JP5929624B2 - ポリエーテルポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物に関し、詳しくは、自動車部品や電気部品、電子部品等の材料として好適なポリエーテルポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性等の機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品等の分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66等多くの種類が知られているが、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」ともいう。)は、ポリアミド6、ポリアミド66等とは異なって、主鎖に芳香環を有し、高剛性、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。これらのことから、MXD6は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料、特に射出成形用材料として、近年ますます広く利用されてきている。
しかし、MXD6は、ポリアミド66等の他のポリアミドに比べれば、剛性が大きく、強度はあるものの、それを上回る衝撃に対して脆い点を有しており、MXD6に対しては各種検討が行われている(例えば特許文献1参照)。
また、より強いポリアミド樹脂材料も求められている。MXD6よりも強度の強いメタキシリレン系ポリアミド樹脂として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合ジアミンから得られるキシリレンアジパミド(以下、「MP6」ともいう。)がある。しかしながら、MP6は、MXD6と同様に、強い衝撃に対して脆い点を有しており、どちらにおいても靱性の改善が求められていた。
特開昭和51−63860号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、既存のポリアミド樹脂よりも強度が強く、また靱性が高く、結晶化に優れ、更に耐衝撃性等の機械物性に優れる成形品とすることができるポリエーテルポリアミド樹脂組成物及びその成形品提供することにある。
本発明は、以下のポリエーテルポリアミド樹脂組成物及び成形品を提供する。
<1>ジアミン構成単位が下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、充填剤(B)15〜200質量部を配合した、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
Figure 0005929624
(式中、x+zは1〜30、yは1〜50を表し、R1はプロピレン基を表す。)
<2>上記<1>に記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、既存のポリアミド樹脂(MXD6、MP6)材料よりも、衝撃強度や引張弾性率に優れることから、強度が強く、靱性が高いキシリレン系ポリアミド樹脂系組成物であり、特に射出成形用の材料として好適である。
また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、結晶化の程度も十分で、耐衝撃性等の機械物性に優れている。
[ポリエーテルポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、ジアミン構成単位が下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、充填剤(B)15〜200質量部を配合したものである。
Figure 0005929624
(式中、x+zは1〜30、yは1〜50を表し、R1はプロピレン基を表す。)
<ポリエーテルポリアミド樹脂(A)>
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位が上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。該ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を用いることで、柔軟性、引張破断伸び等の機械的特性に優れるポリエーテルポリアミド樹脂組成物とすることができる。
ポリエーテルアミド樹脂(A)のジアミン構成単位として、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)を加えることで、ポリエーテルアミド樹脂(A)の弾性率や伸び率、耐衝撃性を向上させることができる。
また、ジアミン構成単位及びジカルボン酸構成単位が上記構成であると、ポリエーテルアミド樹脂(A)及び最終的に得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物の吸水率を最適化することができ、更には離型性等の成形加工性を向上させることができる。また、成形品を薄肉化しても、弾性率等の物性を保持することができるため、成形品の軽量化を図ることもできる。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン構成単位は、上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する。
(ポリエーテルジアミン化合物(a−1))
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン構成単位は、上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位を含む。上記一般式(1)における(x+z)の数値は1〜30であり、好ましくは2〜25、より好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜15である。また、yの数値は1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。x、y、zの値が上記範囲より大きい場合、溶融重合の反応途中に生成するキシリレンジアミンとジカルボン酸とからなるオリゴマーやポリマーとの相溶性が低くなり、重合反応が進行しづらくなる。
また、上記一般式(1)におけるR1はいずれもプロピレン基を表す。−OR1−で表されるオキシプロピレン基の構造は、−OCH2CH2CH2−、−OCH(CH3)CH2−、−OCH2CH(CH3)−のいずれであってもよい。
ポリエーテルジアミン化合物(a−1)の重量平均分子量は、好ましくは204〜5000、より好ましくは250〜4000、更に好ましくは300〜3000、特に好ましくは400〜2000、最も好ましくは500〜1800である。ポリエーテルジアミン化合物の平均分子量が上記範囲内であれば、柔軟性やゴム弾性等のエラストマーとしての機能を発現するポリマーを得ることができる。
(キシリレンジアミン(a−2))
ポリエーテルポリアミドエラストマー(A)を構成するジアミン構成単位は、キシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含む。キシリレンジアミン(a−2)としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であることが好ましく、メタキシリレンジアミン、又はメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物であることがより好ましい。
キシリレンジアミン(a−2)がメタキシリレンジアミンに由来する場合、得られるポリエーテルポリアミド樹脂は、柔軟性、結晶性、溶融成形性、成形加工性、強靭性に優れたものとなる。
キシリレンジアミン(a−2)が、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物に由来する場合、得られるポリエーテルポリアミド樹脂は柔軟性、結晶性、溶融成形性、成形加工性、強靭性に優れ、更に高耐熱性、高弾性率を示す。
キシリレンジアミン(a−2)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物を用いる場合には、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの総量に対するパラキシリレンジアミンの割合は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは1〜80モル%であり、更に好ましくは5〜70モル%である。すなわち、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとのモル比(MXDA/PXDA)が、好ましくは100/0〜10/90であり、より好ましくは99/1〜20/80であり、更に好ましくは95/5〜30/70である。パラキシリレンジアミンの割合が上記範囲であれば、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の融点が、該ポリエーテルポリアミド樹脂の分解温度に近接せず好ましい。
ジアミン構成単位中のポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位の割合、すなわち、ジアミン構成単位を構成するポリエーテルジアミン化合物(a−1)とキシリレンジアミン(a−2)との総量に対する、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)の割合は、好ましくは0.1〜50モル%、より好ましくは0.5〜40モル%、更に好ましくは1〜35モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。
ジアミン構成単位中のポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位の割合が50モル%未満であれば成形品の外観が良好であり、上記範囲内であれば、得られるポリエーテルポリアミド樹脂は溶融成形性に優れ、更に衝撃強度及び引張弾性率等の機械物性が優れたものとなる。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン構成単位は、上述したように、前記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジアミン化合物に由来する構成単位を含んでもよい。
ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)以外のジアミン構成単位を構成しうるジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(ジカルボン酸構成単位)
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸構成単位は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらの中でも結晶性、高弾性の観点からアジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。これらのジカルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
セバシン酸及びアジピン酸以外の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を使用する場合の使用割合は、ジカルボン酸構成単位中、好ましくは50モル%未満であり、より好ましくは40モル%以下である。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸構成単位は、上述したように、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジカルボン酸に由来する構成単位を含んでもよい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸構成単位を構成しうるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類等を例示でき、これらを組み合わせて使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸との混合物を使用する場合、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の成形加工性は向上し、ガラス転移温度の上昇することで耐熱性も向上させることができる。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とのモル比(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸/イソフタル酸)は、50/50〜99/1が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。
更に、ジアミン構成単位及びジカルボン酸構成単位以外にも、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を構成する単位として、本発明の効果を損なわない範囲で、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合単位として使用することもできる。
(ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の製造)
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。また、重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
溶融状態における重縮合方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)とジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリエーテルポリアミド樹脂(A)を製造することができる。また、ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリエーテルポリアミド樹脂(A)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。この際、ジアミン成分のうち、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)については、ジカルボン酸成分とともに予め反応槽内に仕込んでおいてもよい。その場合もまた、反応系を均一な液状態で保つために、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)以外のジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重合が進められる。ポリエーテルジアミン化合物(a−1)を予め反応槽内に仕込んでおくことで、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)の熱劣化を抑制することができる。
その他重合条件は特に限定されないが、原料ジアミン成分及びジカルボン酸成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤を適宜選択し、重合温度を低く、重合時間を短くなるようにすることで、上記の特性、特に熱的性質を制御したポリエーテルポリアミド樹脂(A)を製造することができる。
また、更にポリエーテルポリアミド樹脂(A)の分子量を高める必要がある場合、固相重合を行うことが好ましい。固相重合方法は、特に限定されず、回分式加熱装置等を用いて不活性ガス雰囲気下、あるいは減圧下にて実施できる。
溶融重縮合で得られたポリエーテルポリアミド樹脂(A)は、一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥して使用される。
乾燥ないし固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。
ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)と、ジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)とのモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)は、好ましくは0.9〜1.1の範囲、より好ましくは0.93〜1.07の範囲、更に好ましくは0.95〜1.05の範囲、更に好ましくは0.97〜1.02の範囲である。モル比が上記範囲内であれば、高分子量化が進行しやすくなる。
重合温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは160〜280℃、更に好ましくは170〜270℃である。重合温度が上記温度範囲内であれば、重合反応が速やかに進行する。また、モノマーや重合途中のオリゴマー、ポリマー等の熱分解が起こりにくいため、得られるポリマーの性状が良好なものとなる。
重合時間は、ジアミン成分を滴下し始めてから通常1〜5時間である。重合時間を上記範囲内とすることにより、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の分子量を十分に上げることができ、更に得られたポリマーの着色が抑えることができる。
重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン化合物、又はそれらの塩やエステル化合物等のリン原子含有化合物が挙げられる。塩及びエステルを形成する具体例としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、バナジウム、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩、アンモニウム塩、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等を挙げることができる。これらの中でも、アミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れることから次亜リン酸ナトリウムが好ましい。本発明で使用できる上記リン原子含有化合物は上記例示した化合物に限定されない。
また更に、上記重合触媒が、熱時劣化等により、ポリアミド樹脂中に凝集したり、異常反応を引き起こすことを抑制するために、アルカリ金属、アルカリ土類金属化合物を併せて添加することが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム及び炭酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヒドロケイ皮酸、γ‐フェニル酪酸、p−フェノキシ安息香酸、o−オキシケイ皮酸、o−β−クロルフェニルプロピオン酸、m−クロルフェニルプロピオン酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物が例示されるが、これら化合物に限定されるものではない。これらの中でも、酢酸ナトリウムが好ましい。重縮合系内にアルカリ(土類)金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が0.5〜1となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.95であり、更に好ましくは0.6〜0.9である。上記範囲内であると、リン原子含有化合物のアミド化反応促進を抑制する効果が適度であり、反応を抑制しすぎることにより重縮合反応速度が低下し、ポリマーの熱履歴が増加してポリマーのゲル化が増大することを避けることができる。
(ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の物性)
本発明の樹脂組成物に使用するポリエーテルポリアミド樹脂(A)は、キシリレンジアミン(a−2)と炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とから形成される高結晶性のポリアミドブロックをハードセグメントとし、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)由来のポリエーテルブロックをソフトセグメントとすることで、溶融成形性及び成形加工性に優れる。更に得られたポリエーテルポリアミド樹脂は強靭性、柔軟性、結晶性、耐熱性等に優れている。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)は、最終的に得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度が、好ましくは50〜1,000ppmとなるように、リン化合物を含有することが好ましい。
なお、本発明において、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度とは、該樹脂組成物中から、後記の充填材(B)等の無機成分を取り除いた後の有機成分中に残存するリン原子濃度とする。
リン化合物は、上記した重合触媒に由来するものが多いが、特に限定されない。ポリエーテルポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度は、好ましくは50〜1,000ppm、より好ましくは100〜800ppm、更に好ましくは150〜600ppmである。ポリエーテルポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度が50ppm以上であれば、コンパウンド時あるいはポリアミド樹脂組成物の成形加工時に黄変するおそれがない。また、1,000ppm以下であれば、熱安定性及び機械的強度が良好となる。
リン原子濃度は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)重合時の重合触媒の種類、量、重合条件を調整したり、得られたポリエーテルポリアミド樹脂(A)を、水、熱水等の抽出溶媒で抽出処理することにより洗浄し、触媒残渣の過多分を除去することにより調整することができる。本発明においては、重合触媒の種類、量を調整する方法が好ましい。
また、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度の測定は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を濃硫酸で湿式分解後、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618nmにて定量することができる。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の硫黄原子濃度は、好ましくは1〜200ppm、より好ましくは10〜150ppm、更に好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、製造時にポリエーテルポリアミド樹脂の黄色度(YI値)の増加を抑えることができるばかりでなく、ポリエーテルポリアミド樹脂を溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られた成形品のYI値を低くすることができる。
更に、ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、その硫黄原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜200ppm、更に好ましくは10〜150ppm、特に好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミド樹脂を重合する際のYI値の増加を抑えることができる。また、ポリエーテルポリアミド樹脂を溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られる成形品のYI値を低くすることができる。
同様に、ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、そのナトリウム原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは10〜300ppm、更に好ましくは20〜200ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミド樹脂を合成する際の反応性が良く、適切な分子量範囲にコントロールしやすく、更に、前述のアミド化反応速度調整の目的で配合するアルカリ金属化合物の使用量を少なくすることができる。また、ポリエーテルポリアミド樹脂を溶融成形する際に粘度増加を抑制することができ、成形性が良好となると共に成形加工時にコゲの発生を抑制できることから、得られる成形品の品質が良好となる傾向にある。
このようなセバシン酸は、植物由来のものであることが好ましい。植物由来のセバシン酸は、不純物として硫黄化合物やナトリウム化合物を含有することから、植物由来のセバシン酸に由来する単位を構成単位とするポリエーテルポリアミド樹脂は、酸化防止剤を添加しなくてもYI値が低く、また、得られる成形品のYI値も低い。また、植物由来のセバシン酸は、不純物を過度に精製することなく使用することが好ましい。過度に精製する必要が無いので、コスト的にも優位である。
植物由来の場合のセバシン酸の純度は、99〜100質量%が好ましく、99.5〜100質量%がより好ましく、99.6〜100質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
例えば、セバシン酸に含まれる他のジカルボン酸(1,10−デカメチレンジカルボン酸等)は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.7質量%がより好ましく、0〜0.6質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
また、セバシン酸に含まれるモノカルボン酸(オクタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸等)は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.5質量%がより好ましく、0〜0.4質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
セバシン酸の色相(APHA)は、100以下が好ましく、75以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂のYI値が低いため、好ましい。なお、APHAは、日本油化学会(Japan Oil Chemist’s Society)の基準油脂分析試験法(Standard Methods for the Analysis of Fats,Oils and Related Materials)により測定することができる。
また、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の密度は、1.0〜1.3g/cm3であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.25g/cm3の範囲である。この範囲であると、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物が強度と軽さを兼備えたものとすることができる。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の密度は、JIS K7112 A法(水中置換法)に準拠し測定することができる。
また、本発明の樹脂組成物に使用するポリエーテルポリアミド樹脂(A)は、その水分率が0.01〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4質量%、更に好ましくは0.03〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。
水分率が0.5質量%以下であれば、後記する充填材(B)をコンパウンドする際にポリエーテルポリアミド樹脂(A)が加水分解するおそれがなく、得られた樹脂組成物の剛性や衝撃強度等の機械物性が良好となるため好ましい。
また、水分率が0.01質量%以上であれば、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を乾燥させる際に黄変するおそれがなく好ましい。更に、コンパウンド時に、後記する安定剤(D)、特に無機系、特に銅化合物系の安定剤を配合するに際し、水分率が0.01質量%以上であることにより、安定剤(D)の分散が良好となり、得られたポリアミド樹脂組成物の耐熱性等の物性が低下するおそれがなく好ましい。
このような範囲に水分率を調整するには、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ベント付きの押出機でポリアミド樹脂を溶融押出する際にベント孔を減圧にすることでポリマー中の水分を除去する方法、ポリアミド樹脂をタンブラー(回転式真空槽)中に仕込み、空気、不活性ガス雰囲気下又は減圧下でポリアミド樹脂の融点未満の温度で加熱して乾燥する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。原料ジアミン成分及びジカルボン酸成分の種類、組成比を調整することによっても、水分率を最適化することができる。
なお、ここでの水分率は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)のペレットを用いた、カールフィッシャー法により測定できる。測定温度は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の融点−5℃とし、測定時間は30分である。
ポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)は、成形性及び他の樹脂との溶融混合性の観点から、好ましくは8,000〜200,000の範囲、より好ましくは9,000〜150,000の範囲、更に好ましくは10,000〜100,000の範囲である。当該数平均分子量(Mn)は実施例に記載の方法により測定される。
また、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の融点は、150〜300℃が好ましく、175〜270℃がより好ましく、180〜260℃が更に好ましい。融点が上記範囲であると、耐熱性が良好であり、成形性が良好である。
なお、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定することができ、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定される融点をいう。具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、成形性及び他の樹脂との溶融混合性の観点から、好ましくは1.1〜3.0の範囲、より好ましくは1.1〜2.9の範囲、更に好ましくは1.1〜2.8の範囲である。当該相対粘度は実施例に記載の方法により測定される。
<充填剤(B)>
本発明のポリアミド樹脂組成物に配合する充填材(B)は、この種の組成物一般に用いられるものであれば特に制限は無く、粉末状、繊維状、粒状及び板状の無機充填材が、また、樹脂系の充填材あるいは天然系の充填材も好ましく使用できる。
粉末状、粒状の充填材としては、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下の粒径を有したものであり、カオリナイト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、アルミナ、ガラスビーズ、カーボンブラック、硫化物及び金属酸化物等が使用できる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、チタン酸カリウムや硫酸カルシウムのウィスカー、ワラストナイト、カーボン繊維、鉱物繊維、及びアルミナ繊維等が使用できる。板状充填材としては、ガラスフレーク、マイカ、タルク、クレー、黒鉛、セリサイト等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維、タルク、マイカ、ワラストナイトから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガラス繊維が特に好ましい。
樹脂系の充填材としては、芳香族液晶性ポリエステル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、アクリル繊維、ポリ(ベンズイミダゾール)繊維等も挙げられる。
天然系の充填材としては、ケナフ、パルプ、麻パルプ、木材パルプ等が挙げられる。
本発明において充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填材(B)の配合量は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、15〜200質量部であり、好ましくは30〜180質量部、より好ましくは50〜150質量部である。含有量が15質量部未満では、得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物成形品の機械的強度が不足する。一方、200質量部を超えるとポリエーテルポリアミド樹脂組成物の流動性が悪化し、溶融混練、成形等が困難となる。
<カルボジイミド化合物(C)>
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物には、耐加水分解性改良剤としてカルボジイミド化合物を配合することができる。
本発明に用いられるカルボジイミド化合物(C)は、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物である。
前記ポリエーテルポリアミド樹脂(A)にカルボジイミド化合物(C)を配合すると、溶融混練時にカルボジイミド化合物(C)の一部又は全部が前記ポリエーテルポリアミド樹脂(A)と反応して、耐加水分解性が高く、かつ高分子量のポリエーテルポリアミド樹脂組成物とすることができる。ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を高分子量化するには溶融重縮合を長時間行う必要があるが、その際に前記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)の熱劣化が起こる場合があるが、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)にカルボジイミド化合物(C)を所定量配合して加熱溶融することで、短時間の加熱溶融で高分子量のポリエーテルポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
本発明に用いられるカルボジイミド化合物(C)としては、芳香族、脂肪族のカルボジイミド化合物が挙げられる。これらの中で、耐加水分解性の効果の発現度合い及び透明性の観点から、脂肪族カルボジイミド化合物を用いることがより好ましく、押出時の溶融混練性の点から、分子内に2個以上のカルボジイミド基を有する脂肪族又は脂環式ポリカルボジイミド化合物を用いることがより好ましく、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートより製造されるポリカルボジイミドを用いることが更に好ましい。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートより製造されるポリカルボジイミドとしては、日清紡ホールディングス(株)製「カルボジライトLA−1」等が挙げられる。
上記のようなポリカルボジイミドは、有機ジイソシアネートを脱炭酸縮合反応することで製造することができる。例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、各種有機ジイソシアネートを約70℃以上の温度で不活性溶媒中、もしくは溶媒を使用することなく、脱炭酸縮合反応させることによって合成する方法等を挙げることができる。
カルボジイミド化合物(C)におけるイソシアネート基含有率は、好ましくは0.1〜5モル%、より好ましくは1〜3モル%である。上記のような範囲とすることにより、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)との反応が容易となり、耐加水分解性が良好となる傾向にある。
上記カルボジイミド化合物(C)に含まれる、分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができ、これらの中では、特に工業的に入手が容易な面からジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好適である。
上記カルボジイミド化合物(C)に含まれるに分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2941956号明細書や特公昭47−33279号公報、J.org.Chem.28、2069−2075(1963)、Chemcal Review 1981,Vo1.81 No.4 p619−621)により製造したものを用いることができる。
また、上記ポリカルボジイミド化合物の合成原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等の各種有機ジイソシアネートやこれらの混合物を使用することができる。
有機ジイソシアネートとしては、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネート等を例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
またこれらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物(C)の末端を封止してその重合度を制御するために、モノイソシアネート等の末端封止剤を使用することができる。モノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、末端封止剤としては、上記のモノイソシアネートに限定されることはなく、イソシアネートと反応し得る活性水素化合物であればよい。このような活性水素化合物としては、脂肪族、芳香族、脂環式の化合物の中で、−OH基を持つメタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン、コハク酸、安息香酸、ジクロヘキサンカルボン酸等のカルボン酸、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のチオール類やエポキシ基を有する化合物等を例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド及びこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等、チタン酸テトラブチル等の金属触媒等を使用することができ、これらの内では、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。カルボジイミド化触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるカルボジイミド化合物(C)の数平均分子量(Mn)は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)への分散性の観点から、好ましくは20,000以下の範囲、より好ましくは10,000以下の範囲である。数平均分子量(Mn)が20,000より高いと、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)への分散性が低下し、本発明の効果が十分に得られなくなる。
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(C)の配合量は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1〜2質量部であり、より好ましくは0.1〜1.5質量部、更に好ましくは0.2〜1.5質量部であり、特に好ましくは0.3〜1.5質量部である。上記配合量が0.1質量部以上であれば、耐加水分解性の改善効果を十分に発揮することができ、含有量を2質量部以下とすることにより、樹脂組成物を製造する際に急激な増粘が生じることを避けることができ、溶融混練性、成形加工性が良好となる。
<安定剤(D)>
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物には、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤)を配合することができる。安定剤としては、例えば、アミン系、有機硫黄系、リン系、フェノール系等の有機系安定剤、銅化合物やハロゲン化物等の無機系安定剤が挙げられる。
安定剤の中でも熱安定性及び耐熱老化性の向上の観点から、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、フェノール系化合物、リン系化合物及び無機系化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。更に、溶融成形時の加工安定性、熱安定性及び耐熱老化性の向上の観点、並びに成形品の外観、特に着色防止の観点から、アミン系化合物、有機硫黄系化合物及び無機系化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。特に芳香族第2級アミン系化合物が好ましい。
本発明において安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(アミン系化合物)
アミン系化合物としては、芳香族第2級アミン系化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物及びジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物及びフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がより好ましい。
具体的には、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数:8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン(例えば、BASF社製、商品名:IRGANOX 5057、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックAD−Fとして入手可能)、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックCDとして入手可能)、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックTDとして入手可能)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックDPとして入手可能)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラック810−NAとして入手可能)、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラック6Cとして入手可能)、及びN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックG−1として入手可能)等のジフェニルアミン骨格を有する化合物;
N−フェニル−1−ナフチルアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックPAとして入手可能)及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックWhiteとして入手可能)等のフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物;
2,2’−ジナフチルアミン、1,2’−ジナフチルアミン、及び1,1’−ジナフチルアミン等のジナフチルアミン骨格を有する化合物;
あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。
これらの中でも、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及びN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンが好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
(有機硫黄系化合物)
有機硫黄系化合物としては、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物及び有機チオ酸系化合物が好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物及び有機チオ酸系化合物がより好ましい。
具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックMBとして入手可能)、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックMMBとして入手可能)、及び2−メルカプトベンゾイミダゾールの金属塩等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物;
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(例えば、(株)エーピーアイ コーポレーション製、商品名:DLTP「ヨシトミ」、住友化学(株)製、商品名:SUMILIZER TPL−Rとして入手可能)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(例えば、(株)エーピーアイ コーポレーション製、商品名:DMTP「ヨシトミ」、住友化学(株)製、商品名:SUMILIZER TPMとして入手可能)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(例えば、(株)エーピーアイ コーポレーション製、商品名:DSTP「ヨシトミ」、住友化学(株)製、商品名:SUMILIZER TPSとして入手可能)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(例えば、住友化学(株)製、商品名:SUMILIZER TP−Dとして入手可能)等の有機チオ酸系化合物;
ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩及びジブチルジチオカルバミン酸の金属塩等のジチオカルバミン酸系化合物;
並びに1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素(例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックNS−10−Nとして入手可能)及びトリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物;
あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
またこれら有機硫黄系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら有機硫黄系化合物の中でも、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンゾイミダゾール、及びジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートがより好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
有機硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
上記のアミン系安定剤及び有機硫黄系安定剤を配合する場合は、これらを併用してもよい。これらを併用することによって、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性が良好となる傾向にある。
アミン系安定剤及び有機硫黄系安定剤の好適な組み合わせとしては、アミン系安定剤が、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄系安定剤として、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)から選ばれる少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。更に、アミン系安定剤がN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、有機硫黄系安定剤がペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の組み合わせがより好ましい。
また、上記アミン系安定剤と有機硫黄系安定剤とを併用する場合は、耐熱老化性向上の観点から、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中の含有量比(質量比)で、アミン系安定剤/有機硫黄系安定剤=0.05〜15であることが好ましく、0.1〜5であることがより好ましく、0.2〜2が更に好ましい。
(フェノール系化合物)
フェノール系化合物(B3)としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(例えば、(株)エーピーアイ コーポレーション製、商品名:ヨシノックス425として入手可能)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO−40、住友化学(株)製、商品名:Sumilizer BBM−Sとして入手可能)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(例えば、川口化学工業(株)製、商品名:アンテージクリスタルとして入手可能)、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(例えば、住友化学(株)製、商品名:Sumilizer GA−80、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO−80として入手可能)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、BASF社製、商品名:Irganox(R)245として入手可能)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、BASF社製、商品名:Irganox259として入手可能)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン](例えば、BASF社製、商品名:Irganox565として入手可能)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]](例えば、BASF社製、商品名:Irganox1010、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO−60として入手可能)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、BASF社製、商品名:Irganox1035として入手可能)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1076、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO−50として入手可能)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1098として入手可能)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1222として入手可能)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1330として入手可能)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(例えば、BASF社製、商品名:Irganox3114、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO−20として入手可能)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1520として入手可能)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、BASF社製、商品名:Irganox1135として入手可能)等を例示できるがこれらに限定されるものではない。またこれらフェノール系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及びN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)のヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
(リン系化合物)
リン系化合物としては、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物が好ましい。
ホスファイト系化合物としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブPEP−8、城北化学工業(株)製、商品名:JPP−2000として入手可能)、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブPEP−4Cとして入手可能)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、BASF社製、商品名:Irgafos126、(株)ADEKA製、商品名:ADEKAPEP−24Gとして入手可能)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブPEP−36として入手可能)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−イソプロピルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−t−オクチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられ、特に、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブPEP−45として入手可能)が好ましい。これらホスファイト系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ホスホナイト系化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(例えば、BASF社製、商品名:Irgafos P−EPQとして入手可能)、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、特に、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。これらホスホナイト系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(無機系安定剤)
無機系安定剤としては、銅化合物及びハロゲン化物が好ましい。
無機系安定剤として使用される銅化合物は、種々の無機酸又は有機酸の銅塩であって、後述のハロゲン化物を除くものである。銅としては、第1銅、第2銅のいずれでもよく、その具体例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ステアリン酸銅の他、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物が挙げられる。
また、無機系安定剤として使用されるハロゲン化物としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物;ハロゲン化アンモニウム及び有機化合物の第4級アンモニウムのハロゲン化物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル等の有機ハロゲン化物が挙げられ、その具体例としては、ヨウ化アンモニウム、ステアリルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイド等が挙げられる。これらの中では、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩が好適である。
銅化合物及びハロゲン化物の併用、特に、銅化合物及びハロゲン化アルカリ金属塩の併用は、耐熱変色性、耐候性(耐光性)の面で優れた効果を発揮するので好ましい。例えば、銅化合物を単独で使用する場合は、成形品が銅により赤褐色に着色することがあり、この着色は用途によっては好ましくない。この場合、銅化合物及びハロゲン化物を併用することにより赤褐色への変色を防止することができる。これら無機系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、上記の安定剤のうち、溶融成形時の加工安定性、耐熱老化性、成形品外観、着色防止の点から、特には、無機系、芳香族第2級アミン系又は有機硫黄系の安定剤が特に好ましい。
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物における安定剤(D)の配合量は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.8質量部である。配合量を0.01質量部以上とすることにより、熱変色改善、耐候性/耐光性改善効果を十分に発揮することができ、配合量を1質量部以下とすることにより、成形品の外観不良、機械物性の低下を抑制することができる。
<その他の添加剤>
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物には、その特性が阻害されない範囲で、艶消剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を、必要に応じて配合することができる。
また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物には、求める成形加工性に応じて結晶核剤を使用することができる。結晶核剤には一般的に用いられているタルクや窒化ホウ素等が挙げられるが、有機核剤でもよい。
結晶核剤の配合量は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、有機核剤や窒化ホウ素の場合、好ましくは0.001〜6質量部、より好ましくは0.02〜2質量部、更に好ましくは0.05〜1質量部である。少ない場合は期待される核剤効果が得られず離型性が低下する場合があり、多すぎると耐衝撃性や表面外観が低下する傾向がある。タルクを用いる場合は、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.3〜2質量部である。タルク、窒化ホウ素以外の無機核剤の場合、好ましくは0.3〜8質量部、より好ましくは0.5〜4質量部である。少なすぎると核剤効果が得られず、多すぎると異物効果となって機械的強度や耐衝撃値が低下する傾向にある。本発明においては、耐衝撃性、引張伸度、曲げ撓み量等の機械的特性の点から、タルク又は窒化ホウ素を配合することが好ましい。
結晶核剤として用いられるタルクとしては、数平均粒子径で2μm以下のものが好ましい。窒化ホウ素としては、数平均粒子径が、通常10μm以下、好ましくは0.005〜5μm、より好ましくは0.01〜3μmである。なお、タルクの数平均粒子径は、通常、レーザー回折・散乱式の粒度分布計を用いた測定によって得られる値である。
また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)以外の樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を1種もしくは複数ブレンドすることもできる。
本発明においては、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を配合することなしに十分に本発明の効果を達成するものであるが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66等の脂肪族ポリアミド樹脂や、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド6I/6T、ポリアミド9T等の芳香族ポリアミド樹脂を単独又は複数添加することを排除しない。
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を配合する場合は、これらの中でも、ポリアミド6及び/又はポリアミド66を配合すると、ポリアミド樹脂組成物の結晶化速度がより速くなり、成形時の成形サイクルをより短縮することができるため好ましい。
[ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されるものではなく、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)及び充填材(B)を、また必要に応じて配合されるその他の成分を、任意の順序で混合、混練することによって製造することができる。なかでも、単軸又は二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて溶融混練する方法が好ましく、生産性、汎用性等の点から二軸押出機を用いる方法が特に好ましい。その際、溶融混練温度は200〜300℃、滞留時間は10分以下に調整することが好ましく、スクリューには少なくとも一カ所以上の逆目スクリューエレメント及び/又はニーディングディスクを有し、該部分において一部滞留させながら溶融混練することが好ましい。溶融混練温度を上記範囲とすることにより、押出混練不良や樹脂の分解が生じ難い傾向となる。また、充填材としてガラス繊維を配合する場合は、押出機の途中からサイドフィードして溶融混練するのが好ましい。
[ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の物性]
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率は、0.01〜0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.09質量%、更に好ましくは0.03〜0.08質量%である。
水分率が0.01質量%以上であれば、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物が帯電するおそれがなく、成形の際、組成物ペレットが成形機ホッパーやフィーダー等に付着せず、良好に成形することができる。また、0.1質量%以下であれば、成形加工時に加水分解するおそれがなく、得られた成形品の弾性率等の物性や、長期物性安定性が良好で好ましい。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率の調整は、例えば、乾燥の方法、コンパウンド時の押出機真空ベントの減圧程度やその後の冷却の程度等により、行うことができる。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物を乾燥する場合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物を真空ポンプ付きの加熱可能なタンブラー(回転式真空槽)中や減圧乾燥機中に仕込み、減圧下でポリエーテルポリアミド樹脂の融点以下、好ましくは160℃以下の温度で、目的の水分率となるよう適当な時間加熱して乾燥する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、原料ジアミン成分及びジカルボン酸成分の種類、組成比を調整することによっても、水分率を最適化することができる。
なお、ここでの水分率は、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、カールフィッシャー法により測定できる。測定温度は、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の融点−5℃とし、測定時間は30分である。
また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度は、50〜1,000ppmであることが好ましい。リン原子は上記したポリエーテルポリアミド樹脂(A)の重合触媒に由来するものが多いが、特に限定されない。ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度は、より好ましくは50〜800ppm、更に好ましくは100〜600ppm、特に好ましくは150〜400ppmである。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度が50ppm以上であれば、コンパウンド時あるいはポリエーテルポリアミド樹脂組成物の成形加工時に黄変するおそれがない。また、1,000ppm以下であれば、熱安定性や、機械的強度が良好となる。
なお、本発明において、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度とは、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中から、充填材(B)等の無機成分を取り除いた後の有機成分中に残存するリン原子濃度とする。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度は、樹脂組成物の原料であるポリエーテルポリアミド樹脂(A)重合時の重合触媒の種類、量、重合条件を調整したり、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を、水、熱水等の抽出溶媒で抽出処理したりすることにより洗浄し、触媒の過多分を除去することにより調整することができる。また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物製造時に、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)及び充填材(B)に更に、リン系安定剤等のリン原子を有する各種添加剤を配合することによっても、調整することができる。本発明においては、ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の重合触媒の種類、量を調整する方法が好ましい。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度の測定は、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物を濃硫酸で湿式分解後、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618nmにて定量することができる。
本発明の特に好ましい態様は、上記したように、原料ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の水分率が0.01〜0.5質量%であり、かつ、得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率が0.01〜0.1質量%の場合である。
水分率が0.5質量%を超える原料ポリエーテルポリアミド樹脂(A)を用いて、目的のポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率を0.01〜0.1質量%となるように調整しても、本発明の望ましい効果が得られない場合がある。また、逆に、原料ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の水分率が0.01〜0.5質量%のものを用いても、得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率が上記範囲を外れる場合も、本発明の望ましい効果が得られない場合がある。原料ポリエーテルポリアミド樹脂(A)と、それを用いて得られるポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率の両方を上記の範囲とすることによって、軽く、更には、機械的強度、外観、色調に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることが容易になる。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の衝撃強度(シャルピー衝撃強度、ISO179に準拠)は、機械強度の観点から、好ましくは20.3kJ/m2以上、より好ましくは21.0kJ/m2以上、更に好ましくは23kJ/m2以上である。
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の引張弾性率(ISO527に準拠)は、柔軟性及び機械強度の観点から、好ましくは13GPa以上、より好ましくは15GPa以上、更に好ましくは16GPa以上、特に好ましくは16.5GPa以上である。
[成形品]
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、従来公知の成形方法により、各種形態の成形品に成形することができる。成形法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、プレス成形、ダイレクトブロー成形、回転成形、サンドイッチ成形及び二色成形等の成形法を例示することができる。
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、優れた熱安定性及び耐熱老化性を兼ね備えており、自動車部品、電機部品、電子部品等として好適である。特に、ポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品としては、ホース、チューブ又は金属被覆材が好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
[評価方法]
実施例及び比較例に使用したポリエーテルポリアミド樹脂(A)の相対粘度、数平均分子量、ガラス転移温度、結晶化温度、融点、水分率、密度、及びリン原子濃度、並びに下記の方法で得られたポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率、リン原子濃度、シャルピー衝撃強度、引張弾性率は以下のようにして測定した。
(1)相対粘度(ηr)
試料0.2gを精秤し、96%硫酸20mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から下式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
(2)数平均分子量(Mn)
まず試料をフェノール/エタノール混合溶媒、及びベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2×1,000,000/([NH2]+[COOH])
[NH2]:アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
(3)示差走査熱量測定(ガラス転移温度、結晶化温度及び融点)
示差走査熱量の測定はJIS K7121、K7122に準じて行った。示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、各試料をDSC測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で260℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、260℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tch及び融点Tmを求めた。
(4)水分率
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)又はポリエーテルポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、カールフィッシャー法により、ポリエーテルポリアミド樹脂の融点−5℃で、測定時間30分で行った。
(5)密度
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の密度は、JIS K7112 A法(水中置換法)に準拠し測定した。
(6)リン原子濃度
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)又はポリエーテルポリアミド樹脂組成物0.5gを秤量し、濃硫酸を20ml加え、ヒーター上で湿式分解した。冷却後、過酸化水素5mlを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mlになるまで濃縮した。再び冷却し、純水で500mlとした。Thermo Jarrell Ash社製 IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618nmにて定量した。
なお、本発明において、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度とは、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物中から、充填材(B)等の無機成分を取り除いた後の有機成分中に残存するリン原子濃度とする。
(7)シャルピー衝撃強度
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物を用い、ファナック社製射出成形機100Tにて、シリンダー温度280℃、金型温度15℃の条件で、ISO試験片を作製し、ISO179に準拠して評価を実施した(単位:KJ/m2)。
(8)引張弾性率
ポリエーテルポリアミド樹脂組成物を用い、住友重機械工業社製射出成形機 SE130−DUにて、シリンダー温度280℃、金型温度15℃の条件で、ISO試験片を作製し、ISO527に準拠して評価を実施した(単位:GPa)。
[原料]
充填剤(B)としては、以下のガラス繊維を使用した。
・ガラス繊維:
日本電気硝子社製、チョップドストランド、商品名「T−275H」
また、添加剤としては、以下のものを使用した。
・カルボジイミド化合物(C):
脂環式ポリカルボジイミド化合物
日清紡ホールディングス社製、商品名「カルボジライトLA−1」
以下、このカルボジイミド化合物を、「カルボジイミド」と略記することがある。
・安定剤(D):
芳香族第2級アミン系安定剤
N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックwhite」
以下、「安定剤」と略記することがある。
・結晶核剤−微粉タルク:
林化成社製、商品名「ミクロンホワイト#5000S」、平均粒子径2.8μm
<製造例1>
撹拌機、窒素ガス導入口、縮合水出口を備えた容積約50Lの反応容器にアジピン酸1169.20g、次亜リン酸ナトリウム一水和物10.47g及び酢酸ナトリウム7.294gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、少量の窒素ガスを供給しながら170℃で溶融させた。
260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(a−2)として三菱ガス化学(株)製1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン〔メタキシリレンジアミン:MXDA〕1078.70gと、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)としてポリエーテルジアミン〔米国HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542:下式(1−1)で表され、a+cの概数は6.0、bの概数は9.0、概略分子量は1000である(カタログ値)〕800.00gの混合液を滴下し、約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
ポリエーテルポリアミド樹脂についての上記評価方法の結果を、表1に示した。
Figure 0005929624
[実施例1]
ポリエーテルポリアミド樹脂(A)として、上記製造例1で得られたポリエーテルポリアミド樹脂を使用した。
上記製造例1で得られたポリエーテルポリアミド樹脂を、表1に示す組成となるように、他の各成分を秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械(株)社製「TEM37BS」)の基部から投入して溶融した後、ガラス繊維をサイドフィードした。押出機の設定温度は、サイドフィード部まで280℃、サイドフィード部からは260℃とし、押出して、ペレット化して、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂組成物のペレットを80℃の除湿エアー(露点−40℃)で8時間乾燥した。
このポリエーテルポリアミド樹脂組成物についての上記評価方法の結果を、表1に示した。
[実施例2]
製造例1において、キシリレンジアミン(a−2)として、メタキシリレンジアミン(MXDA)とパラキシリレンジアミン(PXDA)の混合割合を表1に記載した割合とし、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.90とし、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を増やして表1に記載のリン原子濃度となるようにした以外は、製造例1と同様にしてポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂を使用して、各成分の配合量を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様に行い、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
このポリエーテルポリアミド樹脂組成物についての上記評価方法の結果を、表1に示した。
また、このポリエーテルポリアミド樹脂組成物を用い、次の方法により測定した引張強度保持率から、得られた樹脂組成物は120℃で保存した際の耐熱老化性に優れることがわかった。
(引張強度保持率の測定)
得られたポリエーテルポリアミド樹脂組成物を用い、住友重機械工業社製射出成形機 SE130−DUにて、シリンダー温度280℃、金型温度15℃の条件で、ISO試験片を作製し、上記ISO試験片に対して熱風乾燥機にて120℃、72時間の熱処理を行った。次に、熱処理前後の試験片について引張試験を行い、破断時の応力(MPa)を求めた。なお、装置は引張試験機((株)東洋精機製作所製、ストログラフ)を使用し、測定温度を23℃、測定湿度を50%RHとして測定した。熱処理前後の破断時の応力の比を引張強度保持率とし、下記式より引張強度保持率(%)を算出したところこの引張強度保持率が高く、耐熱老化性に優れることがわかった。
引張強度保持率(%)=〔120℃72時間熱処理後の成形片の破断時応力(MPa)/120℃72時間熱処理前の成形片の破断時応力(MPa)〕×100
[実施例3〜7]
製造例1において、キシリレンジアミン(a−2)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合割合を表1に記載した割合とし、ジカルボン酸成分として表1に記載の割合のセバシン酸又はアジピン酸を使用し、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.90とし、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を変更して表1に記載のリン原子濃度となるようにした以外は、製造例1と同様にしてポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂を使用して、各成分の配合量を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様に行い、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
このポリエーテルポリアミド樹脂組成物についての上記評価方法の結果を、表1に示した。
[比較例1]
ガラス繊維を配合しない他は実施例3と同様に行い、ポリエーテルポリアミド樹脂のペレットを得た。
このポリエーテルポリアミド樹脂についての上記評価方法の結果を、表1に示した。
[比較例2〜7]
メタキシリレンジアミン(a−2)、パラキシリレンジアミン(a−2)、セバシン酸又はアジピン酸の割合を下記表2に記載の量とし、上記実施例と同様に、酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.90とし、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を変更して、製造例1と同様にしてポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂を使用して、各成分の配合量を下記表2に記載の量とし、上記実施例と同様ポリアミド樹脂組成物を製造し、各種評価を行った。
評価結果を表2に示す。
Figure 0005929624
Figure 0005929624
表1及び2から、実施例の樹脂組成物は良好な引張弾性率を有しつつ衝撃強度に優れることから、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、衝撃強度や引張弾性率に優れ、強度が強く、靱性が高い材料であることがわかる。一方で、比較例の樹脂組成物は引張弾性率が良好であるものの衝撃強度が低いため脆い材料であることがわかる。
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、強度が強く、靱性が高いキシリレン系ポリアミド樹脂系組成物であり、また、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、結晶化の程度も十分で、耐衝撃性等の機械物性に優れる。そのため、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂組成物は、各種工業部品、機械及び電気精密機器のギア及びコネクタ、自動車のエンジン回りの燃料チューブ、コネクタ部品、摺動部品、ベルト、ホース、消音ギア等の電気部品及び電子部品、スポーツ用品等に好適に適用できる。

Claims (14)

  1. ジアミン構成単位が下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、充填剤(B)15〜200質量部を配合し、ジアミン構成単位中のポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位の割合が0.1〜50モル%である、ポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
    Figure 0005929624

    (式中、x+zは1〜30、yは1〜50を表し、Rはプロピレン基を表す。)
  2. 充填剤(B)が、カオリナイト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、アルミナ、ガラスビーズ、カーボンブラック、硫化物、金属酸化物、ガラス繊維、ウィスカー、ワラストナイト、カーボン繊維、鉱物繊維、アルミナ繊維、ガラスフレーク、マイカ、タルク、クレー、黒鉛、セリサイト、芳香族液晶性ポリエステル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、アクリル繊維、ポリ(ベンズイミダゾール)繊維、ケナフ、パルプ、麻パルプ及び木材パルプから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  3. キシリレンジアミン(a−2)が、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  4. 炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  5. ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の水分率が、0.01〜0.5質量%である、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  6. ポリエーテルポリアミド樹脂組成物の水分率が、0.01〜0.1質量%である、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  7. ポリエーテルポリアミド樹脂(A)の密度が、1.0〜1.3g/cmである、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  8. ポリエーテルポリアミド樹脂(A)のリン原子濃度が、50〜1,000ppmである、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  9. ポリエーテルポリアミド樹脂組成物のリン原子濃度が、50〜1,000ppmである、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  10. ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、更にカルボジイミド化合物(C)を0.1〜2質量部配合した、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  11. カルボジイミド化合物(C)が、脂肪族又は脂環式ポリカルボジイミド化合物である、請求項10に記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  12. ポリエーテルポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、更に安定剤(D)を0.1〜1質量部配合した、請求項1〜11のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  13. 安定剤(D)が、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、フェノール系化合物、リン系化合物及び無機系化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
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