以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、この発明の一例として、苗移植機(田植機)の全体側面図、図2は苗移植機における植付部の拡大側面図、図3は植付部の平面図である。
本願の苗移植機(田植機)1は作業者が搭乗する車両であり、6条植えを例に説明する。図1〜2に示すように、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、前後方向に長手状のミッションケース4前方に、フロントアクスルケース5を介して水田走行用の前輪6を支持させるとともに、ミッションケース4後部のリヤアクスルケース7に水田走行用の後輪8を支持させる。
そして、エンジン2などを覆うボンネット9の両側に予備苗載台10を取付けるとともに、作業者が搭乗する車体カバー11によってミッションケース4などを覆い、車体カバー11後側の運転台12上面に運転席13を取付け、その運転席13の前方でボンネット9後部に操向ハンドル14が設けられる。
また、植付部15は、6条植え用の苗載台16ならびに複数の苗植付爪17などを具備するものであり、前高後低の合成樹脂製による前傾式苗載台16を下部レール18およびガイドレール19を介して植付フレーム20に左右往復摺動自在に支持させるとともに、一方向に回転させるロータリケース21を植付フレーム20に支持させ、このロータリケース21の回転軸芯を中心とした対称位置に一対の植付アーム22を配設し、その植付アーム22先端に植付爪17が取付けられる。
また、植付フレーム20の左右両端側に、左右サイドフレーム23を立設させて苗載台16を支持させ、植付フレーム20左右中央のヒッチブラケット24をトップリンク25およびロワーリンク26を含む昇降機構27を介して車両に連結させ、この車両に設けた油圧式の昇降シリンダ28をロワーリンク26に連結させ、この昇降シリンダ28の駆動時に昇降機構27を介して植付部15を昇降させるとともに、植付部15の下降時には左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗植え作業が可能な構成とされる。
なお、符号29は主変速レバー、30は苗継ぎレバー、32は主クラッチペダル、34はセンターフロート、35はサイドフロート、36は施肥機、37は後輪8の外側に配備させる補助車輪である。
また、施肥機36は、肥料を入れる肥料ホッパ38と、肥料を供給する肥料繰出部である肥料繰出ケース39と、フロート34,35の側条作溝器40にフレキシブル形搬送ホース41を介して肥料を排出させるターボブロワー型送風機42と、円筒形のエアタンク43とを備えるとともに、エアタンク43右側端に、この送風機42を取付け、肥料繰出ケース39をエアタンク43上側に配設させ、肥料ホッパ38の後側に苗載台16の上端を近接配備させている。
次に、図3〜4に示すように、植付フレーム20は、各2条分用のパイプ製左右各縦フレーム44と、これら左右縦フレーム44の前端間を連結するパイプ製の横フレーム45とを備え、十字管継手46を各縦フレーム44後端に溶接固定させ、植付駆動アーム軸47(植付駆動アーム伝達部材)を介してロータリケース21を十字管継手46に回転自在に支持させるとともに、十字管継手48a,48bを縦フレーム44と横フレーム45に溶接固定させて、これら縦および横フレーム44,45を一体連結させて構成される。
また、十字管継手48bの前端部に植付入力軸49を設け、ミッションケース4のPTO軸33からの駆動力を、自在軸継手を介して植付入力軸49に伝達させ、横フレーム45に内設する植付駆動手段(植付駆動軸など)の植付駆動横軸51(植付駆動横伝達部材)にベベルギア52を介して植付入力軸49を連動連結させるとともに、左右縦フレーム44に内設する植付駆動手段の植付駆動縦軸53(植付駆動横伝達部材)をベベルギヤ49a,49bなどを介して植付駆動横軸51に連結させ、植付駆動アーム軸47にそれぞれ後述するベベルギヤ50a,50bおよび図示しない植付爪ユニットクラッチを介して植付駆動縦軸53を連動連結させ、植付爪17の駆動を行う構成とされる。
なお、上述において、ミッションケース4のPTO軸33からの駆動力の伝達は軸(植付入力軸49、植付駆動横軸51、植付駆動縦軸53、植付駆動アーム軸47等)を用いた構成であるが、駆動力を伝達することができれば特に限定されず、例えば、チェーンを用いた構成であってもよい。
ここで、植付入力軸49に動力を伝達するPTO軸33の上流側には、後述するギアケース62が設けられており、このギアケース62内に設置されるそれぞれ図示しない入力軸と、出力軸との間に中間軸が設けられるとともに、この中間軸と出力軸との間には、公知の不等速機構として一対の偏心ギアなどの非円形ギアが設けられており、この不等速機構により、植付駆動横軸51の1回転の間に植付駆動アーム軸47の回転速度が、部分的に最高速となる状態と最低速となる不等速状態を出現させている。
さらに、苗載台16の左右方向の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りとを行う苗送り軸58を苗送りケース59を介して植付駆動横軸51の左端に連動連結させ、十字管継手48aの左側フランジ部60に苗送りケース59の一端側フランジ部61をボルト止め固定させ、苗送りケース59の他端側に苗送り軸58の左端を挿入支持させ、苗送りケース59内の植付駆動横軸51と苗送り軸58間に高低変速用の2組の図示しない切換ギヤで形成する変速機構64を介在させ、機体略中心に対し苗送り軸58の左半分を苗縦送りカム軸65および右半分を苗台横送りネジ軸66に設けて、苗送り軸58の高低2速の回転駆動時に苗載台16の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りを行う構成とされる。
次に、本願発明の苗移植機1における植付部15の植付駆動手段に設けたトルク平準化機構について詳述する。図4はトルク平準化機構としてのクランクアームおよびスプリングを植付駆動縦軸後部に設けた植付部の全体斜視図、図5はトルク平準化機構を設けた植付駆動縦軸後部の拡大斜視図、図6は内部構造を説明するトルク平準化機構の側面図、図7は植付駆動伝達部材に発生および付加するトルクの状態を示した図である。
トルク平準化機構101は、例えば図4,5に示すように、クランクアーム102と、コイルバネ103(スプリング)とからなり、各植付駆動縦軸53の後部に設置されたケース104内に設けられる。
具体的には、例えば略瓢箪形状(限定しない)のケース104の一側面が、植付駆動縦軸53の後部であって、この植付駆動縦軸53を覆設する縦フレーム44の後部に溶接やボルト止めなどによって取付けられる。
ケース104内には、上部に上部ステー107と、下部にクランクアーム102とが取付けられており、クランクアーム102の一端は回転軸106に接続し、他端には下部ステー108を有する。下部ステー108は、クランクアーム102に設けられた回転支持軸109に回転自在に取付けられている。回転軸106は、ケース104の一側面を貫設し、ベベルギア50a,50b,50cを介して植付駆動縦軸53の端部に連結される。また、上部ステー107と下部ステー108との間には、コイルバネ103が伸縮可能かつ着脱自在に取付けられる。コイルバネ103の両端にはフックが設けられ、このフックを上部ステー107と下部ステー108に引掛けることで取付けられる。上部ステー107と下部ステー108にはフックを固定するための引掛溝が設けられ、この引掛溝にコイルバネ103のフックを引掛けることで、コイルバネ103を確実に固定することができる。また、コイルバネ103には常に収縮する力が発生しており、クランクアーム102を介し、コイルバネ103の弾性力(収縮する力)を回転トルクとして回転軸106に発生させる。
なお、コイルバネ103の取付けは上述の構成に限定されるものではなく、コイルバネ103の弾性力を回転トルクとして回転軸106に発生させることができればよく、例えば、コイルバネ103の下端のフックを下部ステー108を介さずにクランクアーム102に設けられた回転支持軸109に取付け、回転支持軸109とコイルバネ103の下端のフックとが摺動する構成として取付けてもよい。
また、コイルバネ103は、植付駆動手段の等速・不等速の減速比または、植付スピードや株数、植付アームの重量や形状などに応じて、クランクアーム102(腕の長さ)やコイルバネ103(弾性力)を適宜取替設置することで、最適なトルクを発生させることができる。
そして、これらクランクアーム102、コイルバネ103および上部ステー107を備えるケース104の外側部には、ケース104と同形状の蓋部105がボルトBOなどの締結具で開閉可能に閉蓋される。
次に、図6,7を用いて、植付駆動縦軸53に発生するトルクの平準化について説明する。回転軸106は回転中心O1に対して右回転(時計回り)し、クランクアーム102も同様に右回転する。なお、回転方向は限定されず、左回転(反時計回り)であってもよい。クランクアーム102に設けられた下部ステー108には、コイルバネ103の弾性力が作用している。なお、図6中の矢印はコイルバネ103の弾性力がクランクアーム102に作用する方向を示す。
コイルバネ103の弾性力によって回転軸106に発生するトルク(平準化トルク)の向きは、回転軸106の回転角θ1が0°<θ1<180°の際には回転軸106の回転方向と逆向きとなり、180°<θ1<360°の際には回転軸106の回転方向と同じ向きとなる。
また、回転軸106の回転角θ1が0°から増加するにつれて、クランクアーム102の腕の向きとコイルバネ103の弾性力の向きとの成す角度θ2は180°から減少して90°に近づくため、コイルバネ103の弾性力によって回転軸106に発生する平準化トルクは増加する。
その後、平準化トルクが最大値となり、さらに回転角θ1が増加するとθ2は減少して0°に近づくため、平準化トルクは減少する。そして、θ1が180°の際には、θ2は0°となるため、コイルバネ103の弾性力は回転軸106の回転中心O1を通る直線に沿って作用するので、平準化トルクは0となる。
次に、θ1が180°から増加するにつれて、θ2は0°から増加して90°に近づくため、平準化トルクは増加する。
その後、平準化トルクが最大値となり、さらに回転角θ1が増加するとθ2は増加して180°に近づくため、平準化トルクは減少する。そして、θ1が360°の際には、θ2は180°となるため、コイルバネ103の弾性力は回転軸106の回転中心O1を通る直線に沿って作用するので、平準化トルクは0となる。このように、平準化トルクは周期的に変化する。
ここで、植付爪17が苗載台16上の苗に入り込む際と苗の植付後に植付爪17に残る苗を下方に振り落とす際に植付アーム22の回転駆動を速くし、圃場への苗を植付ける際に植付アーム22の回転速度を緩めるために、植付アーム22などの植付駆動手段を不等速機構により不等速で回転させている。従って、植付アーム22などの植付駆動手段が不等速で回転することによって発生するトルク変動は、ロータリーケース21が一回転する間(植付爪17が苗載台16上の苗を切削し、圃場への苗を植付け、再度苗を切削する間)に2回のピークを有する周期的な変動となる。
従って、このトルク変動を打ち消すために、平準化トルクが逆位相となるように、ベベルギア50cで回転軸106の回転速度を変える。そして、不等速機構によって発生するトルク110と、トルク平準化機構101によって発生するトルク(平準化トルク)111と、それぞれが合成された合成トルク112は、図7に示すようになり、合成トルク112の変動が小さくなる。なお、図7中のA,B,C,Dは、図6中の下部ステー108が回転自在に取付けられている回転支持軸109の中心O2がA,B,C,Dに位置するときの平準化トルクをそれぞれ示すものである。
このような構成にすることで、植付駆動縦軸53に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動縦軸53に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動縦軸53が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
また、このトルク平準化機構101は、コイルバネ103の弾性力を回転トルクに用いるので、大きな質量を有さず、植付駆動や走行の負荷とならない。しかも、簡単で軽量コンパクトな構成であり、メンテナンスや発生させるトルク(平準化トルク)の調整が容易に行え、現状の植付駆動縦軸53の構成を大きく変更することなく配置できる。
また、植付駆動縦軸53が高速回転する際でも、コイルバネ103の伸縮運動がこの高速回転運動に追従するため、植付駆動縦軸53に発生するトルク変動が高周波のトルク変動であっても吸収することができる。
また、トルク平準化機構101が植付駆動縦軸53に発生するトルク変動の発生源である植付アーム22の近傍に設けられるため、より効果的に植付駆動縦軸53に発生するトルク変動を打ち消すことができる。
さらに、ケース104と蓋部105によってトルク平準化機構101は閉蓋されており、トルク平準化機構101に泥土等の付着を防ぎ、クランクアーム102の回転やコイルバネ103の伸縮運動を阻害することなどによる不具合の発生や、クランクアーム102の回転やコイルバネ103の伸縮運動などの作動部位への手の接触等を防ぐことによる安全策を施すことができる。
なお、上述では、全ての植付駆動縦軸53の後部にトルク平準化機構101を設けることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、任意の植付駆動縦軸53の後部に設けてもよい。
ここで、上述のトルク平準化機構101に、コイルバネ103の長さ(伸び)を変化させ、コイルバネ103に発生する弾性力を変化させる弾性力調節機構130を設けてもよい。図8はコイルバネの弾性力を変化させる弾性力調節機構の一例を示すトルク平準化機構の側面図である。
弾性力調節機構130は、例えば図8に示すように、上下方向に摺動可能に設けられた上部ステー107、リンクバー131およびリンクバー132からなるリンク機構から構成される。上部ステー107は、ケース104に設けられた縦長の開口136に貫設されており、開口136内を上下方向に摺動可能である。なお、上部ステー107は、開口136の左右の縁によって左右方向への移動は規制されている。リンクバー131の一端には上部ステー107に回動自在に取付けられ、他端にはリンクバー132が回動軸133を介して回動自在に取付けられている。リンクバー132は、ケース104に延設されたフランジ135に設けられた回転支持軸134に回転自在に支持されている。リンクバー132を不図示のボルト等で固定することによって、上部ステー107は固定される。
リンクバー132の外方端を下方に移動させることで、上部ステー107は上方へ移動し、コイルバネ103の伸びが大きくなることでコイルバネ103に発生する弾性力を大きくすることができる。また、リンクバー132の外方端を上方に移動させることで、上部ステー107は下方へ移動し、コイルバネ103の伸びが小さくなることでコイルバネ103に発生する弾性力を小さくすることができる。
従って、簡単な構成の弾性力調節機構130を設けることにより、コイルバネ103を取替えることなくクランクアーム102に作用する弾性力を変化させることが可能となり、トルク平準化機構101による平準化トルクを容易に変化させることができる。さらに、コイルバネ103の伸びがなくなる状態まで上部ステー107を下方に移動させてコイルバネ103の弾性力をなくすこともでき、トルク平準化機構101による植付駆動伝達部材への平準化トルクの発生の有無を切替えることができる。また、コイルバネ103を取替える際においても、上部ステー107を下方に移動させてコイルバネ103の弾性力を小さく、またはなくすことができるので、コイルバネ103の取替えを容易に行うことが可能となる。
なお、弾性力調節機構130は、上述の構成に限定されるものではなく、コイルバネ103の長さ(伸び)を変えることによってコイルバネ103に発生する弾性力を変化させることができればよく、公知のリンク機構、例えばワイヤーを用いたものとしてもよい。さらに、ロッドやワイヤーなどの公知のリンク機構により運転席13などから弾性力調節機構130を操作可能とする構成としてもよい。
次に、トルク平準化機構は、植付駆動横軸51の両端部に設置してもよい。この場合、図示しないが、上述のトルク平準化機構101と同様の構成であって、クランクアーム102´と、コイルバネ103´とからなり、植付駆動横軸51の端部に設置されたケース104´内に設けられる。略瓢箪形状(限定しない)のケース104´の一側面が、植付駆動横軸51の端部であって、この植付駆動横軸51を覆設する横フレーム45の端部に溶接やボルト止めなどによって取付けられる。
ケース104´内には、上部に上部ステー107´と、下部にクランクアーム102´とが取付けられており、クランクアーム102´の一端は回転軸106´に接続し、他端には下部ステー108´を有する。下部ステー108´は、クランクアーム102´に設けられた回転支持軸109´に回転自在に取付けられている。回転軸106´は、ケース104´の一側面を貫設し、ベベルギア49a,49b,49cを介して植付駆動横軸51の端部に連結される。また、上部ステー107´と下部ステー108´との間には、コイルバネ103´が伸縮可能かつ着脱自在に取付けられる。また、コイルバネ103´には常に収縮する力が発生しており、クランクアーム102´を介し、コイルバネ103´の弾性力(収縮する力)を回転トルクとして回転軸106´に発生させる。
そして、これらクランクアーム102´、コイルバネ103´および上部ステー107´を備えるケース104´の外側部には、ケース104´と同形状の蓋部105´がボルトBOなどの締結具で開閉可能に閉蓋される。
このような構成にすることで、上述と同様に、現状の植付駆動横軸51の構成を大きく変更することなく、植付駆動横軸51に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103´の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101´によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動横軸51に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動横軸51が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
なお、上述では、植付駆動横軸51の両端部にトルク平準化機構101´を設けることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、植付駆動横軸51の左右いずれか一端部に設けてもよい。
また、トルク平準化機構は、植付駆動縦軸53の中途部に設けることもできる。図9は植付駆動縦軸の中途部に設けたトルク平準化機構の一例を示す主要部断面図、図10は植付駆動縦軸の中途部に設けたトルク平準化機構の一例を示す主要部斜視図、図11は植付駆動縦軸の中途部に設けたトルク平準化機構の一例を示す主要部断面図、図12は図11におけるトルク平準化機構のE−E断面図である。
この場合、図9,10に示すように、例えば、植付駆動縦軸53を内設する縦フレーム44の中途部(図例では植付駆動縦軸53の中央に近い位置)には、ケース104´´が取付けられるとともに、このケース104´´内には、植付駆動縦軸53に固定周設したクランク機構113と、植付駆動縦軸53と平行に設けた(限定されない)コイルバネ103´´などからなるトルク平準化機構101´´が収容される。
このトルク平準化機構101´´は、例えば、クランク機構113が、一側面を傾設させた傾斜面114を構成するとともに、コイルバネ103´´の先端部に設けたキャスター115のローラー116を傾斜面114にコイルバネ103´´の弾性力により押圧して当接させる。なお、キャスター115に接続されるコイルバネ103´´の中心を貫通するアーム117は、縦フレーム44の内壁部内に摺動可能に支持される。
そして、コイルバネ103´´の弾性力(拡大する力)は、クランク機構113の傾斜面114を介して植付駆動縦軸53の周方向への力とすることで、回転トルクとして植付駆動縦軸53に発生する。
なお、クランク機構113へのコイルバネ103´´の弾性力の伝達は上述の方法に限定されず、例えば、ローラー116を介さない方法であってもよい。また、上述の例では、トルク平準化機構101´´を植付駆動縦軸53の中途部に設ける構成としたが、植付駆動横軸51の中途部に設ける構成としてもよい。
このような構成にすることで、上述同様に、現状の植付駆動縦軸53の構成を大きく変更することなく、植付駆動縦軸53に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103´´の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動縦軸53に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動縦軸53が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
また、トルク平準化機構は、カムとスプリングなどから構成することもできる。この場合、図11,12に示すように、例えば、植付駆動縦軸53を内設する縦フレーム44の中途部(図例では植付駆動縦軸53の中央に近い位置)には、ケース104´´´が取付けられるとともに、このケース104´´´内には、植付駆動縦軸53に固定周設したカム119と、植付駆動縦軸53と垂直に設けた(限定されない)コイルバネ103´´´などからなるトルク平準化機構101´´´が収容される。
このトルク平準化機構101´´´は、例えば、押圧部材118を突出部を有する側面視略卵形状のカム119(限定しない、偏心カムであってもよい)の側面120にコイルバネ103´´´の弾性力により押圧して当接させる。
そして、コイルバネ103´´´の弾性力(拡大する力)は、押圧部材118が当接するカム119の側面120を介して植付駆動縦軸53の周方向への力とすることで、回転トルクとして植付駆動縦軸53に発生する。
なお、カム119へのコイルバネ103´´´の弾性力の伝達は上述の方法に限定されず、例えば、上述のトルク平準化機構101´´と同様に、ローラーを介する方法であってもよい。また、上述の例では、トルク平準化機構101´´´を植付駆動縦軸53の中途部に設ける構成としたが、トルク平準化機構101´´´を植付駆動横軸51の中途部に設ける構成としてもよい。
このような構成にすることで、上述同様に、現状の植付駆動横軸51の構成を大きく変更することなく、植付駆動横軸51に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103´´´の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101´´´によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動横軸51に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動横軸51が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
また、トルク平準化機構は、植付駆動アーム軸47に設けることもできる。この場合、図示しないが、上述のトルク平準化機構101´´や101´´´と同様の構成であって、トルク平準化機構101´´におけるクランク機構113を植付駆動アーム軸47に固定周設した構成、または、トルク平準化機構101´´´におけるカム119を植付駆動アーム軸47に固定周設した構成であり、詳細な説明は省略する。
このような構成にすることで、上述同様に、現状の植付駆動アーム軸47の構成を大きく変更することなく、植付駆動アーム軸47に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネの弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動アーム軸47に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動アーム軸47が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。さらに、トルク変動の発生源である植付アーム22の近傍である植付駆動アーム軸47にトルク平準化機構が設けられるため、より効果的に植付駆動アーム軸47に発生するトルク変動を打ち消すことができる。
次に、トルク平準化機構による植付駆動伝達部材(植付駆動横軸51、植付駆動縦軸53、植付駆動アーム軸47)へのトルク発生を制御させることもできる。まず、この場合、図5に示した、植付駆動縦軸53の端部に設けられたクランクアーム102とコイルバネ103とからなるトルク平準化機構101を例にする。例えば、回転軸106に図示しない機械式のクラッチ装置を設ける。
このクラッチ装置は、図示しないロッドやワイヤーなどの公知のリンク機構により運転席13などから操作可能とされ、このリンク機構の操作により、クラッチ装置を作動させて植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101を接続または遮断する。
このような構成にすることで、苗移植機1における苗の移植作業では、植付軌跡を適正化するため、植付部15における植付駆動伝達部材の駆動を、疎植時(単位面積当たりの株数を少なく植える)には不等速駆動させるとともに、密植時(単位面積当たりの株数を多く植える)には等速駆動させるが、この疎植時にクラッチ装置を作動させて、植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101とを接続する。
従って、疎植時には、植付駆動縦軸53の回転に伴い、植付駆動縦軸53に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動縦軸53に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動縦軸53が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
一方、密植時には、クラッチ装置を作動させて、植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101との連結を解除(遮断)することで、等速駆動する植付駆動縦軸53の動力を植付駆動手段に伝達させることができ、簡単な構成で植付状況により植付駆動伝達部材へのトルク発生の有無を切替えることができる。
なお、上述のクラッチ装置は、機械式で説明したが、公知の電磁式クラッチ装置を用いてもよい。また、クラッチ装置に代わって上述の弾性力調節機構130を用いて、植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101との連結を解除(遮断)する構成としてもよい。さらに、クラッチ装置は、植付駆動縦軸53の一端部に備えるトルク平準化機構に設ける他、植付駆動横軸51や植付駆動縦軸53の中途部などに備えるトルク平準化機構に適宜設けることができ、トルク平準化機構の構成も限定されない。
また、上述のクラッチ装置は、株間変速機構と連動して制御するように構成することもできる。ギアケース62内には、図示しない株間変速機構が設けられており、この株間変速機構に、運転席13などに設けられた図示しない株間変速レバーを連動連結して、この株間変速レバーを操作することにより、株間変速機構を介して植付爪17の植付作動速度を変更し、圃場に植付けられる苗株の間隔を変更可能としたものである。なお、この株間変速機構は、例えば、特開平9−149717号公報や、特開2010−246562号公報に開示されている公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
そして、図5に示した、植付駆動縦軸53の後部に設けられたクランクアーム102とコイルバネ103とからなるトルク平準化機構101を例にする。回転軸106に上述のクラッチ装置を設け、クラッチ装置と、株間変速機構とが、図示しないワイヤーなどの連結部材で連動連結される。なお、上述のクラッチ装置と、株間変速機構との連結は、クラッチ装置を備えるトルク平準化機構を、植付駆動手段系の上記どの位置に配置しても可能とし、また、トルク平準化機構の構成も限定されない。また、クラッチ装置に代わって上述の弾性力調節機構130を用いる構成、もしくはクラッチ装置と上述の弾性力調節機構130とを組み合わせる構成として、株間変速機構と連動して制御してもよい。
このような構成にすることで、苗株の間隔を疎植に変更するために株間変速レバーを疎植側に操作すると、連結部材を介してクラッチ装置が作動し、植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101とが連結することにより、植付駆動縦軸53の回転に伴い、植付駆動縦軸53に発生するトルク変動と逆位相のトルク変動をコイルバネ103の弾性力によって発生させることができ、このトルク平準化機構101によって、回転が速くなるにしたがって大きくなる植付駆動縦軸53に発生するトルク変動を打ち消す。そして、植付駆動縦軸53が、ねじれたり、ガタつくことなく正確かつ円滑に不等速回転でき、高速時の植付爪17による苗の植付状態を安定化させることができる。
一方、株間変速レバーを密植側に操作することで、連結部材を介してクラッチ装置が作動し、植付駆動縦軸53とトルク平準化機構101との連結を解除することにより、等速駆動する植付駆動縦軸53の動力を植付駆動手段に伝達させることができ、簡単な構成で植付状況により植付駆動伝達部材へのトルク発生の有無を切替えることができる。
以上詳述したように、この例の苗移植機1は、ミッションケース4から駆動PTO出力を取り出す伝動機構(PTO軸33)と、PTO軸33からの動力で、植付爪17を支持して回転させる植付アーム22を駆動させる植付駆動手段とを備え、植付駆動手段は、植付アーム22を不等速機構によって駆動する植付駆動横伝達部材(植付駆動横軸51)と、植付駆動横伝達部材からの植付駆動力を前記植付アーム22に分配する植付駆動縦伝達部材(植付駆動縦軸53)とを備える苗移植機において、植付駆動手段には、トルク平準化機構101を設け、トルク平準化機構101は、弾性体(コイルバネ103)の弾性力を回転トルクに用いるものである。