JP5938830B2 - 可撓性複合シート - Google Patents

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Description

本発明は、柔軟性に優れ、高い強度・耐久性を有し、シートを通して向こう側を視認することができる透視性を有し、間仕切り、シートシャッター、養生シート等の本体或いはそれらの一部に形成するのぞき窓、ロールブラインド、および、防煙垂壁として、好適に用いることができる可撓性複合シートに関するものである。
倉庫や工場において、内部を簡易的に区切り、事務所スペース、保管スペース、作業スペース、及びクリーンルームなどの区画を確保するための間仕切りとして、軟質ポリ塩化ビニル製のシートが用いられている。また、倉庫や工場への出入りや、内部区画の行き来の際に、虫やホコリが進入するのを防ぐシートシャッターの可撓性開閉体として、軟質ポリ塩化ビニル製のシートが用いられている。これらのシートは透視性を有し、シートの向こう側を見通すことができるため、区画内部の様子を外部から確認したり、人や車両が出入りする際の出会い頭の事故を防いで、作業環境の安全性を確保することができる。軟質ポリ塩化ビニルは柔軟性が高く、必要に応じて自己消火性、防汚性、防カビ性、帯電防止性などの特性を付与することができ、しかも、はさみやカッターによる裁断、高周波ウェルダーによる縫製が可能であるなど、特性・サイズ・形状などの汎用性が高いため、従来から広く普及している。シートに強度や耐久性が要求される場合には、ポリエステル繊維糸条からなる編織物を基材として含み、その両面に軟質ポリ塩化ビニル製のフィルムを積層したシートが用いられることがある。その際、シートの向こう側を視認する事ができる様、基材として糸間の間隔を開けた粗目編織物が用いられるが、視認性を重視すれば、細い糸を用いて、且つ、糸間を広く開ける必要があり、編織物を用いた補強効果がほとんど得られないことがあった。太い糸を用いることで補強効果を高める事もできるが、糸の厚みによりシートに凹凸を生じてしまい、透視像にゆがみを生じて向こう側が見通せなくなり、作業環境の安全性を確保することが困難となることがあった。
防火性を求められる区画や、作業中に火花に曝される恐れのある区画については、不燃性のシートを用いた間仕切りやシートシャッターが求められている。ここで不燃性のシートとは、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において、シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えないシートであり、この基準を満たすシートとして、例えば、通気性が7cm×cm−2×s−1以下のガラス繊維織物を基材とし、その少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂層を積層した不燃シートが提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、はさみやカッターによる裁断や、高周波ウェルダーによる縫製に対応でき、自己消火性、防汚性、防カビ性などの特性を付与することのできる不燃シートを得る事が可能となる。しかし、このシートは透視性については考慮されておらず、シートを通して向こう側を視認する事ができず、間仕切りやシートシャッターに用いた場合、作業環境の安全性を確保する事ができなかった。
ガラス繊維織物とそれに含浸した硬化性樹脂とを含み、ガラス繊維と硬化性樹脂の屈折率及びアッベ数の差を特定の値以下とすることで、不燃性で透明なシートを得る試みも提案されている(特許文献2参照)。この方法によれば、ガラス繊維と硬化性樹脂の界面での光の散乱が抑えられ、硬化性樹脂で覆われたガラス繊維織物が見えなくなり、全光線透過率が80%以上で透明性の高い不燃性シートが得ることができる。しかしこのシートは非常に硬くて取扱性が悪く、裁断などの作業に支障をきたすことがあり、また、作業中に折り曲げられるようなことがあると、ガラス繊維と硬化性樹脂の間に隙間ができ、隙間部分で光散乱を生じてシートが部分的に白く濁ってしまい、商品価値が損なわれる問題があった。さらに、硬化性樹脂は高周波ウェルダーでの縫製が不可能であり、縫製を必要とする間仕切りやシートシャッターには用い難いものであった。さらに、使用する硬化樹脂は、酸素遮断下で加熱あるいは紫外線・電子線照射により硬化させる必要があるため、加工には特殊な装置および資材を必要とする問題を有していた。
特定組成のガラスからなるガラス繊維織物に、溶剤で希釈した塩化ビニル系樹脂組成物を含浸させることで、高周波ウェルダー縫製が可能な透明性不燃シートを得る方法も提案されている。(特許文献3参照)この方法により得られるシートは、全光線透過率が85%以上で、透明性に優れ、不燃性で、しかも自己消火性を有している。しかし、自己消火性を得る為には樹脂組成物に含まれる可塑剤量を少なく抑える必要があり、具体的には塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤が5〜30重量部であることが好ましいとされ、そのため、得られるシートは硬く、折り曲げによって白く濁ってしまう問題が解消されていなかった。さらに、可塑剤量が少ない塩化ビニル系樹脂組成物はそのままでは粘度が高く、ガラス繊維織物への含浸性が低いので、希釈溶剤を多量に加えて粘度を下げており、加工中に溶剤が揮発して液粘度が経時的に変化し、安定した加工が行いにくい問題を有していた。また、加工時の加熱処理により大量の有機溶剤が大気中に揮散されることになり、環境上の問題も有していた。
軟質塩化ビニル樹脂と、少なくとも1種の芳香族リン酸エステル化合物からなる透明化剤とを含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を、ガラス繊維からなる基布に含浸させることで、高周波ウェルダー縫製が可能な透明性不燃シートを得る技術も提案されている。(特許文献4参照)この技術は、透明化剤により樹脂組成物の屈折率を調整し、ガラス繊維と樹脂層の屈折率を近似させて界面での光の散乱を抑えることで、基布を見えにくくして透明性のシートを得るものである。透明化剤として含まれる芳香族リン酸エステル化合物は、塩化ビニル樹脂の可塑剤としても作用するので、これを多量に含む透明性不燃シートは柔軟性に優れ、折り曲げにより白濁する問題は大きく改善される。しかし、基布と樹脂層の色分散(波長による屈折率の変化)を同程度にすることは困難であり、特定の波長ではほぼ同一の屈折率とすることができても、異なる波長においては屈折率に差を生じ、波長毎に異なる方向に散乱するため虹彩を生じて、シートの透視性が損なわれることがあった。また、
ガラス繊維束内に含浸した樹脂層に含まれる透明化剤がシート表面側に移行し、基布に含浸した樹脂の屈折率が徐々に変化することで、ガラス繊維と樹脂層の屈折率差が大きくなり、ガラス繊維/樹脂層界面の光散乱により透視性が低下してしまい、シートの向こう側を充分に視認することができなくなることがあった。
以上述べてきた様に、柔軟性に優れ、強度と耐久性を有し、しかもシートを介して向こう側を見通すことのできるシートは、これまで提供されておらず、特に、これらの特性を有した上で、高周波ウェルダーによる縫製が可能で、防火性を求められる区画や、作業中に火花に曝される恐れのある区画で用いることができる不燃性のシートの開発が求められていた。
特開2003−276113号公報 特開2005−319746号公報 国際公開第2009/063809号パンフレット 特開2010−052370号公報
本発明は、以上の様な従来技術の課題を解決し、柔軟性に優れ、強度と耐久性を有し、シートの向こう側を見通すことのできる透視性を有するシートを提供しようとするものであり、特に、これらの特性に加えて、高周波ウェルダーでの縫製が可能であり、不燃性を有する可撓性複合シートを提供しようとするものである。
本発明者は、これらの課題を解決するため鋭意検討を行った結果、シートの向こう側を見え易くすることが目的であれば、80%を超える高い全光線透過率は必ずしも必要ではなく、基材/透明被覆樹脂界面での光散乱と、シートの凹凸による透過像のゆがみを抑えれば、間仕切りやシートシャッターに用いた場合の作業の安全性を確保するのに充分な視認性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の可撓性複合シートは、有色基材の両面に透明被覆樹脂層が形成された光透過性膜材であって、前記有色基材が原着マルチフィラメント糸条からなる充実率95〜99%の編織物、または樹脂に顔料を分散させた着色樹脂を無着色のマルチフィラメントからなる編織物に含浸被覆して、フィラメント単糸表面に顔料を樹脂で固着させてなる充実率95〜99%の樹脂複合編織物で構成され、前記透明被覆樹脂層は、有色基材のマルチフィラメント糸条内部にもフィラメント単糸の隙間を充填して含浸し、かつ、前記有色基材の明度(JISZ8721)4〜8を有し、前記有色基材のマルチフィラメント糸条と前記透明被覆樹脂層との屈折率差が0.03以内であることを特徴とする。
本発明において、前記透明被覆樹脂層が、ポリ塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含む軟質塩化ビニル樹脂組成物からなり、前記軟質塩化ビニル樹脂組成物において、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して前記可塑剤を40〜250質量部含み、樹脂透明被覆樹脂層の被覆量が、前記有色基材の質量に対して50〜400質量%であることが好ましい。
本発明において、前記マルチフィラメント糸条がガラス繊維、シリカ繊維、およびシリカ−アルミナ繊維から選ばれた少なくとも1種からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において、前記光透過性膜材に対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えないことが好ましい。
本発明によれば、柔軟性に優れ、高周波ウェルダーによる縫製が可能であり、編織物を含んで高い強度と耐久性を有しながら、シートの向こう側を見通すことができる可撓性複合シートの提供を可能とする。特にガラス繊維、シリカ繊維、およびシリカ−アルミナ繊維から選ばれた少なくとも1種からなるマルチフィラメント糸条を用いた編織物を基材として含む不燃性を有する可撓性複合シートは、倉庫や工場内において、防火性を要求される区画や作業中に火花に曝される恐れのある区画に用いる間仕切りや、シートシャッターの可撓性開閉体、およびそれらののぞき窓、として好適に用いることができる。
本発明の可撓性複合シートの1例を示す図 本発明の可撓性複合シートの1例を示す図
本発明の可撓性複合シートにおいて、編織物に用いるマルチフィラメント糸条は、波長550nmにおける屈折率が1.45〜1.58の透明な有機物または透明な無機物からなる長繊維(フィラメント単糸)を束ねたものである事が好ましい。長繊維としては例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維による長繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維による長繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維による長繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維などの無機繊維による長繊維から、1種以上を選択して用いることができる。これらの内特に、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維は、不燃性の可撓性複合シートを得ることができ好ましく、中でも入手が容易で複屈折の無いEガラスやTガラスからなるガラス繊維が特に好ましく用いられる。本発明において、マルチフィラメント糸条の繊度は125〜2000dtex(デシテックス)であることが好ましく、250〜1000dtexであることがより好ましい。繊度が125dtex未満では、得られるシートの強度が充分に得られない事がある。一方、繊度が2000dtexを超えると、有色基材が厚くなり遮光性が高まることで透視性が悪くなったり、表面凹凸が大きくなって透視像にゆがみを生じ、シートの向こう側を視認する事が困難になる事がある。マルチフィラメント糸条の撚りは120回/m以下であることが好ましく、80回/m以下である事がより好ましい。撚りが120回/mを超えると、マルチフィラメント糸条の繊維間に樹脂が含浸し難くなり、充分な透視性が得られない事がある。
マルチフィラメント糸条としてガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維などの無機繊維を用いる場合、これらの単糸のフィラメント直径は、1〜15μmであることが好ましく、5〜10μmであることが更に好ましい。フィラメント直径が1μmより細い繊維では糸条内部の空隙が狭くなり、透明被覆樹脂層を形成する際に、繊維間に樹脂が含浸し難くなって、充分な透視性が得られない事があり、また、高価であるため、経済的にも不利である。フィラメント直径が15μmを超えると、繊維間への樹脂の含浸が容易であるため、透視性を得る上では有利となるが、可撓性複合シートの耐屈曲性が低下し、シートとしての実用性が不十分となる事がある。
本発明において、有色基材の明度(JISZ8721)は4〜8であり、より好ましくは4.5〜7である。有色基材の明度が8を超えると、基材と透明被覆樹脂層との界面の光散乱により、得られるシートの透視性が不充分となる事がある。明度が4未満では、有色基材の隠蔽性により全光線透過率が低くなって、得られるシートの透視性が得にくくなり、特にシートによって隔てられた区画の明るさに差がある場合、明るい側から暗い側への視認性が不充分となることがある。本発明において、有色基材の彩度(JISZ8721)は4以下である事が好ましく、2以下である事がより好ましい。彩度が4を超えると、有色基材の色相と同系の色相を有する物体がシートの向こう側にある場合に視認しにくくなる事がある。
本発明で用いるマルチフィラメント糸条は、上述した様に、波長550nmにおける屈折率が1.45〜1.58の透明な有機物または透明な無機物からなる長繊維(フィラメント単糸)を束ねたものである。着色しない状態では、フィラメント単糸1本1本は本来透明であるが、空気との屈折率の差によりフィラメント単糸表面で光が散乱することで、マルチフィラメント糸条は明度8.5以上の白色の外観を呈する。本発明において、明度4〜8の有色基材を得るために、以下の二つの内いずれかの方法がとられる。
1、原着マルチフィラメント糸条を編織
2、無着色のマルチフィラメント糸条からなる編織物に着色樹脂を含浸被覆
上記1において、原着マルチフィラメント糸条は、着色剤を添加した組成物から紡糸して得たマルチフィラメント糸条であり、これを編織することで有色基材を得る。原着マルチフィラメント糸条に添加する着色剤には特に限定は無く、従来公知の無機顔料、有機顔料、染料から適宜選択して用いることができる。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラックおよびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等を例示でき、これらから1種、または2種以上を選択して用いることができる。
上記2としては、例えば、樹脂に顔料を分散させた着色樹脂を無着色のマルチフィラメントからなる編織物に含浸被覆して、フィラメント単糸表面に顔料を樹脂で固着させる方法をあげることができる。使用する樹脂は特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニリデン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂など、常温で柔軟性を示し、透明性を有する樹脂が好ましく用いられる。固着させる顔料にも特に限定はなく、鉛、クロムおよびカドミウムを除く金属酸化物系無機顔料(例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラックおよびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等から選ばれた1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において有色基材は、上述した1の原着マルチフィラメント糸条からなる充実率95〜99%の編織物、または、上述した2の無着色のマルチフィラメント糸条からなる編織物が着色樹脂で含浸被覆されてなる充実率95〜99%の樹脂複合編織物である。ここで、充実率とは編織物の単位面積中(例えばタテ1インチ×ヨコ1インチの正方形)に糸条の占める面積を百分率として求めた値(×100%)である。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織布は、得られる可撓性複合シートの経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。充実率は低い方が編織物の隙間が多くなり、全光線透過率を高める為には有利であるが、95%未満ではマルチフィラメント糸条部分と隙間とでの厚さの差により、シートに凹凸を生じやすくなり、凹凸によって多方向に光が散乱し、シートの向こう側の透視像が歪んで視認性が充分に得られないことがある。充実率が95〜99%であれば凹凸を最小限に抑える事ができる。本発明において、編織物には開繊処理を施しても良い。開繊処理を施すことで、編織物がよりフラットになり、得られる可撓性複合シートの凹凸を抑えて視認性を得やすくなる。開繊処理を施す場合、処理後の充実率が95%〜99%である。また、有色基材が着色樹脂で含浸被覆されてなる樹脂複合編織物の場合、含浸被覆後の充実率が95〜99%である。本発明の有色基材の目付質量は、原着マルチフィラメント糸条を編織した有色基材、無着色のマルチフィラメント糸条からなる編織物に着色樹脂を含浸被覆した有色基材、いずれの場合でも、50〜350g/mであることが好ましく、70〜300g/mであることがより好ましい。目付質量が50g/m未満であると、得られる可撓性複合シートの強度や耐久性が不充分となることがあり、350g/mを超えるとシートの向こう側が視認性し難くなることがある。
本発明において透明被覆樹脂層は、有色基材のマルチフィラメント糸条内部に含浸し、更に有色基材の両面を覆う状態に形成される。この様な透明被覆樹脂層を形成する為に、少なくとも含浸部分は、液状の樹脂組成物を有色基材表裏全面に含浸塗布する事により形成される。含浸方法としては、例えば、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、液状に熱溶融した熱可塑性樹脂、水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂ペーストゾル、などを用いるディッピング加工法、及びコーティング加工法等が例示される。含浸塗布により形成した透明被覆樹脂層上には、更に別の透明被覆樹脂層を積層してもよく、積層方法としてはコーティング加工法の他、カレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形したフィルム又はシートを、接着剤を介して、あるいは熱ラミネートにより積層する方法等が例示される。透明被覆樹脂層の被覆量は有色基材の質量に対して、50〜400質量%(有色基材の質量を100とした場合、透明被覆樹脂層の質量は50〜400)であることが好ましい。被覆量が50質量%未満では、透明被覆樹脂層が有色基材の両面を覆うことができず、表面に露出したマルチフィラメント糸条の凹凸により光が散乱し、透視性のある可撓性複合シートが得られないことがあり、また、高周波ウェルダーによる縫製が不可能となることがある。400質量%を超えると、有色基材に対して透明被覆樹脂層が過剰となり、材料の強度に対する質量のバランスが悪くなって、高周波ウェルダーによって縫製したシートを転調した場合に、展張部分が破壊されやすくなる不都合を生じる事がある。また、本発明の可撓性複合シートにおいて、透明被覆樹脂層の質量は、600g/m以下であることが好ましい。透明被覆樹脂層の質量を600g/m以下とすることで、例えばガラスマルチフィラメント糸条からなる有色基材を用いた場合に、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において、不燃材料に求められる総発熱量8MJ/m以下、発熱速度200kW/m以下を達成することができる。
透明被覆樹脂層は、透明性を有し、常温で柔軟性を有する熱可塑性樹脂から形成される。この様な樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニリデン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂があげられ、これらから単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。これらの熱可塑性樹脂には、柔軟性を付与する為に可塑剤を添加して用いても良い。熱可塑性樹脂の内、塩化ビニル樹脂及び塩化ビニル系共重合体樹脂などのポリ塩化ビニル系樹脂は、透明性が高く、可塑剤やその他の添加物を加えることで、柔軟性を付与したり、自己消火性を付与する事が容易であり、高周波ウェルダーによる縫製性に優れることから特に好ましく用いられる。具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して可塑剤を40〜250質量部含む樹脂組成物を用いた軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からなる透明被覆樹脂層を形成する事が好ましい。可塑剤量が40質量部未満であると、得られる可撓性複合シートの柔軟性が不足し、折り曲げにより白く濁ってしまう事がある。250質量部を超えると可塑剤が移行しやすくなり、透明被覆樹脂層の屈折率が変化して基材との界面で光の散乱を生じて、透視性が損なわれることがあり、また、透明被覆樹脂層表面に移行した可塑剤により汚れが付着し易くなることがある。
本発明において、可塑剤としては、リン酸トリクレジル、リン酸クレジルフェニルなどの芳香族リン酸エステル系可塑剤、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニルなどのフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニルなどの脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸エステル、その他、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤など、従来公知の可塑剤から適宜選択した1種類を単独で、または2種類以上を併用して、用いる事ができる。これらの可塑剤のうち特に芳香族リン酸エステル系可塑剤は、屈折率が高いため、屈折率の低い樹脂に添加して組成物の屈折率を調整し、有色基材と透明被覆樹脂層の屈折率を近似させる事ができ、更に、組成物に自己消火性を付与する事ができるため好ましく用いられる。
透明被覆樹脂層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、上述した可塑剤以外の添加剤を含んでいても良い。含まれる添加剤としては例えば、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、接着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤などが挙げられる。無機金属化合物粒子からなる難燃剤や充填剤を用いる場合は、透明被覆樹脂層の透明性に影響の少ない、平均粒子径100nm以下の粒子を用いる事が好ましく、平均粒子径50nm以下の粒子がより好ましい。平均粒子径が100nmを超える粒子を含むと、樹脂と粒子の界面で光の散乱を生じて白くにごって見え、可撓性複合シートの透視性が損なわれることがある。
本発明において、表面の傷つき、汚れの付着、各種添加剤の表面への移行、などを防止する目的で、可撓性複合シートの最外層の一方の面もしくは両面上に、少なくとも1層の保護樹脂層を有してもよい。保護樹脂層を形成する樹脂としては、透明被覆樹脂層の透光性を損なわず極度の隠蔽性を伴わないものであれば特に限定はなく、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を塗布して形成した塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの等から適宜選んで用いることができる。また、透明被覆樹脂層と防汚層との間には、接着性を付与するための接着層、光触媒による樹脂の分解を妨げるための防護層、透明被覆樹脂層に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等が形成されていてもよい。
本発明の可撓性複合シートにおいて、有色基材と透明被覆樹脂層の波長550nmにおける屈折率の差は0.03以下であり、0.02以下であることがより好ましい。屈折率の差が0.03を超えると、基材と透明被覆樹脂層との界面の光散乱により、得られるシートの透視性が不充分となる事がある。
本発明の可撓性複合シートの全光線透過率(JISK7375)は、20〜70%である事が好ましい。全光線透過率が20%未満では、得られるシートの透視性が得にくくなることがあり、特にシートによって隔てられた区画の明るさに差がある場合、明るい側から暗い側への視認性が不充分となることがある。全光線透過率が70%を超える場合、有色基材と透明被覆樹脂層の色分散(屈折率の波長による変化)が同じであれば、視認性に悪影響は無い。しかし、実際には同じ色分散となる組み合わせを得ることは困難であるため、全光線透過率が70%を超えると、波長の異なる光がそれぞれの屈折率に応じて異なる方向に屈折して虹彩が目立ち、シートの向こう側の視認性が損なわれることがある。
次に本発明の可撓性複合シートを、図を用いて説明する。図1は、本発明の可撓性複合シートの一例を示す図であり、有色基材(2)として原着マルチフィラメント糸条(3−1)からなる充実率95〜99%の編織物(2−1、図1では平織布)を含み、その両面に透明被覆樹脂層(4)が形成されている。透明被覆樹脂層は、図1の丸で囲った拡大部分に示した様に、原着マルチフィラメント糸条のフィラメント単糸(3−1−1)の隙間を充填して含浸している。有色基材の明度(JISZ8721)が8以下であり、透明被覆樹脂層と原着マルチフィラメント糸条の屈折率差が0.03以下である事により、透明被覆樹脂層と原着マルチフィラメント糸条の界面における光の散乱を抑制することができ、有色基材の明度(JISZ8721)が4以上であることで、透視性を損なわない程度の透光性を確保することができる。また、有色基材の充実率が95〜99%であることにより、可撓性複合シートの表面凹凸が抑えられ、ゆがみの少ないクリアな透視性を得ることができる。図2は、本発明の可撓性複合シートの別の例を示す図であり、有色基材(2)として無色編織物が着色樹脂で含浸被覆されてなる充実率95〜99%の樹脂複合編織物(2−2、図1では平織布)を含み、その両面に透明被覆樹脂層(4)が形成されている。透明被覆樹脂層は、図2の丸で囲った拡大部分に示した様に、マルチフィラメント糸条のフィラメント単糸(3−2−1)の隙間を充填して含浸している。有色基材の明度(JISZ8721)が8以下であり、透明被覆樹脂層と原着マルチフィラメント糸条の屈折率差が0.03以下である事により、透明被覆樹脂層と原着マルチフィラメント糸条の界面における光の散乱を抑制することができ、有色基材の明度(JISZ8721)が4以上であることで、透視性を損なわない程度の透光性を確保することができる。また、有色基材の充実率が95〜99%であることにより、可撓性複合シートの表面凹凸が抑えられ、ゆがみの少ないクリアな透視性を得ることができる。
本発明を下記実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されるものではない。
実施例・比較例において、有色基材の明度および彩度、可撓性複合シートの透視性および不燃性は以下の様に評価した。
<有色基材の明度>
JISZ8721.6(2)「標準色票との直接比較により定める方法」により評価。
(JISZ8723.6.3に定める人工昼光D65照明によるブースでの色比較)
<可撓性複合シートの透視性>
白色コピー用紙に、MSゴシック体フォントを使用し、たて150mm、よこ130mmの大きさで黒字印刷した識別サンプルとして、文字「囲」と文字「回」の2種類作成した。次に、実施例・比較例で作成した可撓性複合シートを間仕切りとして用いて、屋内で2m四方のペースを区切り、その内部中心に人(観察者)を配置した。観察者の対面する可撓性複合シートの反対側で、観察者の目線と同じ高さ(地上から1.6m)に識別サンプルを垂直に配置し、可撓性複合シートと識別サンプルの距離を変えながら「囲」と「回」の違いを識別可能な距離を測定し、以下の様に評価した。
1:3m以上で識別可能であり、透視性に優れる
2:1mを超えて識別できるが、3mでは識別できず、透視性が不充分
3:1mで識別できず、透視性に劣る
なお、可撓性複合シートで区切られた内部と外側の、地上から1.6mの高さにおける照度(LX)の条件を以下の様に変えながら、それぞれ評価した。
条件a:内側100LX、外側500LX(暗い側から明るい側への透視性)
条件b:内側500LX、外側500LX(同じ明るさの場合の透視性)
条件c:内側500LX、外側100LX(明るい側から暗い側への透視性)
<不燃性>
ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法により評価。
輻射電気ヒーターによる50kW/mの輻射熱を産業資材構造物に20分間照射し、
この発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定した。
(A)総発熱量:8MJ/m以下のものを適合とした。
(B)発熱速度:10秒以上継続して200kW/mを超えないものを適合とした。
<全光線透過率>
JISK7375に従い全光線透過率を測定した。
<高周波ウェルダー融着性>
実施例・比較例で作成した2枚の可撓性複合シート供試片の端末を8cm幅で直線上に重ね合わせ、8cm×30cmのウェルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凸部高さ0.5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凹部深さ0.5mm)を装着した高周波ウェルダー融着機(山本ビニター((株)製YF−7000型:出力7KW)を用いて、下記条件で可撓性複合シートの高周波ウェルダー融着接合を行い、以下の様に評価した。
※ウェルダー融着条件:融着時間5秒、冷却時間5秒、陽極電流0.8A、
ウェルドバー温度40〜50℃
評価
1:融着可能
2:融着不可
[実施例1]
<有色基材>
フィラメント直径9μm/750dtex、撚り回数60回/mのガラス(Eガラス)マルチフィラメント糸条を、織密度たて35本/インチ よこ28本/インチに製織した平織布を、開繊処理してからヒートクリーニングし、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランでシランカップリング処理を行った後、固形分10質量%のアクリル樹脂溶液に、アクリル樹脂固形分100質量部に対して、カーボンブラック微粒子(平均粒子径15nm)が3質量部となるように分散させた着色樹脂溶液を含浸被覆し、乾燥することで、フィラメント表面にカーボンブラック微粒子を固着し、有色基材−1を得た。着色樹脂固形分として3g/m付着し、有色基材−1は充実率95%、質量165g/m、波長550nmにおける屈折率1.556、明度5.0であった。
<透明被覆樹脂層>
下記配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を混合撹拌し、1時間静置脱泡して樹脂組成物液1を得た。次に樹脂組成物液1のバス中に有色基材−1を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾することで、マルチフィラメント糸条内部に樹脂組成物液1を含浸させ、これを150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理した。ついで、樹脂組成物液1が含浸した有色基材−1の一方の面に、ドクターナイフコート法により樹脂組成物液1をコーティングし、150℃で1分間ゲル化した後、もう一方の面にもコーティングし、190℃で1分間熱処理を行い、さらにこれに鏡面エンボス処理を施した。これにより、マルチフィラメント糸条内部に含浸し、更に有色基材−1の両面を覆う状態に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなる透明被覆樹脂層が形成された、請求項1の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量は280g/m(有色基材−1に対して169質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材−1との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合1)軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
*可塑剤量として合計70質量部
[実施例2]
<有色基材>
織密度たて36本/インチ よこ29本/インチに製織した平織布を用いた以外は有色基材1と同様にして有色基材−2を得た。有色基材−2は充実率99%、質量175g/m、波長550nmにおける屈折率1.556、明度5.0であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、実施例2の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量290g/m(有色基材−2に対して166質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材−2との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
[実施例3]
<有色基材>
着色樹脂溶液のアクリル樹脂固形分100質量部に対して、カーボンブラック微粒子(平均粒子径15nm)を1質量部とした以外は有色基材−1と同様にして、有色基材−3を得た。有色基材−3は充実率95%、質量165g/m、 波長550nmにおける屈折率1.556、明度7.0であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、実施例3の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量280g/m(有色基材−3に対して170質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材−3との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
[実施例4]
<有色基材>
実施例1と同じ有色基材−1を用いた。
<透明被覆樹脂層>
配合1の代わりに、下記配合2の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、実施例4の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量280g/m(有色基材−1に対して170質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.533、有色基材−1との屈折率差は0.023であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合2)軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 90質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
*可塑剤量として合計150質量部
[実施例5]
<有色基材>
平均粒子径15nmのカーボンブラック微粒子を0.1質量%含んで紡糸した、555dtex(500デニール)、撚り回数80回/mのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)マルチフィラメント糸条を、織密度たて23本/インチ よこ22本/インチに製織した平織布を開繊処理し、有色基材−5を得た。有色基材−5の充実率96%、質量92g/m、波長550nmにおける屈折率1.546(ただし有色基材−5の平面に対して垂直方向の屈折率)、明度5.0であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、実施例5の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量260g/m(有色基材−5に対して283質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材−5との屈折率差は0.002であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
実施例1〜5の可撓性複合シートは、充実率が95〜99%で明度(JISZ8721)が4〜8の範囲の有色基材を有し、波長550nmにおける有色基材と透明被覆樹脂との屈折率差が0.03以下である。いずれのシートも、有色基材と透明被覆樹脂の界面での光散乱はほとんど確認されず、色分散(波長による屈折率の変化)による虹彩も生じなかった。これにより、観察者側と識別サンプル側の明るさの関係がいずれの条件(条件1〜3)であっても、それぞれ透視性に優れるシートであった。また、ポリ塩化ビニル樹脂組成物から透明被覆樹脂層を形成したことで、いずれも高周波ウェルダーによる縫製が可能であった。更に、実施例1〜4の可撓性複合シートは、有色基材をガラスマルチフィラメント糸条より構成したことにより、いずれも不燃性に適合していた。
[比較例1]
<基材>
着色樹脂溶液を無色編織物に含浸被覆しなかった以外は、実施例1と同様にして、無着色の基材比−1を得た。この基材の充実率95%、質量162g/m、 波長550nmにおける屈折率1.556、明度9.5であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例4と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、比較例1の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量280g/m(基材比−1に対して173質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.533、有色基材との屈折率差は0.023であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
比較例1の可撓性複合シートは、波長550nmにおける基材と透明被覆樹脂との屈折率差は0.03以下であるが、基材の明度が8を超えているため基材と透明被覆樹脂との界面で光散乱を生じ、また、有色基材と透明被覆樹脂層の色分散(波長による屈折率の変化)の違いによる虹彩状の散乱も確認され、基材の明度が5.0であることを除けば同じ条件である実施例4の可撓性複合シートと比較して透視性に劣るシートであった。
[比較例2]
<基材>
比較例1と同じ無着色の基材比−1を用いた。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、比較例2の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量280g/m(基材比−1に対して173質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、無着色の基材比−1との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表2に示す。
比較例2の可撓性複合シートは、波長550nmにおける基材と透明被覆樹脂との屈折率差が0.008であり、比較例1より屈折率差が小さかった為、比較例1に比べれば透視性に改善が見られるものの、基布の明度が5.0であることを除けば同じ条件である実施例1の可撓性複合シートより劣っており、透視性が不充分なシートであった。また、屈折率差が比較例2より大きい実施例4の可撓性複合シートとの比較でも、基布比−1の明度が高いことで、比較例2の透視性は劣っていた。
[比較例3]
<有色基材>
着色樹脂溶液のアクリル樹脂固形分100質量部に対して、カーボンブラック微粒子(平均粒子径15nm)を5質量部とした以外は有色基材−1と同様にして有色基材比−3を得た。有色基材比−3の充実率95%、質量165g/m、 波長550nmにおける屈折率1.556、明度2.5であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、比較例3の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量280g/m(基材比−3に対して170質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表1に示す。
比較例3の可撓性複合シートは有色基材比−3の明度が2.5と低く、有色基材と透明被覆樹脂との界面における光散乱や虹彩はほとんど確認されなかった。そのため、観察者のいる場所よりシートの向こう側の方が明るい状況(条件a)では文字を識別する事ができ、透視性を有していた。しかし、観察者のいる場所よりシートの向こう側の方が暗い状況(条件c)では内部が見え難く、透視性に劣っていた。
[比較例4]
<有色基材>
織密度たて33本/インチ よこ26本/インチに製織した平織布を用いた以外は有色基材−3と同様にして有色基材比−4を得た。有色基材比−4の充実率83%、質量144g/m、波長550nmにおける屈折率1.556、明度7.0であった。
<透明被覆樹脂層>
実施例1と同様にして透明被覆樹脂層を形成し、比較例3の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量275g/m(基材比−4に対して191質量%)であり、波長550nmにおける屈折率1.548、有色基材との屈折率差は0.008であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表2に示す。
比較例4の可撓性複合シートは、有色基材比−4の充実率が83%で、マルチフィラメント糸条間の隙間が大きいため、透明被覆樹脂層を形成した後に凹凸を生じ、透視像が歪んでしまい、透視性が不充分なシートであった。
[比較例5]
<有色基材>
実施例1と同じ有色基材−1を用いた。
<透明被覆樹脂層>
下記配合3のシリコーンゴム加工液のバス中に有色基材−1を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾することで、マルチフィラメント糸条内部にシリコーンゴム加工液を含浸させ、ついで、シリコーンゴム加工液が含浸した有色基材−1の一方の面に、ドクターナイフコート法によりシリコーンゴム加工液をコーティングし、110℃で5分間熱処理後、もう一方の面にも同様にコーティングを行い、110℃で15分間熱処理を行った。これにより、シリコーンゴム加工液がマルチフィラメント糸条内部に含浸し、更に有色基材−1の両面を覆う状態に透明被覆樹脂層形成された、比較例4の可撓性複合シートを得た。透明被覆樹脂層の付着量240g/mであり、波長550nmにおける屈折率1.500、有色基材との屈折率差は0.056であった。この可撓性複合シートを各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合3)シリコーンゴム加工液
CY52−1162(東レダウコーニングシリコーン(株)社製) 100質量部
比較例4の可撓性複合シートは、有色基材の明度が5.0であり、充実率も95%と本発明の要件を満たしているが、屈折率差が0.03を超えているため、有色基材と透明被覆樹脂層の界面で光散乱を生じ、透視性の劣るシートであった。
本発明の可撓性複合シートは、柔軟性に優れ、高い強度・耐久性を有し、シートを通して向こう側を見通することができる透視性を有する。そのため、間仕切り、シートシャッターなどに用いることで、人や車両が出入りする際の出会い頭の事故を防いで、作業環境の安全性を確保することができる。特に、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維などの無機繊維からなるマルチフィラメント糸条を基材に用い、軟質塩化ビニル樹脂組成物から透明被覆樹脂層を形成した可撓性複合シートは、高周波ウェルダーによる縫製が可能で、不燃性を有することができるため、防火性を要求される区画で用いる間仕切り、シートシャッター、養生シート等の本体或いはそれらの一部に形成するのぞき窓、ロールブラインド、および、防煙垂壁として、好適に用いることができる。
1:可撓性複合シート
2:有色基材
2-1:原着マルチフィラメント糸条からなる編織物
2-2:無色編織物が着色樹脂で含浸被覆されてなる樹脂複合編織物
3-1:原着マルチフィラメント糸条
3-1-1:着色剤を添加した組成物から紡糸したフィラメント単糸
3-2:着色樹脂で含浸被覆されたマルチフィラメント糸条
3-2-1:表面に顔料を樹脂で固着させたフィラメント単糸
4:透明被覆樹脂層

Claims (3)

  1. 有色基材の両面に透明被覆樹脂層が形成された光透過性膜材であって、前記有色基材が原着マルチフィラメント糸条からなる充実率95〜99%の編織物、または樹脂に顔料を分散させた着色樹脂を無着色のマルチフィラメントからなる編織物に含浸被覆して、フィラメント単糸表面に顔料を樹脂で固着させてなる充実率95〜99%の樹脂複合編織物で構成され、
    前記透明被覆樹脂層は、有色基材のマルチフィラメント糸条内部にもフィラメント単糸の隙間を充填して含浸し、
    かつ、前記有色基材の明度(JISZ8721)4〜8を有し、前記有色基材のマルチフィラメント糸条と前記透明被覆樹脂層との屈折率差が0.03以内であることを特徴とする、可撓性複合シート。
  2. 前記透明被覆樹脂層が、ポリ塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含む軟質塩化ビニル樹脂組成物からなり、前記軟質塩化ビニル樹脂組成物において、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して前記可塑剤を40〜250質量部含み、樹脂透明被覆樹脂層の被覆量が、前記有色基材の質量に対して50〜400質量%である、請求項1に記載の可撓性複合シート。
  3. 前記マルチフィラメント糸条がガラス繊維、シリカ繊維、およびシリカ−アルミナ繊維から選ばれた少なくとも1種からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において、前記光透過性膜材に対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/mで照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/mを超えないことを特徴とする、請求項1または2に記載の可撓性複合シート。
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