JP2016016545A - 遮熱性、保温性を有する高透光性膜材 - Google Patents

遮熱性、保温性を有する高透光性膜材 Download PDF

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Abstract

【課題】高い可視光透過性を有し、しかも、近赤外線を遮蔽することによる遮熱性と、遠赤外線を遮蔽することによる保温性を、共に有する膜材の提供。【解決手段】遮熱性樹脂層2と、1層以上の保温性樹脂層3とを有し、全体として可視光透過率10〜50%(JIS Z8722.5.4(条件g))を有する多層構造体であって、遮熱性樹脂層2が近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子2-1を含み、保温性樹脂層3が、赤外吸収スペクトルにおいて波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する遠赤外線吸収性無機充填剤3-1を、5〜50質量%含む遮熱性、保温性を有する高透光性膜材1。【選択図】図1

Description

本発明は、高い透光性(可視光透過性)を求められる用途に好適に用いる事ができ、しかも、遮熱性および保温性を共に有する膜材に関するものである。さらに詳しく述べるならば、高透光性を有しながら、太陽放射に含まれる近赤外線を遮蔽することができ、これを用いた膜構造物内部の過度の温度上昇を抑制して夏季の冷房効率を向上させ、しかも、遠赤外線を吸収することで、膜構造物内部の熱が放射冷却によって失われるのを抑制して、冬季の暖房効率を向上させることのできる膜材に関するものである。
合成樹脂を用いた可撓性の膜材は、軽量、フレキシブルで組立や施工が容易であり、屋外での耐久性が高いなどの理由から、テント倉庫、イベント向けテント、作業用テント、農園芸ハウス、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場など、膜構造物向けとして、広く用いられている。また、特に高可視光透過性の膜材は、上述の膜構造物だけでなく、建造物の屋根部全体または一部を構成したり、出入り口のシートシャッターに用いられるなど、更に用途が広がっている。しかし、従来の膜材は太陽放射に含まれる近赤外線の透過が大きく、例えばイベント向けテントの場合、夏場の強い陽射しの下では内部の温度が極度に高くなるため、冷房無しでは内部で過ごすことは困難であり、また、冷房を用いた場合に、外部から透過する近赤外線によって、冷房の効率が悪くなる問題があった。特に、日中の外光を取り入れるため高可視光透過性の膜材を用いた膜構造物では、近赤外線の透過もより大きくなり、夏季の冷房にかかるエネルギーコストが大きくなる問題を有していた。
膜材の可視光透過性を阻害せずに近赤外線の透過を抑制して遮熱性を得る試みとしては、屈折率1.8以上、粒子径分布0.3〜3.0μm、アスペクト比1.0〜3.0の不定形無機化合物粒子を用いる方法(例えば特許文献1参照)、タングステン酸化物粒子を用いる方法(例えば特許文献2参照)、六ホウ化物微粒子を用いる方法(例えば特許文献3参照)、および、干渉雲母粒子を用いる方法(例えば特許文献4参照)などが知られており、これらの方法によれば、高い可視光透過性と遮熱性を併せ持つ膜材を得る事ができる。しかしながら、これらの方法では、遠赤外線の遮蔽については考慮されておらず、冬季に暖房を用いた際に、膜構造物内部の熱が放射冷却によって失われやすく、暖房にかかるエネルギーコストが大きくなる問題が残されていた。
膜材を構成する樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂を使用した場合、樹脂自体がある程度遠赤外線を吸収するため、樹脂層が有彩色、あるいは黒色の顔料を含む場合には、膜構造物内部から放射される熱(遠赤外線)を吸収して保温性を示す事が期待できる。しかし、これらの顔料を含まない高透光性膜材では、遠赤外線が充分に吸収されず、充分な保温性が得られないことがあった。膜材の可視光透過性を阻害せずに遠赤外線を遮蔽して、保温性を向上させる試みとしては、樹脂にハイドロタルサイト類やリチウム−アルミニウム複合水酸化物炭酸塩など、遠赤外線を吸収する充填剤を添加することで、内部から放射される遠赤外線を吸収して保温性を向上させる方法(例えば特許文献5および6参照)が知られている。これらの添加物は、少量の添加であれば可視光透過性をさほど低下させないが、少量では遠赤外線の吸収性向上が不充分であり、遠赤外線吸収性を向上させるために多量に加えると、可視光透過性が大きく損なわれたり、これらを含む樹脂層が剛直となり、膜材の可撓性が損なわれることがあった。
また、金属薄膜を透明高屈折率薄膜ではさんだ三層構造物により近〜遠赤外線にかけて反射する層を形成する方法によっても、可視光透過性の低下を抑えつつ遠赤外線を反射する事ができ、放射による冷却を抑制させることができ、しかも、近赤外線を反射することで、遮熱性も同時に付与される事が期待できる。しかしながら、金属薄膜や透明高屈折率薄膜は、蒸着法やスパッタリング法などにより形成されるものであるため、これらの方法は高真空に減圧する工程を要するため、大がかりな装置を必要とする問題があり、また、添加剤を多量に含む肉厚の樹脂製膜材に、蒸着やスパッタリングを行うのは技術的に困難であり、しかも生産性に劣る問題を有していた。
以上述べてきたように、高い可視光透過性を有し、しかも、遮熱性および保温性を共に有する膜材はこれまで提案されていない。
特開2007−55177号公報 特開平11−140201号公報 特開2008−101111号公報 特開2010−99959号公報 特開平05−112725号公報 特開平09−142835号公報 特開昭51−66841号公報
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、高い可視光透過性を有し、しかも、近赤外線を遮蔽することによる遮熱性と、遠赤外線を遮蔽することによる保温性を、共に有する膜材を提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題を解決する為に検討を行った結果、遠赤外線を吸収する充填剤を添加して樹脂の保温性を向上させる方法に関して、赤外吸収スペクトルにおいて波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する遠赤外線吸収性無機充填剤を用いることで、特に優れた保温性を有する樹脂層を得ことができ、これを近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子を含む遮熱性樹脂層と組み合わせることで、可視光透過性、遮熱性、保温性を併せ持った膜材を得る事ができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、遮熱性樹脂層と、1層以上の保温性樹脂層とを有し、全体として可視光透過率10〜50%(JIS Z8722.5.4(条件g))を有する多層構造体であって、前記遮熱性樹脂層が近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子を含み、前記保温性樹脂層が、赤外吸収スペクトルにおいて波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する遠赤外線吸収性無機充填剤を、5〜50質量%含むことを特徴とする。
本発明の高透光性膜材において、前記遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子が、干渉雲母粒子、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、スズドープ酸化インジウム粒子、インジウムドープ酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、タングステン酸化物粒子、複合タングステン酸化物粒子、および、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)粒子から選ばれる一種以上であることが好ましい。
本発明の高透光性膜材において、前記遠赤外線吸収性無機充填剤が、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、および石英ガラス、から選ばれた一種以上からなるガラス粉末、または、中実ガラスビーズを含むことが好ましい。
本発明の高透光性膜材において、前記多層構造体が、繊維製織布を基布として含むことが好ましい。
本発明の高透光性膜材において、前記多層構造体が、断熱性樹脂層を含み、前記断熱性樹脂層が、シラスバルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン、およびジルコニアバルーンから選ばれる1種以上の無機中空粒子を含むことが好ましい。
本発明によれば、高い可視光透過性を有し、しかも、遮熱性および保温性を共に有する膜材を得る事が可能となる。本発明の膜材は、可視光の透過性が高い為、これを用いて膜構造物を構成すれば、日中に外光を取り入れて明るい空間を形成する事が可能となり、夏季の遮熱性と冬季の保温性を有する為、1年を通して快適な空間を提供し、空調にかかるエネルギーコストを低減することができる。
本発明の高透光性膜材の一例を示す断面図 本発明の高透光性膜材の一例を示す断面図 本発明の高透光性膜材の一例を示す断面図 本発明の高透光性膜材の一例を示す断面図 本発明の高透光性膜材の一例を示す断面図 実施例・比較例において、遮熱性および昇温性の評価に用いた小型テント を示す図
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、遮熱性樹脂層と、1層以上の保温性樹脂層とを有し、全体として可視光透過率10〜50%(JIS Z8722.5.4(条件g))を有する多層構造体である。
本発明において遮熱性樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂と、近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子とを含み、これによって可視光の透過性に優れ、太陽放射に含まれる近赤外線を散乱、或いは吸収によって遮蔽して遮熱性を示す。遮熱性樹脂層に含まれる無機粒子としては、800nm以上2500nm未満の近赤外線領域の光を散乱または吸収するものであり、かつ、380nm以上800nm未満の可視領域の光に対して散乱または吸収が少ないものである。
遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性の無機粒子としては、例えば、薄片状の雲母粒子の表面が酸化チタン薄膜、もしくは酸化チタン/酸化ケイ素/酸化チタンの3層からなる複層薄膜で被覆された干渉雲母粒子が好ましく用いられる。干渉雲母粒子は、雲母粒子の表面を高屈折率の薄膜で被覆することで、干渉により特定の波長の反射を高めた顔料であり、本発明においては特に波長800nm〜2500nmの近赤外領域に少なくとも一つの反射ピークを有する干渉雲母粒子が好ましく用いられる。
遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性の無機粒子としてはまた、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、および酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子の様な高屈折率物資からなる粒子も好ましく用いられる。これらの平均粒子径としては0.5〜2μmが好ましく、0.7〜1.5μmがより好ましい。平均粒子径が2μmを超えると遮熱性が充分に得られなくなる事があり、一方、平均粒子径が0.5μm未満では可視光を散乱して可視光透過性が低下することがある。
遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性の無機粒子としてはまた、スズドープ酸化インジウム粒子、インジウムドープ酸化スズ粒子、およびアンチモンドープ酸化スズ粒子も好ましく用いられる。これらの平均粒子径は0.01〜0.25μmであることが好ましく、0.02〜0.15μmである事がより好ましい。平均粒子径が0.25μmを超えると、可視光透過率が低くなることがあり、一方、平均粒子径が0.01μmより小さな粒子は樹脂中への均一分散が困難となったり、可視光透過率が低くなることがある。
遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線吸収性の無機粒子としては、タングステン酸化物および、タングステン複合酸化物からなる粒子も好ましく用いられる。ここでタングステン酸化物は、WyOzで表記したとき(ただしW:タングステン、O:酸素)、2.2≦z/y<3.0であることが好ましく、三酸化タングステン(WO)は含まれない。複合タングステン酸化物は、式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Csの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表され、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3であることが好ましい。これらの粒子の平均粒子径は0.001〜1μmである事が好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。粒子径が1μmを越えると粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、可視光領域の透過率が低下することがある。粒子径が小さいほど隠蔽性が低くなり、0.2μmであれば可視光透過率の高い樹脂層を得ることができるが、0.001μm未満の粒子は入手が困難であり、また樹脂中への均一分散が困難である。
遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線吸収性の無機粒子としてはまた、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)からなる粒子も好ましく用いられる。6ホウ化物粒子の平均粒子径は0.001〜0.8μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。粒子径が0.001μm未満では樹脂への均一な分散が困難となることがあり、0.8μmを超えると、可視光透過率が大きく低下することがある。
本発明において遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子としては、上述の[0019]〜[0023]に記載した無機粒子から1種、或いは2種以上を選択して用いることができる。遮熱性樹脂層における、近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子の含有量は、0.2〜20質量%である事が好ましく、0.5〜15質量%である事がより好ましい。近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子の含有量が20質量%を超えると可視光透過率が低下する事があり、0.2質量%未満では遮熱性が得られない事がある。これらの無機粒子は、光触媒活性を抑制するため、あるいは樹脂への分散性を向上させるために、表面をシリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、ハイドロキシアパタイト、および、高級脂肪酸などで被覆したものを用いても良い。
本発明において保温性樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂と、赤外吸収スペクトルにおいて波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する遠赤外線吸収性無機充填剤とを含み、保温性樹脂層全体の質量に対して遠赤外線吸収性無機充填剤を5〜50質量%含む層であり、本発明の多層構造体の1層以上を構成するものである。保温性樹脂層が遠赤外線吸収性無機充填剤を含むことで、有彩色や黒色の顔料を加えなくても樹脂の遠赤外線吸収性が向上して膜材が保温性を示す事ができ、例えば、本発明の高透光性膜材を用いてイベント用のテントを構成した場合、冬季に暖房を用いた際に、テント内部の熱が放射冷却によって失われるのを抑制し、暖房にかかるエネルギーコストを削減することができる。吸収ピークが8〜11μmの範囲にない無機充填剤を用いた場合、保温性が充分に得られない事がある。また、保温性樹脂層に含まれる遠赤外線吸収性無機充填剤の量が5質量%未満では保温性が充分に得られない事があり、50質量%を超えると樹脂の物性および可視光透過性が低下し、さらに、保温性樹脂層を形成する際の加工性が低下することがある。
本発明において、保温性樹脂層に含まれる遠赤外線吸収性無機充填剤としては、波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する事に加え、可視光領域の吸収が少ないものであることが好ましく、この条件を満たす無機物質であれば、特に限定無く用いる事ができるが、本発明においては特にソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、および、石英ガラスが好ましく用いられる。これらの材料は、可視領域の光に吸収が少ないだけでなく、波長589.3nmの光に対して1.45〜1.52の屈折率を有し、多くの樹脂との間で屈折率差が小さいため、これを含む樹脂層において可視光の散乱が少なくなり、可視光透過率を向上させることができる。充填剤の形態としては、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、および、石英ガラスを原料とした粉末、または、中実ビーズが好ましい。また、遠赤外線吸収性無機充填剤は、樹脂への分散性、あるいは接着性を向上させるために、表面をシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などで処理したものを用いても良い。遠赤外線吸収性無機充填剤の粒子径について特に限定は無いが、分散性、加工性、保温性樹脂層の樹脂物性に及ぼす影響などを考慮して、平均粒子径が1〜200μmであることが好ましい。
本発明において、遮熱性樹脂層および保温性樹脂層に用いる樹脂としては、透明性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定は無く、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素系樹脂(PTFE,PVDF,PVFなど)、およびフッ素含有共重合体樹脂(ETFE,FEP,PFAなど)など、可視光透過率が高く可撓性のある熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。遮熱性樹脂層および保温性樹脂層は、同じ樹脂から形成されてもよく、それぞれ異なる樹脂から形成されてもよい。
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材において、この膜材を用いて膜構造物を構成する際に、屋外に向けて配される面をおもて面、屋内に向けて配される面を裏面とした場合、遮熱性樹脂層は、保温性樹脂層よりもおもて面側に配される。遮熱性樹脂層および保温性樹脂層の一方あるいは両方が、複数層形成される場合には、少なくとも1層の遮熱性樹脂層は、すべての保温性樹脂層よりもおもて面側に配されることが好ましい。一方、遮熱性樹脂層および保温性樹脂層の一方あるいは両方が、複数層形成される場合、少なくとも1層の保温性樹脂層は、すべての遮熱性樹脂層よりも裏面側に配されることが好ましい。
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、繊維製織布を基布として含む事が好ましい。繊維製織布を含むことで、膜材に強度と耐久性を付与することができ、例えばテント倉庫、イベント向けテントなど、大型の膜構造物への応用が可能となる。繊維製織布に用いられる素材としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよく、その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。糸条の繊度については特に限定はなく、高透光性膜材に求められる強度に応じて、適宜選択することができる。本発明に使用する繊維製織布は、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる膜材の縦緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。これら繊維製織布は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の織布(空隙率は最大80%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状織布(空隙率5%未満で糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、さらに、断熱性樹脂層を含んでも良い。本発明において断熱性樹脂層は、少なくとも1層の遮熱性樹脂層と、少なくとも1層の保温性樹脂層の間に形成される。高透光性膜材が断熱性樹脂層を含むことで、膜材の遮熱性および保温性がより向上する。本発明の断熱性樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂と無機中空粒子を含む層である。本発明の断熱性樹脂層において無機中空粒子としては、シラスバルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン、およびジルコニアバルーンが好ましく用いられ、これらから適宜選択した1種、或いは2種以上を用いる事ができる。無機中空粒子の粒子径は、粒子径の範囲として5〜500μmであることが好ましく、その全質量の内の50%以上が、10〜200μmの範囲に入る事が好ましい。無機中空粒子の嵩比重は0.25〜0.7g/cmである事が好ましい。嵩比重が0.25g/cm未満では、膜材の製造工程において無機中空粒子が破壊され易く、断熱性樹脂層を形成する効果が充分に得られなくなる事がある。嵩比重が0.7g/cmを超えると無機中空粒子を加えても断熱性が得られなくなる事がある。断熱性樹脂層における無機中空粒子の含有量は、5〜20質量%であることが好ましい。5質量%未満では、断熱性が得られない事があり、20質量%を超えると断熱性樹脂層の強度が低下し、層間剥離などを起こすことがあり、また、可視光透過率が大きく低下する事がある。断熱性樹脂層に用いる樹脂としては、透明性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定は無く、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素系樹脂(PTFE,PVDF,PVFなど)、およびフッ素含有共重合体樹脂(ETFE,FEP,PFAなど)など、可視光透過率が高く可撓性のある熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。断熱性樹脂層を形成する樹脂は、遮熱性樹脂層および保温性樹脂層のいずれか一方、或いは両方と、同じ樹脂であってもよく、それぞれとは異なる樹脂から形成されてもよい。
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、経時的な汚れの付着による遮熱性の低下を防止し、且つ美観を維持するために、遮熱性樹脂層上(おもて面側最外層)に少なくとも1層の防汚層を設けることが好ましい。防汚層は本発明の目的を阻害せず、極度の隠蔽性を伴わないものであれば、その形成方法及び素材に特に限定はなく、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選んで用いることができる。上述の防汚層と遮熱性樹脂層との間には、必要に応じて、防汚層と遮熱性樹脂層との接着性を付与するための接着層、光触媒による樹脂の分解を妨げるための保護層、遮熱層に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等が形成されていてもよい。また、本発明の高透光性膜材の、防汚層が形成された面とは反対の面に、防汚層との高周波加熱融着性及び熱風融着性を付与するための裏面接着層が形成されていても良い。あるいは、高透光性膜材をロール状に巻き取って保管している間に、裏面側の保温層に含まれる添加剤が、巻き重ねられた防汚層上に移行して防汚性が低下するのを防ぐために、保温性樹脂層上(裏面側最外層)に添加剤移行防止層が形成されていても良い。
本発明において、遮熱性樹脂層、保温性樹脂層、断熱性樹脂層、および防汚層は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、可塑剤、防炎可塑剤、防炎剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、接着剤などの添加剤を含んでも良い。
本発明において、遮熱性樹脂層、保温性樹脂層、断熱性樹脂層を形成する方法には特に限定はなく、従来公知の方法を用いる事ができる。例えばカレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法などによりシート(フィルム)状に形成したり、繊維製織布を基材として、加工液(ペーストゾル、樹脂溶液、樹脂分散液)を用いるディッピング加工(基材への両面加工)、及びコーティング加工(基材への片面加工、または両面加工)により形成する方法などを用いる事ができる。実際の工程として例えば、断熱性樹脂層形成用加工液を用いて、まずディッピング加工により繊維製織布の両面に断熱性樹脂層を形成し、次いで、カレンダー成型法により、シート状の遮熱性樹脂層、保温性樹脂層を形成し、次いで、両面に断熱性樹脂層を形成した繊維製織布の一方の面に遮熱性樹脂層を、もう一方の面に保温性樹脂層を熱圧着により積層する方法、などを例示することができる。
次に、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例及び比較例において、可視光透過率、遮熱性、保温性を、以下の方法により評価した。
(I)可視光透過率
実施例および比較例で作成した膜材について、JIS Z8722.5.4(条件g)に従い、可視光領域の透過率を、ミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて測定した。
(II)遮熱性
実施例および比較例で作成した膜材について、おもて面を外側として、屋根部および側壁部を覆った小型テント(図6参照)を作成し、周辺に高い建物の無い3階建てのビル屋上にテント屋根部の傾斜面の一方を真南に向けて、外部との空気の流通が無い状態に設置し、テント内部の床面(コンクリート)上には、厚さ20mmの黒色ゴムシートを敷き詰めた。次いで、夏季(8月)のテント内温度変化を継続的に測定・記録した。得られた測定データの記録から、二日間連続して(夜も含めて)快晴であった部分の記録を抜き出し、二日目の朝(8時)と正午(12時)のテント内温度を抽出して夏季の遮熱性を評価した。また、テント設置と同じビルの屋上において、床面から1.2mの高さに百葉箱を設置し、上記測定時の外気温も継続的に測定した。
テント仕様:
床面から軒先までの高さ 50cm
底面 たて×よこ 50cm×50cm
屋根部 傾斜角20° 床面から主棟までの高さ 59cm
温度測定位置 テント内中央部床面から、高さ30cmの位置で測定
設置場所 埼玉県草加市
(III)保温性
遮熱性評価に用いたのと同様にして設置した小型テントについて、冬季(1月)のテント内温度変化を継続的に測定し、記録した。得られた測定データの記録から、二日間連続して(夜も含めて)快晴であった部分の記録を抜き出し、二日目の正午(12時)、17時、および18時のテント内温度を抽出して、冬季の保温性を評価した。
なお、保温性評価を行った当日の日没は17時3分であった。
[実施例1]
基布1として、下記組織のポリエステルマルチフィラメント粗目状平織物を用いた。
(833dtex×833dtex)/(19本/インチ×20本/インチ)
目付:125g/m
この基布1を、下記配合1の下塗り層用ペーストポリ塩化ビニル樹脂組成物液中に浸漬して、基布に樹脂液を含浸し、マングルで絞り、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理し、下塗り層を形成した。基布に対する樹脂の付着量は125g/mであった。次に下記配合2の遮熱性樹脂層用組成物、および、下記配合3の保温性樹脂層用組成物を、それぞれ180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.26mmの遮熱性樹脂層用フィルム1−1、および、厚さ0.26mmの保温性樹脂層用フィルム1−2を得た。次に、得られたフィルム1−1、および、フィルム1−2の中間に、上述の下塗り層を形成した基布1を挿入し、熱圧着により積層して膜材を得た。なお、配合2の遮熱性樹脂層用組成物には近赤外線散乱性無機粒子として、波長1100nmに反射ピークを有する干渉雲母粒子を用い、配合3の保温性樹脂層用組成物には遠赤外線吸収性無機充填剤として、赤外吸収スペクトルにおいて9.9μmの吸収ピークを有する硼珪酸ガラスビーズを用いた。次に、この膜材のフィルム1−1上に、下記配合4の防汚層用樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて30g/mとなるよう塗布し、120℃で1分間乾燥して6g/mの防汚層を形成して、実施例1の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合1>下塗り層用樹脂液
ペーストポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
<配合2>遮熱性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
超微粒子酸化亜鉛(紫外線吸収剤) 1質量部
※アルミナで被覆した平均粒子径0.02μmの粒子
干渉雲母粒子(近赤外線散乱性無機粒子) 5質量部
※粒子径:25〜65μm,TiO/SiO/TiOによる複層薄膜被覆構造
を有し、薄膜被覆率:45質量%
<配合3>保温性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
硼珪酸ガラスビーズ(遠赤外線吸収性無機充填剤) 20質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径15μm:屈折率1.47
<配合4>防汚層用樹脂組成物
アクリル樹脂 20質量部
トルエン−MEK(50/50重量比)(希釈溶剤) 80質量部
[実施例2]
基布2として、下記組織のポリエステル短繊維紡績糸非粗目状平織物を用いた
(295.3dtex(20番手)双糸×295.3dtex(20番手)双糸)
(55本/インチ×48本/インチ)
目付:230g/m
この基布2を、下記配合5の保温性樹脂層用ペーストポリ塩化ビニル樹脂組成物液中、に浸漬して、基布に樹脂液を含浸し、マングルロールで圧搾し、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理し、基布2の内部に含浸してかつ両面を覆う160g/mの保温性樹脂層を形成した。次に、下記配合6の遮熱性樹脂層用組成物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.12mmの遮熱性樹脂層用フィルム2−1を得た。次に、先に保温性樹脂層を形成した基布2の一方の面上に、フィルム2−1を、熱圧着により積層して膜材を得た。なお、配合6の遮熱性樹脂層用組成物には近赤外線散乱性無機粒子として平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子を用い、配合5の保温性樹脂層用組成物には遠赤外線吸収性無機充填剤として、赤外吸収スペクトルにおいて9.4μmと11μmに吸収ピークを有するソーダ石灰ガラスビーズと、8.9μmの吸収ピークを有する石英ガラス粉末を用いた。次に、この膜材の2−1上に、配合4の防汚層用樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて30g/mとなるよう塗布し、120℃で1分間乾燥して6g/mの防汚層を形成して、実施例2の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合5>保温性樹脂層用組成物
ペーストポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
リクレジルフォスフェート(燐系防炎可塑剤) 20質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
ソーダ石灰ガラスビーズ(遠赤外線吸収性無機充填剤) 10質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径15μm:屈折率1.51
石英ガラス粉末(遠赤外線吸収性無機充填剤) 10質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径10μm:屈折率1.46
<配合6>遮熱性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
超微粒子酸化亜鉛(紫外線吸収剤) 1質量部
※アルミナで被覆した平均粒子径0.02μmの粒子
酸化チタン(近赤外線散乱性無機粒子) 20質量部
※シリカで被覆した平均粒子径1.0μmの粒子
[実施例3]
配合2の代わりに下記配合7を用いた他は、実施例1と同様にして実施例3の膜材を得た。配合7の遮熱性樹脂層用組成物において近赤外線散乱性無機粒子として、スズドープ酸化インジウム(ITO)粒子を用いた。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合7>遮熱性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
スズドープ酸化インジウム粒子(近赤外線散乱性無機粒子) 3質量部
※平均粒子径0.03μmの粒子
[実施例4]
下記配合8の遮熱性樹脂層用組成物、および、下記配合9の保温性樹脂層用組成物を、それぞれ180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの遮熱性樹脂層用フィルム4−1、および、厚さ0.25mmの保温性樹脂層用フィルム4−2を得た。次に、得られたフィルム4−1、および、フィルム4−2の中間に、基布1を挿入し、熱圧着により積層して実施例4の膜材を得た。なお、配合8の遮熱性樹脂層用組成物には近赤外線散乱性無機粒子として、波長1100nmに反射ピークを有する干渉雲母粒子を用い、配合9の保温性樹脂層用組成物には遠赤外線吸収性無機充填剤として、赤外吸収スペクトルにおいて9.9μmの吸収ピークを有する硼珪酸ガラスビーズを用いた。得られた膜材について、遮熱性樹脂層用フィルム4−1の面をおもて面として各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合8>遮熱性樹脂層用組成物
EVA樹脂(VA含有量19質量%) 100質量部
リン酸エステル系滑剤 2質量部
塩基性ヒンダードアミン化合物(光安定剤) 1質量部
※2,4−ビス〔(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペ
リジン−4−イル)ブチルアミノ〕−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)
−s−トリアジン
酸化防止剤 0.2質量部
※商標:IRGANOX#1010:BASF社製
メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム(防炎剤) 20質量部
※商標:エクソリットAP462:クラリアントジャパン(株)
メラミンシアヌレート(防炎剤) 20質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
超微粒子酸化亜鉛(紫外線吸収剤) 1質量部
※アルミナで被覆した平均粒子径0.02μmの粒子
干渉雲母粒子(近赤外線散乱性無機粒子) 3.7質量部
※粒子径:25〜65μm,TiO/SiO/TiOによる複層薄膜被覆構造
を有し、薄膜被覆率:45質量%
<配合9>保温性樹脂層用組成物
EVA樹脂(VA含有量19質量%) 100質量部
リン酸エステル系滑剤 2質量部
塩基性ヒンダードアミン化合物(光安定剤) 1質量部
※2,4−ビス〔(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペ
リジン−4−イル)ブチルアミノ〕−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)
−s−トリアジン
酸化防止剤 0.2質量部
※商標:IRGANOX#1010:BASF社製
メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム(防炎剤) 20質量部
※商標:エクソリットAP462:クラリアントジャパン(株)
メラミンシアヌレート(防炎剤) 20質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
硼珪酸ガラスビーズ(遠赤外線吸収性無機充填剤) 23質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径15μm:屈折率1.47
[実施例5]
ガラスマルチフィラメント(フィラメント直径9μm、繊度337.5Tex/2)を経糸及び緯糸として使用した織布(模しゃ織り、密度:経糸4本/インチ、緯糸5本/インチ)を基布3として用いた。この基布3を下記配合10の下塗り層用樹脂液中に浸漬し、基布に樹脂液を含浸し、マングルで絞り、150℃で2分間乾燥して下塗り層を形成した。次に下記配合11の遮熱性樹脂層用組成物、および、下記配合12の保温性樹脂層用組成物を、それぞれ180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.20mmの遮熱性樹脂層用フィルム5−1、および、厚さ0.20mmの保温性樹脂層用フィルム5−2を得た。配合11の遮熱性樹脂層用組成物には近赤外線散乱性無機粒子として、干渉雲母粒子を用い、配合12の保温性樹脂層用組成物には遠赤外線吸収性無機充填剤として、赤外吸収スペクトルにおいて9.9μmの吸収ピークを有する硼珪酸ガラスビーズを用いた。次に、得られたフィルム5−1、および、フィルム5−2の中間に、上述の下塗り層を形成した基布3を挿入し、熱圧着により積層して実施例5の膜材を得た。得られた膜材について、遮熱性樹脂層用フィルム5−1の面をおもて面として各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合10>下塗り層用樹脂液
フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン 100質量部
※固形分50%ディスパージョン
エマルジョン型高分子量紫外線吸収剤 40質量部
※商標:ULS−383MG:一方社油脂工業(株)製
シランカップリング剤 3質量部
※β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
<配合11>遮熱性樹脂層用組成物
テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン
三元共重合体樹脂 100質量部
滑剤(アマイド系) 0.5重量部
干渉雲母粒子(近赤外線散乱性無機粒子) 3質量部
※粒子径:25〜65μm,TiO/SiO/TiOによる複層薄膜被覆構造
を有し、薄膜被覆率:45質量%
<配合12>保温性樹脂層用組成物
テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン
三元共重合体樹脂 100質量部
滑剤(アマイド系) 0.5重量部
硼珪酸ガラスビーズ(遠赤外線吸収性無機充填剤) 15質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径15μm:屈折率1.47
[実施例6]
基布2を、下記配合13の断熱性樹脂層用ペーストポリ塩化ビニル樹脂組成物液中、に浸漬して、基布に樹脂液を含浸し、マングルロールで圧搾し、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理し、基布2の内部に含浸し、かつ両面を覆う160g/mの断熱性樹脂層を形成した。次に配合6の遮熱性樹脂層用組成物、および、配合3の保温性樹脂層用組成物を、それぞれ180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.12mmの遮熱性樹脂層用フィルム6−1、および、厚さ0.12mmの保温性樹脂層用フィルム6−2を得た。次に、得られたフィルム6−1、および、フィルム6−2の中間に、上述の断熱性樹脂層を形成した基布2を挿入し、熱圧着により積層して膜材を得た。次に、この膜材のフィルム6−1上に、配合4の防汚層用樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて30g/mとなるよう塗布し、120℃で1分間乾燥し、6g/mの防汚層を形成して、実施例6の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表2に示す。
<配合13>断熱性樹脂層用組成物
ペーストポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
リクレジルフォスフェート(燐系防炎可塑剤) 20質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
ガラスバルーン(無機中空粒子) 15質量部
※嵩比重0.35g/cm、粒子径範囲5〜45μm
[実施例7]
配合6の代わりに下記配合14を用いた他は、実施例6と同様にして実施例7の膜材を得た。配合14の遮熱性樹脂層用組成物において近赤外線吸収性無機粒子として、タングステン酸化物粒子を用いた。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表2に示す。
<配合14>遮熱性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
タングステン酸化物微粒子(近赤外線吸収性無機粒子) 3質量部
※WO2.72:平均粒子径0.08μm
[実施例8]
配合3の代わりに下記配合15を用いた以外は実施例2と様にして、実施例8の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表2に示す。
<配合15>保温性樹脂層用組成物
ペーストポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
リクレジルフォスフェート(燐系防炎可塑剤) 20質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
ソーダ石灰ガラスビーズ(遠赤外線吸収性無機充填剤) 50質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径15μm:屈折率1.51
石英ガラス粉末(遠赤外線吸収性無機充填剤) 50質量部
※シランカップリング剤処理:平均粒子径10μm:屈折率1.46
実施例1〜8の膜材はいずれも可視光透過率(JISZ8722.5.4(条件g))10〜50%を満たす高透光の膜材であり、しかも小型テントを用いた遮熱性の評価の結果より、真夏の日中であっても内部温度の上昇が抑制されていた。遮熱性を得たことで、冬季はむしろ太陽熱を取り入れることができないことが懸念されたが、冬季であっても晴天であれば、正午時点のテント内温度はそれぞれ20℃程度まで上昇しており、適度に太陽熱を取り入れる事ができていた。これは、実施例1〜8の膜材は、遮熱性樹脂層を有すると言えども、夏季の温度上昇に見られるように、ある程度は太陽熱を取り入れる一方、保温性樹脂層を有するため、一旦暖められた熱が、放射により失われるのを抑制しているためであると考えられる。保温性樹脂層を有することで、もちろん、冬季の日没後の温度低下も抑制されていた。実施例1から3は、遮熱性樹脂層、保温性樹脂層ともにポリ塩化ビニル樹脂を用いた膜材であり、近赤外線散乱性無機粒子と繊維製織布の違いにより可視光透過率は異なっていたものの、いずれも遮熱性、保温性に優れていた。特に、基布として粗目状織布を用い、近赤外線散乱性無機粒子に干渉雲母粒子を用いた実施例1は、可視光透過率が高く、一方、基布として非粗目状織布を用い近赤外線散乱性無機粒子に酸化チタン粒子を用いた実施例2は、可視光透過率は劣るものの遮熱性が優れていた。実施例4は遮熱性樹脂層、保温性樹脂層ともにEVA樹脂を用いた膜材である。実施例4の遮熱性樹脂層に含まれる干渉雲母粒子の質量比は、実施例1と同等であり、遮熱性についても実施例1と同等であった。また、ポリ塩化ビニル樹脂に比べてEVA樹脂は遠赤外線領域の吸収が少なく、樹脂自体の保温性は劣っているが、実施例4では、保温性樹脂層中に含まれる遠赤外線吸収性無機粒子の量を実施例1より多くすることで、実施例1とほぼ同等の保温性が得られている。実施例5は遮熱性樹脂層、保温性樹脂層ともにフッ素系樹脂を用いた膜材であり、遮熱性樹脂層に含まれる干渉雲母粒子の質量比は、実施例1と同等であり、遮熱性についても実施例1とほぼ同等であった。また、ポリ塩化ビニル樹脂に比べてフッ素系樹脂は遠赤外線領域の吸収が少なく、樹脂自体の保温性は劣っているが、実施例5では、保温性樹脂層中に含まれる遠赤外線吸収性無機粒子の量を実施例1より多くすることで、実施例1と同等の保温性が得られている。実施例6、および実施例7は遮熱性樹脂層、保温性樹脂層に加えて、更に断熱性樹脂層を含む膜材であり、どちらも、保温性が更に優れていた。断熱性樹脂層の有無を除いて同じ構成である実施例2と実施例6との比較において、可視光透過率はやや劣るものの、遮熱性、保温性は共に優れており、断熱性樹脂層を含むことで、遮熱性、保温性ともに向上することが確認された。実施例8は、実施例2に対して保温性樹脂層中に含まれる遠赤外線吸収性無機充填剤(ソーダ石灰ガラスビーズと石英ガラス粉末)の量を増やした膜材であり、遮熱性に関してはほとんど実施例2と変わらなかった一方、遠赤外線吸収性無機充填剤の増量により保温性が向上している事が確認された。
[比較例1]
配合2から干渉雲母粒子を、配合3から硼珪酸ガラスビーズを、それぞれ省略した以外は、実施例1と同様にして比較例1の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
[比較例2]
配合2から干渉雲母粒子を省略した以外は、実施例1と同様にして比較例2の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
[比較例3]
配合3から硼珪酸ガラスビーズを省略した以外は、実施例1と同様にして比較例1の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
比較例1〜3は、それぞれ実施例1と同様にして得た膜材であり、比較例1は実施例1から遮熱性樹脂層の近赤外線散乱性の無機粒子と、保温性樹脂層から遠赤外線吸収性無機充填剤を、省略したものであり、比較例2は遮熱性樹脂層から近赤外線散乱性の無機粒子を省略し、比較例3は保温性樹脂層から遠赤外線吸収性無機充填剤を省略したものである。比較例1について小型テントを用いた夏季の遮熱性評価では、正午の時点で実施例1に比べてテント内温度が5.1℃高く、遮熱性に劣る膜材であった。冬季においても、遮熱性を有さないため、正午時点でのテント内温度は25.7℃とやや高すぎる状態であった。一方、日没後の温度低下は大きく、実施例1に比べて保温性も劣っていた。比較例2は、保温性樹脂層に遠赤外線吸収性無機充填剤含む膜材であり、遮熱性は比較例1より更に劣っていた。比較例2の膜材が、保温性を有することで、上昇した小型テント内温度が外部に抜けにくくなったためであると考えられる。冬季においても、正午時点でのテント内温度が26.8℃と、高すぎる状態であった。なお、冬季の17時および18時の時点のテント内温度が実施例1より高いのは、日中のテント内温度が高かったためであると考えられる。比較例3は、遮熱性樹脂層に近赤外線散乱性の無機粒子を含む膜材であり、夏季の遮熱性については実施例1と同等であったが、保温性樹脂層に遠赤外線吸収性無機充填剤を含まないため、保温性に劣る膜材であった。日没後の小型テント内温度が比較例1より低かったのは、日中の最高温度が比較例1より低かったためであると思われる。以上のことから、膜材が、遮熱性樹脂層と保温性樹脂層とを共に有することではじめて、夏季、冬季共に快適な空間を提供し、空調にかかるエネルギーコストを低減することができることがわかる。
[比較例4]
配合8から酸化チタン粒子を、配合9から硼珪酸ガラスビーズを、それぞれ省略した以外は、実施例4と同様にして比較例4の膜材を得た。得られた膜材について、いずれか一方(任意)の面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
[比較例5]
配合11から干渉雲母粒子を、配合12から硼珪酸ガラスビーズを、それぞれ省略した以外は、実施例5と同様にして比較例5の膜材を得た。得られた膜材について、いずれか一方(任意)の面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
比較例4と比較例5は、実施例4および実施例5から、近赤外線散乱性無機粒子と遠赤外線吸収性無機充填剤を省略した膜材であり、比較例1と同様、遮熱性、保温性に劣る膜材であった。ポリ塩化ビニル樹脂を用いた比較例1に比べて、EVA樹脂を用いた比較例4とフッ素系樹脂を用いた比較例5は、保温性において比較例1よりやや劣る結果であったのは、ポリ塩化ビニル樹脂に比べて、EVA樹脂とフッ素系樹脂の遠赤外線領域の吸収が少なく、樹脂自体の保温性が劣っているためであると考えられる。
[比較例6]
配合3の硼珪酸ガラスビーズ20質量部の代わりに、赤外吸収スペクトルにおいて7.3μmの吸収ピークを有し、8〜11μmに吸収ピークを有さないハイドロタルサイト粒子(平均粒子径0.4μm)20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例6の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表3に示す。
比較例6の膜材は、実施例1の無機充填剤を、硼珪酸ガラスビーズからハイドロタルサイト粒子に置き換えた膜材である。実施例1から硼珪酸ガラスビーズを省略した比較例3と比べると保温性に勝るものの、ハイドロタルサイトは8〜11μmに吸収ピークを有さないため、8〜11μmに吸収ピークを有する硼珪酸ガラスビーズを用いた実施例1よりも保温性の評価結果において劣っていた。
[比較例7]
配合6から酸化チタン粒子を、配合3から硼珪酸ガラスビーズを、配合13からガラスバルーンを、それぞれ省略した以外は、実施例6と同様にして比較例7の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
[比較例8]
配合6から酸化チタン粒子を、配合3から硼珪酸ガラスビーズを、それぞれ省略した以外は、実施例6と同様にして比較例8の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
[比較例9]
配合3から硼珪酸ガラスビーズを省略した以外は、実施例6と同様にして比較例9の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
比較例7は、実施例6から遮熱性樹脂層の近赤外線散乱性の無機粒子と、保温性樹脂層の遠赤外線吸収性無機充填剤、および、断熱性樹脂層のガラスバルーンを省略したものであり、すなわち、遮熱性樹脂層、保温性樹脂層、断熱性樹脂層を有さない膜材である。比較例7について小型テントを用いた夏季の遮熱性評価では、正午の時点で実施例6に比べてテント内温度が7.9℃高く、遮熱性に劣る膜材であった。冬季においても、遮熱性が劣るため、正午時点でのテント内温度は25.4℃とやや高すぎる状態であった。一方、日没後の温度低下は大きく、実施例6に比べて保温性も劣っていた。比較例8は、遮熱性樹脂層、保温性樹脂層、断熱性樹脂層を有さない比較例7に対して、断熱性樹脂層のみ有する膜材である。比較例8の保温性は比較例7に比べてやや勝っているものの、遮熱性はむしろ比較例7より劣る結果であった。これは、膜材を透過して小型テント内部に侵入した熱が、熱伝導を妨げられる事によって外部に抜け難くなったためであると考えられる。比較例9は、実施例6から保温性樹脂層の遠赤外線吸収性無機充填剤を省略したものであり、遮熱性には優れていたものの、保温性は有さない膜材であった。これらの結果より、高透光性の膜材において、遮熱性樹脂層を有さずに、断熱性樹脂層のみでは、遮熱性の向上が全く得られず、保温性樹脂層を有さずに、断熱性樹脂層のみでは、保温性の向上が僅かであることがわかる。
[比較例10]
配合6から酸化チタン粒子を省略した以外は、実施例6と同様にして比較例10の膜材を得た。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
比較例10は、実施例6から遮熱性樹脂層の近赤外線散乱性の無機粒子を省略した膜材であり、保温性は優れていたものの遮熱性は比較例7より劣る膜材であった。比較例10の遮熱性が劣る要因としては、比較例7と同様遮熱性樹脂層を有さないことで膜材を通して小型テント内部に近赤外線が侵入しやすい一方、保温性樹脂層および断熱性樹脂層を有することで、小型テント内部から熱が出て行きにくくなったためであると考えられる。
[比較例11]
配合6の遮熱性樹脂層用組成物の代わりに下記配合16を用いた以外は、実施例6と同様にして比較例11の膜材を得た。配合16では、近赤外線散乱性無機粒子としての酸化チタン粒子の代わり、黒色顔料(カーボンブラック)を用いた。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合16>
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
黒色顔料(カーボンブラック) 4質量部
[比較例12]
配合3の保温性樹脂層用組成物の代わりに配合17を用いた以外は、実施例6と同様にして比較例10の膜材を得た。配合17では、遠赤外線吸収性無機充填剤としての硼珪酸ガラスビーズの代わり、黒色顔料(カーボンブラック)を用いた。得られた膜材について、防汚層を形成した面をおもて面として各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合17>保温性樹脂層用組成物
ストレートポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 35質量部
CDP(燐系防炎可塑剤) 25質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5質量部
黒色顔料(カーボンブラック) 4質量部
比較例11、および比較例12は、遮熱性樹脂層、または、保温性樹脂層に黒色顔料(カーボンブラック)を含む膜材であり、黒色顔料が近赤外線および遠赤外線を吸収するため、遮熱性および保温性を有する膜材であったが、可視光透過率は共に0%であり、透光性を求められる用途に用いることのできない膜材であった。
本発明の遮熱性、保温性を有する高透光性膜材は、高い可視光透過性を有し、しかも、遮熱性および保温性を共に有するものであり、日中に外光を取り入れて明るい空間を形成する事が可能となり、夏季の遮熱性と冬季の保温性を有する為、1年を通して快適な空間を提供し、空調にかかるエネルギーコストを低減することが可能となる。そのため、膜構造物用の膜材、膜構造物や建築物の屋根用の膜材、膜構造物や建築物の出入り口に用いるシートシャッター用の膜材、および、ブラインド向けなどに好適に用いる事ができる。
1:高透光性膜材
2:遮熱性樹脂層
2−1:近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子
3:保温性樹脂層
3−1:遠赤外線吸収性無機充填剤
4:基布
5:下塗り層
6:断熱性樹脂層
6−1無機中空粒子
7:小型テント
8:主棟
9:軒先
10:実施例・比較例で作成した膜材
11:黒色ゴムシート

Claims (5)

  1. 遮熱性樹脂層と、1層以上の保温性樹脂層とを有し、全体として可視光透過率10〜50%(JIS Z8722.5.4(条件g))を有する多層構造体であって、前記遮熱性樹脂層が近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子を含み、前記保温性樹脂層が、赤外吸収スペクトルにおいて波長8〜11μmの範囲に吸収ピークを有する遠赤外線吸収性無機充填剤を、5〜50質量%含むことを特徴とする、遮熱性、保温性を有する高透光性膜材。
  2. 前記遮熱性樹脂層に含まれる近赤外線散乱性、または近赤外線吸収性の無機粒子が、干渉雲母粒子、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、スズドープ酸化インジウム粒子、インジウムドープ酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、タングステン酸化物粒子、複合タングステン酸化物粒子、および、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)粒子から選ばれる一種以上である、請求項1に記載の高透光性膜材。
  3. 前記遠赤外線吸収性無機充填剤が、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、および石英ガラス、から選ばれた一種以上からなるガラス粉末、または、中実ガラスビーズを含む、請求項1または2に記載の高透光性膜材。
  4. 前記多層構造体が、繊維製織布を基布として含む、請求項1から3いずれか1項に記載の高透光性膜材。
  5. 前記多層構造体が、断熱性樹脂層を含み、前記断熱性樹脂層が、シラスバルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン、およびジルコニアバルーンから選ばれる1種以上の無機中空粒子を含む、請求項1から4いずれかに1項に記載の高透光性膜材。
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