特許文献1において、無電解銅めっき装置は、めっき槽、貯液槽、金属銅溶解槽、銅補給槽および移送ポンプを含む構成を有している。この無電解銅めっき装置においては、めっき槽から一部汲み取っためっき液を移送ポンプによって貯液槽に送給し、次に、貯液槽から移送ポンプによって金属銅溶解槽に送給する。すなわち、金属銅溶解槽に酸素富化ガスを吹き込み、めっき液中の溶存酸素によって金属銅を溶解し、めっき液中の銅イオンを増大させる方式である。この無電解銅めっき装置においては、銅イオン濃度の高まっためっき液を再び貯液槽に戻し、更に貯液槽から移送ポンプにより銅補給槽に送給し、最終的に銅補給槽からめっき槽に供給する経路が配置してある。
無電解銅めっき液に硫酸イオンの蓄積を防止できると共に、配管内に銅の析出が起こらず、繰り返し無電解銅めっきにおいてめっき膜表面に銅微粒子の付着が起こらない平滑なめっき膜を長期間にわたって安定して得られることが開示されている。
特許文献1において、めっき液は、めっき槽から一旦貯液槽に送液される。めっき反応に伴う銅イオン消費を補うためには、貯液槽から金属銅溶解槽への送液を行うことでめっき液中の銅イオン濃度を高めることが可能である。逆に、めっき液中の銅イオン濃度が上昇しすぎた場合には、貯液槽から金属銅溶解槽への送液を停止することにより、銅イオン濃度の制御が可能と考えられる。金属銅溶解槽から銅イオン濃度の高まっためっき液が貯液槽に送液され、i)銅補給槽に一旦送液する場合及びii)貯液槽から移送ポンプを逆回転して直接めっき槽に送液する場合が開示されている。
しかし、上記i)の場合においては、めっき槽および金属銅溶解槽の他に貯液槽及び銅補給槽を設ける必要があり、装置規模が大きく複雑になること、また、各槽の温度等の条件を保持するため、より多くのエネルギーを必要とすること等の欠点がある。上記ii)の場合においては、銅イオン濃度の高まっためっき液のめっき槽への供給が間欠的にならざるを得ず、めっき液中の銅イオン濃度の変動が大きくなり、めっき膜質に影響を及ぼすおそれがある。
上記課題を解決するため、我々が検討した結果、以下の発明を見出すに至った。
本発明の無電解めっき装置は、被めっき処理基材をめっき液に浸漬して金属のめっきを行うめっき槽と、前記めっき槽から抜き取った前記めっき液に前記金属を溶解することにより前記金属のイオンを補給する金属溶解槽と、前記金属溶解槽に送液されるめっき液に対して酸素富化ガスを供給する酸素富化ガス供給部と、前記金属溶解槽から送液されるめっき液に含まれる溶存酸素の濃度を低下させて曝気液を生成する曝気槽と、前記曝気槽から前記めっき槽に曝気液を送る曝気液搬送部と、を備え、前記曝気槽は、前記曝気槽内のめっき液に微細な気泡径の空気を供給する微細空気供給部を有し、前記金属が銅またはニッケルである無電解金属めっき装置である。
めっき液の循環経路として、めっき槽から抜き取っためっき液が金属溶解槽、曝気槽を経由してめっき槽に戻される構成となっている。金属溶解槽では送液されためっき液に対して酸素富化ガスを供給するため、金属溶解槽を経由しためっき液は溶存酸素濃度が高くなっている。ここで、金属溶解槽を経由して溶存酸素濃度が高くなっためっき液を直接めっき槽へ送液した場合には、めっき槽においてめっき反応が停止する現象が見られる。そのため、本発明の無電解めっき装置は、めっき液の循環経路においてめっき槽の後流に送液ポンプを含むめっき液搬送部を介して金属溶解槽を配置し、更にその後流に曝気槽を配置することを特徴とする。
曝気槽とは、溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して空気を供給することで、めっき液中の溶存酸素濃度を大気圧下平衡状態における濃度(以下、通常濃度と呼ぶ)に変化させる機能を有する槽である。本発明の無電解めっき装置の曝気槽は、微細な気泡径の空気を供給する微細空気供給部を有することを特徴とするものである。ここで、本明細書における空気の気泡径について定義する。例えば、微細空気供給部を曝気槽底部に設けた場合、気泡の上昇と共にその径が増大する。そのため、本明細書では、微細空気供給部から供給される空気の気泡径は、微細空気供給部近傍、すなわち供給孔から周囲10cm以内における気泡径とする。この微細空気供給部近傍における空気の気泡径としては、10μm以上、1mm未満であることが好ましい。また、曝気槽に具備された微細空気供給部の供給流量がめっき液の循環流量以上となる条件で空気供給することが好ましい。金属溶解槽を経由しためっき液は液中の溶存酸素濃度が高まっているが、前述した曝気槽にめっき液を経由させることにより、液中の溶存酸素濃度を、金属溶解槽を経由する前の通常の濃度に戻すことができる。一般的な空気供給配管で供給される直径約1000μm以上の気泡を用いた場合、酸素富化めっき液に対して長時間空気を供給することで、めっき液の溶存酸素濃度を通常濃度に戻すことは可能であるが、実用上以下の問題がある。すなわち、めっき槽において銅イオン濃度を低下させず安定化させるためには、適切な条件でめっき液を循環させる必要がある。そのため、めっき液の循環流量に比べて溶存酸素濃度を通常濃度に戻す速度、ガス置換速度が小さい場合、曝気槽においてめっき液中の溶存酸素濃度をめっき反応が進行する程度にまで十分に低減することができず、結果的にめっき反応が停止してしまう不具合が発生する。めっき液の曝気槽での滞留時間を増加させることも考えられるが、そのためには曝気槽のサイズを大規模にする必要がある。そこで我々はガス置換速度の高速化を狙い、酸素富化状態のめっき液に対する微細空気によるガス置換速度を評価した。その結果、微細空気を用いた場合、一般的な空気供給配管に比べて著しくガス置換が促進され、めっき液中の溶存酸素濃度を高速に通常濃度まで低減できることを見出した。これは、一般的な空気供給配管より供給される空気に比べて微細空気供給部より供給される空気はその径が小さく、それに伴って同じ空気供給流量を考えた場合、前者に比べて後者において液中での空気泡の総表面積が大きくなる。その結果、めっき液と空気との接触頻度が増大し、ガス置換速度が向上したと考えられる。これにより、溶存酸素濃度が通常濃度になっためっき液をめっき槽へ供給でき、不具合なく、めっき反応を進行させることが可能になる。
一方、微細空気の気泡径が10μmを下回ると、めっき液の粘性が大きくなりすぎ、送液ポンプの負荷が増大することに加えて、微細なスルーホールを有するような基板を処理する場合、スルーホール内部へのめっき液の供給が妨げられ、結果的にスルーホール内壁にめっきが析出しない不具合が発生する。
微細空気供給部は、エジェクタ、ミキサ、多孔性配管または多孔性セラミックス材料のいずれかを用いることで、上述したような微細な気孔径の空気を供給することができる。
特に、構造が簡単な多孔性配管が好ましく、耐めっき試薬性、耐熱性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、多孔性セラミックス、多孔性金属に耐めっき液の樹脂をライニング加工したものなどを用いることができる。
めっき液中の溶存酸素濃度を通常濃度に確実に低下させるために、本発明の曝気槽は微細空気供給部を備える第1の槽と、第1の槽および曝気液搬送部と連結された第2の槽を有することを特徴とする。例えば、内槽と外槽の二重構造からなり、内槽に微細化した空気を供給する微細空気供給部を具備することを特徴とするものである。また、第2の槽がめっき液の流通経路となる流入口を有する隔壁により複数の部屋に分割され、少なくとも2つ以上の部屋に微細空気供給部が設けられていることが好ましい。また、隔壁で仕切られた空間の底部に前記微細空気供給部が設けられていることが好ましい。また、第1の槽と第2の槽の他に金属溶解槽から送液されためっき液が流入し、流入しためっき液を前記第1の槽に送る第3の槽をさらに備えるようにすることが好ましい。
また、金属溶解槽と曝気槽を一体化することも可能であり、このように構成することで無電解めっき装置をよりコンパクトにすることが可能である。金属溶解槽と曝気槽は、例えば、金属溶解槽からオーバーフローしためっき液が曝気槽へ流入するように金属溶解槽と曝気槽が一体化することができる。また、金属溶解槽と曝気槽とを連結する流入口を介して接続し、一体化する場合には曝気槽から金属溶解槽へのめっき液(曝気液)の逆流を防止するために両者の連結部に逆止弁を設けておくことが好ましい。
曝気槽には、曝気槽中のめっきの溶存酸素濃度を調整するために、微細空気供給部の他に酸素富化ガスを供給する酸素富化ガス供給部を設けておくことが望ましい。曝気槽のめっき液中の溶存酸素量を酸素富化ガス供給部により制御するようにし、めっき回数の増大に伴って酸素富化ガス供給部から供給する酸素富化ガス量を増大させながら、無電解めっきを行うことが好ましい。めっきの繰り返しに伴い、めっき液中には反応生成物が塩として蓄積していく。例えば、無電解銅めっきで、還元剤としてホルムアルデヒドを用いた場合、蟻酸塩が蓄積する。塩の蓄積に伴って、めっき液中の溶存酸素濃度が低下し、液が不安定化することが知られている。そこで、液の安定性を向上させるため、曝気槽中に微細空気供給部とは別に酸素富化ガス供給部を配置し、めっき液中の溶存酸素濃度をめっき回数の増大に伴って増大させるものである。めっき液中の溶存酸素濃度は公知の溶存酸素計を用いることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る無電解金属めっき装置及び無電解金属めっき方法について説明する。
無電解金属めっき装置は、被めっき処理基材(めっき処理する基板等を含む。)をめっき液に浸漬して金属(銅又はニッケル)のめっきを行うめっき槽と、めっき槽から抜き取っためっき液に金属のイオンを補給する金属溶解槽と、金属溶解槽から送られた液に含まれる溶存酸素の濃度を低下させて曝気液を生成する曝気槽とを含む。そして、めっき槽から抜き取っためっき液を金属溶解槽に送る送液ポンプを含むめっき液搬送部と、金属溶解槽より得られる高濃度化しためっき液を曝気槽へ送液するフィルタ及び送液ポンプを含む高濃度化めっき液搬送部と、曝気槽からめっき槽に曝気液を送る曝気液搬送部と、めっき液に酸素を溶解する酸素富化ガス供給部とを含む。
金属溶解槽の内部にはめっき金属イオン源となる金属が内包されている。めっき液搬送部から送液されるめっき液は金属溶解槽の底部より流入すると共に、酸素富化ガス供給部より酸素富化ガスがめっき液中に供給される。酸素富化ガスは金属溶解槽又はめっき液搬送部に付設することができる。酸素富化ガス供給源としては、酸素ボンベや酸素発生装置などを用いることができ、供給流量は流量計、減圧弁により調整する。金属の溶解を促進するため、酸素富化ガス供給部より発生するガスはエジェクタやパイプミキサ、多孔性配管などを用いて微細化したものとすることが好ましい。内包する金属は、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきの場合、それぞれ金属銅、金属ニッケルを充填する。金属の形状は特に限定されず、多角形平板、多角形注、円柱、球状、ナゲット状のいずれかを用いることができる。金属の溶解速度は酸素富化ガスの供給流量によりある程度制御することができる。すなわち、ガス供給流量の増大に伴って、金属溶解速度が増大する傾向を示すことがわかっている。但し、例えば被めっき基板の処理面積が極めて小さい場合などの、めっき反応による金属イオン消費速度が小さい場合、めっき液中の金属イオン濃度の上昇を防ぐため、ガス供給量を減少させる必要があるが、過度に供給量を減少させた場合、金属の溶解反応からめっき反応に転じ、めっき液中の金属イオン濃度を増大できなくなる不具合が発生する。それを回避するために、金属溶解槽を複数配置することがより好ましい。
めっき処理の繰り返しに伴って、金属溶解槽内の金属が溶解していくため、金属を適宜補給しながら行う。
曝気槽には多孔性のフッ素樹脂製の微細空気供給部が設けられており、気泡径100μm程度の微細空気が供給される。曝気槽中の微細空気供給量は、めっき液循環流量に対して同じあるいは上回るように設定する。それぞれの流量は流量計およびバルブを用いて調整する。空気の供給源としては、コンプレッサなどを用いることができる。めっき槽から金属溶解槽、曝気槽への送液はめっき液搬送部に設けた送液ポンプを用いて行う。曝気槽の構造は、めっき液中の溶存酸素の大気中への放出を促進するために開放されていることが好ましい。また、曝気槽を密閉構造とする場合は、曝気液搬送部からめっき槽へ直接めっき液が流入することを避け、曝気液搬送部とめっき槽間で大気に開放される領域を設けることが好ましい。
めっき液中の溶存酸素濃度を通常濃度へ速やかに変化させるため、めっき液と微細空気供給部より供給される微細空気が効率良く接触する構造とすることが好ましい。例えば、曝気槽内部に多数の仕切板を配置して流通経路を狭くしたところにめっき液を導入し、その狭領域に微細空気供給部を配置することにより、めっき液と微細空気の接触頻度を増大させる構造とすることが好ましい。
また、曝気槽には、前述した微細空気供給部とは別に、酸素富化ガス供給部を併設することもできる。めっき処理の繰り返しによって、めっき液中に蟻酸イオンなど塩が蓄積することで塩濃度が増加する。めっき液の塩濃度の増加に伴い、めっき液中に溶存できる酸素濃度が低下する。このため、金属溶解槽から送液されるめっき液の溶存酸素濃度は、めっき処理の繰り返しによって低下していくことになる。一方、金属溶解槽から送液されるめっき液の溶存酸素濃度が低くなると、曝気槽で曝気した曝気液の溶存酸素濃度が通常濃度(最初に建浴しためっき液の溶存酸素濃度)よりも低くなってしまう。曝気液の溶存酸素濃度が通常濃度よりも低くなるとめっき液が不安定となり、めっき膜の品質低下につながる要因となる。これに対して、微細空気供給部単独、空気の供給量や供給時間を調整することでめっき液中の溶存酸素濃度を制御することも可能であるが、制御が難しい。そこで、めっき液の溶存酸素濃度の低下に対して、微細空気により溶存酸素濃度を低下させためっき液に対して、同じ槽内で同時に酸素富化ガスを供給することで、めっき液の不安定化を防ぐことができる。微細空気供給部とは別に酸素富化ガス供給部を配置し、個別に流量を調整できるようにすることで、制御を容易にすることができる。曝気槽中の溶存酸素濃度を溶存酸素計で計測しながら、酸素富化ガスの供給量を調整することがより好ましい。
無電解金属めっき装置は、切り替えバルブを有する分岐部をめっき液搬送部に設け、めっき搬送部の分岐部と曝気液搬送部を繋ぐバイパス配管を設け、切り替えバルブを切り替えることにより分岐部からめっき液をめっき槽に返送可能としてある。すなわち、めっき槽中に被めっき基板が存在しない場合など、金属溶解槽を経由せずにめっき液を循環させることができ、めっき液中の金属イオンの過度の上昇を防ぐことが可能である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
表1は、実施例の無電解銅めっき液の組成及びめっき条件を示したものである。尚、めっき液の建浴時点では銅イオン源として硫酸銅五水和物を用いた。還元剤は、特にホルムアルデヒドに限定されず、グリオキシル酸なども用いることができる。
図1は、実施例の無電解銅めっき装置(無電解金属めっき装置)を示す模式構成図である。
無電解銅めっき装置1は、めっき槽2、金属銅溶解槽3(金属溶解槽)、曝気槽4を含む構成である。
めっき槽2のめっき液には、常時空気が供給されており、ヒータや熱交換器等の加温手段(図示せず)で液温度が一定に保たれている。金属銅溶解槽3の底部にはそれぞれ酸素富化ガス供給部6が配置され、減圧弁8、酸素流量計9を介して酸素発生装置7(酸素発生部)が接続されている。めっき槽2と金属銅溶解槽3とは、送液ポンプ10を介して配管で接続されており、金属銅溶解槽3に流入しためっき液に酸素富化ガス、すなわち、空気より酸素濃度の高いガスを供給することができる。配管には、切り替えバルブ11を配置し、それにより金属銅溶解槽3を経由せずめっき液を循環させることが可能である。
ここで、送液ポンプ10、及びめっき槽2と金属銅溶解槽3とを接続する配管をめっき液搬送部と呼ぶ。
本図においては、酸素富化ガス供給部6は、金属銅溶解槽3の底部に設けてあるが、めっき液搬送部に設けてもよい。
各金属銅溶解槽3はそれぞれ、フィルタ12を介して送液ポンプ14により曝気槽4に接続されている。なお、送液ポンプ14及び金属銅溶解槽3と曝気槽4とを接続する配管を高濃度化めっき液搬送部と呼ぶ。曝気槽4は、送液ポンプ16を有する配管を介してめっき槽2に接続されている。曝気槽4内には、その底部に微細空気供給部15として、高アルカリ性の無電解銅めっき液に耐え得る、多孔性フッ素樹脂製の空気供給配管を設けてある。前述の配管は、空気流量計21、調整バルブ22を介して空気供給部17に接続されており、供給量を制御しながら曝気槽に流入するめっき液に対して微細な空気を供給し、金属銅溶解槽3を経由することにより溶存酸素濃度の高まっためっき液を通常の溶存酸素濃度のめっき液に戻すようになっている。ここで、曝気槽4において通常の溶存酸素濃度に戻されためっき液を曝気液と呼ぶ。なお、送液ポンプ16、及び曝気槽4とめっき槽2とを接続する配管を曝気液搬送部と呼ぶことにする。
また、本明細書において、「空気」とは、窒素及び酸素の比がおよそ80:20である地球の大気の組成を有するガスをいう。
ここで、めっき液の物質収支について検討する。
めっき槽2における通常のめっき処理時の被処理基板の面積をa(m2)とする。また、表1に示すめっき液は、めっき速度v(m/h)であるとする。このとき、めっき反応の進行に伴うめっき液中の銅消費速度はav(m3/h)となる。これを補い、めっき液の組成を安定化するためには、金属銅溶解槽3内の金属銅251を溶解することにより、銅イオンの消費量分を補償する必要がある。
我々が検討した結果、金属銅の表面積に対して十分過剰な酸素流量を供給する場合、金属の溶解量は金属銅の表面積に比例することがわかった。また、酸素流量を変化させることにより銅の溶解量を変化させられることがわかった。上述したように、金属銅の溶解速度は酸素流量によりある程度制御可能である。ここで、溶解速度v′(m/h)とする。
このとき、めっき反応により消費した銅イオンを補償するためには、金属銅の表面積a′(m2)はa′=av/v′(m2)である必要があることがわかる。
以上の計算に基づき、金属銅溶解槽3に金属銅表面積がa′となるように金属銅を配置する。金属銅は、多角形平板、多角形柱、円柱、球状又はナゲット状のいずれの形状でも用いることができる。
尚、めっき槽2に処理基板が存在しないような、めっき液の銅イオンが消費されない条件下では、切り替えバルブ11を用いて金属銅溶解槽3へめっき液が流入しないようにしておくと共に、金属銅溶解槽3には酸素を連続的に供給し、金属銅溶解槽3内のめっき液を排出し、金属銅溶解槽3の内部でめっき反応が進行しないように、あるいは銅の過剰な溶解が進行しないように制御する。
ところで、金属銅溶解槽3を繰り返し使用する場合、金属銅溶解槽3内部の金属銅251が溶解することにより、その表面積が変化する。金属銅251として平板を用いる場合は大きな表面積の変化が見られないが、球状の金属銅251を用いた場合は比較的表面積の変動が大きくなる。つまり、金属銅溶解槽3内の銅ボール表面積が徐々に小さくなり、酸素供給量一定の条件では、銅の溶解量が小さくなっていく。
繰り返し使用中に適宜溶解した銅の量を補充するために新たな金属銅を充填することも考えられるが、最初から充填されていた金属銅251と新たに充填した金属銅が混在するため、金属銅溶解槽3内の金属銅251の総表面積は容易に計算できず、結果的に同一条件で酸素供給を行っていても、繰り返し使用に伴い銅の溶解量が変わることになる。従って、めっき液中の銅イオン濃度を所望の値に制御することが難しくなるケースが考えられる。
そのため、より好ましい形態として、前述のように金属銅溶解槽を複数設ける。それぞれに充填する金属銅量を異なる量に配置し、一方の比較的多量の金属銅を充填した大型の金属溶解槽を必要な銅イオン量の大部分を補償する粗補給用とし、もう一方の少量の金属銅を充填した小型の金属溶解槽をめっき液の組成を微調整するための微補給用として用いることが好ましい。また、従来から用いられている規定濃度の銅イオン補給液を併用する形態が挙げられる。すなわち、規定濃度の銅イオン補給液として、硫酸銅五水和物、水酸化第二銅、酸化第二銅、オキシ酸銅、銅の塩基性炭酸塩、銅の塩基性塩化物、銅の塩基性硫酸塩などを予め規定の濃度に調製した補給液を用いることができる。規定濃度の銅イオン補給液を併用することにより、めっき液の組成をより精度良く制御することが可能になる。
硫酸銅の補給においては、めっき槽内のめっき液の銅イオン濃度を分析した結果に基づき、規定濃度の硫酸銅補給液(硫酸銅溶液)の必要量を算出することにより、不足分をより精度良く補給することができる。銅イオン濃度は、めっき槽2からめっき液を一部取り出し、分析部(図示せず)にて試薬を用いて分析する。硫酸銅の補給を併用することにより、めっき処理の繰り返しに伴い、めっき液中に硫酸塩が蓄積するため、金属銅溶解槽3のみを用いた場合に比べて、めっき液の寿命は短くなる。従って、金属銅溶解槽3が担う銅補給量が補給に必要な総量の90%以上、より好ましくは95〜98%にすることがよい。
金属銅溶解槽3を経由しためっき液は、酸素富化ガス供給部6によりめっき液中の溶存酸素が高まった状態になっている。
曝気槽4においては、めっき液中の溶存酸素濃度を通常の値に戻すため、空気によりめっき液中のガス置換を行う。
我々の検討では、処理する基板において一旦めっき反応が進行すると、金属銅溶解槽3では銅の溶解反応が進行し、めっき槽2ではめっき反応が進行することがわかった。一方で、ガス置換が不十分な場合、処理する基板に対してもめっき反応が進行しないケースがあった。また、基板をめっき処理している途中に、新たに被めっき処理基板を投入する場合、新たな基板上へのめっき反応を進行させるために、切り替えバルブ11を用いて金属銅溶解槽3を経由せずめっき液を循環させることにより、めっき反応を開始させることができる。しかし、その間めっき液は金属銅溶解槽3を経ないため、めっき液の銅イオン濃度が低下してしまい、元々投入されていた基板のめっき品質に悪影響を及ぼすことがある。そのため、めっき処理中は常時金属銅溶解槽3にめっき液を循環させることがより好ましいが、本発明の曝気槽4を用いることにより、金属銅溶解槽3を経由した酸素富化めっき液中の酸素濃度を通常の濃度に速やかに戻すことが可能である。めっき液中の溶存酸素濃度を通常濃度に戻すために空気に比べて窒素濃度が高いガスを用いることもできるが、めっき液に対して過剰に供給した場合、液中の溶存酸素濃度が低下しすぎ、めっき液が不安定化する場合がある。そのため、曝気槽で供給するガスとしては、空気が好ましい。
以上、本発明の無電解銅めっき装置として、金属銅溶解槽3および硫酸銅補給液とを併用するものについて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、図1においては、銅イオン補給部5をめっき槽2に付設してあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、めっき液又は曝気液に硫酸銅の溶液を補給する位置としては、無電解銅めっき装置1の任意の位置を選択することができる。
尚、本発明の無電解銅めっき装置において、めっき液に接触する部分の材料は、めっき液に溶解しない材料であれば、特に限定されない。例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、金属に耐めっき液の樹脂をライニング加工したものなどを用いることができる。
金属銅溶解槽および溶解槽内で金属銅を支持するための支持体の材質は特に限定されないが、めっき液に溶解し難く、かつ金属銅の重量に耐えうる材質であることが好ましい。
例えば、ステンレス鋼のような高強度の金属にめっき液に耐えられる樹脂をライニング加工したものなどを用いることができる。また、高温の水の中においても十分な強度を有するポリプロピレン樹脂(PP)等の樹脂を用いてもよい。
また、無電解銅めっき液への銅イオンの補給は、以上のいずれかの方法を用いればよく、それ以外のホルムアルデヒドやグリオキシル酸などの還元剤や水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのpH調整剤や添加剤の補給は公知の方法で行うことができる。補給方法は間欠的な補給あるいは連続補給のいずれの方法でもよい。
上記の無電解銅めっき方法および無電解銅めっき装置を用いることにより、めっき液を長寿命化し、めっき処理中めっき反応が停止するような不具合がなく、優れた機械特性および接続信頼性を示すプリント配線板を作製することができる。
本発明の無電解銅めっき方法および無電解銅めっき装置を用いて作製したプリント配線板は、システムボード、メモリボード等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
上記の無電解銅めっき方法およびめっき装置を用いることによりプリント配線板を作製した実施例を以下に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1においては、曝気槽の微細空気供給部として多孔性フッ素樹脂製配管を用いた場合の無電解銅めっき装置および無電解銅めっき方法について説明する。
無電解銅めっき装置は、図1に示すものを用いた。
めっき槽2に容量2000Lの無電解銅めっき液を表1の組成で建浴した。最初のめっき液の建浴には、銅イオン源として硫酸銅五水和物を使用した。金属銅251としては、直径11mmφの金属銅ボールを用い、金属銅溶解槽3には492kg(金属銅の総表面積30m2)の金属銅251を充填した。
金属銅溶解槽3は、図5および図6に示すものを用いた。図5は金属銅溶解槽内部断面の構造模式図、図6は金属銅溶解槽を上部から見たときの構造模式図を示す。溶解槽3内部は隔壁304により仕切られ多段構造となっており、各段に金属銅支持体41内に充填された金属銅102を配置できるようにした。溶解槽3の外壁301および内壁302には金属銅挿入口303が配置され、それらを介して金属銅102および金属銅支持体41を任意に配置、取り出すことが可能である。隔壁304は格子状となっており、めっき液および酸素富化ガスが流通できる構造となっている。金属銅溶解時には、めっき液搬送部よりめっき液が酸素供給部を経由して送液され、内壁302内部を流通する。その際、金属銅が溶解し、めっき液中に銅イオンが供給され、めっき液の銅濃度を高濃度化できる。
溶解槽3の上部に送液された、高濃度化しためっき液は内壁302と外壁301との間を流通し、排出口305を介して排出され、高濃度化めっき液搬送部を経由し、曝気槽4へ送液される。
めっき液が所定温度の74℃になるまでは、制御部(図示せず)により切り替えバルブ11を切り替え、金属銅溶解槽3を経由せずにめっき液を循環させた。めっき槽2には常時空気を供給した。めっき処理を施す基板19の面積を30m2とした。めっき前処理として基板19の脱脂、酸洗浄、触媒付与、及び触媒活性化処理を行った。めっき処理前に予め処理する基板19の面積の情報を制御部に入力した。
めっき処理基板19をめっき槽2に投入すると同時に、制御部により切り替えバルブ11を作動させ、金属銅溶解槽3にめっき液を循環流量500L/minで流通させた。これと同時に、酸素発生部7により減圧弁8、酸素流量計9および酸素富化ガス供給部6を介して金属銅溶解槽3に酸素供給を行った。酸素発生部7からは、酸素濃度約85%の酸素富化ガスが供給される。酸素富化ガス供給部6は多孔性フッ素樹脂からなり、それを用いて銅溶解槽3内のめっき液に微細空気を供給した。酸素供給流量は、銅溶解槽3に対して170L/minとした。このときの銅溶解速度は約2μm/hに相当する。なお、酸素発生部7における高濃度の酸素の生成方式は、特に限定されるものではなく、酸素富化膜を用いてもよいし、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption:PSA)を用いてもよい。また、酸素ボンベを利用してもよい。さらに、水の電気分解を利用して酸素を発生させてもよい。
曝気槽4は、図2に示すものを用いた。曝気槽4は円柱状の形状を有しており、本図は断面模式図を示している。尚、本実施例では曝気槽の構造を円柱状としたが、特に限定されるものではない。
すなわち、曝気槽4は二重構造としてあり、外槽201及び内槽202を有する。内槽202には、金属銅溶解槽より送液されるめっき液を供給するための配管200が接続してある。また、内槽202の底部には、溶存酸素濃度を低下させるための微細空気を供給する微細空気供給部204が設けてある。外槽201には、溶存酸素濃度を低下させた液をめっき槽2に戻すための配管205が接続してある。微細空気供給部204として、多孔性フッ素樹脂からなる配管を用いた。配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、配管近傍の気泡の直径が50〜500μmであることを確認した。
曝気槽4の容量は500Lとし、金属銅溶解槽30を経由しためっき液は内槽202に供給される。内槽202には金属銅溶解槽3を経由しためっき液中の溶存酸素濃度を低下させるために空気を流量500L/minで供給した。内槽202からオーバーフローしためっき液(曝気液)は曝気槽4の外槽201に流出し、このめっき液を送液ポンプ16によりめっき槽2に再び戻すようにした。
本図に示す曝気槽4においてめっき液に対して微細空気を供給することにより、金属銅溶解槽3において溶存酸素濃度が高くなっためっき液に空気を満遍なく接触させることができ、曝気の効率を高めることができる。ここで、微細空気を供給する槽(内槽)とめっき槽に曝気液を戻す槽(外槽)を分けることにより、微細空気と接触せずに曝気槽から排出されるめっき液を少なくすることができ、曝気の効率を高めることができる。
めっき反応により消費するホルムアルデヒド及び水酸化ナトリウムの補給液としては、37%ホルマリン水溶液及び200g/L水酸化ナトリウム水溶液を用い、めっき液の各成分の濃度分析結果に基づき、不足分を15分間隔で補給した。
また、金属銅溶解槽における銅イオン補給に加えて、250g/L硫酸銅五水和物水溶液を補給液として用い、めっき液中の銅イオン濃度の分析結果に基づき、不足分を15分間隔で補給した。
表1のめっき液組成とした場合のめっき速度は、約2.2μm/hであり、処理する基板の仕上がりめっき膜厚を25μmとするため、約11.5時間めっきを行った。めっき処理中における金属銅溶解槽3への酸素供給流量、曝気槽4への微細空気供給流量およびめっき液の循環流量は一定で行った。めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。
めっき終了後、基板は、十分水洗し、乾燥した。得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。また、めっき装置は、めっき終了後、制御部により切り替えバルブ11および金属銅溶解槽の底部に設けられた排出口(図示せず)を作動させ、金属銅溶解槽の内部のめっき液を排出すると共に、金属銅溶解槽を経由しない配管経路に切り替え、めっき槽内のめっき液を循環させた。
次に、最初にめっき処理基板25m2を投入し、処理の途中で(めっき処理時間5時間経過時点で)新たに5m2を追加処理する条件でめっきを行った。
めっき処理基板25、30m2のときに金属銅溶解槽3への酸素供給量をそれぞれ130、150L/minにしたことを除き、上記と同様にめっきを行った。このときの銅溶解速度はそれぞれ約1.7、1.8μm/hである。処理する基板の面積が処理途中で変化する場合でも、同様にめっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。曝気槽4でめっき液中の溶存酸素濃度を通常の濃度にまで効率よく低減できたため、途中切り替えバルブ11によるめっき液の循環経路の変更を伴わず、金属銅溶解槽3にめっき液を常時流通させている条件においても、いずれの基板においても光沢のある平滑な皮膜を得ることができた。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行ったところ、処理する基板の積算面積が410m2になった時点においても問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.032(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.105に増加した。これは、めっき液中に蟻酸イオンが増加したこと、及び硫酸銅の補給により硫酸イオンが増加したことによるものである。しかし、処理する基板の積算面積が410m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、めっき槽2、曝気槽4及び金属銅溶解槽3の内壁には銅の析出が認められなかった。また、めっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属銅溶解槽およびその後流に金属銅溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給する曝気槽を配置することにより、無電解銅めっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中に銅イオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。
本実施例で示したように、溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給することにより、速やかにめっき液中の溶存酸素濃度を通常濃度にまで低減できる。図10はめっき液中の溶存酸素濃度の低減に対する微細空気供給の効果を示す結果である。
以下にめっき液中の溶存酸素濃度の計測手順を説明する。模擬めっき液1Lを表2の組成に従って調製する。めっき液に対して、酸素流量1L/minで15分間酸素供給することにより、酸素飽和状態のめっき液を作製する。その後、従来の空気供給配管あるいは多孔性フッ素樹脂からなる微細空気供給配管によりめっき液に対して所定流量、所定時間空気を供給する。その後、速やかにめっき液に作用極、対極、参照極を配置し、0Vから−0.8V(銀|塩化銀電極に対する電位)まで走査速度10mV/sで電位を走査する。
作用極、対極、参照極はそれぞれ直径10μmの白金マイクロ電極、直径1mmの白金線、銀|塩化銀電極とした。めっき液温は25℃とした。得られる電流−電位曲線において、約−0.4V以下の領域でめっき液中の酸素の還元反応(i式)に由来する拡散限界電流を観察できる。この拡散電流はii式に示すように、めっき液中の溶存酸素濃度に比例する。
O2+2H2O+4e- ⇒ 4OH- ・・・(i)
i = 4nFCDa ・・・(ii)
ここで、i、n、F、C、D、aはそれぞれ拡散限界電流、反応電子数(この場合n=4)、ファラデー定数(9.56×104C/mol)、溶存酸素濃度、酸素の拡散係数(25℃で2.51×10-9m2/s)、電極半径(5μm)を表す。この原理を活用し、空気供給方式によるめっき液中のガスの置換挙動を解析することができる。銅イオンおよびホルムアルデヒドを含まない模擬めっき液としているのは、走査電位範囲において銅イオンの還元反応、ホルムアルデヒドの酸化反応が進行することを考慮し、正確に溶存酸素濃度を計測するためである。
従来の空気供給配管として直径約3mmのフッ素樹脂製配管に直径1.2mmの孔を5mm間隔で複数開口したものを用いた。酸素飽和状態のめっき液に対して供給量1L/minで各時間空気供給したときの電流−電位曲線を図11に示す。図11に示すように、空気供給時間の増大に伴い、酸化電流の減少が見られた。各条件における−0.6Vでの酸化電流値とii式に基づき、めっき液中の溶存酸素濃度を計算した結果を図10に示す。同様にして、従来の空気供給配管で供給量2L/minで各時間供給した場合、および多孔性フッ素樹脂からなる微細空気供給配管を用いて供給量1L/minで空気供給した場合の結果を併せて示す。いずれの場合も空気供給時間の増大に伴って液中の溶存酸素が低下し、25℃における通常濃度約10ppmに収束する傾向が見られた。従来の空気供給配管の場合、供給量を増大させることで液中の溶存酸素濃度を通常濃度にまで低下させるのに要する時間を短縮できることがわかった。一方で、微細空気供給配管を用いた場合、供給量1L/minにも関わらず酸素濃度を通常濃度にまで低下させるのに要する時間は1分となり、従来の空気供給配管に対して約1/25に短縮できることがわかった。微細空気供給配管を用いた場合、めっき液1Lに対して1Lの空気を供給することで、めっき液中の溶存酸素濃度を通常濃度にまで速やかにかつ効率よく低下できることが示唆された。
めっき液温度を70℃として、同様の実験を行ったところ、25℃の場合と同様に微細空気供給配管を用いた場合、従来の空気供給配管に対して約1/25の時間で溶存酸素濃度を通常濃度にまで低減できることを確認した。
また、めっき繰り返しに伴い、めっき液中に蟻酸塩が蓄積していくことを考慮し、表2のめっき液の組成に蟻酸2mol/Lを追加しためっき液を調製し、同様に液中の溶存酸素濃度の低下挙動を計測した。尚、めっき液温度を30℃とした。結果を図12に示す。大量の蟻酸塩が蓄積しためっき液に対しても、塩が蓄積していない液と同様に約1分で液中の溶存酸素濃度を通常濃度に低減できることがわかった。
従来の空気供給配管および微細空気供給配管より排出される空気泡の直径を高速度カメラで調べた。50個の空気泡の直径を計測し、平均値を計算した。供給部近傍においてそれぞれ直径約1.4mm、約200μmであった。
以上のように、溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給することにより、従来の空気供給に対して、速やかに通常濃度にまで低減できることがわかった。
本実施例1の無電解銅めっき装置は、前述の解析結果に基づき、考案されたものである。
実施例2においては、曝気槽を図3の構成としたことを除き、実施例1と同様の構成とし、実施例1と同様の手順でめっきを実施した。
曝気槽4は3つの部屋、すなわち、めっき液導入部401、中央部402、排出部403で構成される。中央部402には微細空気供給部404が設けられている。微細空気供給部は複数の多孔性フッ素樹脂配管を5mmの間隔を空けて平行に配列されている。金属銅溶解槽3から配管400を介してめっき液が曝気槽4のめっき液導入部401に流入した後、中央部402へ送液され、微細空気供給部404を通過し、続いて排出部403、配管405を介してめっき槽へと送液される。微細空気供給部404として多孔性フッ素樹脂を用い、配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径200〜900μmの気泡であることを確認した。
実施例1と同様に、めっき処理する基板の面積を25、30m2とめっき処理途中から処理面積が変わる条件下でめっきを行った。
実施例1と同様に、めっき液中への銅イオン供給は、金属銅溶解槽と硫酸銅補給液を併用して行った。その結果、めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。また、いずれの基板においても、得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行ったところ、処理する基板の積算面積にして400m2になった時点でも問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.032(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.107に増加した。これはめっき液中に蟻酸イオンが増加したことと硫酸銅補給による硫酸イオンの増加のためである。しかし、処理する基板の積算面積が400m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、また、めっき槽2、曝気槽4、金属銅溶解槽3の内壁には銅の析出が認められず、更にめっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属銅溶解槽を用いて、また、その後流に金属銅溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液を微細空気供給部に強制的に流通させる構造を有する曝気槽を配置することにより、無電解銅めっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中に銅イオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。すなわち、本実施例の曝気槽ではめっき液がめっき液導入部401から中央部402を介して排出部403へ流れる。この際、中央部に微細空気供給部を設けることで、微細空気供給部にめっき液が強制的に流通する構成となる。これによって、曝気の効率を向上させることができる。
実施例3においては、曝気槽を図4の構成としたことを除き、実施例1と同様の構成とし、実施例1と同様の手順でめっきを実施した。
曝気槽4は3つの部屋、すなわち、めっき液導入部501、中央部502、排出部503で構成される。中央部502は更に6つの部屋に分かれており、各部屋の底部には微細空気供給部504として多孔性フッ素樹脂配管が設けられている。金属銅溶解槽3から配管500を介してめっき液が曝気槽4のめっき液導入部501に流入した後、中央部502へ送液される。その際、溶存酸素濃度の高まっためっき液は中央部502内の狭い流路を上下に迂回し、微細空気と接触しながら送液される。後流に送液されるにしたがって、めっき液中の溶存酸素濃度が通常濃度にまで低減される。続いて排出部503、配管505を介してめっき槽へと送液される。微細空気供給部から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径70〜600μmの気泡であることを確認した。
実施例1と同様に、めっき処理する基板の面積を25、30m2とめっき処理途中から処理面積が変わる条件下でめっきを行った。
実施例1と同様に、めっき液中への銅イオン供給は、金属銅溶解槽と硫酸銅補給液を併用して行った。その結果、めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。また、いずれの基板においても、得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行ったところ、処理する基板の積算面積にして400m2になった時点でも問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.032(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.107に増加した。これはめっき液中に蟻酸イオンが増加したことと硫酸銅補給による硫酸イオンの増加のためである。しかし、処理する基板の積算面積が400m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、また、めっき槽2、曝気槽4、金属銅溶解槽3の内壁には銅の析出が認められず、更にめっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属銅溶解槽およびその後流に金属銅溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給する曝気槽を配置することにより、無電解銅めっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中に銅イオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。本実施例の曝気槽では実施例2の効果に加えて、中央部402をめっき液の流通経路となる流入口を有する隔壁により複数の部屋に分割し、各部屋に微細空気供給部を配置したことにより、めっき液と微細空気がより接触する構成となり、曝気の効率を大幅に向上させることができる。なお、図4に示したように各部屋に微細空気供給部を配置することが好ましいが、微細空気供給部を設けない部屋があってもよい。
実施例4においては、曝気槽と金属銅溶解槽を一体化した例を示す。図7に本実施例の無電解めっき装置の構成を示す。また、図8に本実施例の曝気槽の構成を示す。図7に示したように曝気槽と金属銅溶解槽が一体化されたことにより、金属銅溶解槽と曝気槽を連結する配管、ポンプが不要になったこと以外は実施例1と同様の構成であり、本実施例では実施例1と同様の手順でめっきを実施した。
図8を用いて本実施例の曝気槽と金属銅溶解槽を一体化した一体型処理槽の構成を説明する。曝気槽と金属銅溶解槽を一体化した一体型処理槽100は円柱状の三重構造とし、内槽601、外槽602、最外槽603からなる。内槽601には、図6と同様に、槽底部に酸素富化ガス供給部606が配置され、また、金属銅支持体41が配置され、支持体の中に金属銅251が充填されている。外槽602および最外槽603の底部には微細空気供給部604が配置されている。内槽601と外槽602の間には逆止弁607を設け、めっき液は内槽601から外槽602へ一方的に流通するようにしている。めっき液はめっき槽2から配管600を介して内槽601へ送液される。内槽601で金属銅251が溶解することにより、めっき液へ銅イオンが供給される。続いて、内槽601のめっき液は逆止弁607を介して外槽602へ、更に最外槽603へ送液される。その際、微細空気供給部604より供給される微細空気と接触することにより、めっき液中の溶存酸素濃度が通常濃度にまで低減される。続いて最外槽603、配管605を介してめっき槽へと送液される。微細空気供給部604として多孔性フッ素樹脂を用い、配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径100〜400μmの気泡であることを確認した。
実施例1と同様に、めっき処理する基板の面積を25、30m2とめっき処理途中から処理面積が変わる条件下でめっきを行った。
実施例1と同様に、めっき液中への銅イオン供給は、金属銅溶解槽と硫酸銅補給液を併用して行った。その結果、めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。また、いずれの基板においても、得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行ったところ、処理する基板の積算面積にして400m2になった時点でも問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.032(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.107に増加した。これはめっき液中に蟻酸イオンが増加したことと硫酸銅補給による硫酸イオンの増加のためである。しかし、処理する基板の積算面積が400m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、また、めっき槽2、一体型処理槽100の内壁には銅の析出が認められず、更にめっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属銅溶解槽およびその後流に金属銅溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給する曝気槽を配置することにより、無電解銅めっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中に銅イオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。本実施例では、金属銅溶解槽と曝気槽が一体化した一体型処理槽を用いたことにより、無電解めっき装置の小型化を図ることができる。なお、一体型処理槽の構成としては、図8に示した構成のほか、金属銅溶解槽からオーバーフローしためっき液が曝気槽に流入するようにしてもよい。
実施例5においては、銅イオン濃度を0.04mol/Lに高めたことと一体型処理槽の最外槽の微細空気供給部において酸素富化ガスを供給したことを除き、実施例4と同様の構成とし、実施例1と同様の手順でめっきを実施した。
一体型処理槽100の最外槽603における微細空気供給部604に酸素発生部を用いて酸素濃度約85%の酸素富化ガスを供給した。最外槽603に溶存酸素計を配置し、それによりめっき液中の74℃における溶存酸素濃度が2.5ppmとなるように、酸素供給量を調整した。実施例1と同様に、めっき処理する基板の面積を25、30m2とめっき処理途中から処理面積が変わる条件下でめっきを行った。
実施例1と同様に、めっき液中への銅イオン供給は、金属銅溶解槽と硫酸銅補給液を併用して行った。尚、金属銅溶解槽の金属銅の充填量を740kg(金属銅の総表面積45m2)とし、めっき処理基板25、30m2のときに金属銅溶解槽3への酸素供給量をそれぞれ130、150L/minにした。このときの銅溶解速度はそれぞれ約1.7、1.8μm/hである。めっき速度は約3μm/hを示した。その結果、めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。また、いずれの基板においても、得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行った。めっき処理の繰り返しに伴い、めっき液中に蟻酸等の塩が蓄積し、溶存酸素濃度が過度に低下することを抑制するため、溶存酸素計を用いて曝気槽4の最外槽603におけるめっき液の74℃における溶存酸素濃度が2.5ppmとなるように、微細空気供給部604へ供給する酸素富化ガスの供給量をめっきの繰り返しに伴い、徐々に増大させながら行った。その結果、処理する基板の積算面積にして400m2になった時点でも問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.032(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.107に増加した。これはめっき液中に蟻酸イオンが増加したことと硫酸銅補給による硫酸イオンの増加のためである。しかし、処理する基板の積算面積が400m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、また、めっき槽2、一体型処理槽100の内壁には銅の析出が認められず、更にめっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属銅溶解槽およびその後流に金属銅溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給する曝気槽を配置することにより、無電解銅めっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中に銅イオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。
実施例6においては、金属銅溶解槽を金属ニッケル溶解槽としたことを除き、実施例1と同様の構成とし、実施例1の手順に準拠して無電解ニッケルめっきを実施した。
無電解ニッケルめっき装置は、図1に示すものを用いた。
めっき槽2に容量50Lの無電解ニッケルめっき液を表3の組成で建浴した。最初のめっき液の建浴には、ニッケルイオン源として硫酸ニッケルを使用した。金属ニッケル251としては、直径10mmφの金属ニッケルボールを用い、金属ニッケル溶解槽3に50kg(金属ニッケルの総表面積4m2)の金属ニッケル251を充填した。
めっき液が所定温度の85℃になるまでは、制御部により切り替えバルブ11を切り替え、金属ニッケル溶解槽3を経由せずにめっき液を流量15L/minで循環させた。めっき槽2には常時空気を供給した。めっき処理を施す基板19の面積を0.5m2とした。めっき前処理として基板19の脱脂、酸洗浄、触媒付与、及び触媒活性化処理を行った。
めっき槽2へ基板19を投入した時点で制御部により切り替えバルブ11を作動させ、金属ニッケル溶解槽3にめっき液を流通させた。これと同時に、酸素発生部7により減圧弁8、酸素流量計9および酸素富化ガス供給部6を介して金属ニッケル溶解槽3に酸素供給を行った。酸素発生部7からは、酸素濃度約85%の酸素富化ガスが供給される。酸素供給流量は、ニッケル溶解槽3に対して50L/minとした。このときのニッケル溶解速度はそれぞれ約2μm/hに相当する。
曝気槽4の容量は50Lとし、金属ニッケル溶解槽3を経由しためっき液中の溶存酸素濃度を低下させるために微細空気供給部15として多孔性フッ素樹脂製配管を用いて流量50L/minで供給した。曝気槽を経由しためっき液(曝気液)を送液ポンプ16によりめっき槽2に再び戻すようにした。微細空気供給部15として多孔性フッ素樹脂を用い、配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径100〜600μmの気泡であることを確認した。
めっき反応により消費する次亜燐酸ナトリウム及びpH調整用の補給液としては、50%次亜燐酸ナトリウム水溶液及び200g/L水酸化ナトリウム水溶液または50%硫酸水溶液を用い、めっき液の各成分の濃度分析結果に基づき、不足分を15分間隔で補給した。
また、金属ニッケル溶解槽におけるニッケルイオン補給に加えて、250g/L硫酸ニッケル六水和物水溶液を補給液として用い、めっき液中のニッケルイオン濃度の分析結果に基づき、不足分を15分間隔で補給した。
表3のめっき液組成とした場合のめっき速度は、約16μm/hであり、処理する基板の仕上がりめっき膜厚を10μmとするため、約40分間めっきを行った。めっき処理中における金属ニッケル溶解槽3への酸素供給流量は一定で行った。めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。
めっき終了後、基板は、十分水洗し、乾燥した。得られためっき膜は光沢のある平滑な皮膜であった。また、めっき装置は、めっき終了後、制御部により切り替えバルブ11および金属ニッケル溶解槽の底部に設けられた排出口(図示せず)を作動させ、金属ニッケル溶解槽の内部のめっき液を排出すると共に、金属ニッケル溶解槽を経由しない配管経路に切り替え、めっき槽内のめっき液を循環させた。
引き続き、同様の操作を繰り返してめっきを行ったところ、処理する基板の積算面積が410m2になった時点においても問題なくめっき処理が可能であった。初期のめっき液比重1.021(at20℃)であったのに対し、このときのめっき開始時点では比重1.115に増加した。しかし、処理する基板の積算面積が410m2になった時点でもめっき液はきわめて安定であり、めっき槽2、曝気槽4及び金属ニッケル溶解槽3の内壁にはニッケルの析出が認められなかった。また、めっき膜も光沢を呈する平滑な表面であった。
以上、金属ニッケル溶解槽およびその後流に金属ニッケル溶解槽を経て溶存酸素濃度の高まっためっき液に対して微細空気を供給する曝気槽を配置することにより、無電解ニッケルめっき液を長寿命化し、処理途中にめっき反応が停止するような不具合もなく連続的にめっき液中にニッケルイオンを供給し、良好なめっき皮膜を得られる効果が得られた。
実施例6ではニッケルイオン源として金属ニッケルを用いることにより、実施例1と同様、めっき液中への硫酸ニッケルの蓄積を抑制できるため、無電解ニッケルめっき液を長寿命化できる。
なお、実施例6では表3に示すニッケルめっき液を用いた場合の説明をしたが、酢酸ナトリウムの代わりに錯化剤として、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸等を含むめっき液を用いた場合でも同様の効果を示すことを確認した。
(比較例1)
比較例1の無電解銅めっき装置は図9に示す構成とした。
35Lのめっき槽2と10Lの貯液槽50とに、実施例1と同じ無電解銅めっき液を作製した。35Lめっき槽2においては、空気供給部53から18L/minの量で空気を供給しながら保管した。貯液槽50においては、酸素含有ガス供給部160として直径10mmのポリプロピレン製配管表面に直径1.2mmの孔を5mm間隔で開口した配管を用いて25L/minの量で空気を供給し、めっき液温度を74℃に保温した。尚、酸素含有ガス供給部160の配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径1.1〜42mmの気泡であることを確認した。
一方、酸素富化ガス供給部61を具備した容量10Lの金属銅溶解槽30内には、金属銅として、直径27mmφの金属銅ボール21kg(金属銅総表面積0.53m2)を充填した。貯液槽50のめっき液を移送ポンプ52によって金属銅溶解槽30内に循環流量10L/minで送液すると共に、酸素富化ガス供給部61から7L/minの量の酸素を供給し、貯液槽50に再び流入するようにめっき液を循環させた。そして、貯液槽50内のめっき液を移送ポンプ52で循環流量10L/minで銅補給槽51に送液し、続いて移送ポンプ52でめっき液を循環流量10L/minでめっき槽へ送液した。
銅補給槽51においては、酸素含有ガス供給部161として直径10mmのポリプロピレン製配管表面に直径1.2mmの孔を5mm間隔で開口した配管を用いて2.0L/minの量で空気を供給し、めっき液温度を74℃に保温した。同時に、めっき槽2から貯液槽50へのめっき液の送液を移送ポンプ52で開始した。この一連のめっき液の流通経路は、めっき槽2、貯液槽50、金属銅溶解槽30、貯液槽50、銅補給槽51及びめっき槽2の順となる。尚、酸素含有ガス供給部161の配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径1.1〜42mmの気泡であることを確認した。
処理する基板の面積を53dm2とした条件で、めっき槽2に基板を浸漬し、めっきを行った。めっき槽2内のめっき液のホルムアルデヒド濃度とpHは実施例1と同様に、37%ホルマリン水溶液および200g/L水酸化ナトリウム水溶液を15分間隔で補給しながらめっきを行った。また、めっき処理中、銅補給槽51内の銅イオン補給液を移送ポンプ52で送液しながら12.5時間めっきを行った。めっき処理中、めっき液中の各成分の濃度は設定濃度に対して安定に保持することができた。めっき後、基板を水洗し、乾燥させた。得られためっき皮膜は光沢のある平滑な皮膜であった。
次に、処理する基板の面積を最初45dm2とし、5時間経過した時点で8dm2(総基板表面積53dm2)を追加投入する条件でめっきを行った。その結果、最初に投入した基板に対してはめっき反応が進行したが、途中投入した基板に対してはめっき反応が進行しなかった。これは、貯液槽50および銅補給槽51で供給される空気の直径が大きく、金属銅溶解槽30を通過した、溶存酸素濃度の高まっためっき液に対してガス置換が十分に行われなかったと考えられる。そこで、一旦めっき液の金属銅溶解槽30への送液を停止したところ、途中投入した基板に対してもめっき反応が進行することを確認できた。しかし、めっき後、最初に投入した基板の表面を観察したところ、光沢のある皮膜が得られたものの、局所的に異常析出したこぶ状の銅が見られた。また、皮膜断面を観察したところ、めっき皮膜内部に層状の界面が形成されていることを確認した。これは、一旦金属銅溶解槽への循環を停止したことにより、めっき液中の銅イオン濃度が一時的に低下したことが原因と考えられる。
貯液槽50および銅補給槽51での空気供給量を10倍にしてめっきを行ったところ、上述と同様、途中基板を投入した直後においてはめっき反応が進行しなかった。めっき後の基板表面にはこぶ状の銅は見られなくなったが、途中新たに基板を投入する場合、めっき液の金属銅溶解槽への送液を一時的に停止する必要があった。
(比較例2)
比較例2においては、曝気槽の空気供給部として直径10mmのポリプロピレン製配管表面に直径1.2mmの孔を5mm間隔で開口した配管を用いて500L/minの量で空気を供給したことを除き、実施例1と同様の構成とし、実施例1の手順に準拠して無電解銅めっきを実施した。尚、空気供給部の配管から供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、直径1.1〜42mmの気泡であることを確認した。その結果、最初投入した基板においてはめっき反応が進行したが、途中投入した基板については、めっき反応が進行しなかった。これは、曝気槽で供給される空気の気泡径が大きく、めっき液との接触が不十分であったため、液中の溶存酸素濃度が十分に低減できないまま、めっき槽へ流入したためと考える。
(比較例3)
比較例3においては、曝気槽の空気供給部としてナノバブル発生装置を用いて500L/minの量で空気を供給したことを除き、実施例1と同様の構成とし、実施例1の手順に準拠して無電解銅めっきを実施した。尚、供給される気泡径を高速カメラで観察したところ、最大でも直径8μmの気泡であることを確認した。その結果、最初投入した基板、途中投入した基板いずれにおいてもめっき反応が進行することを確認した。しかし、基板内の直径150μm、板厚6mmのスルーホール内壁を観察したところ、一部にめっきが析出していない不具合が発生した。これは、曝気槽で供給される空気により液中の溶存酸素濃度をめっき反応が進行し得る濃度にまで低減できるものの、供給した空気がめっき液中に浮遊し続けるため、めっき液の粘性が見かけ上上昇し、スルーホール内部にめっき液が十分に供給されなかったためと考える。
本発明の無電解めっき方法およびめっき装置を用いることにより、無電解めっき液を長寿命化でき、建浴頻度の低減による生産性の向上および廃液量の低減が見込める。それに加えて、金属溶解槽の後流に配置した曝気槽において微細空気によりめっき液中の溶存酸素濃度を速やかに通常濃度にまで低減でき、めっき処理中新たに基板が追加される場合等の状況でも、基板上でのめっき反応が停止することなく、連続的なめっき処理を実現できる。また、本発明の無電解めっき方法および装置を用いることにより、機械的な特性が優れた、信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
実施例1においては、比較例1に示す銅補給槽51を設けることはしなかったが、図1に示す曝気槽4とめっき槽2との間に上記の銅補給槽51に該当するバッファ槽を設けてもよい。バッファ槽を設けることにより、めっき槽2に流入する曝気液の量を調整しやすくすることができる。
また、本明細書においては、無電解めっき方法および無電解めっき装置について説明したが、不溶性陽極を用いた電気銅めっき液の銅イオン供給にも適用可能である。