JP5927853B2 - 転がり軸受の製造方法及び転がり軸受 - Google Patents
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Description
そのために、転がり軸受が設けられているボックス内には、焼き付き防止に本来必要となる量よりも多い潤滑油が溜められている。このため、軸受空間に過剰な潤滑油が供給されてしまうと、その潤滑油の撹拌抵抗が大きくなって、転がり軸受に大きな回転抵抗が生じ、燃費向上の妨げとなってしまうことがある。
この場合、充填材が軸受空間に滞在することができると共に、保持器に付着した充填材が、転動体の転走の抵抗となるのを防ぐことができる。
この場合、保持器に付着させた充填材の耐久性を高めることができる。
そして、内輪と外輪とを相対回転させながら、注入した充填材を冷却することにより軸受空間においてこの充填材を凝固させるので、転動体の表面、及び、内輪の外周面と外輪の内周面とのうち転動体が転走する軌道面では、注入した充填材が吐き出され(押し出され)、充填材が付着するのを防ぐことができる。すなわち、仮に、転動体の表面及び内外輪の軌道面に充填材が付着して固まると、転がり軸受の回転に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本発明によれば、これを防ぐことができる。
また、本発明の転がり軸受の製造方法によれば、内輪、外輪、転動体及び保持器の形状を変更しなくても、充填材を軸受空間に設けることができるので、この充填材によって軸受空間のすきま(容積)を減らし、軸受空間を通過する潤滑油の量を制限することができる。
以上、これら転がり軸受及び製造方法によれば、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
また、本実施形態では、この転がり軸受1は、自動車のデファレンシャルギヤ部に用いられる転がり軸受であり、高速回転時に焼き付きが発生するのを防止するために、潤滑油が、回転する軸(図示せず)と一体回転するリングギヤ(図示せず)の撥ねかけによって、転がり軸受1の軸受内部(軸受空間8)に供給される。
外輪3の内周には、円錐面からなる外輪軌道面31が形成されている。そして、ころ4は、鍔部22,23によって、軸方向の移動が規制され、内輪軌道面21及び外輪軌道面31を転走することができる。本実施形態では、内輪2、外輪3及びころ4は、鋼製からなる。
保持器5には、ころ4それぞれを収容しているポケット14が複数形成されており、円環部11,12と周方向隣り合う柱部13,13との間に形成される空間がポケット14となる。各ポケット14にころ4(図2では図示省略)が一つ収容され、各ポケット14において、ころ4に対向する面がポケット面15となる。保持器5は、樹脂製又は金属製である。
寒天は、アガロースなどの多糖類を主成分としたものであり、寒天を水と共に、寒天の融点以上の温度に加熱することで、寒天の溶液(ゾル)となる。
そして、この寒天の溶液を、寒天の凝固点以下の温度まで冷却することによって凝固する(ゲル化する)。
また、充填材7に添加剤を含ませる場合、寒天の溶液に添加剤を加えればよく、これにより、固化した充填材7には、寒天以外に添加剤が含まれる。
具体的に説明すると、本実施形態では、内輪2の外周面2aと外輪3の内周面3aとの間であって、これら外周面2aと内周面3aとが対向している空間(ころ4及び保持器5を除く空間)のうち、10%程度を占める領域に、充填材7が設けられている。なお、内輪2の外周面2aには、内輪軌道面21の他に鍔部22,23の外周面も含まれる。
また、充填材7が占める割合は、前記空間のうち5〜15%程度(本実施形態では10%)とする以外に、30〜40%としてもよい。
充填材7は、ころ4、内輪軌道面21及び外輪軌道面31(図1参照)には、付着しておらず、図2において、充填材7は、保持器5のうち、ポケット14におけるころ4(図2では図示せず)との摺接面16以外の面17に付着している。
図1において、保持器5のポケット14にころ4を保持させる前に、また、保持器5を内輪2と外輪3との間に組み付ける前に、保持器5が単独にある状態で、この保持器5に充填材7を付着させてもよいが、本実施形態の製造方法では、内輪2の外周側に、ころ4、保持器5及び外輪3を組み付けた状態にある軸受本体(半完成品)に対して、充填材7を設ける。すなわち、本実施形態の製造方法は、組み立てられた軸受本体の内輪2と外輪3との間に形成されている軸受空間8に、充填材7を充填して転がり軸受1の完成品とする製造方法である。図4は、この製造方法を説明するフロー図である。
そして、本実施形態では、充填材7は寒天からなるため、軸受本体の外部の容器(図示せず)において、寒天を水に浸し、これを寒天の融点以上の温度に加熱し、流動性を有する寒天の溶液とする(準備工程S1)。充填材7は寒天からなるので、例えば90℃以上で寒天を水に溶かすことができる。
そして、この寒天の溶液(流動性を有する状態とした充填材7)を、軸受空間8に注入する(注入工程S2)。充填材7の注入は、潤滑油を軸受空間8に注入するために一般的に用いられる注入器(封入機)を用いることが可能である。
この冷却工程S3では、内輪2と外輪3とを相対回転させながら、注入した充填材7を冷却することにより軸受空間8においてこの充填材7を凝固させるので、転走するころ4の表面、及び、このころ4が転走する内輪軌道面21及び外輪軌道面31では、注入した充填材7が吐き出され、充填材7が付着するのを防ぐことができる。
すなわち、仮に、ころ4の表面、内輪軌道面21及び外輪軌道面31に充填材7が付着して固まると、転がり軸受1の回転に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態の冷却工程S3によれば、これを防ぐことができる。
そして、この充填材7によって軸受空間8のすきま(容積)を減らし、軸受空間8を通過する潤滑油の量を制限することができる。この結果、潤滑油による撹拌抵抗を低減させることができ、転がり軸受1に大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
さらに、この転がり軸受1がデファレンシャルギヤ部(各機器)に組み込まれた状態で、周辺のギヤなどの摩耗によって発生した金属製の異物を、寒天に付着させ取り込むことができ、転がり軸受1の耐異物性を向上させることができ、長寿命化に貢献することが可能となる。
そして、この転がり軸受1によれば、上記のとおり、充填材7によって軸受空間8のすきま(容積)を減らし、軸受空間8を通過する潤滑油の量を制限することができるので、転がり軸受1において、潤滑油による撹拌抵抗を低減することができ、大きな回転抵抗が発生するのを防ぐことが可能となる。
また、前記実施形態(図3参照)では、保持器5(柱部13)が保持器5の凹部18を、元来有している場合として説明したが、保持器5に充填材7取り付け用として、新たに形成した凹部であってもよい。凹部は独立した部分であってもよく、また、保持器5は樹脂製であるため、凹部を形成する加工は容易である。この場合であっても、内輪、外輪及びころには、加工を施す必要がなく、内輪、外輪及びころの形状を変更しなくてもよい。
Claims (4)
- 内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備え、
前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、凝固された寒天を含む充填材が設けられていることを特徴とする転がり軸受。 - 前記保持器には、前記転動体それぞれを収容しているポケットが複数形成され、
前記充填材は、前記保持器のうち、前記ポケットにおける前記転動体との摺接面以外の面に付着している請求項1に記載の転がり軸受。 - 前記保持器の前記摺接面以外の面に、前記充填材が入り込んでいる凹部が形成されている請求項2に記載の転がり軸受。
- 内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、複数の前記転動体を周方向等間隔に保持している保持器を備えている軸受本体の、前記内輪と前記外輪との間に形成されている軸受空間に、充填材を充填して転がり軸受の完成品とする製造方法であって、
前記充填材を融点以上に加熱して流動性を有する状態とし、
この充填材を前記軸受空間に注入し、
前記内輪と前記外輪とを相対回転させながら、注入した前記充填材を凝固点以下の温度に冷却することにより前記軸受空間において当該充填材を凝固させることを特徴とする転がり軸受の製造方法。
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