JP5946137B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
主なデジタル印刷方式としては電子写真方式、インクジェット方式が挙げられる。電子写真方式においては乾式電子写真方式は、プラスチック基材に不向きであるためにこのような分野での使用は難しいが、湿式電子写真方式は有効にこの分野に適用されている。しかしながら、電子写真方式は校正用途での使用には有効であるが、生産性が低い、コストが割高であるというデメリットがある。
一方、インクジェット方式は高生産性、コストの観点から電子写真方式よりも有効な方式である。インクジェットには使用インクで大別すると、水性インクジェット、油性インクジェット、紫外線硬化型インクジェットに分類することができる。
従来のインクジェット記録方法としては、特許文献1〜5に記載された方法が挙げられる。
また、特許文献1等に記載されたインクジェット記録方法では、下塗り液を吐設した後、半硬化させ、その上に紫外線硬化型インクを像様に付与する方式が開示されている。しかしながら、この方式でも軟包装印刷に適用した場合、画像部分を手でクシャクシャに揉んだ場合を想定した柔軟性評価を行うと、画像部分に割れが発生するという問題が発生することを本発明者は見いだした。
<1>透明な記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り工程と、上記下塗り液を半硬化させる半硬化工程と、半硬化された上記下塗り液上にインク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、上記画像形成後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気中で露光することより半硬化された上記下塗り液及び上記インク組成物の全体を硬化させる全体硬化工程と、を含み、上記下塗り液が、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーのうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含有し、上記インク組成物が、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、ポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含み、上記全体硬化工程において、上記記録媒体における画像形成面及びその裏面の両方から露光することを特徴とするインクジェット記録方法、
<2>上記半硬化工程における露光波長と上記全体硬化工程における露光波長とが異なる、<1>に記載のインクジェット記録方法、
<3>上記下塗り液が、重合開始剤を2種以上含有する、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法、
<4>上記下塗り液が、上記半硬化工程における露光波長近辺に主吸収を持つ少なくとも1種の重合開始剤と、上記全体硬化工程における露光波長近辺に主吸収を持つ少なくとも1種の重合開始剤とを含有する、<3>に記載のインクジェット記録方法、
<5>上記下塗り液が、上記半硬化工程において分解せず、かつ上記全体硬化工程において分解する重合開始剤を少なくとも1種含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<6>上記下塗り液が、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドよりなる群から選ばれた化合物とを含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<7>上記ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーが、エチレン性不飽和基を有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<8>上記ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーが、(メタ)アクリロキシ基を有する、<7>に記載のインクジェット記録方法、
<9>上記インク組成物が、炭化水素ジオールジ(メタ)アクリレートを含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<10>上記インク組成物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含む、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
更に、本発明においては、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、透明な記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り工程と、上記下塗り液を半硬化させる半硬化工程と、半硬化された上記下塗り液上にインク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、上記画像形成後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気中で露光することより半硬化された上記下塗り液及び上記インク組成物の全体を硬化させる全体硬化工程と、を含み、上記下塗り液が、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーのうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含有し、上記インク組成物が、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、ポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含み、上記全体硬化工程において、上記記録媒体における画像形成面及びその裏面の両方から露光することを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、軟包装の印刷用に好適であり、パッケージ印刷用により好適であり、食品包装用のパッケージ印刷に特に好適である。
本発明に使用するインク組成物が、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、ポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含むことにより、臭気の少ない印刷物を得ることができると推定されるが、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有するため、膜が硬くなり、収縮も大きいため画像割れ及び密着性が悪化すると推定される。
また、本発明に使用する下塗り液には、特定のポリマー又はオリゴマーが含まれているため、硬化すると基材密着性及び柔軟性に優れると推定される。
更に、下塗り液を半硬化させ、その上にインク組成物を打滴することにより、下塗り液は半硬化状態なので、硬化していない部分がインク組成物と交じり、硬化すると、下塗り液素材とインク組成物素材が共有結合をつくり、下塗り液−インク組成物間での密着性は確保でき、また、インク組成物に下塗り液に含まれる特定のポリマー又はオリゴマーが混じるためにインク組成物硬化膜の柔軟性も良くなり、画像割れが改良されると推定される。
更にまた、全体硬化において、片面のみから露光すると、下塗り液とインク組成物とが混じった部分の硬化が不足し、インク組成物単独部分の硬化が進行し、その部分の画像割れが改良できないと推定される。一方、両面から露光することによって、一度に中まで硬化させることができ、また、下塗り液−インク組成物混合層も十分に硬化することができ、密着性及び柔軟性を確保することができると推定される。
本発明のインクジェット記録方法は、透明な記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り工程を含む。
上記下塗り液は、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーのうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含有する。
上記下塗り工程において、下塗り液は、透明な記録媒体の画像形成面の全面に付与してもよいし、一部のみに付与してもよいが、透明な記録媒体の画像形成面の全面に少なくとも付与することが好ましい。
なお、本発明における下塗り液の好ましい態様については、後述にて詳細に説明する。
なお、本発明において「透明」とは、可視光線透過率が80%以上を意味するものとし、可視光線透過率が90%以上であることが好ましい。また、透明な記録媒体は、透明であれば、着色していてもよいが、無色の記録媒体であることが好ましい。
透明な記録媒体として具体的には、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。
また、透明な記録媒体としては、これら樹脂が2種以上混合したものであってもよいし、また、これら樹脂が2層以上積層したものであってもよい。
ポリプロピレンとしては、CPP(無延伸ポリプロピレン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、KOP(ポリ塩化ビニリデンコートOPP)、AOP(PVAコートOPP)、ポリエチレンテレフタレートとしては、二軸延伸ポリエステル、ナイロンとしては、ON(延伸ナイロン)、KON(延伸ナイロン)、CN(無延伸ナイロン)が好ましく用いられる。
上記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター及び押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、下塗り液の記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布が好ましい。
また、下塗り液の付与量(単位面積あたりの質量比)としては、単位面積あたりのインク組成物の最大付与量(1色当たり)を1とした場合に0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内であることがより好ましく、0.1〜3の範囲内であることが特に好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記下塗り液を半硬化させる半硬化工程(「下塗り半硬化工程」ともいう。)を含む。
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液(以下、単に「下塗り液」ともいう。)及び/又はインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。記録媒体(基材)上に適用された下塗り液又は下塗り液上に吐出されたインク組成物が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り液及び/又はインク組成物は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。半硬化の確認方法としては、後述する未重合率の測定や粘度変化の測定、インク組成物表面と内部との状態の差の観察等の方法が好ましく挙げられる。
活性放射線を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、記録媒体に付与された下塗り液の表面におけるエチレン性不飽和化合物の重合反応を不充分に行う方法である。
上記活性放射線としては、紫外線の他、例えば可視光線など並びにα線、γ線、X線、電子線などが使用可能である。これらのうち、活性放射線としては、コスト及び安全性の点で、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
下塗り液の半硬化に必要なエネルギー量は、組成、特に光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、1〜500mJ/cm2程度であることが好ましい。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
下塗り液を半硬化するための好適な露光手段としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源が挙げられる。中でも、LED光源が好ましく、385nmのLED光源であることが特に好ましい。
上記半硬化工程においては、記録媒体と接していない側の下塗り液の表面が硬化していない状態であることが好ましい。
特に、上記下塗り液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって活性放射線の付与条件を制御することにより、下塗り液を半硬化させることができる。
上記半硬化工程における半硬化された下塗り液は、表面が硬化しておらず、内部が硬化した状態であることが好ましい。
また、粘度を高くする場合も、活性放射線の照射によって好適に行うことができる。
上記下塗り液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射によって重合を開始するエチレン性不飽和化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
ここで、A(重合後)は、重合反応後のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前のエチレン性不飽和基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液の含有するエチレン性不飽和化合物がアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーである場合は、810cm-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、上記未重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、半硬化された上記下塗り液上にインク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程を含む。
半硬化の状態の下塗り液上にインク組成物が吐出されることにより、得られる印刷物の画質及び柔軟性が優れる。
なお、本発明におけるインク組成物の好ましい態様については、後述にて詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の画像形成工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
インク供給系は、例えば、インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは1,200×1,200dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
インク組成物の吐出時におけるインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
例えば、カラー画像を形成する場合は、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を少なくとも使用することが好ましく、ホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物を少なくとも使用することがより好ましい。
また、ライトマゼンタやライトシアン等の淡色インク組成物、オレンジ、グリーン及びバイオレット等の特色インク組成物、クリアインク組成物、メタリックインク組成物等を使用してもよい。
また、直後に上記全体硬化工程を行う場合、本発明のインクジェット記録方法は、最後に吐出されたインク組成物を半硬化する工程を含んでいてもよいし、含んでいなくともよいが、コストや簡便性の観点から、含んでいないほうが好ましい。
また、2種以上のインク組成物を吐出する場合、いずれのインク組成物も半硬化された下塗り液上、吐出されたインク組成物上、又は、半硬化されたインク組成物上に吐出することが好ましい。すなわち、いずれのインク組成物も、直接接するか、又は、他のインク組成物層を介して、半硬化された下塗り液上に吐出されることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記画像形成後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気中で露光することより半硬化された上記下塗り液及び上記インク組成物の全体を硬化させる全体硬化工程を含み、かつ、上記全体硬化工程において、上記記録媒体における画像形成面及びその裏面の両方から露光する。
本発明においては、露光により全体硬化を行う際に、記録媒体の表面周辺の雰囲気を酸素濃度1体積%以下の貧酸素雰囲気とし、かつ透明な記録媒体の両側から露光し硬化させることで、臭気が低く、軟包装の印刷、特にパッケージ印刷物特性として重要な、得られる画像の密着性、柔軟性及び画質に優れることを本発明者は見いだした。
本発明における「完全硬化」とは、記録媒体上の下塗り液及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には全体硬化工程の終了後、普通紙(例えば、富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を均一な力(500〜1,000mN/cm2の範囲内で一定の値)押し当てて、浸透媒体に下塗り液表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
通常、大気(1気圧)下では酸素濃度21体積%であるので、酸素濃度1体積%以下に下げるためには、(a)露光時の大気を減圧して0.0476気圧以下にするか、(b)空気と酸素以外の気体(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス)を空気に対して95.4vol%以上混合することにより達成できる。
本発明における貧酸素雰囲気については、特に限定されず上記いずれの方法も用いることができる。
また、上記全体硬化工程における酸素濃度は、0.01〜1体積%であることが好ましく、0.1〜1体積%であることがより好ましい。
上記不活性ガスとは、N2、H2、CO2、などの一般的な気体や、He、Ne、Arなどの希ガス類をいう。この中でも、安全性や入手の容易さ、コストの問題から、N2が好適に利用される。
上記全体硬化工程における全体硬化に必要なエネルギー量は、組成、特に光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、100〜10,000mJ/cm2程度であることが好ましい。
上記全体硬化工程における好適な露光装置としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源が挙げられる。中でも、LED光源が好ましく、365nmのLED光源であることが特に好ましい。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、上記半硬化工程に使用する露光光源が、385nmのLED光源であり、かつ、上記全体硬化工程に使用する露光光源が、365nmのLED光源であることが特に好ましい。上記態様であると、得られる画像の密着性、柔軟性及び画質により優れ、臭気のより少ない印刷物を得ることができる。
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置は、透明な記録媒体を搬送する搬送手段と、上記記録媒体上に下塗り液を付与する付与手段と、上記記録媒体上に付与された下塗り液を半硬化する半硬化手段と、半硬化された上記下塗り液上にインク組成物をインクジェット吐出する吐出手段と、半硬化された上記下塗り液及びインク組成物を記録媒体の両面から露光する両面露光手段と、上記両面硬化手段による露光時の雰囲気を酸素濃度1体積%以下の貧酸素雰囲気とする貧酸素手段とを有することが好ましい。
また、本発明のインクジェット記録装置は、所謂シングルパス方式のインクジェット記録装置であることが好ましい。
窒素パージ露光光源ユニット22a及び22bは、例えば、LED光源が不活性ガスブランケットに囲まれており、不活性ガス配管を介して不活性ガス発生装置に接続しており、不活性ガス発生装置を稼働させると、ブランケット内の空気は不活性ガスに置換される態様が好ましく挙げられる。不活性ガスは、既述の通り、N2などを利用することができる。
以下、本発明のインクジェット記録方法に用いられる下塗り液及びインク組成物について、詳細に説明する。
本発明に用いることができる下塗り液は、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーのうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含有する。
また、本発明に用いることができるインク組成物は、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、ポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含む。
本発明に用いることができるインク組成物は、粘度及びインクジェット吐出性の観点から、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーを含有しないことが好ましい。
本発明に用いることができる下塗り液は、後述する着色剤を含有していてもよいが、白色着色剤を含有するか、又は、含有しないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
本発明に用いることができる下塗り液は、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマー(「特定のポリマー及び/又はオリゴマー」ともいう。)のうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含有する。下塗り液を好適な粘度に保つためにはオリゴマーであることが好ましい。本発明において、上記構造を持つオリゴマーはアクリレートオリゴマーであることが好ましい。
本発明において、「アクリレートオリゴマー」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を少なくとも1個有するオリゴマーであり、公知のアクリレートオリゴマーの中から、適宜選択して使用することができる。アクリレートオリゴマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を合計して1〜12個有することが好ましく、1〜6個有することがより好ましく、2〜6個有することが更に好ましい。
なお、アクレートオリゴマーは、アクリロイル基を有するオリゴマーのみではなく、メタクリロイル基を有するオリゴマーも含むものであり、アクリロイル基を有するオリゴマーであることが好ましい。
アクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が20,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましい。本発明において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ法(GPC)法にて測定され、標準ポリスチレンで換算して求められる。具体的には、例えば、GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
これらの中でも、上記アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステル構造、ウレタン構造、塩素化ポリオレフィン構造を持つことが密着性を良好に保つために必要である。
ウレタンアクリレートとして、例えば、Sartomer社製のCN991、CN2922、CN9011、CN992、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecryl 230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U−200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
本発明における特定のポリマー及び/又はオリゴマーの含有量は、下塗り液の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、55〜99質量%であることがより好ましく、60〜97質量%であることが更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、十分な基材密着性が得られる。
特定のポリマー及びオリゴマーの重量平均分子量は、1,000以上であり、1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることが更に好ましく、2,000〜20,000であることが特に好ましい。
また、オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、重量平均分子量が20,000未満であることが好ましい。
本発明に用いることができるインク組成物は、エチレン性不飽和化合物を含有する。
また、本発明に用いることができるインク組成物は、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、ポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含む。
本発明に用いることができる下塗り液は、エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、公知のエチレン性化合物を用いることができ、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、アクリレート化合物であることがより好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましく、少なくとも2官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
また、2官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能アクリレート化合物であることが好ましく、少なくともジアクリレートモノマーを含有することが特に好ましい。
なお、本発明において、モノマーとは分子量が1,000未満の化合物であり、オリゴマーとは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、重量平均分子量が1,000以上である。
また、本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上含有し、かつ、分子量が1,000未満の化合物を意味する。
本発明において、(メタ)アクリレートモノマーの分子量は700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、226〜358であることが更に好ましく、242〜300であることが特に好ましい。分子量が上記範囲内であると、印刷物のマイグレーション及び臭気の抑制と、反応性とを両立できる。
また、インク組成物は、多官能エチレン性不飽和化合物として、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
また、下塗り液とインク組成物とは、エチレン性不飽和化合物として同じ化合物を少なくとも1種含有していることが好ましい。
ポリアルキレングリコールジアクリレートとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリプロピレングリコールジアクリレートであることが好ましい。
また、ポリアルキレングリコールジアクリレートにおけるアルキレングリコール単位の繰り返し数、すなわち、アルキレンオキシ基の繰り返し数は、2以上であり、2〜100であることが好ましく、5〜20であることがより好ましい。
インク組成物中におけるポリアルキレングリコールジアクリレートの含有量は、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、5質量部以上であり、5〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることが更に好ましい。上記態様であると、得られる画像の密着性及び柔軟性により優れ、臭気のより少ない印刷物を得ることができる。
また、エチレン性不飽和化合物としては、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物等も挙げられる。
上記インク組成物中における多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、インク組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、95質量部以上であり、96〜100質量部であることがより好ましく、98〜100質量%であることが更に好ましく、100質量部である、すなわち、単官能エチレン性不飽和化合物を含有しないことが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性及び基材密着性により優れる。
上記インク組成物中におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全質量に対し、50〜95質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%が更に好ましい。
上記下塗り液中におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、硬化性の観点から、下塗り液の全質量に対し、1〜80質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
本発明に用いることができる下塗り液は、重合開始剤を含有することが好ましい。
また、本発明に用いることができるインク組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。上記重合開始剤の詳細については、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されているものが例示できる。
本発明における重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましく挙げられる。中でも、アシルホスフィン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物がより好ましく、アシルホスフィン化合物が更に好ましい。
芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシケトン化合物及び/又はα−アミノケトン化合物が好ましい。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、公知のものを用いることができるが、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
また、α−アミノケトン化合物としては、公知のものを用いることができ、具体的には例えば、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、市販品としては、BASF社製IRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン)等が好ましく例示できる。
また、重合開始剤としては、例えば、LAMBSON社製のSPEEDCURE 7040、BASF社製のLUCIRIN TPOが挙げられる。
最終硬化光源として365nmのLEDを採用し、ピニング光源として385nmのLEDを採用し、IRGACURE907等とIRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE819、LUCIRIN TPO等を併用すれば、ピニング露光ではIRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE819、LUCIRIN TPO等がラジカルを放出し、最終硬化露光では365nmの光では感応しづらいIRGACURE907等が反応し、最終硬化時でも十分なラジカルを放出することが可能となる。
すなわち、上記下塗り液は、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドよりなる群から選ばれた化合物とを含有することが好ましく、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドとを含有することが特に好ましい。
また、本発明に用いることができる下塗り液は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
上記インク組成物は、重合開始剤として、式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、上記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、また、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキル基であることがより好ましく、エチル基又はイソプロピル基であることが更に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が例示され、塩素原子であることが好ましい。
これらの中でも、R1及びR2はそれぞれ独立にエチル基、イソプロピル基又は塩素原子であることが特に好ましい。
式(1)中、jは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。jが2以上の整数の場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、kは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。kが2以上の整数の場合、複数存在するR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、xは2〜4の整数を表し、3又は4であることが好ましく、4であることがより好ましい。
なお、式(1)において、連結基であるX1を除いたチオキサントン構造(式(1)中、[ ]内に表された構造)を複数(x個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R1の置換位置は、特に限定されないが、6位又は7位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
また、R2の置換位置は、特に限定されないが、1位、2位又は3位であることが好ましく、1位であることがより好ましい。
式(1’)中、R11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(1’)中、rはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、rが2以上のとき、複数存在するR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
x’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y1は少なくともx’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、x’個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(x’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(1’)中、A1は下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(1)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
上記の反応は溶媒の存在下で行うことが好ましく、適当な溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示される。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
反応終了後、反応混合物から公知の手段によって単離し、必要に応じて洗浄し、乾燥することによって、生成物を分離することができる。
上記インク組成物は、重合開始剤として、式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(2)中、mは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。mが2以上の整数の場合、複数存在するR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、nは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。nが2以上の整数の場合、複数存在するR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、yは2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
なお、式(2)において、連結基であるX2を除いたベンゾフェノン構造(式(2)中、[ ]内に表された構造)を複数(y個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R3の置換位置は、特に限定されないが、2’位又は3’位であることが好ましく、3’位であることがより好ましい。
また、R4の置換位置は、特に限定されないが、2位、3位又は4位であることが好ましい。
式(2’)中、R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(2’)中、tはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、tが2以上のとき、複数存在するR21はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
y’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y2は少なくともy’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、y’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(y’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(2’)中、A2は下記式(i)〜式(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、式(2)で表される化合物が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
上記の反応は溶媒の存在下で行うことが好ましく、適当な溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示される。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
また、式(2)で表される化合物としては、式(2−1)で表される化合物がより好ましい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。
中でも、増感剤としては、チオキサントン類が好ましく、イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることができるインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる下塗り液は、着色剤を含有してもよいが、上述したように、白色着色剤を含有するか、又は含有しないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
また、下塗り液が着色剤を含有する場合、下塗り液中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、下塗り液全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
本発明に用いることができるインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。
また、本発明に用いることができる下塗り液は、分散剤を含有してもよい。
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
下塗り液又はインク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、下塗り液又はインク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
下塗り液又はインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
下塗り液又はインク組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、下塗り液又はインク組成物全体の質量に対し、0.0001〜5質量%であることが好ましく、0.001〜2質量%であることがより好ましい。
本発明のインク組成物には、必要に応じて、上記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含む。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、下塗り液又はインク組成物の全質量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。インク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
なお、インク組成物の25℃における表面張力の測定方法としては、公知の方法を用いることができるが、吊輪法、又は、ウィルヘルミー法で測定することが好ましい。例えば、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定する方法、又は、KSV INSTRUMENTS LTD社製 SIGMA702を用いて測定する方法が好ましく挙げられる。
また、下塗り液の表面張力は、インク組成物の表面張力以下であることが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことがより好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、いずれかのインク組成物の表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2
の関係を満たす。
また、条件(A)は、全てのインク組成物について満たすことが好ましい。
更に、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を示すものとする。
<着色剤>
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート(SR341、Sartomer社製)
・1,10−デカンジオールジアクリレート(CD595、Sartomer社製)
・PEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート、SR344、Sartomer社製)
・PPGDA(ポリプロピレングリコールジアクリレート、和光純薬工業(株)製)
・IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、BASF社製、分子量419)
・IRGACURE 379(2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)ブタン−1−オン、BASF社製、分子量380)
・IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、分子量297)
・Speedcure7010(前述した化合物I−B、Lambson社製、分子量1,899)
・CN147(ポリエステルアクリレート、Sartomer社製)
・CN820(アクリルポリマー、Sartomer社製)
・CN146(ポリエステルアクリレート、Sartomer社製)
・CN991(ウレタンアクリレートオリゴマー、Sartomer社製)
・UV−12(FLORSTAB UV12、ニトロソ系重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩、Kromachem社製)
・BYK−307(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR9003を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
表2に示す割合で各素材をミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて室温(25℃)で5,000回転/分にて20分撹拌混合し、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1、下塗り液U−1をそれぞれ調製した。なお、表2における各成分の含有量の単位は、質量部である。
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをPEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート)10質量部と3−メチルペンタンジオールジアクリレート20質量部とに置き換えた以外は、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の調製と同様にして、シアンインクC−2、マゼンタインクM−2、イエローインクY−2、ブラックインクK−2、ホワイトインクW−2をそれぞれ作製した。
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをPPGDA(ポリプロピレングリコールジアクリレート)10質量部と3−メチルペンタンジオールジアクリレート20質量部とに置き換えた以外は、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の調製と同様にして、シアンインクC−3、マゼンタインクM−3、イエローインクY−3、ブラックインクK−3、ホワイトインクW−3をそれぞれ作製した。
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをフェノキシエチルアクリレートに置き換えた以外は、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、ホワイトインクW−1の調製と同様にして、インクシアンインクC−4、マゼンタインクM−4、イエローインクY−4、ブラックインクK−4、ホワイトインクW−4をそれぞれ作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN147に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−2を作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN820に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−3を作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN147に置き換え、3−メチルペンタンジオールジアクリレート30質量部をCN820に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−4を作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN146に置き換え、3−メチルペンタンジオールジアクリレート30質量部をCN991に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−5を作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN147に置き換え、3−メチルペンタンジオールジアクリレート30質量部をCN820に置き換え、IRGACURE819のうち4質量部をIRGACURE907に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−6を作製した。
下塗り液U−1の1,10−デカンジオールジアクリレートをCN146に置き換え、3−メチルペンタンジオールジアクリレート30質量部をCN991に置き換え、IRGACURE819のうち4質量部をIRGACURE907に置き換えた以外は下塗り液U−1の調製と同様にして、下塗り液U−7を作製した。
図2に示すように、ロール搬送系の最上流部にローラー塗布機を配置し、その下流にLED光源、更にその下流にブラック用ヘッド、以下LED光源、シアン用ヘッド、LED光源、マゼンタ用ヘッド、LED光源、W用ヘッド、窒素パージ露光機を配置した。
各インクジェットヘッドは、富士フイルムDIMATIX社製Samba1200ヘッドを用いた。
基材(記録媒体)としては、OPP(延伸ポリプロピレン) 25μm、PET 12μm、ナイロン 15μmを用いた。
下塗り液、及び、各インク組成物が半硬化状態に保てるようにLED光源の光量を調節した。
描画速度は30m/minに設定し、吐出周波数はその速度で1,200dpiの画像が形成できるようにした。
窒素パージLED露光機の窒素量は、酸素濃度が1体積%になるように調整した。
また、窒素パージ露光機の露光波長は、365nmであり、それ以外のLED光源の露光波長は、385nmであった。なお、図1に示す画像形成装置においても同様である。
画像形成方法1において、図1に示すように窒素パージ露光機における露光を画像形成面及びその裏面の両方から行う以外は画像形成方法1と同様の方法を、画像形成方法2とした。
表3に記載の各インク組成物及び下塗り液を使用し、表3に記載の画像形成方法により、各種基材に下記評価方法に記載されているように画像をそれぞれ形成した。得られた画像について、下記評価方法により評価した。評価結果を表3に併せて示す。
1,200dpi×1,200dpiでブラック50%、シアン50%、マゼンタ50%、イエロー50%、ホワイト100%の画像を描画した。
OPP、PET、ナイロン各基材のテープ剥離試験を行った。
1:全く剥離しない。
2:画像の全面積の95%以上剥離しない。
3:画像の全面積の90%以上95%未満剥離しない。
4:画像の全面積の20%以上90%未満剥離しない。
5:画像の全面積の0%以上20%未満剥離しない。
3以下であれば実用上問題ない。
1,200dpi×1,200dpiでブラック50%、シアン50%、マゼンタ50%、イエロー50%、ホワイト100%の画像を描画した。
得られた印刷物を両手の親指を1cm離した状態でつかみ、1秒あたり1回のペースで各両手を互い違いに印刷物の面方向に動かして10回もみ、柔軟性評価を行った。
1:全く画像部の割れが発生しない。
2:わずかに画像部の割れが発生するが、視認できない。
3:画像部の割れが視認できる。
4:画像部全体に大量に割れが発生する。
2以下であれば実用上問題ない。
6pt、8pt、10ptのゴシック体の文字「鷹」を描画した。
1:6ptの鷹を再現できる。
2:6ptの鷹は再現できないが、8ptの鷹を再現できる。
3:8ptの鷹は再現できないが、10ptの鷹を再現できる。
4:10の鷹を再現できない。
2以下であれば実用上問題ない。
1,200dpi×1,200dpiでブラック50%、シアン50%、マゼンタ50%、イエロー50%、ホワイト100%の画像を描画した。臭気評価はOPPのみで評価した。
作製したサンプルの臭気を10人の被験者で評価し、その平均値を四捨五入し評価値とした。
1:全く臭気を感じない。
2:ほとんど臭気を感じない。
3:臭気を感じる。
4:強い臭気を感じる。
2以下であれば実用上問題ない。
画像形成方法2において、窒素パージLED露光機において窒素パージを行わない、すなわち、大気下で露光を行った以外は画像形成方法2と同様の方法を、画像形成方法0とした。
表4に記載の各インク組成物及び下塗り液を使用し、画像形成方法0により、各種基材に上記評価方法に記載されているように画像を形成した。得られた画像について、上記評価方法により評価した。評価結果を表4に併せて示す。
画像形成方法2において、塗布ローラー後のピニング光源に代えて、ホワイトインクジェットヘッドの直下にある窒素パージ露光機を設置し、完全硬化させる工程を含めた以外は画像形成方法2と同様の方法を、画像形成方法3とした。
表5に記載の各インク組成物及び下塗り液を使用し、画像形成方法3により、各種基材に上記評価方法に記載されているように画像を形成した。得られた画像について、上記評価方法により評価した。評価結果を表5に併せて示す。
Claims (10)
- 透明な記録媒体上に下塗り液を付与する下塗り工程と、
前記下塗り液を半硬化させる半硬化工程と、
半硬化された前記下塗り液上にインク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、
前記画像形成後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気中で露光することより半硬化された前記下塗り液及び前記インク組成物の全体を硬化させる全体硬化工程と、を含み、
前記下塗り液が、ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーのうち、2種類以上のポリマー及び/又はオリゴマーと、エチレン性不飽和化合物と、重合開始剤とを含有し、
前記インク組成物が、エチレン性不飽和化合物と、重合開始剤とを含有し、前記インク組成物に含まれる前記エチレン性不飽和化合物の総含有量100質量部に対し、多官能エチレン性不飽和化合物を95質量部以上含有し、かつ、前記多官能エチレン性不飽和化合物としてポリアルキレングリコールジアクリレートを5質量部以上含み、
前記全体硬化工程において、前記記録媒体における画像形成面及びその裏面の両方から露光することを特徴とする
インクジェット記録方法。 - 前記半硬化工程における露光波長と前記全体硬化工程における露光波長とが異なる、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記下塗り液が、前記重合開始剤を2種以上含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記下塗り液が、前記重合開始剤として、前記半硬化工程における露光波長近辺に主吸収を持つ少なくとも1種の重合開始剤と、前記全体硬化工程における露光波長近辺に主吸収を持つ少なくとも1種の重合開始剤とを含有する、請求項3に記載のインクジェット記録方法。
- 前記下塗り液が、前記重合開始剤として、前記半硬化工程において分解せず、かつ前記全体硬化工程において分解する重合開始剤を少なくとも1種含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記下塗り液が、前記重合開始剤として、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドよりなる群から選ばれた化合物とを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーが、エチレン性不飽和基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリエステル構造、ポリウレタン構造及び塩素化ポリオレフィン構造よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するポリマー又はオリゴマーが、(メタ)アクリロキシ基を有する、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク組成物が、前記エチレン性不飽和化合物として、炭化水素ジオールジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク組成物が、前記重合開始剤として、下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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