JP5942841B2 - 強度と耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体及びホットスタンプ成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
その要旨は以下の通りである。すなわち、
Cは、鋼板の強度を高めるために添加する元素である。Cが0.12%未満であると、1180MPa以上の引張最大強度を確保することができず、一方、0.40%を超えると、溶接性や加工性が不充分となるので、0.12〜0.40%とする。Cは、0.14〜0.37%が好ましく、より好ましくは0.15〜0.35%である。
Siは、鉄系炭化物の析出を抑制し、ホットスタンプ後に残留オーステナイトを形成させるために必要な元素である。0.3%未満では十分な残留オーステナイトが形成されないため、耐水素脆化特性が向上しない。一方、1.0%以上添加すると、めっき性が劣化することからこれを上限とする。
MnやCrは、ホットスタンプ時の冷却過程でのフェライト変態を遅延し、ホットスタンプ成形体においてマルテンサイトあるいはベイナイトの1種または2種から形成される組織を主相とするため、合計で1%以上添加する必要がある。これら元素の添加量の合計が1%未満では、マルテンサイトあるいはベイナイトの1種または2種から形成される組織を主相とすることが出来ず、1180MPa以上の強度確保が得られないため、下限を1%とする。
Pは、鋼板の板厚中央部に偏析する元素であり、また、溶接部を脆化させる元素でもある。Pが0.015%を超えると、溶接部の脆化が顕著になるので、これを上限とする。下限は特に定めることなく本発明の効果が発揮されるが、Pを0.001%未満に低減することは、脱Pコストの極端な上昇を招き、経済的に不利であることから、下限を0.001%とする。
Sは、溶接性と、鋳造時及び熱延時の製造性に悪影響を及ぼす元素である。それ故、上限を0.01%とした。Sを0.0001%未満に低減することは、脱硫コストの極端な上昇を招き経済的に不利であることから、下限を0.0001%とした。
Alは、脱酸のために添加されるものである。0.005%未満では脱酸が不十分となり、鋼中に酸化物が多量に残存し、とくに局部変形能が劣化するとともに、特性バラツキも大きくなる。一方、0.1%を超えて含有されると、鋼中にアルミナを主体とする酸化物が多く残存し、やはり局部変形能の劣化を招くため、好ましくない。
Bは、ホットスタンプ時の焼き入れ性を高め、主相をマルテンサイトとすることに寄与する。この効果は、0.0003%以上で顕著となるため、0.0003%以上添加する必要がある。一方、0.002%を超える添加は、その効果が飽和するばかりでなく、鉄系の硼化物の析出を招き、Bの焼き入れ性の効果を失うことから好ましくない。
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させる元素である。Nが0.007%を超えると、曲げ性や穴拡げ性が顕著に劣化するので、上限を0.007%とした。なお、Nは、溶接時のブローホールの発生原因になるので、少ない方が好ましい。Nの下限は、特に定める必要はないが、0.001%未満に低減すると、製造コストが大幅に増加するため、0.001%が実質的な下限である。Nは、製造コストの観点から、0.0005%以上が好ましい。
Oは、酸化物を形成し、介在物として存在することから、ホットスタンプ成形体の特性劣化をもたらす。例えば、鋼板表面近傍に存在する酸化物は、表面疵の原因となり、外観品位を劣化させる。あるいは、切断面に存在すると、端面に切欠き状の疵を形成し、成形体の特性劣化をもたらす。このことから、含有量は低く抑える必要がある。Oが0.007%を超えると、上記傾向が顕著となるので、上限を0.007%とした。好ましい上限は0.005%である。一方、Oを0.0001%未満に低減することは、過度のコスト高を招き、経済的に好ましくないので、下限を0.0001%とした。ただし、Oを0.0001%未満に低減しても、1180MPa以上の引張最大強度と優れた耐遅れ破壊特性を確保することは可能である。
Ti:0.005〜0.1%
Nb:0.005〜0.1%
V:0.005〜0.1%
また、Tiは、Nと結合し、TiNを形成することで、Bが窒化物となることを抑制するためにも添加される元素である。
Cu:0.01〜2.0%
Mo:0.01〜0.5%
Ni、Cu、Moは、ホットスタンプ時の焼き入れ性を高め、主相をマルテンサイトあるいはベイナイトの1種または2種とすることで高強度化に寄与する元素である。この効果は、Ni、Cu、Moの1種又は2種以上を、それぞれ、0.01%以上添加することで顕著になる。好ましくは、それぞれ0.05%以上とする。各元素の量が、各元素の上限を超えると、溶接性、熱間加工性などが劣化するため、Cr、Ni、及び、Cuの上限は2.0%とし、Moの上限は0.5%とする。
REM:0.0005〜0.03%
さらに、Ca、REMの1種または2種以上を、合計で0.0005〜0.03%含有してもよい。Ca、REMは、強度の向上や、組織微細化による靭性改善に寄与する元素である。Ca、REMの1種又は2種以上の合計が0.0005%未満であると、充分な添加効果が得られないので、合計の下限を0.0005%とする。Ca、REMの1種又は2種以上の合計が0.03%を超えると、鋳造性や熱間での加工性を劣化させるので、上限を0.03%とする。なお、REMとは、Rare Earth Metalの略であり、ランタノイド系列に属する元素をさす。本発明においては、REMは、ミッシュメタルにて添加することが多く、また、LaやCeの他に、ランタノイド系列の元素を複合で含有する場合がある。本発明成形体を構成する鋼板が、不可避不純物として、Laや、Ce以外のランタノイド系列の元素を含んでいても、また、金属LaやCeを添加しても、本発明の効果は発現する。
ホットスタンプを行う際は、Ac3以上の温度域に、2℃/s以上の加熱速度で加熱する。2℃/s以上の速度で加熱することで、オーステナイト粒の粗大化を抑制でき、靭性の向上や耐遅れ破壊特性を改善する。このことから、2℃/s以上の加熱速度で加熱する必要がある。望ましくは、3℃/s以上であり、更に望ましくは、4℃/s以上である。また、加熱速度の増大は、生産性高めるためにも有効である。
Ac3点[℃]=910-203√C-30Mn-11Cr +44.7Si+400Al+700P-15.2Ni -20Cu+400Ti+104V+31.5Mo+13.1W
(式中のC、Mn、Cr、Si、Al、P、Ni、Cu、Ti、V、Mo、Wは、鋼中の各成分の含有量[質量%]である。)
Ar3変態点(℃)=901-325C+33Si-92(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)
Ms点(℃)=561-474C-33Mn-17Ni-17Cr-21Mo
(式中のC、Si、Mn、Ni、Cr、Cu、Moは、鋼中の各成分の含有量[質量%]である。)
本発明においては、使用される鋼板の製造法は特に限定されるものではなく、以下では工業的な実用性も含めて、好ましい製造条件について記述する。
次に、本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.12〜0.40%、Si:0.3〜1%未満、Mn+Cr:1〜3%、P:0.001〜0.015%、S:0.001〜0.01%、Al:0.005〜0.1%、B:0.0003〜0.002%、O:0.0005〜0.0070%、N:0.001〜0.007%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、ホットスタンプ成形後の鋼板組織が、鋼板組織全体に対する面積分率で、残留オーステナイトを1%以上5%未満とし、さらにマルテンサイトを70%以上含みかつ、マルテンサイトとベイナイトの合計で95%以上を含む組織であることを特徴とする1180MPa以上の強度を有し耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体。
- さらに質量%で、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%を1種以上含む請求項1に記載の1180MPa以上の強度を有し耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体。
- さらに質量%で、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜0.5%を1種以上含む請求項1あるいは2に記載の1180MPa以上の強度を有し耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体。
- さらに質量%で、Ca:0.0005〜0.03%、REM:0.0005〜0.03%を1種以上含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の1180MPa以上の強度を有し耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体。
- ホットスタンプを行う際に、2℃/s以上の加熱速度でAc3点以上の950℃以下の温度域に加熱し、プレス成形を行い、プレス成形と同時に実施される冷却について、Ar3〜Ms-50℃の温度域を100℃/s以上の冷却速度で冷却し、(Ms-50)〜100℃間を平均冷却速度50℃/s以下で冷却することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の1180MPa以上の強度を有し耐水素脆性に優れたホットスタンプ成形体用の製造方法。
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