JP5915995B2 - 回転慣性質量ダンパー - Google Patents
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まず、図3に示すものは特許文献3(特開2012-7635号公報)の図5に示されているもので、ボールねじのリードが異なる2組のボールねじ機構(第1ボールねじ機構20と第2ボールねじ機構30)をケーシング10内に同軸状態で対向配置した状態で組み込んで、それら2組のボールねじ機構によって1つの回転錘40を回転させることにより、それ自体で回転錘40に対する変位拡大機能および増速機能を有する構成としたものである。
そして、そのケーシング10の内部に、第1ケーシング12に対して連結された第1ボールねじ機構20と、第2ケーシング14に対して連結された第2ボールねじ機構30とが収容され、それら第1ボールねじ機構20と第2ボールねじ機構30に対して回転錘40が連結された構成とされている。
同様に、第2ボールねじ機構30は、第2ねじ軸31と、その第2ねじ軸31に対して第2ボールねじ32を介して螺着された第2ナット33とからなり、第2ねじ軸31の基端が第2ケーシング14の内面に対して回転不能に(したがって制振対象の構造体である第2部材に対して回転不能に)固着され、それに螺着されている第2ナット33はベアリング34を介して第3ケーシング16に対して回転可能かつ軸方向変位不能に支持されている。
この場合、ダンパーストロークをSとすると、第1ボールねじ機構20の作動量(第1ねじ軸21に対する第1ナット23の相対変位量)S1、および第2ボールねじ機構30の作動量(第2ねじ軸31に対する第2ナット33との相対変位量)S2はそれぞれ次式で表され、いずれもダンパーストロークSに対して拡大されることになる。
換言すると、第1ボールねじ機構20と第2ボールねじ機構30はそれぞれのリードLd1、Ld2に応じて大きく作動するが、ダンパー全体としての伸縮量であるダンパーストロークSは、第1ボールねじ機構20の作動量S1と第2ボールねじ機構30の作動量S2との差(絶対値)になる。
その場合においてダンパーストロークS=60mmとした場合、上式より第1ねじ軸21に対する第1ナット23の相対変位量S1=300mm、第2ねじ軸31に対する第2ナット33の相対変位量S2=240mmとなり、回転錘40の所要長さはそれらS1,S2にダンパーストロークSを加えて少なくとも600mm以上とすれば良い。
そこで、回転錘40の長さを必要最少限の600mmとし、回転錘40の外径D1=350mmφ、内径D2=150mmφとすると、回転錘40の質量m=0.37ton、回転慣性モーメントIθ=6.71×10-3ton・m2となるから、その場合の慣性質量ψは下式から10000ton以上にもなる。
これは、図3に示した先行発明のリード差ダンパーにおけるケーシング10を省略するとともに、第1ねじ軸21と第2ねじ軸31とをスリーブ50によって軸方向相対変位可能かつ相対回転不能に連結したことを主眼とするものである。
同様に、第2ボールねじ機構30における第2ねじ軸31の基端にクレビス13を直接的に固定して、その第2ねじ軸31をクレビス13を介して他方の構造体である第2部材(図示せず)に対して相対回転不能に直接的に連結するものとしている。
なお、必要であればクレビス11,13に代えてボールジョイントを用いることも可能であるが、いずれにしても第1部材や第2部材に対する第1ねじ軸21、第2ねじ軸31の相対回転は確実に拘束してそれら第1ねじ軸21、第2ねじ軸31からのトルクを制振対象の構造体に対して伝達する必要があるから、クレビス11,13あるいはそれに代わるボールジョイントとしてはそのような機能を備えたものを用いる必要がある。
なお、図3に示したリード差ダンパーにおけるケーシング10が省略されていることから当然にベアリング24、34も省略されているが、第1ナット23および第2ナット33を回転させるうえでは特に支障がない。
具体的には、第2ねじ軸31の先端部にスリーブ50を同軸状態で固定して、そのスリーブ50内に第1ねじ軸21の先端部を軸方向変位可能に挿入するとともに、図4(b)に示すように第1ねじ軸21の先端部外周面に形成した2本のキー51をスリーブ50内面に形成したキー溝に嵌合させて、それらスリーブ50と第1ねじ軸21との間の相対回転を拘束している。なお、第1ねじ軸21の先端部の周面には、スリーブ50の内面に摺接する2本の補強リング52が形成されている。
これにより、回転錘40の中心孔40a内において第1ねじ軸21と第2ねじ軸31の先端部どうしがスリーブ50を介して相対回転不能(一体回転可能)かつ軸方向相対変位可能な状態で連結されている。
また、第1ねじ軸21とスリーブ50との間の相対回転を2本のキー51によって拘束することにより、第1ねじ軸21とスリーブ50とは十分な曲げ剛性をもって連結されるため、自重による曲げモーメントに対しても第1ねじ軸21と第2ねじ軸31とが軸直交方向に屈曲することなく双方のボールねじ機構が円滑に作動し得るものである。
たとえば、上述したようにLd1=25mm、Ld2=20mmとすれば、それらのリード差を単一のボールねじ機構による従来型のダンパーにおけるリードLdと読み替えられることから、リードLd=5mmのダンパーが実現できたこととなる。従来一般の回転慣性質量ダンパーにおけるボールねじ機構のリードLdは16mm程度であるから、ダンパー負担力(軸力)が同じ場合の反力トルク合力は、リード差ダンパーにおいてはリード比から従来型に比べて5/16=0.31倍と大幅に低減されることになり、これは構造体への負担が十分に小さくなることを意味している。
図1に示す本実施形態の回転慣性質量ダンパーは、図4に示した先行発明のリード差ダンパーをさらに改良してそれに伝達トルク制限機構60を付加したことを主眼とするものであって、(a)は全体概略構成を示す図、(b)は要部拡大図、(c)、(d)は要部断面図である。
なお、図1に示す実施形態の回転慣性質量ダンパーにおける構成要素のうち、図3および図4に示した先行発明のリード差ダンパーと同一の機能を有する共通の構成要素については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
また、(a)に示すように、その錘支持スリーブ61内において第1ねじ軸21と第2ねじ軸31の先端部どうしをスリーブ50を介して相対回転不能かつ軸方向の相対変位可能に連結しており、したがって第1部材と第2部材(図示せず)との間で生じる相対振動によって第1ナット23と第2ナット33と錘支持スリーブ61の全体が第1ねじ軸21および第2ねじ軸31に対して軸方向に相対変位しつつ一体に回転可能としている。
図示例では、(c)に示すように6本の圧縮バネ66を有していてそれらを回転錘40の周方向に等間隔で分散配置するとともに、錘支持スリーブ61の端部に対して相対回転不能かつ軸方向変位不能に固定した支持ブロック67に対して調整ボルト68を螺着し、その調整ボルト68によって押圧板69を介して圧縮バネ66を前方に押圧することにより、圧縮バネ66によって押圧ブロック63を介して摩擦板64を回転錘40に対して押圧する構成とされている。
これにより、支持ブロック67に対する調整ボルト68のねじ込み量を調整することによって、回転錘40に対する摩擦板64の押圧力(つまりは摩擦板64と回転錘40との間の摩擦力)を自由にかつ広範に調整可能とされている。
一方、回転錘40は摩擦板64を介して錘支持スリーブ61に支持されているので、回転錘40と錘支持スリーブ61との間で伝達されるトルクは一定値で頭打ちとされ、その頭打ちトルクに達した時点で摩擦板64が回転錘40に対してスリップを生じて回転錘40は錘支持スリーブ61に対して相対回転(空転)し、これにより過大加速度に対する過負荷防止機能が発揮される。
具体的には、摩擦板64の内径および外径をD2、D1(実質的に回転錘40の内径および外径と等しくしておけば良い)、圧縮バネ66による押圧力Pk、摩擦板64に生じる面圧σ0、摩擦係数μから、頭打ちトルクT0は次式で表される。
具体的には、回転錘40の回転慣性モーメントIθ1とすると、ダンパー反力Fは次式で求められる。
これは第1ボールねじ機構20のリードLd1=20mm、第2ボールねじ機構30のリードLd2=14mm(したがってリード差6mm)、回転錘40の質量約100kg、ダンパー負担力P=500kN、慣性質量ψ=2580ton、ねじ軸の径63mmφ、ダンパー全体の外径275mmφ、全長約2mとしたもので、少なくとも外径500mm以上となることが不可避であった従来型の回転慣性質量ダンパーに比べて十分に軽量かつコンパクトでありながら同等の性能を確保することができるものである。
また、(a)に示すように、第2ねじ軸31の先端部にストッパー31bを突出させて設けて、そのストッパー31bを第1ねじ軸21の先端部に設けた中空部21a内に出没自在に挿入するとともに、第1ねじ軸21の先端部には抜け止めのストッパーゴム21bを設けてある。
さらに、必要に応じて、(a)に鎖線で示しているようにダンパー全体を被覆してその外殻となるカバー70を設けることも可能としている。
(1)リードの異なる2組のボールねじ機構を併用して、ダンパー両端の相対変位に対する各ボールねじ機構の変位(ナットに対するねじ軸の移動量)を大幅に拡大できる効果をもちつつ、ダンパー両端に生じるトルク反力を大幅に低減し、構造躯体への負担を軽減することができ、さらに過負荷防止機構としての伝達トルク制限機構を備えた有効な回転慣性質量ダンパーを実現できる。
また、上記実施形態では1組の伝達トルク制限機構を回転錘の片側の端面に対向する位置に設置したが、2組の伝達トルク制限機構を回転錘の両側に対称的に設置することも考えられる。
11 クレビス
12 第1ケーシング
13 クレビス
14 第2ケーシング
15 スライド機構
16 第3ケーシング
20 第1ボールねじ機構
21 第1ねじ軸
21a 中空部
21b ストッパーゴム
22 第1ボールねじ
23 第1ナット
24 ベアリング
30 第2ボールねじ機構
31 第2ねじ軸
31a カムフォロワ
31b ストッパー
32 第2ボールねじ
33 第2ナット
34 ベアリング
40 回転錘
40a 中心孔
50 スリーブ
50a 本スリーブ
50b 補助スリーブ
50c ガイド溝
51 キー
52 補強リング
60 伝達トルク制限機構
61 錘支持スリーブ
61a フランジ部
62 ベアリング
63 押圧ブロック
64 摩擦板
65 キー
66 圧縮バネ
67 支持ブロック
68 調整ボルト
69 押圧板
70 カバー
Claims (2)
- 互いに離接する方向に相対振動を生じる制振対象の2つの構造体である第1部材および第2部材の間に介装されて、前記第1部材および前記第2部材の間に生じる前記相対振動を低減するための回転慣性質量ダンパーであって、
第1ねじ軸に対して第1ナットを第1ボールねじを介して螺着した構成とされて前記第1ねじ軸の基端が前記第1部材に対して回転不能に連結される第1ボールねじ機構と、第2ねじ軸に対して第2ナットを第2ボールねじを介して螺着した構成とされて前記第2ねじ軸の基端が前記第2部材に対して回転不能に連結される第2ボールねじ機構とを有するとともに、前記第1ボールねじ機構における第1ボールねじと前記第2ボールねじ機構における第2ボールねじを同じ向きでリードが互いに異なるボールねじとして形成し、
前記第1ナットと前記第2ナットとを間隔をおいて対向配置してそれら第1ナットと第2ナットとの間に錘支持スリーブを連結固定するとともに、該錘支持スリーブ内において前記第1ねじ軸と前記第2ねじ軸の先端部どうしを相対回転不能かつ軸方向の相対変位可能に連結して、前記第1部材と前記第2部材との間で生じる前記相対振動によって前記第1ナットと前記第2ナットと前記錘支持スリーブの全体が前記第1ねじ軸および前記第2ねじ軸に対して軸方向に相対変位しつつ一体に回転可能とし、
前記錘支持スリーブの外側に回転錘を装着し、
前記回転錘と前記錘支持スリーブとの間に、前記錘支持スリーブから前記回転錘に伝達されるトルクが所定の制限値を超えるまでは該トルクを伝達して前記回転錘を前記錘支持スリーブとともに一体回転させるとともに、前記トルクが前記制限値を超えた時点で前記回転錘を前記錘支持スリーブに対して相対回転させてトルク伝達を制限するための伝達トルク制限機構を介装してなることを特徴とする回転慣性質量ダンパー。 - 請求項1記載の回転慣性質量ダンパーであって、
前記伝達トルク制限機構は、前記錘支持スリーブの端部において前記回転錘の端面に対向する位置に設置されていて、
該伝達トルク制限機構は、前記回転錘の端面に対して押圧される摩擦板と、該摩擦板を前記回転錘の端面に対して押圧する圧縮バネと、該圧縮バネによる前記回転錘に対する前記摩擦板への押圧力を調整することによって前記摩擦板と前記回転錘との間の摩擦力を調整するための調整ボルトを有してなることを特徴とする回転慣性質量ダンパー。
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