JP5938279B2 - セルロース類水溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
本工程は、内部に攪拌機を設置した溶解槽に加熱した水(以下、熱水という)を準備し、この熱水中にセルロース類を投入して分散させる工程である。熱水の温度は、加熱により常温よりも高い温度になっていれば特に制限はないが、40〜98℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。さらに、70℃であることがもっとも好ましい。温度が40℃以上であると、分散する前にセルロース類が凝集してしまうことを抑え、発生する凝集粒をより少なくすることができる。熱水は、溶解槽に水を投入した後に加熱して得られたもの、および別途準備した熱水を溶解槽に投入したものの何れであってもよい。なお、温度が80℃以下であると、作業上の安全性を高められる上、引き続き行われる冷却に要する時間を短くでき、生産効率を高めることができる。さらに蒸気の発生が抑えられ、投入前のセルロース類が蒸気を吸収してゲル化してしまうことを防ぐことができる。
本工程は、溶解槽内のセルロース類が分散した熱水を冷却することにより、セルロース類を溶解させる工程である。
本工程は、上述の分散工程および冷却工程を経て得られたセルロース類水溶液を遠心分離機に導入して水溶液の遠心分離を一段階以上行い、水溶液中の凝集粒を遠心分離により除去する工程である。
予め準備した60℃または70℃の熱水3000Lを容積6.5m3のジャケット式溶解槽に入れ、さらにメチルセルロースを41kg〜42kg投入した。その後溶解槽内に設置された攪拌機を起動して溶解槽内を攪拌し、熱水中にメチルセルロースを分散させた。
(2−1.メチルセルロース水溶液の透過度の測定)
メチルセルロース水溶液として、上述の分散工程および冷却工程のみを行ったもの、分散工程および冷却工程を経た水溶液に対し、一段階の遠心分離をして上澄を回収した遠心分離工程を行ったもの、ならびに分散工程および冷却工程を経た水溶液に対し、二段階の遠心分離をして上澄を回収した遠心分離工程を行ったものをそれぞれ製造した。紫外可視近赤外(UV―Vis−NIR)分光光度計(SIMADZU UVmini―1240)を用い、得られた3種類のメチルセルロース水溶液を試料として、470nmの波長における吸光度を測定し、測定値から透過度(%)を算出した。なお、ブランクの測定には純水を用いた。算出結果を表1に示す。
(2−2−1.重合体フィルムの作製方法)
上述の3種類のメチルセルロース水溶液の何れか1つを懸濁剤として用いてフッ化ビニリデンの懸濁重合を行い、フッ化ビニリデン重合体を製造した。すなわち、内容量20Lのオートクレーブに、イオン交換水10240g、上述のメチルセルロース水溶液を140mL(メチルセルロース2.0gを含有)、酢酸エチル112g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート20gおよびフッ化ビニリデン4000gを仕込み、26℃まで1時間で昇温し、昇温開始から25.5時間の懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した後に、80℃で20時間乾燥してフッ化ビニリデン重合体を得た。重合率は88%で、得られた重合体のインヘレント粘度(重合体4gを1LのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度)は1.03dl/gであった。
・押出条件
押出機:20φ短軸型の押出機
T−ダイ:吐出口120mmおよびスリット0.6mmのT−ダイ
設定温度:C1 180〜185℃、C2 230〜235℃、C3 265〜275℃、D1 265〜275℃
スクリュー:フルフライトタイプ、L400mm、D20mmおよび圧縮比2.0
スクリューの回転速度:40回転/分
重合体ペレットの供給量:26g/分
押出量:10〜25g/分
引取機のロール温度:100℃
ロール回転速度:可変
続いて形成したフィルムの状態を目視によって観察し、正常であることを確認した後に試料を採取した。
加工されたフィルムの一部に長さ450mmの間隔で線をつけた。倍率40倍の拡大鏡を用いて観察を行い、2本の線間に観察される最大幅0.05mm以上0.1mm未満、0.1mm以上0.3mm未満、および0.3mm以上の大きさの異物を計数した。
分散工程および冷却工程のみ行ったメチルセルロース水溶液と比較して、分散工程および冷却工程に続いて一段階および二段階の遠心分離を行って上澄を回収する遠心分離工程を行ったものはメチルセルロース水溶液の透過度が著しく上昇した。また、遠心分離が一段階のものと比較して二段階のものは透過度がより上昇した。この結果から、一段階または二段階の遠心分離を行うことにより、メチルセルロース水溶液に含まれるメチルセルロースの凝集粒が低減することが示された。
Claims (8)
- 塩化ビニリデン系重合体またはフッ化ビニリデン系重合体を製造する際に用いられる懸濁剤の製造方法であって、
上記懸濁剤はセルロース類水溶液であり、
加熱した水にセルロース類を投入して分散させる分散工程と、
分散工程により得られた水溶液を冷却して、該水溶液中のセルロース類を溶解させる冷
却工程と、
上記冷却工程後の上記水溶液に対し、遠心分離を一段階以上行う遠心分離工程と
を含み、
上記遠心分離工程における少なくとも一段階の遠心分離において、遠心力が10000G以上であることを特徴とする懸濁剤の製造方法。 - 上記遠心分離は一段階または二段階であることを特徴とする請求項1に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記セルロース類はメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1または2に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記セルロース類水溶液のセルロース類濃度は1〜100g/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記加熱した水の温度は40℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記冷却工程によって得られる上記水溶液の温度は30℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記分散工程における分散はジャケット式溶解槽を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の懸濁剤の製造方法。
- 上記冷却工程における冷却はブラインを用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁剤の製造方法。
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