段)32と、給電側ハウジング11に備えられ、可動磁石23を車両側引っ張りコイルばね32による付勢力に抗しつつ前進位置へと引き寄せることが可能な引き寄せ磁性部材37と、を備える。
このようにすれば、給電側ハウジング11に対して車両側ハウジング21が嵌合された状態では、車両側端子金具22が給電側端子金具12に対して接続されることで通電される。この嵌合状態では、給電側ハウジング11に備えられる引き寄せ磁性部材37と車両側ハウジング21に収容された可動磁石23との間に作用する磁力により、可動磁石23が車両側引っ張りコイルばね32の付勢力に抗しつつ引き寄せ磁性部材37に引き寄せられて前進位置に至らされる。ここで、仮に通電状態にも拘わらず、給電側ハウジング11から車両側ハウジング21が離脱された場合には、給電側端子金具12から車両側端子金具22が外されるのに伴って給電側端子金具12と車両側端子金具22との間にアークARCが発生し、そのアークARCによって一対の車両側端子金具22間や一対の給電側端子金具12間が短絡させられることが懸念される。
その点、引き寄せ磁性部材37により前進位置に引き寄せられた可動磁石23からは、一対の車両側端子金具22の間に挟まれた内側領域IAを通り且つ通電に伴って車両側端子金具22の軸線周りに発生する端子磁力線TMLと同じ側またはその反対側に向かう第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と、一対の車両側端子金具22の並び方向について内側領域IAに対して車両側端子金具22を挟んだ外側に位置する外側領域OAを通り且つ端子磁力線TMLとは反対側または端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方が発生するものとされているので、内側領域IAと外側領域OAとで磁束密度の疎密に差が生じる。これにより、給電側端子金具12と車両側端子金具22との間にアークARCが発生したとしても、そのアークARCをなす電子には、内側領域IAと外側領域OAとのうち、磁束密度が相対的に高い側から磁束密度が相対的に低い側に向かうローレンツ力が作用することでアークARCが回曲され、もってアークARCによって一対の車両側端子金具22間や一対の給電側端子金具12間が短絡させられる事態が生じ難くなる。
その上、両ハウジング11,21が離脱される際には、離脱の進行に伴い引き寄せ磁性部材37と可動磁石23との間に作用する磁力が弱まることで、可動磁石23は、車両側引っ張りコイルばね32による付勢力によって前進位置から後退位置へと移動される。従って、両ハウジング11,21を離脱した状態では、車両側ハウジング21において可動磁石23は、車両側引っ張りコイルばね32により前進位置よりも後側に引っ込んだ後退位置に至らされているので、仮に可動磁石23が前進位置に配されたままとされた場合に比べると、外部の金属粉などが可動磁石23の磁力によって付着する事態が生じ難くなっている。
また、車両側ハウジング21には、可動磁石23を嵌合方向に沿って移動可能な状態で収容する可動磁石収容室29が設けられるとともに、可動磁石収容室29において前進位置とされた可動磁石23に対して嵌合方向の前側に位置する形で配される前壁部29aが設けられている。このようにすれば、前壁部29aによって嵌合方向について可動磁石23が前進位置からさらに前側に移動するのが規制されるのに加えて、可動磁石収容室29内に嵌合方向の前側から外部の金属粉などが侵入するのを防ぐことができる。これにより、可動磁石23の磁力によって外部の金属粉などがより付着し難くなる。
また、車両側引っ張りコイルばね32は、可動磁石収容室29において可動磁石23に対して嵌合方向の後側に配されている。仮に車両側引っ張りコイルばねを可動磁石23に対して嵌合方向の前側に配した場合には、可動磁石23と引き寄せ磁性部材37との間に車両側引っ張りコイルばねが介在する構成となり、引き寄せ磁性部材37と可動磁石23との間に作用する磁力が不十分なものとなるおそれがあるものの、上記したように可動磁石23に対して嵌合方向の後側に車両側引っ張りコイルばね32を配する構成とすれば、引き寄せ磁性部材37と可動磁石23との間に十分な磁力を作用させることができ、もって可動磁石23が前進位置へと適切に引き寄せられる。
また、車両側ハウジング21には、可動磁石収容室29が少なくとも嵌合方向の後側に開口する形で形成されるとともに、可動磁石収容室29を嵌合方向の後側から閉塞し且つ車両側引っ張りコイルばね32を抜け止めする抜け止め部材33が取り付けられている。このようにすれば、車両側ハウジング21に対して可動磁石23、車両側引っ張りコイルばね32及び抜け止め部材33を組み付けるに際しては、例えば、嵌合方向の後側に開口する可動磁石収容室29に対して後側から可動磁石23及び車両側引っ張りコイルばね32を収容した後、抜け止め部材33を車両側ハウジング21に取り付けるようにする。これにより、可動磁石収容室29に収容された可動磁石23及び車両側引っ張りコイルばね32を抜け止め部材33により抜け止めすることができる。抜け止め部材33により可動磁石収容室29が嵌合方向の後側から閉塞されているから、後側から可動磁石収容室29内に外部の金属粉などが侵入し難くなっており、それにより可動磁石23の磁力によって金属粉などがより付着し難くなっている。
また、可動磁石23は、嵌合方向に沿って延在する棒状をなすとともにその前面及び後面が磁極となる構成とされ、さらには車両側ハウジング21において嵌合方向及び一対の車両側端子金具22の並び方向と直交する方向について離間した位置に少なくとも一対が並んで配されている。このようにすれば、嵌合方向に沿って延在する棒状をなす少なくとも一対の可動磁石23における前面の間及び後面の間を行き交う形で第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方が発生するので、第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方が嵌合方向について広範囲にわたって存在することになる。これにより、車両側端子金具22と給電側端子金具12との間に発生するアークARCを嵌合方向について広範囲にわたって抑制することができる。
また、可動磁石23は、前進位置では後面から発せられる第2内側磁力線ML3と第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方により車両側端子金具22と給電側端子金具12との間に発生したアークARCを内側領域IAへ向けて曲回させるのに対し、後退位置では前面から発せられる第1内側磁力線ML1と第1外側磁力線ML2との少なくともいずれか一方により車両側端子金具22と給電側端子金具12との間に発生したアークARCを外側領域OAへ向けて曲回させている。このようにすれば、両ハウジング11,21が離脱される初期段階においては、引き寄せ磁性部材37によって前進位置に保たれる可動磁石23の後面から発せられる第2内側磁力線ML3と第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方により、車両側端子金具22と給電側端子金具12との間に発生したアークARCを内側領域IAへ向けて曲回させることができる。そして、両ハウジング11,21の離脱が進行するのに伴い、車両側引っ張りコイルばね32によって可動磁石23が後退位置にまで移動された状態であっても、可動磁石23の前面から発せられる第1内側磁力線ML1と第1外側磁力線ML2との少なくともいずれか一方により車両側端子金具22と給電側端子金具12との間に発生したアークARCを外側領域OAへ向けて曲回させることができる。これにより、両ハウジング11,21の離脱が開始されてから完了するまでの間において、継続的にアークARCに伴う不具合を生じ難くすることができる。
また、可動磁石23における前面及び後面には、第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3を発生させる第1内側磁力線発生面30及び第2内側磁力線発生面35(内側磁力線発生面)と、第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4を発生させる第1外側磁力線発生面31及び第2外側磁力線発生面36(外側磁力線発生面)とがそれぞれ有されている。このようにすれば、可動磁石23は、第1内側磁力線発生面30及び第2内側磁力線発生面35から一対の車両側端子金具22の間に挟まれた内側領域IAを通り且つ通電に伴って車両側端子金具22の軸線周りに発生する端子磁力線TMLと同じ側またはその反対側に向かう第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3を発生させるとともに、第1外側磁力線発生面31及び第2外側磁力線発生面36から一対の車両側端子金具22の並び方向について内側領域IAに対して車両側端子金具22を挟んだ外側に位置する外側領域OAを通り且つ端子磁力線TMLとは反対側または端子磁力線TMLと同じ側に向かう第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4を発生させているので、内側領域IAと外側領域OAとで磁束密度の疎密により大きな差が生じることになる。これにより、車両側端子金具22と給電側端子金具12との間にアークARCが発生したとしても、そのアークARCをなす電子には、より大きなローレンツ力が作用することでアークARCの回曲が図られ、もってアークARCによる短絡が一層生じ難くなる。
また、可動磁石23は、嵌合方向に沿う方向から視て円形状をなしている。このようにすれば、可動磁石23を小型に保ちつつも、第1内側磁力線発生面30及び第2内側磁力線発生面35と、第1外側磁力線発生面31及び第2外側磁力線発生面36とが有される円形状をなす前面及び後面から第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と、第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4とが広範囲に広がるよう発生するとともに同前面及び後面の表面積が十分に広く確保される。これにより、可動磁石23の配置スペースが小さくなるとともに、アークARCに伴う不具合の発生が一層生じ難いものとなる。
また、給電側ハウジング11には、引き寄せ磁性部材37を嵌合方向の後側から支持するとともに、嵌合方向に沿って弾性的に伸縮可能な給電側引っ張りコイルばね(弾性支持部材)38が備えられている。このようにすれば、離脱に伴って車両側ハウジング21に対して給電側ハウジング11が後退する際、給電側引っ張りコイルばね38が嵌合方向に沿って弾性的に伸長することで、給電側引っ張りコイルばね38により支持される引き寄せ磁性部材37が車両側ハウジング21及び可動磁石23に対して嵌合方向について一定の位置(前進位置)に保たれるので、この間、可動磁石23を引き寄せ磁性部材37により前進位置に保つことができる。その後、離脱の進行に伴い給電側引っ張りコイルばね38から引き寄せ磁性部材37に作用する引っ張り力が引き寄せ磁性部材37と可動磁石23との間に作用する磁力を上回ると、給電側引っ張りコイルばね38が弾性的に収縮することで引き寄せ磁性部材37が嵌合方向に沿って後退するとともに、可動磁石23が車両側引っ張りコイルばね32により後退位置へと移動される。
また、給電側ハウジング11には、給電側引っ張りコイルばね38と引き寄せ磁性部材37との間に介在する形で配される非磁性部材39が備えられるとともに、引き寄せ磁性部材37、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39をそれぞれ嵌合方向に沿って移動可能な形で収容することが可能な給電側収容室(他方側収容室)40が嵌合方向の前側に開口する形で設けられている。このようにすれば、両ハウジング11,21が嵌合された状態では、給電側ハウジング11に設けられた給電側収容室40内に引き寄せ磁性部材37、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39が収容される。両ハウジング11,21が離脱される過程では、引き寄せ磁性部材37が可動磁石23との間に作用する磁力により給電側収容室40に対して嵌合方向の前側に配されるものの、給電側引っ張りコイルばね38及び非磁性部材39が給電側収容室40内に収容された状態に保たれる。その後、離脱の進行に伴い給電側引っ張りコイルばね38から引き寄せ磁性部材37に作用する引っ張り力が引き寄せ磁性部材37と可動磁石23との間に作用する磁力を上回ると、給電側引っ張りコイルばね38が弾性的に収縮することで引き寄せ磁性部材37が非磁性部材39と共に嵌合方向に沿って後退する。このとき、引き寄せ磁性部材37は、給電側収容室40に対して嵌合方向の前側に配されているものの、給電側収容室40内に配された非磁性部材39によって円滑に給電側収容室40内に収容される。
ところで、引き寄せ磁性部材37は、前進位置に引き寄せられた可動磁石23と共に第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方を発生させることが可能とされている。この引き寄せ磁性部材37と給電側引っ張りコイルばね38との間には、非磁性部材39が介在する形で配されているから、仮に給電側引っ張りコイルばね38と引き寄せ磁性部材37との間に非磁性部材が介在しない構成とした場合に比べると、引き寄せ磁性部材37の後端位置を嵌合方向の前側に位置させることができる。従って、引き寄せ磁性部材37から発生する第1内側磁力線ML1及び第2内側磁力線ML3と第1外側磁力線ML2及び第2外側磁力線ML4との少なくともいずれか一方を、アークARCの発生位置により近くすることができ、それによりアークARCに伴う不具合がより生じ難いものとなる。
また、引き寄せ磁性部材37は、可動磁石23によって磁化されることで可動磁石23を前進位置へと引き寄せている。このようにすれば、例えば、両ハウジング11,21を嵌合する前の段階では、引き寄せ磁性部材37は、可動磁石23によって磁化されていないので、引き寄せ磁性部材37に外部の金属粉などが付着する事態が生じ難くなる。
また、可動磁石23は、永久磁石からなる。このようにすれば、仮に、可動磁石を電磁石とした場合に比べると、電磁石用の回路などが不要となるので、小型化や低コスト化などの面で優れる。
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図22によって説明する。この実施形態2では、車両側コネクタ120に付勢手段として圧縮コイルばね41を設置したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態に係る車両側コネクタ120には、図22に示すように、可動磁石123を後退位置に付勢するための付勢手段として、上記した実施形態1に記載した車両側引っ張りコイルばねに代えて圧縮コイルばね41が備えられている。圧縮コイルばね41は、非磁性材料である合成樹脂材料からなるものとされており、その軸線方向が嵌合方向(X軸方向)と一致している。圧縮コイルばね41は、自然状態から軸線方向に沿って押し込まれて縮められると、元の自然状態に戻ろうと付勢力(弾性圧縮力)を発揮することが可能とされる。圧縮コイルばね41は、後退位置とされた可動磁石123に対して前側に配されるとともに、その前端部が車両側端子収容部121aの前壁部129aに当接されるのに対し、後端部が可動磁石123の前面に当接されている。従って、後退位置とされた可動磁石123が前進位置に向けて移動(前進)されると、圧縮コイルばね41は、可動磁石123を後退させるような付勢力を蓄積しつつ弾性的に圧縮されるようになっている。また、抜け止め部材133には、抜け止め本体部133aから前方へ向けて突出して端子挿通孔125内に挿入されるとともに、後退位置とされた可動磁石123の後面に当接されることで、後退位置とされた可動磁石123を後側から支持する可動磁石支持部42が設けられている。このように、車両側コネクタ120の付勢手段として圧縮コイルばね41を用いるようにした場合でも、上記した実施形態1に記載したものと同様の作用及び効果を得ることができる。
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図23によって説明する。この実施形態3では、可動磁石223の形状を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態に係る可動磁石223は、図23に示すように、正面から視て略菱形をなす角柱状に形成されている。このような構成であっても、上記した実施形態1と同様に一対の可動磁石223から発生される磁界に含まれる磁力線によりアークに伴うPN間短絡を抑制または防止を図ることができる。
<実施形態4>
本発明の実施形態4を図24によって説明する。この実施形態4では、可動磁石323の形状を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態に係る可動磁石323は、図24に示すように、正面から視て略三角形をなす角柱状に形成されている。このような構成であっても、上記した実施形態1と同様に一対の可動磁石323から発生される磁界に含まれる磁力線によりアークに伴うPN間短絡を抑制または防止を図ることができる。
<実施形態5>
本発明の実施形態5を図25によって説明する。この実施形態5では、可動磁石423の形状を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態に係る可動磁石423は、図25に示すように、正面から視て略半円形をなす半円柱状に形成されている。このような構成であっても、上記した実施形態1と同様に一対の可動磁石423から発生される磁界に含まれる磁力線によりアークに伴うPN間短絡を抑制または防止を図ることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記した各実施形態の変形例として、例えば、可動磁石の外周面と端子挿通孔の内周面との間にゴム材料などの弾性材料からなるダンパー部材を介在させる構成とすることも可能である。ダンパー部材によって端子挿通孔内を可動磁石が移動する際の摩擦抵抗が大きなものとなるから、その分だけ可動磁石を前進位置に維持するために用いられる給電側引っ張りコイルばねのばね力を小さなものとすることが可能となる。さらには、ダンパー部材の設計によっては給電側引っ張りコイルばねを省略することも可能である。
(2)上記した各実施形態以外にも、車両側コネクタにおける一対の可動磁石の配置を入れ替えることも可能である。具体的には、前面がS極面とされて後面がN極面とされる第1可動磁石と、前面がN極面とされて後面がS極面とされる第2可動磁石との配置を入れ替えると、前面間を行き交う磁力線と、後面間を行き交う磁力線とが上記した各実施形態に記載したものとは逆向きとなる。このため、両コネクタが離脱される初期段階(図13から図18を参照)では、可動磁石の後面間を行き交う磁力線により生じるローレンツ力によって両端子金具間に発生したアークが外向きに回曲されるのに対し、両コネクタが離脱される終盤段階(図19から図21を参照)では、可動磁石の前面間を行き交う磁力線により生じるローレンツ力によって両端子金具間に発生したアークが内向きに回曲される。
(3)上記した各実施形態では、前面及び後面が磁極となる可動磁石を用いた場合を示したが、前面及び後面が磁極とはならずに外周面が磁極となる可動磁石を用いることも可能である。その場合、使用する可動磁石の数を1つのみとすることも可能となる。
(4)上記した各実施形態では、可動磁石の設置数と、付勢手段である車両側引っ張りコイルばね(圧縮コイルばね)の設置数とを一致させた場合を示したが、可動磁石の設置数よりも付勢手段の設置数が少なくなる設定とすることが可能である。具体的には、例えば、U字型の車両側引っ張りコイルばね(圧縮コイルばね)を用い、その両端部をそれぞれ2つの可動磁石における後面(前面)に当接させる構成を採ることが可能である。
(5)上記した各実施形態では、引き寄せ磁性部材の設置数と、弾性支持部材である給電側引っ張りコイルばねの設置数とを一致させた場合を示したが、引き寄せ磁性部材の設置数よりも弾性支持部材の設置数が少なくなる設定とすることが可能である。
(6)上記した各実施形態では、可動磁石の設置数と、引き寄せ磁性部材の設置数とを一致させた場合を示したが、可動磁石の設置数と、引き寄せ磁性部材の設置数とを異ならせることが可能であり、可動磁石の設置数が引き寄せ磁性部材の設置数よりも多くなる構成や、可動磁石の設置数が引き寄せ磁性部材の設置数よりも少なくなる構成を採ることが可能である。
(7)上記した各実施形態では、可動磁石及び引き寄せ磁性部材の設置数を2つずつとした場合を示したが、可動磁石及び引き寄せ磁性部材の設置数を3つ以上ずつとすることも可能である。
(8)上記した各実施形態以外にも、可動磁石の正面から視た形状は適宜に変更可能である。例えば、正面から視て五角形以上の多角形や楕円形などとされる磁性部材を使用することが可能である。また、可動磁石が正面から視て上側部分と下側部分とで異なる形状となっていても構わない。また、可動磁石における側方から視た形状についても適宜に変更可能である。
(9)上記した各実施形態では、給電側コネクタに引き寄せ磁性部材として可動磁石によって磁化される金属製のものを用いた場合を示したが、引き寄せ磁性部材として永久磁石を用いることも可能である。
(10)上記した各実施形態以外にも、可動磁石や車両側引っ張りコイルばね(圧縮コイルばね)の長さ寸法を変更するとともに、前進位置及び後退位置とした可動磁石における前面及び後面の嵌合方向についての位置(特に車両側端子金具の前端位置との相対的な位置関係)を変更することが可能である。
(11)上記した各実施形態以外にも、可動磁石収容室の前壁部における嵌合方向についての位置は適宜に変更可能である。
(12)上記した各実施形態では、可動磁石収容室が後方にのみ開口する形態としたものを示したが、可動磁石収容室をZ軸方向やY軸方向に沿って側方に開口する形態とすることも可能である。その場合、可動磁石収容室を後方に開口させない構成として、抜け止め部材を省略することも可能である。
(13)上記した各実施形態では、「Combined Charging System(コンボ方式)」に適合した充電コネクタにおいて車両側コネクタ側に可動磁石を配置したものを示したが、同充電コネクタにおいて給電側コネクタ側に可動磁石を配置し、車両側コネクタ側に引き寄せ磁性部材を配置することも可能である。さらには、車両側コネクタと給電側コネクタとに可動磁石と引き寄せ磁性部材とを1つずつ配置することも可能である。
(14)上記した各実施形態では、通常充電部及び急速充電部を併有してなる「Combined Charging System(コンボ方式)」に適合した充電コネクタについて例示したが、通常充電用コネクタと急速充電用コネクタとを分離したCHAdeMO(登録商標)方式に適合した充電コネクタにも本発明は適用可能である。
(15)上記した各実施形態では、外側磁力線が内側領域に対して外側に存在する一対の外側領域の双方において作用する磁界を発生させる可動磁石を用いたものを示したが、外側磁力線が片方の外側領域においてのみ作用する磁界を発生させる可動磁石を用いることも可能である。
(16)上記した各実施形態では、可動磁石が内側磁力線(第1内側磁力線及び第2内側磁力線)及び外側磁力線(第1外側磁力線及び第2外側磁力線)を共に発生させる構成、つまり内側磁力線発生面(第1内側磁力線発生面及び第2内側磁力線発生面)及び外側磁力線発生面(第1外側磁力線発生面及び第2外側磁力線発生面)を共に有する構成のものを示したが、内側磁力線のみを発生させる構成(内側磁力線発生面のみを有する構成)の可動磁石や、外側磁力線のみを発生させる構成(外側磁力線発生面のみを有する構成)の可動磁石を用いることも可能である。
(17)上記した各実施形態以外にも、正極側の車両側端子金具または電力用端子金具と、負極側の車両側端子金具または電力用端子金具との配置を逆転させることも可能である。その場合は、可動磁石におけるN極面及びS極面の配置も逆転させることが可能である。
(18)上記した各実施形態以外にも、正極側の車両側端子金具または電力用端子金具と、負極側の車両側端子金具または電力用端子金具とが高さ方向に沿って上下に並ぶ配置とすることも可能である。その場合は、N極面とS極面とが幅方向に沿って左右に並ぶよう可動磁石の配置を変更することが可能である。
(19)上記した各実施形態では、可動磁石の並び方向と、一対の車両側端子金具または電力用端子金具の並び方向とが互いに直交する位置関係のものを示したが、可動磁石の並び方向と、一対の車両側端子金具または電力用端子金具の並び方向とが直交せずに交差する(90度以外の角度で交差する)位置関係とされるものも本発明に含まれる。
(20)上記した各実施形態では、可動磁石として永久磁石を用いた場合を示したが、可動磁石として電磁石を使用することも可能である。
(21)上記した各実施形態では、急速充電用のコネクタについて例示したが、通常充電用のコネクタにも本発明は同様に適用可能である。