JP4288216B2 - 耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板、自動車用部材及びその製造方法 - Google Patents

耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板、自動車用部材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車の足回り・衝突安全用補強部材等の高強度を要求される部品を製造するための鋼素材、及びそれを使用した自動車部品を提供するものである。
近年、地球環境問題を発端とした自動車の低燃費化に対する要求、および衝突安全性向上の観点から、自動車用鋼板に対する高強度化の要望が強い。しかし、一般に高強度化は加工性、成形性の低下、さらに製品製造時および使用時の水素の侵入による水素脆化起因の遅れ破壊が懸念され、高強度、高成形性、耐水素脆化特性を備える鋼板が要望されている。高強度かつ高成型性に対する一つの回答としては、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(TRansformation Induced Plasticity)鋼があり、近年用途が拡大しつつある。
しかしこの鋼により、成形性の優れた1000MPa級の高強度鋼板を製造することは可能であるが、更に高強度、例えば1500MPaというような超高強度鋼で成形性を確保することは困難である上、TRIP鋼の加工では、部材加工時に残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することによる遅れ破壊特性の劣化が懸念される。そこで、高強度、高成形性、及び耐水脆化特性を備えた部材の製造法として最近注目を浴びているのがホットプレスである。これは鋼板を800℃以上の高温に加熱した状態で成形することにより、高強度鋼板の成形性の問題を無くし、成型後の冷却により所望の材質を得るというものである。
しかし、大気中での加熱を伴うため、表面に酸化物が生成してこれを後工程で除去する必要がある。これを改善したものが特開2000−38640号公報(特許文献1)に開示された発明であり、0.15〜0.5%の炭素を含有する鋼板にアルミめっきして加熱時の酸化抑制を図っている。これにより、高温に加熱時の表面酸化を低減することは可能となった。しかし、ホットプレスにより製造した部材は、980MPaを超える強度を得るために、高温から成型と同時に焼き入れを行うため、ミクロ組織は60%以上の体積率のマルテンサイト相を有する。このため、特に強度の高い980MPaを超える部材では水素脆化起因による遅れ破壊が懸念される。
特開2000−38640号公報
この発明は引張強度が980MPa以上で、高い加工性及び成形性を有し、さらに水素脆化起因による遅れ破壊特性を改善した鋼板、及びそれを使用した自動車用部材とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を克服するために、鋼材ままもしくはアルミめっき鋼板をホットプレスにより加工した時の、耐水素脆化特性への影響因子を詳細に検討した結果、次の知見を得た。即ち、鋼材成分および製造条件の最適化により、鋼材の耐水素脆化特性が大幅に向上すること。また、この成型後の自動車用部材を150〜700℃の温度範囲で1〜1000分熱処理する事で、さらに耐水素脆化特性が向上することを見出した。詳細は以下の通りである。
本発明者等は、種々検討を行った結果、引張強度が980MPa以上の領域で、耐水素脆化を向上する手法として、ミクロ組織および成分範囲を限定することで、980MPa以上の強度を保ちつつホットプレスによる成型後の耐水素脆化特性の向上を図ることが可能なことを見出した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.40%、Si:2.0%以下、Mn:0.01〜3.5%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.005〜4%、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ミクロ組織がマルテンサイトを面積率で最大の相とし、旧オーステナイト組織が粒径3〜50μmであり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
(2)さらに、鋼中に質量%で、W:0.005〜5%を含有することを特徴とする前記(1)に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
(3)さらに、鋼中に質量%で、Cu:0.005〜5%、Ni:0.005〜5%の1種または2種を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
(4)さらに、鋼中に質量%で、B:0.0002〜0.1%を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
(5)さらに、鋼中に質量%で、REM:0.0005〜0.01%、Y:0.0005〜0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか1項に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成からなる薄鋼板の表面に、Alを主体とする金属皮膜を有することを特徴とする耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。(7)鋼組織が面積率で60%以上のマルテンサイト組織を有する前記(1)〜(6)の何れか1項に記載の鋼板を使用することを特徴とする耐水素脆化特性に優れた自動車用部材。
(8)前記(7)に記載の自動車用部材を150〜700℃の温度範囲で1〜1000分熱処理することを特徴とする耐水素脆化特性に優れた自動車用部材の製造方法。
ここで、Alを主体とする金属皮膜とは、質量%で、Si:1〜15%、Mg:0.5〜10%を含有するAl系めっきを施す。めっきにはZnを1〜60%の範囲内で添加してもよい。
本発明により、高温でのホットプレス時の課題であった部材成型後の耐遅れ破壊特性を改善し、自動車のバンパーやドアインパクトビームなどの補強部材として最適な強度と、加工後の耐遅れ破壊性を向上させた鋼板及び自動車部材を得ることができる。
焼き戻しマルテンサイト鋼などにおいて遅れ破壊は、旧オーステナイト粒界等に水素が集積することによってボイド等が発生し、その部分が起点となって破壊を生じると考えられている。そこで、通常種々の元素を添加する事により高温過熱時のオーステナイト粒径の粗大化を抑制し、鋼材の耐水素脆化特性を向上させる事が方策として考えられるが、本発明では熱間圧延前のスラブ再加熱条件と熱間圧延条件を最適化する事で、オーステナイト粒径の細粒化を図り耐水素脆化特性の向上を行った。さらに、ホットプレスによる成型後の部材を、150〜700℃の温度範囲で1〜1000分熱処理する事により、鋼材中の拡散性水素を抜くことが可能であり、これにより部材の初期拡散性水素濃度を減少させる事を知見した。
通常、薄鋼板冷延材では使用に際しプレスによる成型が施される事から、その部材は成型後に高い残留応力を有し、遅れ破壊特性に対しては不利に働くと考えられる。また、鋼材の高強度化に伴い成型後のスプリングバック量が大きくなり、所定の部材形状を得ることは困難になる。そこで、本発明者らは加工性の向上、及び成型後のスプリングバック量を低減するためにホットプレスによる成型を行い、さらに、鋼材成分及び熱間加熱前のスラブ再加熱条件と熱間圧延条件を最適化し、さらに成型後の熱処理を工夫することにより耐水素脆化特性を向上させる事に成功した。
すなわち、
(1)熱間圧延前のスラブ再加熱条件と熱間圧延条件の最適化によるオーステナイト粒径の細粒化。
(2)ホットプレス法の採用による成型時の残留応力の低減。
(3)ホットプレス成形後の熱処理による脱水素処理。
これらを制御することで、耐水素脆化特性に有効な鋼材の靱性向上、残留応力の低減、および脱水素処理による初期拡散性水素濃度の低減が可能となり、部材成型後の耐水素脆化特性を向上させることができる。このためには、鋼材成分、および熱間圧延前のスラブ再加熱条件、熱間圧延の条件を制御する事が重要である。
次にミクロ組織について説明する。
面積率最大の相をマルテンサイトとする理由は、980MPa以上、好ましくは1200MPa以上、さらに好ましくは1500MPa以上の引張強度を得るためであり、そのためには、硬質相であるマルテンサイトを面積率で60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上100%以下の量を素地とすることが好ましい。ただし、ここで言う面積率100%とは、当然鋼材中には不可避的不純物や介在物が存在し、厳密には100%とならないが、光学顕微鏡での観察ではこれらの不可避的不純物や介在物が認識できないレベルの大きさで存在することから、100%であるとした。
以下に本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明における鋼の化学成分の限定理由について説明する。
Cは、鋼板の強度を上昇できる元素である。特にマルテンサイトやベイナイトなどの硬質相を生成し高強度化には必須の元素であり、980MPa以上の強度を得るためには、質量%で(以下同じ)0.01%以上が必要であるが、逆に多く含有すると、脆性破壊の起点となるセメンタイトを増加させるため、水素脆性を生じ易くなる。従って、上限を0.4%とした。
Siは、材質を大きく硬質化する置換型固溶体強化元素であり、鋼板の強度を上昇させることに有効なうえ、セメンタイト析出を抑制する元素であるが、2.0%を超えると熱間圧延でのスケール除去にコストがかかり経済的に不利なため、2.0%を上限とする。下限は特に定めないが、極低化は製造コストの高騰を招くことから、0.005%以上の添加とすることが望ましい。
Mnは、鋼板の強度上昇に有効な元素である。しかし、0.01%未満ではこの効果が得られないので、下限値を0.01%とした。逆に多いとP、Sとの共偏析を助長するだけでなく、加工性が劣化する場合があるため3.5%以下、好ましくは3.0%を上限値とする。
Pは、粒界偏析による粒界破壊の助長をする元素であり、低い方が望ましいが、極低化は製造コスト上好ましくない。また、耐食性を劣化させる元素であるため、上限を0.1%とする。
Sは、腐食環境下での水素吸収を助長する元素であり、低い方が望ましいが、極低化は製造コスト上好ましくない。特に、加工性を高めるためには低い方が望ましく上限を0.05%とする。
Alは、脱酸のために0.005%以上を添加するが、添加量が増加するとアルミナ等の介在物が増加し、加工性が劣化するため4.0%を上限とする。
Nは、加工性劣化や溶接時のブローホール発生にも寄与するため少ない方が良い。0.01%を越えると加工性が劣化してくるので、0.01%を上限とする。
Wは、鋼板の強度上昇に有効である上、Wを含有する析出物および晶出物は水素トラップサイトとなるため非常に重要な元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。逆に、5%超含有すると加工性低下が生じるため、上限値を5%とした。
Cuは、強化に有効である上、自信の微細析出は遅れ破壊の向上にも寄与するため、0.005%以上の添加とした。また、過剰添加は加工性の劣化を招くことから、上限を5.0%とした。
Niは、Ni硫化物が水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や、鋼板の焼入れ性を高めることにより鋼板の強度を確保する効果がある。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため下限値を0.005%とした。逆に、5%超では加工性が悪くなるため、上限値を5%とした。
Bは、鋼板の強度上昇に有効な元素である。しかし、0.0002%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.0002%とした。逆に、0.1%超含有すると熱間加工性が劣化するため、上限値を0.1%とした。
Mgは、自身の化合物が耐遅れ破壊向上に効果的なだけでなく、他元素との複合析出物、または複合析出物を生成させ、かつそれらの形態を耐遅れ破壊性向上に寄与するよう制御するために必要な元素であることから、0.0005%以上とした。しかし、0.01%超では粗大酸化物および硫化物を生成して、形態制御に効果的でなくなる上、薄鋼板の基本的要求特性である加工性を低下させるため、上限を0.01%とした。
REM、Ca、Yは、介在物の形態制御に有効で、耐遅れ破壊性に寄与することから、0.0005%以上の添加とした。一方、過剰添加は熱間加工性を劣化させるため、0.01%以下の添加とした。ここでREMはRare Earth Metalの略でLaから始まるランタノイド系元素の総称である。
次に、旧オーステナイト粒径について述べる。鋼板の旧オーステナイト組織の粒径は、ピクリン酸アルコール溶液を用いて、旧オーステナイト粒界を出現させ、顕微鏡と画像処理装置を用いて旧オーステナイト粒の平均粒径を測定したものと定義する。
旧オーステナイト粒径の範囲を3〜50μmとした理由は、50μm超の粒径では旧オーステナイト粒径微細化による耐水素脆化特性向上への寄与が小さい事から上限を50μmとし、下限を3μmとした理由は、ホットプレス法による自動車部材製造時の700〜1000℃の加熱において、旧オーステナイト粒径を3μm未満とする事が製造上困難であるからである。
次に、本発明の鋼板の製造方法について述べる。ここで、製造方法は一般に行われている熱延鋼板、冷延鋼板、Alメッキ鋼板の製造設備で構わない。旧オーステナイト粒径の微細化には、鋼板製造中の熱間圧延前のスラブ再加熱条件、および熱間圧延条件の制御が重要となる。
所定の成分に調整されたスラブを直接もしくは一旦冷却した後再加熱して熱間圧延を行う。この再加熱における加熱温度の制御が重要であり、1050℃以上1200℃未満とする事が望ましい。これは再加熱温度が高温になるとオーステナイト粒径が粗大化する事や、厚い酸化スケールが形成されるからであり、上限値を1200℃とした。一方、低温加熱では圧延抵抗が高くなってしまうため、下限値を1050℃とした。
次に、熱間圧延の条件について述べる。細粒化にはオーステナイト温度領域での加工歪の蓄積が重要であり、熱間圧延最終2スタンドにおいてオーステナイト領域で大圧下後、フェライト域まで急冷する事で細かい再結晶オーステナイト粒が得られる。この制御を行うためには、最終2スタンドにおいて鋼板の温度がAr3 点以上Ar3 点+100℃の範囲で、かつ圧下率が25%以上である必要がある。温度の下限値をAr3 点としたのは、この温度未満ではオーステナイトからフェライトが析出し、オーステナイトの細粒化に十分な効力が得られない事から、下限値をAr3 点とした。また上限値をAr3 点+100℃とした理由は、熱間圧延時の温度が高温であるとオーステナイト粒の再結晶および粗大化を促進し、十分な細粒化効果が得られないからである。
また、この最終2スタンドにおける熱間圧延圧下率は、25%以上70%未満とする。下限値を25%とした理由は、25%未満の圧下率ではオーステナイト中に十分な加工歪を蓄積できないからである。また、上限を70%未満とした理由は、70%以上の圧下率では製造中に鋼板が破断してしまう恐れがあるからである。望ましくは、熱間圧延前のスラブ再加熱温度を1100℃とし、熱間圧延条件としては最終2スタンドにおいて25%から40%の圧下率で圧延を終了する事が望ましい。
熱間圧延後400℃〜700℃の巻取温度域まで0.1〜1000℃/秒の冷却速度で冷却する。冷却停止温度を400℃より低くすることは、熱延板の強度が高くなり酸洗後の冷延時の負荷が高くなるため下限を400℃とし、冷却停止温度の上限が700℃より高いとフェライトの析出が不十分となる恐れがありオーステナイト粒径が粗大化する可能性があるため上限を700℃とした。
また、冷却速度を0.1℃/秒より遅くすることは、冷却時間に膨大な時間を要し操業上困難であることから冷却速度の下限を0.1℃/秒とした。同様に冷却速度が1000℃/秒を超えることも操業上困難なため、これを上限とした。熱間圧延後の冷却は、オーステナイト粒径の粗大化を避けるため、20℃/秒以上の冷却速度で550℃程度に冷却する事が好ましい。
酸洗後の冷間圧延は、圧下率が低いと鋼板の形状矯正が難しくなるため下限値を30%とすることが好ましい。また、80%を超える圧下率で圧延すると、鋼板のエッジ部に割れの発生及び形状の乱れのため上限値を80%とすることが好ましい。
連続焼鈍温度は低すぎると未再結晶の状態になり硬質化し、逆に高すぎると粒が粗大化し十分な耐水素脆化特性の向上が望めない事から、600℃以上950℃以下とすることが望ましい。中でも800〜850℃で焼鈍する事が最も望ましい。
焼鈍後、0.1〜1000℃/秒の冷却速度で25℃〜500℃の温度域に冷却し、引き続いて同温度域で1秒〜10000秒保持を行うことが好ましい。冷却速度を0.1℃/秒より遅くすることは、冷却時間に膨大な時間を要し操業上困難であることから冷却速度の下限を0.1℃/秒とした。一方、冷却速度が1000℃/秒以上にする事は操業上困難なため、前記の範囲に規定する。また、冷却停止温度が25℃より低くすることは操業上困難であるため下限を25℃とし、500℃より高いと結晶粒の粗大化を招くことから、前記の範囲に規定する。冷却停止温度での保持時間が1秒より短くすることは製造ラインの性能から困難であり、10000秒より長くすることは製造コストから困難であることから、前記の範囲に規定する。
次に自動車用部材の製造方法について述べる。
熱間プレス成型の条件は、前述した条件で製造した冷延鋼板またはAlメッキ鋼板を、700〜1000℃を最高温度として昇温し、10〜6000秒保持後、速やかにプレスダイスの上に置きプレスを行う。この時の昇温速度は1〜100℃/秒とすることが好ましい。これは加熱温度が700℃より低いと、焼き入れ前の組織がオーステナイト単相とならず、フェライト+オーステナイトの2相からの焼き入れとなり、所定の強度が得られないからであり、1000℃より高いとオーステナイト粒径が粗大化し焼き入れ後の耐水素脆化特性の劣化が懸念されるからであり、昇温速度が1℃/秒より遅いと製造効率の低下が考えられ、100℃/秒より速くする事は通常の炉の昇温では不可能である。
また、最高到達温度での保持時間が10秒未満であると鋼板内部では所定の温度となっておらず、鋼板内部ではフェライトが逆変態しておらず、焼き入れ後に所定の強度が得られないため10秒以上とする。また、6000秒より長時間保持するとオーステナイト粒が粗大化し、焼きいれ後に十分な耐水素脆化特性が得られないため6000以下とする。 プレス時の冷却速度は1〜500℃/秒とすることが好ましい。ここでプレス時の冷却速度の下限値を1℃/秒としたのは、これより遅い冷却速度では焼きが入らず所定の強度が得られないからである。一方、500℃/秒より早くする事は製造上困難であるため、500℃/秒を上限とする。
また、上記の工程で製造した自動車用部材を、150〜700℃の温度範囲に加熱する事により、より優れた耐水素脆化特性が得られる。これは150℃以上の熱処理により製造時に鋼材中に侵入した水素が大気中に抜け、置き割れに対し有効に働くからである。また、熱処理時間を1〜1000分とした理由は、1分未満では脱水素処理として不十分であるので下限を1分とし、1000分超では鋼材が焼き戻され、所定の強度が得られなくなるから上限を1000分とした。
次に、実施例で本発明をより詳細に説明する。
表1に示す成分の鋼を溶製し、常法に従い連続鋳造でスラブとした。符号A〜Fが本発明に従った成分の鋼で、符号、G,Hは成分が逸脱するものである。これらの鋼を表2および表3に示す条件で加熱炉中において再加熱後、熱間圧延を行い3mm厚の熱延鋼板とした。この熱延板を50%の冷延により1.5mm厚とし、冷延鋼板およびAlめっき鋼板をそれぞれ製造した。冷延鋼板の熱履歴は、5.6℃/秒で最高加熱温度である790℃に到達後90秒保持し、40℃/秒で490℃まで冷却後300秒間保持し室温まで空冷した。また、Alめっき鋼板の温度履歴は最高加熱790℃で90秒保持後、490℃のAl浴中に浸漬し、ガスワイピングでめっき付着量を片面あたり25μmに調節した。このときのめっき組成は、主成分のAl以外に表中のSi、Cr、それに2%のFeが含まれていたが、Feは浴中の機器やストリップから供給される不可避のものである。
Figure 0004288216
こうして製造した冷延鋼板、およびAlめっき鋼板について、引張強度と耐水素脆化特性を評価した。耐水素脆化特性の評価方法は、100mm×30mmの短冊試験片を940℃に加熱後、10RにU曲げ加工し、表面に耐水性の歪みゲージを装着した後で0.5mol/lの硫酸中に漬け、電流によって電解して水素を侵入させ、2時間後の割れの発生を評価した。曲げ加工の半径は10mmとし、与える応力はそれぞれ60kgf/mm2 と90kgf/mm2 とした。また、各鋼種A〜Hに対しホットプレス成型後に200℃、500℃で1時間の熱処理を行った鋼板も耐水素脆化特性を評価した。
Figure 0004288216
Figure 0004288216
表2および表3に示すように、本発明鋼であるA〜F鋼の製造条件a,bにおいて、自動車の補強部品に適用するに充分な引張り強度を示しており、上記の耐水素脆化特性試験において割れが発生しなかったことから耐水素脆化特性に優れている。これらに対して比較鋼であるG鋼、H鋼、およびA〜F鋼における製造条件c〜fにおいては、成分もしくは製造条件が本発明範囲から逸脱している事から、所定の強度が得られる物の、耐水素脆化特性は劣る。さらに、ホットプレス後に200℃×1hの脱水素処理を行ったところ、全ての試験片において割れ発生までの時間が延長した。したがって、脱水素処理により初期拡散性水素濃度が減少し、耐水素脆化特性の向上に有効に作用することは明らかである。


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.40%、
    Si:2.0%以下、
    Mn:0.01〜3.5%、
    P:0.1%以下、
    S:0.05%以下、
    Al:0.005〜4%
    N:0.01%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ミクロ組織がマルテンサイトを面積率で最大の相とし、旧オーステナイト粒の平均粒径3〜50μmであり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  2. さらに、鋼中に質量%で、
    W:0.005〜5%
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  3. さらに、鋼中に質量%で、
    Cu:0.005〜5%
    Ni:0.005〜5%
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  4. さらに、鋼中に質量%で、
    B:0.0002〜0.1%
    を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  5. さらに、鋼中に質量%で、
    REM:0.0005〜0.01%、
    Y:0.0005〜0.01%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.01%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成からなる鋼板の表面に、Alを主体とする金属皮膜を有することを特徴とする耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板。
  7. 鋼組織が面積率で60%以上のマルテンサイト組織を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の鋼板を使用したことを特徴とする耐水素脆化特性に優れた自動車用部材。
  8. 請求項7に記載の自動車用部材を150〜700℃の温度範囲で1〜1000分熱処理することを特徴とする耐水素脆化特性に優れた自動車用部材の製造方法。
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