〔第1参考例〕
(本参考例の画像形成装置の概要)
図1は第1参考例の画像形成装置の概略図である。
図1に示すように、本参考例の画像形成装置Aはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の感光体ドラム28(28Y、28M、28C、28K)を並置して設けた、いわゆるタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。感光体ドラム28(像担持体)や、各感光体ドラム28に対応するプロセス手段の構成は、画像形成色(Y、M、C、K)に関わらず同様である。このため、以下の説明においては、画像形成色(Y、M、C、K)表示を適宜省略して説明する。
画像形成装置Aは、まず、各色のステーション(画像形成部)において各色のトナー像を作像し、各感光体ドラム28に担持された静電潜像を可視像化する。そして、一次転写ローラ23(23Y、23M、23C、23K)にて中間転写ベルト24上で4色のトナー像を重ね合わせ、その後、二次転写ローラ23zによって転写材27に一括して二次転写する。
その後、4色分のトナー像が転写された転写材27は、定着器25による加熱および加圧を受ける。すると、トナー像は転写材27に定着し、永久画像となる。転写材27に転写されなかった残トナーは、感光体ドラムクリーナー26(26Y、26M、26C、26K)によって除去される。また、クリーニングの前には、除電部材29(29Y、29M、29C、29K)によって、感光体ドラム28の電荷が除電される。
図2及び図3によって、各ステーションの構成を詳しく説明する。図2は第1参考例の1色分のステーションを説明する図である。図3は第1参考例の1色分相当のブロック図である。
以下の説明で符号の数字を単に示したものは、各ステーションに共通な部分である。各ステーションには帯電バイアス、現像バイアス、一次転写バイアスを印加する手段がある。即ち、帯電バイアス電源41(41Y、41M、41C、41K)、現像バイアス電源42(42Y、42M、42C、42K)、一次転写バイアス電源43(43Y、43M、43C、43K)が備えられる。プリンタ制御部300(制御部)は内蔵するCPU301などによって、先述した画像形成装置Aの各部分やバイアス電源の動作を制御する。
感光体ドラム28は、アルミニウム製のシリンダの表面に、下引き層と、光電荷発生層と、電荷輸送層(厚さ約20μm)との3層を、下から順に塗り重ねた構成である。
感光体ドラム28の表面は、帯電バイアス電源41から帯電ローラ21(帯電部材)に印加された帯電バイアスによって一様に帯電される。この一様に帯電された感光体ドラム28上の電位を白地部電位またはVd(V)と呼ぶ。帯電バイアスは、直流成分Vchg(V)に交流成分を重畳したものであり、詳細については後述するが、Vchg(V)の値はほぼVd(V)になるように調整される。
次に画像データ(画像信号)のレベルに対応する信号に基づいてレーザー22(22Y、22M、22C、22K)の照射位置を制御し、感光体ドラム28上のVd(V)部に照射する。これにより、感光体ドラム28上に静電潜像が形成される。レーザー22による最大露光を行った部分の電位を最大濃度部電位またはVl(V)と呼ぶ。
現像器1について詳しく説明する。本参考例の現像剤は、非磁性トナーと磁性キャリアを混合し現像剤として用いる「2成分現像方式」を採用する。
非磁性トナーはポリエステルを主体とし、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの色に応じた着色剤、および定着助剤であるワックスを混合した樹脂を粉砕分級したものである。トナー樹脂は本参考例で用いたポリエステルの他、スチレンアクリル系のものやそれらを混合したものなどを用いることが出来る。
また本参考例で用いた粉砕分級法のほかに、重合法を用いて作成した球状のトナーを用いることも出来る。磁性キャリアはフェライトからなるコアをシリコン系樹脂によりコートしたものを用いる。コアとしてはマグネタイトなどの磁性粉末をフェノール樹脂などで固めて球状とした磁性樹脂粒子などを用いてもよい。またコート剤としてはスチレンアクリル系、フッ素系、その他様々な材料を使用してもよい。
現像器1の内部には2本並列に設けられたスクリュー対4が回転する。これにより、現像剤を図2に対して垂直な方向に互いに逆方向に搬送することとなり、図2の垂直方向両端部で現像剤を受け渡す。このように、スクリュー対4があることにより、現像剤は、現像器1内で撹拌されつつ循環する。
現像器1の開口部には、感光体ドラム28に対向するように現像スリーブ3が設けられる。現像スリーブ3は、内部に備えたマグネット5の磁力により、2成分現像剤を担持して感光体ドラム28表面に搬送する。
現像スリーブ3には、現像バイアス電源42から所定の直流成分Vdev(V)に交流成分を重畳した現像バイアスが印加される。Vl−Vdevの差分の絶対値をVcontと呼び、現像スリーブ3から見た静電潜像の最大濃度部の電位のことを指す。またVd−Vdevの絶対値をVbackと呼び、これは、白地部のトナーかぶりを保証するために設けた電位差である。
VcontとVbackの和はVdとVlの差分に一致し、この値を潜像コントラストと呼ぶ。最大露光量が決まっていれば、Vdに対してVlは一意に決まる。すなわちVdを調整することによって、潜像コントラストを調整することができ、そこには所定の関係式が存在する。プリンタ制御部300はその所定の関係式を記憶していて、必要とされるVcont/Vbackの値から適切なVdの値、即ち帯電バイアスの直流成分Vchgを決定する。またその値からVbackの値を差し引いたものが、即ち現像バイアスの直流成分Vdevとなる。
各色のトナー像は一次転写ローラ23に一次転写バイアス電源43から印加された一次転写バイアスVtr1によって中間転写ベルト24(転写部材)上に重ねて一次転写される。
図3に示すように、制御部電源100により電源を供給されるプリンタ制御部300は、CPU301、記憶部としての不揮発性メモリ302やROM303、時刻を取得する時刻取得部304を有する。記憶部では、後述の環境測定部から得られた環境情報及び時刻取得部304から得られた環境測定時刻情報を記憶する。プリンタ制御部300は、これらから画像形成条件を決定する。
また、プリンタ制御部300は、環境測定部として現像器温度センサ51及び環境センサ53を有する。
現像器温度センサ51(51Y、51M、51C、51K)から温度情報を、環境センサ53から環状情報を取得する。現像器温度センサ51は、図1に示すように、各色の現像器1にそれぞれ配置され、それぞれの現像器1の温度t(tY、tM、tC、tK)を検知する。
環境センサ53は画像形成装置内に備えられ、周辺の環境から環境温度T(℃)、RH(%)を検知する。環境センサ53は、画像形成装置Aの外壁に近く、かつ装置内の諸熱源からできるだけ離れた位置に配置されるとより好ましい。検知された温度t及びT(℃)、RH(%)はプリンタ制御部300に通知される。
現存する画像形成装置の多くが、プリンタ制御部300のオン/オフを画像形成装置自体が制御する構成である。つまり、画像形成装置の電源オン時で且つプリンタ制御部300も電源オンの状態となって初めてプリンタ制御部300が作動する。以下の説明では、説明を簡単にするため、本参考例では画像形成装置本体の電源オン/オフが即ちプリンタ制御部300のオン/オフであるとして説明する。またここでの説明は1つの画像形成ステーションについてのものであり、実際は4ステーション分の動作をプリンタ制御部300が並列して行う。
〔比較例〕
本参考例の特徴をわかりやすく説明するために、まず本参考例と同様のデバイス構成をそなえた従来の画像形成装置を比較例として説明する。図16は比較例のプリント動作の概略を説明するフローチャートである。
プリンタ制御部300は、ステップS101でプリント待機の状態である。電源オン時はこのステップS101からフローを開始し、逆に電源オフは必ずステップS101に戻った場合に行われるものとする。
プリンタ制御部300は、プリント指示の命令を受けると、画像形成装置本体内の環境センサ53から現在の周辺環境温度TMPnの値、相対湿度RHnの値を取得する。また、現像器温度センサ51からは現像器温度tmpnを取得する。プリンタ制御部300は、これらの値から現像器周辺の湿度rhn(相対湿度)を求める(ステップS102、詳細は後述)。
続いてプリンタ制御部300は、内蔵の不揮発性RAMである不揮発性メモリ302から、以前現像剤の温湿度として測定、算出された温度tmpm、湿度rhmと、それを求めた時刻tmとを読み出す。そして、現在の時刻tnと記憶されていた時刻tmとに基づいて湿度rhmと湿度rhnの間を補完する。そして、「現在の現像剤の平均的な」湿度rhrを算出する(ステップS103、詳細は後述)。このステップS103の過程が、「環境履歴制御」である。
プリンタ制御部300はこの湿度rhrに基づいて、後述するような「放電電流制御」(ステップS104)、「転写電圧設定制御」(ステップS105)を行う。その後、求められた画像形成条件(帯電、露光、現像、転写)を設定し(ステップS106)、その後プリント動作を行う(ステップS107)。プリンタ制御部300はプリント動作の終了(ステップS108)とともに、ここで用いた湿度rhrの値を湿度rhm、それが算出された時刻をtmとして不揮発性メモリ302に記憶する(ステップS109)。
次に、ステップS102の詳細な動作を説明する。図17は比較例の湿度算出を説明するフローチャートである。
図17に示すように、まず、プリンタ制御部300は、画像形成装置本体内の環境センサ53から現在の周辺環境温度TMPnの値、相対湿度RHnの値、現像器温度センサ51から現像器温度tmpnを取得する(ステップS201)。
一般に、温度及び相対湿度から絶対水分量を求めるには、まず空気の温度に基づいた飽和水蒸気圧を求める必要がある。本発明の画像形成装置はほぼ1気圧、温度は0℃〜60℃程度の環境で使用されるため、プリンタ制御部300はTetensの近似式を用いてその温度における飽和水蒸気圧を求める(ステップS202)。
E(τ)=611×10^(7.5×τ/(τ+237.3)) …(1)
(E(τ):飽和水蒸気圧(Pa)、τ:摂氏温度(℃))
蒸気圧から絶対湿度を求める方法は2通りあって、重量絶対湿度(g/kgDryAir)を用いる方法と、容積絶対湿度(g/m3)を用いる方法がある。ここでは容積絶対湿度による算出方法について説明する。
空気中の水蒸気は分圧が小さいため、理想気体の状態方程式に従うものとする。即ち、
PV=nRT …(2)
ただし、P:分圧(Pa)、V:体積(m3)、n:モル数(mol)、
R:気体定数(Pa・m3/K・mol)、T:温度(K)
を用いることができる。
本参考例で湿度計算に用いる容積絶対湿度の飽和値をABS(σ)(g/m3)とし、その時の水の重量をM(g)とすると、
ABS(σ)=M/V、モル数n=M/(水の分子量)、さらにP=E(τ)であるから、
ABS(σ)=水の分子量×E(τ)/R×(τ+273.15) …(3)
さらに、水の分子量=18.0154(1/mol)、気体定数R=8.31447(Pa・m3/K・mol)であるから、周辺環境温度TMPn時の絶対湿度飽和値は、
ABS(σ)(g/m3)
=2.1668×E(TMPn)/(TMPn+273.15) …(4)
となる。
さらにこの絶対湿度飽和値ABS(σn)に相対湿度RHn(%RH)を乗じることで、現在の空気の水分量ABSn(g/m3)が求められ、
ABSn=ABS(σ)×RHn …(5)
となるので、プリンタ制御部300は式(2)〜式(5)に従いABSnを算出する(ステップS203)。
次にプリンタ制御部300は、式(1)に現像器温度センサ51の温度測定値である現像器温度tmpnを代入し、現像器温度tmpnでの飽和水蒸気圧を、ABS(σ(tmpn))を用いて求め(ステップS204)、
rhn=ABSn/ABS(σ(tmpn)) …(6)
とすることにより、現在の現像器1周辺の湿度rhn(相対湿度)を求める(ステップS205)。
次に、ステップS103の詳細を説明する。図18は比較例の湿度履歴制御を説明するフローチャートである。
図18に示すように、まずプリンタ制御部300は、不揮発性メモリ302内に格納された、前回の画像形成条件設定に用いられた湿度rhmと、湿度rhmが算出された際の時刻tmを読み出す(ステップS301)。次にステップS102の算出結果の湿度rhnと、その算出が行われた時刻tnを読み出す(ステップS302)。
ここで、「現像器周囲の」環境が変化したときの「現像剤」の湿度について考察する。例えば、現像器1の中で周囲の空気にさらされている部分は周囲の環境に追従しやすいが、容器の底などの空気から遠い部分では周囲の環境に追従しにくい。この現象を現像剤全体で考えると、現在の「現像剤」の湿度rhrは、現在算出された現像器1周辺の湿度rhnと、ステップS102で算出された「現像剤の」湿度rhmとの値の間に位置することが予想される。
上記の考察、およびその考察を元に行った本出願人らの検討結果によれば、現在(時刻tn)の現像剤の湿度rhrは、
rhr=(rhm−rhn)×exp(−(tn−tm)/βd)+rhn …(7)
によって近似的に求めることができる。
ここでβdは時間のディメンジョン(次元)を持つ時定数であり、現像器1の構成や現像剤物性、現像剤量などによって決定、ないしは実験的に求められるものであり、現像剤が周囲の環境になじむ速度を表わす。本参考例においてはβd=240(min)である。
プリンタ制御部300は式(7)に基づいて、湿度rhm、湿度rhn、及び時刻tm、時刻tnから、現像剤の現在の湿度rhrを求める(ステップS303)。指数関数を用いた補完を行うことで、例えば、環境情報取得の間隔が長時間になっても、精度よく画像形成条件を設定できる。
尚、前述のように、この現像剤の現在の湿度rhrとそれを算出した時刻tnは、それぞれ湿度rhm、時刻tmとして不揮発性メモリ302に記憶される(ステップS304)。
しかし「発明が解決しようとする課題」の項でも説明したとおり、画像形成装置本体の電源がオフであれば、プリンタ制御部300の電源は入らない。このため、環境センサ53、現像器温度センサ51はその間の周辺環境温度TMPn、相対湿度RHn、現像器温度tmpnを取得することができない。
しかし、以下に説明するような本発明特有の構成によって、この課題を解決することができる。
(本参考例の特徴的な部分)
本参考例では、帯電ローラ21の電気抵抗が「環境温湿度」と関連があり、かつ周囲の環境に対しその湿度が遅れて変化する性質を利用する。つまり、画像形成装置Aの電源がオフになっている期間でも、帯電ローラ21(湿度追従遅延部材)は周囲の環境に対し遅延しながらその湿度値を変化させている。そして、湿度値が変化したとき、帯電ローラ21の部位には、電気的特性が変化する部位がある。このため、次回の電源オン時の帯電ローラ21の電気抵抗が電源オフ期間中の湿度履歴を反映しているものと考えられる。
よって、最終電源オフ時、および電源オン時の帯電ローラ21の電気抵抗特性を測定し比較すれば、電源オフ期間中の環境湿度履歴を推定することができる。すると、現像剤の現在(電源オン時)の湿度算出値を必要に応じて補正することができ、現像剤の湿度を精度よく算出できることになる。
図4は第1参考例のプリント動作の概略を説明するフローチャートである。図4のフローチャートに基づいて本参考例のプリント動作の概要を説明する。
図4に示すように、プリンタ制御部300はステップT101でプリント待機の状態である。プリンタ制御部300がプリント指示の命令を受けると、ステップS102と同様にして湿度rhnを求め、この湿度rhnの値から、一度画像形成条件を設定する(ステップT102)。
ここでの設定はこれに続くステップT103、ステップT104を行うための仮の条件(画像形成仮条件)であり、ここでの設定値は後述するステップT106で補正される。本参考例では、比較例のステップS103で示した「環境履歴制御」に相当する動作を行う前に、ステップT103として「放電電流制御」、ステップT104として「転写電圧設定制御」を行う。
その後、本参考例の特徴であるステップT105の「環境履歴補正制御」を行い、上述の一部設定値である画像形成仮条件を補正した後、画像形成条件を設定する(ステップT106)。ステップT107〜T109は比較例のステップS107〜S109と同様である。
次にステップT103の「放電電流制御」について詳しく説明する。
本参考例では帯電ローラ21として、例えばカーボン分散により導電性とした発泡EPDMゴムローラを芯金に被覆させたローラを用いる。帯電ローラ21は帯電バイアス電源41から帯電バイアスを印加される。帯電バイアス電源41はその出力電圧値(直流分および交流分)を制御可能な低電圧電源であり、印加されたバイアスによる電流値(直流分および交流分)を測定することができる。
このような帯電ローラ21を感光体ドラム28に接触、付勢し、接触部分の両側にできる感光体ドラム28との間の微小ギャップにて生じる放電現象を利用して感光体ドラム28表面を一様に帯電する。
帯電ローラ21の芯金には、帯電バイアス電源41より直流成分Vchgにピークトゥピーク電圧Vac、周波数2.3kHzの正弦波を重畳した帯電バイアスが印加される。Vacの大きさは、先述した「接触部分の両側にできる感光体ドラム28との間の微小ギャップにて生じる放電現象」が発生し始める電圧として求めることができる。
さらに、図5のフローチャートおよび図6のグラフにより、「放電電流制御」によってVacを決定する方法を説明する。これは、比較例における図16のステップS104、本参考例における図4のステップT103に相当する。図5は第1参考例の放電電流制御を詳しく説明するフローチャートである。図6は第1参考例の放電電流制御を詳しく説明するグラフである。
まず、プリンタ制御部300は、現像スリーブ3は駆動せず、Vchg=Vdev=Vtr1=0(V)とする(ステップT301)。これは、放電電流制御中に感光体ドラム28への無用なトナー、キャリアの付着、および一次転写ローラ23による感光体ドラムの無用な帯電を避けるためである。
次に、感光体ドラム28を回転させ(ステップT302)、現像器温度tmpn、現像剤の湿度rhn(相対湿度)に応じた放電電流目標値IctgtをROM303から読み出す(ステップT303)。
放電電流目標値Ictgtは、放電現象を発生させることで感光体ドラム28上を均一に帯電するのに十分な値で、且つ過剰放電により放電性物質の発生や、感光体ドラムクリーナー26による感光体ドラム28の磨耗を最小限に抑える値に設定する。仮にこの場合はIctgt=50μAとしておく。尚、放電性物質とは、例えば、オゾン、窒素酸化物などである。
次に、図6の「未放電領域」とあるエリア内で、Vacの値を3段階で変更しながら帯電ローラ21に印加する(ステップT304)。具体的には、図6においては、566V、766V、966Vである。
このとき、先述の微小ギャップでは放電は発生しておらず、帯電ローラ21の芯金と感光体ドラム28のシリンダとの間に存在する機能層のAC抵抗に応じたAC電流Iacを、帯電バイアス電源41によって検出する(ステップT305)ことができる。それぞれの検出値は954μA、1273μA、1599μAで、プリンタ制御部300の不揮発性RAMに記憶される(ステップT306)。
次に、図6の「放電領域」とあるエリアで、Vacの値を3段階に変更しながら帯電ローラ21に印加する(ステップT307)。具体的には、図8においては、1489V、1567V、1606Vである。このとき先述の微小ギャップでの放電が発生していて、帯電バイアス電源41はステップS305で検出した非放電電流分に加え、放電に伴い発生した放電電流分を加えた値を検出する(ステップT308)。それぞれの検出値は2459μA、2612μA、2698μAで、その値はプリンタ制御部300の不揮発性RAMに記憶される(ステップT309)。
以上で「未放電領域」について3点、「放電領域」について3点、VacとIacの相関を示すデータが得られた。次にプリンタ制御部300は、「未放電領域」「放電領域」について最小二乗法により近似直線を求める(ステップT310)。
未放電領域:Iac=1.6125×Vac+40.158 …(8)
放電領域:Iac=2.0311×Vac−566.720 …(9)
式(11)、式(12)の右辺の傾き、切片はプリンタ制御部300によって不揮発性メモリ302に記憶される(ステップT311)。そしてこの2本の近似直線が交わる点が、微小ギャップでの放電が開始される「放電開始点」であり、Vac=1455Vの点である。また、放電開始点の右上の領域では、「放電領域」の近似直線と「未放電領域」の近似直線の差分
Iac=0.4186×Vac−606.878 …(10)
が、微小ギャップで発生する「放電分の電流値」を示す。ここで放電電流目標値Ictgtが50μAであれば、Vacの設定はプリンタ制御部300により1574Vと算出される(ステップT312)。
図6はAC印加電圧とそれによって発生するAC電流のグラフであるから、これらの近似式の傾きの逆数は帯電ローラ21の電気抵抗であるAC抵抗(以下、抵抗値ZC(MΩ)と表記)を意味する。特に式(11)の傾きの逆数には空気中への放電という付加的な現象が生じていないから、この式(11)の傾きの逆数:0.620(V/μA)をもって帯電ローラ21の抵抗値ZCとする(ステップT313)のが好ましい。加えていえば、この抵抗値ZCには感光体ドラム28の樹脂層成分と帯電ローラ21の弾性層分が含まれるが、膜圧と誘電率を考慮すると感光体ドラム28分は無視してよい。
この帯電ローラ21の抵抗値ZCは、その湿度以外に、温度および帯電バイアス印加総時間で変化する特性をもっている。本参考例では、電源オフ直前の抵抗値ZCと電源オン直後の抵抗値ZCの、帯電バイアス印加総時間的に近い値を比較することによって、帯電バイアス印加総時間による補正を不必要にしている。なぜなら電源オフ直前から電源オン直後の間はほとんど帯電バイアス印加総時間は変化しないからである。
さらに、抵抗値ZCは帯電バイアス印加総時間にして200時間ほどかけて抵抗値として10倍程度変化するようなゆっくりした変化である。このため、最後の放電電流制御から電源オフまでの時間、電源オンしてから最初の放電電流制御までの時間を考慮したとしても、ほとんど誤差分にすぎない。つまり、この間の帯電バイアス印加総時間のわずかな増加による抵抗値ZCの変化は無視してよい。
これらの理由から、電源オフ直前直後の抵抗値ZCを、温度変化分を補正した上で比較すれば、抵抗値ZCが電源オフ直前から電源オン直後の間の環境の変化が推定できる。放電電流制御によって求められた最新の抵抗値ZCは、不揮発性メモリ302に抵抗値ZCr(例えば0.620(V/μA))として記憶される(ステップT314)。
次に本参考例の特徴部分であるステップT105の「環境履歴補正制御」の詳細を説明する。
まず、周囲の湿度変化に対する抵抗値ZCの挙動を説明する。図7は第1参考例の帯電ローラの湿度推移を示したグラフである。具体的には、ある帯電ローラ21が湿度50%の環境から5%の環境へと移動した直後から、抵抗値ZCを測定したグラフである。
このようなプロットからZC値の変化は、時間に対して指数関数を用いて以下のように近似することができる。
ZCr=(ZCm−ZCi)×exp(−(tn−tm)/βc)+ZCi …(11)
ただしZCmは時刻tmにおけるZC値、ZCiはZC値の収束値である。図7から、その時定数βcは1700minと求められる。また、この式の抵抗値ZCi(収束値)は各環境湿度に対して求められ、帯電ローラ21が周囲の環境になじみきった(1回あたり3日以上程度の放置時間が必要)状態を作り測定することで求められる。ある湿度rhmと仮想湿度rhiの湿度差に対して表現すると、以下のように近似式を立てることができる。
ZCi=ZCm×(1−ε×(rhi−rhm)) …(12)
図7のように、本参考例においては初期(湿度50%時)0.62MΩであったZC値がZCn=0.68MΩへと収束していく様子が見られた。これにより、式(12)での係数γ=0.00215(1/%RH)と求められる。
次に仮想湿度rhiという仮想の湿度収束値について説明する。図8は第1参考例の課題である環境変動を表わすグラフである。図8では、時刻(横軸)に対する画像形成装置Aの周辺の雰囲気湿度(縦軸)を示す。
例えば、電源オフ期間中に湿度が湿度例(3)のような挙動をしたとする。この履歴を平均的に表わすには、図8の湿度例(3)で表わした推移の積分(面積S)をとり、経過時間で割って平均するという方法がある。この例では面積Sが40500(RH%・min)となるので、電源オフ時間に相当する時間900minで割れば、その値(=45%RH)がその期間の仮想湿度rhiとなる。
このように「電源オフ中の雰囲気湿度が、時刻tm直後から時刻tn直前まで一定値の仮想湿度rhiであった」と仮定すると、この時求めたい湿度rhrは、
rhr=(rhm−rhi)×exp(−(tn−tm)/βd)+rhi …(13)
という形で求められる。ここで式(11)、式(12)、式(13)からtm<tnの条件下で
rhr=(1/ε)×((1−D)/(1−C))×(1−ZCr/Zcm)+rhm …(14)
ただしD≡exp(−(tn−tm)/βd)、C≡exp(−(tn−tm)/βc)と表すことができる。
時刻tn、時刻tm、Zcmはプリンタ制御部300が記憶、ないしは取得した値であり、ZCrもプリンタ制御部がステップT103で求めた値であるから、このようにして湿度rhrを算出することができる。
式(14)の意味するところを考えると、湿度rhrと湿度rhmの差分が、抵抗値ZCm(記憶値)と抵抗値ZCr(実測値)と、さらに時定数D、時定数Cという指数関数の値によって算出される。
図9は第1参考例の時定数D、Cを説明するグラフである。図9では、現像剤、帯電ローラ21の指数部分のみをプロットした。
例えば、横軸500minに着目すれば、本参考例の場合、現像剤に係る時定数Dの値と帯電ローラ21に係る時定数Cの値を用いることで、時刻tnにおける現像剤の湿度rhrを算出することができる。つまり、各部材が時刻tm〜tnの間に「どの程度雰囲気湿度になじんだか」を表わす指標がここで用いた時定数D、Cだったということになる。
例えば、帯電ローラ21の抵抗値ZCの実測値である抵抗値ZCrが、図9の指数値でいうところの0.74に相当した場合、本参考例では、途中の環境履歴を図9を用いて次のように決定する。
即ち、帯電ローラ21の抵抗値ZCの実測値である抵抗値ZCrが0.74に相当した場合、帯電ローラ21の抵抗値ZCとしては指数値(0.74)に相当するだけの時間Δt(500min)が経過したと見なす。そして、現像剤もこの湿度履歴の残った抵抗値ZCから求めた仮の時間Δtを用いる。これにより、これまで不明であった湿度履歴を適用することができ、精度のよい画像形成条件設定ができるようになる。
温度変化分について述べると、本来であれば式(11)〜式(14)において、抵抗値ZCr、抵抗値ZCm、抵抗値ZCnについて温度変化分の補正をするのがより正確である。但し、説明を簡単にするためここでは言及しない。
プリンタ制御部300の動作という観点から、上記動作を説明する。図10は第1参考例の特徴である環境履歴補正制御を説明するフローチャートである。図10では上記ステップT105の詳細を説明する。
まずプリンタ制御部300は、不揮発性メモリ302内に格納された前回の電源オフ時より前の時刻tmでの画像形成条件設定に用いられた旧環境情報を読み出す(ステップT501)。ここで、具体的な旧環境情報は、湿度rhm、帯電ローラ21の抵抗値ZCmである。尚、湿度rhm、抵抗値ZCmを求めた時刻は厳密にいえば異なるが、略同一として時刻tmに行われたものとする。
尚、旧環境情報を測定して記憶される時点は、次の3つの時点で取得した環境情報(第一旧環境情報、第二旧環境情報、第三旧環境情報)のうち、最新のものが好ましい。ここで、第一旧環境情報とは、画像形成部が前回の前記制御部電源のオフ前に行った最後の画像形成動作開始前から画像形成終了後までに取得した環境情報である。第二旧環境情報とは、画像形成部が前回の前記制御部電源のオフ前に行った最後の画像形成条件調整動作終了時の環境情報である。第三旧環境情報とは、前記第一旧環境情報及び前記第二旧環境情報を取得した時刻以降、前記制御部電源がオフされる前まで、前記制御部が所定の時間間隔をもって得た環境情報である。
次にプリンタ制御部300はステップT102の算出結果である湿度rhnと、前回のステップT314で求めた抵抗値ZCrと、その算出が行われた時刻tn(tmと同様、略同一の時刻)を読み出す(ステップT502)。続いてプリンタ制御部300は、式(14)に基づき現在の現像剤の湿度rhrを求める(ステップT503)。
図4に戻り、ステップT105で求めた今回の画像形成時における湿度rhr等の環境情報(新環境情報)に基づいて画像形成条件を再設定し(ステップT106)、プリント動作を行う(ステップT107)。プリンタ制御部300はプリント動作の終了とともに、ここで用いた湿度rhrの値と、それが算出された時刻とを、湿度rhm、時刻tmとして不揮発性メモリ302に記憶する(ステップT108)。
以上説明したとおり、本参考例においては帯電ローラ21のAC抵抗値である抵抗値ZCを実測により、画像形成装置Aの電源オフ期間中の環境推移の影響を示す時定数D、Cを算出して現像剤湿度に対する環境履歴制御に用いる。
ここで、時刻tnにおいて式(7)より求められる湿度rhnが式(14)には使われていない。即ち、湿度rhrと湿度rhnとは数式上お互いを拘束しないが、お互いの値が確からしいかどうかの判別に用いることができる。
また別の特徴として、AC抵抗の実測に用いる値は本来の画像形成においてすでに用いられている動作の中で得られる値であるから、別途それ用の動作を設ける必要がない。このため、生産性の観点で有利である。
またステップT103の放電電流制御、ステップT104の転写電圧設定制御は、毎プリントごとに行う必要がなければ省略することもできる。その場合はステップT105の環境履歴補正制御も使用できなくなるが、本体の電源が入っている間であれば必ずしも必要な制御ではないため、同様に省略することもできる。
〔第2参考例〕
本発明の第2参考例を説明する。
(本参考例の特徴的な部分)
本参考例の画像形成装置Aの概要は第1参考例のものとほぼ同様であるが、基本動作として図4のフローチャートの代わりに図11のフローチャートを用いた点が異なる。概略を述べると、第1参考例ではプリント開始の指示を受けた直後は抵抗値ZCr値を測定していなかった。このため最終プリントから時間がたった場合や、プリント枚数が多かった場合に、抵抗値ZCrが実際の電源オフ時の値と異なる可能性が高くなる。本参考例はこの場合に、抵抗値ZCrを再取得することに特徴をもたせたものである。
図11のフローチャートに基づいて本参考例のプリント動作の概要を説明する。図11は第2参考例のプリント動作を説明するフローチャートである。
プリンタ制御部300は、ステップT121でプリント待機の状態である。待機の時間がある程度続くと、ステップT122でプリント指示があるかどうかを確認する。プリント指示のある場合(Yの場合)、ステップT123へと進む。一方、プリント指示のない場合(Nの場合)はステップT129へ進む。ステップT123〜T127までは、第1参考例のステップT102〜T106とそれぞれ同じである。
ステップT128でプリント動作が終了すると、ステップT129で「抵抗値ZCr再取得フラグ」を確認する。抵抗値ZCr再取得フラグとは、通常は0の値をとるが、抵抗値ZCrを測定取得する必要がある場合に1となる。抵抗値ZCr再取得フラグが1になる場合として、本参考例では次の2つの場合がある。
一つは、最後に抵抗値ZCrを測定取得した時刻tmに対し、所定時間(本参考例では30min)以上経過した場合である。もう一つは、最後に抵抗値ZCrを取得した時点から、所定枚数(本参考例では1000枚)のプリントが行われた場合である。これらのような場合には、抵抗値ZCrが実際の電源オフ時の値と異なる可能性が高くなるため、抵抗値ZCr再取得フラグを1とする。
プリンタ制御部300は、ステップT129で抵抗値ZCr再取得フラグ=1となった場合、ステップT130に進み、ステップT124と同じ放電電流制御を行う。ただしAC放電開始より大きい領域の検知動作は省いてもよい。
ここで新たに求めた抵抗値ZCrを用い、環境履歴補正制御を行い(ステップT131)、新たに算出した抵抗値ZCr、湿度rhr、その時の時刻tnを、抵抗値ZCm、湿度rhm、時刻tmとして記憶する(ステップT132)。
ステップT129で抵抗値ZCrが1でない場合はステップT130、ステップT131を行わず、その時点まで記憶していた抵抗値ZCr、湿度rhr、時刻tnを、抵抗値ZCm、湿度rhm、時刻tmとして記憶する。
ステップT122においてNの場合であっても、ステップT129にて抵抗値ZCr再取得フラグが1となる場合がある。これはプリント待機のまま所定時間が経過したことを示す。この時もステップT130へと進み、その後の処理を順次行ってからプリント待機に戻る。
以上説明したように、本参考例においては、抵抗値ZCrの値が電源オフ時点での値と乖離しないように、必要な動作(放電電流制御、環境履歴補正制御)を行うこととした。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を説明する。
(本実施形態の特徴的な部分)
本実施形態の画像形成装置Aの概要は第1参考例のものとほぼ同様であるが、以下のような特徴を備えている。
第1の特徴は、式(7)における時定数βdとして、現像器の駆動有無によって値をβi/βo(=30min/600min)と切り替えて用いる点(時定数β切替)である。第2の特徴は、第1参考例で用いた帯電ローラ21の抵抗値である抵抗値ZCの代わりに一次転写ローラ23を湿度追従遅延部材として用い、一次転写ローラ23の抵抗値に基づいて、環境情報を決定する点である。
まず時定数βd切替について説明する。図3のブロック図に示すように、現像器1の駆動はプリンタ制御部300によって現像駆動モーター54を制御することで行われる。プリンタ制御部300は、この現像駆動モーター54に駆動指令を出力している間に時定数βdの値を読み込む場合にはβi=30(min)、現像指令を出力していない間ではβo=360(min)という値を読む。
現像剤が周囲の環境になじむ速度は現像器1の駆動状態によって異なる。このため、現像器1の駆動状態にあわせて時定数βdを切り替える。これによって、現像器駆動有無での時定数をそれぞれ最適にすることができ、現像器駆動がない場合の時定数をより精密に設定することができる。
時定数β切替方式を用いた本実施形態の画像形成装置Aの動作について、図12のフローチャートにて説明する。図12は第1実施形態のプリント動作の概略を説明するフローチャートである。
プリンタ制御部300は、ステップT141でプリント待機の状態である。プリンタ制御部300がプリント指示の命令を受けると、ステップS102と同様にして湿度rhnを求め、この湿度rhnから一度画像形成条件を設定するステップT142を行う。
ステップT141での設定はこれに続くステップT143、ステップT144を行うための仮の設定条件(画像形成仮条件)である。プリンタ制御部300は、ステップT145の「環境履歴補正制御」を行った後、改めてステップT146で画像形成条件を再設定する。
本実施形態における特徴部分の一つは、プリンタ制御部300は、画像形成条件を決定する際、決定に用いる時刻区間において、次のように画像形成条件変化量を設定する。即ち、現像器1が駆動されている場合の第一画像形成条件変化量とし、現像器1が駆動されていない場合の第二画像形成条件変化量とすると、「第一画像形成条件変化量>第二画像形成条件変化量」とする。
具体的には、式(7)におけるβとして、現像器の駆動有無によって値をβi/βo(=30min/600min)となるように、時定数βを切り替えて用いる。ステップT145の時点では現像器1が駆動していないので、βd=βoとして式(7)に従い計算すればよい。
本実施形態ではプリント動作を行う場合にのみ現像器1が駆動する。このため、ステップT148でプリント動作が行われるのに先んじて、ステップT147でβ=βoとしてプリント動作直前までの湿度rhrを算出する。
ステップT147での湿度rhrの算出はステップT145から経過したわずかな時間に対し再計算するものである。このため、この再計算によって算出精度が向上するものの、必要性が薄い場合には省略してもよい。
ステップ148でプリントが開始し終了したら、この時点で現像器1の駆動が停止する。そして、現像器1が駆動したここまでの湿度rhrを式(7)にてβd=βiとして算出する(ステップT149)。このステップは現像器1の動作中に次定数βdが非駆動時のβoに対し一桁少ないβiを用いているため、省略すると本実施形態での特有の効果が得られない。
本実施形態における特徴部分のもう一つは、電源オフ時の環境変化履歴を、帯電ローラ21の代わりに一次転写ローラ23の抵抗を測定することによって求める点である。
ステップT144の「転写電圧設定制御」について詳しく説明する。
本実施形態では一次転写ローラ23として、例えばカーボン分散により導電性とした発泡ウレタンを芯金に被覆させたローラを用いる。一次転写ローラ23は一次転写バイアス電源43から転写バイアスを印加される。一次転写バイアス電源43はその出力電圧値(直流分)を制御可能な低電圧電源であり、印加されたバイアスによる電流値(直流分)を測定することができる。
さらに、図を用いて、Vtrを決定する方法を説明する。図13は第1実施形態の転写電圧設定制御を説明するフローチャートである。図14は第1実施形態の転写電圧設定制御を詳しく説明するグラフである。
まずプリンタ制御部300は、時刻tmで算出し、記憶した湿度rhm、抵抗値ZTmを不揮発性メモリ302から読み出す(ステップT401)。
次に現在の時刻tnにて、現像剤の湿度rhnを読み出す。すでに本フローの前段階で回転している感光体ドラム28の表面を帯電ローラ21によって所定の電位Vdに帯電する(ステップT402)。このVdに帯電された領域が中間転写ベルト24とニップを形成する位置に達したときに、一次転写ローラ23により所定の一次転写バイアスを印加する(ステップT403)。ここでは図14のように、+1050V、+1425V、+1941V、+2156Vの4点を取っている。
このとき一次転写バイアス電源43によって一次転写電流が測定される(ステップT404)。ここでの測定値は18.9μA、28.6μA、42.4μA、48.2μAであって、プリンタ制御部300の不揮発性RAMに記憶される(ステップT405)。この4点から最小二乗法によって近似直線を求める(ステップT406)。求めた式は以下のとおりである。
Itr1=0.0265×Vtr1−9.045 …(15)
このとき湿度rhnの環境における目標一次帯電電流Ittgtは47.5μAであるから、プリンタ制御部300は、Vtr=2134Vと算出する(ステップT407)。
続いてプリンタ制御部300は式(15)の傾きの逆数(37.7MΩ)を算出し(ステップT408)、中間転写ベルト24分の抵抗値ZB=11MΩを引いて、一次転写ローラ23の抵抗値ZT(=26.7MΩ)とする(ステップT409)。尚、本実施形態では中間転写ベルト24にカーボン分散PIを用いているので、温湿度もしくは通電時間による抵抗変化は少なく、本実施形態の場合は概ね11MΩとして計算した。
抵抗値ZTの算出については第1実施形態の説明と同様で、一次転写ローラ23の抵抗値ZTrを計時的に求める式は、
ZTr=(ZTm−ZTi)×exp(−(tn−tm)/βt)+ZTi …(16)
続いて抵抗値ZTrが周囲の湿度になじんだ環境変動分の補正値を考えると、
ZTn=ZTm×(1−δ×(rhi−rhm)) …(17)
ここで、βt=1000min、δ=0.004(1/%RH)である。
以下は第1参考例と同様にして計算し、
rhr=(rhm−rhi)×exp(−(tn−tm)/βd)+rhi …(18)
よって、
rhr=(1/ε)×((1−D)/(1−T))×(1−ZCr/Zcm)+rhm …(19)
ただしD≡exp(−(tn−tm)/βd)、T≡exp(−(tn−tm)/βt)
である。
図15は第1実施形態の特徴である環境履歴補正制御を説明するフローチャートである。プリンタ制御部300の動作は図15のフローチャートのようになっているが、第1参考例のステップT105の説明の抵抗値ZCm、抵抗値ZCrが抵抗値ZTm、抵抗値ZTrに、T503の算出式が式(19)になった点が異なるだけである。このため、説明は省略する。
以上説明したとおり、本実施形態においては一次転写ローラ23の抵抗値の実測と推測に基づいて、画像形成装置Aの電源オフ期間中の環境推移をΔtとして算出して現像剤湿度に対する環境履歴制御に用いる。このことによって本発明の課題が解決される。
尚、上記実施形態において「画像形成条件」としては、次のようなものが挙げられる。例えば、帯電バイアス電源41の出力値、現像バイアス電源42の出力値、レーザー22の最大露光量。また、画像データのレベルをレーザー22の駆動時間に対応する信号に変換するためのテーブル(γルックアップテーブル)、一次転写バイアス電源43の出力値などを調整することが考えられる。
〔他の実施形態〕
前述の実施形態においては、湿度追従遅延部材を帯電ローラ21又は一次転写ローラ23としたが、これに限るものではない。例えば、中間転写ベルト24や、感光体ドラム28にトナーを搬送してトナー像を形成するための現像スリーブ3(現像部材)としてもよい。また、トナー像として転写媒体へ転写されなかった残トナーを感光体ドラム28から回収する感光体ドラムクリーナー26(クリーニング部材)を用いてもよい。また、湿度追従遅延部材として除電部材29を用いてもよい。