JP5916807B2 - 表面処理鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面処理鋼板の製造方法に関する。
家電製品や建材、車両、航空機、容器等の分野において,鋼板と有機被覆との密着性を向上させる処理として、クロメート処理が従来より知られており、その優れた耐食性と密着性から、幅広く用いられてきた。
クロメート処理には、皮膜中に6価クロムを含有するタイプと含有しないタイプがあるが、近年、環境および労働衛生の観点から、出発原料として6価クロムを使用するものであれば、最終製品の状態にかかわらず出発原料自体への6価クロム含有を禁止しようとする動きが強まっており、さらに、クロメート処理を行うことによって生じる排水処理、排気処理、廃棄物処理等に多額の費用を必要とすることから、クロメート処理の代替となるノンクロムの表面処理の開発が要求されている。
クロメート処理の代替となるノンクロムの表面処理方法としては、たとえば、基材としての鋼板上に、電解処理により、Zr(ジルコニウム)、Al(アルミニウム)またはTi(チタン)などの酸素化合物皮膜を形成する方法が知られている。
たとえば、特許文献1には、ZrイオンおよびFイオンを含む処理液中で、帯鋼に連続してカソード電解処理を行うことで、帯鋼上にZrを含有するZr酸素化合物皮膜を形成し、この際において、上記処理液に対して、2種類以上の所定のジルコニウム化合物を含む溶液を補給することにより、処理液中にZrイオンを補給し、連続的に帯鋼上にZr酸素化合物皮膜の形成を行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、ZrイオンおよびFイオンを含む処理液を用いた電解処理により帯鋼上にZr酸素化合物皮膜を形成する際に、上記処理液に対して、フッ素を含むジルコニウム化合物と、フッ素非含有ジルコニウム化合物とを含有する溶液を補給することにより、処理液中にZrイオンを補給する技術が開示されている。
特許第4996409号公報 特許第5215509号公報
しかしながら、この特許文献1,2の技術では、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成して得られる表面処理鋼板を、薄く成形加工されるツーピース缶などの用途に用いる場合に、次のような問題がある。
すなわち、ツーピース缶は、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成して得た表面処理鋼板に、PETフィルムなどの樹脂をラミネートした後、これを成形加工することにより製造することができるが、成形加工を行う際に、缶側壁部が薄く延ばされるため、樹脂およびZr酸素化合物皮膜が破断して鋼板が露出し、これにより耐食性が低下し易くなる傾向にある。そのため、ツーピース缶においては、溶接缶などのスリーピース缶と比較して、鋼板の露出を防止するために、鋼板上に形成するZr酸素化合物皮膜中のZr量を多くする(具体的には30mg/m以上まで多くする)必要がある。
これに対し、上述した特許文献1,2に記載されている実施例においては、鋼板上に形成するZr酸素化合物皮膜のZr量は、8mg/mや10mg/m程度と低い値を設定しており、また電解処理の処理液に補給する溶液中のZr濃度は17から25g/Lで行っている。そのため、上記補給剤を鋼板上に形成されるZr酸素化合物皮膜中のZr量が多い場合に適用すると、補給する溶液量を多くする必要があり、補給による処理液量の増加が、電解処理を行う際における鋼板による処理液の持ち出しや蒸発による減少量よりもはるかに多くなり、電解処理を連続で行うことができなくなってしまう問題がある。
また、上述した特許文献1および2においては、電解処理を行うための処理液に対して、フッ素を含むジルコニウム化合物を含有する溶液を補給するものであるため、処理液中の遊離Fイオンの濃度が増大しすぎる場合には、処理液中で電解処理を行う際に、遊離Fイオンにより鋼板が過度にエッチングされることで、鋼板から不要なFeイオンが溶出してしまい、加えて、鋼板の過度なエッチングの影響により、鋼板上に形成されるZr酸素化合物皮膜のZr量が低下(以下、「Zr酸素化合物皮膜の形成性が低下」といいかえる。)してしまうという問題もある。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、電解処理の処理液に適切にZrイオンを補給することができ、さらに処理液中の遊離Fイオンの濃度を制御することで、形成するZr酸素化合物皮膜の量を適切に制御し、処理液中に不要な成分が溶出してしまうことを防止することができ、連続して安定的にZr酸素化合物皮膜を形成することができる表面処理鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋼板を、ZrイオンおよびFイオンを含む電解処理液に浸漬させ、電解処理を連続的に行う際に、電解処理液中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を調整するために、電解処理液に対して、フッ化ジルコニウム化合物を含有する所定の第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物を含有する所定の第2補給液とを、それぞれ継続的に補給することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、鋼板を、ZrイオンおよびFイオンを含む電解処理液に浸漬させ、電解処理を連続的に行うことにより、前記鋼板上に、Zrを含有する酸素化合物を主成分とする皮膜を、該皮膜中のZr量が30mg/m以上となるように形成する表面処理鋼板の製造方法において、前記電解処理液は、硝酸イオンを含有し、前記電解処理液中のZrイオン濃度が3,000〜10,000重量ppm、pHが2〜4であり、前記電解処理液に対して、フッ化ジルコニウム化合物(A)をZrイオン濃度で10,000〜250,000重量ppmの範囲で含有し、かつ、pHが5以下である第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)をZrイオン濃度で10,000〜200,000重量ppmの範囲で含有し、かつ、pHが5以下である第2補給液とを、それぞれ継続的に補給し、前記電解処理を連続的に行っている間は、前記電解処理液中におけるZrイオンと硝酸イオンとの重量濃度比を、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」で0.45以上に維持することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法が提供される。
本発明の製造方法において、前記フッ化ジルコニウム化合物(A)として、フッ化ジルコニウムアンモニウムを用いることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)として、オキシ硝酸ジルコニウムを用いることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記電解処理液中における遊離Fイオンの濃度を、イオン電極法によりpH3.0、温度25℃の条件にて測定した値で、10〜150重量ppmの範囲に制御することが好ましい
発明の製造方法において、前記鋼板上に前記皮膜を形成する際の形成速度を、単位面積および単位時間当たりのZr量で70mg/(m・sec)以上とすることが好ましい。
また、本発明の製造方法において、前記電解処理液の一部を取り出し、逆浸透膜を用いて、透過液と濃縮液とに分離し濃縮液を前記電解処理液に戻す逆浸透膜処理工程を有することが好ましい。
さらに、本発明の製造方法において、前記逆浸透膜として、濃度2.0g/Lの塩化ナトリウム水溶液を透過させた場合に、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンの透過率が60重量%以上である逆浸透膜を用いることが好ましい。
本発明によれば、電解処理に用いる処理液中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を適切に制御することができ、鋼板上に、連続して安定的にZr酸素化合物皮膜を形成することができる表面処理鋼板の製造方法を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る表面処理ラインの構成の第1例を示す図である。 図2は、本実施形態に係る表面処理ラインの構成の第2例を示す図である。 図3は、本実施形態に係る表面処理ラインの構成の第3例を示す図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の製造方法に用いられる表面処理ライン100の構成を示す図である。本実施形態の表面処理ライン100は、基材1上にZrを含有する酸素化合物皮膜(Zr酸素化合物皮膜)を形成してなる表面処理鋼板を製造するためのラインであり、図1に示すように、コンダクターロール11,13、シンクロール12、アノード20a〜20d、電解処理槽30、計測装置40、循環槽50、ポンプ60、第1補給液槽70、および第2補給液槽80を備えている。
本実施形態の表面処理ライン100においては、電解処理槽30および循環槽50は、ZrイオンおよびFイオンを含む電解処理液31で満たされており、この電解処理液31が、ポンプ60によって、図1に示す矢印の方向に向かって、電解処理槽30と循環槽50との間を循環するようになっている。また、コンダクターロール11,13は、それぞれ外部電源(不図示)と電気的に接続されることにより通電しており、基材1を搬送しながら通電させることが可能となっている。さらに、アノード20a〜20dも、それぞれ上記外部電源と電気的に接続されることにより通電し、基材1に対して電解処理を施す際に電極として作用する。これにより、本実施形態の表面処理ライン100においては、電解処理槽30内で、基材1と、アノード20a〜20dとがそれぞれ対峙した際に、通電したコンダクターロール11,13を介して電源から印加された直流電流の作用により、基材1に対して連続的に電解処理が行われ、基材1上にZr酸素化合物皮膜が形成される。
基材1としては、鉄系の基材であれば何でもよく、たとえば、熱延鋼板、熱延鋼板を冷間圧延した冷延鋼板、これらの熱延鋼板や冷延鋼板にZn、Sn、Ni、Cu、Alなどを含むめっき層を備えた鋼板などを、鋼帯の形態で用いることができる。
電解処理槽30は、電解処理液31で満たされており、電解処理により基材1上にZr酸素化合物皮膜を形成するための処理槽である。電解処理槽30では、上述したように、コンダクターロール11により基材1が電解処理槽30内部に送られ、電解処理槽30内に満たされた電解処理液31中において、基材1に対して、アノード20a〜20dの作用により電解処理が施される。
計測装置40は、ポンプ60と循環槽50との間における電解処理液31の流路に設けられており、電解処理液31の遊離Fイオン濃度を測定するイオン測定装置、電解処理液31のpHを測定するpH計などを備えている。
循環槽50は、電解処理槽30と同様に電解処理液31で満たされており、ポンプ60により、電解処理液31を電解処理槽30に供給できるようになっている。また、循環槽50は、第1補給液槽70および第2補給液槽80とそれぞれ接続されており、第1補給液槽70から後述する第1補給液を、第2補給液槽80から後述する第2補給液の供給を受けることができるようになっている。
第1補給液槽70は、フッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた水溶液である第1補給液を内部に有しており、この第1補給液を、図1に示すポンプ71により、所望のタイミングで循環槽50の電解処理液31に補給することができる。
第2補給液槽80は、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた水溶液である第2補給液を内部に有しており、この第2補給液を、図1に示すポンプ81により、所望のタイミングで循環槽50の電解処理液31に補給することができる。
本実施形態においては、循環槽50内の電解処理液31に対し、第1補給液槽70および第2補給液槽80から、フッ化ジルコニウム化合物(A)を含有する第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を含有する第2補給液とをそれぞれ補給することによって、電解処理槽30および循環槽50を循環する電解処理液31について、Zrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を調整可能となっている。
すなわち、表面処理ライン100では、上述したように、電解処理槽30の電解処理液31内において電解処理が行われ、基材1上に電解により発生した水酸基と、フッ化ジルコニウム化合物のフッ素とが置き換わって析出したZr酸素化合物皮膜が連続的に形成される。この際においては、基材1上に連続的にZr酸素化合物皮膜を形成することにより、電解処理液31中のZrイオンがZr酸素化合物として析出することで消費され、Zrイオン濃度が低下していく。
そのため、本実施形態においては、表面処理ライン100にて電解処理を行っている間に、電解処理液31に対して、上述した第1補給液槽70および第2補給液槽80から、フッ化ジルコニウム化合物(A)を含有する第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を含有する第2補給液とをそれぞれ供給することにより、電解処理液31にZrイオンを補給し、電解処理液31中のZrイオン濃度を維持するようにする。
一方、表面処理ライン100にて電解処理が行われている間には、電解処理液31内では、Zrイオンが消費されることで、Zrイオンと錯イオンを形成していたFイオンが遊離Fイオンとなり、これにより、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が上昇する。
ここで、電解処理液31中の遊離Fイオンは、Zrイオンと錯イオンを形成することでZr化合物を電解処理液31中に溶解させる錯化剤として作用するものであるため、一定以上の濃度であることが望ましいが、濃度が上昇しすぎると、遊離Fイオンにより基材1が過度にエッチングされることで、基材1から不要なFeイオンが溶出してしまい、加えて、基材1の過度なエッチングの影響により、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性が低下してしまう傾向にある。
そのため、本実施形態においては、フッ素を含有するフッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた第1補給液の供給量と、フッ素を含有しないフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた第2補給液の供給量とを調整することにより、表面処理ライン100にて電解処理を行っている間に、電解処理液31について、Zrイオンの濃度に加えて、遊離Fイオンの濃度を、適正範囲にコントロールすることができる。
ここで、本実施形態における電解処理槽30による電解処理、および電解処理液31への第1補給液および第2補給液の補給について詳細に説明する。
図1に示すように、電解処理槽30の電解処理液31には4本のアノード20a〜20dが浸漬されており、アノード20a〜20dは、それぞれ外部電源(不図示)と電気的に接続されることにより通電し、電解処理を施す際において、基材1に対して、酸化極(電子が引抜かれる極)として作用する。
また、電解処理槽30の周囲に設けられたコンダクターロール11,13も、それぞれ上記外部電源と電気的に接続されることにより通電しており、基材1を搬送しながら、基材1に電流を流すことができるコンダクターロールとして働く。そのため、基材1はキャリアロール11,13により通電し、通電した状態で電解処理槽30に送られることで、アノード20a〜20dの作用により電解処理が行われ、基材1上にZr酸素化合物が形成される。
なお、アノード20a〜20dとしては、電解処理を行っている間に電解処理液31に溶解しないものであれば何でもよいが、酸素過電圧が小さく電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムあるいは白金で被覆されたチタン板を用いるのが好ましい。
電解処理液31は、基材1上にZr酸素化合物皮膜を形成するためのZrイオンを濃度3,000〜10,000重量ppmの範囲で含有するとともに、Fイオンを含有し、さらにpHが2.0〜4.0である水溶液である。
本実施形態の表面処理ライン100においては、電解処理液31は、図1に示す矢印の方向に向かって、ポンプ60により、電解処理槽30および循環槽50を循環している。具体的には、電解処理槽30の底面および上部には電解処理液31の流路となるパイプが接続されており、ポンプ60により、循環槽50内の電解処理液31が、電解処理槽30の底面に接続されたパイプから電解処理槽30内に供給されるとともに、電解処理槽30内の電解処理液31が、電解処理槽30の上部に接続されたパイプから排出され、循環槽50に戻る。この際においては、ポンプ60から電解処理槽30に流れる電解処理液31の一部は、計測装置40にて、適宜、一部が採取されて、遊離Fイオン濃度、pHなどの測定が行われる。
そして、本実施形態においては、このように電解処理液31が電解処理槽30および循環槽50を循環するとともに、循環槽50内の電解処理液31に対し、上述した第1補給液槽70および第2補給液槽80から、第1補給液および第2補給液が補給される。
本実施形態においては、第1補給液および第2補給液の補給を受ける前の電解処理液31は、Zrイオンを形成するためのZr化合物として、たとえば、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどの塩基性炭酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウムなどを、単独または2つ以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本実施形態においては、このような電解処理液31のZrイオンを形成するZr化合物として、電解処理液31中の成分の管理が容易になるという観点より、フッ化ジルコニウムアンモニウム、オキシ硝酸ジルコニウムのいずれか、または両方を用いることが好ましい。すなわち、電解処理槽30にて電解処理を行う際には、通常、電解処理液31に対しては、pH調整剤として、硝酸水溶液やアンモニア水などが適宜添加される。そのため、上記Zr化合物として、フッ化ジルコニウムアンモニウムや、オキシ硝酸ジルコニウムを用いることにより、Zr化合物に由来するZrイオンの対イオンが、pH調整剤に由来する硝酸イオンや、アンモニウムイオンなどと同じものとなるため、電解処理液31中の成分の管理が容易になる。
電解処理液31におけるZrイオン濃度は、上述したように3,000〜10,000重量ppmであればよいが、好ましくは3,000〜8,000重量ppm、より好ましくは4,000〜8,000重量ppmである。電解処理液31中のZr濃度が3,000重量ppm未満である場合には、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成速度が低下してしまうため、鋼板上に形成するZr酸素化合物皮膜中のZr量を、ツーピース缶などの用途として十分な量(具体的には30mg/m以上)とするためには、電解処理槽30の増設や、表面処理ライン100のライン速度(基材1の搬送速度)を低下させる必要があり、表面処理鋼板の生産効率が低下してしまう。一方、電解処理液31中のZr濃度が8,000重量ppm超である場合には、電解処理液31中のZrイオンにより基材1の表面がエッチングされ易くなり、Zr酸素化合物皮膜の形成速度が低下してしまい、表面処理鋼板の生産効率が低下してしまう。
また、電解処理液31は、上述したZrイオンに加えて、Fイオンを含むものであり、Fイオンは、液中におけるZrのイオンの溶解性を高めるための錯化剤などとして作用する。
Fイオンを形成するためのフッ化物としては、特に限定されないが、上述したZr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウムなどのフッ素を含むZr化合物を用いてもよいし、フッ化アンモニウム、フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸、フッ化カルシウム、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウムなどを用いてもよいが、これらのうち、フッ化ジルコニウムアンモニウムが好ましい。
なお、電解処理液31においては、Fイオンとしては、Zrイオンと錯イオンを形成しているFイオンと、遊離Fイオンとが存在する。
電解処理液31中の遊離Fイオンの濃度は、好ましくは10〜150重量ppm、より好ましくは10〜100重量ppmである。電解処理液31中の遊離Fイオンの濃度が10重量ppm未満であると、電解処理液31中においてZrイオンの溶解性が低下し、Zr化合物の沈殿が発生し易くなる傾向にある。一方、電解処理液31中の遊離Fイオンの濃度が150重量ppmを超えると、基材1が過度にエッチングされることで、電解処理の条件(電流密度や処理時間など)に応じたZr酸素化合物の析出効率が低下する傾向にあり、さらに、基材1のエッチングにより、電解処理液31中に不要なFeイオンなどが蓄積してしまうこととなる。
なお、本実施形態においては、電解処理液31中の遊離Fイオンの濃度は、図1に示すように、電解処理槽30および循環槽50を循環している電解処理液31を、計測装置40により採集し、計測装置40に備えられたイオン測定装置を用いて、Fイオン電極を用いたイオン電極法により測定することができる。遊離Fイオンの濃度は、電解処理液31のpHおよび温度の影響を受けて変動するものであるため、遊離Fイオンの濃度の測定は、たとえば、pH3.0、温度25℃の条件などの一定の条件にて行うようにすることが好ましい。あるいは、遊離Fイオンの濃度は、予め、様々な条件で測定した濃度の値を、上述したFイオン電極を用いたイオン電極法によりpH3.0、温度25℃の条件で測定した値に換算するマップを作成しておき、実際に測定した遊離Fイオン濃度の値を、上記マップを用いて換算することで得てもよい。
電解処理液31中の硝酸イオンの濃度は、Zrイオンと硝酸イオンとの重量濃度比、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」で0.45以上とすることが好ましい。電解処理液31中のZrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度が0.45未満であると、基材1が過度にエッチングされることで、電解処理の条件(電流密度や処理時間など)に応じたZr酸素化合物の析出効率が低下する傾向にあり、さらに、基材1のエッチングにより、電解処理液31中に不要なFeイオンなどが蓄積してしまうこととなる。
また、電解処理液31には、Zrイオンの溶解性を高めるための錯化剤としては、上述したフッ化物に加えて、シアン化物などをさらに用いてもよい。
加えて、電解処理液31には、処理液中における導電率を向上させるため、Zr酸素化合物皮膜の形成を阻害しない範囲で、カルシウムイオン、乳酸イオン、塩素イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンなどの電解質を添加してもよい。なお、このような電解質としては、電解処理液31中の成分の管理が容易になるという観点より、pH調整剤に由来するイオンと同様のイオン、すなわち、硝酸イオンやアンモニウムイオンなどを用いることが好ましい。
あるいは、電解処理液31には、ポリイタコン酸、ポリアクリル酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸などの有機酸、フェノール樹脂などの樹脂添加物のうち、少なくとも1種以上が添加されていてもよい。電解処理液31に、このような有機酸や樹脂添加物を添加することにより、Zr酸素化合物皮膜上に塗料やフィルムのような有機樹脂層を形成する場合に、Zr酸素化合物皮膜と有機樹脂層との密着性をより向上させることができる。
そして、本実施形態においては、上述した構成を有する電解処理槽30により、以下のようにして、基材1に電解処理が施され、基材1上にZr酸素化合物皮膜が形成される。
具体的には、電解処理においては、基材1とアノード20a,20bとの間に電流が流れることにより、基材1表面近傍において、電解処理液31中の水が電気分解されて水素が発生し、これにより、基材1表面近傍におけるpHが上昇し、pHが上昇することにより、電解処理液31中に含まれるZrイオンが酸化物となって析出することで、基材1上にZr酸素化合物皮膜が形成される。
そして、基材1は、アノード20a,20bの作用により電解処理が施された後、シンクロール12により進行方向を変えられ、電解処理液31中において、アノード20c,20dとそれぞれ対峙することで、再度、電解処理が施され、基材1上にさらにZr酸素化合物皮膜が形成される。その後、基材1は、コンダクターロール13により、電解処理槽30から引き上げられる。本実施形態では、このようにして、電解処理槽30による基材1に対する電解処理が行われる。
なお、本実施形態においては、Zr酸素化合物皮膜の皮膜量は、Zr酸素化合物皮膜に含まれるZrの重量で30mg/m以上であればよいが、好ましくは50mg/m以上、より好ましくは70mg/m以上である。Zr酸素化合物皮膜の皮膜量をZrの重量で30mg/m未満とした場合には、基材1上にZr酸素化合物皮膜を形成して得られる表面処理鋼板を、DR缶などのツーピース缶として成形加工する場合に、缶側壁部が薄く延ばされるため、缶側壁部の一部で基材が露出してしまい、飲食品物を缶に充填した際に腐食の起点になり易く、耐食性が低下してしまう傾向にある。
なお、Zr酸素化合物皮膜のZr量の上限は、特に限定されないが、好ましくは300mg/m以下である。Zr量を増加させすぎると、基材1上に形成したZr酸素化合物皮膜の上に、有機樹脂層を形成する場合に、Zr酸素化合物皮膜と有機樹脂層との加工密着性が低下する傾向にある。
電解処理を行う際における電流密度としては、特に限定されないが、好ましくは1〜30A/dmである。電流密度を上記範囲とすることにより、基材1上に良好にZr酸素化合物皮膜を形成することができる。
電解処理を行う際におけるZr酸素化合物皮膜の形成速度としては、特に限定されないが、単位面積および単位時間当たりのZr量で、好ましくは70mg/(m・sec)以上である。Zr酸素化合物皮膜の形成速度を70mg/(m・sec)未満とした場合には、必要な量のZr酸素化合物皮膜を形成するために、電解処理槽30を増設したり、表面処理ライン100のライン速度を低下させる必要があり、表面処理鋼板の生産効率が低下してしまう。
本実施形態の表面処理ライン100においては、以上のようにして電解処理が行われる。次いで、表面処理ライン100で用いる電解処理液31に対して、第1補給液および第2補給液を補給する方法を説明する。
本実施形態においては、図1に示すように、循環槽50内の電解処理液31に対して、第1補給液槽70からポンプ71により、フッ化ジルコニウム化合物(A)を含有する第1補給が補給され、第2補給液槽80からポンプ81により、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を含有する第2補給が補給される。
第1補給に含まれるフッ化ジルコニウム化合物(A)としては、特に限定されないが、たとえば、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコン水素酸などを用いることができる。
第1補給液におけるフッ化ジルコニウム化合物(A)の含有量は、第1補給液におけるZrイオンの濃度で10,000〜250,000重量ppmとすればよいが、好ましくは25,000〜100,000重量ppmである。
第1補給液のpHは、5以下であればよいが、より好ましくは3以下である。
また、第1補給液には、上述したフッ化ジルコニウム化合物(A)に加えて、フッ化ジルコニウム化合物(A)の溶解性を向上させるために、硝酸水溶液やフッ化水素酸などを添加してもよい。
第2補給液に含まれるフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)としては、特に限定されないが、たとえば、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどの塩基性炭酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウムなどを用いることができる。
第2補給液におけるフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)の含有量は、第2補給液におけるZrイオンの濃度で10,000〜200,000重量ppmとすればよいが、好ましくは100,000〜200,000重量ppmである。
第2補給液のpHは、5以下であればよいが、より好ましくは2以下である。
また、第2補給液には、上述したフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)に加えて、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)の溶解性を向上させるために、硝酸水溶液などを添加してもよい。
本実施形態においては、電解処理液31に対して、フッ素を含有するフッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた第1補給液と、フッ素を含有しないフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた第2補給液とを別々に補給することにより、表面処理ライン100にて電解処理を行っている間における電解処理液31中のZrイオン濃度、遊離Fイオンあるいは硝酸イオン濃度を、適切に調整することができる。
すなわち、電解処理液31においては、電解処理が連続的に行われることで、電解処理液31中のZrイオンがZr酸素化合物として析出することで消費され、Zrイオン濃度が低下し、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性が低下していってしまう。加えて、電解処理液31においては、Zrイオンが消費されることで、Zrイオンと錯イオンを形成していたFイオンが遊離Fイオンとなり、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が上昇し、これにより、基材1が過度にエッチングされてしまい、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性がさらに低下してしまう。
そのため、連続して適切に電解処理を行うためには、電解処理液31中のZrイオン濃度、遊離Fイオン濃度あるいは硝酸イオン濃度を、適切に制御する必要がある。
ここで、従来においては、電解処理液31に対して、フッ素を含有するフッ化ジルコニウム化合物を溶解させた補給液を、単独で供給する方法が知られている。しかしながら、このような方法では、電解処理液31中のZrイオンの濃度の調整は行うことができるものの、補給液を供給することで電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が増大しすぎてしまい、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性が低下してしまうという問題がある。
また、電解処理液31に対して、フッ素を含有しないフッ素非含有ジルコニウム化合物を溶解させた補給液を、単独で供給する方法も考えられるが、この方法においては、電解処理液31中のZrイオンの濃度の調整は行うことができるものの、補給液を供給することで電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が低下しすぎてしまい、電解処理液31にてZrイオンと錯イオンを形成するFイオンの量が減少し、Zrイオンの溶解性が減少することで、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性が低下してしまうという問題がある。
あるいは、このようなフッ化ジルコニウム化合物と、フッ素非含有ジルコニウム化合物とをいずれも含有する補給液を電解処理液31に供給する方法も考えられるが、このような補給液のみを用いたとしても、電解処理を行っている間における電解処理液31中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を、同時に適切な値に調整することは困難であるという問題もある。
これに対し、本実施形態によれば、フッ素を含有するフッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた第1補給液と、フッ素を含有しないフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた第2補給液とを、電解処理液31に対して、それぞれ供給し、この第1補給液および第2補給液の供給量をそれぞれ調整してバランスさせることにより、表面処理ライン100にて電解処理を行っている間における電解処理液31中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を、適切に制御することができ、これにより、電解処理液31の安定性が向上するとともに、電解処理で得られるZr酸素化合物皮膜の安定性も向上し、基材1上に連続して安定的にZr酸素化合物皮膜を形成することができる。
特に、本実施形態においては、電解処理液31としてZrイオンを3,000〜10,000重量ppmと高い濃度で含有する処理液を用い、この電解処理液31に対して上記第1補給液および第2補給液を補給することで、電解処理液31中のZrイオン濃度を上記範囲に制御することができるため、表面処理ライン100のライン速度(基材1の搬送速度)を高速にした場合においても、適切に基材1上にZr酸素化合物皮膜を形成することができ、表面処理鋼板の生産効率を向上させることができる。
なお、第1補給液および第2補給液のZrイオン濃度は、それぞれ上述した値とすればよいが、第1補給液および第2補給液の混合溶液のZrイオン濃度、すなわち、電解処理液31に補給する第1補給液および第2補給液を混合させたとした場合の混合溶液のZrイオン濃度は、補給前の電解処理液31におけるZrイオンの濃度に近い値となるように調整することが好ましい。
また、第1補給液に用いるフッ化ジルコニウム化合物(A)、および第2補給液に用いるフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)としては、第1補給液および第2補給液の補給を行う前の電解処理液31に含有されているZr化合物と同じものを用いるのが好ましい。たとえば、第1補給液および第2補給液の補給を行う前の電解処理液31において、Zrイオンを形成するためのZr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウム、オキシ硝酸ジルコニウムのいずれか、または両方を用いた場合には、第1補給液のフッ化ジルコニウム化合物(A)としてはフッ化ジルコニウムアンモニウムを用いることが好ましく、第2補給液のフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)としてはオキシ硝酸ジルコニウムを用いることが好ましい。これにより、本実施形態においては、第1補給液および第2補給液により補給されるZr化合物の溶解性を向上させることができる。
第1補給液および第2補給液の補給量は、計測装置40により測定された遊離Fイオン濃度の情報に基づいて設定することができる。すなわち、計測装置40は、上述したように、電解処理液31の遊離Fイオン濃度などを測定することができるものであるため、表面処理ライン100にて電解処理を行っている間に、計測装置40によって測定された遊離Fイオン濃度の情報に基づき、第1補給液および第2補給液の補給量を設定することができる。なお、図1においては、計測装置40は、ポンプ60と循環槽50との間に設置されている例を示したが、計測装置40の設置位置は、特に限定されず、たとえば、循環槽50に直接接続され、循環槽50内の電解処理液31を測定できるような位置に設置してもよい。
あるいは、第1補給液および第2補給液の補給量としては、予め表面処理ライン100にて電解処理を行った際における電解処理液31中のZrイオンおよび遊離Fイオンの濃度の減少速度を記録しておき、記録したZrイオンおよび遊離Fイオンの濃度の減少速度に基づいて、第1補給液および第2補給液の補給量を予め設定しておいてもよい。
また、第1補給液および第2補給液の補給量は、表面処理ライン100にて電解処理を行う際における、電解処理液31の持出し(電解処理液31が基材1に付着したまま電解処理槽30外に持出されること)や蒸発などによる減少量を考慮して設定される。たとえば、電解処理液31の減少量が、0.1〜1.5L/min程度の量である場合には、第1補給液および第2補給液の補給量の合計を、この電解処理液31の減少量と同程度となるように調整する。この際においては、電解処理液31の減少量と、補給量とが同程度となるように、第1補給液および第2補給液におけるZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度を予め調整しておくようにする。
本実施形態の表面処理ライン100においては、図1に示すように、第1補給液の補給は、第1補給液槽70から第1補給液をポンプ71によって押出すことにより行うことができ、また、第2補給液の補給は、第2補給液槽80から第2補給液をポンプ81によって押出すことにより行うことができるが、このような第1補給液および第2補給液の補給は、表面処理ライン100にて電解処理が行われている間に、電解処理液31中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度が実質的に変動しないように、継続的に行う。
具体的には、第1補給液および第2補給液の補給は、ポンプ71,81として定量ポンプなどを用いて連続的に行ってもよいし、たとえば、電解処理液31中のZrイオン濃度の変動が±10%以内であり、遊離Fイオン濃度の変動が±50%以内となるように制御しながら、断続的に行ってもよいが、電解処理液31の安定性およびZr酸素化合物皮膜形成の安定性を向上させることができるという観点より、連続的に行うことが好ましい。
また、第1補給液および第2補給液の補給を行う際には、補給により電解処理液31のpHが変動することとなるため、第1補給液および第2補給液の補給と併せて、電解処理液31に対して、硝酸水溶液やアンモニア水などのpH調整剤を添加することが好ましい。
電解処理液31のpHは、上述したように2.0〜4.0であればよいが、好ましくは2.5〜4.0である。電解処理液31のpHを上記範囲に制御することにより、電解処理液31は、水溶液中の成分の安定性、およびZr酸素化合物の析出効率に優れたものとなる。
また、第1補給液および第2補給液の補給の形態としては、図1に示すように、第1補給液槽70および第2補給液槽80から、直接、循環槽50に補給するものとしてもよいが、図2に示す表面処理ライン100aのように、第1補給液槽70および第2補給液槽80から、第1補給液および第2補給液を混合するための槽であるミックスタンク90を介して、ポンプ91により循環槽50に補給するような形態としてもよい。これにより、第1補給液および第2補給液と、電解処理液31とが混合し易くなり、補給を安定的に行うことができるようになる。
なお、電解処理液31に供給するための補給液に2種類以上のZr化合物を混合させる場合には、Zr化合物の組合せや、補給液のpHによっては、析出pHの違いやフッ素錯体構造が崩れるため補給液中でZr化合物の析出や沈殿が発生してしまうが、本実施形態においては、第1補給液および第2補給液を構成するフッ化ジルコニウム化合物(A)およびフッ素非含有ジルコニウム化合物(B)として、混合時における析出や沈殿を抑制することができるZr化合物を選択することにより、図2に示すように、ミックスタンク90を介した補給を行うことが可能となる。
この際においては、Zr化合物の析出の程度が小さく、第1補給液および第2補給液の混合溶液がミックスタンク90内でわずかに白濁する程度であれば、循環槽50内の電解処理液31に補給を行う際に、電解処理液31中の遊離Fイオンが錯化剤として作用して、混合溶液中のZr化合物を溶解させることができる。
また、第1補給液および第2補給液をミックスタンク90で混合する際においては、Zr化合物の沈殿を抑制するために、pH調整剤を用いて、第1補給液および第2補給液のpHを適宜調整してもよい。
さらに、図3の表面処理ライン100bに示されるように、電解処理液31を電解処理槽30と循環槽50との間で循環させながら、循環槽50内の電解処理液31の一部を、ポンプ90によって逆浸透膜処理装置91に流入させ、逆浸透膜処理装置91内に備えられた逆浸透膜によって逆浸透膜処理することで、Zrイオンを濃縮させた濃縮液と、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分を含む透過液とに分離し、この透過液を透過液槽92に送ることで廃棄し、上記濃縮液のみを、循環槽50内に戻し、電解処理槽30と循環槽50との間を循環している電解処理液31に混合してもよい。これにより、電解処理液31中のZr酸素化合物皮膜の形成を阻害する可能性のある非皮膜化成分の一部を、逆浸透膜処理装置91によって透過液として分離し、除去することが出来る。
この除去により、補給剤あるいはpH調整剤に含まれる硝酸イオンも電解処理液31中に蓄積していくと、遊離Fイオン濃度が上昇した場合と同様に、基材1が過度にエッチングされてしまい、基材1上へのZr酸素化合物皮膜の形成性がさらに低下してしまうという問題を解決することができる。
本実施形態の表面処理ライン100bにおいて、逆浸透膜処理装置91により逆浸透膜処理を行う方法について詳細に説明する。
図3に示す表面処理ライン100bにおいて、電解処理液31は、上述したように、電解処理槽30と循環槽50との間を循環するが、この際に、循環槽50内の電解処理液31の一部が、ポンプ90により、逆浸透膜処理装置91に送られ、逆浸透膜処理装置91により、逆浸透膜処理が行われる。
具体的には、ポンプ90により、その浸透圧以上の圧力で押出された電解処理液31が、逆浸透膜処理装置91内に供えられた逆浸透膜を透過することにより、逆浸透膜処理が行われ、電解処理液31を、Zr酸素化合物皮膜の形成に必要なZrイオンを濃縮させた濃縮液と、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分を含む透過液とに分離する。そして、逆浸透膜処理装置91は、逆浸透膜処理により分離した濃縮液を循環槽50に戻し、一方、逆浸透膜処理により分離した透過液を透過液槽92に送ることで廃棄する。これにより、本実施形態においては、電解処理液31から、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分を有効に除去することができ、Zr酸素化合物皮膜の形成をさらに安定化させることができるとともに、電解処理液31中のZrイオンを再利用することができ、コスト的に有利になる。
たとえば、電解処理液31のZrイオンを形成するためのZr化合物として、オキシ酢酸ジルコニウムや、フッ化ジルコニウムアンモニウムを用いた際には、電解処理液31には、Zrイオンの対イオンである硝酸イオンや、アンモニウムイオンが、上述した過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分として存在することとなる。そして、このような過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分は、Zr酸素化合物皮膜が形成される際においてもほとんど消費されないため、電解処理液31中における過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度は、Zr酸素化合物皮膜として消費されていくZrイオンの濃度に対して大きくなっていく。
このような過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分である硝酸イオンは、電解処理液31中において、Zrイオンに対する濃度が上昇しすぎると、電解処理液31中で基材1を過度にエッチングさせてしまい、これにより、基材1上にZr酸素化合物皮膜が形成され難くなり、Zr化合物皮膜の形成を阻害する傾向にある。
すなわち、表面処理ライン100にて連続的に電解処理を行いながら、電解処理液31に対して上述した補給剤を供給していくと、電解処理液31中では、電解処理によるZr酸素化合物皮膜の形成によって、Zrイオンが次々に消費される一方、これらの対イオンであり、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分である硝酸イオンや、アンモニウムイオンなどは、ほとんど消費されず、これにより、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度が、Zrイオンの濃度に対してより大きくなってしまう。
また、電解処理液31には、上述したpH調整剤や、電解処理液31の導電率を向上させるための電解質が、適宜添加されるため、これらに由来する硝酸イオンやアンモニウムイオンなども、過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分として電解処理液31中に加わり、より過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度が大きくなる。
そのため、本実施形態においては、表面処理ライン100bにて電解処理を行っている間に、電解処理液31の一部を取り出し、逆浸透膜処理装置91によって逆浸透膜処理を行うことにより、電解処理液31を、上記硝酸イオンおよびアンモニウムイオンのような過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分を多く含む透過液と、Zrイオンを多く含む濃縮液とに分離し、この透過液を除去するとともに、この濃縮液を電解処理液31に戻すことにより、電解処理液31中における上記硝酸イオンおよびアンモニウムイオンのような過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度を低下させることができ、Zr酸素化合物皮膜の形成の安定性を向上させることができる。
本実施形態においては、逆浸透膜処理装置91としては、内部に備えられている逆浸透膜により、電解処理液31を、上述した濃縮液と透過液とに適切に分離することができるものであれば何でもよいが、逆浸透膜処理装置91内の逆浸透膜は、濃度2.0g/Lの塩化ナトリウム水溶液を透過させた場合における、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンそれぞれの透過率が、好ましくは60重量%以上である。逆浸透膜の上記透過率が60重量%未満である場合には、Zrイオンが、逆浸透膜を透過し易くなってしまい、透過液として廃棄されてしまうこととなるため、Zrイオンの再利用の効率が低下してしまう。なお、逆浸透膜としては、たとえば、市販されている逆浸透膜(商品名「NF膜モジュールPTW」(ポリテックス社製))などを用いることができる。
逆浸透膜処理装置91の形状としては、特に限定されないが、たとえば、逆浸透膜、メッシュスペーサ、透過液流路材を、透過液集水パイプに巻き付けた形状のものを用いることができる。
逆浸透膜処理装置91の規模やろ過面積については、特に限定されないが、電解処理液31における硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度に応じて、適宜設計すればよい。
また、逆浸透膜処理装置91により逆浸透膜処理を行う際の圧力(すなわち、電解処理液31により、逆浸透膜処理装置91の逆浸透膜に加える圧力)は、好ましくは0.1〜1.0MPa、より好ましくは0.1〜0.4MPaである。逆浸透膜処理を行う際の圧力が0.1MPaに満たない場合には、電解処理液31を透過液および濃縮液に分離する際の分離が不十分となってしまう場合があり、上述した過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の除去効果が低下してしまう傾向にある。逆浸透膜処理を行う際の圧力が0.4MPaを超える場合には、圧力が高すぎることにより逆浸透膜処理装置91に負荷がかかり、逆浸透膜処理装置91が破損してしまう可能性がある。
なお、逆浸透膜処理によって分離される透過液の量は、逆浸透膜処理を行う際の圧力に応じて変化するが、分離させる透過液の量が大きすぎると、電解処理液31中に存在する各成分の濃度変化が大きくなり、これにより、電解処理によるZr酸素化合物皮膜の形成量が不均一になり易くなる。一方、分離させる透過液の量が少なすぎると、上述した硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の除去効果が低下してしまうこととなる。
本実施形態では、逆浸透膜処理装置91において、逆浸透膜処理を行う際の圧力およびろ過面積を調整することで、分離される透過液および濃縮液の量を制御することができ、これにより、電解処理液31中の各成分の濃度変化を抑制し、Zr酸素化合物皮膜の形成量を均一なものとすることができる。
なお、本実施形態においては、逆浸透膜処理装置91による逆浸透膜処理の前処理として、逆浸透膜処理装置91に供給される電解処理液31を、粗ろ過し、電解処理液31中に存在する粒子状の不純物を除去してもよい。
逆浸透膜処理装置91による逆浸透膜処理の前処理として、粗ろ過装置により、電解処理液31を粗ろ過することにより、逆浸透膜処理装置91の寿命を延ばすことができ、コスト的に有利になる。
粗ろ過装置としては、特に限定されないが、たとえば、市販のバグフィルター、カートリッジフィルター、ウルトラフィルター(UF)などを、単独または組み合わせて用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
<電解処理液31の成分分析および物性測定>
各実施例および各比較例で用いた電解処理液31について、電解処理を行っている間の所定のタイミングで、電解処理槽30から循環槽50に流れた電解処理液31を、計測装置40により採取し、採取した電解処理液31のZrイオン濃度、全Fイオン濃度(錯イオンを形成しているFイオン、および遊離Fイオンを合計した濃度)、Feイオン濃度、硝酸イオン濃度、pH、導電率(EC)を測定した。なお、Zrイオン濃度およびFeイオン濃度はICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPE−9000)を用いて元素としての濃度を測定し、全Fイオン濃度および硝酸イオン濃度の測定はイオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、DX−500)を、pHはpHメーター(堀場製作所社製)を、導電率は導電率計(ニッコー・ハンセン社製、CyberScan CON110)をそれぞれ用いて行った。
<電解処理液31の遊離Fイオン濃度の測定>
各実施例および各比較例で用いた電解処理液31について、電解処理を行っている間の所定のタイミングで、電解処理槽30から循環槽50に流れた電解処理液31を、計測装置40により採取し、採取した電解処理液31を、硝酸水溶液またはアンモニア水を用いてpH3.0とし、温度を25℃に調整した後、ポータブルイオン計(東亜ディーケーケー社製、IM−32P(Fイオン電極:F−2010))を用いて、イオン電極法により遊離Fイオン濃度を測定した。
<Zr酸素化合物皮膜中のZr量の測定>
鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成して得られた表面処理鋼板の表面について、蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX100e)により、Zr酸素化合物皮膜に含まれるZr元素としての量を測定した。
<電解処理の処理安定性(Zr)>
Zrイオンを含む電解処理液31を用いて電解処理を行う際に、後述する参考例1の条件を基準として、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度あるいは硝酸イオン濃度を変化させた際におけるZr酸素化合物皮膜の形成性を以下の基準で判定し、電解処理の処理安定性(Zr)を評価した。なお、電解処理の処理安定性(Zr)の評価は、後述する実施例、比較例および参考例のうち、参考例1〜9についてのみ行った。
○:形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量が100mg/m±20%の範囲であった。
×:形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量が100mg/m±20%の範囲を超えていた。
<クロスカット耐食性の評価>
表面処理鋼板の一方の面上に有機樹脂層を形成して得られた有機樹脂被覆鋼板について、以下のようにしてクロスカット耐食性の評価を行った。まず、有機樹脂被覆鋼板の有機樹脂層が形成された面に対し、カッターを用いて、素地である鋼板まで達するようにして長さ4cmのクロスカット傷を入れた。次いで、クロスカット傷を入れた有機樹脂被覆鋼板を、市販のコーヒー飲料(味の素ゼネラルフーヅ社製、「Blendy・ボトルコーヒー 低糖」)に浸漬させた状態で、温度:37℃、保持期間:1ヶ月の条件にて保持した。なお、この際においては、コーヒー飲料にカビが発生しないように、コーヒー飲料を適宜新しいものに取り替えた。その後、クロスカット部分における有機樹脂被覆鋼板の変色部分の範囲を以下の基準で判定することにより、クロスカット耐食性を評価した。なお、クロスカット耐食性は、有機樹脂被覆鋼板における有機樹脂層の密着性を示すものであり、3点以上である有機樹脂被覆鋼板は、表面に傷が入った際においても、傷部分における液体の侵入を防ぐことができるものであり、耐食性に優れ、金属缶などの用途に特に好適に用いることができることを示している。また、クロスカット耐食性は、後述する実施例、比較例および参考例のうち、参考例6〜9についてのみ行った。
5点:変色部分が、クロスカット部分から半径0.5mm未満
4点:変色部分が、クロスカット部分から半径0.5mm以上、1.0mm未満
3点:変色部分が、クロスカット部分から半径1.0mm以上、2.0mm未満
2点:変色部分が、クロスカット部分から半径2.0mm以上、3.0mm未満
1点:変色部分が、クロスカット部分から半径3.0mm以上
《実施例1》
原板として、低炭素冷延鋼板(厚さ0.2mm、幅1,000mm)を準備した。そして、準備した鋼板について、市販の脱脂剤(日本クエーカーケミカル社製、フォーミュラー 618−TK2)を溶解させたアルカリ水溶液中で電解脱脂した後、水洗し、続いて硫酸水溶液に浸漬して酸洗した後、図1に示す表面処理ライン100を用いて、下記条件にて電解処理を行い、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成した。次いで、Zr酸素化合物皮膜を形成した鋼板を水洗し、乾燥させることで表面処理鋼板を得た。
電解処理液31の組成:Zr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解させ、さらに硝酸水溶液を添加して得た、Zrイオン濃度6,000重量ppm、全Fイオン濃度7,000重量ppm、硝酸イオン濃度2,000重量ppmの水溶液
電解処理液31のpH:3.0(アンモニアにてpH調整を実施)
電解処理液31の温度:40℃
ライン速度(鋼板の移動速度):150m/min
鋼板における電流密度:10A/dm
通電時間:0.6秒
停止時間:0.1秒
なお、上述した通電時間は、表面処理ライン100において、鋼板がアノード20a,20bの近傍、またはアノード20c,20dの近傍を通過している時間、すなわち、鋼板に対して電解処理が施されている時間を示している。停止時間は、鋼板に対してアノード20a,20bにより電解処理が施された後、次のアノード20c,20dによる電解処理が行われるまでの時間を示している。
また、表面処理鋼板の作製は、電解処理の処理面積が40,000mとなるまで連続して行った。本実施例においては、電解処理を行っている間に、電解処理液31に対して、下記条件にて、第1補給液槽70から第1補給液を、第2補給液槽80から第2補給液をそれぞれ連続的に補給した。また、電解処理液31に対しては、電解処理液31のpHが3.0付近となるように、硝酸水溶液またはアンモニア水を適宜添加した。
第1補給液:フッ化ジルコニウムアンモニウムをZrイオン濃度で50,000重量ppmとなるように溶解させた水溶液
第1補給液の補給量:0.8L/min
第2補給液:オキシ硝酸ジルコニウムをZrイオン濃度で150,000重量ppmとなるように溶解させた水溶液
第2補給液の補給量:0.1L/min
さらに、電解処理を行っている間には、電解処理を行った処理面積が、表1に示すように、4,500m、7,000m、20,000m、40,000mとなったタイミングで、それぞれ、上述した方法にしたがって、Zrイオン濃度、全Fイオン濃度、遊離Fイオン濃度、硝酸イオン濃度、pH、導電率(EC)を測定した。また、得られた表面処理鋼板については、上述した方法にしたがって、Zr酸素化合物皮膜中のZr量の測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005916807
《実施例2》
第1補給液の補給量を1.1L/min、第2補給液の補給量を0.09L/minに変更した以外は、実施例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。なお、実施例2では、表面処理鋼板の作製は、電解処理の処理面積が56,000mとなるまで連続して行い、電解処理を行った処理面積が、表2に示すように、6,000m、16,000m、42,000m、56,000mとなったタイミングで各評価を行った。
Figure 0005916807
《比較例1》
循環槽50内の電解処理液31に対して、上記第2補給液を補給することなく、上記第1補給液のみを1.3L/minの補給量で補給した以外は、実施例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。なお、比較例1では、表面処理鋼板の作製は、電解処理の処理面積が36,000mとなるまで連続して行い、電解処理を行った処理面積が、表3に示すように、8,200m、36,000mとなったタイミングで各評価を行った。
Figure 0005916807
《比較例2》
循環槽50内の電解処理液31に対して、第1補給液を1.1L/minの補給量で補給し、上記第2補給液に代えて、固体補給剤として粉末の炭酸ジルコニウムを1分間当たり35g補給した以外は、実施例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。なお、比較例2では、表面処理鋼板の作製は、電解処理の処理面積が25,000mとなるまで連続して行い、電解処理を行った処理面積が、表4に示すように、16,000m、25,000mとなったタイミングで各評価を行った。
Figure 0005916807
《比較例3》
第1補給液および第2補給液の補給を、連続して行わずに、電解処理の処理面積が10,000mとなったタイミングで、1度だけ行うようにした以外は、実施例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、同様に評価を行った。結果を表5に示す。なお、第1補給液および第2補給液の補給量は、電解処理液31中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度が、電解処理開始時の値に近い値となる量とした。また、比較例3では、表面処理鋼板の作製は、電解処理の処理面積が20,000mとなるまで連続して行い、電解処理を行った処理面積が、表5に示すように、10,000m、20,000mとなったタイミングで各評価を行った。さらに、比較例3では、表5に示すように、電解処理液31における化合物の析出の有無を、電解処理液31の外観を観察することで確認した。
Figure 0005916807
表1,2に示すように、フッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた第2補給液とを継続的に補給し、電解処理液31中のZrイオン濃度を3,000〜10,000重量ppmとした実施例1,2は、電解処理液中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度が、電解処理の処理面積によってほとんど変化せず、安定していた。さらに、実施例1,2は、Zr酸素化合物皮膜のZr量を125〜135mg/mと十分な量とすることができるとともに、形成したZr酸素化合物皮膜のZr量に基づいて算出したZr酸素化合物の形成速度は、70mg/(m・sec)以上の高速であり、Zr酸素化合物の形成性に優れるものであった。
一方、表3に示すように、フッ化ジルコニウム化合物(A)を溶解させた第1補給液のみを補給した比較例1は、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が、電解処理の処理面積が大きくなるにつれて増加してしまい、形成したZr酸素化合物皮膜のZr量に基づいて算出したZr酸素化合物の形成速度が56mg/(m・sec)と低速となってしまった。また、表4に示すように、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)を溶解させた第2補給液に代えて、粉末の炭酸ジルコニウムを補給した比較例2は、電解処理液31中のZrイオン濃度および遊離Fイオン濃度は、電解処理の処理面積によらず安定していたが、電解処理槽30および循環槽50の底には沈殿物が見られ、補給した炭酸ジルコニウムの一部が電解処理液31に溶解していないことが分かった。さらに、表5に示すように、上記第1補給液および第2補給液の補給を継続的に行わなかった比較例3は、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が、電解処理の処理面積が大きくなるにつれて増加してしまい、形成したZr酸素化合物皮膜のZr量に基づいて算出したZr酸素化合物の形成速度が40mg/(m・sec)と低速となってしまった。加えて、比較例3では、電解処理液31において白濁や沈殿が確認され、電解処理液31中において化合物が析出していたことが確認された。このような化合物の析出は、第1補給液および第2補給液の補給が遅れたことに起因して発生したものと考えられる。すなわち、第1補給液および第2補給液の補給の遅れにより、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度が大きくなり、これにより、基材1が過度にエッチングされてFeイオンが溶出し、このFeイオンが遊離Fイオンと反応してフッ化鉄になり、第1補給液および第2補給液中のZr化合物を溶解させるのに必要な遊離Fイオンが減少したことにより、Zr化合物が析出したことに起因していると考えられる。このような析出物は板表面に異物として付着し、板の外観不良となるため好ましくない。
《実施例3》
原板として、低炭素冷延鋼板(厚さ0.2mm、幅200mm)を準備した。そして、準備した鋼板について、市販の脱脂剤(日本クエーカーケミカル社製、フォーミュラー 618−TK2)を溶解させたアルカリ水溶液中で電解脱脂した後、水洗し、続いて硫酸水溶液に浸漬して酸洗した後、図3に示す表面処理ライン100bを用いて、下記条件にて電解処理を行い、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成した。なお、電解処理は、鋼板上に形成するZr酸素化合物皮膜がZr量で片面80mg/mとなるようにして、電解処理の処理面積が2,000mとなるまで連続して行った。次いで、Zr酸素化合物皮膜を形成した鋼板を水洗し、乾燥させることで表面処理鋼板を得た。
電解処理液31の組成:Zr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解させて得た、Zrイオン濃度6000重量ppm、全Fイオン濃度7600重量ppm、硝酸イオン濃度13230重量ppmの水溶液
電解処理液31の温度:40℃
ライン速度(鋼板の移動速度):20m/min
鋼板における電流密度:10A/dm
トータル電解処理時間:1.8秒(0.6秒通電、1.2秒通電停止のサイクルを2回繰り返した際における、通電および通電停止の合計時間。)
また、本実施例においては、電解処理を行っている間に、電解処理液31に対して、電解処理液31のpHが3.0付近となるように、硝酸水溶液またはアンモニア水を適宜添加しながら、第1補給液槽70および第2補給液槽80により、Zr化合物を溶解させた補給液を補給した。具体的には、下記条件にて、第1補給液槽82から第1補給液を、第2補給液槽84から第2補給液をそれぞれ連続的に補給した。
第1補給液:フッ化ジルコニウムアンモニウムをZrイオン濃度で50g/Lとなるように溶解させた水溶液
第1補給液の補給量:電解処理による処理面積1m当たり、Zr量で0.03gに相当する量を補給。
第2補給液:硝酸ジルコニウムをZrイオン濃度で150g/Lとなるように溶解させた水溶液
第2補給液の補給量:電解処理による処理面積1m当たり、Zr量で0.1gに相当する量を補給。
さらに、電解処理を行っている間には、図3に示す表面処理ライン100bに示すように、循環槽50中の電解処理液31の一部を、ポンプ90により循環槽50と逆浸透膜処理装置91との間に循環させることで、逆浸透膜処理装置91による逆浸透膜処理を行った。
逆浸透膜:ポリテックス社製 型番:PTW(濃度2.0g/Lの塩化ナトリウム水溶液を透過させた際におけるナトリウムイオンおよび塩化物イオンの透過率が60重量%の逆浸透膜。)
逆浸透膜面積:6m
逆浸透膜処理温度:20℃
圧力:0.1〜0.3MPa
濃縮液流量:6〜9L/min
透過液流量:1.0〜1.5L/min
なお、本実施例においては、電解処理を行った処理面積が、表6に示すように、1,000m、2,000mとなったタイミングで、それぞれ、循環槽50内の電解処理液31について、上述した方法にしたがって、成分分析および物性測定を行った。また、得られた表面処理鋼板については、上述した方法にしたがって、Zr酸素化合物皮膜中のZr量を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0005916807
電解処理を行っている間に、電解処理液31の一部を、逆浸透膜処理装置91により逆浸透膜処理した実施例3においては、表6に示すように、電解処理の途中のいずれのタイミングで測定した電解処理液31についても、Zrイオン濃度、硝酸イオン濃度、全Fイオン濃度、および遊離Fイオン濃度がほぼ一定に保たれており、加えて、形成したZr酸素化合物皮膜のZr量もほぼ一定となっていたため、電解処理の処理性に優れていることが確認された。
《参考例1》
原板として、低炭素冷延鋼板(厚さ0.2mm、幅1,000mm)を準備した。そして、準備した鋼板について、市販の脱脂剤(日本クエーカーケミカル社製、フォーミュラー 618−TK2)を溶解させたアルカリ水溶液中で電解脱脂した後、水洗し、続いて硫酸水溶液に浸漬して酸洗した後、図1に示す表面処理ライン100を用いて、下記条件にて電解処理を行い、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成した。次いで、Zr酸素化合物皮膜を形成した鋼板を水洗し、乾燥させることで表面処理鋼板を得た。
電解処理液31の組成:Zr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解させ、さらに硝酸水溶液を添加して得た、Zrイオン濃度5,500重量ppm、全Fイオン濃度7,000重量ppm、硝酸イオン濃度2,000重量ppm、遊離Fイオン濃度33重量ppmの水溶液
電解処理液31のpH:3.0(アンモニアにてpH調整を実施)
電解処理液31の温度:40℃
ライン速度(鋼板の移動速度):150m/min
鋼板における電流密度:10A/dm
通電時間:0.6秒
停止時間:0.1秒
なお、本参考例においては、電解処理を開始する前の電解処理液31について、上述した方法にしたがって、成分分析および物性測定を行った。また、本参考例において得られた表面処理鋼板について、上述した方法にしたがって、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定、および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表7に示す。
《参考例2》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する遊離Fイオン濃度を調整することで、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度を75重量ppmとした以外は、参考例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表7に示す。
《参考例3》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する遊離Fイオン濃度を調整することで、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度を115重量ppmとした以外は、参考例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表7に示す。
《参考例4》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する遊離Fイオン濃度を調整することで、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度を145重量ppmとした以外は、参考例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表7に示す。
《参考例5》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する遊離Fイオン濃度を調整することで、電解処理液31中の遊離Fイオン濃度を160重量ppmとした以外は、参考例1と同様にして表面処理鋼板を作製し、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表7に示す。
Figure 0005916807
表7に示すように、電解処理液31における、遊離Fイオン濃度を150ppm以下とした参考例1〜4においては、電解処理の条件(電解処理液31のpHおよび温度、電流密度、トータル電解処理時間)を同一とした場合に、鋼板上に形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量は、同等の値であったため、これにより、Zr酸素化合物皮膜の形成量の制御が容易となり、電解処理の処理安定性に優れていることが確認された。
一方、表7に示すように、電解処理液31における遊離Fイオン濃度が160重量ppmであった参考例5は、上述した参考例1と電解処理の条件(電解処理液31のpHおよび温度、電流密度、トータル電解処理時間)を同一としたにもかかわらず、参考例1と比較して、鋼板上に形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量が少なくなりすぎてしまったため、これにより、Zr酸素化合物皮膜の形成量の制御が難しくなり、電解処理の処理安定性に劣ることが確認された。
これにより、上述した、参考例1〜5によれば、電解処理液31において、遊離Fイオン濃度を150重量ppm以下に制御することにより、形成するZr酸素化合物皮膜の形成量の制御が容易となり、電解処理の処理安定性が安定することが確認された。
《参考例6》
原板として、低炭素冷延鋼板(厚さ0.2mm、幅200mm)を準備した。そして、準備した鋼板について、市販の脱脂剤(日本クエーカーケミカル社製、フォーミュラー 618−TK2)を溶解させたアルカリ水溶液中で電解脱脂した後、水洗し、続いて硫酸水溶液に浸漬して酸洗した後、図1に示す表面処理ライン100のうち、循環槽50を接続していない状態の電解処理槽30により、下記条件にて電解処理を行い、鋼板上にZr酸素化合物皮膜を形成した。次いで、Zr酸素化合物皮膜を形成した鋼板を水洗し、乾燥させることで表面処理鋼板を得た。
電解処理液31の組成:Zr化合物としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解させ、Zrイオン濃度6,000重量ppm、全Fイオン濃度7,600重量ppmとし、さらに硝酸イオン濃度が2,000重量ppmとなるように硝酸水溶液を添加して、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」を3.0とした水溶液
電解処理液31のpH:3.0(アンモニア水を添加することでpH調整)
電解処理液31の温度:40℃
鋼板における電流密度:4A/dm
トータル電解処理時間:7.15秒(0.15秒通電、0.5秒通電停止のサイクルを11回繰り返した際における、通電および通電停止の合計時間。)
なお、本参考例においては、電解処理を開始する前の電解処理液31について、上述した方法にしたがって、成分分析および物性測定を行った。また、本参考例において得られた表面処理鋼板について、上述した方法にしたがって、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定、および電解処理の処理安定性(Zr)の評価を行った。結果を表8に示す。
次いで、得られた表面処理鋼板を、250℃に加熱し、表面処理鋼板の一方の面上に、ラミネートロールを用いて、イソフタル酸を15mol%共重合化してなる無配向のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ20μm)を熱圧着し、直ちに水冷することにより、有機樹脂層を形成した。これにより、本参考例においては、表面処理板の一方の面のみに有機樹脂層が形成され、もう一方の面はZr酸素化合物皮膜が露出した有機樹脂被覆鋼板を得た。次いで、このようにして得られた有機樹脂被覆鋼板について、上述した方法にしたがって、クロスカット耐食性の評価を行った。結果を表8に示す。
《参考例7》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する硝酸水溶液の量を調整することで、電解処理液31中の硝酸イオン濃度を12,000重量ppmとし、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」を0.5とした以外は、参考例6と同様にして表面処理鋼板および有機樹脂被覆鋼板を作製し、同様にして、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定、電解処理の処理安定性(Zr)の評価、ならびにクロスカット耐食性の評価を行った。結果を表8に示す。
《参考例8》
電解処理に用いる電解処理液31に添加する硝酸水溶液の量を調整することで、電解処理液31中の硝酸イオン濃度を14,000重量ppmとし、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」を0.43とした以外は、参考例6と同様にして表面処理鋼板および有機樹脂被覆鋼板を作製し、同様にして、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定、電解処理の処理安定性(Zr)の評価、ならびにクロスカット耐食性の評価を行った。結果を表8に示す。
《参考例9》
電解処理を行う際におけるトータル電解処理時間を5.2秒(0.15秒通電、0.5秒通電停止のサイクルを8回繰り返した際における、通電および通電停止の合計時間。)とした以外は、参考例8と同様にして表面処理鋼板および有機樹脂被覆鋼板を作製し、同様にして、電解処理液31の成分分析および物性測定、Zr酸素化合物皮膜のZr量の測定、電解処理の処理安定性(Zr)の評価、ならびにクロスカット耐食性の評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 0005916807
表8に示すように、電解処理液31における、Zrイオンおよび硝酸イオンの重量濃度の比を、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」で0.45以上とした参考例6,7は、電解処理の条件(電解処理液31のpHおよび温度、電流密度、トータル電解処理時間)を同一とした場合に、鋼板上に形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量は、同等の値であったため、これにより、Zr酸素化合物皮膜の形成量の制御が容易となり、電解処理の処理安定性に優れていることが確認された。また、参考例6,7は、得られた表面処理鋼板の表面に有機樹脂層を形成してなる有機樹脂被覆鋼板について、クロスカット耐食性の評価結果が良好であり、耐食性に優れていることが確認された。
一方、表8に示すように、電解処理液31における「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」が0.45未満であった参考例8は、上述した参考例6と電解処理の条件(電解処理液31のpHおよび温度、電流密度、トータル電解処理時間)を同一としたにもかかわらず、参考例1と比較して、鋼板上に形成されたZr酸素化合物皮膜のZr量が多くなりすぎてしまったため、これにより、Zr酸素化合物皮膜の形成量の制御が難しくなり、電解処理の処理安定性に劣ることが確認された。また、電解処理液31における「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」が0.45未満であった参考例9は、トータル電解処理時間を短くすることで、鋼板上に形成するZr酸素化合物皮膜のZr量を、上述した参考例6と同等の値としたが、クロスカット耐食性の評価結果が悪く、耐食性に劣ることが確認された。
これにより、上述した、参考例6〜9によれば、電解処理液31において、Zrイオンの濃度に対する過剰に存在することで皮膜の形成を阻害する成分の濃度を適切に制御することにより、形成するZr酸素化合物皮膜の形成量の制御が容易となり、電解処理の処理安定性が向上することが確認された。すなわち、上述した実施例3のように、電解処理を行っている間に、電解処理液31の一部に対して、逆浸透膜処理装置91による逆浸透膜処理を施し、電解処理液31中の硝酸イオンの重量濃度を制御することにより、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」を0.45以上とすることができれば、電解処理の処理安定性が向上し、得られる有機樹脂被覆鋼板の耐食性が向上することが確認された。
1…基材
100,100a,100b…表面処理ライン
11,13…コンダクターロール
12…シンクロール
20a,20b,20c,20d…アノード
30…電解処理槽
31…電解処理液
40…計測装置
50…循環槽
60…ポンプ
70…第1補給液槽
80…第2補給液槽
90…ポンプ
91…逆浸透膜処理装置

Claims (7)

  1. 鋼板を、ZrイオンおよびFイオンを含む電解処理液に浸漬させ、電解処理を連続的に行うことにより、前記鋼板上に、Zr酸素化合物を主成分とする皮膜を、該皮膜中のZr量が30mg/m以上となるように形成する表面処理鋼板の製造方法において、
    前記電解処理液は、硝酸イオンを含有し、前記電解処理液中のZrイオンの濃度が3,000〜10,000重量ppm、pHが2〜4であり
    記電解処理液に対して、フッ化ジルコニウム化合物(A)をZrイオンの濃度で10,000〜250,000重量ppmの範囲で含有し、かつ、pHが5以下である第1補給液と、フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)をZrイオンの濃度で10,000〜200,000重量ppmの範囲で含有し、かつ、pHが5以下である第2補給液とを、それぞれ継続的に補給し、
    前記電解処理を連続的に行っている間は、前記電解処理液中におけるZrイオンと硝酸イオンとの重量濃度比を、「Zrイオンの重量濃度/硝酸イオンの重量濃度」で0.45以上に維持することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
  2. 前記フッ化ジルコニウム化合物(A)として、フッ化ジルコニウムアンモニウムを用いることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  3. 前記フッ素非含有ジルコニウム化合物(B)として、オキシ硝酸ジルコニウムを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  4. 前記電解処理液中における遊離Fイオンの濃度を、イオン電極法によりpH3.0、温度25℃の条件にて測定した値で、10〜150重量ppmの範囲に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板上に前記皮膜を形成する際の形成速度を、単位面積および単位時間当たりのZr量で70mg/(m・sec)以上とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
  6. 前記電解処理液の一部を取り出し、逆浸透膜を用いて、透過液と濃縮液とに分離し濃縮液を前記電解処理液に戻す逆浸透膜処理工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
  7. 前記逆浸透膜として、濃度2.0g/Lの塩化ナトリウム水溶液を透過させた場合に、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンの透過率が60重量%以上である逆浸透膜を用いることを特徴とする請求項6に記載の表面処理鋼板の製造方法。
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