JP5929967B2 - 粉末冶金用合金鋼粉 - Google Patents
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さらに、最近では、部品の小型化、軽量化のために、粉末冶金製品の強度の向上が強く要望されていて、特に、鉄基粉末製品(鉄基焼結体)に対する高強度化の要求が強い。
(1)純鉄粉に各合金元素粉末を配合した混合粉、
(2)完全に各元素を合金化した予合金鋼粉、
(3)純鉄粉や予合金鋼粉の表面に、各合金元素粉末を部分的に拡散させた拡散付着合金鋼粉
等が知られている。
このため、上記純鉄粉に各合金元素粉末を配合した混合粉は、近年の特性安定化、高強度化の要求に対応できずに、その使用量が減少してきている。
したがって、合金元素の偏析を防止しながら、純鉄粉並みの高圧縮性を確保できると同時に、部分的な合金濃化相が分散する複合組織となるため、基地強化の可能性があり、高強度用の拡散付着合金鋼粉として開発が行われている。
この技術では、さらに、各拡散付着元素について、粒子径:44μm以下の微粒粉に対する拡散付着濃度が、その鉄鋼粉全体に対する拡散付着濃度の0.9〜1.9倍の範囲内に収まるように制御することが提案されており、この比較的広い範囲への限定によって焼結体の衝撃靭性が確保されるとされている。
結果的に、発明者らの研究では、上記した特許文献1〜4に記載のいずれの合金鋼粉を用いた焼結体でも、強度と靭性を高いレベルで両立させるのは困難であることが分かった。
すなわち、鉄基粉末を素材とし、その表面にMoを拡散付着させた合金鋼粉であって、素材である鉄基粉末として、所定粒径の還元鉄粉を用いることにより、この合金鋼粉を成形、焼結した場合、還元鉄粉の焼結性が向上して焼結体の気孔が微細化し、強度と靭性が共に向上するという知見を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
1.鉄基粉末の表面に、Mo含有合金粉末を拡散付着させた粉末冶金用合金鋼粉であって、
上記鉄基粉末が還元鉄粉を含み、かつ該鉄基粉末の最大粒径が100μm以下であり、さらにMoが上記粉末冶金用合金鋼粉の全体に対する比率で0.2〜1.5質量%含有し、かつ、黒鉛粉が上記粉末冶金用合金鋼粉の全体に対する比率で0.1〜1.0質量%含有している粉末冶金用合金鋼粉。
本発明の粉末冶金用合金鋼粉は、最大粒径が100μmを超えない鉄基粉末の表面に、所定量のMo含有粉末を拡散付着させたものであることを特徴としている。
そして、上記した粉末冶金用合金鋼粉を、適量の黒鉛粉末と混合し、成形体にして、焼結することによって、焼結体の気孔が効果的に微細化し、強度、靭性が共に向上した焼結部品を得ることができる。
一般に、焼結体には気孔が多く存在するため、気孔部分に応力が集中し、焼結体の強度や、靱性が低下する傾向にある。しかしながら、本発明に従う粉末冶金用合金鋼粉では、焼結体の気孔が微細化されることによって、応力集中の度合いが緩和されると共に、焼結ネック部が強靭化されることになる。
本発明において、鉄基粉末としては、通常、粉末冶金法に用いられる鉄基粉末であれば、とくに限定はされないが、還元鉄粉を含むことが肝要である。還元鉄粉は、鋼材の製造時に生成するミルスケールや鉄鉱石を還元して得られた還元鉄粉を用いるのが好ましい。還元鉄粉は、アトマイズ鉄粉に比べ、成形性が良く、成形により粗大な気孔ができにくい。さらに焼結性も良いため、粗大な気孔が少なく、気孔が微細化することによって、焼結体の強度や靭性が向上するからである。なお、還元鉄粉の見掛密度としては、1.7Mg/m3から3.0Mg/m3程度であればよい。より好ましくは2.2〜2.8Mg/m3 である。
まず、鉄基粉末と、Mo含有粉末の原料であるMo原料粉末とを準備する。
鉄基粉末は、いわゆる還元鉄粉を含んでいる。また、Mo原料粉末としては、Mo含有粉末そのものを用いても良いし、あるいはMo含有粉末に還元可能なMoの化合物を用いてもよく、Moの純金属粉末をはじめとして、酸化Mo粉末、あるいはFe-Mo(フェロモリブデン)粉末などのMo合金粉末が有利に適合する。また、Moの化合物としては、Mo炭化物、Mo硫化物、Mo窒化物などが好適である。なお、Mo原料粉末の平均粒径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。尚、上記平均粒径とは、体積基準のメジアン径(いわゆるd50)のことである。
上記熱処理の雰囲気としては、還元性雰囲気や水素含有雰囲気が好適であり、とりわけ水素雰囲気が適している。なお、真空下で熱処理を加えても良い。また、好適な熱処理の温度は800〜1000℃の範囲である。
ここで、Cuは、鉄基粉末の固溶強化、焼入れ性向上により、焼結部品の強度を高める有用元素である。また、Cu粉は、焼結の際に溶融して液相となり、鉄基粉末の粒子を互いに固着させる作用もある。
しかしながら、その添加量が0.5%に満たないとその添加効果に乏しく、一方4.0%を超えると、焼結部品の強度向上効果が飽和するばかりでなく、切削性の低下を招く。したがって、添加する場合、Cu粉は0.5〜4.0%の範囲に限定する。好ましくは1.0〜3.0%の範囲である。なお、添加するCu粉の平均粒径は、1〜50μm程度が好ましい。
本発明の粉末冶金用合金鋼粉を用いた加圧成形に際しては、他に、粉末状の潤滑剤を混合することができる。また、金型に潤滑剤を塗布あるいは付着させて成形することもできる。いずれの場合であっても、潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアミド系ワックスおよびその他公知の潤滑剤のいずれもが好適に用いることができる。なお、潤滑剤を混合する場合は、粉末冶金用合金鋼粉:100質量部に対して、0.1〜1.2質量部程度とすることが好ましい。
鉄基粉末には、見掛密度:2.60g/cm3の還元鉄粉、あるいは見掛密度:3.00g/cm3のアトマイズ鉄粉を用い、JIS Z 8801で規定される異なる目開きの篩による分級により、鉄基粉末(鉄粉)の最大粒径を調整した。これらの鉄基粉末を表1に示す所定の比率で配合し、さらに酸化Mo粉末(平均粒径:10μm)を所定の比率で添加し、V型混合機で15分間混合したのち、露点:30℃の水素雰囲気で熱処理(保持温度:900℃、保持時間:1h)して、鉄基粉末の表面に表1に示す所定量のMoを拡散付着させた粉末冶金用合金鋼粉を製造した。
ついで、これらの粉末冶金用合金鋼粉に対して、表1に示した平均粒径と量の黒鉛粉末、銅粉末(平均粒径:30μm)を添加し、さらに、得られた合金鋼粉の混合粉:100質量部に対しエチレンビスステアリン酸アミドを0.6質量部添加したのち、V型混合機で15分間混合した。その後、密度:7.0g/cm3に加圧成形して、長さ:55mm、幅:10mm、厚さ:10mmのタブレット状成形体を作製した。
このタブレット状成形体に焼結を施して、焼結体とした。この焼結は、プロパン変成ガス雰囲気中にて、焼結温度:1130℃、焼結時間:20分の条件で行った。
得られた焼結体を、JIS Z 2241で規定される引張試験に供するため、平行部径:5mmの丸棒引張試験片に加工した。また、JIS Z 2242で規定されるシャルピー衝撃試験用には、焼結したままの形状で、カーボンポテンシャル0.8mass%のガス浸炭(保持温度:870℃、保持時間:60分)を行った後、焼入れ(60℃、油焼入れ)および焼戻し(保持温度:180℃、保持時間:60分)を行ったものを用いた。
なお、表1には、従来材として4Ni材(4Ni-1.5Cu-0.5Mo、原料粉の最大粒径:180μm)の結果を合わせて示した。発明例は、Ni、Cuを用いずとも、従来の4Ni材以上の特性が得られることが分かる。
Claims (5)
- 鉄基粉末の表面に、Mo含有合金粉末を拡散付着させた粉末冶金用合金鋼粉であって、
上記鉄基粉末が還元鉄粉を含み、かつ該鉄基粉末の最大粒径が100μm以下であり、さらにMoが上記粉末冶金用合金鋼粉の全体に対する比率で0.2〜1.5質量%含有し、かつ、黒鉛粉が上記粉末冶金用合金鋼粉の全体に対する比率で0.1〜1.0質量%含有している粉末冶金用合金鋼粉。 - 請求項1に記載の鉄基粉末の酸素含有量が0.3質量%以下である粉末冶金用合金鋼粉。
- 前記黒鉛粉の平均粒径が50μm以下である請求項1または2に記載の粉末冶金用合金鋼粉。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末冶金用合金鋼粉に、該合金鋼粉の全体に対する比率で、さらにCu粉が0.5〜4.0質量%含有している粉末冶金用合金鋼粉。
- 請求項4に記載のCu粉の平均粒径が50μm以下である粉末冶金用合金鋼粉。
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