以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1には本実施形態の水栓装置1が設けられた流し台2が示されている。なお、以下では水栓装置1を流し台2に設置した状態における方向を基準にして説明し、流し台2から見て利用者が立つ側を前方として説明する。
流し台2の上部には、流し台2の上方に開口するシンク20が設けられている。シンク20の底部上面は略水平である。水栓装置1は流し台2の上方よりシンク20に水を吐出するものであって、この水はシンク20の底部によって受けられる。すなわち、シンク20の底部は水栓装置1から吐出された水を受ける水受部を構成する。利用者はシンク20に吐出された水を利用してシンク20内で食器や調理器具、食材等の被洗浄物を洗浄できる。
図3に示されるように水栓装置1が備える吐水系統は、シンク20に水を吐出する吐水部3、吐水部3に水を供給する水供給路4、及び水供給路4に設けられた弁5を有している。また、水栓装置1は、センサー60〜62と、制御部7と、報知手段としての発光部8及び発音部9を備えている。
水栓装置1の本体を構成する吐水部3は、図1に示されるようにシンク20後方の流し台2の上面部に設けられている。水栓装置1の利用者は流し台2の手前に立つので、この利用者は吐水部3の前方に位置することとなる。
吐水部3は、流し台2の上面から立ち上がる縦長のベース30と、ベース30の上端面から突出したスパウト31を有している。なお、図示例の吐水部3は流し台2の上面に設けられているが、その他の箇所、例えばシンク20の上端部より後方に突出したフランジ部上等に設けられてもよい。
ベース30は吐水部3の突出基部を構成している。ベース30は流し台2の上面部に対して縦軸回りに回動自在に設けられている。ここで、「縦軸回り」とは、回動軸方向が上下方向と平行であることを意味する。ベース30の回動範囲は、例えばスパウト31の吐水口310がベース30よりも前側に位置する限られた範囲になるように設定される。なお、以下では、特に記載した場合を除き、スパウト31を平面視でベース30から前方に突出させたとき(すなわち、図1に示される状態)の方向を基準にして説明する。
スパウト31は側面視逆U字状に湾曲した管状に形成されており、ベース30から立ち上げられた後に前側において下方に折り返されている。スパウト31の先端部はベース30の前側で且つシンク20の上方に位置している。このスパウト31の先端部には、下方に開口する吐水口310が設けられている。
吐水部3の内部には吐水口310に水を供給する吐水路33(図5参照)が形成されている。図3に示される水供給路4は流し台2の内部に設けられている。図示は省略するが、水供給路4の上流側には給水源を構成する水道管及び給湯器が接続されている。水供給路4の下流端は吐水路33の上流端に接続されている。前記水道管の水と前記給湯器で生成された湯は混合され、この混合水は水供給路4から吐水路33を介して吐水口310に供給される。そして、この水は吐水口310から下方のシンク20に吐出される。
弁5は電磁弁であって、開閉することで水供給路4に供給された水を吐水口310に供給するか否かを切り替えられるようになっている。すなわち、弁5は吐水口310からの吐水の有無を切り替える吐水切替手段を構成している。
水栓装置1は吐水モードとして自動吐水モード(節水モード)を備えている。自動吐水モードの入切は例えば吐水部3に設けられた操作部を操作して切り替えられる。自動吐水モードでは、常時又は間欠的に吐水口310の下側の検知エリア65(吐水領域)に手や皿等の物体が存在するか否かが検知される。この検知エリア65は吐水口310とシンク20の底部の間における上部である。そして、自動吐水モードにおいて検知エリア65に物体が存在する場合には自動で吐水状態とされ、検知エリア65に物体が存在しない場合には自動で吐水停止状態とされる。すなわち、自動吐水モードでは吐水口310下側の検知エリア65に物体が存在する場合にのみ吐水が行われる。なお、前記物体には、人体の一部の他、食器や調理器具、食材等も含まれる。
図2に示されるようにセンサー60〜62は吐水部3に設けられている。センサー60〜62は自動吐水モードにおける弁5の制御に用いられる。図2には各センサー60〜62の投光領域や受光領域が二点鎖線で示されている。これらセンサー60〜62により、自動吐水モードにおいて、吐水口310の下側の検知エリア65に物体が存在するか否かを非接触で検知する物体検知手段が構成されている。以下、センサー60〜62を区別するため、センサー60を第一センサー60、センサー61を第二センサー61、センサー62を第三センサー62と記載する場合がある。
第一センサー60は、三角測距方式で対象物までの距離を測定する測距センサーであって、詳しくは測距反射型光電センサー(距離設定型光電センサー)である。第一センサー60は、第一投光部600(図2参照)と第一受光部601(図5(a)参照)を有している。第一投光部600及び第一受光部601はベース30に設けられている。
第一投光部600は、照射光として赤外線を照射する投光素子で構成されている。なお、この投光素子は赤外線を照射するものに限られず、例えば可視光を照射するものであってもよい。第一投光部600の光照射方向は、検知エリア65及びシンク20の底部のある前斜め下方に設定されている。これにより、第一投光部600から照射された光は、検知エリア65を通過してシンク20の底部の上面に到達するように設定されている。
第一受光部601は、位置検出素子(例えばPSD(Position Sensiteive Detector)で構成されており、検知エリア65及びシンク20の底部上面から来た光を受けるように設定されている。第一投光部600から照射された光は、検知エリア65に存在する物体やシンク20の底部等の対象物で反射した後、第一受光部601に到達するように設定されている。
具体的に第一センサー60によって物体の有無が検知される検知領域は、第一投光部600の投光領域と第一受光部601の受光領域の重複部分となる。以下、この検知領域を第一検知領域602と記載する場合がある。第一検知領域602はその一部が物体検知手段の検知エリア65と重複している。
図4(a)に二点鎖線で示されるように、第一検知領域602に物体が存在する場合、第一投光部600から照射された光は、物体で反射した後に矢印a1で示されるように第一受光部601に到達する。この時、第一受光部601には第一投光部600側の位置に光スポットが形成される傾向となる。他方、検知エリア65に物体が存在しない場合、第一投光部600から照射された光は、シンク20の底部の上面で反射した後に矢印a2で示されるように第一受光部601に到達する。このとき、第一受光部601には第一投光部600から離れた位置に光スポットが形成される傾向となる。すなわち、第一受光部601に形成される光スポットの位置は、第一投光部600から対象物までの距離に応じて変化する。従って、第一センサー60は、第一受光部601に形成された光スポットの位置を検出し、これにより第一検知領域602に存在する対象物までの距離を測定することができる。
第二センサー61は透過型の光電センサーであって、限定反射型光電センサーで構成されている。限定反射型光電センサーは、強い受光出力を得るために投受光の指向角度を小さくしたものである。また、限定反射型光電センサーは、投光軸と受光軸が比較的大きな角度で交差し、この交差する領域は限定されている。
第二センサー61は、図2に示されるように、第二投光部610及び第二受光部611を有している。スパウト31の先端部にはセンサー設置部32が設けられている。センサー設置部32は逆U字状のスパウト31の下方に折り返した前部から後方に突出して設けられている。第二投光部610はセンサー設置部32に設けられている。第二投光部610は、照射光としての赤外線を下方に向けて照射する投光素子で構成されている。なお、この投光素子は赤外線を照射するものに限られず、例えば可視光を照射するものであってもよい。
第二投光部610から照射された光は検知エリア65を通過してシンク20の底部の上面に到達するように設定されている。この第二投光部610の投光領域には、第一投光部600の投光領域が横切っている。
第二受光部611は受光素子で構成されている。第二受光部611は吐水部3のベース30に設けられている。第二受光部611は、第二投光部610の後側に位置する。第二受光部611の受光方向はシンク20の底部のある前斜め下方に設定されている。このため、第二投光部610から照射された光は、検知エリア65を通過してシンク20の底部の上面で反射した後、第二受光部611に到達するようになっている。
第二投光部610の投光軸と第二受光部611の受光軸は、概ねシンク20の底部の上面で交差するように設定されている。すなわち、第二センサー61の投光領域と受光領域の交差する領域は、第二投光部610から見て検知エリア65よりも遠方となるシンク20底部の上面付近に限定されている。
具体的に第二センサー61によって物体の有無が検知される検知領域は、前記のように第二投光部610から照射されてシンク20の底部上面で反射した後、第二受光部611に至る光が通過する領域となる。以下、この検知領域を第二検知領域612と記載する場合がある。
第二検知領域612(詳しくは第二投光部610の投光領域)は、その一部が検知エリア65と重複している。また、第二検知領域612(詳しくは第二投光部610の投光領域)は、その一部が第一検知領域602と重複している。また、第一検知領域602は、第二検知領域612との重複する領域の前側に位置し且つ第二検知領域612とは重複しない非重複領域603(図4(a)参照)を含んでいる。
図4(b)に二点鎖線で示されるように、第二検知領域612に物体が存在する場合、第二投光部610から照射された光は物体によって遮られ、シンク20の底部の上面に到達し難い。このため、第二受光部611には第二投光部610の照射光が到達し難くなる。他方、第二検知領域612に物体が存在しない場合、第二投光部610の照射光は、検知エリア65を通過してシンク20の底部に至る。このため、当該照射光は、シンク20の底部において矢印a3に示す方向に反射して第二受光部611に到達し易くなる。すなわち、第二センサー61は、第二受光部611の受光量の変化を検出することにより、第二検知領域612における物体の有無を区別できるようになっている。
第三センサー62は反射型の光電センサーであって、第二センサー61と同様に限定反射型光電センサーで構成されている。第三センサー62は、図2に示される第三投光部620と第三受光部621を有している。第三投光部620はセンサー設置部32に設けられている。第三投光部620は第二投光部610の後方に位置している。
第三投光部620は、照射光である赤外線を前斜め下方に向けて照射する投光素子で構成されている。なお、この投光素子は赤外線を照射するものに限られず、例えば可視光を照射するものであってもよい。第三投光部620の照射光は、検知エリア65を通過し、シンク20の底部上面において、第二投光部610の照射光が照射される領域の前側に当該領域と一部重複して照射するように設定されている。すなわち、第三投光部620は第二投光部610の投光領域の後側から前側に光を照射し、この光は第二投光部610の投光領域を横切る。また、第一投光部600の投光領域は、第三投光部620の投光領域を横切っている、あるいはシンク20の底部の上面において第三投光部620から照射された光の照射領域と重複している。
第三受光部621は第三投光部620の照射光を受ける受光素子で構成されている。第三受光部621は吐水部3のベース30に設けられている。第三受光部621は第三投光部620の後側に位置する。第三受光部621の受光方向は検知エリア65のある前斜め下方に設定されている。
第三投光部620の投光軸と第三受光部621の受光軸は、概ね検知エリア65で交差するように設定されている。すなわち、第三センサー62の投光領域と受光領域が交差する領域は検知エリア65に限定されており、第三センサー62は検知エリア65に存在する物体を反射物体として第三投光部620から照射された照射光が第三受光部621側に反射するように設定されている。
具体的に第三センサー62によって物体の有無が検知される検知領域は、第三投光部620の投光領域と第三受光部621の受光領域とが重なる部分が検知領域となる。以下、この検知領域を第三検知領域622と記載する場合がある。
第三検知領域622はその一部に検知エリア65を含んでいる。第三検知領域622は第二検知領域612との重複する領域の前側に位置し且つ第二検知領域612とは重複しない非重複領域623を含んでいる。この非重複領域623の一部は第一検知領域602の非重複領域603と重複している。
図4(c)に二点鎖線で示されるように、第三検知領域622に物体が存在する場合、第三投光部620から照射された光は、矢印a4に示されるように物体で反射する。このため、第三受光部621には当該照射光が到達し易い。一方、第三検知領域622に物体が存在しない場合、第三投光部620から照射した照射光は、第三検知領域622を通過してシンク20の底部に至る。このため、第三受光部621には第三投光部620から照射した照射光が到達し難い。すなわち、第三センサー62は第三受光部621の受光量の変化を検出することで、第三検知領域622における物体の有無を区別できるようになっている。
制御部7は、自動吐水モードが「入り」(ON)であるときに、常時または間欠的に、第一投光部600からシンク20の底部に向けて光を照射し、同時に第一受光部601の出力から得た測定結果を監視する。また、制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに、前記第一投光部600からの光照射と同時に又は極短時間ずらして、第二投光部610からシンク20の底部に向けて光を照射し、同時に第二受光部611の受光の出力を監視する。また、制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに、前記第二投光部610からの光照射と同時に又は極短時間ずらして、第三投光部620から検知エリア65に向けて光を照射し、同時に第三受光部621の受光の出力を監視する。そして、制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに、第一センサー60により測定した対象物までの距離、及び第二受光部611の受光出力並びに第三受光部621の受光出力に基づき、検知エリア65における物体の有無を判定する。なお、自動吐水モード以外の利用時にあっては、前記のセンサー60〜62による物体の検知は行われない。
表1に制御部7による検知エリア65における物体の有無の判定基準を示す。
表1における「有」は、センサー60〜62がその検知領域602、612、622に物体が有る場合の出力値を示したときの状態を表している。また、表1における「無」は、センサー60〜62がその検知領域602、612、622に物体が無い場合の出力値を示したときの状態を表している。
すなわち、制御部7は、第一センサー60で測定した対象物までの距離が所定距離以下になり、且つ、第二受光部611の出力が第一の所定値以下になった場合に、検知エリア65に物体が有ると判定する。また、制御部7は、第三受光部621の出力が第二の所定値を超える値になった場合に、検知エリア65に物体が有ると判定する。また、制御部7は、前記二例以外の場合は、検知エリア65に物体が無いと判定する。
前記所定距離は、第一投光部600からシンク20の底部までの距離よりも短く且つ第一投光部600から検知エリア65までの距離よりも長い値に設定されている。また、前記第一の所定値は、第二投光部610の照射光がシンク20の底部の上面で反射したときの第二受光部611の出力よりも小さい値に設定されている。また、この第一の所定値は、第二投光部610の照射光が検知エリア65に存在する物体で反射したときの第二受光部611の出力よりも大きくなる値に設定されている。また、前記第二の所定値は、第三投光部620の照射光が検知エリア65に存在する物体で反射したときの第三受光部621の出力よりも小さい値に設定されている。また、この第二の所定値は、第三投光部620の照射光が検知エリア65を通過してシンク20の底部に到達したときの第三受光部621の出力よりも大きい値に設定されている。
ここで、測距反射型光電センサーである第一センサー60は、受光量の変化に応じて物体の有無を検出する第二センサー61や第三センサー62と比較して、反射率の低い物体の有無を検出するのに適している。ところが、第一センサー60は検知感度が高いため、第一検知領域602に湯気等が存在する場合、第一投光部600から照射した光は前記湯気等で反射して第一受光部601に至り、第一センサー60で測定した対象物までの距離が所定距離以下になる可能性がある。しかし、この場合、第二受光部611の出力は第一の所定値を超え、また、第三受光部621の出力は第二の所定値以下の値となる。従って、制御部7は検知エリア65に物体が無いと判定する。
また、第三センサー62の受光領域は、第二センサー61の受光領域よりも広く設定されており、第三センサー62は第二センサー61と比較して反射率の低い物体に対する検知感度が低い。このため、検知エリア65に反射率の低い物体が存在する場合、第三受光部621の出力が第二の所定値以下の値となる可能性がある。しかし、この場合、第一投光部600から照射された光は検知エリア65に存在する物体で反射して第一受光部601に到り、第一センサー60で測定した対象物までの距離が所定距離以下になる。また、第二投光部610から照射された光は検知エリア65に存在する物体に遮られ、第二受光部611の出力は第一の所定値以下になる。従って、制御部7は検知エリア65に物体が有ると判定する。
また、第一センサー60の受光領域及び第二センサー61の受光領域は、第三センサー62の受光領域よりも狭い。このため、吐水口310の下側に小さい物体やこれを持つ手が存在しても、第一投光部600から照射された光が物体に当たらず、第一センサー60で測定した対象物までの距離が所定距離を上回る可能性がある。また、この場合、第二投光部610から照射された光が物体に当らず、第二受光部611の出力が第一の所定値を上回る値となる可能性もある。しかし、この場合、第三センサー62の受光領域は広いため、第三投光部620から照射された光は検知エリア65に存在する物体に反射し、第三受光部621の出力が第二の所定値を超える値になる。従って、制御部7は検知エリア65に物体が有ると判定する。
また、シンク20の底部上に鍋等の載置物が置かれた場合、第二投光部610から照射された光が載置物に遮られ、検知エリア65に物体が存在しないにもかかわらず、第二受光部611の出力が第一の所定値以下になる可能性がある。しかし、この場合、第三投光部620から照射された光は検知エリア65を通過して第三受光部621の出力が第二の所定値以下の値となる。従って、制御部7は検知エリア65に物体が無いと判定する。
制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに前記の検知エリア65における物体の有無の判定結果に基づいて、吐水部3の吐水の有無を切り替える。この切り替えは図3に示される弁5の開閉を切り替えることで行われる。すなわち、制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに検知エリア65に物体が有ると判定した場合、弁5を開いて吐水口310からシンク20に水を吐出する。これにより、吐水口310から吐出された水を吐水口310の下方に差し入れた手や皿等の物体に当てて洗うことができる。また、制御部7は、自動吐水モードが「入り」であるときに検知エリア65に物体が無いと判定した場合、弁5を閉じて吐水口310からの吐水を停止する。
なお、自動吐水モードが「切り」であるときは、吐水部3からの吐水を可能にしてもよいし、不能にしてもよい。前者の場合、例えば吐水部3に設けられた操作部を操作したり、人体検知センサーの検知結果に基づいて吐水部3からの吐水の有無が切り替えられる。
また、水栓装置1は、自動吐水モードが「入り」であるときにおいて報知を行うための報知手段として、図3に示される発光部8及び発音部9を備えている。
本実施形態では図1に示されるように発光部8がスパウト31の上面部に設けられている。発光部8は例えば発光色が橙色である発光ダイオード(LED)で構成されている。発光部8は制御部7によって、点灯状態、点滅状態、及び消灯状態のいずれかに変更可能である。なお、発光部8は吐水部3の他の箇所や、吐水部3以外の箇所に設けられるものであってもよい。
また、発音部9は例えばスピーカーで構成され、スパウト31又はベース30に設けられる。なお、発音部9は吐水部3以外の箇所に設けられるものであってもよい。
制御部7は自動吐水モードが「入り」であるとき、前記の自動吐水モードにおける監視において検出されるセンサー60〜62の出力に基づき、発光部8及び発音部9を以下のように制御する。
制御部7は、自動吐水モードにおいて第一検知領域602に物体が存在していることを検知し、且つ第二検知領域612及び第三検知領域622に物体が存在していないことを検知した際に、第一の報知を行う。すなわち、吐水口310からの吐水が停止された状態で、第一検知領域602に物体が存在していることを検知し、且つ第二検知領域612に物体が存在していないことを検知した際に、第一の報知を行う。また、制御部7は、自動吐水モードにおいて第二検知領域612に物体が存在していることを検知し、且つ第一検知領域602及び第三検知領域622に物体が存在していないことを検知した際には、第二の報知を行う。また、制御部7は、前記二例以外の場合は発光部8及び発音部9による報知を行わない。すなわち、この場合、発光部8は消灯し、発音部9からは音を発しない。
前記第一の報知は発光部8を橙色の発光色で点灯させ、同時に発音部9から音を発することで行われる。この際、発音部9から発せられる音は、利用者に対して、物体が全てのセンサー60〜62によって検知されるように物体の位置及び向きの変更を促す音声である。
ここで、前記第一の報知を行う場合、物体が図5(a)に示されるように第一検知領域602において第二検知領域612前側に位置する非重複領域603に存在していることが想定される。また、第三投光部620から照射された光が、物体に当たって第三受光部621側以外の方向に反射していることが想定される。従って、第一の報知において発音部9から発生される音声は、物体を検知エリア65のある後側に移動し且つ第三受光部621のある後側に傾ける動作を促すものであることが好ましい。
前記のように自動吐水モードにおいて、発光部8を点灯させ、且つ、発音部9から音を発することで、物体が第一検知領域602に存在しているが、第二検知領域612及び第三検知領域622には存在していないことを利用者に認識させることができる。
また、自動吐水モードにおいて第二検知領域612に物体が存在していることを検知し、且つ第一検知領域602及び第三検知領域622に物体が存在していないことを検知した際になされる第二の報知は、発光部8を橙色の発光色で点滅させることで行われる。すなわち、発光部8は第一の報知時と同じ発光色で点滅する。このように発光部8の発光状態を変えた第二の報知を行うことで、利用者は物体が第二検知領域612に存在しているが、第一検知領域602及び第三検知領域622には存在していないことを認識することが可能となる。
ここで、前記第二の報知を行う場合、第二投光部610の照射光がシンク20の底面に置かれた皿等の物体や、流し台2上面に置かれた皿等の物体により遮られていることが想定される。このため、利用者は、前記の発光部8の点滅を確認したときには、シンク20の底面や流し台2上に置かれた皿等の物体を第二検知領域612以外の箇所に移動する等して、センサー60〜62の検知による適切な自動吐水を行える状態にすることができる。なお、前記第二の報知の際には発音部9からは音は発しないが、例えば利用者に対して第二検知領域612にある物体を他に移動することを促す音声を発するようにしてもよい。
以上説明した水栓装置1は、吐水口310の下側の第一検知領域602における物体の存在・不存在を検知するための第一センサー60と、吐水口310の下側の第二検知領域612における物体の存在・不存在を検知するための第二センサー61を備えている。そして、制御部7は第一センサー60の出力に基づき第一検知領域602に物体が存在していることを検知し且つ第二センサー61の出力に基づき第二検知領域612に物体が存在していることを検知した際に吐水口310から水を吐出する。このため、両センサー60、61の出力に基づいて吐水口310の下側の検知エリア65に物体が存在することを正確に検知することができ、この検知結果に基づいて吐水口310からの吐水を適切に行うことができる。
また、水栓装置1は報知手段としての発光部8及び発音部9を備えている。そして、制御部7は、吐水が停止された状態で、第一センサー60の出力に基づき第一検知領域602に物体が存在していることを検知し且つ第二センサー61の出力に基づき第二検知領域612に物体が存在していないことを検知した際に第一の報知を行う。このため、利用者は、発光部8の点灯や発音部9から発せられる音により、物体が第一検知領域602に存在しているが、第二検知領域612には存在していないことを認識することができる。従って、吐水を開始したい利用者は吐水がなされない原因を認識でき、物体を第一センサー60及び第二センサー61によって検知されるように移動したり、第三センサー62に検知されるように向きを変えたりして、速やかに吐水を開始することが可能になる。
また、本実施形態の水栓装置1は、第一検知領域602(非重複領域603)が、第二検知領域612の前側に位置している。このため、第一検知領域602において第二検知領域612の前側に位置する領域(非重複領域603)に物体が配置されたときに前記第一の報知を行うことができる。従って、例えば利用者は吐水口310の下側に手前側から手や皿等の物体を差し入れる等した際には、まず第一の報知により、物体が第二検知領域612の手前側に位置していることを認識できる。また、利用者は、この第一の報知により、物体が第一センサー60及び第二センサー61によって検知される領域に近い位置にあることも認識できる。よって、利用者はこの物体を利用者から見て奥側となる後側に移動する等して、物体を第一センサー60及び第二センサー61によって検知される領域に簡単に位置させることができ、容易に吐水を行うことができる。
また、本実施形態の水栓装置1は、吐水口310の下側の第三検知領域622における物体の存在・不存在を検知するための第三センサー62を備えている。そして、第三検知領域622(非重複領域623)は第二検知領域612の前側に位置し、第三センサー62の出力に基づき第三検知領域622に物体が存在していることを検知した際に吐水口310から水を吐出する。このため、第二検知領域612の前側(非重複領域623)に物体が存在するときに、これを第三センサー62によって検知して吐水口310から水を吐出することができる。
また、本実施形態の第一センサー60は測距センサーであり、第二センサー61及び第三センサーは光電センサーである。このため、本実施形態のように測距センサーである第一センサー60の特性、及び光電センサーである第二センサー61及び第三センサー62の特性を生かして、物体の検知を適切に行うことができる。
具体的に、第二センサー61は透過型光電センサーである。すなわち第二センサー61は、光照射領域が検知エリア65より遠方に設けられた反射物に設定されて照射光を検知エリア65に通過させる第二投光部610と、第二投光部610から照射されて反射物で反射した光を受光する第二受光部611を有する。また、第三センサー62は反射型光電センサーである。すなわち、第三センサー62は、検知エリア65に向けて光を照射する第三投光部620と、第三投光部620から照射されて検知エリア65に存在する物体で反射した光を受光する第三受光部621を有する。
ここで、測距センサーである第一センサー60は、第二センサー61や第三センサー62と比較して、反射率の低い物体の有無を検出するのに適している。また、第二センサー61及び第三センサー62は、検出領域に湯気等が存在しても検出領域に物体が存在しないことを検出することができ、この点で第一センサー60よりも有利である。このため、センサー60〜62を用いて検知エリア65における物体の有無を正確に検知できる。例えば検知エリア65に湯気が存在する場合に、第二センサー61及び第三センサー62の出力に基づいて検知エリア65に物体が存在しなことを検知できる。また、透過型光電センサーである第二センサー61は反射型光電センサーである第三センサー62よりも検知感度が優れている。このため、第三センサー62によって吐水口310の下側の物体の存在を検知できないときは、この物体の存在を第一センサー60及び第二センサー61で検知して物体の存在を正確に検知できる。
なお、本実施形態では、第一センサー60の出力に基づき第一検知領域602に物体が存在していることを検知し且つ第二センサー61の出力に基づき第二検知領域612に物体が存在していないことを検知した際に、吐水口310からの吐水を停止する。しかし、この場合、吐水口310から吐水を行うようにしてもよい。また、この場合の吐水態様は、第一センサー60によって第一検知領域602に物体が存在していることを検知し且つ第二センサー61によって第二検知領域612に物体が存在していることを検知した場合と異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。異なる場合の例としては、第一検知領域602に物体が存在し且つ第二検知領域612に物体が存在していることを検知した場合よりも、吐水口310からの単位時間当たりの吐水量を少なくすることが挙げられる。
また、本実施形態の第一検知領域602と第二検知領域612は重複しており、この重複部分が検知エリア65を有しているが、第一検知領域602と第二検知領域612は重複しなくてもよい。また、第三検知領域622も第一検知領域602や第二検知領域612と重複しなくてもよい。また、本実施形態の第一検知領域602の第二検知領域612と重複しない非重複領域623は、第二検知領域612の前側に位置しているが、第二検知領域612の側方や後側に位置するものであってもよい。また、第三検知領域622の第二検知領域612と重複しない非重複領域623も、第二検知領域612の側方や後側に位置するものであってもよい。
また、センサー60〜62は本実施形態のものに限られず、従来から知られている他の人体検知センサーを用いてもよい。また、本実施形態の水栓装置1は報知手段として発光部8と発音部9を備えているが、発光部8のみあるいは発音部9のみを備えるものであってもよい。また、発音部9は音声を発するものに限られず、信号音等を発するものであってもよい。また、この他、報知手段は文字や図柄を表示する表示部等であってもよい。また、本実施形態の吐水部3は流し台2に対して回動自在であるが、回動不能であってもよい。
また、本実施形態における報知手段による前記第一の報知は、利用者に対して物体を第一センサー60、第二センサー61、第三センサー62の全てに検知される領域に移動することを促すものである。しかし、この報知は、第一センサー60及び第二センサー61のみによって検知される領域への移動を促すものであってもよい。
また、第三センサー62は省略可能である。この場合は、例えば自動吐水モードにおいて第一センサー60により第一検知領域602に物体が存在していることを検知し且つ第二センサー61により第二検知領域612に物体が存在していることを検知した際にのみ吐水を行うようにすればよい。
また、本発明の水栓装置1は流し台2に限られず洗面台等の従来から水栓が用いられるその他の箇所にも設置して利用してもよい。また、本発明は前記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。