JP5924529B2 - 密閉型非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。詳しくは、内圧上昇により作動する電流遮断機構を備えた密閉型非水電解質二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池その他の二次電池は、既存の電池に比べ、小型、軽量かつ高エネルギー密度であって、出力密度に優れる。このため近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や、車両駆動用電源として好ましく用いられている。
このような電池の一形態として、密閉型非水電解質二次電池が挙げられる。該電池は、典型的には、活物質を含む合材層を備えた正負極からなる電極体が非水電解質(典型的には、非水電解液)とともに電池ケースに収容された後、蓋体が装着されて封口(密閉)されることにより構築される。この電池は一般に電圧が所定の領域(例えば3.0V以上4.2V以下)に収まるよう制御された状態で使用されるが、誤操作等により該電池に通常以上の電流が供給されると、所定の電圧を超えて過充電となる場合がある。
過充電対策技術としては、電池ケース内の圧力が所定値以上になると充電電流を遮断する電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)が広く用いられている。一般に、電池が過充電状態になると電解質の非水溶媒等が電気分解され、ガスが発生する。上記電流遮断機構はかかるガス発生に基づいて電池の充電経路を切断し、それ以上の過充電を防止し得るようになっている。
上記電流遮断機構を用いる際には該電解質の非水溶媒よりも酸化電位の低い(即ち、酸化分解反応の始まる電圧が低い)化合物(以下、「ガス発生剤」という。)を、あらかじめ電解質中に含有させておく手法が知られている。ガス発生剤は電池が過充電状態になると正極表面において速やかに酸化分解され、水素イオン(H)を生じる。そして、該水素イオンが電解質中に拡散して負極上で還元されることにより、水素ガス(H)が発生する。かかるガスの発生によって電池ケース内の圧力が上昇するため、電流遮断機構をより迅速に作動させることができる。この種の従来技術として、例えば特許文献1にはシクロヘキシルベンゼン(CHB)やビフェニル(BP)等のガス発生剤を用いる技術が開示されている。
特開2006−324235号公報 特開2001−085057号公報
しかしながら、本願発明者らの検討によると、かかる非水電解質二次電池では電池温度が高温(例えば、50℃〜80℃)となった場合に、ガスを発生させるために必要な上記反応よりもレドックスシャトル反応(即ち、カチオンラジカルとなったガス発生剤の可逆的な酸化還元反応)が優先的に生じることが判明した。かかる場合、ガス発生量が減少することにより電池ケース内の圧力が迅速に上昇せず、電流遮断機構の作動が遅れる虞がある。とりわけ車両駆動用電源等に用いられる大型の(大容量の)電池では、電池ケース内の空間体積が広いことから電流遮断機構を作動させるために多量のガスが必要となる。該電池の信頼性を確保する上では、広範な温度域において所望のガス量を安定的に得ることが殊に重要である。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は電池ケース内の圧力上昇により作動する電流遮断機構を備えた密閉型非水電解質二次電池であって、高い電池性能を維持しつつ、従来に比べ広範な温度域における信頼性が向上した該電池を提供することである。
上記目的を実現すべく、本発明によって、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解質と、が電池ケース内に収容された密閉型非水電解質二次電池が提供される。ここで、上記非水電解質には、上記正極活物質よりも高い電位で可逆的な酸化還元反応を生じ得るレドックスシャトル剤と、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤と、温度上昇に伴う上記非水電解質の粘度低下を抑制し得る粘度調整剤と、が含まれている。また、上記電池ケースには、上記ガスの発生に伴って上記電池ケース内の圧力が上昇した際に作動する電流遮断機構が備えられている。
かかる構成によれば、2段階で電池の信頼性を高め得る。即ち、ここで開示される電池は、非水電解質中にレドックスシャトル剤が含まれている。このため比較的緩やかな速度(低レート)で過充電となった際に、該レドックスシャトル剤のレドックスシャトル反応によって、可逆性を保ったまま過充電の進行を抑制することができる。また、限界電流密度を超えたレート(高レート)で過充電となり所定の電池電圧を超えた際には、非水電解質中に含まれるガス発生剤が酸化分解され、大量のガスを生じる。かかるガスの発生により電池ケース内の圧力が上昇するため、該ケースに備えられた電流遮断機構を迅速に作動させることができる。さらに、ここで開示される電池では非水電解質中に粘度調整剤が含まれているため、使用温度域が比較的高い温度である場合や上記過充電によって電池内の温度が上昇した場合であっても、ガス発生剤が好適に分解され、電流遮断機構を作動させるために必要なガス量を安定的に得ることができる。従って、ここで開示される密閉型リチウム二次電池では、従来に比べ広範な温度域(典型的には100℃以下、例えば0℃〜80℃)における信頼性が大きく向上している。
なお、特許文献2には本発明において使用した「カードラン」を電解質中(または正負極合材層中)に備えたリチウム二次電池が記載されている。しかし、かかる従来技術は電池内にカードランを添加することで異常過熱時(120℃〜200℃の温度になった時)に電解質を不可逆的にゲル化し、該電解質の分解反応によって生ずるガスの噴出防止を目的としている。従って、本発明とはカードランの使用用途が異なっている。また、本発明の構成要素である電流遮断機構やガス発生剤について、およびカードランがガス発生剤のレドックスシャトル反応を抑制し得ることについて、は何の開示も示唆もされていない。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記ガス発生剤の有する酸化電位は、上記レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位よりも高い。
ガス発生剤の酸化電位をかかる値とすることで、高レートで過充電となった際にレドックスシャトル剤の酸化還元反応を抑制することができる。このためガス発生剤の酸化分解反応が促進され、大量のガスを迅速かつ安定的に得ることができる。かかるガスによって電池ケース内の圧力が直ぐに上昇するため、より早い段階で電流遮断機構を作動させることができる。従って、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
上記酸化電位やシャトル反応開始電位は、例えば一般的な電気化学測定装置を用いて、サイクリックボルタンメトリ(CV)の手法によって測定することができる。より具体的には、測定対象を含む溶液を満たしたセル(典型的には3極式セル)内に、作用極としての白金と対極および参照極としてのリチウム金属とをそれぞれ配置し、作用極−対極間の電位(vs.Li/Li)を所定の速度で走査させることにより把握し得る。ここでは25℃の測定温度において、酸化電流が観察され始める(典型的には、電流が0.2mA/cm以上流れ始める)電位(Onset Potential)を、酸化電位(酸化開始電位)またはシャトル反応開始電位として示す。また、より簡易的には量子化学の計算結果に基づく値を用いることもできる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記粘度調整剤として多糖類を含む。
粘度調整剤として多糖類を含む場合、本発明の効果を好適に発揮することができる。更に、多糖類は食品添加物として用いられるほど生分解性に優れているため、安全性や環境保護の観点からも好ましい。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記多糖類としてカードランを含む。
カードランは非水電解質中に容易に分散させることができる。また、高温環境下(例えば、50℃以上)で好適に膨潤し、該非水電解質の粘度低下を抑制することができる。このため、本発明の効果をより一層高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記非水電解質は、平行円板型回転粘度計(B型粘度計)により測定される、25℃での粘度(V25℃)と60℃での粘度(V60℃)との比(V60℃/V25℃)が、0.4以上1.3以下である。
非水電解質の粘度比(V60℃/V25℃)が0.4以上の場合、高温環境下においてレドックスシャトル反応が好適に抑制され、ガス発生剤の分解反応が促進される。このため、電流遮断装置を確実に作動させるために必要な量のガスを安定して得ることができる。また、後述する実施例に示すように、非水電解質の粘度比(V60℃/V25℃)を1.3以下とすることで優れた電池性能(例えば高い出力特性)を維持することができる。従って、非水電解質の粘度比をとすることで、本発明の効果(広範な温度域における信頼性の向上)と、優れた電池性能と、を高いレベルで両立することができる。なお、本明細書において「粘度」とは特に言及しない限り、一般的な平行円板型回転粘度計(B型粘度計)によって、回転速度20rpmおよび2rpmの条件でそれぞれ測定した粘度(順に、V20rpm(mPa・sec)、V2rpm(mPa・sec)という。)の算術平均値((V20rpm+V2rpm)/2)を示す。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記粘度調整剤の量は、上記非水電解質100質量%に対し、0.1質量%以上3質量%以下である。
粘度調整剤の添加量が上記範囲にある場合、高温環境下において非水電解質の粘度低下を好適に抑制することができる。したがって、ガス発生剤の酸化分解反応が促進され、電流遮断装置を作動させるために必要な量のガスを得ることができる。更に、該粘度調整剤の添加に伴うIV抵抗の増大(イオン伝導性の低下)をより低く抑えることで、本発明の効果と優れた電池性能とをより高いレベルで両立させることができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記レドックスシャトル剤としてアルコキシベンゼン類を含む。
1つ以上のアルコキシ基(典型的には、メトキシ基)を有するアルコキシベンゼン類(典型的には、メトキシベンゼン類)は、電池のSOCが100%を超えてさらに充電される場合に該アルコキシ基の電子供与性によって好適にレドックスシャトル反応を生じ、電圧の上昇を抑えることができる。従って、上限電圧異常(正極の分解による発熱等)を効果的に防止することができる。また、該レドックスシャトル反応に伴って発生するカチオンラジカルは化学的安定性に優れているため、副反応等で電池性能が低下することを抑制することができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記レドックスシャトル剤の添加量は、上記非水電解質に対し、0.01mol/L以上1mol/L以下である。
レドックスシャトル剤の添加量を0.01mol/L以上とすることで、過充電時において充分な過充電防止効果を発揮し得る。また1mol/L以下とすることで、該レドックスシャトル剤の添加に伴うIV抵抗の増大をより低く抑えることができる。したがって添加量を上記範囲とすることで本発明の効果と優れた電池性能とをより高いレベルで両立させることができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記ガス発生剤としてシクロヘキシルベンゼンおよび/またはビフェニルを含む。
シクロヘキシルベンゼンやビフェニルは過充電時に好適に酸化分解され、大量の水素ガスを発生し得る。このため、電流遮断機構をより迅速に作動させることができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記ガス発生剤の添加量は、上記非水電解質100質量%に対し、0.5質量%以上5質量%以下である。
ここで開示される技術では、電池温度が高温(例えば、50℃〜80℃)となった場合でも大量のガスを得ることができ、より安定的に電流遮断装置を作動させることができる。さらに、従来に比べガス発生剤の添加量を削減することができるため、本発明の効果と優れた電池性能とを高いレベルで両立させることができる。
また、本発明によると、ここで開示される密閉型非水電解質二次電池(単電池)を複数組み合わせた組電池が提供される。
ここで開示される電池(単電池)はレドックスシャトル剤を含んでいる。このため、これら単電池を複数個相互に(典型的には直列に)接続してなる組電池では、各単電池にSOCのバラつきがあってもそのバラつきを是正して所定の充電状態に揃えることができる。さらに、限界電流密度を超えた過充電に対しては、迅速に電流遮断機構を作動させることができる。従って、電池性能と、広範な温度域における信頼性と、がより一層向上した組電池を提供し得る。
さらに、本発明によると、上記組電池を駆動用電源として備える車両が提供される。
ここで開示される電池は各種用途向けとして利用可能であるが、広範な温度域における信頼性と優れた電池性能とを高いレベルで両立することを特徴とする。従って、高いエネルギー密度や出力密度が要求される用途や、使用および/または放置環境が高温になり得る用途、で特に好適に使用し得る。かかる用途として、例えば車両(典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV))に搭載されるモーター駆動のための動力源(駆動用電源)が挙げられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1の密閉型非水電解質二次電池のII−II線における断面構造を模式的に示す図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池(単電池)を複数組み合わせた組電池を模式的に示す斜視図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池を備えた車両(自動車)を示す側面図である。 図6は、非水電解質の粘度比(V60℃/V25℃)と、CID作動SOC比(SOC60℃/SOC25℃)および2Cにおける放電容量比(D60℃/D25℃)と、の関係を示すグラフである。
以下、ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の好適な実施形態について説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。かかる構造の非水電解質二次電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。以下、リチウム二次電池である場合を典型例としてより詳しく説明する場合があるが、本発明の適用対象をかかる電池に限定する意図ではない。
本明細書において「非水電解質二次電池」とは、非水電解質(典型的には、非水溶媒中に支持塩を含む電解液)を備えた電池をいう。また、「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動によって充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、「活物質」とは、正極側又は負極側において電荷担体となる化学種(リチウム二次電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る物質(化合物)をいう。
なお、本明細書において「過充電状態」とは、充電深度(SOC:State of Charge)が100%を超えた状態をいう。ここでSOCとは、可逆的に充放電可能な作動電圧の範囲において、その上限となる電圧が得られる充電状態(即ち、満充電状態)を100%とし、下限となる電圧が得られる充電状態(即ち、充電されていない状態)を0%としたときの充電状態を示すものである。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、が電流遮断機構を備えた電池ケース内に収容された構成である。そして、上記非水電解質には、レドックスシャトル剤と、ガス発生剤と、粘度調整剤と、が含まれていることを特徴とする。かかる構成の密閉型非水電解質二次電池では、比較的緩やかな速度で(低い電流密度(低レート)で)過充電となった際に、該レドックスシャトル剤のレドックスシャトル反応(酸化還元反応)によって、可逆性を保ったまま過充電の進行を抑制することができる。また、限界電流密度を超えたレート(高レート)で過充電となり所定の電池電圧を超えた際には、非水電解質中に含まれるガス発生剤(典型的には芳香族化合物)が酸化分解され、大量のガス(典型的には水素ガス)を生じる。かかるガスの発生により電池ケース内の圧力が上昇するため、電流遮断機構を迅速に作動させることができる。さらに、ここで開示される電池では非水電解質中に粘度調整剤が含まれているため、使用温度域が比較的高い温度である場合(例えば25℃以上100℃以下)や上記過充電によって電池内の温度が上昇した場合であっても、温度上昇に伴う上記非水電解質の粘度低下が抑制され、ガス発生剤の分解反応を好適に生じさせることができる。従って、従来に比べ広範な温度域(典型的には100℃以下、例えば0℃〜80℃)において、電流遮断機構を作動させるために必要なガス量を安定的に得ることができる。
ここで、レドックスシャトル剤とは、該レドックスシャトル剤自体の可逆的なレドックスシャトル反応(酸化還元反応)によって、電池電圧(正負極間の電位差)が所定の値以上となることを防止する機能を有する化合物である。かかるレドックスシャトル剤としては、非水電解質中に均一に溶解もしくは分散し得る化合物であって、正極活物質の通常使用する最大の(SOC100%の)電位よりも高いシャトル反応開始電位を有する化合物を用いることができる。
本発明の趣旨に則る限り特に限定されるものではないが、具体的な化合物(および該化合物の有するシャトル反応開始電位(vs.Li/Li))としては、例えば、3,4−ジフルオロ−1−メトキシベンゼン(4.55V)、1−メトキシ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼン(5.05V)、4−フルオロ−1,2−ジメトキシベンゼン(4.20V)、4−ブロモ−1,2−ジメトキシベンゼン(4.30V)、4,5−ジフルオロ−1,2−ジメトキシベンゼン(4.20V)、2,5−ジフルオロ−1,4−ジメトキシベンゼン(4.2V)、4−ニトロ−1,2−ジメトキシベンゼン(4.45V)、1,2,4−トリメトキシベンゼン(3.7V)、1,2,3−トリメトキシベンゼン(4.45V)、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼン(3.9V)、4−tert−ブチル−1,2−ジメトキシベンゼン(4.18V)等の1つ以上の電子吸引性もしくは電子供与性の置換基を有する単素環式化合物;4−クロロ−1,2−メチレンジオキシベンゼン(4.25V)、4−ブロモ−1,2−メチレンジオキシベンゼン(4.25V)、3,4−メチレンジオキシベンゾニトリル(4.5V)、4−ニトロ−1,2−メチレンジオキシベンゼン(4.55V)等の複素環式化合物;ニトロキシルラジカル化合物等のラジカル化合物;硝酸セリウム等のセリウム化合物;フェロセン錯体等のメタロセン錯体;等のうち、1種または2種以上を混合して用いることができる。
なかでも、1つ以上のアルコキシ基(例えばメトキシ基)を有する単素環式化合物(典型的にはアルコキシベンゼン類、例えばメトキシベンゼン類)を好ましく用いることができる。該化合物類は、レドックスシャトル反応により生ずるカチオンラジカルの化学的安定性が優れているため、副反応等で電池性能が低下することを抑制し得る。また、1つ以上のアルコキシ基(例えばメトキシ基)と、1つ以上のハロゲン原子(典型的にはフッ素)と、を有するハロゲン化アルコキシベンゼン類(例えば、2,5−ジフルオロ−1,2−ジメトキシベンゼン)をより好ましく用いることができる。このような化合物は、上記レドックスシャトル反応を生じ易く、該反応によって過充電電流を好適に消費し得るため本願発明の効果をより発揮することができる。
レドックスシャトル剤は、正極活物質の種類や電池の設計(作動電圧)等に応じて適宜選択することができる。即ち、反応(開始)電位の大きさが、「正極活物質の通常使用する最大の(SOC100%の)電位<レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位」の順になるように適宜選択して用いることが好ましい。かかる態様とすることで、電池のSOCが100%に達した後にさらに充電される場合(過充電状態になった場合)に該レドックスシャトル剤の可逆的な酸化還元反応により上限電圧異常(過充電によって発生し得る正極の分解に伴う発熱等の不具合)を効果的に防止することができる。
典型的には、正極活物質の通常使用する最大の(SOC100%の)電位よりも0.1V(典型的には0.2V、例えば0.2V〜1.0V、好ましくは0.2V〜0.5V)程度高いシャトル反応開始電位のものを好ましく選択し得る。上記電位の差が0.1Vよりも小さいと、電池が満充電(SOC100%)となった場合に温度等の環境影響による僅かな電位の変化で作動してしまう虞がある。逆に1.0V以上の差がある場合、過充電時に迅速に可逆的な酸化還元反応を生じさせることができないため、本発明の効果が薄れる虞がある。
レドックスシャトル剤の添加量は特に限定されないが、極端に少なすぎる場合は本願発明の効果(充分な過充電防止効果)を発現することができない虞がある。一方、あまりに過剰量を添加するとIV抵抗が増大(イオン伝導性が低下)して、電池特性(例えば出力密度)が低下する虞がある。従って、非水電解質100質量%に対するレドックスシャトル剤の添加量は、0.01mol/L以上(典型的には0.02mol/L以上、例えば0.05mol/L以上)であって、1mol/L以下(典型的には0.5mol/L以下、例えば0.3mol/L以下)とすることが好ましい。添加量を上記範囲とすることで、過充電時において充分な過充電防止効果を発揮し得る。また該レドックスシャトル剤の添加に伴うIV抵抗の増大をより低く抑えることができる。したがって、本発明の効果と優れた電池性能とをより高いレベルで両立させることができる。
ガス発生剤としては、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得る化合物(即ち、酸化電位が非水電解質二次電池の作動電圧以上であって、該電池が過充電状態となった場合に分解してガスを発生するような化合物)であれば、同様の用途で用いられているもののなかから一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。具体的には、ビフェニル化合物、アルキルビフェニル化合物、シクロアルキルベンゼン化合物、アルキルベンゼン化合物、有機リン化合物、フッ素原子置換芳香族化合物、カーボネート化合物、環状カルバメート化合物、脂環式炭化水素等の芳香族化合物が挙げられる。より具体的な化合物(および該化合物の有する酸化電位(vs.Li/Li))としては、ビフェニル(4.5V)、シクロヘキシルベンゼン(4.6V)、1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン(4.8V)、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン(4.8V)、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン(4.8V)、1−ブロモ−4−シクロヘキシルベンゼン(4.8V)、trans−ブチルシクロヘキシルベンゼン(4.6V)、シクロペンチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン(4.9V)、tert−ペンチルベンゼン(4.8V)、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン(4.9V)、1−クロロ−4−tert−ブチルベンゼン(4.9V)、1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼン(4.9V)、tert−ペンチルベンゼン(4.8V)、1−フルオロ−4−tert−ペンチルベンゼン(4.8V)、1−クロロ−4−tert−ペンチルベンゼン(4.8V)、1−ブロモ−4−tert−ペンチルベンゼン(4.8V)、tert−アミノベンゼン、ターフェニル、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン、tris−(t−ブチルフェニル)ホスフェート(4.8V)、フェニルフルオライド(4.9V)、4−フルオロフェニルアセテート(4.7V)、ジフェニルカーボネート(4.9V)、メチルフェニルカーボネート(4.8V)、ビスターシャリーブチルフェニルカーボネート(4.7V)、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等が例示される。なかでもシクロヘキシルベンゼンやビフェニルを好ましく用いることができる。
ガス発生剤は該電池の作動電圧や上記レドックスシャトル剤の種類等に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、該電池の作動上限電圧より0.1V(典型的には0.2V、例えば0.3V)程度高い酸化電位を有しているものを好ましく選択し得る。
また、好ましい一形態としては、ガス発生剤の有する酸化電位を上記レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位よりも高くなるよう選択する。即ち、反応(開始)電位の大きさが、「レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位<ガス発生剤の酸化電位」の順になるようにガス発生剤を選択することが好ましい。例えば、ガス発生剤として、上記レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位よりも0.1V(典型的には0.1V〜0.5V、例えば0.2V〜0.4V)程度高い酸化電位を有するものを好ましく選択し得る。これにより、限界電流密度を超えたレート(高レート)で過充電となり所定の電池電圧を超えた際に、該レドックスシャトル剤の酸化還元反応を効果的に抑制することができる。よって、過充電時においてガス発生剤の酸化分解反応が促進され、迅速かつ安定的に大量のガスを得ることができる。このため、本発明の効果をより一層発揮することができる。
ガス発生剤の添加量は特に限定されないが、極端に少なすぎる場合は過充電時におけるガス発生量が少なくなり、電流遮断機構が正常に作動しない虞がある。また信頼性を重視するあまり過剰量を添加すると電池性能が低下する虞がある。従って、非水電解質100質量%に対するガス発生剤の添加量は、0.1質量%以上(典型的には0.5質量%以上、例えば1質量%以上)であって、10質量%以下(典型的には5質量%以下、例えば4質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下)とすることが好ましい。ガス発生剤の添加量を上記範囲とすることで、高い信頼性と優れた電池性能とを両立させることができる。
粘度調整剤としては、非水電解質に均一に分散または溶解し得る化合物であって、環境温度の上昇に伴い粘度が増加(ゲル化する場合を含む。)する化合物のうち一種または二種以上を適宜使用することができる。かかる化合物としては、例えば、既に公知の手法により天然から得られた高分子化合物(天然高分子化合物)や、上記得られた高分子化合物を加工(典型的には物理的または化学的修飾)したもの等を用いることができる。具体的には、カードラン、澱粉、デキストリン、グルコマンナン、アガロース、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、クインシードガム、キサンタンガム、アラビアガム、プルラン、寒天、コンニャクマンナン等が挙げられる。
なかでも単糖類(単糖およびその誘導体)がグルコシド結合によって複数(例えば10以上)結合した高分子化合物(以下、多糖類という。)を好ましく用いることができる。粘度調整剤として多糖類を含む場合、本発明の効果をより好適に発揮することができる。また、かかる多糖類は食品添加物として用いられるほど生分解性に優れているため、安全性や環境保護の観点からも好ましいといえる。なかでも、D‐グルコースのC1位とC3位でグルコシド結合したカードラン(1,3−グルカン)を好ましく用いることができる。カードランは非水電解質中に容易に分散し、且つ高温環境下(例えば、50℃以上)において膨潤して非水電解質の粘度低下を好適に抑制することができる。このため、本発明の効果を一層高いレベルで発揮することができる。なお、上記粘度調整剤の定性および定量は、例えば一般的な高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liqid Chromatography)の手法によって行うことができる。
粘度調整剤の性状は特に限定されないが、例えば粒径が1μm以上200μm以下(典型的には5μm以上180μm以下、例えば10μm以上150μm以下)のものを用いることができる。なお、本明細書において「粒径」とは一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定によって測定された体積基準の粒度分布おいて、微粒子側からの累積50%に相当する粒子径(D50粒径、メジアン径ともいう。)を言う。
また、例えば重量平均分子量(Mw)が1万以上150万以下(例えば5万以上100万以下)のものを用いることができる。該分子量が上記範囲より極端に小さすぎる場合は粘度調整剤としての機能を発現させるために必要な添加量が増加するため、電池反応に伴う電荷担体(典型的にはリチウムイオン)の移動が妨げられ、電池性能が低下する虞がある。逆に、該分子量が極端に大きすぎる場合は、溶媒中での分散が不安定となる虞がある。なお、かかる重量平均分子量(Mw)としては、GPC(Gel Permeation Chromatography)−RI(Refractive Index;示差屈折率検出器)により得られた分子量分布から、式(1)を用いて算出された値を用いることができる。
Mw=Σ(Mi×Wi)/W =Σ(Mi×Hi)/ΣHi (1)
ただし、Mi;i番目に溶出した成分の分子量
Wi;i番目に溶出した成分の重量
W ;成分の総重量
Hi;i番目に溶出した成分のピークの高さ
粘度調整剤の添加量は特に限定されないが、例えば、非水電解質100質量%に対して凡そ0.1質量%以上(典型的には0.5質量%以上、例えば1質量%以上)であって、10質量%以下(典型的には5質量%以下、例えば4質量%以下、好ましくは3質量%以下)とすることができる。添加量が上記範囲より極端に少なすぎる場合は、本発明の効果が薄れる虞がある。また過剰量を添加すると電池性能(例えば、出力特性)が低下する虞がある。粘度調整剤の添加量を上記範囲とすることで、本発明の効果と優れた電池性能とを高いレベルで両立させることができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の構成について説明する。該電池は、例えば図2に示すように、正極活物質を有する正極10と、負極活物質を有する負極20と、(図示しない)非水電解質と、が電流遮断機構30を備えた電池ケース50内に収容された構成である。以下、該電池の構成要素について順に説明する。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された少なくとも正極活物質を含む正極合材層と、を備えている。かかる正極を作製する方法は特に限定されないが、例えば正極活物質と導電材とバインダ(結着剤)等とを溶媒中で混合してスラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。以下、同様。)の組成物(以下、「正極合材スラリー」という。)を調製し、該スラリーを正極集電体上に付与して正極合材層(正極活物質層ともいう。)を形成することで作製し得る。
正極合材スラリーの調製には、例えば、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダ等の従来公知の種々の攪拌・混合装置を適宜用いることができる。該スラリーの固形分濃度(NV)は特に限定されないが、例えば50質量%〜75質量%(好ましくは55質量%〜65質量%、より好ましくは55質量%〜60質量%)とすることができる。また、正極合材層の形成は、例えば、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ディップコーター等の従来公知の塗布装置を用いて、正極集電体上に正極合材スラリーを塗布することによって行うことができる。上記製造方法では、正極合材スラリーを付与した後に、適当な乾燥手法で該正極合材スラリーに含まれる溶媒を除去する。かかる手法としては、自然乾燥、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線等による乾燥を単独または組み合わせて用いることができる。
そして、上記正極に適宜プレス処理を施すことによって、正極合材層の厚みや密度を調整することができる。該プレス処理には、例えば、ロールプレス法、平板プレス法等、従来公知の各種プレス方法を採用することができる。プレス処理後の正極合材層の密度は特に限定されないが、例えば2.0g/cm以上(典型的には2.5g/cm以上)であって、4.4g/cm以下(典型的には4.2g/cm以下)とすることができる。上記範囲を満たす正極合材層は、高い電池性能(例えば、高いエネルギー密度や出力密度)を実現し得るため好ましい。
以下に、正極を構成する材料等について説明する。
正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられる。集電体の形状は構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されないが、例えば棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。なお、後述する捲回電極体を備えた電池では、主に箔状体が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから5μm〜50μm(より好ましくは8μm〜30μm)程度のものを用いることができる。
正極活物質としては、従来から非水電解質二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等の、リチウム元素と遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物);リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム元素と遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩;リチウム元素とチタン元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウムチタン複合酸化物。LTOとも言う。);等が挙げられる。正極合材層全体に占める正極活物質の割合は特に限定されないが、50質量%以上(典型的には70質量%以上100質量%未満、例えば80質量%以上99質量%以下)であることが好ましい。
なかでも、構成元素としてリチウム元素、ニッケル元素、コバルト元素およびマンガン元素を含む層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)は、熱安定性に優れエネルギー密度も高いことから好ましく用いることができる。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li、Ni、Co、Mnを構成元素とする酸化物のほか、Li、Ni、Co、Mn以外に他の少なくとも一種の金属元素(Li、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうちの一種または二種以上の元素であり得る。これは、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムマンガン酸化物についても同様である。上記置換的な構成元素の量は特に限定されないが、例えば、当該置換元素とNiとCoとMnとの合計100質量%に対して0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.3質量%以上)であって、5質量%以下(典型的には3質量%以下、例えば2.5質量%以下)とすることができる。このようなリチウム遷移金属酸化物は、例えば従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。
また、リチウムチタン複合酸化物としては、例えばLiTi12、LiTi、LiTi等の化学式で示されるものが挙げられ、なかでもLiTi12で示されるスピネル構造を有するチタン酸リチウムを好ましく用いることができる。ここでいうリチウムチタン複合酸化物とは、上記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の場合と同様に、構成元素(LiおよびTi)以外に上述したような金属元素を一種または二種以上含む酸化物をも包含する意味である。このようなリチウムチタン複合酸化物は、例えば従来公知の方法で調製されるリチウムチタン複合酸化物粉末をそのまま使用することができる。
ここで用いられる正極活物質は、典型的には粒子状(粉末状)である。該粒子の性状は特に限定されないが、例えば粒径が20μm以下(典型的には0.1μm以上20μm以下、例えば0.5μm以上15μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下)のものを用いることができる。また、例えば該粒子の比表面積は0.1m/g以上(典型的には0.5m/g以上、好ましくは1m/g以上)であって、30m/g以下(典型的には20m/g以下、好ましくは10m/g以下)とすることができる。正極活物質粒子の性状が上記範囲にある場合、緻密で導電性の高い正極合材層を作製し得る。また該正極合材層内に適度な空隙を保持することができるため、非水電解質が浸漬し易く、過充電時にガス発生添加剤との反応場を広く確保し得る。したがって、高い電池性能と、本願発明の効果とをより高いレベルで両立することができる。なお、本明細書において「比表面積」とは、窒素ガスによる定容量式吸着法に基づく比表面積測定によって測定された値を、BET法(例えばBET1点法)で解析した表面積(BET比表面積)を言う。
導電材としては、従来から非水電解質二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、コークス、黒鉛(天然黒鉛およびその改質体、人造黒鉛)、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維)、ナノカーボン等の炭素材料;金属繊維(例えばAl、SUS等)、導電性金属粉末(例えばAg、Ni、Cu等)、金属酸化物(例えばZnO、SnO2等)、金属で表面被覆した合成繊維等の金属材料;から選択される、一種または二種以上であり得る。なかでも、比較的粒径が小さく比表面積が大きいカーボンブラック(典型的には、アセチレンブラック)を好ましく用いることができる。正極合材層全体に占める導電材の割合は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上15質量%以下(典型的には1質量%以上10質量%以下、例えば2質量%以上7質量%以下)とすることができる。
バインダとしては、従来から非水電解質二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、有機溶剤系のスラリー(分散媒の主成分が有機溶媒である溶剤系スラリー)を用いて正極合材層を形成する場合には、有機溶剤に分散または溶解するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。あるいは、水系のスラリーを用いて正極合材層を形成する場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系ポリマー;ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;等が例示される。また、水に分散する(水分散性の)ポリマー材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のエチレン系ポリマー;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類;等が挙げられる。正極合材層全体に占めるバインダの割合は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上10質量%以下(好ましくは1質量%以上7質量%以下)とすることができる。
溶媒としては、上記スラリー形成に用いる材料を均一に分散または溶解し得る限りにおいて特に限定されないが、例えば従来から非水電解質二次電池の製造に用いられている溶媒のうち一種または二種以上を用いることができる。かかる溶媒は、有機溶剤と水系溶媒とに大別される。有機溶剤としては、例えば、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミン系溶剤、エーテル系溶剤、ニトリル系溶剤、環状エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。より具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−プロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロペン酸メチル、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、アセトニトリル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられ、典型的にはNMPを用いることができる。また、水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒(例えば水)が挙げられる。
また、ここで調製される正極合材スラリーには、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、各種添加剤(例えば、過充電時にガスを発生させ得る化合物や、分散剤として機能し得る材料)等を添加することもできる。
上記過充電時にガスを発生させ得る化合物としては、炭酸塩(例えば、炭酸リチウム)やシュウ酸塩(例えば、シュウ酸リチウム)等が挙げられる。また、上記分散剤としては、疎水性鎖と親水性基をもつ高分子化合物(例えばアルカリ塩、典型的にはナトリウム塩);硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等を有するアニオン性化合物;アミン等のカチオン性化合物;等が挙げられる。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチラール、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ等が挙げられる。
次に、ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された少なくとも負極活物質を含む負極合材層と、を備えている。かかる負極を作製する方法は特に限定されないが、例えば負極活物質とバインダ等とを適当な溶媒中で混合してスラリー状の組成物(以下、「負極合材スラリー」という。)を調製し、該スラリーを負極集電体上に付与して負極合材層(負極活物質層ともいう。)を形成することで作製し得る。負極合材スラリーの調製方法等は、上述した正極の場合と同様の手法であり得る。該スラリーの固形分濃度(NV)は特に限定されないが、例えば40質量%〜65質量%(好ましくは45質量%〜55質量%、より好ましくは45質量%〜50質量%)とすることができる。正極合材層の形成や乾燥方法についても上述した正極の場合と同様の手法であり得る。
そして、上記負極に適宜プレス処理を施すことによって、負極合材層の厚みや密度を調整することができる。プレス処理後の負極合材層の密度は特に限定されないが、例えば1.1g/cm以上(典型的には1.2g/cm以上、例えば1.3g/cm以上)であって、2.0g/cm以下(典型的には1.8g/cm以下)とすることができる。
以下に、負極を構成する材料等について説明する。
負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられる。また、負極集電体の形状は正極集電体の形状と同様であり得る。
負極活物質としては、従来から非水電解質二次電池に用いられる物質の一種または二種以上の材料を特に限定することなく使用することができる。例えば、天然黒鉛(石墨)、石油または石炭系の材料から製造された人造黒鉛およびその改質体、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンナノチューブ等の炭素材料;リチウムチタン複合酸化物、酸化鉄等の金属酸化物材料;スズ(Sn)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)等の金属もしくはこれらの金属元素を主体とする金属合金からなる金属材料;等が挙げられる。なかでも、高いエネルギー密度が得られることから、黒鉛材料(グラファイト)を好ましく使用することができる。負極合材層全体に占める負極活物質の割合は特に限定されないが、通常は凡そ50質量%以上とすることが適当であり、好ましくは90質量%以上以下99.5質量%(例えば95質量%以上99質量%以下)である。
バインダとしては、上記正極合材層用のバインダとして例示したポリマー材料から適当なものを選択することができる。具体的には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が例示される。負極合材層全体に占めるバインダの割合は特に限定されないが、例えば0.5質量%以上10質量%以下(好ましくは2質量%以上5質量%以下)とすることができる。その他、既に上述した各種添加剤(例えば、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC))や導電材等を適宜使用することもできる。
そして、上記正極および上記負極を積層し、電極体が作製される。かかる電極体の形状は特に限定されないが、例えば、図3に示すように、長尺状の正極集電体12上に所定の幅の正極合材層14が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の上記正極10と、長尺状の負極集電体22上に所定の幅の負極合材層24が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の上記負極20と、が積層され捲回されてなる捲回電極体80を用いることができる。
ここで開示される密閉型非水電解質二次電池の典型的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。該セパレータとしては、従来から非水電解質二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。
セパレータの厚みは特に限定されないが、例えば10μm以上50μm以下(典型的には10μm以上40μm以下)とすることができる。さらに、セパレータ(典型的には多孔質樹脂シート)の性状は特に限定されないが、例えば孔径が0.001μm〜30μm(典型的には0.01μm〜20μm、例えば0.1μm〜10μm)程度のものを用いることができる。また、例えば気孔率(空隙率)が20体積%以上90体積%以下(典型的には30体積%以上80体積%以下、例えば35体積%以上70体積%以下)程度のものを用いることができる。なお、本明細書において「孔径」とは、一般的な水銀圧入法測定に基づいて得られる値を示す。また「気孔率」とは、上記水銀圧入法の測定によって得られる気孔容積(Vb(cm))を、見かけの体積(Va(cm))で除して、100を掛けることにより、算出した値を意味する。
上記正極と負極とを備える電極体と、非水電解質と、を適当な電池ケースに収容し、該ケースを密閉して密閉型非水電解質二次電池が構築される。なお、該ケースには安全機構として電流遮断機構(電池の過充電時に、該ガスの発生によって生じたケース内圧の上昇に応じて電流を遮断し得る機構)が備えられている。
かかる電池の密閉方法には、従来から密閉型の電池に用いられる方法を適宜採用することができる。例えば、金属製の電池ケースを用いる場合は、レーザー溶接、抵抗溶接、電子ビーム溶接等の手法を用いることができる。また、非金属製(例えば樹脂材料)の電池ケースを用いる場合は、接着剤による接着や超音波溶接等の手法を用いることができる。
電池ケースとしては、従来から非水電解質二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。該ケースの材質としては、例えば、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;が挙げられる。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)は特に限定されず、例えば、円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。
非水電解質としては、従来から非水電解質二次電池に用いられるものと同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる電解質は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩(典型的には、リチウム塩)を含有させた組成を有する。
該非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
例えば、カーボネート類を主体とする非水溶媒は、負極活物質表面に好適に被膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)を形成し得るため好ましく、なかでも比誘電率の高いECや、電位窓の広いDEC、DMCおよびEMCを好ましく用いることができる。例えば、非水溶媒として一種または二種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水溶媒を好ましく用いることができる。
支持塩としては、非水電解質二次電池の支持電解質として機能し得ることが知られている各種の材料を適宜採用することができる。例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等の各種のリチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができ、なかでもLiPFを好ましく用いることができる。支持塩の濃度は特に制限されないが、極端に低すぎると電解質に含まれる電荷担体(典型的にはリチウムイオン)の量が不足し、イオン伝導性が低下する傾向がある。またかかる濃度が極端に高すぎると、室温以下の温度域(例えば0℃〜30℃)において電解質の粘度が高くなり、イオン伝導性が低下する傾向がある。このため、該支持塩の濃度は例えば、0.1mol/L以上2mol/L以下(好ましくは、0.8mol/L以上1.5mol/L以下)とすることが好ましい。
ここで開示される技術において、上記非水電解質は、平行円板型回転粘度計(B型粘度計)により測定される、25℃での粘度(V25℃)と60℃での粘度(V60℃)との比(V60℃/V25℃)が、0.4以上1.3以下であることが好ましい。かかる粘度比をとすることで、本発明の効果(広範な温度域における信頼性の向上)と、優れた電池性能と、を高いレベルで両立することができる。
なお、ここで開示される非水電解質には、レドックスシャトル剤とガス発生剤と粘度調整剤とが含まれているが、本願発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、さらに上記以外の各種添加剤(例えば電池の性能を向上させ得る添加剤)を適宜添加することもできる。より具体的には、例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート(DVEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のカーボネート類が挙げられる。
電流遮断機構としては、電池ケース内の圧力の上昇に応じて(即ち、内圧の上昇を作動のトリガーとして)電流を遮断し得るものであれば特に限定されず、この種の電池に設けられる電流遮断機構として従来知られているいずれかのものと同様の機構を適宜採用することができる。一例として、後述する図2に示すような構成を採用することができる。かかる構成では、電池ケースの内圧が上昇した際、電極端子から電極体に至る導電経路を構成する部材が変形し、他方から離隔することにより導電経路を切断するように構成されている。
特に限定することを意図したものではないが、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池の概略構成として、扁平に捲回された電極体(捲回電極体)と、非水電解質と、を扁平な直方体形状(角形)の容器に収容した形態の密閉型非水電解質二次電池(単電池)を例とし、図1〜3にその概略構成を示す。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池100の外形を模式的に示す斜視図である。また図2は、上記図1に示した密閉型非水電解質二次電池のII−II線に沿う断面構造を模式的に示す図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る密閉型非水電解質二次電池100は、捲回電極体80と、電池ケース(外容器)50とを備える。この電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(角形)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。電池ケース50の上面(即ち蓋体54)には、捲回電極体80の正極シートと電気的に接続する正極端子70および該電極体の負極シートと電気的に接続する負極端子72が設けられている。また、蓋体54には、従来の非水電解質二次電池の電池ケースと同様に、電池ケース内部で発生したガスをケースの外部に排出するための安全弁55が備えられている。かかる安全弁55は、典型的には電流遮断機構30の作動する圧力以上で開放されるよう設定されている。
電池ケース50の内部には、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40Aと40Bとを介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解質とともに収容される。また、正極シート10は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極合材層14が設けられておらず(あるいは除去されて)、正極集電体12が露出するよう形成されている。同様に、捲回される負極シート20は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極合材層24が設けられておらず(あるいは除去されて)、負極集電体22が露出するように形成されている。そして、正極集電体12の該露出端部に正極集電板74が、負極集電体22の該露出端部には負極集電板76がそれぞれ付設され、上記正極端子70および上記負極端子72とそれぞれ電気的に接続されている。
また、電池ケース50の内部には、電池ケースの内圧上昇により作動する電流遮断機構30が設けられている。電流遮断機構30は、電池ケース50の内圧が上昇した場合に少なくとも一方の電極端子から電極体80に至る導電経路(例えば、充電経路)を切断するように構成されていればよく、特定の形状に限定されない。図2に示す実施形態では、電流遮断機構30は蓋体54に固定した正極端子70と電極体80との間に設けられ、電池ケース50の内圧が上昇した場合に正極端子70から電極体80に至る導電経路を切断するように構成されている。
より具体的には、上記電流遮断機構30は例えば第一部材32と第二部材34とを含み得る。そして、電池ケース50の内圧が上昇した場合に第一部材32および第二部材34の少なくとも一方が変形して他方から離隔することにより上記導電経路を切断するように構成されている。図2に示す実施形態では、第一部材32は変形金属板であり、第二部材34は上記変形金属板32に接合された接続金属板である。変形金属板(第一部材)32は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状を有し、その周縁部分が集電リード端子35を介して正極端子70の下面と接続されている。また、変形金属板32の湾曲部分33の先端が接続金属板34の上面と接合されている。接続金属板34の下面(裏面)には正極集電板74が接合され、かかる正極集電板74が電極体80の正極10に接続されている。このようにして、正極端子70から電極体80に至る導電経路が形成されている。
また、電流遮断機構30は、プラスチック等により形成された絶縁ケース38を備えている。該絶縁ケース38は変形金属板32を囲むように設けられ、変形金属板32の上面を気密に密閉している。この気密に密閉された湾曲部分33の上面には電池ケース50の内圧が作用しない。また、絶縁ケース38は変形金属板32の湾曲部分33を嵌入する開口部を有しており、該開口部から湾曲部分33の下面を電池ケース50の内部に露出している。この電池ケース50の内部に露出した湾曲部分33の下面には電池ケース50の内圧が作用する。かかる構成の電流遮断機構30において、電池ケース50の内圧が高まると該内圧が変形金属板32の湾曲部分33の下面に作用し、下方へ湾曲した湾曲部分33が上方へ押し上げられる。この湾曲部分33の上方への押し上げは電池ケース50の内圧が上昇するに従い増大する。そして、電池ケース50の内圧が設定圧力を超えると湾曲部分33が上下反転し上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分33の変形によって、変形金属板32と接続金属板34との接合点36が切断される。このことにより、正極端子70から電極体80に至る導電経路が切断され、過充電電流が遮断されるようになっている。
なお、電流遮断機構30は正極端子70側に限らず、負極端子72側に設けてもよい。また、電流遮断機構30は、上述した変形金属板32の変形を伴う機械的な切断に限定されず、例えば、電池ケース50の内圧をセンサで検知し、該センサで検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を電流遮断機構として設けることもできる。
図3は、捲回電極体80を組み立てる前段階における長尺状のシート構造(電極シート)を模式的に示す図である。長尺状の正極集電体12の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って正極合材層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って負極合材層24が形成された負極シート20とを、長尺状のセパレータ40Aと40Bとともに重ね合わせて長尺方向に捲回し、捲回電極体が作製される。かかる捲回電極体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体80が得られる。捲回電極体を備えた電池は非水電解質二次電池の中でも高容量なため、信頼性の向上が殊に重要である。ここで開示される技術によれば、かかる電池の信頼性(例えば、過充電時における電流遮断機構の作動能)を従来に比べ向上させることができる。
図4は、密閉型非水電解質二次電池(単電池)100が直列および/または並列に接続されてなる組電池200の一例を示す。ここで開示される電池(単電池)は非水電解質中にレドックスシャトル剤を含んでいる。このため、これら単電池を複数個相互に(典型的には直列に)接続してなる組電池では、各単電池にSOCのバラつきがあってもそのバラつきを是正して所定の充電状態に揃えることができる。さらに、限界電流密度を超えた過充電に対しては、迅速に電流遮断機構を作動させることができる。図4に示す形態では、組電池200は複数個(典型的には10個以上、好ましくは10〜30個程度、例えば20個)の密閉型非水電解質二次電池(単電池)100を、それぞれの正極端子70および負極端子72が交互に配置されるように一つずつ反転させつつ、電池ケース50の幅広な面が対向する方向(積層方向)に配列されている。そして、当該配列された単電池100の間には所定形状の冷却板110が挟み込まれている。この冷却板110は、使用時に各単電池100内で発生する熱を効率よく放散させるための放熱部材として機能するものであって、好ましくは単電池100の間に冷却用流体(典型的には空気)を導入可能な形状(例えば、長方形状の冷却板の一辺から垂直に延びて対向する辺に至る複数の平行な溝が表面に設けられた形状)を有する。熱伝導性の良い金属製もしくは軽量で硬質なポリプロピレンその他の合成樹脂製の冷却板が好適である。
上記配列させた単電池100および冷却板110の両端には、一対のエンドプレート(拘束板)120が配置されている。また、上記冷却板110とエンドプレート120との間には、長さ調整手段としてのシート状スペーサ部材150を一枚又は複数枚挟み込んでいてもよい。上記配列された単電池100、冷却板110およびスペーサ部材150は、両エンドプレートの間を架橋するように取り付けられた締め付け用の拘束バンド130によって、該積層方向に所定の拘束圧が加わるように拘束されている。より詳しくは、拘束バンド130の端部をビス155によりエンドプレート120に締付且つ固定することによって、上記単電池等は、その配列方向に所定の拘束圧が加わるように拘束されている。これにより、各単電池100の電池ケース50の内部に収容されている捲回電極体80にも拘束圧がかかる。そして、隣接する単電池100間において、一方の正極端子70と他方の負極端子72とが、接続部材(バスバー)140によって電気的に接続されている。このように各単電池100を直列に接続することにより、所望する電圧の組電池200が構築されている。
ここで開示される電池は各種用途に利用可能であるが、広範な温度域(例えば、0℃〜80℃)において高い電池性能と信頼性とを両立していることを特徴とする。従って、高いエネルギー密度や出力密度が要求される用途や、使用および/または放置環境が高温になり得る用途で、特に好適に用いることができる。かかる用途としては、例えば図5に示すような車両1に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)が挙げられる。車両1の種類は特に限定されないが、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす等が挙げられる。なお、ここでは単電池100が直列および/または並列に複数個接続されてなる組電池200を用いたが、勿論、単電池100を単独で使用することも可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1>
以下の手順に従って、角型の密閉型非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を構築した。
まず、正極活物質としてのスピネル構造を有するチタン酸リチウム(LTO:LiTi12)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを用い、これらの材料を質量比でLTO:AB:PVdF=90:5:5となるように混練機に投入した。そして、固形分濃度(NV)が55質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調製しながら混練し、正極合材スラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み15μm、住友軽金属製1085)の上に幅58.0mmで塗布して、乾燥後にロールプレス処理することで、正極集電体上に正極合材層を有するシート状の正極(正極シート)を作製した。そして、上記正極シートを幅78.0(mm)に切断した。なお、かかる正極シートの幅方向における片側の端部は、正極集電体(アルミニウム箔)が20mm露出している。
次に、負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを用い、これら材料を質量比でC:SBR:CMC=98:1:1となるように混練機に投入した。そして、固形分濃度(NV)が45質量%となるようにイオン交換水と混合することにより負極合材スラリーを調製した。このスラリーを、負極集電体としての銅箔(厚み20μm)の上に幅60.9mmで塗布して、乾燥後にロールプレス処理することで、負極集電体上に負極合材層を有する負極(負極シート)を作製した。そして、上記負極シートを幅80.9(mm)に切断した。なお、かかる負極シートの幅方向における片側の端部には、負極集電体(銅箔)が20mm露出している。
そして、上記で作製した正極と負極とを、2枚のシート状のセパレータ(セパレータシート。ここでは、ポリエチレン(PE)製の単層構造であって、幅63.0mmのものを用いた。)を介して対面に配置し、重ね合わせて電極積層体を得る。この際、図3に示すように、正極集電体の露出部がセパレータシートの幅方向における端部からはみ出るように重ね合わせる。同様に、負極集電体の露出部も、セパレータシートの幅方向における(もう一方の)端部からはみ出るように重ね合わせる。そして該電極積層体を、捲回して側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体を作製した。そして、該電極体の正極集電体の露出部にアルミニウム製の正極リード(厚み1mm)を、負極集電体の露出部に銅製の負極リード(厚み1mm)を、それぞれ溶接により接合した。
なお、上記正負極のリードは電池ケースの蓋体に備えられており、其々外部の正負極端子と導通している。
これを角型の電池ケース(縦75mm、横120mm、高さ15mm、ケース厚み1mm)に収容し、該電池ケースの開口部付近に圧力作動型の電流遮断機構(以下、CIDという。)を設置し、溶接して封口した。該電池ケースの注液口から調製した非水電解質(ここでは、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、EC:EMC:DEC=3:5:2の体積比で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFを凡そ1.2mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。)を20mL注入し、該注液口にアルミニウム板を被せてレーザー溶接にて接合した。これによって、密閉型非水電解質二次電池(例1)を3個構築した。
<例2>
例2では、上記非水電解質中に、さらにレドックスシャトルシャトル剤としての2,5−ジフルオロ−1,4−ジメトキシベンゼン(シャトル反応開始電位(vs.Li/Li):4.2V)を0.1mol/Lの濃度で溶解させたこと以外は例1と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例2)を構築した。
<例3>
例3では、例2の非水電解質中に、粘度調整剤としてのカードラン(1,3−グルカン、商品名「カードランNS」、キリン協和フーズ株式会社製。D50粒径:130μm、重量平均分子量(Mw):凡そ50万)を0.1質量%の割合で分散させたこと以外は例2と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例3)を構築した。
<例4>
例4では、例2の非水電解質中に、ガス発生剤としてのシクロヘキシルベンゼン(CHB、酸化電位:4.6V)を2.0質量%の割合で溶解させたこと以外は例2と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例4)を構築した。
<例5>
例5では、例4の非水電解質中に、粘度調整剤としてのカードラン(ここでは、上記例3と同様のものを用いた。)を1.0質量%の割合で分散させたこと以外は例4と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例5)を構築した。
<例6>
例6では、例4の非水電解質中に、粘度調整剤としてのカードラン(ここでは、上記例3と同様のものを用いた。)を0.1質量%の割合で分散させたこと以外は例4と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例6)を構築した。
<例7>
例5では、例4の非水電解質中に、粘度調整剤としてのカードラン(ここでは、上記例3と同様のものを用いた。)を3.0質量%の割合で分散させたこと以外は例4と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例7)を構築した。
<例8>
例5では、例4の非水電解質中に、粘度調整剤としてのカードラン(ここでは、上記例3と同様のものを用いた。)を5.0質量%の割合で分散させたこと以外は例4と同様に、密閉型非水電解質二次電池(例8)を構築した。
上記構築した電池の特徴を表1に纏める。
Figure 0005924529
構築した各電池(例1〜8)に対し、25℃の温度環境下において、コンディショニング処理(ここでは、0.2Cの充電レートで2.0Vまで定電流で充電(以下、CC充電という。)する操作と、0.2Cの放電レートで1.0Vまで定電流で放電(以下、CC放電という。)する操作を2回繰り返す初期充放電処理。)を行った後に、エージング処理(ここでは、0.2Cの充電レートで2.0VまでCC充電し、48時間保持(放置)する操作。)を行った。
[電池容量の測定]
上記エージング処理後の各電池に対し、25℃の環境下で、先ず1Cの充電レートで2.0VまでCC充電し5分休止する操作と、1Cの放電レートで1.0VまでCC放電し5分休止する操作と、を行った。次に、1Cの充電レートで2.0VまでCC充電した後、1Cの放電レートで1.0VまでCC放電し、放電電流が0.1Cになるまで定電圧で放電(以下、CV放電という。)した。このときのCCCV容量を、以下「初期CCCV放電容量」という。なお、以下のCレートは、上記測定した初期CCCV放電容量を100%として計算した値を用いた。
[低レート過充電試験]
初期容量測定後の各電池(例1〜5)に対し、低レートで過充電試験を行った。具体的には、まず25℃に設定された恒温槽内に該電池を5時間以上静置した(以下同様に、各評価の前に少なくとも5時間、評価温度下にて該電池を静置した。)。そして、0.05Cの充電レートで、以下(1)〜(3)のいずれかに該当するまで連続的にCC充電を行った。
(1)SOCが200%に到達するまで
(2)電池電圧(正極電位と負極電位の差)が5Vになるまで
(3)CIDが作動するまで
また、上記(1)に該当して試験を終了した電池については、5分休止した後に、1Cの放電レートで1.0VまでCC放電し、放電電流が0.1CになるまでCV放電した。そして、低レート過充電試験後のCCCV放電容量(Da)を、該過充電試験前のCCCV放電容量(Db)で除して100を掛けた値(Da/Db×100)を、容量維持率(%)として計算した。結果を表2の該当欄に示す。
Figure 0005924529
表2に示す通り、レドックスシャトル剤を添加した例2〜5の電池は、上記(1)の条件に該当し試験を終了した。これらの電池は容量維持率に僅かな差があるものの、SOC200%という過充電状態でも高い放電容量(高い容量維持率)を維持しており、可逆性を保っていることが確認された。
一方、レドックスシャトル剤を添加しなかった例1の電池では、(1)〜(3)のいずれかに至る前にセパレータのシャットダウンが生じた。即ち、連続的な充電操作によって過充電状態となった該電池では、内部で短絡が発生しジュール熱によって温度が上昇する。そして、セパレータを構成するPEの融点(シャットダウン温度)に達すると、該PEが溶解(もしくは軟化)し、セパレータの気孔を塞ぐようになっている。例1の電池は、かかる現象により正負極間の電荷の移動が遮断されたため、不可逆的に充電が停止した。
以上の結果は、レドックスシャトル剤を添加することの意義を示すものである。
[高レート過充電試験]
次に、電池(例1〜5)に対し、25℃および60℃の温度環境下において高レートで過充電試験を行った。具体的には、充電レートを1Cとしたこと以外は、上記「低レート過充電試験」と同様に、連続的にCC充電を行った。結果を表2の該当欄に示す。
表2に示す通り、例1の電池はいずれの温度においても(1)〜(3)のいずれかに至る前に、セパレータのシャットダウンが生じた。
例2〜5の電池は上記(3)の条件に該当し試験を終了した。このうち、ガス発生剤を添加しなかった例2および3の電池では、いずれの温度においてもCIDが作動するまでにSOCが高い状態(例えば、SOCが150〜170%の状態)まで達した。また、ガス発生剤を添加した例4の電池では、25℃の環境下ではSOCが125%の状態でCIDが作動したのに対し、60℃の環境下ではSOCが150%以上の状態までCIDが作動しなかった。これは、室温より高い温度環境下(ここでは60℃)においてガス発生剤のレドックスシャトル反応が優先的に生じたため、ガスを発生し得る酸化分解反応が抑制されたためと考えられる。上記に比べ、本発明に係る、ガス発生剤と粘度調整剤とを備えた例5の電池では、いずれの温度下においてもSOCが低い状態で安定的にCIDが作動した。これは、環境温度の上昇とともに粘度調整剤たるカードランが増粘したために、レドックスシャトル反応により生じたカチオンラジカルの拡散および移動が抑制され、その結果、ガス発生剤の酸化分解反応が促進されたためと考えられる。かかる結果は、粘度調整剤を添加することの意義を示すものである。
上記結果は、本発明と従来技術との作用効果の差異を示すものであり、本発明によって室温より高温(例えば50℃〜80℃)の温度域においてもガス発生剤が好適に酸化分解され、安定的に所望のガス量を発生し得ることが示された。そして、かかるガスの発生により電池ケース内に圧力上昇を生じ得るため、電流遮断機構をより確実に作動させることができる。従って、ここで開示される密閉型非水電解質二次電池は、従来に比べ広範な温度域における信頼性が向上している。
[粘度測定]
次に、例4〜8の電池に用いた電解質について、25℃および60℃の温度環境下で粘度の測定を行った。具体的には、平行円板型回転粘度計(B型粘度計)を用いて、回転速度20rpmにおける粘度(V20rpm)と回転速度2rpmにおける粘度(V2rpm)をそれぞれ測定した。そして、上記得られた測定値の算術平均((V20rpm+V2rpm)/2)を、粘度V(mPa・sec)とした。60℃における粘度(V60℃)を25℃における粘度(V25℃)で除した値(V60℃/V25℃)を表3の該当欄に示す。
Figure 0005924529
表3より明らかなように、粘度調整剤を添加しなかった例4の電解質は、環境温度の上昇によって電解質の粘度が大きく低下した。一方、粘度調整剤としてカードランを添加した例5〜8は、温度上昇に伴う電解質の粘度低下が抑制されていた。より詳細には、カードランの添加量が(電解質全体に対して)凡そ1〜3質量の場合には、25℃と60℃における粘度がほぼ等しく保たれていた。また該添加量が3質量%以上では、環境温度の上昇に伴って粘度が顕著に増加した。かかる結果は、本発明の特徴的部分を裏付けるものである。
ここで、上記粘度調整剤の好適な添加範囲を見極めるため、該粘度調整剤の添加に伴う電池性能の差異について検討を行った。
[出力特性評価]
例4〜8の電池を用いて、出力特性を評価した。具体的には、25℃および60℃の温度環境下で、2Cの放電レートで1.0VまでCC放電し、CC放電容量を求めた。そして、60℃におけるCC放電容量(D60℃)を、25℃におけるCC放電容量(D25℃)で除した値(D60℃/D25℃)を表3の該当欄および図6に示す。
表3および図6に示すように、V60℃/V25℃≧1.0では、高温環境下(60℃)における出力特性の低下がみられた。従って、例えばV60℃/V25℃≦1.3とすることで高温環境下における出力特性の低下を凡そ20%以内に抑え得ることが示された。また好ましくは、V60℃/V25℃≦1.2(より好ましくは、V60℃/V25℃≦1.15)とすることで、高温環境下における出力特性の低下を10%以内に抑え得ることが示された。
[CID作動能の評価]
さらに、例4〜8の電池を用いてCID作動能について評価を行った。具体的には、上記「高レート過充電試験」と同様に、1Cの充電レートで連続的にCC充電を行った。結果を表3の該当欄および図6に示す。
表3および図6に示すように、V60℃/V25℃≦0.3では、高温環境下(60℃)においてCIDの作動が遅れる虞があった。従って、例えばV60℃/V25℃≧0.4とすることで、高温環境下においても安定的にCIDを作動させ得ることが示された。
出力特性およびCID作動能の評価結果より、0.4≦V60℃/V25℃≦1.3(即ち、粘度調整剤の添加割合を凡そ0.1質量%〜3質量%)とすることで、広範な温度域において、本発明の効果(信頼性の向上)と、優れた電池性能(例えば高い出力特性)と、を高いレベルで両立し得ることが示された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 自動車(車両)
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
30 電流遮断機構
32 変形金属板(第一部材)
34 接続金属板(第二部材)
38 絶縁ケース
40A、40B セパレータシート
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 密閉型非水電解質二次電池
110 冷却板
120 エンドプレート
130 拘束バンド
140 接続部材
150 スペーサ部材
155 ビス
200 組電池

Claims (11)

  1. 正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解質と、が電池ケース内に収容された密閉型非水電解質二次電池であって、
    前記非水電解質には、前記正極活物質よりも高い電位で可逆的な酸化還元反応を生じ得るレドックスシャトル剤と、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤と、温度上昇に伴う前記非水電解質の粘度低下を抑制し得る粘度調整剤と、が含まれており、
    前記粘度調整剤は多糖類を含み、
    前記電池ケースには、前記ガスの発生に伴って前記電池ケース内の圧力が上昇した際に作動する電流遮断機構が備えられている、密閉型非水電解質二次電池。
  2. 前記ガス発生剤の有する酸化電位は、前記レドックスシャトル剤のシャトル反応開始電位よりも高い、請求項1に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  3. 前記多糖類としてカードランを含む、請求項1または2に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  4. 前記非水電解質は、平行円板型回転粘度計(B型粘度計)により測定される、25℃での粘度(V25℃)と60℃での粘度(V60℃)との比(V60℃/V25℃)が、0.4以上1.3以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  5. 前記粘度調整剤の添加量は、前記非水電解質100質量%に対し、0.1質量%以上3質量%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  6. 前記レドックスシャトル剤としてアルコキシベンゼン類を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  7. 前記レドックスシャトル剤の添加量は、前記非水電解質に対し、0.01mol/L以上1mol/L以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  8. 前記ガス発生剤としてシクロヘキシルベンゼンおよび/またはビフェニルを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  9. 前記ガス発生剤の添加量は、前記非水電解質100質量%に対し、0.5質量%以上5質量%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池。
  10. 請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型非水電解質二次電池を複数個組み合わせた組電池。
  11. 請求項10に記載の組電池を駆動用電源として備える車両。
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