JP2008031290A - グリース組成物及びファンモータ用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】転がり軸受の温度上昇を抑制して騒音を低減するグリース組成物を提供する。また、温度上昇が生じにくく低騒音のファンモータ用転がり軸受を提供する。
【解決手段】深溝玉軸受の内輪1と外輪2との間に形成され転動体3が配された空隙部内に、マイクロカプセルを含有するグリース組成物を封入した。このマイクロカプセルは、ゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されており、内部に潤滑油を内包している。マイクロカプセルの平均粒径は、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】深溝玉軸受の内輪1と外輪2との間に形成され転動体3が配された空隙部内に、マイクロカプセルを含有するグリース組成物を封入した。このマイクロカプセルは、ゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されており、内部に潤滑油を内包している。マイクロカプセルの平均粒径は、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、グリース組成物に関する。また、本発明は、一般産業用,家電用等のファンモータの回転支持部に使用される転がり軸受に関する。
一般産業用のファンモータとしては、例えば空気調整装置(以降は、エアコンディショナーと記す)に用いられる駆動用モータがあげられる。このエアコンディショナーは近年、高性能化や多機能化が進み、例えばインバータ制御によって、高速運転で急速冷却して短時間で室内温度を下げた後は、低速運転で室内温度を一定に維持することが行われている。
それに伴って低速運転時には、空気の吹き出し音や、モータの回転音等を抑えた低騒音運転が要求されている。しかしながら、低速運転時には、駆動用モータ内部の冷却効率が低下して、モータに組み込まれた転がり軸受の温度が100〜120℃前後まで上昇することがあり、潤滑剤による油膜の厚さの確保が難しくなるため、転がり軸受に封入したグリースが劣化しやすくなる。そして、グリースの劣化が進行すると、騒音が発生しやすくなる。
一方、前述した高性能化,多機能化と同時に環境規制にも配慮し、モータからの発熱を抑制するために小型化,低出力化が促進されている。このため、前述のような用途に使用される転がり軸受では、トルク特性が重要な機能として求められている。転がり軸受の動摩擦トルクは、転がり接触面の微少滑りによる摩擦、転がり軸受内の滑り接触部における滑り摩擦、及びグリースの粘性抵抗が原因で発生する。
このうちグリースの粘性抵抗は、基油の動粘度及びグリースのちょう度に影響を受けることが知られている。基油の動粘度は流体潤滑膜が形成された際の油のせん断抵抗によるため、転がり軸受の動摩擦トルクを低減させるためには、基油の動粘度の低減が極めて有効である。また、グリースのちょう度は、転がり軸受回転時に転がり軸受内部でせん断を受ける際のチャネリング性に関わるため、転がり軸受の動摩擦トルクを低減させるためには、グリースのちょう度を低減することも効果的である。
しかしながら、エアコンディショナーに使用されるモータは、前述したようにインバータ制御により比較的低速で運転されることがあるために、基油の動粘度を低減させると油膜の厚さの確保が難しくなる。また、一般に動粘度が低い油は耐熱性が低いので、音響耐久性に問題が出るおそれがある。さらに、グリースのちょう度を低減させるということは増ちょう剤の配合量が増加することを意味するため、グリース中の基油の量が相対的に少なくなる。また、グリースの機械的せん断の抵抗力が高まるため、結果として転がり軸受の潤滑面への基油の供給量が減少し、安定した潤滑性を長期にわたって維持することができないおそれがある。
このように、基油の動粘度及びグリースのちょう度の低減には限度があるので、前述のような用途に使用される転がり軸受においては、40℃における基油の動粘度が10〜500mm2 /s、グリースのちょう度がNLGI No.2〜3グレード、増ちょう剤の配合量がグリース全体の5〜20質量%の範囲のグリースが適当とされている。
また、特に低騒音性、すなわち音響耐久性が要求されるモータでは、エステル油を基油とし、これに脂肪酸リチウム塩を増ちょう剤として配合したグリースが一般に使用されている。これは、エステル油が鉱油に比べて耐熱性が高く、その分子構造中の極性基が金属表面への吸着性を高めて摩耗特性を良好にし、音響耐久性を向上させる作用を有するためである。さらに、フレッチング損傷(磨耗)の低減が要求される場合には、油膜形成能の高い比較的高粘度の基油を使用することが有効とされている。
特開2002−235759号公報
特開2002−47499号公報
特開平2−59040号公報
また、特に低騒音性、すなわち音響耐久性が要求されるモータでは、エステル油を基油とし、これに脂肪酸リチウム塩を増ちょう剤として配合したグリースが一般に使用されている。これは、エステル油が鉱油に比べて耐熱性が高く、その分子構造中の極性基が金属表面への吸着性を高めて摩耗特性を良好にし、音響耐久性を向上させる作用を有するためである。さらに、フレッチング損傷(磨耗)の低減が要求される場合には、油膜形成能の高い比較的高粘度の基油を使用することが有効とされている。
このように、エアコンディショナーへの高性能化,多機能化の要求と、環境規制への配慮とに伴って、エアコンディショナーに使用される転がり軸受にも、さらなる音響特性の改善、フレッチング損傷(摩耗)の低減、低トルク化が求められている。特に、転がり軸受の温度上昇によるグリースの劣化に起因する騒音は、大きな問題である。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、転がり軸受の温度上昇を抑制して騒音を低減するグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、温度上昇が生じにくく低騒音のファンモータ用転がり軸受を提供することを併せて課題とする。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、転がり軸受の温度上昇を抑制して騒音を低減するグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、温度上昇が生じにくく低騒音のファンモータ用転がり軸受を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、潤滑油を内包し且つゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されたマイクロカプセルを含有することを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記マイクロカプセルの平均粒径が0.01μm以上3μm以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記マイクロカプセルの平均粒径が0.01μm以上3μm以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のファンモータ用転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された潤滑剤と、を備え、ファンモータの回転支持部に使用される転がり軸受において、前記潤滑剤を、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とする。
ゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されたマイクロカプセルは、高温になると崩壊し、内包している潤滑油を放出する。このようなマイクロカプセルを含有する本発明のグリース組成物を転がり軸受等に使用すると、軸受温度が約100℃以上の高温となった場合に、マイクロカプセルが崩壊し内包している潤滑油が放出される。放出された潤滑油は、グリース組成物とともに転がり軸受の摺動部(軌道輪の軌道面と転動体の転動面との摺動部分)に供給され、軸受温度の上昇を抑制するとともに、温度上昇によって薄くなっていた油膜の厚さの確保に寄与する(潤滑性を向上させる)。
潤滑性が高められると、フレッチング損傷(摩耗)等が低減され転がり軸受の寿命が向上する。また、転がり軸受の温度上昇が抑制されるとグリース組成物の劣化が抑えられるので、グリース組成物の劣化に起因する騒音が抑制される。
このマイクロカプセルの崩壊は一斉には起こらず、摺動部近傍の高温部分から起こり、温度上昇による高温部分の拡大とともに周辺に徐々に広がっていく。すなわち、摺動部近傍部分のグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊したら、次に保持器上に残留しているグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊し、最後にシール付近のグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊する。
このマイクロカプセルの崩壊は一斉には起こらず、摺動部近傍の高温部分から起こり、温度上昇による高温部分の拡大とともに周辺に徐々に広がっていく。すなわち、摺動部近傍部分のグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊したら、次に保持器上に残留しているグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊し、最後にシール付近のグリース組成物中のマイクロカプセルが崩壊する。
転がり軸受に封入されたグリース組成物は、回転初期に軸受内部空間の全体に移動し、摺動部近傍以外の部分に移動したグリース組成物が摺動部近傍に戻ることは通常はないため、封入されたグリース組成物の全量が潤滑や冷却に活用されることはない(摺動部近傍のグリース組成物が主に活用され、それ以外の部分のグリース組成物はほとんど活用されない)。しかしながら、本発明のグリース組成物は、上記のように高温によりマイクロカプセルが崩壊して潤滑油を放出する性質を有しており、放出された潤滑油が潤滑や冷却に活用されるため、転がり軸受に封入されたグリース組成物の全量が潤滑や冷却に活用されることとなる。
特に、マイクロカプセルの平均粒径が0.01μm以上3μm以下であると、粒径が小さいために転がり軸受の摺動部において機械的な破壊がほとんど生じない。よって、マイクロカプセルは、回転初期に摺動部で破壊されることはなく、軸受温度が約100℃以上の高温となった場合と、転がり軸受の長時間の使用により増ちょう剤に剪断力が作用して繊維状の増ちょう剤が配向した場合(増ちょう作用が失われた場合)にのみ破壊することとなるから、グリース組成物の全量が冷却に活用されることとなる。
増ちょう剤の増ちょう作用が失われる前にマイクロカプセルが摺動部で破壊されることを防ぐためには、マイクロカプセルの平均粒径を繊維状の増ちょう剤の繊維径(直径)よりも小さくすることが好ましい。すなわち、マイクロカプセルの平均粒径は0.01μm以上0.2μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.1μm以下であることがさらに好ましい。
なお、マイクロカプセルは弾性を有しているため、潤滑油の放出前後に関係なく増ちょう剤のような増ちょう作用を有している。また、弾性を有し且つ微小であるため、転がり軸受の作動時に異音の原因となることはない。
なお、マイクロカプセルは弾性を有しているため、潤滑油の放出前後に関係なく増ちょう剤のような増ちょう作用を有している。また、弾性を有し且つ微小であるため、転がり軸受の作動時に異音の原因となることはない。
本発明のグリース組成物は、転がり軸受の温度上昇を抑制して騒音を低減する効果を有している。また、本発明のファンモータ用転がり軸受は、温度上昇が生じにくく低騒音である。
本発明に係るグリース組成物及びファンモータ用転がり軸受の実施の形態を、図1の部分縦断面図を参照しながら詳細に説明する。
図1の転がり軸受は、ファンモータの回転支持部に好適に使用可能な深溝玉軸受であり、外周面に軌道面1aを有する内輪1と、軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体3と、内輪1と外輪2との間に複数の転動体3を保持する保持器4と、シール5,5と、で構成されている。
図1の転がり軸受は、ファンモータの回転支持部に好適に使用可能な深溝玉軸受であり、外周面に軌道面1aを有する内輪1と、軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体3と、内輪1と外輪2との間に複数の転動体3を保持する保持器4と、シール5,5と、で構成されている。
また、内輪1と外輪2との間に形成され転動体3が配された空隙部内(軸受内部空間)には、図示しないグリース組成物が封入され、両軌道面1a,2aと転動体3との間の潤滑が行われるようになっている。
このグリース組成物は、基油と増ちょう剤とマイクロカプセルとからなり、極圧剤,防錆剤等の一般的な添加剤を含有していてもよい。このマイクロカプセルは、ゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されており、内部に潤滑油を内包している。マイクロカプセルの平均粒径は、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
このグリース組成物は、基油と増ちょう剤とマイクロカプセルとからなり、極圧剤,防錆剤等の一般的な添加剤を含有していてもよい。このマイクロカプセルは、ゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されており、内部に潤滑油を内包している。マイクロカプセルの平均粒径は、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
転がり軸受の温度が上昇すると、マイクロカプセルが崩壊して内包された潤滑油が放出されるため、転がり軸受の温度上昇が抑制されグリース組成物の劣化が抑えられる。その結果、グリース組成物の劣化に起因する転がり軸受の騒音が抑制されるため、転がり軸受が低騒音となる。
以下に、本実施形態のグリース組成物について、詳細に説明する。
以下に、本実施形態のグリース組成物について、詳細に説明する。
〔基油について〕
基油の種類は特に限定されるものではなく、グリース組成物の基油として一般的に用いられる潤滑油であれば問題なく使用することができる。例えば、分子構造中に極性基を有する潤滑油(以降は「極性基含有潤滑油」と記す)や、無極性潤滑油や、両者の混合油があげられるが、両者の混合油が好ましい。
基油の種類は特に限定されるものではなく、グリース組成物の基油として一般的に用いられる潤滑油であれば問題なく使用することができる。例えば、分子構造中に極性基を有する潤滑油(以降は「極性基含有潤滑油」と記す)や、無極性潤滑油や、両者の混合油があげられるが、両者の混合油が好ましい。
極性基含有潤滑油としては、エステル構造を有する潤滑油又はエーテル構造を有する潤滑油が好適である。
エステル構造を有する潤滑油の種類は特に限定されるものではないが、二塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られるジエステル油、炭酸エステル油、芳香族系三塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られる芳香族エステル油、一塩基酸と多価アルコールとの反応から得られるポリオールエステル油などがあげられる。これらは、単独で用いてもよいし複数種を併用してもよい。
エステル構造を有する潤滑油の種類は特に限定されるものではないが、二塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られるジエステル油、炭酸エステル油、芳香族系三塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られる芳香族エステル油、一塩基酸と多価アルコールとの反応から得られるポリオールエステル油などがあげられる。これらは、単独で用いてもよいし複数種を併用してもよい。
以下に、それぞれの好ましい具体例を例示する。ジエステル油としては、ジオクチルアジペート(DOA),ジイソブチルアジペート(DIBA),ジブチルアジペート(DBA),ジオクチルアジペート(DOZ) ,ジブチルセバケート(DBS),ジオクチルセバケート(DOS),メチルアセチルリシノレート(MAR−N)などがあげられる。
芳香族エステル油としては、トルオクチルトリメリテート(TOTM),トリデシルトリメリテート,テトラオクチルピロメリテートなどがあげられる。
芳香族エステル油としては、トルオクチルトリメリテート(TOTM),トリデシルトリメリテート,テトラオクチルピロメリテートなどがあげられる。
ポリオールエステル油としては、以下に示す多価アルコールと一塩基酸とを適宜反応させて得られるものがあげられる。また、一塩基酸及び二塩基酸の混合脂肪酸と多価アルコールとのオリゴエステルであるコンプレックスエステルでもよい。多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、ネオペンチルグリコール(NPG)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール(MPPD)などがあげられる。また、一塩基酸としては、主に炭素数4〜16の一価脂肪酸が用いられる。具体的には、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミステリン酸、パルミチン酸、牛脂脂肪酸、スレアリン酸、カプロレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アビニン酸、リシノール酸などがあげられる。多価アルコールに反応させる一塩基酸は、1種でもよいし2種以上用いてもよい。
炭酸エステル油としては、炭素数6〜30の直鎖又は分岐アルキルの炭酸エステルが好ましい。
また、エーテル構造を有する潤滑油として、例えば(ジ)アルキルジフェニルエーテル油、(ジ)アルキルポリフェニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油などがあげられる。
また、エーテル構造を有する潤滑油として、例えば(ジ)アルキルジフェニルエーテル油、(ジ)アルキルポリフェニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油などがあげられる。
このような極性基含有潤滑油は単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。また、グリース組成物が使用される転がり軸受のトルク特性及び音響耐久性を考慮すると、上記の中でもポリオールエステル油,芳香族エステル油が好ましい。
一方、無極性潤滑油としては、鉱油,合成炭化水素油,又はこれらの混合油が好適である。具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油,ナフテン系鉱油があげられ、合成炭化水素油としてはポリα−オレフィン油等があげられる。グリース組成物が使用される転がり軸受の音響耐久性を考慮すると、合成炭化水素油が好ましい。
一方、無極性潤滑油としては、鉱油,合成炭化水素油,又はこれらの混合油が好適である。具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油,ナフテン系鉱油があげられ、合成炭化水素油としてはポリα−オレフィン油等があげられる。グリース組成物が使用される転がり軸受の音響耐久性を考慮すると、合成炭化水素油が好ましい。
極性基含有潤滑油と無極性潤滑油とを混合して用いる場合には、極性基含有潤滑油が潤滑油全体の5〜70質量%となるように配合することが好ましく、10〜70質量%となるように配合することがより好ましい。極性基含有潤滑油の割合が5質量%未満であると、グリース組成物が使用される転がり軸受の音響耐久性及びトルク特性が不十分となるおそれがある。
また、極性基含有潤滑油の割合が70質量%を超えると、無極性潤滑油の量が少なすぎて金属石けん系増ちょう剤の合成に悪影響が出てくるおそれがある。すなわち、グリース組成物の製造に際して、予め無極性潤滑油中で長繊維状物を含む金属石けん系増ちょう剤を合成し、これを溶解した後にゲル体を作製し、このゲル体と極性基含有潤滑油とを混合してグリース組成物とする方法を採用する場合があるが、このような製造方法において無極性潤滑油の量が少ないと、金属石けん系増ちょう剤の合成に悪影響が出てくるおそれがある。
さらに、極性基含有潤滑油と無極性潤滑油とを配合してなる基油の40℃における動粘度は、一般的なもの(25〜200mm2 /s)で差し支えないが、上記の製造方法でのグリース組成物の製造を円滑に行う上では、極性基含有潤滑油として40℃における動粘度が2000〜100000mm2 /sのものを用いることが好ましい。
〔増ちょう剤について〕
増ちょう剤の種類は特に限定されるものではないが、長径が3μm以上である長繊維状物を含む金属石けんが好ましい。金属石けんの種類は、有機脂肪酸又は有機ヒドロキシ脂肪酸と金属水酸化物とを反応して得られる有機脂肪酸金属塩又は有機ヒドロキシ脂肪酸金属塩が好ましい。有機脂肪酸,有機ヒドロキシ脂肪酸は、1価のもの、2価のもの、又は両者の混合物が使用できる。
増ちょう剤の種類は特に限定されるものではないが、長径が3μm以上である長繊維状物を含む金属石けんが好ましい。金属石けんの種類は、有機脂肪酸又は有機ヒドロキシ脂肪酸と金属水酸化物とを反応して得られる有機脂肪酸金属塩又は有機ヒドロキシ脂肪酸金属塩が好ましい。有機脂肪酸,有機ヒドロキシ脂肪酸は、1価のもの、2価のもの、又は両者の混合物が使用できる。
有機脂肪酸の例としては、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17) 、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、牛脂脂肪酸等があげられる。また、有機ヒドロキシ脂肪酸の例としては、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸等があげられる。一方、金属水酸化物としては、アルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム等の水酸化物があげられる。
上記の有機脂肪酸,有機ヒドロキシ脂肪酸と金属水酸化物との組み合わせは特に限定されるものではないが、ステアリン酸、牛脂脂肪酸、又はヒドロキシステアリン酸(特に12−ヒドロキシステアリン酸)と、水酸化リチウムとの組み合わせが、グリース組成物が使用される転がり軸受の軸受性能が優れることから好ましい。なお、増ちょう剤は、必要に応じて複数種を併用することもできる。
〔マイクロカプセルについて〕
マイクロカプセルはゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されているが、特に融点が90℃以上150℃以下のゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されていることが好ましい。そうすれば、転がり軸受の温度が90℃以上に上昇した際に、マイクロカプセルが崩壊して内包された潤滑油が放出されることとなる。ファンモータ用軸受においては、この温度範囲で潤滑油が放出され冷却作用が発揮されることが好ましい。
マイクロカプセルはゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されているが、特に融点が90℃以上150℃以下のゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されていることが好ましい。そうすれば、転がり軸受の温度が90℃以上に上昇した際に、マイクロカプセルが崩壊して内包された潤滑油が放出されることとなる。ファンモータ用軸受においては、この温度範囲で潤滑油が放出され冷却作用が発揮されることが好ましい。
マイクロカプセルを製造する方法は特に限定されるものではなく、内包される潤滑油の性質やマイクロカプセルを構成する材料の性質等を考慮して選択される。均一な粒径を有するマイクロカプセルを製造するためには、マイクロカプセルの製造条件を適宜調整することが好ましいが、粒度分布を有するマイクロカプセルから、遠心分離法やフィルター法によって均一な粒径を有するマイクロカプセルを分離してもよい。
〔マイクロカプセルに内包される潤滑油について〕
マイクロカプセルに内包される潤滑油の種類は特に限定されるものではなく、グリース組成物の基油として一般的に用いられる前述の潤滑油を問題なく使用することができる。特に、極性基含有潤滑油と無極性潤滑油との混合油が好ましい。
マイクロカプセルに内包される潤滑油の種類は特に限定されるものではなく、グリース組成物の基油として一般的に用いられる前述の潤滑油を問題なく使用することができる。特に、極性基含有潤滑油と無極性潤滑油との混合油が好ましい。
〔添加剤について〕
本発明のグリース組成物には、一般的に使用される各種添加剤を所望により添加してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,金属不活性化剤,油性剤,極圧剤があげられるが、これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、上記した製造過程において、極性基含有潤滑油に添加しておき、ゲル体と混練することによりグリース組成物中に配合できる。
本発明のグリース組成物には、一般的に使用される各種添加剤を所望により添加してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,金属不活性化剤,油性剤,極圧剤があげられるが、これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、上記した製造過程において、極性基含有潤滑油に添加しておき、ゲル体と混練することによりグリース組成物中に配合できる。
酸化防止剤としては、ゴム,プラスチック,潤滑油等に一般的に使用される老化防止剤,オゾン劣化防止剤,酸化防止剤を使用することができる。このような酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物があげられる。また、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することもできる。
また、防錆剤としては、例えば有機スルホン酸アンモニウム塩,スルホン酸金属塩(金属はアルカリ金属,アルカリ土類金属(カルシウム,マグネシウム,バリウム等),亜鉛等),カルボン酸塩,フェネート,ホスホネート等があげられる。また、アルキルコハク酸エステル,アルケニルコハク酸エステル等のようなアルキルコハク酸誘導体,アルケニルコハク酸誘導体も、防錆剤として好ましく使用できる。さらに、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類及びその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、チアジアゾール類(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等)、イミダゾール系化合物(2−デシルジチオベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾール等)、ジスルフィド系化合物(2,5−ビス(ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等)、リン酸エステル類(トリスノニルフェニルフォスファイト等)、チオカルボン酸エステル系化合物(ジラウリルチオプロピオネート等)も使用可能である。さらに、亜硝酸塩も使用することができる。
さらに、金属不活性化剤としては、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物があげられる。
さらに、油性剤としては、例えば、オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸や、オレイルアルコール等の脂肪族アルコールや、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル,ポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステルを使用することができる。また、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
さらに、油性剤としては、例えば、オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸や、オレイルアルコール等の脂肪族アルコールや、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル,ポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステルを使用することができる。また、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、ファンモータ用転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。まず、潤滑油を内包するマイクロカプセルの製造方法を示す。なお、潤滑油は、40℃における動粘度が60mm2 /sのエステル油であり、マイクロカプセルはゼラチンとアラビアゴムで構成されるものである。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。まず、潤滑油を内包するマイクロカプセルの製造方法を示す。なお、潤滑油は、40℃における動粘度が60mm2 /sのエステル油であり、マイクロカプセルはゼラチンとアラビアゴムで構成されるものである。
エステル油とゼラチンの10質量%水溶液とアラビアゴムの10質量%水溶液と用いて、コアセルべーション法により、エステル油を内包するマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセルの平均粒径は攪拌速度によってある程度制御されるが、さらに遠心分離器で選別することにより、平均粒径0.1〜5μmのマイクロカプセルを得た。なお、マイクロカプセル全体のうち40質量%がエステル油で、60質量%がゼラチンとアラビアゴムで構成される外殻体である。
次に、マイクロカプセルを含有するグリース組成物の製造方法を示す。なお、基油は、40℃における動粘度が60mm2 /sのポリα−オレフィン油(無極性潤滑油)70質量%と、40℃における動粘度が60mm2 /sのポリオールエステル油(極性基含有潤滑油)30質量%との混合油(混合油の40℃における動粘度は60mm2 /s)であり、増ちょう剤はリチウム石けんである。
ポリα−オレフィン油中にヒドロキシステアリン酸を溶解し、水酸化リチウムと反応させてリチウム石けんを製造する。そこにポリオールエステル油を加え210℃以上に昇温して、リチウム石けんを基油中に溶解させる。200℃で約60分保持し、その後1℃/分の速度で140℃までゆっくり冷却したら、140℃に加熱した混合油を加える。そして、3段ロールミルをかけると、長繊維状のリチウム石けんを含有するグリース組成物(ベースグリース)が得られる。このベースグリース中の増ちょう剤の含有量は10質量%である。また、ベースグリースの混和ちょう度は285である。
このベースグリースに前述のようにして得られたマイクロカプセルを混合して、実施例1〜4のグリース組成物を製造した。グリース組成物全体におけるマイクロカプセルの含有量はいずれも5質量%としたので、マイクロカプセルに内包された潤滑油のグリース組成物全体における割合は2質量%である。
これらの実施例1〜4及び前記ベースグリース(比較例1)を、それぞれ日本精工株式会社製の深溝玉軸受(呼び番号608VV,内径8mm,外径22mm,幅7mm)の空隙部内に0.16g封入し、アキシアル荷重29.4N、回転速度1800min-1という条件で内輪を回転させた。そして、外輪の温度が120℃になった時点で焼付きが生じたと判定し、この焼付き寿命により耐久性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1に記載の焼付き寿命は、比較例1のベースグリースを封入した軸受の焼付き寿命を1とした場合の相対値で示してある。
表1から分かるように、実施例1〜4のグリース組成物を封入した軸受は、焼付きが生じにくく長寿命であった。特に、マイクロカプセルの平均粒径が小さい実施例1〜3のグリース組成物を封入した軸受は、より長寿命であった。
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体
Claims (3)
- 潤滑油を内包し且つゼラチン,ワックス,又は寒天で構成されたマイクロカプセルを含有することを特徴とするグリース組成物。
- 前記マイクロカプセルの平均粒径が0.01μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
- 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された潤滑剤と、を備え、ファンモータの回転支持部に使用される転がり軸受において、前記潤滑剤を、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とするファンモータ用転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006206004A JP2008031290A (ja) | 2006-07-28 | 2006-07-28 | グリース組成物及びファンモータ用転がり軸受 |
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Publications (1)
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ID=39121070
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013104488A (ja) * | 2011-11-14 | 2013-05-30 | Jtekt Corp | 転がり軸受の製造方法及び転がり軸受 |
US20140087982A1 (en) * | 2012-09-24 | 2014-03-27 | Exxonmobil Research And Engineering Company | Microencapsulation of lubricant additives |
-
2006
- 2006-07-28 JP JP2006206004A patent/JP2008031290A/ja active Pending
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