まず、図1を用いて、画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプリンターの構成の概略を示す模式図である。
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(図示せず)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の近傍に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
プリンター本体2の上部には、排紙トレイ4の下方にレーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送路15が設けられている。搬送路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送路15の下流端には排紙部20が設けられている。搬送路15の下方には、両面印刷用の反転経路21が形成されている。
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部20から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残ったトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
次に、定着装置18について詳細に説明する。以下、説明の便宜上、図2における紙面手前側を定着装置18の前側(正面側)とする。図3、図4の矢印Frは、定着装置18の前側(正面側)を示している。
図2に示されるように、定着装置18は、箱型形状を成す定着フレーム22と、定着フレーム22の右上部に収容される定着ローラー23(定着部材)と、定着ローラー23に収容される熱源24(温度調整部材)と、定着ローラー23の上方に配置される温度センサー25と、定着ローラー23と対向して定着フレーム22の右下部に収容される加圧ローラー26(加圧部材)と、定着ローラー23の左方に配置される支持部材27と、支持部材27に支持される分離爪28(分離部材)と、定着ローラー23と分離爪28の間に配置される接触角調整機構29と、定着ローラー23の左上方に配置されるクリーニングローラー30(クリーニング部材)と、クリーニングローラー30の左方に配置されるファン31(温度調整部材)と、を備えている。
定着フレーム22の右端壁32には上流側開口部33が設けられ、定着フレーム22の左端壁34には下流側開口部35が設けられている。そして、上流側開口部33を介して定着フレーム22に導入された用紙が、下流側開口部35を介して定着フレーム22から導出されるようになっている。定着フレーム22の前端壁36と後端壁37(図2では、後端壁37のみ表示)の左上部には、押圧方向Y(本実施形態では、左下方に傾斜する方向)に沿って、長孔状の支持穴38が穿設されている。
定着ローラー23は、前後方向に長い形状を成している。定着ローラー23は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。定着ローラー23は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、この芯材に周設され、シリコンゴム等から成る弾性層と、この弾性層を被覆し、PFA等のフッ素樹脂から成る離型層と、を備えている。
熱源24は、例えばハロゲンヒーターやセラミックヒーター等のヒーターによって構成されている。熱源24は、通電によって発熱することで、定着ローラー23を加熱するように構成されている。
温度センサー25は、例えばサーミスターによって構成されている。温度センサー25は、定着ローラー23に対して非接触で設けられており、定着ローラー23の温度を検出するように構成されている。なお、温度センサー25は、定着ローラー23に接触していても良い。
加圧ローラー26は、定着ローラー23と同様に前後方向に長い形状を成している。加圧ローラー26は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。加圧ローラー26は、定着ローラー23に圧接しており、定着ローラー23と加圧ローラー26の間には、定着ニップ40が形成されている。加圧ローラー26は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、この芯材に周設され、シリコンゴム等から成る弾性層と、この弾性層を被覆し、PFA等のフッ素樹脂から成る離型層と、を備えている。
支持部材27は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。図3に示されるように、支持部材27は、定着フレーム22の前端壁36と後端壁37の間に架設されている。支持部材27は、前後方向に延びる底壁部41と、底壁部41に立設される一方側壁部42及び他方側壁部43と、を備えている。底壁部41の前後両端部は、それぞれ定着フレーム22の前端壁36と後端壁37に固定されている。
一方側壁部42と他方側壁部43は、前後方向に間隔をおいて複数セット(例えば4セット)設けられている。一方側壁部42と他方側壁部43は、前後方向に間隔をおいて対向している。図2に示されるように、一方側壁部42と他方側壁部43(図2では一方側壁部42のみ表示)の上部には、押圧方向Yに沿って、長孔状の挿入穴44が穿設されている。一方側壁部42の右上隅部と他方側壁部43の右上隅部の間には、バネ支持部45が架設されている。
分離爪28は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。分離爪28は、用紙の搬送方向において定着ニップ40の下流側に配置されている。図3に示されるように、分離爪28は、前後方向に間隔をおいて複数個(例えば4個)設けられている。
図4等に示されるように、分離爪28は、分離爪本体46と、この分離爪本体46に固定される前後一対の支軸47と、を備えている。
分離爪本体46は、略横向き三角柱状を成している。図2に示されるように、分離爪本体46の先端部48(本実施形態では右端部)は、先鋭形状を成しており、定着ローラー23の外周面に接触している。分離爪本体46は、定着ローラー23の外周面と対向する対向面50を有しており、分離爪本体46の断面は、対向面50側を斜辺とする直角三角形状を成している。なお、図2及び図5の二点鎖線aは、分離爪本体46の先端部48が定着ローラー23の外周面に接触する点における定着ローラー23の接線(以下、「接線a」とする。)を示している。以下、正面視において上記接線aと対向面50が成す角を、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と称する。図4に示されるように、分離爪本体46の対向面50の左側部には、断面半円状の係合溝51が前端から後端まで形成されている。
各支軸47は、横向き円柱状を成している。各支軸47の前後方向内側部分は、分離爪本体46の係合溝51の前後両端部にそれぞれ嵌合している。これにより、各支軸47が分離爪本体46に固定されている。各支軸47の前後方向外側部分は、分離爪本体46の前後両面から突出している。図2等に示されるように、各支軸47の前後方向外側部分は、支持部材27の一方側壁部42と他方側壁部43(図2では、一方側壁部42のみ表示)にそれぞれ設けられた挿入穴44に挿入されている。これにより、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能且つ分離爪本体46の先端部48を中心に回転可能となるように、支持部材27に支持されている。
以下、支軸47が挿入穴44の上部に挿入されているときの分離爪28の位置(図2参照)を、分離爪28の「トナー吐き出し位置」と称する。また、この時の定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を、「第1の角度θ1」とする。これに対して、支軸47が挿入穴44の下部に挿入されているときの分離爪28の位置(図5参照)を、分離爪28の「トナー保持位置」と称する。また、この時の定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を、「第2の角度θ2」とする。第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも大きい。
図2等に示されるように、接触角調整機構29は、コイルバネ52(付勢部材)と、コイルバネ52の上方に配置される押圧部材53と、を備えている。
コイルバネ52の上端部は、支持部材27のバネ支持部45に固定されている。コイルバネ52の下端部は、分離爪本体46の対向面50のうちの係合溝51よりも先端部48に近い部分に固定されている。コイルバネ52は、分離爪28を持ち上げており、分離爪本体46の先端部48が定着ローラー23の外周面に押し当てられている。コイルバネ52は、分離爪28をトナー吐き出し位置(図2参照)に付勢している。
押圧部材53は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。図3に示されるように、押圧部材53は、前後方向に延びる押圧軸54と、前後方向に間隔をおいて押圧軸54に固定される複数個(例えば4個)の押圧片55と、を備えている。なお、図4では、押圧部材53のうちの押圧片55のみが表示されている。
押圧軸54の前端部と後端部は、定着フレーム22の前端壁36と後端壁37にそれぞれ設けられた支持穴38(図2参照)に係合している。これにより、押圧方向Yに沿ってスライド可能な状態で、押圧部材53が定着フレーム22に支持されている。
図4に示されるように、押圧片55は、扁平な形状を成しており、押圧方向Yに沿って延びている。押圧片55の下端部には、半円弧状に湾曲する係合部57が設けられている。押圧片55の上部には、貫通穴56が前後方向に設けられており、図2に示されるように、この貫通穴56を押圧軸54が貫通している。これにより、押圧片55の上部が押圧軸54に固定されている。
クリーニングローラー30は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。クリーニングローラー30は、定着ローラー23と接触する位置(図2参照)と、定着ローラー23から離間する位置(図5参照)との間でスライド可能となるように、定着フレーム22に支持されている。つまり、クリーニングローラー30は、定着ローラー23に対して接離可能に設けられている。
ファン31は、例えば、定着フレーム22に設けられた吸気口(図示せず)の内側に配置されている。ファン31は、押圧部材53の押圧片55に対して冷却風を吹き付けるように構成されている。
次に、定着装置18の制御システムについて、主に図6を用いて説明する。
図6に示されるように、定着装置18には、制御部61(CPU)が設けられている。制御部61は、ROM、RAM等の記憶装置で構成される記憶部62と接続されており、記憶部62に格納された制御プログラムや制御用データに基づいて、制御部61が定着装置18の各部の制御を行うように構成されている。
制御部61は、温度センサー25に接続されており、温度センサー25が検出した定着ローラー23の温度が、制御部61に出力されるようになっている。
制御部61は、熱源24に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて熱源24が通電して発熱することで、熱源24によって定着ローラー23が加熱されるように構成されている。
制御部61は、ファン31に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいてファン31の稼働と停止が切り替わるようになっている。
制御部61は、モーターやソレノイド等によって構成される第1駆動源63に接続されており、第1駆動源63は、押圧部材53に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて第1駆動源63が押圧部材53を押圧方向Yに沿ってスライドさせるように構成されている。
制御部61は、モーターやソレノイド等によって構成される第2駆動源64に接続されており、第2駆動源64は、クリーニングローラー30に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて、定着ローラー23と接触する位置と定着ローラー23から離間する位置の間で、第2駆動源64がクリーニングローラー30をスライドさせるように構成されている。
制御部61は、モーター等によって構成される第3駆動源65に接続されており、第3駆動源65は、定着ローラー23に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて、第3駆動源65が定着ローラー23を回転させるように構成されている。
上記のように構成されたものにおいて、まず、プリント動作について説明する。
プリント動作を行う際には、第3駆動源65によって定着ローラー23を回転させる。このように定着ローラー23を回転させると、定着ローラー23に圧接する加圧ローラー26が定着ローラー23とは逆方向に従動回転する。また、プリント動作を行う際には、熱源24によって定着ローラー23を加熱する。この状態で、用紙が定着ニップ40を通過すると、用紙上のトナーが加熱及び加圧されて、用紙にトナー像が定着される。定着ニップ40を通過した用紙は、分離爪28によって定着ローラー23から分離される。
次に、分離爪28にトナーを保持する制御及び分離爪28からトナーを吐き出す制御について説明する。
プリンター1においてプリント動作が繰り返されている時には、図2に示されるように、分離爪28がトナー吐き出し位置にあり、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角は、第1の角度θ1になっている。また、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能となっており、分離爪本体46の先端部48は、コイルバネ52によって定着ローラー23の外周面に押し当てられている。また、クリーニングローラー30は定着ローラー23に接触している。
上記のようにプリンター1においてプリント動作を繰り返すと、定着ニップ40を用紙が通過する際に、用紙表面に付着しているトナーがオフセットして定着ローラー23に移り、この定着ローラー23に移ったトナーが定着ローラー23から分離爪本体46の先端部48付近に移って、堆積する。この堆積したトナーは、一端終了したプリント動作を再開する時に、塊となって定着ローラー23に再付着し、又は、定着ローラー23から加圧ローラー26に移動して、定着ニップ40を通過する用紙を汚す可能性がある。
そこで、一端終了したプリント動作を再開するような場合には、定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始される時に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って左下方にスライドさせる。これに伴って、図4(b)及び図5に示されるように、押圧部材53の押圧片55の係合部57が分離爪本体46の係合溝51に係合し、押圧部材53が分離爪本体46の左側部(先端部48とは反対側の部分)を押圧方向Yに沿って左下方に押圧する。この押圧により、コイルバネ52の付勢力に抗して、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心に分離爪28がトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転し、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角が、第1の角度θ1から第2の角度θ2に変化する。これに伴って、分離爪28によってトナーを保持しやすくなるため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着しにくくなる。
なお、上記のように分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させても、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能な状態を保持している。また、分離爪本体46の先端部48は、コイルバネ52の付勢力によって定着ローラー23の外周面に押し当てられている。
また、上記のように定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始される時に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って左下方にスライドさせるのと同時に、ファン31を稼働させる。このようにファン31を稼働させると、ファン31からの冷却風が押圧部材53の押圧片55に吹き付けられる(図5の矢印b参照)。これに伴って、押圧部材53の温度が低下し、押圧部材53と接触する分離爪28の温度も低下する。このようにファン31によって分離爪28の温度を低下させると、分離爪28に堆積したトナーの粘度が上昇し、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着し難くなる。従って、定着ローラー23から分離爪28に移ったトナーが塊となって定着ローラー23に再付着するのを防止し、定着ローラー23に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。
なお、上記のようにファン31からの冷却風を押圧部材53の押圧片55に吹き付ける際には、熱源24による定着ローラー23に対する加熱を妨げないように、冷却風の強さ及び向きを調整するのが好ましい。また、上記のように分離爪28がトナー保持位置にある時には、熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時よりも低く設定するのが好ましい。これにより、定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度が上昇するのを極力抑制することができるため、分離爪28の温度を一層低下させやすくなる。
また、上記のように分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期して、図5に示されるように、クリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させる。このように、定着ローラー23に対する清掃の必要が無い場合には、クリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させておくことで、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の摩耗を抑制することができる。これに伴って、クリーニングローラー30と定着ローラー23を常時接触させておく場合と比較して、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の寿命を延ばすことができる。
一方で、分離爪28をトナー保持位置に常時配置すると、分離爪本体46の先端部48付近にトナーが堆積し続けるため、いずれは大きな塊となったトナーが定着ローラー23に付着して、用紙に大きな汚れを発生させる可能性が高い。そこで、定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間経過後(例えば、プリント動作を開始してから数十秒経過後)、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って右上方にスライドさせる。これに伴って、図2及び図4(a)に示されるように、押圧部材53の押圧片55の係合部57が分離爪本体46の係合溝51から離脱し、押圧部材53による分離爪本体46の左側部に対する押圧が解除される。この押圧の解除に伴って、コイルバネ52の付勢力により、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心にトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで分離爪28が回転し、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角が、第2の角度θ2から第1の角度θ1に変化する。これに伴って、分離爪28からトナーを吐き出しやすくなるため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着しやすくなる。
また、上記のように定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間経過後に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って右上方にスライドさせるのと同時に、ファン31の稼働を停止させる。これに伴って、熱源24によって加熱されている定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度が上昇する。そのため、分離爪28に堆積したトナーの粘度が低下し、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着しやすくなる。従って、分離爪28に堆積したトナーを効率的に回収して、分離爪28に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
なお、上記のように分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着するが、既に定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間が経過しており、定着ローラー23が安定して回転しているため、塊となったトナーが一気に定着ローラー23に付着する可能性は低い。つまり、目に見えないレベル又は殆ど目立たず問題にならないレベルで、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に少しずつ付着することになる。そのため、塊となったトナーによって用紙が著しく汚されるのを回避しながら、分離爪28に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
なお、分離爪28がトナー保持位置にある時に熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時よりも低く設定していた場合には、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同時に、又は、段階的に、熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時の温度に戻すのが望ましい。これにより、定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度を上昇させやすくなり、分離爪28がトナーを吐き出しやすくなる。
また、上記のように分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期して、定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させる(図2参照)。これにより、定着ローラー23に付着したトナーを効率的に除去することができる。
以上のように、本実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と分離爪28の温度を連動して変化させることで、分離爪28によってトナーを保持する機能と分離爪28からトナーを吐き出す機能を併せて強化することができる。そのため、定着ローラー23から分離爪28に移ったトナーが塊となって定着ローラー23に再付着するのを確実に防止し、定着ローラー23に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。また、定着ローラー23を逆回転させる必要が無いため、定着装置18の構成の複雑化、生産性の低下といった課題を回避しながら、トナーが用紙を汚すのをより確実に防止することができる。
また、定着ローラー23を加熱するための熱源24を、温度調整部材として利用している。そのため、分離爪28がトナー吐き出し位置にある時に、特別な機構を追加せずに分離爪28の温度を上昇させることができる。
また、分離爪28がトナー保持位置にある時に、分離爪28に接触する押圧部材53の押圧片55にファン31からの冷却風を吹き付けることで、分離爪28の温度を低下させている。このような構成を採用することで、分離爪28に対する冷却効率を高めて、分離爪28に堆積したトナーの粘度を速やかに上昇させることができる。そのため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着し難くなる。
また、コイルバネ52と押圧部材53によって接触角調整機構29が構成されている。そのため、簡易な構成を用いて定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させることが可能となる。
また、分離爪28は、トナー吐き出し位置とトナー保持位置の間で、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心に回転可能に設けられている。このような構成を採用することで、分離爪28を定着ローラー23に接触させたまま、分離爪28をトナー吐き出し位置とトナー保持位置の間で回転させることができる。そのため、定着ローラー23に対して分離爪28を接離させる場合と比較して、定着ローラー23や分離爪28が局所的なダメージを受けにくくなる。
また、分離爪28及び押圧部材53の一部又は全部が高熱伝導材によって形成されている。そのため、分離爪28がトナー保持位置にある時に、ファン31からの冷却風によって分離爪28及び押圧部材53の温度を急速に低下させ、分離爪28に堆積したトナーの粘度を急速に上昇させることができる。
また、支持部材27の一部又は全部が高熱伝導材によって形成されているため、分離爪28がトナー吐き出し位置にある時に、支持部材27からの伝熱によっても分離爪28の温度を上昇させることができる。
本実施形態では、分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期してクリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させ、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期して定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させる場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、本実施形態とは逆に、分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期して定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させ、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期してクリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させても良い。このような構成を採用することで、分離爪28がトナー保持位置にあるにも関わらず定着ローラー23に付着してしまったトナーを定着ローラー23から除去することができる。また、クリーニングローラー30と定着ローラー23を常時接触させておく場合と比較して、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の寿命を延ばすことができる。
本実施形態では、クリーニングローラー30をクリーニング部材として用いたが、他の異なる実施形態では、クリーニングブレード等をクリーニング部材として用いても良い。本実施形態では、クリーニングローラー30を定着ローラー23に対して接離させる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、クリーニングローラー30を加圧ローラー26に対して接離させても良い。
本実施形態では、支持部材27、分離爪28及び押圧部材53の一部または全部が高熱伝導材によって形成される場合について説明したが、他の異なる実施形態では、支持部材27、分離爪28及び押圧部材53が、高熱伝導性を有しない一般的な樹脂や金属によって形成されていても良い。
本実施形態では、ファン31からの冷却風を押圧部材53の押圧片55に吹き付ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、ファン31からの冷却風を分離爪28に直接吹き付けても良い。
本実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と分離爪28の温度を同時に変化させる場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させてから一定時間経過後に分離爪28の温度を変化させたり、分離爪28の温度を変化させてから一定時間経過後に定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させたりしても良い。つまり、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させるのに伴って分離爪28の温度を変化させていれば良く、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させるタイミングと分離爪28の温度を変化させるタイミングは必ずしも同時でなくても良い。
本実施形態では、定着ローラー23を定着部材として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、定着ベルトを定着部材として用いても良い。本実施形態では、加圧ローラー26を加圧部材として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、加圧ベルトを加圧部材として用いても良い。
本実施形態では、ハロゲンヒーターやセラミックヒーター等のヒーターを熱源24として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、IHコイルを熱源24として用いても良い。
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、デジタル複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。