JP5942701B2 - 酸化亜鉛複合粉体及び酸化亜鉛複合粉体含有分散液並びに化粧料 - Google Patents
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Description
一般に、化粧料においては、紫外線遮蔽効果を持たせるために無機系の紫外線遮蔽剤である酸化亜鉛粉体がよく使用されている。
一方、皮膚に塗布した際の使用感のよい化粧料としては、つけ心地がさっぱりしているジェルタイプ等の水系化粧料が使用されている。
このシリカ被覆酸化亜鉛粒子では、酸化亜鉛粒子の表面に施されたシリカ被覆がバリアとなって酸化亜鉛粒子からの亜鉛イオンの溶出が抑制されるとされている。さらに、酸化亜鉛粒子から亜鉛イオンが溶出したとしても、この溶出した亜鉛とキレート化剤とが結合して錯体が形成され、この錯体中に亜鉛イオンがトラップされることにより、亜鉛イオンの溶出を抑制することができるとされている。
また、例えば、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediamine tetraacetic acid:EDTA)のように錯体を形成した後には水に不溶となる物質もあるが、このような物質の場合、自然環境の下では分解されることがないために、自然環境保護の観点からは好ましくない。そこで、このような物質が水に含まれていた場合には、所定の水質浄化処理が施された上で放流する方法が採られている。
さらに、キレート化剤自体の化粧料に使用できる量が制限されていることから、キレート化剤に変わって亜鉛イオンを捕獲し、この亜鉛イオンの溶出を抑制する材料が求められていた。
前記酸化亜鉛粉体は、表面が二酸化ケイ素にて被覆されていることが好ましい。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の一実施形態の酸化亜鉛複合粉体は、酸化亜鉛粉体と、亜鉛イオンと結合して該亜鉛イオンを水に不溶化するジペプチドとを含有してなる複合粉体である。
以下、酸化亜鉛粉体及びジペプチドそれぞれについて詳細に説明する。
この酸化亜鉛粉体としては、化粧料として使用できるものであればよく、特に限定されない。
この酸化亜鉛粉体は、バンドギャップが3.14〜3.37eVであるから、紫外領域にバンド間遷移による吸収を有する。したがって、紫外線を遮蔽する際に酸化亜鉛粉体自体の吸収も活用することができるので、紫外線遮蔽効果が高まる。
ここで「平均一次粒子径」とは、この酸化亜鉛粉体を所定数、例えば、500個、あるいは100個を選び出し、これら酸化亜鉛粉体各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均して求められた数値である。
これら二酸化ケイ素、オルガノシロキサンの群から選択される1種または2種以上により酸化亜鉛粉体の表面を処理した場合、この酸化亜鉛粉体の表面が表面処理剤により覆われるために、亜鉛イオンが粉体の外部へ流出し難くなり、酸化亜鉛粉体の表面活性をより制御することとなるので、好ましい。
これらのオルガノポリシロキサンの中でも、特に、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、このジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)を変性した変性ジメチルポリシロキサン(変性シリコーンオイル)が好適に用いられる。
なお、この酸化亜鉛粉体の表面を強固に被覆することができる点を考慮すれば、二酸化ケイ素(シリカ)膜で被覆することが好ましい。
このジペプチドとしては、亜鉛イオンと結合して該亜鉛イオンを水に不溶化する物質となるジペプチドであればよく、特に限定されない。
このジペプチドは、水に不溶化する物質となって自然環境中に放出された場合においても、自然に分解されてしまうので、環境への負担が軽減される。
このジペプチドと共存する水の水素イオン指数(pH)は、ジペプチドを溶解しない範囲である必要があり、好ましくは6から10である。
このカルノシン及びその誘導体としては、L−カルノシン及びその誘導体であることが好ましい。
これらカルノシン及びその誘導体は、亜鉛イオンと結合して、水に溶けないカルノシン亜鉛錯体を形成することができる。
これらカルノシン及びその誘導体の中でも、L−カルノシンを使用した場合には、L−カルノシン亜鉛錯体が抗炎症作用を有するので、より好ましい。
ジペプチドを酸化亜鉛粉体に対して上記の範囲で添加することにより、このジペプチドが亜鉛イオンを捕獲し、かつ酸化亜鉛粉体自体の紫外線遮蔽性を発揮させることができる。
本実施形態の酸化亜鉛複合粉体の製造方法としては、酸化亜鉛粉体にジペプチドを付着させることができる方法であればよく、特に限定されない。
これらの方法としては、例えば、酸化亜鉛粉体をジペプチドを含む溶液中に浸漬させる方法、酸化亜鉛粉体にジペプチドを含む溶液を噴霧させる方法等が挙げられる。
ここで、ジペプチドを酸化亜鉛粉体に付着させた後に、30℃を超える温度にて加熱すると、酸化亜鉛粉体の表面がジペプチドの影響を受けて変色する虞があるので好ましくない。
また、酸化亜鉛粉体の表面を、二酸化ケイ素(シリカ)、オルガノシロキサンの群から選択される1種または2種以上の表面処理剤により表面処理する工程と、この酸化亜鉛粉体にジペプチドを付着させる工程とを、同時に行ってもよい。
さらには、この酸化亜鉛粉体にジペプチドを付着させる工程の後に、ジペプチドを付着させた酸化亜鉛粉体の表面を、二酸化ケイ素(シリカ)、オルガノシロキサンの群から選択される1種または2種以上の表面処理剤により表面処理する工程を行ってもよい。
本実施形態の酸化亜鉛複合粉体含有分散液は、本実施形態の酸化亜鉛複合粉体を分散媒中に分散してなる分散液である。
この酸化亜鉛複合粉体含有分散液中の酸化亜鉛複合粉体の含有率としては、この酸化亜鉛複合粉体が分散媒中に良好に分散した状態を保持することができればよく、1質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、20質量%以上かつ70質量%以下がより好ましく、30質量%以上かつ60質量%以下がさらに好ましい。
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;
が好適に用いられる。
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;
シクロヘキサン等の環状炭化水素;
ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類;
も好適に用いられる。
これらの溶媒のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
分散剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシラン等のシランカップリング剤が好適に用いられる。これらの分散剤の種類や量は複合粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類により適宜選択すればよく、上記分散剤のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
また、分散処理に要する時間は、酸化亜鉛複合粉体が分散媒中に分散するのに十分な時間であればよく、特に制限はされない。
次に、本実施形態の酸化亜鉛複合粉体含有分散液の具体例として、(1)酸化亜鉛複合粉体をシリコーン中に分散させた酸化亜鉛複合粉体含有シリコーン分散液、(2)酸化亜鉛複合粉体を水中に分散させた酸化亜鉛複合粉体含有水系分散液、の2種類の分散液について説明する。
本実施形態の酸化亜鉛複合粉体含有シリコーン分散液は、上記の酸化亜鉛複合粉体をハイドロゲンジメチコンやジメチコンで表面処理を行った後、シリコーン中に分散してなる酸化亜鉛複合粉体含有シリコーン分散液であり、酸化亜鉛複合粉体の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下含有するシリコーン系分散液である。
このようなシリコーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、メチルトリメチコン等が挙げられる。
上記範囲で調整することにより、この酸化亜鉛複合粉体含有シリコーン分散液を単独で用いても、また、化粧料に直接混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる。
本実施形態の酸化亜鉛複合粉体含有水系分散液は、上記の酸化亜鉛複合粉体を水系分散媒中に分散してなる酸化亜鉛複合粉体含有水系分散液である。
この酸化亜鉛複合粉体の含有率は、好ましくは1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
水溶性高分子は、分散剤及び粘度調整剤としての役割を有し、添加することによって酸化亜鉛複合粉体の水系分散液における分散性及び経時安定性も向上する。
水の量を上記範囲にて調整することにより、単独で用いても、あるいは化粧料に混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる酸化亜鉛複合粉体含有水系分散液が得られる。
本実施形態の化粧料は、上述した酸化亜鉛複合粉体、酸化亜鉛複合粉体含有分散液、のいずれか一方または双方を含有している化粧料であり、これら酸化亜鉛複合粉体や酸化亜鉛複合粉体含有分散液は、酸化亜鉛複合粉体換算で1質量%以上かつ60質量%以下含有していることが好ましい。
この化粧料では、この酸化亜鉛複合粉体を上記の範囲内で含有することにより、白化の虞もなく、透明感を十分に確保することができ、しかも、ざらつき感等が無く、使用感に優れたものとなる。
また、水に不溶化する物質となって自然環境に放出された場合であっても、自然に分解されて消失してしまうので、環境への負担を軽減することができる。
また、酸化亜鉛粉体の表面を二酸化ケイ素(シリカ)膜で被覆した場合には、水中への亜鉛イオンの溶出をさらに抑制することができるので好ましい。
以上により、水中への亜鉛イオンの溶出の虞のない酸化亜鉛複合粉体を提供することができる。
「粉体の作製」
酸化亜鉛粉体(平均一次粒子径:20nm、住友大阪セメント製)120質量部と、2−プロパノール1015質量部と、イオン交換水10質量部とを混合した。
次いで、この混合液にL−カルノシン20gを添加して混合した。
次いで、28%アンモニア水溶液を4g添加して混合し、室温(25℃)にて24時間撹拌することにより、酸化亜鉛粉体の表面にL−カルノシンを含有させた。
得られた乾燥物をジェットミルにて粉砕し、実施例1のL−カルノシン含有酸化亜鉛粉体を得た。
カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL(登録商標)934)0.2質量部と、イオン交換水88質量部とを混合し、次いで水酸化ナトリウムで中和し、増粘液を作製した。
この増粘液に実施例1のL−カルノシン含有酸化亜鉛粉体10質量部を添加して均一に混合した。混合液の25℃における初期粘度は9800mPa・sであった。
「粉体の作製」
酸化亜鉛粉体(平均一次粒子径:20nm、住友大阪セメント製)120質量部と、2−プロパノール1015質量部と、イオン交換水10質量部とを混合した。
次いで、この混合液に、テトラメトキシシラン(TMOS)31g、L−カルノシン20gを添加して混合した。
次いで、28%アンモニア水溶液を4g添加して混合し、室温(25℃)にて24時間撹拌することにより、酸化亜鉛粉体の表面を二酸化ケイ素にて被覆させ、かつ、酸化亜鉛粉体の表面にL−カルノシンを含有させた。
得られた乾燥物をジェットミルにて粉砕し、実施例2のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を得た。
上記のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を用いて、実施例1に準じて粉体の評価を行った。
上記のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体10質量部を上述した増粘液に添加して均一に混合して得られた混合液の25℃における初期粘度は10000mPa・sであった。
「粉体の作製」
酸化亜鉛粉体(平均一次粒子径:20nm、住友大阪セメント製)120質量部と、2−プロパノール1035質量部と、イオン交換水10質量部とを混合した。
次いで、この混合液に、テトラメトキシシラン(TMOS)31gを添加して混合した。
次いで、28%アンモニア水溶液を4g添加して混合し、60℃にて3時間撹拌することにより、酸化亜鉛粉体の表面を二酸化ケイ素にて被覆させた。
次いで、この乾燥した粉体を、乾燥機を用いて150℃にて24時間静置させ、酸化亜鉛粉体の表面の二酸化ケイ素膜の緻密化を行った。
得られた乾燥物をジェットミルにて粉砕し、実施例3のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を得た。
上記のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を用いて、実施例1に準じて粉体の評価を行った。
上記のL−カルノシン含有二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体10質量部を上述した増粘液に添加して均一に混合して得られた混合液の25℃における初期粘度は10000mPa・sであった。
「粉体の作製」
酸化亜鉛粉体(平均一次粒子径:20nm、住友大阪セメント製)120質量部と、2−プロパノール1035質量部と、イオン交換水10質量部とを混合した。
次いで、この混合液に、テトラメトキシシラン(TMOS)31gを添加して混合した。
次いで、28%アンモニア水溶液を4g添加して混合し、60℃にて3時間撹拌することにより、酸化亜鉛粉体の表面を二酸化ケイ素にて被覆させた。
次いで、この乾燥した粉体を、乾燥機を用いて150℃にて24時間静置させ、比較例1の二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を得た。
上記の二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を用いて、実施例1に準じて粉体の評価を行った。
上記の二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を用いて得られた混合液の25℃における初期粘度は10000mPa・sであったが、この混合液を乾燥機内にて、30℃にて1週間保管した後、取り出して室温(25℃)における粘度を測定したところ、500mPa・sと低下しており、しかも、二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体が沈降分離していた。これにより、L−カルノシンを含有しない酸化亜鉛粉体は、カルボキシビニルポリマー水溶液中で亜鉛イオンの溶出を抑制することができず、したがって、この二酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粉体を含む混合物の粘性が低下し、溶液の安定性を保つことができないことが確認された。
Claims (5)
- 酸化亜鉛粉体と、亜鉛イオンと結合して亜鉛錯体を形成するジペプチドとを含有してなり、
前記ジペプチドは、カルノシン及びその誘導体の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする酸化亜鉛複合粉体。 - 前記カルノシン及びその誘導体は、L−カルノシン及びその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛複合粉体。
- 前記酸化亜鉛粉体は、表面が二酸化ケイ素にて被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化亜鉛複合粉体。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の酸化亜鉛複合粉体を分散媒中に分散してなることを特徴とする酸化亜鉛複合粉体含有分散液。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の酸化亜鉛複合粉体及び請求項4記載の酸化亜鉛複合粉体含有分散液のうちいずれか一方または双方を含有してなることを特徴とする化粧料。
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