JP5922417B2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

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Description

この発明は、ディーゼルエンジン等に用いられ、プランジャバレルから給排燃料室に排出される燃料の噴流に起因するエロージョンの発生を抑制することが可能な燃料噴射ポンプに関する。
従来、図5に示すように、ディーゼルエンジン等に用いる燃料噴射ポンプ100は、給排ポート11が貫通して形成された筒状のプランジャバレル2と、プランジャバレル2とともにプランジャ室21を画成するプランジャ3と、プランジャバレル2との間で給排される燃料を貯留する給排燃料室4と、ポンプケース5とを備え、プランジャ3の往復動によりプランジャ3の周面に形成されたリード31及び凹部側領域32、凸部側領域33が給排ポート11を開閉して、給排燃料室4とプランジャバレル2間で燃料を給排するとともに、プランジャ室21から図示しないバルブ23、吐出口24を経由してエンジン本体に燃料を吐出する構成とされている。
このような燃料噴射ポンプ100では、プランジャ3がプランジャバレル2から給排燃料室4に燃料を排出する際に、給排ポート11を通じて給排燃料室4に噴出される燃料にキャビテーションが発生して、このキャビテーションが給排ポート11の壁部に衝突することにより、給排ポート11の内壁部にキャビテーションエロージョンを生じさせる原因となっている。
そこで、ポンプケース5に取付部材112を介してデフレクタ110を取付けて、デフレクタ110を給排ポート11内に配置して、プランジャバレル2から給排燃料室4に排出される高速の燃料流をデフレクタ110に衝突させて給排ポート11内へのキャビテーションエロージョンの発生を抑制するようになっている。また、プランジャ3には、リード31の上方に傾斜部34を有するグラダンが形成されて、給排燃料室4に噴出される燃料の向きを制御する場合がある。
また、デフレクタを用いてキャビテーションを抑制する技術は、種々開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
特開2000−179428号公報 特開2008−115791号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術等を用いても、ディーゼルエンジン等の燃料噴射ポンプは使用条件が厳しく、設置したデフレクタを定期的に交換することが必要とされることから、キャビテーションエロージョンをより効率的に抑制し、ひいてはメンテナンス費用を削減することに対する強い技術的要請がある。
そこで、発明者らは、給排ポート内に配置したデフレクタに発生するキャビテーションを鋭意研究した結果、例えば、図6に示すように、デフレクタ110の先端が端面とされている場合、デフレクタ110の受部に発生したキャビテーション渦は渦受部111を構成する端面に大きな圧力低下が生じて、キャビテーションエロージョンの原因となるとの知見を得た。一方で、プランジャに形成されるグラダン角と、デフレクタの形態とを適切に対応させることにより、キャビテーションをデフレクタに効率的に衝突させて、給排ポート壁部へのキャビテーションの衝突を大幅に低減できることを掴んだ。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ディーゼルエンジン等の燃料噴射ポンプにおいて、プランジャバレルから給排燃料室に排出される燃料内に発生するキャビテーションに起因するエロージョンを効率的に抑制可能な燃料噴射ポンプを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、給排ポートが貫通して形成された筒状のプランジャバレルと、前記プランジャバレル内に配置され前記プランジャバレルとともにプランジャ室を画成するプランジャと、前記プランジャバレルとの間で給排される燃料を貯留する給排燃料室とを備え、前記プランジャの往復動により前記プランジャ周面に形成されたリードにより前記給排ポートを開閉することにより、前記給排燃料室から前記プランジャバレルへの燃料供給と、前記プランジャバレルから前記給排燃料室への燃料排出を行なうとともに、前記プランジャ室から燃料を吐出する燃料噴射ポンプであって、前記プランジャには、前記リードより前記プランジャ室側にグラダンが形成され、前記グラダンには、前記プランジャの中心軸を含む断面においてグラダン角70°以上90°以下の傾斜部が形成され、前記給排ポートには、前記給排ポートから排出された燃料に生じるキャビテーション渦と衝突する渦受部が形成された筒状のデフレクタが配置されていることを特徴とする。
この発明に係る燃料噴射ポンプによれば、グラダンに形成した傾斜部のグラダン角度が70°以上90°以下に設定され、給排ポートにおける燃料の噴流が横向き傾向となるので、キャビテーション渦が給排ポートの内壁に直接衝突するのが抑制され、キャビテーション渦がデフレクタ先端部の渦受部と衝突して、渦受部以外の部位におけるキャビテーションエロージョンが抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料噴射ポンプであって、前記渦受部は、前記デフレクタ先端部に形成された前記プランジャ側が漸次縮径され膨出する曲面に配置されていることを特徴とする。
この発明に係る燃料噴射ポンプによれば、渦受部がデフレクタ先端部に形成されたプランジャ側が漸次縮径され膨出する曲面に配置されているので、噴流衝突時の渦がデフレクタの壁面と沿うとともに給排ポート壁部からの距離が遠くなり、給排ポートで発生するキャビテーションエロージョンの発生が効率的に抑制される。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の燃料噴射ポンプであって、前記プランジャは、前記リードを介して前記プランジャ室の反対側に形成された凹部側領域に、前記給排ポートに流通する燃料に圧損を生じさせる圧損発生手段を備えることを特徴とする。
この発明に係る燃料噴射ポンプによれば、排ポートに排出される燃料の圧力は、給排ポートの開度(ポート開度)に大きく支配される傾向があるが、グラダン上流部の凹部側領域に圧損発生手段を設けて、給排ポートに排出する燃料に圧力損失を発生させることにより、給排ポート部での噴流や静圧低下を抑制することができ、その結果、給排ポート前後の差圧が大きくても、キャビテーションの発生を抑制することができる。
また、給排ポート以外で圧力損失を発生させることにより、ポート開度に対する感度が低下し、微調整が可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料噴射ポンプであって、前記圧損発生手段は、前記凹部側領域に形成された凸形状部を有していることを特徴とする。
この発明に係る燃料噴射ポンプによれば、圧損発生手段は、凹部側領域に形成された凸形状部を有しているので、簡単な構成により圧力損失を発生させることができ、キャビテーションの発生を効率的に抑制することができる。
本発明に係る燃料噴射ポンプによれば、給排ポートから排出された燃料内に生じるキャビテーションをデフレクタに衝突させることにより、給排ポートへのキャビテーションエロージョンの発生を抑制することができ、ひいてはメンテナンスコストを削減することができる。また、燃料噴射ポンプの信頼性を向上することができる。
本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射ポンプの概略を説明する図である。 第1の実施形態に係る燃料噴射ポンプのグラダン角を説明する図である。 第1実施例に係るデフレクタの要部詳細を示す図であり、図2のA部拡大図である。 第1実施例に係るデフレクタの作用を説明する概念図である。 従来の燃料噴射ポンプを説明する図である。 従来のデフレクタの作用を説明する概念図である。
以下、図1から図4を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプ(ジャーク式燃料噴射ポンプ)の概略を示す図であり、符号1は燃料噴射ポンプを示している。
燃料噴射ポンプ1は、図1に示すように、プランジャバレル2と、プランジャバレル2内に配置されるプランジャ3と、プランジャバレル2との間で給排される燃料を貯留する給排燃料室4と、ポンプケース5と、デフレクタ40とを備え、プランジャバレル2、プランジャ3、給排燃料室4、デフレクタ40は、ポンプケース5内に配置されている。
プランジャバレル2は円筒状とされ、周壁部には、例えば、外周側が拡径するテーパ状の給排ポート11が形成されており、プランジャバレル2内部をプランジャ3がその軸線方向に往復動するようになっている。
プランジャ3は、図1に示すように、略円柱状とされて周面にはリード31が形成され、リード31を介してプランジャ室の反対側に配置される凹部側領域32と、リード31を介してプランジャ室側に形成された凸部側領域33とを有し、凹部側領域32と凸部側領域33とはリード31により接続されている。
プランジャ3には、図2に示すように、リード31よりもプランジャ室21側にグラダン(段差)が形成され、グラダンには傾斜部34が形成され、傾斜部34は、プランジャ3の中心軸線を含む断面において、プランジャ3の往復動方向との交差角、いわゆるグラダン角αが70°以上、90°以下とされている。その結果、給排ポート11の燃料の噴流が横向き傾向となるので、キャビテーション渦が給排ポート11の内壁に直接衝突するのが抑制され、キャビテーション渦がデフレクタ先端部と衝突して、キャビテーションエロージョンが抑制される。図中の矢印Fは、プランジャ3の往復動方向(プランジャ進行方向)を示しており、図2における上側がプランジャ進行方向前方側を、下側がプランジャ進行方向後方側を示している。
プランジャ3は、プランジャバレル2とともにプランジャバレル2上部にプランジャ室21を画成するとともに、図示しないタペット及びタペットスプリングによりプランジャバレル2内を摺動しながら往復動するようになっている。
プランジャ3が往復動することにより、凹部側領域32が給排ポート11と重なる場合には給排ポート11は開状態とされ、凸部側領域33が給排ポート11と重なる場合には給排ポート11は閉状態とされ、給排ポート11が開閉されることにより給排燃料室4からプランジャバレル2内への燃料供給と、プランジャバレル2から給排燃料室4への燃料の排出が行われるようになっている。
また、プランジャ3が往復動して、プランジャ室21の上部に配置されたバルブ(不図示)23が燃料の圧力で開いた場合には、吐出口24を通じてディーゼルエンジン(不図示)に燃料が吐出されるようになっている。
また、プランジャ3の凹部側領域32には、プランジャ3の周方向に延在するリブ35がプランジャ3の軸線方向に複数形成されていて、プランジャ3がプランジャ室21側に移動して給排ポート11を開状態として給排ポート11から燃料を排出する際に、給排ポート11に排出される燃料に圧力損失が発生するようになっている。
その結果、給排ポート11での噴流や静圧低下が抑制されて、給排ポート11前後の差圧が大きい場合であってもキャビテーションの発生を抑制することができるようになっている。また、給排ポート11以外のグラダン上流側にて圧力損失を発生させることにより、ポート開度に対する感度が低下して、微調整可能とされている。
デフレクタ40は、図3に示すように、外周の先端側がテーパ状に縮径されるとともに先端部が膨出した曲面を有する筒状体とされ、ポンプケース5に固定された固定部材52を介して給排燃料室4に配置され、先端部が給排ポート11の内部に挿入されている。また、デフレクタ40は、先端がプランジャ3の外周面との間に隙間が形成されるとともに、筒状体内方に燃料が流通する流路が形成されるとともに給排ポート11との間に燃料の流路が形成されるようになっている。
また、デフレクタ40の先端部には渦受部41が形成されていて、テーパ状に縮径されるとともに先端部が膨出する曲面を有していて、プランジャ3が給排ポート11を開いて、給排ポート11から高圧の燃料が噴射された場合に、キャビテーション渦が渦受部41の曲面に衝突するようになっている。
第1の実施形態に係る燃料噴射ポンプ1によれば、渦受部41がデフレクタ40の先端部に形成された漸次縮径され先端が膨出する曲面に配置されているので、図4に示すように、噴流衝突時のキャビテーション渦Cが、デフレクタ40の壁面と沿って広がるとともに、給排ポート11壁部からの距離が遠くなるので、給排ポート11で発生するキャビテーションエロージョンの発生が効率的に抑制される。図4(A)は筒状体の孔側から見た斜視図を、図4(B)は筒状体の側面側から見た斜視図を示している。なお、図4において示したキャビテーションCは、色が濃い部分が圧力低下が大きい領域を示している。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、デフレクタ40は、形状の一例を示すものであり、発明の趣旨の範囲内において、デフレクタの構成を任意に設定することができる。
また、上記実施の形態においては、給排ポート11に流通する燃料に圧損を生じさせる圧損発生手段として、プランジャ3のリード31を介して凹部側領域32に、プランジャ3の複数のリブ35を形成する場合について説明したが、リブが延在する方向をプランジャの周方向と交差する方向としてもよいし、これらリブ35に切込みを形成し、又は複数のピンにより圧損発生手段を構成してもよい。また、プランジャ3に圧損発生手段を設けない構成としてもよい。
本発明によれば、キャビテーションをデフレクタに衝突させることにより、給排ポート等におけるキャビテーションエロージョンの発生を抑制することができるので、産業上利用可能である。
α グラダン角
2 プランジャバレル
3 プランジャ
4 給排燃料室
11 給排ポート
21 プランジャ室
31 リード
32 凹部側領域
33 凸部側領域
34 傾斜部
35 リブ(凸形状部)
40 デフレクタ
41 渦受部

Claims (3)

  1. 給排ポートが貫通して形成された筒状のプランジャバレルと、
    前記プランジャバレル内に配置され前記プランジャバレルとともにプランジャ室を画成するプランジャと、
    前記プランジャバレルとの間で給排される燃料を貯留する給排燃料室と、を備え、
    前記プランジャの往復動により前記プランジャ周面に形成されたリードにより前記給排ポートを開閉することにより、前記給排燃料室から前記プランジャバレルへの燃料供給と、前記プランジャバレルから前記給排燃料室への燃料排出を行なうとともに、前記プランジャ室から燃料を吐出する燃料噴射ポンプであって、
    前記プランジャには、前記リードより前記プランジャ室側にグラダンが形成され、前記グラダンには、前記プランジャの中心軸を含む断面においてグラダン角70°以上90°以下の傾斜部が形成され、
    前記給排ポートには、前記給排ポートから排出された燃料に生じるキャビテーション渦と衝突する渦受部が形成された筒状のデフレクタが配置され
    前記プランジャは、前記リードを介して前記プランジャ室の反対側に形成された凹部側領域に、前記給排ポートに流通する燃料に圧損を生じさせる圧損発生手段を備える
    ことを特徴とする燃料噴射ポンプ。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射ポンプであって、
    前記渦受部は、
    前記デフレクタ先端部に形成された前記プランジャ側が漸次縮径され膨出する曲面に配置されていることを特徴とする燃料噴射ポンプ。
  3. 請求項1又は2に記載の燃料噴射ポンプであって、
    前記圧損発生手段は、前記凹部側領域に形成された凸形状部を有していることを特徴とする燃料噴射ポンプ。
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