JP3938572B2 - 超電導同期機 - Google Patents

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Description

本発明はバルク超電導体(超電導体)を使用したアキシャルギャップ型超電導同期機に関する。特に、バルク超電導体の冷却効率を良くするとともに、アキシャルギャップを小さくすることができる超電導同期機に関する。
また、本発明は、上記超電導同期機を利用した、推進方向に対する横断面積が小さく、かつ、推進力が大きい舶用ポッド推進機に関する。
従来から、ステーター側にバルク超電導体を使用したアキシャルギャップ型の超電導同期機があった。
たとえば、特開平7−87724号公報には、回転電機子に関して回転軸の軸方向両側に界磁用の磁石部を設け、前記磁石部にバルク超電導体とその周囲にコイルを巻き回したものを使用したものが開示されている。前記磁石部は、液体ヘリウム容器に保持され、その周面の一部と底面が液体ヘリウム容器の内部空間に開放されている。
この従来の超電導同期機においては、液体ヘリウム容器に液体ヘリウムを供給し、バルク超電導体とその周面のコイルを絶対温度4.2度に冷却し、バルク超電導体が超電導状態に転移した後にコイルに電流を流しバルク超電導体を着磁させる。
このようにバルク超電導体を着磁した状態で、ブラシを介して回転電機子のコイルに電流を流し、回転電機子のコイルに回転磁界を発生させ、着磁されたバルク超電導体との間の力の作用によって回転力を得るようにしている。
特許第2822570号公報 特開平7−87724号公報
上記従来の超電導同期機は、バルク超電導体を使用することによってその強力な磁力を利用できるが、バルク超電導体を同期機の固定子側に使用するため、バルク超電導体の2つの磁極のうち、回転電機子に面する側の一つの磁極から出る磁束しか駆動や発電に利用することができなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題の一つは、バルク超電導体の両磁極から出る磁束を利用できる超電導同期機を提供することにある。
上記課題に対して、本発明の発明者は、バルク超電導体を回転子側に使用し、バルク超電導体の回転軸方向の両側に電機子を配置した構造のアキシャルギャップ型の超電導同期機を考案した。
この構成によれば、着磁されたバルク超電導体の両端に電機子のコイルが対面することができ、着磁されたバルク超電導体の両磁極から出る磁束が電機子コイルと相互作用を及ぼし、駆動あるいは発電に利用される。
しかし、上記構造の超電導同期機において、バルク超電導体を超電導状態に転移する臨界温度以下の温度に冷却し、その超伝導状態を維持するため、固定された冷媒源から回転運動をする回転子のバルク超電導体に常時冷媒を供給するための構造を提供しなければならない。
また、アキシャルギャップ型の超電導同期機を構成する場合、磁石と電機子の間の作用を強くするために回転軸の軸方向(以下、単に「軸方向」という)のバルク超電導体の端面を可能な限り電機子に近づける方が好ましい、すなわちアキシャルギャップは可能な限り小さい方が好ましい。
その一方で、超伝導状態を生成・維持するためにバルク超電導体を効率よく冷却することが要求される。この点については、上記従来のアキシャルギャップ型超電導同期機は、バルク超電導体を着磁させるためのコイルがバルク超電導体の周面に巻着されている。したがって、バルク超電導体を直接冷却することができず、バルク超電導体の冷却効率が低かった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、バルク超電導体を効率よく冷却することができ、且つ、着磁化されたバルク超電導体の磁束を効率よく利用することができる超電導同期機を提供することにある。
さらに、本発明は、本発明の超電導同期機を利用した舶用ポッド推進機に関する。
従来、円筒状の回転子の外周面にバルク超電導体を固定し、その外周に回転子と同軸の円筒状の電機子コイルを配設したラジアルギャップ型の舶用ポッド推進機は提案されていた。
ラジアルギャップ型の舶用ポッド推進機は、回転子の外周に設けられたバルク超電導体とさらにその外周に設けられた電機子コイルとの間で力が発生し、回転軸に関して離れたところで力が発生するため、回転トルクが大きいという利点がある。
しかし、ラジアルギャップ型の舶用ポッド推進機は、同一のバルク超電導体の磁力によって大きな回転トルクを得ようとすると、回転子の半径を大きくし、力の作用点から回転軸までの距離をさらに大きくしなければならなかった。
ところが、回転子の半径を大きくすれば、舶用ポッド推進機の半径が増大し、推進方向に対する舶用ポッド推進機の横断面積が増大する結果、推進抵抗も増大することになる。このため、ラジアルギャップ型舶用ポッド推進機において出力を大きくすることには限界があった。
そこで、本発明が解決しようとするさらに他の課題は、推進抵抗が小さく、且つ、推進力が大きい舶用ポッド推進機を提供することにある。
本発明の発明者は、バルク超電導体は結晶のc軸方向に、それと直交するa,b軸方向に比して高い磁界密度を発生し、且つ、バルク超電導体は前記c軸に比してa軸,b軸方向から冷却しやすいという知見の下に、これらの性質を巧みに利用して本発明を発明したものである。
すなわち、本発明の超電導同期機は、回転軸に回転板を設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記バルク超電導体の回転軌道の両側に周方向に所定間隔で互いに対向するように電機子を配設した超電導同期機において、前記回転板は、前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になり、かつ、前記バルク超電導体のc軸方向の両端面が外部に露出するように、前記バルク超電導体を前記c軸に関する側面で保持し、前記回転板と前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、前記冷媒流路は、前記回転板の内部を通って前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、前記バルク超電導体のc軸に関する側面は、前記回転板の冷媒流路の内部空間に開放され、あるいは、仕切壁を介して前記回転板の冷媒流路に接している、ことを特徴とするものである。
前記回転軸は、冷媒の供給側と回収側の流路を形成する2重以上の多重管からなり、前記回転軸の供給側冷媒流路は前記回転板の冷媒流路に連通し、前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、前記回転軸の回収側冷媒流路に連通するようにすることができる。
また、前記バルク超電導体のc軸に関する側面に接する仕切壁は回転板と一体の部材あるいは回転板本体と別個の伝熱部材からなるようにすることができる。
本発明の超電導同期機は、回転軸に回転板を設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記バルク超電導体の回転軌道の両側に周方向に所定間隔で互いに対向するように電機子を配設した超電導同期機において、前記回転板は空洞部を有し、前記空洞部は前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になるように前記バルク超電導体をその内部に収容固定し、前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、前記回転軸の冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて前記空洞部内の空間に開放されている、ことを特徴とするものである。
前記回転軸は、冷媒の供給側と回収側の流路を形成する2重以上の多重管からなり、前記回転軸の供給側冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記回転板の空洞部は前記回転軸の回収側冷媒流路に連通するようにすることができる。
前記電機子は冷媒容器によって保持され、前記電機子は前記バルク超電導体と対向する面及び前記冷媒容器によって保持される外表面を除く外表面が前記冷媒容器の内部空間に開放され、あるいは仕切壁を介して前記冷媒容器内の空間と接しているようにすることができる。
前記回転軸と回転板と電機子と電機子の冷媒容器を内包するハウジングを有し、前記ハウジングは、ハウジングの内部空間と真空装置とを接続する減圧ダクトまたは減圧ノズルを有するようにすることができる。
前記ハウジングは真空室かつ防爆室を構成することが好ましい。
前記回転板は前記回転軸上に複数枚固定され、隣接する回転板の間、及び回転板の列方向の両端外側に前記電機子を設けるようにすることができる。
前記ハウジングに前記ハウジングから突出した前記回転軸を内包する付加ハウジングを取り付け、前記付加ハウジングに真空装置に連通する減圧ダクトまたは減圧ノズルを設けるとともに、冷媒源と連通する冷媒配管を前記付加ハウジングに挿通固定し、前記冷媒配管の挿入端部に、前記回転軸の端部を前記付加ハウジングと非接触の状態で支持するとともに、前記回転軸の冷媒流路と前記冷媒配管に連通する流路を設けた支承部材を固定するようにすることができる。
本発明による舶用ポッド推進機は、回転軸に複数枚の回転板を所定間隔に設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記回転板の間および前記回転板の列方向の両端外側に前記バルク超電導体の回転軌道の近傍に周方向に所定間隔で電機子を配設し、前記回転板は、前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になり、かつ、前記バルク超電導体のc軸方向の両端面が外部に露出するように、前記バルク超電導体を前記c軸に関する側面で保持し、前記回転板と前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、前記冷媒流路は、前記回転板の内部を通って前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、前記バルク超電導体のc軸に関する側面は、前記回転板の冷媒流路の内部空間に開放され、あるいは、仕切壁を介して前記回転板の冷媒流路に接しており、前記電機子と前記回転板と前記回転軸の一部を内包するポッドを有し、前記回転軸の一端部はポッドから突出し先端部にプロペラを有する、ことを特徴とするものである。
また、本発明による舶用ポッド推進機は、回転軸に複数枚の回転板を所定間隔に設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記回転板の間および前記回転板の列方向の両端外側に前記バルク超電導体の回転軌道の近傍に周方向に所定間隔で電機子を配設し、前記回転板は空洞部を有し、前記空洞部は前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になるように前記バルク超電導体をその内部に収容固定し、前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、前記回転軸の冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記バルク超電導体の外表面は冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて前記空洞部内の空間に開放されており、前記電機子と前記回転板と前記回転軸の一部を内包するポッドを有し、前記回転軸の一端部はポッドから突出し先端部にプロペラを有する、ことを特徴とするものである。
本発明の一つの超電導同期機によれば、バルク超電導体は、c軸が回転軸と平行になり、c軸方向の両端面が回転板の外部に露出している。この発明では、バルク超電導体が着磁された後は、磁束密度が高いc軸方向端面が電機子コイルと対向するようになっている。しかも、本発明のバルク超電導体のc軸方向端面は回転板から露出しているため、可能な限りc軸方向端面と電機子コイルの間の距離、すなわちアキシャルギャップを最小にすることができる。これにより、着磁後のバルク超電導体の磁束を最大限利用することができる。
さらに、本発明のバルク超電導体は、c軸に関する側面、すなわち結晶のa,b軸方向の周面で回転板によって保持され、かつ、a,b軸方向の周面から冷媒によって冷却されるようになっている。バルク超電導体は、前述の通りc軸方向に比してa,b軸方向から冷却されやすい。しかも、本発明のバルク超電導体は外周に着磁用コイルが巻回されていないため、直接バルク超電導体を冷却でき、冷却効率が高い。
このように、本発明によれば、冷却効率が高く、且つ、着磁されたバルク超電導体のc軸方向の両端面が電機子コイルと至近距離で対向し、強い回転力あるいは誘導起電力を発生させる超電導同期機を実現することができる。
本発明の一つの超電導同期機によれば、バルク超電導体を回転板の空洞部に収容・固定し、空洞部に冷媒流路を連通させ、バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて空洞部内の空間に開放されている。
本発明によれば、バルク超電導体のc軸方向の両端面が電機子コイルと対向するようになっており、着磁後のバルク超電導体の両磁極の磁束を利用できる。また、本発明によれば、a,b軸方向に比して磁束密度が高いc軸方向の磁極を電機子コイルに対向させることにより、強い回転力あるいは誘導起電力を発生させることができる。
さらに、本発明によれば、バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて空洞部内の空間に開放されているので、バルク超電導体の外表面のほぼ全部が冷媒によって冷却され、冷却効率が高い超電導同期機を得ることができる。
本発明の舶用ポッド推進機によれば、回転軸方向に複数の回転板を配設し、その数に比例して強い回転力を得ることができる。その一方、かかる回転力の増大を図っても、回転板の半径、ひいては舶用ポッド推進機の推進方向に対する横断面積が増大しないので、推進抵抗の増大が緩やかである。その結果、推力が強く推進抵抗が少ない舶用ポッド推進機を得ることができる。
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態による超電導同期機の縦断面を示している。
本実施形態による超電導同期機1は、回転軸2上に回転板3を設け、回転板3上にバルク超電導体4を固定している。
バルク超電導体4の回転軌道の両側に周方向に一定の間隔で互いに対向するように電機子5が設けられている。
回転板3は内部に冷媒を流通させる冷媒流路6を有している。
また、回転軸2は多重管からなり、図示しない冷媒源に接続する、供給側の冷媒流路7と回収側の冷媒流路8を有している。
電機子5は、冷媒容器9によって保持されている。電機子の冷媒容器9は、冷媒配管10,11によって図示しない冷媒源に接続されている。
前記回転軸2の一部と回転板3と電機子5はハウジング12によって囲まれている。
ハウジング12は、図示しない真空装置とを接続する減圧ダクトまたは減圧ノズル13を有している。また、本実施形態のハウジング12は内部を観察できる窓14を有している。
回転軸2とハウジング12の間には、構造的に十分強度を有するスリーブ15,16が介挿されている。
スリーブ15,16は、内端部がフランジになっており、回転板3に固定でき、回転軸2と回転板3とを支持している。
スリーブ15,16とハウジング12の間にはベアリング17,18が介装され、スリーブ15,16と回転軸2の間にはシール材19,20が介装されている。
本実施形態では、ハウジング12の側壁に付加ハウジング21が取り付けられている。
付加ハウジング21には図示しない真空装置に連通する減圧ダクトまたは減圧ノズル22が設けられている。付加ハウジング21には、冷媒源と連通する供給側冷媒配管23と回収側冷媒配管24が挿通され、固定されている。供給側冷媒配管23と回収側冷媒配管24の挿入端部には、付加ハウジング21と非接触状態で支承部材25が固定されている。支承部材25は、回転軸2の端部を回転可能に支持している。また、支承部材25には、回転軸の冷媒流路7,8と冷媒配管23,24とを連通させる冷媒用の流路26が設けられている。支承部材25は適宜複数の部材によって構成することができ、本実施形態では、外筒と内筒の2部材からなる。また、本実施形態の支承部材25は、回転軸2と支承部材25の回転支承部から漏れる可能性がある冷媒を外部に排出するドレン配管27,28が設けられている。ドレン配管27,28はやはり付加ハウジング21に挿通され、固定され、それらの先端で支承部材25を支持するようになっている。
本実施形態の超電導同期機1においては、冷媒は付加ハウジングに取り付けられている供給側冷媒配管23から回転軸の供給側の冷媒流路7を通り、回転板の冷媒流路6に流れ、バルク超電導体4を冷却した後に回転軸の回収側の冷媒流路8に流れ、付加ハウジングの回収側冷媒配管24を通って冷媒源に戻る。
また、同一系統で異系統でもよい冷媒源から冷媒が、冷媒配管10,11を通って電機子の冷媒容器9の内部空間に流れ、電機子5を冷却した後に冷媒源に戻るようになっている。
ハウジング12は、減圧ダクトまたは減圧ノズル13から真空装置によって減圧され、運転時には内部が真空の状態になる。
また、付加ハウジング21も、減圧ダクトまたは減圧ノズル22から真空装置によって減圧され、運転時には内部が真空の状態になる。
図2は、正面から見た回転板3の内部の冷媒流路6を示している。
図2に示すように、本実施形態の回転板の冷媒流路6は左右両系統に別れ、導入部は回転軸2の供給側の冷媒流路7と連通し、それらはバルク超電導体4の周囲を可能な限り周回し、回転軸2の回収側の冷媒流路8に戻るように形成されている。
バルク超電導体4は、回転板3に設けられた孔に嵌着されるようになっている。
図3は、回転板3の内部の冷媒流路6の斜視図を示している。
図3から明らかなように、回転板3の冷媒流路6は、好ましくは回転板3に設けられた溝からなる。回転板3は、図3に示していない平面同形状の蓋を有し、その蓋をすることによって冷媒流路6が形成される。蓋にもバルク超電導体4の端面を露出させる孔が設けられており、これによって蓋をした状態でも、バルク超電導体4はその両端面が回転板3の外部に露出するようになっている。
図4は、バルク超電導体4の保持状態を示している。
図4に示すように、本発明においては、バルク超電導体4は、その結晶のc軸が回転軸2と平行になるように保持される。冷媒流路6はバルク超電導体4のc軸に関する側面、すなわちc軸と直交するa,b軸のさす周面を取り囲み、バルク超電導体4をc軸に関する側面から冷却するようになっている。
また、本実施形態によれば、バルク超電導体4のc軸方向両端面は回転板3の外部に露出している。
上記構造により、本実施形態の超電導同期機1によれば、バルク超電導体4のc軸方向両端面を可能な限り電機子5に近づけることができ、アキシャルギャップを可能な限り小さくすることができる。
また、一般にバルク超電導体4は、c軸方向に磁束が集中し、c軸方向端面の磁束密度が高い。それとともに、c軸方向に関する側面、すなわちa,b軸がさす周面から冷却した場合に、バルク超電導体は冷却されやすいという性質を有している。
本発明はバルク超電導体の上記性質を余すことなく超電導同期機に利用したものである。すなわち、冷却しやすいバルク超電導体のc軸方向に関する側面からバルク超電導体4を冷却することにより、バルク超電導体4を効率冷却し、磁束密度が高いバルク超電導体のc軸方向端面を電機子5と対向させることにより、強い力を得、さらに、冷却されないc軸方向端面を回転板3から外部に露出させることにより、c軸方向端面を可能な限り電機子5に近づけることができる。
また、本発明はバルク超電導体4の両磁極から出る磁束を利用することができるので、いっそう効率の高い超電導同期機を得ることができるのである。
なお、図4に示した断面図では、バルク超電導体4と冷媒流路6の間は、回転板3と一体の部材からなる仕切壁によって仕切られている。しかし、これに限られず、図5に示すように、バルク超電導体4と冷媒流路6の間は、回転板3と別部材29からなる仕切壁によって仕切られるようにしてもよい。
さらに、図示していないが、バルク超電導体4は、そのc軸に関する側面が冷媒流路6の内部空間に開放され、冷媒によって直接冷やされるようにしても良い。
別部材29によってバルク超電導体4と冷媒流路6とを仕切る場合は、伝熱性の高い金属を仕切壁に用いることにより、高い冷却効率を得ることができる。また、バルク超電導体4のc軸方向に関する側面を直接冷媒によって冷却するようにすれば、冷却に関しては、もっとも高い効率を得ることができる。
なお、回転軸2は、2重以上の多重管とすることができる。2重以上の多重管にすれば、回転板3の各冷媒流路6ごとに回転軸の冷媒流路を確保でき、より冷媒が安定的に流通するようにすることができる。
また、本実施形態によれば、回転軸2、回転板3、電機子5が全体としてハウジング12の内部に収納される。前述したように、ハウジング12の内部は真空状態に減圧される。これにより、回転軸2、回転板3、電機子5に対して優れた断熱性を発揮することができる。また、好ましくは、ハウジング12は、真空室と防爆室を兼ねる強度とすることが好ましい。ハウジング12が防爆室を兼ねる場合、万一冷媒が大量に漏れて急激に蒸発するような異常事態が生じても、爆発を防止し、安全な超電導同期機を得ることができる。
本実施形態の付加ハウジング21は真空に減圧されることにより、ハウジング12から突出した部分の回転軸2の断熱に寄与することができる。また、付加ハウジング21は、回転軸2の末端の振れを防止する効果を有する。
すなわち、付加ハウジング21は、基部がハウジング12に固定され、供給側冷媒配管23、回収側冷媒配管24を介して支承部材25を支持している(好ましくはドレン配管27,28も支承部材25を支持するようにする)。支承部材25は、回転軸2の末端部を回転可能に把持しているので、回転軸2の末端の振れ回りが効果的に防止される。さらに、回転軸2の全体が真空層によって断熱されるので、きわめて冷却効率の高い超電導同期機を得ることができる。
次に本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、バルク超電導体の全体を回転板に収納し、バルク超電導体の全周面からバルク超電導体を冷却するものである。
図6は本発明の第2の実施形態による回転板を正面から見たものである。
なお、図1〜5と同一部分については同一の符号を用いて示す。
図6に示すように、本実施形態の回転板30は、内部に比較的大きな空洞部31を有している。図6に例示する空洞部31は円環状の形状を有しているが、空洞部の形状は円環に限られない。
本実施形態では、円環状の空洞部31に周方向に8個のバルク超電導体4を収納し、固定している。
バルク超電導体4は、第1実施形態と同様に、結晶のc軸が回転軸2と平行になるように配置されている。
バルク超電導体4は、固定部材32によって回転板30のケーシングに固定されている。
回転軸2の供給側の冷媒流路7からは、4本の供給配管33が放射状に設けられている。また、4本の回収配管34が空洞部31から回転軸2の回収側の冷媒流路8に連通されている。なお、供給配管33と回収配管34の長短も図6に示した場合の逆でもよい。また、供給配管33と回収配管34の数は図6に示したものに限られない。
図7は、第2実施形態のバルク超電導体4の収容固定状態を示す断面図である。
回転板30は、その内部に空洞部31を有し、バルク超電導体4は固定部材32によって回転板30のケーシングに固定され、空洞部31の内部に収容されている。バルク超電導体4のc軸端面は、回転板30のケーシングからわずかに離され、c軸端面も冷媒によって冷やされるようにすることができる。
また、図7に示すように、回転板30の外側をさらにケーシング35を設けることができる。ケーシング35は、回転板30の外表面を覆い、その内部を真空にすることができる。これにより、回転板30の外表面は真空室36によって覆われ、高い断熱効果によって高い冷却効率を得ることができる。
ケーシング35は、電機子と回転板と回転軸の全体を内包するハウジングを設けることができない場合に有用である。
図6と7から明らかなように、本第2実施形態によれば、バルク超電導体4は固定部材32を除く外表面が冷媒に直接接触し、高い冷却効率を得ることができる。
また、ケーシング35により、回転板30を個々に断熱することができる。
図8は、電機子5の冷却室の変形例を示している。図1と同一部分については同一の符号を用いて示す。
図1の例では電機子5の表面の一部が冷媒容器9の内部空間に直接開放されているが、図8の例では、電機子5と冷媒容器9の内部空間は仕切壁37によって仕切られている。
これにより、冷媒容器9の内部の冷媒が電機子を介して外部に漏れることを完全に防止することができる。また、電機子5との接触面積を大きくすることにより高い冷却効果を奏する。
このように電機子5を低温に冷却することにより、電機子5の電気抵抗が低下し、強い着磁電流や回転磁界を生じることができる。
図9は、本発明の変形例およびそれを応用した舶用ポッド推進機を概念的に示したものである。
本発明の第1実施形態と第2実施形態による超電導同期機は、いずれも図9のように直列の構造にすることができる。
本発明による舶用ポッド推進機は、回転板と電機子を複数枚直列的に配置した超電導同期機を舶用ポッド推進機のポッド内に収納し、ポッドから突出した回転軸の先端にプロペラ等の推進手段を設けたものである。この場合に、上述したハウジング12の代わりにポッドを用いることができる。
図9に示すように直列構造とすることにより、電機子の間に配置されたバルク超電導体4はすべて両磁極から出る磁束が無駄なく利用される。
また、本発明による超電導同期機を直列構造にすることにより、推進抵抗が少なく、且つ、推進力が強い舶用ポッド推進機を得ることができる。
すなわち、従来の舶用ポッド推進機は、限界があったバルク超電導体の磁界を補って強いトルクを得るために、バルク超電導体を筒状の回転子の周面に配置し、その外側に円筒状の電機子を設けたラジアルギャップ型の超電導同期機を用いていた。ラジアルギャップ型の超電導同期機によれば、広い面積のバルク超電導体を利用し、かつ、回転軸から離れたところで電機子との力の作用を生じることができる。
しかし、回転軸から離れたところで電機子との力の作用を生じるということは、強いトルクを得られる反面、舶用ポッド推進機の外径の増大を招き、推進抵抗が増大した。
これに対して、図9の構造のラジアルギャップ型の超電導同期機を用いた舶用ポッド推進機は、回転子と電機子の数を多くすれば比例して出力が大きくなり、にもかかわらず、舶用ポッド推進機の外径が変わらないので、推進抵抗の増加が緩やかである。
このように、本発明の舶用ポッド推進機によれば、推進抵抗が小さく、推進力が強い舶用ポッド推進機を得ることができる。
本発明の一実施形態による超電導同期機の縦断面図。 本発明の一実施形態による回転板の正面図。 本発明の一実施形態による回転板の斜視図。 本発明の一実施形態によるバルク超電導体の周辺の縦断面図。 本発明の一実施形態の変形例の縦断面図。 本発明の第二の実施形態による回転板の正面図。 本発明の第二の実施形態によるバルク超電導体の周辺の縦断面図。 本発明の電機子の周辺の構造の変形例を示す縦断面図。 回転板と電機子を直列構造とした本発明による舶用ポッド推進機の概略断面図。
符号の説明
1 超電導同期機
2 回転軸
3 回転板
4 バルク超電導体
5 電機子
6 回転板の冷媒流路
7 回転軸の供給側の冷媒流路
8 回転軸の回収側の冷媒流路
9 電機子の冷媒容器
10 冷媒配管
11 冷媒配管
12 ハウジング
13 減圧ダクトまたは減圧ノズル
14 窓
15 スリーブ
16 スリーブ
17 ベアリング
18 ベアリング
19 シール材
20 シール材
21 付加ハウジング
22 減圧ダクトまたは減圧ノズル
23 供給側冷媒配管
24 回収側冷媒配管
25 支承部材
26 冷媒用の流路
27 ドレン配管
28 ドレン配管
29 仕切壁
30 回転板
31 空洞部
32 固定部材
33 供給配管
34 回収配管
35 ケーシング
36 真空室
37 仕切壁

Claims (12)

  1. 回転軸に回転板を設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記バルク超電導体の回転軌道の両側に周方向に所定間隔で互いに対向するように電機子を配設した超電導同期機において、
    前記回転板は、前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になり、かつ、前記バルク超電導体のc軸方向の両端面が外部に露出するように、前記バルク超電導体を前記c軸に関する側面で保持し、
    前記回転板と前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、
    前記冷媒流路は、前記回転板の内部を通って前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、
    前記バルク超電導体のc軸に関する側面は、前記回転板の冷媒流路の内部空間に開放され、あるいは、仕切壁を介して前記回転板の冷媒流路に接している、ことを特徴とする超電導同期機。
  2. 前記回転軸は、冷媒の供給側と回収側の流路を形成する2重以上の多重管からなり、
    前記回転軸の供給側冷媒流路は前記回転板の冷媒流路に連通し、前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、前記回転軸の回収側冷媒流路に連通する、ことを特徴とする請求項1に記載の超電導同期機。
  3. 前記バルク超電導体のc軸に関する側面に接する仕切壁は回転板と一体の部材あるいは回転板本体と別個の伝熱部材からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の超電導同期機。
  4. 回転軸に回転板を設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記バルク超電導体の回転軌道の両側に周方向に所定間隔で互いに対向するように電機子を配設した超電導同期機において、
    前記回転板は空洞部を有し、前記空洞部は前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になるように前記バルク超電導体をその内部に収容固定し、
    前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、
    前記回転軸の冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて前記空洞部内の空間に開放されている、ことを特徴とする超電導同期機。
  5. 前記回転軸は、冷媒の供給側と回収側の流路を形成する2重以上の多重管からなり、
    前記回転軸の供給側冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記回転板の空洞部は前記回転軸の回収側冷媒流路に連通する、ことを特徴とする請求項4に記載の超電導同期機。
  6. 前記電機子は冷媒容器によって保持され、前記電機子は前記バルク超電導体と対向する面及び前記冷媒容器によって保持される外表面を除く外表面が前記冷媒容器の内部空間に開放され、あるいは仕切壁を介して前記冷媒容器内の空間と接している、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超電導体同期機。
  7. 前記回転軸の少なくとも一部と回転板と電機子と電機子の冷媒容器を内包するハウジングを有し、
    前記ハウジングは、ハウジングの内部空間と真空装置とを接続する減圧ダクトまたは減圧ノズルを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の超電導同期機。
  8. 前記ハウジングは真空室かつ防爆室を構成する、ことを特徴とする請求項7に記載の超電導同期機。
  9. 前記回転板は前記回転軸上に複数枚固定され、隣接する回転板の間、及び回転板の列方向の両端外側に前記電機子を設けた、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超電導同期機。
  10. 前記ハウジングに前記ハウジングから突出した前記回転軸を内包する付加ハウジングを取り付け、前記付加ハウジングに真空装置に連通する減圧ダクトまたは減圧ノズルを設けるとともに、冷媒源と連通する冷媒配管を前記付加ハウジングに挿通固定し、前記冷媒配管の挿入端部に、前記回転軸の端部を前記付加ハウジングと非接触の状態で支持するとともに、前記回転軸の冷媒流路と前記冷媒配管に連通する流路を設けた支承部材を固定した、ことを特徴とする請求項7,8,9のいずれか一項に記載の超電導同期機。
  11. 回転軸に複数枚の回転板を所定間隔に設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記回転板の間および前記回転板の列方向の両端外側に前記バルク超電導体の回転軌道の近傍に周方向に所定間隔で電機子を配設し、
    前記回転板は、前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になり、かつ、前記バルク超電導体のc軸方向の両端面が外部に露出するように、前記バルク超電導体を前記c軸に関する側面で保持し、
    前記回転板と前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、
    前記冷媒流路は、前記回転板の内部を通って前記バルク超電導体のc軸に関する側面を周回し、
    前記バルク超電導体のc軸に関する側面は、前記回転板の冷媒流路の内部空間に開放され、あるいは、仕切壁を介して前記回転板の冷媒流路に接しており、
    前記電機子と前記回転板と前記回転軸の一部を内包するポッドを有し、
    前記回転軸の一端部はポッドから突出し先端部にプロペラを有する、ことを特徴とする舶用ポッド推進機。
  12. 回転軸に複数枚の回転板を所定間隔に設け、該回転板にバルク超電導体を固定し、前記回転板の間および前記回転板の列方向の両端外側に前記バルク超電導体の回転軌道の近傍に周方向に所定間隔で電機子を配設し、
    前記回転板は空洞部を有し、前記空洞部は前記バルク超電導体の結晶のc軸が前記回転軸と平行になるように前記バルク超電導体をその内部に収容固定し、
    前記回転軸は冷媒源に連通する冷媒流路を有し、
    前記回転軸の冷媒流路は前記回転板の空洞部に連通し、前記バルク超電導体の外表面は固定部材との接触部分を除いて前記空洞部内の空間に開放されており、
    前記電機子と前記回転板と前記回転軸の一部を内包するポッドを有し、
    前記回転軸の一端部はポッドから突出し先端部にプロペラを有する、ことを特徴とする舶用ポッド推進機。
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