JP5839282B2 - 回転慣性質量ダンパー - Google Patents
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また、単にリードLdを小さくすると、ねじ溝に配置されるボールベアリングの径も小さくなり、耐荷重性能が低下してしまう(ベアリング径が小さくなると1つ当たりの耐力が激減し、同じ耐荷重を得るためにボールナットの長さを大きくする必要があり、コンパクト化できない)ことから、ダンパーの負担力Pを確保する点からはねじリードLdをあまり小さくすることも困難である。
特に本発明の回転慣性質量ダンパーは、各ボールねじ機構のねじ軸をそれぞれ制振対象の構造体に対して相対回転を拘束した状態で直接的に固定することが可能であるし、各ボールねじ機構をケーシング内に収容する必要もないので、全体構成が極めて簡単であって十分に小形軽量化を図ることができるし、ローコストで製造することが可能である。
これは、本出願人が先に特願2010−141838として提案したもので、ボールねじのリードが異なる2組のボールねじ機構20,30をケーシング10内に同軸状態で対向配置した状態で組み込んで、それら2組のボールねじ機構20,30によって1つの回転錘40を回転させることにより、それ自体で回転錘40に対する変位拡大機能および増速機能を有する構成としたものである。
そして、そのケーシング10の内部に、第1ケーシング12に対して連結された第1ボールねじ機構20と、第2ケーシング14に対して連結された第2ボールねじ機構30とが収容され、それら第1ボールねじ機構20と第2ボールねじ機構30に対して回転錘40が連結された構成とされている。
同様に、第2ボールねじ機構30は、第2ねじ軸31と、その第2ねじ軸31に対して第2ボールねじ32を介して螺着された第2ナット33とからなり、第2ねじ軸31の基端が第2ケーシング14の内面に対して回転不能に(したがって制振対象の構造体である第2部材に対して回転不能に)固着され、それに螺着されている第2ナット33はベアリング34を介して第3ケーシング16に対して回転可能かつ軸方向変位不能に支持されている。
なお、第1ナット23と回転錘40と第2ナット33の全体がケーシング10に接触することなくその内部において支障なく軸方向に変位可能であるためには、第1ナット23と第1ケーシング12との間に少なくとも第1ボールねじ機構20の作動量に相当するクリアランス(後述する相対変位量S1)を確保し、第2ナット33と第2ケーシング14との間に少なくとも第2ボールねじ機構30の作動量(同、相対変位量S2)に相当するクリアランスを確保する必要がある。さらに、第1ねじ軸21および第2ねじ軸31の先端部を回転錘40の中心孔40aに対してそれぞれ少なくとも上記の寸法(相対変位量S1、S2)相当分は挿入するとともに、それらの間には後述するダンパーストロークS相当分のクリアランスを確保する必要がある。
この場合、ダンパーストロークをSとすると、第1ボールねじ機構20の作動量(第1ねじ軸21に対する第1ナット23の相対変位量)S1、および第2ボールねじ機構30の作動量(第2ねじ軸31に対する第2ナット33との相対変位量)S2はそれぞれ次式で表され、いずれもダンパーストロークSに対して拡大されることになる。
換言すると、第1ボールねじ機構20と第2ボールねじ機構30はそれぞれのリードLd1、Ld2に応じて大きく作動するが、ダンパー全体としての伸縮量であるダンパーストロークSは、第1ボールねじ機構20の作動量S1と第2ボールねじ機構30の作動量S2との差(絶対値)になる。
その場合においてダンパーストロークS=60mmとした場合、上式より第1ねじ軸21に対する第1ナット23の相対変位量S1=300mm、第2ねじ軸31に対する第2ナット33の相対変位量S2=240mmとなり、回転錘40の所要長さはそれらS1,S2にダンパーストロークSを加えて少なくとも600mm以上とすれば良い。
そこで、回転錘40の長さを必要最少限の600mmとし、回転錘40の外径D1=350mmφ、内径D2=150mmφとすると、回転錘40の質量m=0.37ton、回転慣性モーメントIθ=6.71×10-3ton・m2となるから、その場合の慣性質量ψは下式から10000ton以上にもなる。
同様に、第2ボールねじ機構30における第2ねじ軸31の基端にクレビス13を直接的に固定して、その第2ねじ軸31をクレビス13を介して他方の構造体である第2部材(図示せず)に対して相対回転不能に直接的に連結するものとしている。
なお、必要であればクレビス11,13に代えてボールジョイントを用いることも可能であるが、いずれにしても第1部材や第2部材に対する第1ねじ軸21、第2ねじ軸31の相対回転は確実に拘束してそれら第1ねじ軸21、第2ねじ軸31からのトルクを制振対象の構造体に対して伝達する必要があるから、クレビス11,13あるいはそれに代わるボールジョイントとしてはそのような機能を備えたものを用いる必要がある。
なお、図3に示した先行発明の回転慣性質量ダンパーにおけるケーシング10は省略されていることから当然にベアリング24、34も省略されているが、第1ナット23および第2ナット33を回転させるうえでは特に支障がない。
これは、回転錘40の中心孔40aの内径を図1に示した実施形態の場合よりも大きくして、その中心孔40aに第1ねじ軸21および第2ねじ軸31の先端部をそれぞれ緩挿状態で挿入して、それらをスリーブ50を介して連結したものである。
具体的には、第2ねじ軸31の先端部にスリーブ50を同軸状態で固定して、そのスリーブ50内に第1ねじ軸21の先端部を軸方向変位可能に挿入するとともに、第1ねじ軸21の先端部外周面に形成した2本のキー51をスリーブ50内面に形成したキー溝に嵌合させてそれらスリーブ50と第1ねじ軸21との間の相対回転を拘束している。なお、第1ねじ軸21の先端部の周面には、スリーブ50の内面に摺接する2本の補強リング52が形成されている。
これにより、回転錘40の中心孔40a内において第1ねじ軸21と第2ねじ軸31の先端部どうしがスリーブ50を介して相対回転不能(一体回転可能)かつ軸方向相対変位可能な状態で連結されている。
また、本実施形態のように第1ねじ軸21とスリーブ50との間の相対回転を2本のキー51によって拘束することにより、第1ねじ軸21とスリーブ50とは十分な曲げ剛性をもって連結されるため、自重による曲げモーメントに対しても第1ねじ軸21と第2ねじ軸31とが軸直交方向に相対回転せず、双方のボールねじ機構が円滑に稼働し得るものである。
(1)リードの異なる2組のボールねじ機構を併用することで、ダンパー両端の相対変位に対する各ボールねじの変位(ボールナットに対するボールねじ軸の移動量)を大幅に拡大でき、このような拡大機構はボールねじの回転速度を増加させる増速機構でもあり、その拡大率(増速率)はリード差を小さくするほど大きくなる。
これにより、従来よりダンパー外径を大幅に縮小でき、そのための設置スペースの縮減が図れて建築計画の阻害要因になり難くなる。たとえば、この回転慣性質量ダンパーを壁内に設置する場合は壁厚を小さくして有効スペースを増大させることが可能であり、建物外周に設置する場合はブラインドボックスを室内側に寄せる寸法を小さくすることが可能であり、床貫通孔に隣接して設置する場合には床貫通孔の位置を梁に十分に接近させることが可能となる。
たとえば、第1ボールねじ機構におけるリードLd1=25mm、第2ボールねじ機構におけるリードLd2=20mmとした場合、ボールねじ間を連結しない場合と比較してダンパー両端に生じるトルク反力(合力)を1/9に軽減できることとなり、リードが単一の1組のボールねじ機構による従来型のダンパーと比較しても1/3以下に軽減できる。
(5)ボールねじの実際のリードを小さくする必要がないので、ボールベアリングも過小な径とする必要はなく、そのため、ボールねじ径に合わせた適切なリードを確保できるので耐荷重性能の問題は生じない。
(6)制振対象の構造体に接合するためにダンパー両端にクレビスあるいはボールジョイントを設けてそれらによりねじ軸まわりの回転を拘束しトルク伝達する必要はあるが、伝達トルクは同じリードをもつ従来の慣性質量ダンパーと同じで拡大されることはないので、従来と同様に汎用のクレビスやボールジョイントをそのまま使用可能であり、その点においてもコスト増となることはない。
(7)この種の回転慣性質量ダンパーは静的な剛性を持たず復元力は保持しないし、手動で回転錘を回転させることも可能であるので、現場での設置工事の際に寸法調整を容易に実施することも可能である。
13 クレビス
20 第1ボールねじ機構
21 第1ねじ軸
22 第1ボールねじ
23 第1ナット
30 第2ボールねじ機構
31 第2ねじ軸
32 第2ボールねじ
33 第2ナット
40 回転錘
40a 中心孔
50 スリーブ
51 キー
52 補強リング
Claims (1)
- 互いに離接する方向に相対振動を生じる制振対象の構造体である第1部材および第2部材の間に介装されて、前記第1部材および前記第2部材の間に生じる前記相対振動を低減するための回転慣性質量ダンパーであって、
第1ねじ軸に対して第1ナットを第1ボールねじを介して螺着した構成とされて前記第1部材に対して連結される第1ボールねじ機構と、第2ねじ軸に対して第2ナットを第2ボールねじを介して螺着した構成とされて前記第2部材に対して連結される第2ボールねじ機構とを有し、
前記第1ボールねじ機構における第1ねじ軸の基端を前記第1部材に対して回転不能に連結するとともに、前記第2ボールねじ機構における第2ねじ軸の基端を前記第2部材に対して回転不能に連結して、前記第1ボールねじ機構における第1ナットと前記第2ボールねじ機構における第2ナットとを間隔をおいて対向配置し、
前記第1ナットと前記第2ナットの双方に対して回転錘を一体に連結して、前記第1部材と前記第2部材との間で生じる前記相対振動によって前記第1ナットと前記第2ナットと前記回転錘との全体が前記第1ねじ軸および前記第2ねじ軸に対して軸方向に相対変位しつつ一体に回転可能とし、
かつ、前記第1ボールねじ機構における第1ボールねじと前記第2ボールねじ機構における第2ボールねじを同じ向きでリードが互いに異なるボールねじとして形成してなり、
前記回転錘に形成した中心孔に前記第1ねじ軸および前記第2ねじ軸の先端部がそれぞれ緩挿状態で挿入されており、前記中心孔内において前記第1ねじ軸と前記第2ねじ軸の先端部どうしが相対回転不能かつ軸方向相対変位可能に連結されていることを特徴とする回転慣性質量ダンパー。
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