JP5917195B2 - 超電導回転機の界磁回転子 - Google Patents

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Description

本発明は、超電導回転機の界磁回転子に関する。
特許文献1は、超電導回転機のロータコアを開示する。該超電導回転機のロータコアは、軸方向に貫通する円環状空間を有する非磁性材料の略中空円筒体から構成されている。ロータコアは、該ロータコアの基端側から末端側に向けて流れるヘリウムガスと、該ロータコアの末端側から基端側に向けて流れるヘリウムガスにより冷却される。
特開2011−041403号公報
本発明は、超電導回転機の界磁回転子において、従来よりもさらに容易に精度よく製造でき、超電導コイルに生じる巨大な電磁力を支持可能とする構造を提供することを課題とする。
本発明の第1の超電導回転機の界磁回転子は、回転軸と、複数のコイルボックスと、複数の超電導コイルと、を備え、前記コイルボックスは、前記回転軸の中心軸方向に延び、内部に空間を形成するように構成された壁を備え、前記回転軸の周面に着脱可能に固定され、前記超電導コイルは、それぞれの前記コイルボックスの前記空間に配置され、前記超電導回転機の界磁巻線をなす。
本発明の第2の超電導回転機の界磁回転子は、回転軸と、複数の超電導コイルと、低熱収縮部材と、コイル保持部材とを備え、前記コイル保持部材は、前記コイル保持部材と前記回転軸の周面との間に前記超電導コイルを介在させるとともに前記回転軸の周面に固定されることで前記超電導コイルを前記回転軸の周面に保持し、前記低熱収縮部材は、前記超電導コイルと前記コイル保持部材との間および前記超電導コイルと前記回転軸の周面との間の少なくともいずれか一方に設けられ、平均熱線膨張係数(mean coefficient of linear thermal expansion)が前記コイル保持部材の平均熱線膨張係数より小さく、前記超電導コイルは、前記超電導回転機の界磁巻線をなす。
本発明の超電導回転機の界磁回転子によれば、従来よりもさらに容易に精度よく製造できる構造を提供することができるという効果を奏する。
図1は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成の一例を示す斜視図である。 図2は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す分解図である。 図3は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。 図4は、第1実施形態の第1実施例におけるコイルボックス20を中心軸に平行かつ周面に垂直な平面に沿って切った断面の構造を示す概略模式図である。 図5は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の冷媒経路の概略構成を示す斜視図である。 図6は、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。 図7は、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面分解図である。 図8は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す斜視図である。 図9は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す分解図である。 図10は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において「中心軸」、「周面」、「周方向」、「径方向」は、特段の説明のない限り、回転軸の中心軸、周面、周方向、径方向を、それぞれ指すものとする。また、説明の便宜上、中心軸方向を前後方向とし、動力が入出力される側を前方、電力や冷媒が入出力される側を後方とする。
(第1実施形態)
第1実施形態の第1態様の超電導回転機の界磁回転子は、回転軸と、複数のコイルボックスと、複数の超電導コイルと、を備え、コイルボックスは、回転軸の中心軸方向に延び、内部に空間を形成するように構成された壁を備え、回転軸の周面に着脱可能に固定され、超電導コイルは、それぞれのコイルボックスの空間に配置され、超電導回転機の界磁巻線をなす。
かかる構成では、超電導コイルを格納したコイルボックスを組立て、その後にコイルボックスを回転軸に組み付けることができる。超電導コイルを回転軸に直接取り付ける構成と比較して、容易に精度よく界磁回転子を製造できる。また、コイルボックスにより超電導コイルに生じる巨大な電磁力(フープ力[Hoop Stress]:コイルが軸方向[巻軸方向]に垂直な方向に広がろうとする力)を支持できる。
回転軸は、超電導回転機が電動機である場合には出力軸となる軸であり、超電導回転機が発電機である場合には入力軸となる軸である。
コイルボックスは、1個の部材で構成されていてもよいし、複数の部材で構成されていてもよい。コイルボックスを回転軸の周面に固定する方法は特に限定されない。固定方法としては、例えば、ボルト止め、ネジ止め、溶接等が考えられる。
コイルボックスは、開閉可能に構成されることが好ましい。かかる構成では、超電導コイルが出し入れ可能となり、メンテナンスが容易となる。
コイルボックスの数、および、超電導コイルの数は特に限定されない。
「周面」は、例えば、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
第1実施形態の第2態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1態様の界磁回転子であって、さらに、それぞれのコイルボックスが、内部に超電導コイルを冷却する冷媒を通流するための冷媒流路を備えている。
かかる構成では、コイルボックスに冷媒流路が備えられているため、冷媒流路を回転軸に配置等する構成と比較して、より効果的に超電導コイルを冷却できる。
冷媒の種類は特に限定されない。例えば、液体窒素、液体ヘリウム、低温ヘリウムガス等を冷媒に用いることができる。冷媒流路は、例えば、コイルボックスの内部の空間に別個に設けられていてもよいし、コイルボックスの壁に形成されていてもよいし、コイルボックスの壁に設けられた穴とコイルボックスの内部の空間とで構成されてもよい。
第1実施形態の第3態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第2態様の界磁回転子であって、さらに、それぞれのコイルボックスと、周面との間に、中心軸方向および回転軸の周方向に広がる間隙が形成されている。
かかる構成では、コイルボックスと回転軸とが間隙により断熱されるため、超電導コイルをさらに効果的に冷却できる。
「周方向」とは、軸方向および径方向のいずれに対しても垂直な方向である。周面は、例えば、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
第1実施形態の第4態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第3態様の界磁回転子であって、さらに、保護抵抗を備え、保護抵抗は、間隙の内部に配置されるようにコイルボックスに固定され、それぞれの間隙に対応する超電導コイルに並列に接続されている。
かかる構成では、超電導が破壊された際に保護抵抗により超電導コイルを保護できると共に、間隙を有効に利用して保護抵抗を格納できるため、界磁回転子をより小型化できる。
保護抵抗とは、超電導が破壊された際に超電導コイルを保護するために、超電導コイルと並列に電源回路に接続される抵抗をいう。例えば、一部の超電導コイルに不具合が発生し、超電導状態が失われて温度が上昇した場合(常電導転移:クエンチ)に、それぞれの超電導コイルおよび保護抵抗を含む回路を電源から切り離すことにより超電導コイル中を流れていた電流のエネルギーが、保護抵抗によって熱エネルギー等に急速に変換され、超電導コイルの焼損等の可能性が低減される。
「それぞれの間隙に対応する超電導コイル」とは、ある間隙が特定のコイルボックスと回転軸との間に形成されているとき、当該特定のコイルボックスに格納された超電導コイルを意味する。
第1実施形態の第5態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1ないし4態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、低熱収縮部材を備え、低熱収縮部材は、コイルボックスの内面とコイルボックスに収納される超電導コイルとの間に配置され、熱収縮量がコイルボックスの熱収縮量よりも小さい。
超電導コイルの方がコイルボックスよりも、冷却による熱収縮量が大きいと、熱収縮量に差が生じ、コイルボックスから超電導コイルを冷却する伝熱面の接触面圧が小さくなりうる。そのような場合でも、上記構成では、低熱収縮部材の熱収縮量が小さいために、低熱収縮部材を配置しない場合に比べて、伝熱面の接触面圧(contact interface pressure)を大きくできる。超電導コイルの冷却に必要な冷却面の接触面圧が適切に保たれると、熱伝導が円滑になされる。よって、超電導コイルをより効率よく均一に冷却できる。
第1実施形態の第6態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第5態様の界磁回転子であって、さらに、低熱収縮部材の平均熱線膨張係数は、超電導コイルの平均熱線膨張係数よりも小さい。
かかる構成では、より積極的に伝熱面の接触面圧を強くすることができる。
低熱収縮部材の構成(材料、形状、大きさ等)は、超電導コイルが損傷しない範囲で、できるだけ伝熱面の接触面圧が大きくなるように設定することが望ましい。
平均熱線膨張係数とは、室温からの平均熱線膨張係数を意味する。室温とは、コイルを冷却する前の温度としうる。室温からの平均熱線膨張係数とは、具体的には、コイルを冷却する前の温度から冷却された時の温度までの温度範囲における平均熱線膨張係数としうる。より具体的には、温度の上昇によって物体の長さが膨張する割合を、室温を基準温度として、1℃(=1K)あたりで示した値であり、単位は例えば、1/Kとしうる。低熱収縮部材と超電導コイルとを合わせた部材全体としての熱収縮量が、コイルボックスの熱収縮量に対して、同程度か小さいことが好ましい。
低熱収縮部材が配置される場所は特に限定されない。例えば、回転軸の径方向に超電導コイルと対抗する壁と超電導コイルとの間に配置されていてもよいし、回転軸の周方向に超電導コイルと対向する壁と超電導コイルとの間に配置されていてもよいし、回転軸の中心軸方向に超電導コイルと対向する壁と超電導コイルとの間に配置されていてもよい。
超電導コイルは、通電時、フープ力によってコイルの軸方向(巻軸方向)に垂直な方向(回転軸の中心軸方向、回転軸の周方向)に広がろうとする。このため、コイルの軸方向に垂直な方向には壁との隙間が生じにくい。一方、コイルの軸方向(回転軸の径方向)にはフープ力が働かないため、壁との隙間が生じやすい。隙間が生じると、熱伝導性の低下を招き、超電導コイルの温度が不均一になりやすい。よって、回転軸の径方向に超電導コイルと対向する壁と超電導コイルとの間に低熱収縮部材を配置してもよい。かかる構成では、超電導コイルの温度分布をさらに均一化させることができる。回転軸の径方向に超電導コイルと対向する壁と超電導コイルとの間にのみ低熱収縮部材を配置してもよい。かかる構成では、超電導コイルの温度分布均一化と装置の小型化とを同時に実現できる。
第1実施形態の第7態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1ないし6態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、周面において、コイルボックスのそれぞれに対応するように複数の凹部が形成され、凹部は、対応するコイルボックスに対向するように形成され、中心軸方向に延びる側面を有し、それぞれのコイルボックスにおいて、凸部が形成され、凸部は、中心軸方向に延び、回転軸に向かって突出し、凹部の中心軸方向に延びる側面に当接して嵌まる。
かかる構成では、超電導コイルに生じるトルクを、コイルボックスと回転軸との当接面を介して効率的に回転軸へと伝達できる。さらに、コイルボックスと回転軸の接触部を極小化し、コイルボックスと回転軸の熱伝導性を低くすることで、超電導コイル及びコイルボックスをより効率的に冷却できる。
凸部と凹部との当接は、側面全体で生じる必要は必ずしもなく、中心軸方向に並ぶ線や複数の点において当接が生じてもよい。
第1実施形態の第8態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1ないし7態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、複数のウェッジ部材を備え、回転軸の周方向に隣接する2つのコイルボックスをコイルボックスペアとするとき、ウェッジ部材はそれぞれ、中心軸方向に延び、それぞれのコイルボックスペアにつき、そのコイルボックスペアをなす2つのコイルボックスの間に配置され、その2つのコイルボックスのそれぞれと当接する。
かかる構成では、隣接する2つのコイルボックスにつき、超電導コイルに生じるフープ力のうちトルクに寄与しない成分を、ウェッジ部材を介して相殺させることができる。
第1実施形態の第9態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第2ないし4態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、冷媒流路が、壁のうち回転軸に対向する部位の内部に形成されている。
かかる構成では、冷媒流路をコイルボックスと一体に形成でき、さらに容易に精度よく界磁回転子を製造できる。
なお、第1実施形態において、冷媒流路、間隙、保護抵抗、低熱収縮部材、凹部、凸部、ウェッジ部材は、いずれも必須の構成要素ではなく、適宜に省略可能である。
本実施形態における超電導回転機には、例えば、超電導モータおよび超電導発電機が含まれる。以下の実施例では、界磁回転子の界磁巻線に、回転機の外部から電圧と電流とが継続的に供給されるものとして説明するが、回転機の外部から電圧と電流とが継続的に供給されず、界磁巻線がいわゆる永久電流モードで用いられる構成を採用してもよい。
[第1実施例]
図1は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す斜視図である。図2は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す分解図である。図3は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。図4は、第1実施形態の第1実施例におけるコイルボックス20を中心軸に平行かつ周面に垂直な平面に沿って切った断面の構造を示す概略模式図である。図5は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の冷媒経路の概略構成を示す斜視図である。
第1実施例の超電導回転機の界磁回転子100は、回転軸10と、複数のコイルボックス20と、複数の超電導コイル30と、を備え、コイルボックス20は、回転軸10の中心軸方向に延び、内部に空間を形成するように構成された壁25を備え、回転軸10の周面に着脱可能に固定され、超電導コイル30は、それぞれのコイルボックス20の空間に配置され、超電導回転機の界磁巻線をなす。
それぞれのコイルボックス20は、内部に超電導コイル30を冷却する冷媒を通流するための冷媒流路23を備えている。冷媒流路23は、壁25のうち回転軸10に対向する部位(回転軸10に最も近い側において中心軸方向および周方向に広がる壁)の内部に形成されている。
界磁回転子100は、低熱収縮部材35を備え、低熱収縮部材35は、コイルボックス20の内面とコイルボックス20に収納される超電導コイル30との間に配置され、平均熱線膨張係数が、コイルボックスの平均熱線膨張係数より小さい。低熱収縮部材35の平均熱線膨張係数は、コイルボックスの平均熱線膨張係数および超電導コイルの平均熱線膨張係数のいずれよりも小さくてもよい。
回転軸10の周面において、コイルボックス20のそれぞれに対応するように複数の凹部11が形成され、凹部11は、対応するコイルボックス20に対向するように形成され、回転軸10の中心軸方向に延びる側面12を有し、それぞれのコイルボックス20において、凸部24が形成され、凸部24は、中心軸方向に延び、回転軸10に向かって突出し、凹部11の中心軸方向に延びる側面12に当接して嵌まる。
複数のウェッジ部材40を備え、回転軸の周方向に隣接する2つのコイルボックス20をコイルボックスペアとするとき、ウェッジ部材40はそれぞれ、中心軸方向に延び、それぞれのコイルボックスペアにつき、そのコイルボックスペアをなす2つのコイルボックス20の間に配置され、その2つのコイルボックス20のそれぞれと当接する。
それぞれのコイルボックス20と、周面との間に、中心軸方向および回転軸の周方向に広がる間隙70が形成されている。
以下、第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子100につき、より詳細に説明する。本実施例の界磁回転子100は、6極型である。第1実施形態の界磁回転子は多極型であることが好ましく、6極型に限定されるものではなく、例えば4極型、8極型等であってもよい。
図1、2に示すように、回転軸10は、中心軸方向に貫通する円筒状空間が形成された中空の略六角柱形状を有する。回転軸10は、例えば、非磁性材料であって優れた低温特性を有するSUS316ステンレス鋼で形成される。回転軸10の周面(側面、側周面)には、中心軸方向に延びるように、所定の深さで凹部12が形成されている。凹部12には、コイルボックス20を回転軸10に固定するためのネジ穴が複数形成されている。
図1、2に示すように、コイルボックス20は、箱部21と蓋部22とを備えている。箱部21および蓋部22には、超電導コイル30を格納するための凹部が形成されている。該凹部に2つの低熱収縮部材35に挟まれた超電導コイル30が格納される。本実施例ではコイルボックス20の数および超電導コイル30の数はいずれも6個である。コイルボックス20は、例えば、SUS316ステンレス鋼で形成される。箱部21および蓋部22には、コイルボックス20を回転軸10に固定するためのネジを貫通させるための穴が複数形成されている。箱部21の凹部に超電導コイル30と低熱収縮部材35とを載置し、蓋部22で蓋をすることで、コイルボックス20の内部に超電導コイル30と低熱収縮部材35とが格納される。その後、箱部21および蓋部22に設けられた穴にボルト等が貫通され、このボルト等が回転軸10の凹部12に設けられたネジ穴に螺合することで、コイルボックス20が回転軸10に脱着可能に固定される。
図4に示すように、コイルボックス20は、内部に空間を形成するように構成された壁25を備えている。壁25のうち、回転軸10に対向する部位の内部には、壁25を中心軸方向に直線的に貫通するように、冷媒流路23が形成されている。壁の厚みは、例えば、15mm以上30mm以下としうる。
図2、4に示すように、低熱収縮部材35は、回転軸10の径方向に超電導コイル30と対抗する壁25、すなわち図4における上下の壁25と超電導コイル30との間に配置されている。換言すれば、低熱収縮部材35は、回転軸10の周面に平行な2枚の壁25のそれぞれと、超電導コイル30との間に配置されている。超電導コイル30は、通電時、フープ力によってコイルの軸方向(巻軸方向)に垂直な方向(回転軸10の中心軸方向、回転軸の周方向)に広がろうとする。このため、コイルの軸方向(巻軸方向)に垂直な方向には壁25との隙間が生じにくい。一方、コイルの軸方向(回転軸10の径方向)にはフープ力が働かないため、壁との隙間が生じやすい。隙間が生じると、熱伝導性の低下を招き、超電導コイルの温度が不均一になりやすい。よって、コイルの軸方向(回転軸10の径方向)に超電導コイル30と対向する壁25と超電導コイル30との間に低熱収縮部材35を配置してもよい。かかる構成では、超電導コイル30の温度分布をさらに均一化させることができる。低熱収縮部材35は、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼等を用いて構成することができる。低熱収縮部材35の形状および材質は、運転時に超電導コイル30を冷却した際に、超電導コイル30が十分な接触面圧を受けてコイルボックス20の内部に保持されるように、適宜に設定されうる。
図1、2に示すように、冷媒配管50は、コイルボックス20の前後の端部において、継手等により冷媒流路23と接続されている。液体窒素、液体ヘリウム、低温ヘリウムガス等の冷媒は、冷媒配管50を介して冷媒流路23へと供給される。
図5に示すように、冷媒配管50は、円筒状空間の内部において中心軸から所定の距離だけ離れて中心軸方向に延びる供給中央配管51と、円筒状空間の内部において中心軸と同軸に延びる排出中央配管52と、回転軸10の後端部に設けられた第1供給分岐継手53を起点として供給中央配管51から120度ピッチで3方向(いずれも径方向)に分岐し、それぞれ対応するコイルボックス20にかかる冷媒流路23の入口に接続される第1供給枝配管54と、回転軸10の後端部に設けられた第1排出分岐継手55を起点として排出中央配管52から120度ピッチで3方向(いずれも径方向)に分岐し、それぞれ対応するコイルボックス20にかかる冷媒流路23の出口に接続される第1排出枝配管56と、回転軸10の前端部に設けられた第2供給分岐継手57を起点として供給中央配管51から120度ピッチで3方向(いずれも径方向)に分岐し、それぞれ対応するコイルボックス20にかかる冷媒流路23の入口に接続される第2供給枝配管58と、回転軸10の前端部に設けられた第2排出分岐継手59を起点として排出中央配管52から120度ピッチで3方向(いずれも径方向)に分岐し、それぞれ対応するコイルボックス20にかかる冷媒流路23の出口に接続される第2排出枝配管60と、を備えている。
中心軸方向から見ると、第1供給枝配管54と第2供給枝配管58とは60度ピッチでずれるように中心軸から延びており、結果として、計6本の供給配管が60度ピッチで等間隔に放射状に延びる。また、中心軸方向から見ると、第1排出枝配管56と第2排出枝配管60とは60度ピッチでずれるように中心軸から延びており、結果として計6本の排出配管が60度ピッチで等間隔に放射状に延びる。
冷媒配管50は、例えば、SUS316ステンレス鋼で形成される。
図5に示すように、冷媒流路23は、入口が、コイルボックス20の前端または後端のいずれか一方の壁25において第1供給枝配管54または第2供給枝配管58と接続され、中心軸方向に直進し、他端付近で折り返し、再び中心軸方向に直進し、コイルボックス20の前端または後端のいずれか一方の壁25において第1排出枝配管56または第2排出枝配管60と接続される。すなわち、冷媒流路23は、コイルボックス20の前端側に入口が形成され、コイルボックス20の後端側において折り返して、コイルボックス20の前端側に出口が形成される流路と、コイルボックス20の後端側に入口が形成され、コイルボックス20の前端側において折り返して、コイルボックス20の後端側に出口が形成される流路とが、隣接するコイルボックス20毎に交互に配置される。
冷媒流路23は、例えば、コイルボックス20の長手方向を前後方向として、前端または後端のいずれか一方の壁25からドリル等で反対側の端部にまで延びる直線状の流路を形成し、当該流路の端部に接続されるように、折り返し用の流路を側面からドリル等で形成し、最後に側面付近の余分な流路を溶接等で封止することで形成することができる。
かかる構成において、冷媒は、図5において矢印で示す向きに流れる。すなわち、回転軸10の後方から供給中央配管51に供給された冷媒は、後端部の第1供給分岐継手53を介して3本の第1供給枝配管54へと供給されると共に、前端部の第2供給分岐継手57を介して3本の第2供給枝配管58へと供給される。第1供給枝配管54へと供給された冷媒は、冷媒流路23を経由して第1排出枝配管56へと供給される。第2供給枝配管58へと供給された冷媒は、冷媒流路23を経由して第2排出枝配管60へと供給される。第1排出枝配管56に供給された冷媒は、後端部の第1排出分岐継手55を介して排出中央配管52へと供給される。第2排出枝配管60に供給された冷媒は、前端部の第2排出分岐継手59を介して排出中央配管52へと供給される。排出中央配管52へと供給された冷媒は、回転軸10の後方へと排出される。
以上のような構成によれば、冷媒配管50および冷媒流路23を通流する冷媒により、6個のコイルボックス20およびその内部に格納された超電導コイル30を効果的に冷却することができる。なお、上述した冷媒配管50および冷媒流路23の具体的構成はあくまで一例に過ぎず、冷媒の種類、回転軸10およびコイルボックス20の材料、大きさ等に応じ、適宜に構成を変更できることは言うまでもない。
図3に示すように、間隙70は、凹部11と凸部24との間に形成される。より詳細には、凹部11の底面と、凸部24の上面との間に形成される。間隙70は、例えば、凹部11の底面および凸部24の上面を平面状に構成し、凹部11の深さ(側面12の高さ)を、凸部24の高さ(側面26の高さ)よりも大きくすることにより形成されうる。間隙70の高さ(厚み)は、保護抵抗75を格納し、かつ、回転軸10からコイルボックス20への伝熱を抑制するのに十分な大きさであることが好ましく、具体的には例えば、3mm以上10mm以下とすることが好ましい。ここでいう高さ(厚み)とは、回転軸10の径方向の高さ(厚み)をいう。
回転軸10は、外部の軸受け等から伝熱されるため、冷却されにくい。間隙70が設けられることにより、相対的に高温の回転軸10と相対的に低温のコイルボックス20とが断熱され、コイルボックス20の内部に格納された超電導コイル30をより効率的に冷却できる。
図2に示すように、超電導コイル30は、いわゆるレーストラック(Race Truck)型のコイルである。レーストラック型のコイルでは、特に直線部分において、通電時に生じるフープ力が大きくなり、コイルが機械的に破壊される危険性が高くなる。本実施例では、コイルボックス20の壁25により、フープ力に対抗する抗力が超電導コイル30へと付与されることから、かかる破壊の危険性を飛躍的に低減できる。超電導コイル30は、例えば、ビスマス系超電導線材やイットリウム系超電導線材で構成される。超電導コイル30は、例えば、冷媒流路23を通流する冷媒により、30K程度まで冷却されることにより、超電導状態となる。
超電導コイル30は、例えば、6個の界磁極をなす6個の超電導コイル30が、コイルボックス20の壁25に設けられた穴(図示せず)を通る配線(図示せず)によって全て直列に接続される。超電導コイル30がなす電流経路の両端が回転軸10の内部を経由する配線(図示せず)とブラシ(図示せず)によって回転機の外部へと導かれ、電源(図示せず)へと接続される。配線に通電がされると、6個の超電導コイル30が、周方向に交互にN極とS極とに励磁される。
図2に示すように、回転軸10の6個の周面には、それぞれ対応するコイルボックス20の凸部24が嵌まるように凹部11が形成されている。凹部11は、中心軸に沿って延びかつ径方向に平行な2個の側面12と、中心軸に沿って延びかつ周方向に平行な1個の底面とを有する。それぞれのコイルボックス20には、それぞれ対応する回転軸10の凹部11に嵌まるように凸部24が形成されている。凸部24は、中心軸に沿って延びかつ径方向に平行な2個の側面26と、中心軸に沿って延びかつ周方向に平行な1個の頂面とを有する。凹部11の底面と凸部24の頂面とは、幅が略等しく、側面12と側面26とが面的に当接することにより、凸部24が凹部11に嵌まる。
なお、側面12および側面26は、必ずしも径方向に平行である必要はない。側面12および側面26は、両者が当接することでトルクがコイルボックス20から回転軸10へと伝達されうるように構成されていることが好ましい。よって、側面12および側面26は、径方向に対して0度より大きく90度より小さい所定の角をなす平面に平行であってもよい。側面12および側面26は、平面である必要はなく、曲面であってもよい。側面12および側面26は、全部において当接してもよいし、一部においてのみ当接してもよい。ウェッジ部材40を中心軸に垂直な面で切った断面は、中心軸に向かって幅が狭くなるテーパ状の形状を有する。
図1、2に示すように、ウェッジ部材40は、回転軸10の周方向に隣接する2つのコイルボックス20に挟持されている。すなわち、1個のウェッジ部材40は、互いに隣接する周面の境界の1個に対応する。コイルボックス20は、中心軸に沿って延びかつ径方向に平行な2個の側面を有する。ウェッジ部材40も、中心軸に沿って延びかつ径方向に平行な2個の側面を有する。
ウェッジ部材40には、ウェッジ部材40を回転軸10に固定するためのネジを貫通させるための穴が複数形成されている。コイルボックス20と、ウェッジ部材40とは、それぞれボルト等のネジを用いて、回転軸10に固定される。かかる固定が行われると、コイルボックス20の側面と、ウェッジ部材40の側面とが、面的に当接する。両側面は、全部において当接してもよいし、一部においてのみ当接してもよい。
[第2実施例]
図6は、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。図7は、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面分解図である。本実施例の界磁回転子は、組立後の全体の外観は第1実施例につき図1で示したものと同様であるので、図示を省略する。
第1実施例の超電導回転機の界磁回転子110は、第1実施例の界磁回転子100において、さらに、保護抵抗75を備え、保護抵抗75は、間隙70の内部に配置されるようにコイルボックス20に固定され、それぞれの間隙70に対応する超電導コイル30に並列に接続されている。
以下、第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子110につき、より詳細に説明する。なお、上述した構成以外については、第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
保護抵抗75は、例えば、ステンレス鋼やチタンで構成される。保護抵抗75の抵抗値は例えば、5Ωとすることができる。保護抵抗75は、その全部が間隙70の内部に配置されることが好ましい。
保護抵抗75は、超電導コイル30と回転機外部に設けられた電源(図示せず)とを含んで構成される回路において、超電導コイル30と並列に接続される。保護抵抗75は、個々の界磁極をなす超電導コイル30毎に設けられていることが好ましい。すなわち、1個の界磁極をなす超電導コイル30を1個のコイルと考えた場合には、個々のコイル毎に保護抵抗75が設けられていることが好ましい。本実施例では、1個の界磁極に対応して1個のコイルボックス20と1個の超電導コイル30と1個の保護抵抗75とが設けられる。なお、界磁極の個数とコイルボックス20の個数と超電導コイル30の個数と保護抵抗75の個数との関係は特に限定されず、互いに等しくてもよいし異なっていてもよいし一部が等しく一部が異なっていてもよい。
超電導コイル30および保護抵抗75を含む回路の電源からの切り離しは、例えば、電源近傍に設けられた保護スイッチ等により実現される。該保護スイッチは、例えば、超電導コイル30に接続される配線と保護抵抗75に接続される配線とが分岐する点と電源との間の配線上に設けられたスイッチで構成されうる。あるいは、該保護スイッチは、例えば、超電導コイル30に接続される配線と保護抵抗75に接続される配線とが合流する点と電源との間の配線上に設けられたスイッチで構成されうる。
超電導状態が実現されている時は、スイッチが閉路している。クエンチ検出器(図示せず)により超電導コイル30のクエンチ(常電導転移)が検出されると、スイッチが開路するように制御される。スイッチが開路すると、超電導コイル30と保護抵抗75とで回路が形成され、超電導コイル30中を流れていた電流のエネルギーが、保護抵抗75によって熱エネルギー等に急速に変換され、超電導コイル30の焼損等の可能性が低減される。
クエンチ検出器、保護スイッチおよび保護抵抗等の具体的構成は、周知の構成を採用しうるので、詳細な説明を省略する。
(第2実施形態)
第2実施形態の第1態様の超電導回転機の界磁回転子は、回転軸と、複数の超電導コイルと、低熱収縮部材と、コイル保持部材とを備え、コイル保持部材は、コイル保持部材と回転軸の周面との間に超電導コイルを介在させるとともに回転軸の周面に固定されることで超電導コイルを回転軸の周面に保持し、低熱収縮部材は、超電導コイルとコイル保持部材との間および超電導コイルと回転軸の周面との間の少なくともいずれか一方に設けられ、平均熱線膨張係数がコイル保持部材の平均熱線膨張係数より小さく、超電導コイルは、超電導回転機の界磁巻線をなす。
かかる構成では、冷却によって超電導コイルが収縮しても低熱収縮部材によって超電導コイルとコイル保持部材との隙間が所望の圧力をもって充填され、熱伝導が円滑になされることで、超電導コイルをより効率よく均一に冷却できる。
回転軸は、超電導回転機が電動機である場合には出力軸となる軸であり、超電導回転機が発電機である場合には入力軸となる軸である。
コイル保持部材は、例えば、回転軸との間で超電導コイルを挟持する、板状の部材であってもよい。あるいは、コイル保持部材は第1実施形態で説明したようなコイルボックスであってもよい。
「周面」は、例えば、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
「コイル保持部材と回転軸の周面との間に超電導コイルを介在させる」とは、コイル保持部材の少なくとも一部と回転軸の周面との間に超電導コイルを介在させる態様を含む。具体的には例えば、コイル保持部材が超電導コイルを内部に格納するコイルボックスである場合、コイルボックスの壁のうち、回転軸の周面と反対側(径方向の外側)の壁(コイル保持部材の一部)と回転軸の周面との間に、超電導コイルが配置されることになる。かかる態様においても、コイル保持部材と回転軸の周面との間に超電導コイルを介在させているということができる。
平均熱線膨張係数とは、室温からの平均熱線膨張係数を意味する。室温とは、コイルを冷却する前の温度としうる。室温からの平均熱線膨張係数とは、具体的には、コイルを冷却する前の温度から冷却された時の温度までの温度範囲における平均熱線膨張係数としうる。より具体的には例えば、温度の上昇によって物体の長さが膨張する割合を、室温を基準温度として、1℃(=1K)あたりで示した値であり、単位は例えば、1/Kとしうる。低熱収縮部材と超電導コイルとを合わせた部材全体としての熱線膨張量が、コイル保持部材の熱線膨張量に対して、同程度か小さいことが好ましい。
第2実施形態の第2態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1態様の界磁回転子であって、さらに、低熱収縮部材の平均熱線膨張係数が、超電導コイルの平均熱線膨張係数よりも小さい。
かかる構成では、より積極的に伝熱面の接触面圧を強くすることができる。
第2実施形態の第3態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1態様または第2態様の界磁回転子であって、さらに、コイル保持部材はコイルボックスであり、コイルボックスは、回転軸の中心軸方向に延び、内部に空間を形成するように構成された壁を備え、回転軸の周面に着脱可能に固定され、超電導コイルは、それぞれのコイルボックスの空間に配置される。
かかる構成では、超電導コイルを格納したコイルボックスを組立て、その後にコイルボックスを回転軸に組み付けることができる。超電導コイルを回転軸に直接取り付ける構成と比較して、容易に精度よく界磁回転子を製造できる。
コイルボックスについては第1実施形態と同様としうるので、詳細な説明を省略する。
第1実施形態の第4態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第3態様の界磁回転子であって、さらに、それぞれのコイルボックスが、内部に超電導コイルを冷却する冷媒を通流するための冷媒流路を備えている。
かかる構成では、コイルボックスに冷媒流路が備えられているため、冷媒流路を回転軸に配置等する構成と比較して、より効果的に超電導コイルを冷却できる。
冷媒については第1実施形態と同様としうるので、詳細な説明を省略する。
第2実施形態の第5態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第4態様の界磁回転子であって、さらに、それぞれのコイルボックスと、周面との間に、中心軸方向および回転軸の周方向に広がる間隙が形成されている。
かかる構成では、コイルボックスと回転軸とが間隙により断熱されるため、超電導コイルをさらに効果的に冷却できる。
「周方向」とは、軸方向および径方向のいずれに対しても垂直な方向である。周面は、例えば、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
第2実施形態の第6態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第5態様の界磁回転子であって、さらに、保護抵抗を備え、保護抵抗は、間隙の内部に配置されるようにコイルボックスに固定され、それぞれの間隙に対応する超電導コイルに並列に接続されている。
かかる構成では、超電導が破壊された際に保護抵抗により超電導コイルを保護できると共に、間隙を有効に利用して保護抵抗を格納できるため、界磁回転子をより小型化できる。
保護抵抗については第1実施形態と同様としうるので、詳細な説明を省略する。
第2実施形態の第7態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1ないし6態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、周面において、コイルボックスのそれぞれに対応するように複数の凹部が形成され、凹部は、対応するコイルボックスに対向するように形成され、中心軸方向に延びる側面を有し、それぞれのコイルボックスにおいて、凸部が形成され、凸部は、中心軸方向に延び、回転軸に向かって突出し、凹部の中心軸方向に延びる側面に当接して嵌まる。
かかる構成では、超電導コイルに生じるトルクを、コイルボックスと回転軸との当接面を介して効率的に回転軸へと伝達できる。さらに、コイルボックスと回転軸の接触部を極小化し、コイルボックスと回転軸の熱伝導性を低くすることで、超電導コイル及びコイルボックスをより効率的に冷却できる。
第2実施形態の第8態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第1ないし7態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、複数のウェッジ部材を備え、回転軸の周方向に隣接する2つのコイルボックスをコイルボックスペアとするとき、ウェッジ部材はそれぞれ、中心軸方向に延び、それぞれのコイルボックスペアにつき、そのコイルボックスペアをなす2つのコイルボックスの間に配置され、その2つのコイルボックスのそれぞれと当接する。
かかる構成では、隣接する2つのコイルボックスにつき、超電導コイルに生じるフープ力のうちトルクに寄与しない成分を、ウェッジ部材を介して相殺させることができる。
第2実施形態の第9態様の超電導回転機の界磁回転子は、上記第2ないし4態様のいずれかの界磁回転子であって、さらに、冷媒流路が、壁のうち回転軸に対向する部位の内部に形成されている。
かかる構成では、冷媒流路をコイルボックスと一体に形成でき、さらに容易に精度よく界磁回転子を製造できる。
なお、第2実施形態において、コイルボックス、冷媒流路、間隙、保護抵抗、凹部、凸部、ウェッジ部材は、いずれも必須の構成要素ではなく、適宜に省略可能である。
本実施形態における超電導回転機には、例えば、超電導モータおよび超電導発電機が含まれる。以下の実施例では、界磁回転子の界磁巻線に、回転機の外部から電圧と電流とが継続的に供給されるものとして説明するが、回転機の外部から電圧と電流とが継続的に供給されず、界磁巻線がいわゆる永久電流モードで用いられる構成を採用してもよい。
[第3実施例]
図8は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す斜視図である。図9は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す分解図である。図10は、第2実施形態の第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子の概略構成を示す断面斜視図である。
第3実施例の超電導回転機の界磁回転子120は、回転軸15と、複数の超電導コイル30と、低熱収縮部材35と、コイル保持部材27とを備え、コイル保持部材27は、コイル保持部材27と回転軸15の周面との間に超電導コイル30を介在させるとともに回転軸15の周面に固定されることで超電導コイル30を回転軸15の周面に保持し、低熱収縮部材35は、超電導コイル30とコイル保持部材27との間および超電導コイル30と回転軸15の周面との間の少なくともいずれか一方に設けられ、平均熱線膨張係数がコイル保持部材27の平均熱線膨張係数より小さい。低熱収縮部材35の平均熱線膨張係数は、コイル保持部材27の平均熱線膨張係数および超電導コイル30の平均熱線膨張係数のいずれよりも小さくてもよい。超電導コイル30は、超電導回転機の界磁巻線をなす。
以下、第3実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子120につき、より詳細に説明する。本実施例の界磁回転子120は、6極型である。第2実施形態の界磁回転子は多極型であることが好ましく、6極型に限定されるものではなく、例えば4極型、8極型等であってもよい。
図8、9、10に示すように、回転軸15は、中心軸方向に貫通する円筒状空間が形成された中空の略六角柱形状を有する。回転軸15は、例えば、非磁性材料であって優れた低温特性を有するSUS316ステンレス鋼で形成される。回転軸15の周面(側面、側周面)には、中心軸方向に延びるように、所定の深さで凹部13が形成されている。凹部13は、平面視において超電導コイル30と略同一形状を有する。凹部13には、コイル保持部材27を回転軸15に固定するためのネジ穴が複数形成されている。凹部13に、2つの低熱収縮部材35に挟まれた超電導コイル30の一部が格納される。
図8、9、10に示すように、本実施例におけるコイル保持部材27は、回転軸との間で超電導コイルを挟持する、中心軸方向および周方向に広がる板状の部材からなる。コイル保持部材27には、超電導コイル30を格納するための凹部28が形成されている。凹部28に、2つの低熱収縮部材35に挟まれた超電導コイル30の一部が格納される。本実施例ではコイル保持部材27の数および超電導コイル30の数はいずれも6個である。コイル保持部材27は、例えば、SUS316ステンレス鋼で形成される。コイル保持部材27には、コイル保持部材27を回転軸15に固定するためのネジを貫通させるための穴が複数形成されている。凹部13に超電導コイル30と低熱収縮部材35とを載置し、コイル保持部材27で蓋をすることで、回転軸15とコイル保持部材27との間に形成された空間に超電導コイル30と低熱収縮部材35とが格納される。その後、コイル保持部材27に設けられた穴にボルト等が貫通され、このボルト等が回転軸15の凹部13に設けられたネジ穴に螺合することで、コイル保持部材27が回転軸15に脱着可能に固定される。なお、コイル保持部材27は、溶接等により回転軸15に脱着不能に固定されてもよい。
図8、9、10に示すように、回転軸15の外周部には、それぞれの超電導コイル30に対応するように、一対の冷媒流路14が形成されている。冷媒流路14は、例えば、回転軸15を中心軸方向に貫通するように形成される。冷媒の通流方法については周知の構成を採用しうるので、詳細な説明を省略する。
図9、10に示すように、低熱収縮部材35は、凹部13の底面と超電導コイル30との間、および、コイル保持部材27の下面(回転軸15側の面)と超電導コイル30との間に配置されている。超電導コイル30は、通電時、フープ力によって径を広げようとするため、コイルの径方向には凹部13および凹部28の壁との間で隙間が生じにくい。一方、コイルの軸方向にはフープ力が働かないため、凹部13の底面およびコイル保持部材27の下面との間に隙間が生じやすい。よって、凹部13の底面およびコイル保持部材27の下面と超電導コイル30との間に低熱収縮部材35を配置することが好ましい。低熱収縮部材35は、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼等を用いて構成することができる。低熱収縮部材35の形状および材質は、運転時に超電導コイル30を冷却した際に、超電導コイル30が十分な接触面圧を受けてコイルボックス20の内部に保持されるように、適宜に設定されうる。
超電導コイル30は、例えば、冷媒流路14を通流する冷媒により、30K程度まで冷却されることにより、超電導状態となる。超電導コイル30がなす電流経路の両端が回転軸15の内部を経由する配線(図示せず)とブラシ(図示せず)によって回転機の外部へと導かれ、電源(図示せず)へと接続される。配線に通電がされると、6個の超電導コイル30が、周方向に交互にN極とS極とに励磁される。上記以外の点につき、超電導コイル30は第1実施形態の第1実施例と同様に構成しうるので、詳細な説明を省略する。
第1実施形態の第1実施例および第2実施例は、本実施形態にも適用可能である。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の超電導回転機の界磁回転子は、従来よりもさらに容易に精度よく製造できる構造を提供可能な超電導回転機の界磁回転子として有用である。
10 回転軸
11 凹部
12 側面
13 凹部
14 冷媒流路
15 回転軸
20 コイルボックス
21 箱部
22 蓋部
23 冷媒流路
24 凸部
25 壁
26 側面
27 コイル保持部材
28 凹部
30 超電導コイル
35 低熱収縮部材
40 ウェッジ部材
50 冷媒配管
51 供給中央配管
52 排出中央配管
53 第1供給分岐継手
54 第1供給枝配管
55 第1排出分岐継手
56 第1排出枝配管
57 第2供給分岐継手
58 第2供給枝配管
59 第2排出分岐継手
60 第2排出枝配管
70 間隙
75 保護抵抗

Claims (9)

  1. 超電導回転機の界磁回転子であって、
    回転軸と、複数のコイルボックスと、複数の超電導コイルと、を備え、
    前記コイルボックスは、
    前記回転軸の中心軸方向に延び、
    内部に空間を形成するように構成された壁を備え、
    前記回転軸の周面に着脱可能に固定され、
    前記超電導コイルは、それぞれの前記コイルボックスの前記空間に配置され、
    前記超電導回転機の界磁巻線をなしており、
    前記コイルボックスの前記壁は熱伝導性の金属で構成されており、前記コイルボックスは、前記壁を介して前記超伝導コイルを冷却する冷媒を通流するための冷媒流路を備える、 超電導回転機の界磁回転子。
  2. 前記冷媒流路は、前記コイルボックスの壁の中に延在するように設けられている、請求項1に記載の超電導回転機の界磁回転子。
  3. それぞれの前記コイルボックスと、前記周面との間に、前記中心軸方向および前記回転軸の周方向に広がる間隙が形成されている、請求項2に記載の超電導回転機の界磁回転子。
  4. 保護抵抗を備え、前記保護抵抗は、
    前記間隙の内部に配置されるように前記コイルボックスに固定され、
    それぞれの前記間隙に対応する前記超電導コイルに並列に接続されている、
    請求項3に記載の超電導回転機の界磁回転子。
  5. 低熱収縮部材を備え、前記低熱収縮部材は、
    前記コイルボックスの内面と前記コイルボックスに収納される前記超電導コイルとの間に配置され、
    熱収縮量が前記コイルボックスの熱収縮量よりも小さい、
    請求項1ないし4のいずれかに記載の超電導回転機の界磁回転子。
  6. 前記低熱収縮部材の平均熱線膨張係数が、前記超伝導コイルの平均熱線膨張係数よりも小さい、請求項5に記載の超電導回転機の界磁回転子。
  7. 前記周面において、前記コイルボックスのそれぞれに対応するように複数の凹部が形成され、前記凹部は、
    対応する前記コイルボックスに対向するように形成され、
    前記中心軸方向に延びる側面を有し、
    それぞれの前記コイルボックスにおいて、凸部が形成され、前記凸部は、
    前記中心軸方向に延び、
    前記回転軸に向かって突出し、
    前記凹部の前記中心軸方向に延びる側面に当接して嵌まる、
    請求項1ないし6のいずれかに記載の超電導回転機の界磁回転子。
  8. 複数のウェッジ部材を備え、
    前記回転軸の周方向に隣接する2つの前記コイルボックスをコイルボックスペアとするとき、
    前記ウェッジ部材はそれぞれ、
    前記中心軸方向に延び、
    それぞれの前記コイルボックスペアにつき、そのコイルボックスペアをなす2つのコイルボックスの間に配置され、
    その2つのコイルボックスのそれぞれと当接する、
    請求項1ないし7のいずれかに記載の超電導回転機の界磁回転子。
  9. 前記冷媒流路は、前記コイルボックスの壁のうち前記回転軸に対向する部位の内部に形成されている、請求項2ないし4のいずれかに記載の超電導回転機の界磁回転子。
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