まず、本発明の一実施形態に係る、コンバイン100について簡単に説明する。
図1は、コンバイン100の左側面を示す図である。図2は、コンバイン100の右側面を示す図である。そして、図3は、コンバイン100の上面を示す図である。なお、図中に示す矢印Xは、コンバイン100の前後方向を表す。ここでは、コンバイン100の前進方向を前側、コンバイン100の後進方向を後側と定義する。また、図中に示す矢印Yは、コンバイン100の左右方向を表す。ここでは、コンバイン100の前進方向に対して左方を左側、コンバイン100の前進方向に対して右方を右側と定義する。
コンバイン100は、主に走行部1と、刈取部2と、脱穀部3と、選別部4と、動力部5と、操縦部6と、で構成されている。また、コンバイン100には、穀粒を貯えるグレンタンク8と、該グレンタンク8から穀粒を排出できる排出オーガ9が備えられている。
走行部1は、機体フレーム10の下方に設けられている。走行部1は、主にトランスミッション11と、左右一対のクローラ式走行装置12・12と、で構成されている。トランスミッション11は、エンジン51の回転動力をクローラ式走行装置12・12へ伝達する。クローラ式走行装置12・12は、コンバイン100を前後方向に走行させる。また、クローラ式走行装置12・12は、コンバイン100を左右方向に旋回させる。
刈取部2は、走行部1の前方に設けられている。刈取部2は、主にリール21と、切断装置22と、掻込オーガ23と、搬送装置24と、で構成されている。リール21は、回転することによって圃場の穀稈を切断装置22へ案内する。切断装置22は、リール21によって案内された穀稈を切断する。掻込オーガ23は、切断装置22によって切断された穀稈を所定の位置に集合させる。搬送装置24は、掻込オーガ23によって集合させた穀稈を脱穀部3へ搬送する。
脱穀部3は、刈取部2の後方に設けられている。脱穀部3は、主にビータ31と、扱胴32と、で構成されている。ビータ31は、穀稈を扱胴32が配置された脱穀室内へ投入する。扱胴32は、回転することによって投入された穀稈を脱穀する。また、扱胴32は、回転することによって脱穀された穀稈を搬送し、藁屑として排出する。
選別部4は、脱穀部3の下方に設けられている。選別部4は、主に揺動選別装置41と、風選別装置42と、穀粒搬送装置43(図4参照)と、で構成されている。揺動選別装置41は、脱穀部3から落下した脱穀物を穀粒と藁屑などに選別する。風選別装置42は、揺動選別装置41によって選別された脱穀物を更に穀粒と藁屑などに選別する。穀粒搬送装置43は、揺動選別装置41及び風選別装置42によって選別された穀粒をグレンタンク8へ搬送する。
動力部5は、選別部4の右側方に設けられている。動力部5は、主にエンジン51で構成されている。エンジン51は、燃料の燃焼によるエネルギーを回転動力に変換する。つまり、エンジン51は、回転動力を発生させる。なお、電力によって回転動力を発生させる電動モータであっても良い。
操縦部6は、動力部5の上方に設けられている。操縦部6は、主に運転席61と、複数の操作具62と、で構成されている。運転席61は、オペレータが座る座席である。操作具62は、オペレータの操作に応じてコンバイン100を稼動させる。
このような構成により、オペレータは、運転席61に着座した状態でコンバイン100を操縦できる。コンバイン100は、刈取った穀稈から穀粒を選別してグレンタンク8に貯えることができる。更に、コンバイン100は、排出オーガ9を用いてグレンタンク8から穀粒を排出することができる。
次に、コンバイン100の動力伝達機構について説明する。
図4は、コンバイン100の動力伝達機構の構成を示す図である。なお、以下では、動力伝達機構の主要な部分と本発明に関する部分のみを説明しており、その他の部分については省略している。
コンバイン100の動力伝達機構は、主にトランスミッション11と、クラッチケース7と、エンジン51の回転動力を各部へ伝達する回転軸やベルトなどで構成されている。
上述したように、トランスミッション11は、エンジン51の回転動力をクローラ式走行装置12・12へ伝達する。トランスミッション11には、ベルトb1を介してエンジン51の回転動力が入力される。トランスミッション11は、変速装置として油圧−機械式の無段変速装置(HMT)111を備えている。無段変速装置111は、エンジン51の回転動力を油圧に変換した後に、再び回転動力に変換してクローラ式走行装置12・12を駆動させる。このような構成により、トランスミッション11は、クローラ式走行装置12・12の駆動状態を変更でき、コンバイン100を任意の方向に走行させることができる。
クラッチケース7は、エンジン51の回転動力を刈取部2のリール21などへ伝達する。クラッチケース7は、切換クラッチ71を備えており、エンジン51の回転動力を正回転方向又は逆回転方向に切換可能としている。つまり、クラッチケース7は、リール21や掻込オーガ23、搬送装置24などの回転方向を正回転方向又は逆回転方向に切換可能としているのである。更に、クラッチケース7は、エンジン51の回転動力を切断装置22へ伝達できる。切断装置22は、エンジン51の回転動力によって往復運動を行なう。
また、選別部4は、穀粒搬送装置43を備えている。穀粒搬送装置43は、主に一番コンベヤ431と二番コンベヤ432で構成される。一番コンベヤ431は、第一槽S1に集められた穀粒をグレンタンク8へ搬送する(図1参照)。第一槽S1には、きれいに選別された穀粒が集まるので、グレンタンク8へ藁屑などが搬送されることはない。一方、二番コンベヤ432は、第二槽S2に集められた穀粒を揺動選別装置41へ搬送する(図1参照)。第二槽S2には、きれいに選別できなかった穀粒(藁屑などが含まれる)が集まるので、再び揺動選別装置41や風選別装置42によって選別を行なうのである。
グレンタンク8は、ギヤケース81と、横送りコンベヤ82と、を備えている。ギヤケース81は、グレンタンク8の前面側に取り付けられており(図5参照)、ベルトb2を介してエンジン51の回転動力が入力される。ギヤケース81は、ギヤを介してグレンタンク8の内部に配置された横送りコンベヤ82を駆動する。横送りコンベヤ82は、グレンタンク8内の穀粒を通路孔8oから送り出すことができる。なお、エンジン51の回転動力をギヤケース81に伝達又は遮断するクラッチ装置83が設けられている。クラッチ装置83は、いわゆるテンションクラッチであって、オペレータがレバー83Lを操作するとエンジン51の回転動力を伝達又は遮断できる(図5参照)。
更に、グレンタンク8は、連絡管84を備えている。連絡管84は、グレンタンク8の後面側に取り付けられており(図6参照)、後述する縦送りコンベヤ92を駆動させるためのギヤが内臓されている。また、連絡管84は、横送りコンベヤ82によって送り出された穀粒を排出オーガ9へ案内する役割を有している。
排出オーガ9は、搬送管91と、縦送りコンベヤ92と、を備えている。搬送管91は、連絡管84の上面側に接続されており、該搬送管91の内部に縦送りコンベヤ92が配置されている。縦送りコンベヤ92は、連絡管84によって案内された穀粒を排出孔91eへ送ることができる。
このような構成により、コンバイン100は、グレンタンク8に貯えられていた穀粒を排出することができる。なお、排出オーガ9は、直立した状態から傾倒することができるので、任意の場所に穀粒を排出できる。また、排出オーガ9は、連絡管84を介してグレンタンク8に接続されているので、該グレンタンク8が回動した際には一体となって回動する。かかる構造について、以下に説明する。
図5は、グレンタンク8の前面側の構造を示す図である。図6は、グレンタンク8の後面側の構造を示す図である。また、図7は、排出オーガ9が傾倒した状態を示す図であり、図8は、グレンタンク8が水平方向に回動した状態を示す図である。そして、図9は、図8に示す矢印Aの方向から見た図である。なお、図7、図8中の矢印は、排出オーガ9の傾倒方向及びグレンタンク8の回動方向を表す。
図5に示すように、グレンタンク8の左側面側には、アームブラケット851が固定されている。アームブラケット851には、ロックアーム852が取り付けられており、該ロックアーム852は、ロッド853によって回動自在となっている。ロッド853は、レバー854の操作に応じて連動する。また、機体フレーム10には、タンクフレーム855が固定されている。タンクフレーム855には、ロックピン856が取り付けられている。更に、ロックアーム852は、一方に回動するとロックピン856に引っ掛かり、他方に回動するとロックピン856から外れるように形成(鉤状に形成)されている。従って、オペレータは、レバー854を一方に操作することで、ロックアーム852をロックピン856に引っ掛かけることができる。反対に、オペレータは、レバー854を他方に操作することで、ロックアーム852をロックピン856から外すことができる。
グレンタンク8の前面側には、タッチプレート861が固定されている。タッチプレート861には、円筒形状の支持部が形成されており、該支持部には、ロックキー862が摺動自在に挿入されている。また、機体フレーム10には、ロックプレート863が固定されている。ロックプレート863には、キー孔863hが形成されている。更に、ロックキー862は、下方に摺動するとキー孔863hに差し込まれ、上方に摺動するとキー孔863hから引き出されるように形成(釘状に形成)されている。従って、オペレータは、ロックキー862を下方に摺動させることで、該ロックキー862をキー孔863hに差し込むことができる。反対に、オペレータは、ロックキー862を上方に摺動させることで、該ロックキー862をキー孔863hから引き抜くことができる。なお、グレンタンク8は、タッチプレート861がロックプレート863に当接することによって支えられる。
図6に示すように、グレンタンク8の後面側には、板材を折り曲げて形成された第一構造部871が固定されている。第一構造部871は、グレンタンク8の底部であって機体フレーム10の上面に接するように配置されている。第一構造部871には、グレンタンク8に対向する支持部871aが形成されており(図7参照)、該支持部871aには、連絡管84の軸部84sが回動自在に取り付けられている。更に、連絡管84は、軸部84sを中心として回動自在にグレンタンク8に取り付けられている。従って、オペレータは、連絡管84を回動させることで、排出オーガ9を傾倒させることができる(図7参照)。なお、排出オーガ9の搬送管91には、ハンドル93が取り付けられているため、オペレータは、ハンドル93を握ることによって容易に排出オーガ9を傾倒させることができる。更に、搬送管91にはフック95が取り付けられ(図11、図15参照)、後述する第二構造部872にはチェーン873が取り付けられているため(図7、図11、図15参照)、オペレータは、フック95にチェーン873を引っ掛けることによって排出オーガ9を任意の角度で停止させることができる。
また、第一構造部871には、回動軸871sが設けられている。第一構造部871の回動軸871sは、該第一構造部871を機体フレーム10に対して回動自在としている。このため、第一構造部871が固定されているグレンタンク8は、回動軸871sを中心として水平方向へ回動自在となっている(図8参照)。そして、排出オーガ9は、グレンタンク8が回動すると、該グレンタンク8と一体となって回動する(図8参照)。つまり、第一構造部871は、グレンタンク8及び排出オーガ9を回動自在に支持しているのである。
なお、第一構造部871の回動軸871sは、グレンタンク8の重量によって作用するモーメントM1と排出オーガ9の重量のよって作用するモーメントM2が相殺する位置に配置されている。具体的に説明すると、グレンタンク8の重量をF1とし、グレンタンク8の重心8Cから回動軸871s(具体的には後述する直線L)までの距離をD1とした場合、モーメントM1は、以下の数式N1で表される。同様に、排出オーガ9の重量をF2とし、排出オーガ9の重心9Cから回動軸871s(具体的には後述する直線L)までの距離をD2とした場合、モーメントM2は、以下の数式N2で表される。そして、第一構造部871の回動軸871sは、モーメントM1とモーメントM2が相殺する位置に配置されるのである。但し、モーメントM1とモーメントM2が完全に相殺する必要はなく、回動軸871sやその周辺部分が歪まない程度で良い。このため、本コンバイン100では、該コンバイン100の上面から見て排出オーガ9の近傍に回動軸871sが配置されている(図8参照)。
数式N1:M1=F1×D1
数式N2:M2=F2×D2
このような構成により、コンバイン100は、グレンタンク8を回動した際に、回動軸871sやその周辺部分が歪まない。従って、グレンタンク8が傾くことを防止できる。
更に、グレンタンク8の後面側には、折り曲げた板材を組み合わせて形成された第二構造部872が固定されている。第二構造部872は、第一構造部871の上方に互いに広い間隔を設けて配置されている。第二構造部872には、円弧形状の保持部872hが形成されており、該保持部872hには、直立した状態の排出オーガ9(搬送管91)が納められる。排出オーガ9は、搬送管91が略円筒形状であることから、その外周面が保持部872hの内周面に接した状態で支持される。
このような構成により、コンバイン100は、走行中に路面の凹凸などによって振動が発生しても排出オーガ9を安定させることができる。
また、第二構造部872には、回動軸872sが設けられている。第二構造部872の回動軸872sは、第一構造部871の回動軸871sに対して同一直線上となる位置に配置されている。つまり、第一構造部871の回動軸871sと第二構造部872の回動軸872sは、一つの直線L上に配置されている。こうして、第二構造部872は、グレンタンク8を回動自在に支持している。
このような構成により、コンバイン100は、オペレータがグレンタンク8及び排出オーガ9をスムーズに回動させることができる。
以上より、本コンバイン100は、オペレータがレバー854を操作してロックアーム852をロックピン856から外し、ロックキー862を上方に摺動させてキー孔863hから引き抜けば、グレンタンク8及び排出オーガ9をスムーズに回動させることができる。このとき、回動軸871s及び回動軸872sの配置について、上述したように考慮されているので、グレンタンク8が傾くことはない。また、コンバイン100では、グレンタンク8が互いに広い間隔をあけて配置された二つの回動軸871s・872sを中心に回動するので、該グレンタンク8が回動する際にガタつかない。
次に、本コンバイン100の他の特徴点について説明する。
上述したように、排出オーガ9は、グレンタンク8に一端が接続され、該グレンタンク8に貯溜された穀粒を他端(排出孔91e)から排出できる。図10に示すように、排出オーガ9は、グレンタンク8の通路孔8oに連絡管84を介して接続されている。
図11に示すように、排出オーガ9は、排出孔91eを覆うように排出ガイド94を備えている。排出ガイド94は、排出オーガ9が直立した状態であるときに右方(機体外側)を向いて開口している。なお、グレンタンク8と排出オーガ9の間には、機体フレーム10から支持フレーム10fが立設されている(図11から図13参照、図15から図18参照)。
図11に示すように、排出オーガ9には、フック95が設けられている。排出オーガ9が直立した状態である場合、フック95は、搬送管91の上下方向の中途部から前方に突設され、その先端が右方(機体外側)へ屈曲した形状となっている。また、排出オーガ9には、排出オーガ係合部材96が設けられている。排出オーガ係合部材96は、搬送管91に設けられたフック95の上方となる位置から前方に突設され、その平面部分に係合孔96hが設けられている(図12、図14参照)。
図11に示すように、連絡管84は、側面から見て略L字状に形成されている。連絡管84は、前方に向いて開放したグレンタンク側開口部84haと上方に向いて開放した排出オーガ側開口部84hbを有している。グレンタンク側開口部84haは、グレンタンク8の通路孔8oに軸心を合わせた状態で嵌合されているので、連絡管84は、この軸心周りに回動自在となっている。また、排出オーガ側開口部84hbには、フランジ84fが設けられており、該フランジ84fに搬送管91のフランジ91fが重ね合わされた状態で固定されている。更に、連絡管84の後端下部には、軸部84sが設けられている。軸部84sは、グレンタンク8の通路孔8oに軸心を合わせた状態で配置されている。
第一構造部871は、グレンタンク8及び排出オーガ9の両方を支持しながら回動自在とするのものである。即ち、第一構造部871は、グレンタンク8及び排出オーガ9の両方を支持しながら機体フレーム10に対して垂直軸周りに相対回動可能としている。第一構造部871は、上面から見て略台形状の底部871bを有する。また、第一構造部871は、底部871bを上方へ折り曲げて形成された支持部871aと取付部871cを有する。なお、支持部871aと取付部871cは、互いに対向するように形成されている。つまり、第一構造部871は、側面から見て略U字状に形成されている。
図10に示すように、底部871bの略中央部には、貫通孔871bhが形成されている。貫通孔871bhには、回動軸871sの上部が挿入されて溶接等で固定されている。回動軸871sは、底部871bから下方へ突設しており、機体フレーム10に固設された軸受部に軸支されている。このように構成することで、グレンタンク8及び排出オーガ9は、回動軸871sに支持されつつ、その軸心周りに回動自在となるのである(図8、図14参照)。
支持部871aの略中央部には、貫通孔871ahが形成されている。貫通孔871ahには、連絡管84の軸部84sが軸支されている。このように構成することで、排出オーガ9は、軸部84sに支持されつつ、その軸心周りに回動自在となるのである(図7、図15、図16参照)。
第二構造部872は、グレンタンク8を支持しながら回動自在とするのものである。図12、図13に示すように、第二構造部872には、貫通孔872ahが設けられている。貫通孔872ahは、第二構造部872の上面から下面まで貫通している。貫通孔872ahは、係合部材874を挿入することができる。貫通孔872ahに係合部材874を挿入した場合、係合部材874は、支持フレーム10fに設けられた孔10fhにも挿入される。このように構成することで、第二構造部872を支持フレーム10fに固定できる。
また、第二構造部872は、直立した状態の排出オーガ9(搬送管91)を安定させるものである。図12、図13に示すように、第二構造部872には、挿入孔872bhが設けられている。本実施形態において、挿入孔872bhは、第二構造部872の下面を貫通していない。挿入孔872bhは、係合部材874を挿入することができる。上述した係合孔96hに係合部材874を挿入した場合、係合部材874は、第二構造部872に設けられた挿入孔872bhにも挿入される。このように構成することで、排出オーガ9を第二構造部872に固定できる。
図3に示すように、グレンタンク8は、脱穀部3の右方に設けられている。グレンタンク8の通路孔8oは、後方を向いて開口しており、該通路孔8oに連絡管84が回動自在に接続されている。また、第二構造部872の貫通孔872ahに係合部材874が挿入されることで、該第二構造部872が支持フレーム10fに固定されている。なお、第二構造部872は、グレンタンク8の後面に取り付けられているので、グレンタンク8は、第二構造部872を介して機体フレーム10に固定されることとなる。このため、グレンタンク8は、係合部材874を抜かない限り回動することができない。こうしてグレンタンク8が意図せず機体側方へ回動しないように構成している。
また、清掃やメンテナンス等のためにグレンタンク8を回動する場合は、上述したように、ロックアーム852をロックピン856から外してロックキー862をキー孔863hから引き抜く。そして、係合部材874を貫通孔872ahから引き抜いて挿入孔872bhに挿入する必要がある。これにより、第二構造部872と支持フレーム10fの固定が解除されるので、グレンタンク8を回動させることが可能となる。なお、排出オーガ9は、グレンタンク8が回動した際には一体となって回動する。従って、グレンタンク8を機体側方へ回動させた場合に、グレンタンク8と排出オーガ9の接続が解除されることがない。グレンタンク8及び排出オーガ9は、収納した状態から最大で約90°回動できる。
図15、図16に示すように、連絡管84には、規制部材としての突出板84wが設けられている。突出板84wは、多角形状の板材である。突出板84wは、排出オーガ9が傾倒した状態であれば、グレンタンク8が回動するのを防止できる。例えば、排出オーガ9が直立した状態である場合においては、図17の実線に示すように、突出板84wは、グレンタンク8が回動軸871s及び回動軸872sを中心として機体外側へ向かって回動しても、支持フレーム10fと接触しない。一方、排出オーガ9が傾倒した状態である場合においては、図18の二点鎖線に示すように、突出板84wは、グレンタンク8が回動軸871s及び回動軸872sを中心として機体外側へ向かって回動すると、支持フレーム10fと接触する。より詳しくは、図16に示した斜線部分Rが支持フレーム10fと接触する。このように構成することで、排出オーガ9が傾倒している場合は、グレンタンク8及び排出オーガ9の回動を禁止できる。
穀粒の排出のために排出オーガ9を傾倒する場合は、係合部材874を挿入孔872bhから引き抜いて貫通孔872ahに挿入する必要がある。これにより、排出オーガ9と第二構造部872の固定が解除されるので、排出オーガ9を傾倒させることが可能となる。なお、排出オーガ9は、連絡管84と一体となって傾倒する。従って、排出オーガ9を機体側方へ傾倒させた場合に、排出オーガ9と連絡管84の接続が解除されることがない。排出オーガ9は、直立した状態から最大で約90°傾倒できる。
また、上述したように、第二構造部872には、傾倒姿勢保持用部材としてのチェーン873が設けられている。チェーン873は、排出オーガ9を任意の角度に傾倒した状態で保持する。チェーン873は、搬送管91のフック95にチェーン873をかけることによって、排出オーガ9を任意の角度で保持できる。例えば、図15の二点鎖線Aの状態まで排出オーガ9を傾倒させた状態にあっては、チェーン873の始端とフック95を結ぶ直線上にチェーン873を配置し、フック95の位置に最も近い輪を該フック95にかける。これにより、排出オーガ9が更に機体外側へ傾倒するのを制限できる。一方、図15の二点鎖線Bの状態まで排出オーガ9を傾倒させた状態にあっては、適宜の輪をフック95にかけることで、排出オーガ9が更に機体外側へ傾倒するのを制限できる。
グレンタンク8が開放状態である場合、係合部材874は、排出オーガ係合部材96の係合孔96hを介して第二構造部872の挿入孔872bhに挿入されている。こうして、排出オーガ9は、第二構造部872に固定されているので傾倒することができない。このように構成することで、グレンタンク8の回動と排出オーガ9の傾倒が同時に行われるのを防止できる。このように、係合部材874は、グレンタンク8が収納状態にある場合におけるグレンタンク8の機体フレーム10への固定と、グレンタンク8が開放状態にある場合における排出オーガ9の傾倒の防止という二つの用途に用いることができる。なお、係合部材874は、貫通孔872ahと挿入孔872bhのいずれか一方に挿入されることとなるため、紛失のおそれがない。
以上のように、本コンバイン100は、グレンタンク8と、グレンタンク8に一端が接続され、グレンタンク8に貯溜された穀粒を他端から排出する排出オーガ9と、を備え、排出オーガ9を、機体外側に向けて傾倒可能となるようにグレンタンク8に相対回動可能に接続するとともに、グレンタンク8及び排出オーガ9の両方を支持しながら機体フレーム10に対して垂直軸周りに相対回動可能な第一構造部871を設けたものである。このように構成することで、グレンタンク8を側方に回動(開放)させた場合、グレンタンク8と一体的に排出オーガ9も回動するため、グレンタンク8と排出オーガ9との接続が解除されて開口部が露出することがなく、穀粒がこぼれ落ちるのを防止することができる。
また、第一構造部871は、排出オーガ9の軸部84sを、グレンタンク8と反対側から軸支するものとしたものである。このように構成することで、排出オーガ9は、グレンタンク8の通路孔8o及び第一構造部871の支持部871aによって両側から軸支されることになるため、当該排出オーガ9の取り付け強度を向上させることができる。また、排出オーガ9及びグレンタンク8をコンパクトに配置することができる。
また、グレンタンク8が収納位置にある場合は、グレンタンク8と機体フレーム10を係合させるとともに、グレンタンク8を開放させる場合は、グレンタンク8と垂直方向に立設された状態の排出オーガ9を係合させる係合部材874を備えたものである。このように構成することで、グレンタンク8が収納位置にある場合には、係合部材874によってグレンタンク8を収納位置に保持し、グレンタンク8を開放させる場合には、係合部材874によって排出オーガ9を収納位置に保持することができる。このようにして、グレンタンク8の開放と排出オーガ9の傾倒が同時に行われるのを防止することができる。また、そのための部材を1つの係合部材874で兼用することができる。
また、排出オーガ9が傾倒している場合には、機体フレーム10と係合してグレンタンク8及び排出オーガ9が回動するのを規制する突出板84wを設けたものである。このように構成することで、排出オーガ9が傾倒している場合に、グレンタンク8の回動(開放)を禁止して重量バランスの悪化を防止することができる。
次に、本コンバイン100に適用できる他の技術について説明する。
本コンバイン100に適用できる他の技術としてクラッチ機構88が挙げられる。図19に示すように、クラッチ機構88は、内部レバー881と、外部レバー882と、ロッドリンク883と、テンションアーム884と、で構成されている。また、クラッチ装置83は、駆動プーリ831と、従動プーリ832と、テンションプーリ833と、ベルトb2と、で構成されている。
まず、クラッチ装置83について簡単に説明する。駆動プーリ831は、エンジン51のクランク軸に固定されている。従動プーリ832は、ギヤケース81の回転軸に固定されている。そして、ベルトb2は、駆動プーリ831と従動プーリ832に巻き掛けられている。なお、テンションプーリ833は、ベルトb2に接するように配置され、該ベルトb2を押すことができる。従って、テンションプーリ833がベルトb2を押して、該ベルトb2を張れば従動プーリ832が駆動する。反対に、テンションプーリ833がベルトb2を押さずに、該ベルトb2を緩めれば従動プーリ832は駆動しない。
次に、クラッチ機構88について説明する。内部レバー881は、回動軸88shを中心として回動自在に構成されている。外部レバー882は、内部レバー881の中途部から分岐するように、該内部レバー881に取り付けられている。ロッドリンク883は、内部レバー881及び外部レバー882の操作によって回動されるアームリンク88arに取り付けられている。そして、テンションアーム884は、スプリング88spを介してロッドリンク883に取り付けられている。従って、内部レバー881又は外部レバー882をR方向へ操作すると、ロッドリンク883が引っ張られてテンションアーム884が上方に回動する。すると、テンションアーム884に取り付けられたテンションプーリ833も回動してベルトb2を張るのである。反対に、内部レバー881又は外部レバー882をL方向へ操作すると、ロッドリンク883が押されてテンションアーム884が下方に回動する。すると、テンションアーム884に取り付けられたテンションプーリ833も回動してベルトb2を緩めるのである。
図20に示すように、内部レバー881は、運転席61とグレンタンク8の間に設けられている。このため、オペレータは、運転席61に着座した状態で内部レバー881を操作できる。
図21に示すように、内部レバー881は、グリップ部分が内部レバーガイド881Gのガイド溝881gから突出している。ガイド溝881gは、上方から見て略L字状に形成(鉤状に形成)されている。また、ガイド溝881gのクランク部分には、内側に凸状部881gpが形成されており、内部レバー881を「入」状態で係止可能としている。このような構成とすることで、オペレータが意図せずに内部レバー881を操作し、「切」側へ移動させてしまうことを防止できる。
図20に示すように、外部レバー882は、運転席61の後方から右側方に突き出すように設けられている。このため、オペレータは、運転席61から降りてコンバイン100の側方に立った状態で外部レバー882を操作できる。
図22に示すように、外部レバー882は、グリップ部分が外部レバーガイド882Gのガイド溝882gから突出している。ガイド溝882gは、側方から見て略L字状に形成(鉤状に形成)されている。また、ガイド溝882gのクランク部分には、内側に凸状部882gpが形成されており、外部レバー882を「入」状態で係止可能としている。このような構成とすることで、オペレータが意図せずに外部レバー882を操作し、「切」側へ移動させてしまうことを防止できる。
図20に示すように、クラッチ機構88には、第一接触部材88aと第二接触部材88bが設けられている。第一接触部材88aと第二接触部材88bは、オペレータが内部レバー881又は外部レバー882を操作した際に、これらのレバー881・882の捻じれを矯正する。
第一接触部材88aは、内部レバー881と外部レバー882の分岐点近傍に設けられている。また、第二接触部材88bは、回動軸88shを支持する構造体885の前面に設けられている。第一接触部材88aと第二接触部材88bが接触することによって、内部レバー881及び外部レバー882の捻じれが矯正される。
第一接触部材88aと第二接触部材88bを設けていない構造では、内部レバー881を「入」側へ操作した場合、該内部レバー881や外部レバー882に捻じれが生じるため、内部レバー881が「入」状態で係止できても外部レバー882が係止できないことがあった。また、外部レバー882を「入」側へ操作した場合、該外部レバー882や内部レバー881に捻じれが生じるため、外部レバー882が「入」状態で係止できても内部レバー881が係止できないことがあった。更に、内部レバー881又は外部レバー882を「切」側へ操作した場合も、いずれか一方が「入」状態から解除できないことがあった。そのため、第一接触部材88aと第二接触部材88bを設けて、互いに接触した荷重で内部レバー881及び外部レバー882の捻じれを矯正するとしたのである。
第一接触部材88aと第二接触部材88bを設けた構造では、内部レバー881や外部レバー882に捻じれが生じても、第一接触部材88aの当接面と第二接触部材88bの当接面の接触によって捻じれが矯正される。従って、内部レバー881又は外部レバー882を「入」側へ操作した場合は、いずれも「入」状態で係止できる。また、内部レバー881又は外部レバー882を「切」側へ操作した場合は、いずれも「入」状態から解除できる。
更に、図23に示すように、排出オーガ9にクラッチ機構88を操作できるオーガレバー886を設けても良い。これにより、オペレータは、排出オーガ9の近傍で作業を行いながらオーガレバー886を操作できる。
オーガレバー886は、搬送管91に設けられた回動軸を中心として回動自在に構成されている。オーガレバー886は、ワイヤー887を用いてアームリンク88arを回動できる。すると、ロッドリンク883を介してテンションアーム884及びテンションプーリ833も回動するので、ベルトb2を張ったり緩めたりできるのである。
図24に示すように、オーガレバー886は、グリップ部分がオーガレバーガイド886Gのガイド溝886gから突出している。ガイド溝886gは、側方から見て略I字状に形成されている。オーガレバー886は、その一端(グリップ部分の反対側の端部)がレバーガイド886Gに取り付けられたスプリング888によって付勢されているので、「入」状態又は「切」状態で保持される。
以上のように、グレンタンク8に接続された排出オーガ9を、機体外側に向かって傾倒させた状態で穀粒の排出を行なうコンバイン100であって、回動軸88shが共通であり、オペレータが把持して操作する内部レバー881が回動軸88shから操縦部6に、外部レバー882が回動軸88shから機体側方に、それぞれ延設されるクラッチ機構88を設けたものである。このように構成することで、機体側方からもクラッチ機構88を操作できるため、作業効率を向上させることができる。
また、クラッチ機構88は、内部レバー881及び外部レバー882の捻じれを矯正する矯正構造を設けたものである。このように構成することで、内部レバー881又は外部レバー882を「入」側へ操作した場合は、いずれも「入」状態で係止できる。また、内部レバー881又は外部レバー882を「切」側へ操作した場合は、いずれも「入」状態から解除できる。
また、排出オーガ9にクラッチ機構88を操作できるオーガレバー886を設けても良い。このように構成することで、排出オーガ9の近傍で作業を行いながらオーガレバー886の操作できるため、作業効率を更に向上させることができる。