JP6415138B2 - 張力材用制振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばタイロッド等のように張力が導入される張力材に設置され、この張力材の振動を抑制する張力材用制振装置に関する。
従来、建築構造物や土木構造物等に設置され、地震等に起因する振動を抑制する制振装置として、回転慣性質量ダンパを備えたものが提案されている。この種の制振装置としては、外筒と内筒とをテレスコ状に配置し、外筒内に、内筒側に突出するロッドを有して軸方向に移動するピストンと、このピストンに連結されたコイルバネとを収容すると共に、上記内筒の内側に同軸回りに回転する筒状の回転体を収容し、この回転体の中心軸に沿って形成された雌螺子と、上記ロッドに形成された雄螺子との間にボールを配置してボールねじを形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。上記内筒は、外筒から突出する側の端部が拡径され、この拡径部分の内側に、上記回転体の先端に連結された円盤状のフライホイールが収容されている。
この制振装置は、構造物の梁と柱で取り囲まれた架構内に、ハ字状を成すように2つ配置される。上記ハ字状を成す2つの制振装置は、外筒の基端が上側の梁の中央に回動可能に連結される一方、内筒の突出端が下側の梁と柱との接合部に回動可能に連結される。構造物が地震によって層間変位をすると、上記制振装置の外筒と内筒が軸方向に相対変位し、ピストンがコイルバネを伸縮すると共に、回転体がロッドに対して軸方向に相対変位をする。回転体がロッドに対して軸方向に相対変位をすると、ボールねじによって回転体が中心軸回りに回転し、この回転体に連結されたフライホイールが中心軸回りに回転する。上記コイルバネの弾性とフライホイールの回転慣性力でエネルギー吸収を行い、構造物の振動を減衰するように構成されている。
上記制振装置は、構造物の層間変位に伴い、梁又は柱に接続された外筒の基端と内筒の突出端との間で、圧縮方向と引張方向とに交番する変位が生じる。外筒と内筒が圧縮方向に変位すると、コイルバネが圧縮されると共にフライホイールが軸回りの所定方向に回転する一方、外筒と内筒が引張方向に変位すると、コイルバネが伸長されると共にフライホイールが軸回りの所定方向と逆方向に回転する。すなわち、この制振装置は、外筒と内筒が圧縮方向と引張方向のいずれに相対変位をしても、コイルバネの弾性に基づくエネルギー吸収と、フライホイールの回転慣性力に基づくエネルギー吸収を行うことができる。
特開2011−012739号公報
ところで、建築構造物や土木構造物では、例えば仮設堤防を形成するために互いに平行に配列された矢板を繋ぎ止める用途や、建築物の壁面から水平に突出した庇を吊り下げる用途に、タイロッドやワイヤ等の張力材が用いられる。張力材は、構造物から引張力のみを受ける箇所に適用され、細長比が比較的大きく、圧縮力を伝達しない部材により形成される。
最近、防災意識の高まりにより、各種構造物の耐震性能の向上が求められており、構造物に適用される張力材についても、制振機能を付与することが望まれる。そこで、構造物と張力材との間に、特許文献1のような従来の制振装置を設置することが考えられる。
しかしながら、上記張力材は、圧縮力を伝達しない部材で形成されるので、構造物と張力材との間の引張方向の変位のみが制振装置に伝達され、圧縮方向の変位は制振装置に伝達されない。したがって、制振装置のエネルギー吸収効果を十分に発揮できないという問題がある。
また、上記従来の制振装置は、外筒と内筒とテレスコ状に配置し、この内筒の突出端部にフライホイールを配置するので比較的大型である。したがって、構造物の形状や他の部材との位置関係により、設置位置が制限されるおそれがある。特に、張力材は、厚みや幅が比較的小さいので、他の部材に接近した箇所に設置される場合があるため、比較的大型の制振装置は配置が困難になりやすい。また、比較的大型の制振装置を配置することにより、構造物の美観を損ねるおそれがある。
また、上記従来の制振装置は、外筒、内筒、ピストン、ロッド、コイルバネ、回転体及びフライホイールで形成されて部品点数が多いと共に、引張力と圧縮力との両方を伝達するので比較的高い強度が必要であるため、質量が比較的大きい。したがって、上記制振装置を張力材に接続すると、制振装置の質量によって張力材に撓みが生じるおそれがある。さらに、張力材は、圧縮力を伝達しないので、構造物の振動に伴って制振装置と張力材との接続部に圧縮方向の相対変位が生じると、張力材の引張力が一時的に零となり、張力材が大幅に撓んで制振装置の姿勢が変化し、制振装置そのものが振動を増大するおそれがある。
そこで、本発明の課題は、張力材に適した小型化と軽量化が可能であり、張力材や、張力材が架け渡される部材の振動を効果的に抑制できる張力材用制振装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の張力材用制振装置は、複数の部材の間に架け渡される張力材と張力材との間、又は、上記張力材と部材との接続部に介設され、上記張力材及び部材の振動を抑制するための張力材用制振装置であって、
一方が上記張力材に接続され、他方が上記張力材又は上記部材に接続され、軸方向に相対直線運動が可能な第1接続部及び第2接続部と、
上記第1接続部と上記第2接続部とに重複する位置に配置された回転体と、
上記第1接続部と上記第2接続部の相対直線運動を上記回転体の円運動に変換する運動変換機構と、
上記張力材に張力が導入された状態で、上記第1接続部と上記第2接続部を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持する保持部と
を備えることを特徴としている。
上記構成によれば、本発明の張力材用制振装置は、複数の部材の間に架け渡される張力材と張力材との間、又は、上記張力材と部材との接続部に介設される。張力材と張力材との間に介設される場合は、一方の上記張力材に第1接続部が接続され、他方の上記張力材に第2接続部が接続される。張力材と部材との接続部に介設される場合は、上記張力材の端に第1接続部が接続され、上記張力材が接続される部材に第2接続部が接続される。地震荷重や風荷重や活荷重等が部材に作用して複数の部材の間に相対変位が生じると、張力材の張力が増減し、これにより、第1接続部と第2接続部が軸方向の相対直線運動を行う。この第1接続部と第2接続部の相対直線運動が、運動変換機構によって回転体の円運動に変換される。円運動を行う上記回転体の回転慣性の質量効果により、部材の間の相対変位による振動エネルギーが減衰し、これにより、部材と張力材の振動が低減する。
ここで、上記保持部により、上記張力材に所定の張力が導入された状態で、上記第1接続部と上記第2接続部が、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持されるので、相対直線運動時に張力材の引張力が零となる機会を少なくできる。したがって、上記第1接続部と第2接続部の相対直線運動を、効果的に回転体の回転運動に変換でき、回転体の回転慣性の質量効果によって部材と張力材の振動を効果的に低減できる。また、張力材の引張力が零となる機会を少なくできるので、張力材が一時的に零となって制振装置の姿勢が変化し、制振装置そのものが振動する不都合を防止できる。ここで、上記保持部は、予め想定される地震や風や活荷重を受けて生じる振動に対応して引張材に生じる張力の変動範囲が、正の領域に収まるように、上記第1接続部と第2接続部を保持するのが好ましい。
また、この張力材用制振装置は、上記回転体が、上記第1接続部と上記第2接続部とに重複する位置に配置されているので、一方の接続部や他方の接続部と重複しない位置に回転体を配置するよりも、第1接続部と第2接続部と回転体とを合わせた全体の寸法を削減できる。したがって、張力材用制振装置を小型にできる。したがって、この張力材用制振装置は、他の部材との位置関係によって設置位置の制限を受け難く、比較的高い自由度で構造物に適用できる。また、この張力材用制振装置は、比較的小型にできるので、構造物の美観を損ねる不都合を防止できる。ここで、回転体が配置される第1接続部と第2接続部とに重複する位置とは、軸直角方向視において、第1接続部と第2接続部とに回転体が個別に重なり合う位置や、第1接続部と第2接続部とが重なり合う部分に更に回転体が重なり合う位置をいう。
また、この張力材用制振装置は、張力材から実質的に引張力のみが伝達され、圧縮力を受けないので、比較的小さい強度の部品で構成できる。したがって、この張力材用制振装置は、質量を小さくできるので、接続される張力材に過大な撓みを生じさせる不都合を防止できる。
本発明において、張力材とは、実質的に引張力のみを受ける箇所に設置され、引張力のみを伝達する部材を指し、例えばタイロッド、ワイヤ、ピアノ線及びチェーン等が該当する。
一実施形態の張力材用制振装置は、上記保持部は、上記第1接続部と上記第2接続部との間に連結された弾性体を有する。
上記実施形態によれば、張力材に張力が導入されるに伴って保持部の弾性体が伸長し、第1接続部と上記第2接続部を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持できる。ここで、保持部の弾性体は、予め想定される地震や風や活荷重を受けて生じる振動に対応して張力材に生じる張力の変動範囲が、正の領域に収まるようなバネ定数に設定するのが好ましい。すなわち、上記第1接続部と上記第2接続部とが最も近づいたときに、上記張力材の張力が正の値となるように設定することが好ましい。さらに、弾性体が線形弾性を有する場合、張力を導入したときに、上記第1接続部と上記第2接続部が相対変位範囲の略中央の相対変位を成すように、保持部のバネ定数を設定するのが好ましい。また、上記保持部に弾性体を設けることにより、この弾性体の伸縮により、第1接続部と第2接続部の相対直線変位を生じさせる部材の振動エネルギーを減衰することができ、これにより、部材と張力材の振動を低減できる。ここで、上記保持部が有する弾性体としては、ゴムやバネを用いることができる。
一実施形態の張力材用制振装置は、上記回転体は、上記第1接続部の先端部分と上記第2接続部の先端部分を取り囲むスリーブ状に形成されている。
上記実施形態によれば、回転体が、第1接続部の先端部分と第2接続部の先端部分を取り囲むスリーブ状に形成されているので、効果的に張力材用制振装置の小型化を行うことができる。
一実施形態の張力材用制振装置は、上記第1接続部と第2接続部は、一方の先端部分の内側に他方の先端部分が嵌合した状態で相対直線運動が可能に形成され、
上記運動変換機構は、上記第1接続部と上記第2接続部の嵌合部分に互いに逆方向巻きに形成された貫通螺旋溝と、上記回転体の内側に直径方向に延在して固定され、上記第1接続部の貫通螺旋溝と上記第2接続部の貫通螺旋溝とを貫通して配置された柱状部材とを有する。
上記実施形態によれば、第1接続部と第2接続部とが相対直線運動を行うと、上記第1接続部の嵌合部分と、上記第2接続部の嵌合部分とが軸方向に相対直線運動を行う。これに伴い、第1接続部の嵌合部分に形成された貫通螺旋溝と、第2接続部の嵌合部分に形成された貫通螺旋溝との径方向視における交差部分が、これらの貫通螺旋溝が互いに逆方向巻きに形成されていることにより、円周方向に移動する。これらの貫通螺旋溝の交差部分が円周方向へ移動するに伴い、この第1接続部の貫通螺旋溝と第2接続部の貫通螺旋溝とに貫通して配置された柱状部材が、第1接続部と第2接続部の中心軸回りの円周方向に駆動される。したがって、この柱状部材が固定された回転体を、第1接続部と第2接続部の中心軸回りに回転駆動することができる。ここで、上記第1接続部と第2接続部の嵌合部分は、同軸上に配置される円筒形状に形成されるのが好ましい。
一実施形態の張力材用制振装置は、上記運動変換機構は、第1接続部の先端近傍の外周面と第2接続部の先端近傍の外周面とに夫々形成されて互いに逆方向巻きに螺旋切られた雄螺子と、上記回転体の内側面の両端部に夫々形成されて上記第1接続部の雄螺子と上記第2接続部の雄螺子とに各々螺合する雌螺子とを有する。
上記実施形態によれば、第1接続部と第2接続部とが相対直線運動を行うと、互いに逆向きに螺旋切られた第1接続部の雄螺子と第2接続部の雄螺子が、軸方向に相対直線運動を行う。これに伴い、上記第1接続部の雄螺子と上記第2接続部の雄螺子に両端部の雌螺子が螺合する回転体が、中心軸回りに回転駆動される。このように、部品点数の比較的少ない運動変換機構により、第1接続部と第2接続部の相対直線運動を、回転体の回転運動に変換することができる。ここで、上記第1接続部の雄螺子及び上記第2接続部の雄螺子と、上記回転体の雌螺子との間に複数のボールを配置して、ボールねじを形成してもよい。
一実施形態の張力材用制振装置は、上記回転体は、上記第1接続部の先端部分と第2接続部の先端部分との側方に配置された円盤状部材と、この円盤状部材の中心に連結された回転軸とを有し、
上記運動変換機構は、上記第1接続部の先端部分と上記第2接続部の先端部分とに対向して夫々形成されたラックと、上記第1接続部のラックと上記第2接続部のラックとに歯合すると共に上記回転体の回転軸に連結されたピニオンとを有する。
上記実施形態によれば、第1接続部と第2接続部とが相対直線運動を行うと、上記第1接続部の先端近傍に形成されたラックと、上記第2接続部の先端近傍に形成されたラックが、軸方向に相対直線運動を行う。これに伴い、上記第1接続部のラックと上記第2接続部のラックに歯合するピニオンが回転駆動され、このピニオンに回転軸を介して連結された回転体の円板状部材が回転駆動される。このように、部品点数の比較的少ない運動変換機構により、第1接続部と第2接続部の相対直線運動を、回転体の回転運動に変換することができる。
一実施形態の張力材用制振装置は、2つの上記張力材を接続するように設置され、
上記第1接続部の基端部分と上記第2接続部の基端部分に雌螺子が夫々形成され、
上記2つの張力材の先端に雄螺子が夫々形成され、
上記第1接続部の雌螺子と第2接続部の雌螺子に、上記2つの張力材の先端の雄螺子を夫々螺合した状態で上記第1接続部及び第2接続部を軸回りに回転することにより、上記第1接続部及び第2接続部と上記2つの張力材との螺合長さを調整して上記2つの張力材に導入する張力を調整するように構成されている。
上記実施形態によれば、この張力材用制振装置は、所定の部材に接続された2つの張力材を接続するように設置される。この張力材用制振装置の第1接続部の基端部分と第2接続部の基端部分に形成された雌螺子に、上記2つの張力材の先端の雄螺子を夫々螺合する。この状態で第1接続部及び第2接続部を軸回りに回転することにより、第1接続部及び第2接続部と2つの張力材との螺合長さを調整し、これら2つの張力材に導入する張力を調整する。このようにして、複数の部材の間に架け渡される張力材の張力を、この張力材用制振装置が適切な制振機能を発揮できる張力となるように調整することができる。また、この張力材用制振装置は、2つの張力材の張力を調整しながら接続するターンバックルとして機能するので、既存のターンバックルと置き替えられることにより、既存の張力材や部材に制振機能を付加することができる。
本発明の第1実施形態の制振ターンバックルを示す正面図である。 図1の制振ターンバックルのA−A線断面図である。 図1の制振ターンバックルのB−B線断面図である。 図2の制振ターンバックルのC−C線断面図である。 第1実施形態の制振ターンバックルの分解図である。 第1実施形態の制振ターンバックルを壁体に適用した例を示す図である。 第1実施形態の制振ターンバックルを庇に適用した例を示す図である。 第1実施形態の制振ターンバックルを張弦梁に適用した例を示す図である。 本発明の第2実施形態の制振ターンバックルを示す正面図である。 第2実施形態の制振ターンバックルの正面縦断面図である。 第2実施形態の制振ターンバックルの分解図である。 本発明の第3実施形態の制振ターンバックルを示す正面図である。 第3実施形態の制振ターンバックルの正面縦断面図である。 図12の制振ターンバックルのD−D線断面図である。
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の張力材用制振装置の第1実施形態としての制振ターンバックルを示す正面図であり、図2は、図1のA−A線における縦断面図である。図3は、図1のB−B線における横断面図であり、図4は、図2のC−C線における縦断面図である。図5は、第1実施形態の制振ターンバックルの分解図である。この制振ターンバックル10は、タイロッドを構成する張力材としての第1ロッド1と第2ロッド2に接続され、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入すると共に、タイロッドに生じる振動と、このタイロッドが架け渡される部材の振動とを抑制するものである。
この制振ターンバックル10は、基端側が第1ロッド1に接続される第1接続部としての第1接続管3と、基端側が第2ロッド2に接続されると共に、先端部分が第1接続管3の先端部分に嵌合する第2接続部としての第2接続管4と、第1接続管3と第2接続管4を連結する保持部としての第1管状ゴム7及び第2管状ゴム8と、第1接続管3の先端部分と第2接続管4の先端部分とを取り囲むように配置された回転体としてのフライホイール5で形成されている。なお、図1,2及び4では、第1接続管3と第2接続管4が、相対変位の最大値を成す位置にある様子を示している。
第1接続管3は、大略円筒形状の管状体で形成され、図5の分解図に示すように、第1ロッド1に接続される基端部3aと、フライホイール5で取り囲まれる先端部3bを有する。基端部3aと先端部3bは同軸上に形成され、先端部3bは基端部3aよりも小径に形成されている。基端部3aと先端部3bの間には、段部が形成されている。第1接続管3の内側には中心軸と同心の貫通孔が形成されており、この貫通孔は、基端部3aの基端側部分に位置する小径貫通孔33と、基端部3aの先端側部分から先端部3bの先端にわたって位置する大径貫通孔34で構成されている。小径貫通孔33には、第1ロッド1の先端部1aに設けられた雄螺子が螺合する雌螺子が設けられている。第1接続管3の先端部3bには、同じ軸方向位置で180°の位相差をおいて形成された2つの貫通螺旋溝31,32が設けられている。2つの貫通螺旋溝31,32は、軸方向視において90°の範囲に形成されている。これら2つの貫通螺旋溝31,32に、フライホイール5の柱状部材51が、第1接続管3の径方向を向いて貫通するように形成されている。
第2接続管4は、大略円筒形状の管状体で形成され、図5の分解図に示すように、第2ロッド2に接続される基端部4aと、フライホイール5で取り囲まれる先端部4bを有する。第2接続管4の基端部4aと先端部4bは、外形が単一径の円筒面を成している。第2接続管4の内側には中心軸と同心の貫通孔が形成されている。この貫通孔は、基端部4aの基端側に位置する小径貫通孔43と、基端部3aの先端側に位置する中径貫通孔44と、先端部4bに位置する大径貫通孔45で構成されている。貫通孔の中径貫通孔44と大径貫通孔45の間には、段部が形成されている。小径貫通孔43には、第2ロッド2の先端部2aに設けられた雄螺子が螺合する雌螺子が設けられている。第2接続管4の先端部4bには、同じ軸方向位置で180°の位相差をおいて形成された2つの貫通螺旋溝41,42が設けられている。2つの貫通螺旋溝41,42は、軸方向視において90°の範囲に形成されている。これら2つの貫通螺旋溝41,42に、フライホイール5の柱状部材51が、第2接続管4の径方向を向いて貫通するように形成されている。
上記第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、上記第2接続管4の貫通螺旋溝41,42は、互いに逆方向巻きに形成されている。また、上記第1接続管3の小径貫通孔33の雌螺子と、上記第2接続管4の小径貫通孔43の雌螺子は、互いに逆方向巻きに形成されている。
第1管状ゴム7は、第1接続管3の先端部3bと略同じ外径及び厚みを有するゴム製の筒状体で構成されている。この第1管状ゴム7は、第2接続管4の大径貫通孔45内に配置され、一端が第1接続管3の先端部3bの端面に固定される一方、他端が第2接続管4の大径貫通孔45と中径貫通孔44の間の段部に固定される。第2管状ゴム8は、第2接続管4の先端部4bと略同じ外径及び厚みを有するゴム製の筒状体で構成されている。この第2管状ゴム8は、第1接続管3の先端部3bの外周側に配置され、一端が第2接続管4の先端面に固定される一方、他端が第1接続管3の先端部3bと基端部3aの間の段部に固定される。
上記第1管状ゴム7と第2管状ゴム8は、この制振ターンバックル10により第1ロッド1及び第2ロッド2に所定の張力を導入したときに、第1接続管3と第2接続管4が、これらの第1接続管3と第2接続管4について予め想定される相対変位範囲の中央に位置するように、バネ定数が設定されている。更に、第1管状ゴム7と第2管状ゴム8は、第1接続管3と第2接続管4の予め想定される相対変位範囲において、バネ定数が線形であり、かつ、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように上記バネ定数が設定されている。ここで、第1接続管3と第2接続管4の予め想定される相対変位範囲とは、制振ターンバックル10が適用されるタイロッドにより接続される部材が、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1接続管3と第2接続管4に生じる相対変位範囲である。なお、保持部としての第1環状ゴム7及び第2管状ゴム8は、ゴム以外の例えばリングバネ等で構成されてもよく、第1ロッド1及び第2ロッド2に導入すべき所定の張力が導入されたときに第1接続管3と第2接続管4を相対変位範囲の中央に保持できれば、材料や形状や配置個数は特に限定されない。また、バネ定数が非線形の保持部を用いる場合、必ずしも第1接続管3と第2接続管4を相対変位範囲の中央に保持しなくてもよい。要は、保持部は、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように、第1接続管3と第2接続管4を接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持すればよい。
フライホイール5は、静止位置において第1接続管3の先端部3aと第2接続管4の先端部4aの外周側を取り囲むように配置されたスリーブ状の円筒部材53と、円筒部材53の径方向に延びる柱状部材51と、この柱状部材51を円筒部材53の内側に固定する固定ピン52を有する。柱状部材51は、円筒部材53の軸方向の略中央に配置されており、円筒部材53の外周側から六角ナットで締結される固定ピン52を、柱状部材51の端面に螺着することにより、円筒部材53に固定されている。
このフライホイール5は、第1接続管3と第2接続管4との嵌合部分に、この第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42とに柱状部材51を貫通させた状態で取り付けられている。上記第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42と、フライホイール5の柱状部材51とで、第1接続管3と第2接続管4の相対直線運動をフライホイール5の回転運動に変換する運動変換機構6を構成している。また、フライホイール5の柱状部材51は、第1接続管3と第2接続管4が最大の相対変位を成すときに、貫通螺旋溝31,32と貫通螺旋溝41,42の先端側の端部に係止することにより、第1接続管3と第2接続管4の離脱防止機能を奏するようになっている。
上記構成の制振ターンバックル10を用いて、以下のようにタイロッドが構成される。まず、タイロッドを架け渡す一方の部材に、第1ロッド1の一端に設けられたクレビスを接続する。また、タイロッドを架け渡す他方の部材に、第2ロッド2の一端に設けられたクレビスを接続する。次いで、第1ロッド1の他端にある先端部1aの雄螺子に、制振ターンバックル10の第1接続管3の小径貫通孔33の雌螺子を螺合させると共に、第2ロッド2の他端にある先端部2aの雄螺子に、制振ターンバックル10の第2接続管4の小径貫通孔43の雌螺子を螺合させる。上記第1ロッド1の雄螺子と第2ロッド2の雄螺子は、互いに逆方向巻きに形成された上記第1接続管3の雌螺子と第2接続管4の雌螺子に対応して、互いに逆方向巻きに形成されている。第1ロッド1に第1接続管3を螺合すると共に第2ロッド2に第2接続管4を螺合した後、制振ターンバックル10の全体を軸回りに回動させる。これにより、第1ロッド1と第2ロッド2を互いに接近する方向に引き寄せて、第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入する。制振ターンバックル10は、張力を導入しない初期状態では、第1管状ゴム7及び第2管状ゴム8が収縮しており、第1接続管3と第2接続管4が接近して最も小さい相対直線変位を成す位置にある。この制振ターンバックル10を回動させて第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入すると、張力が増大するに伴い、第1管状ゴム7及び第2管状ゴム8が伸長して第1接続管3と第2接続管4が遠ざかり、この第1接続管3と第2接続管4の相対直線変位が増大する。第1ロッド1と第2ロッド2に導入される張力が、部材を連結するための所定の張力に達し、制振ターンバックル10の回動を停止すると、第1接続管3と第2接続管4は、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能であり、かつ、上記相対変位範囲の略中央に保持される。このとき、第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42が、互いに延在方向の略中央で交差し、これらの延在方向の略中央にフライホイール5の柱状部材51が配置されるのが好ましい。こうして、制振ターンバックル10により、第1ロッド1と第2ロッド2が接続されると共に、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力が導入されて、部材間がタイロッドで連結される。
本実施形態の制振ターンバックル10は、タイロッドの振動や、このタイロッドが架け渡された部材の振動を、次のようにして抑制する。まず、地震荷重や風荷重や活荷重が作用して複数の部材の間に相対変位が生じると、これらの部材に連結された第1ロッド1と第2ロッド2の間に相対変位が生じ、これに応じて第1接続管3と第2接続管4が軸方向に相対直線運動を行う。第1接続管3と第2接続管4が相対直線運動を行うと、互いに嵌合する第1接続管3の先端部分と第2接続管4の先端部分とが軸方向に相対直線運動を行う。これに伴い、第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と第2接続管4の貫通螺旋溝41,42とが互いに逆方向巻きに形成されていることにより、これらの貫通螺旋溝31,32と貫通螺旋溝41,42との径方向視における交差部分が、円周方向に移動する。これらの貫通螺旋溝31,32と貫通螺旋溝41,42の交差部分が円周方向へ移動するに伴い、この第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と第2接続管4の貫通螺旋溝41,42とに貫通するフライホイール5の柱状部材51が、第1接続管2と第2接続管4の中心軸回りの円周方向に駆動される。これにより、フライホイール5が、第1接続管2と第2接続管4の同心軸回りに回動する。ここで、第1接続管3と第2接続管4が、接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、フライホイール5が中心軸回りの一方向と他方向とに交互に回動する。このフライホイール5の回転慣性の質量効果により、第1ロッド1と第2ロッド2の相対変位による振動エネルギーと、部材の相対変位による振動エネルギーが減衰する。その結果、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1接続管3と第2接続管4が接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、第1環状ゴム7及び第2管状ゴム8が収縮と伸長を繰り返す。この第1環状ゴム7及び第2管状ゴム8の伸縮に伴う減衰作用により、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1環状ゴム7及び第2管状ゴム8により、振動に伴う衝撃が吸収される。
本実施形態の制振ターンバックル10によれば、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入したとき、第1管状ゴム7及び第2管状ゴム8により、第1接続管3と第2接続管4を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持できる。これにより、第1接続管3と第2接続管4が接近方向に相対直線運動をしても、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となることを防止できる。したがって、上記第1接続管3と第2接続管4の相対直線運動を、効果的にフライホイール5の回転運動に変換でき、フライホイール5の回転慣性の質量効果によって第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動を効果的に低減できる。また、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となる機会を少なくできるので、第1ロッド1と第2ロッド2が一時的に零となって制振ターンバックル10の姿勢が変化し、制振ターンバックル10そのものが振動する不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル10は、フライホイール5が、互いに重複する第1接続管3の先端部分と第2接続管4の先端部分を取り囲む位置に配置されている。これにより、第1接続管3と第2接続管4とフライホイール5とを合わせた全体の寸法を比較的小型にできる。したがって、この制振ターンバックル10は、他の部材との位置関係による設置位置の制限を受け難く、比較的高い自由度で構造物に適用できる。また、この制振ターンバックル10は、比較的小型にできるので、構造物の美観を損ねる不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル10は、第1ロッド1及び第2ロッド2から実質的に引張力のみが伝達され、圧縮力を受けないので、比較的小さい強度の部品で構成できる。したがって、この制振ターンバックル10は、質量を小さくできるので、接続される第1ロッド1及び第2ロッド2に過大な撓みを生じさせる不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル10は、フライホイール5により、互いに重複する第1接続管3の先端部分と第2接続管4の先端部分を取り囲んで形成されているので、第1接続管3の先端部分と第2接続管4の先端部分を覆うケーシングが不要である。したがって、効果的に部品点数の削減と軽量化を図ることができる。
図6は、本実施形態の制振ターンバックル10を、構造物の壁体に適用した例を示す図である。図6に示すように、この壁体は、部材としての矩形の枠体11内に、制振ターンバックル10を用いたタイロッド12で形成された筋交いが配置されている。枠体11の四隅には、ガセットプレート11a,11a,11a,11aが夫々設けられており、対角線上に対向するガセットプレート11a,11aの間にタイロッド12が架け渡されている。タイロッド12は、ガセットプレート11aにピン接続された2つのクレビス13と、一方のクレビス13に一端が接続された第1ロッド1と、他方のクレビス13に一端が接続された第2ロッド2と、第1ロッド1の他端と第2ロッド2の他端とを接続する制振ターンバックル10で形成されている。
この壁体は、地震等に起因して枠体11が振動すると、対角線上に対向する2つのガセットプレート11a,11aが互いに接近する方向と離隔する方向とに交互に変位を繰り返す。これに伴い、これらのガセットプレート11a,11aに接続された第1ロッド1と第2ロッド2を介して、制振ターンバックル10の第1接続管3と第2接続管4が、接近方向と離隔方向とに交互に変位を繰り返す相対直線運動を行う。この第1接続管3と第2接続管4の相対直線運動が、第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42と、フライホイール5の柱状部材51とで形成された運動変換機構6により、フライホイール5の回転運動に変換される。このフライホイール5の回転に伴う回転慣性力により、タイロッド12の第1ロッド1と第2ロッド2の振動と枠体11の振動が低減され、壁体の振動が低減される。この壁体は、枠体11の対角線上に2つのタイロッド12を配置し、各タイロッド12に制振ターンバックル10が設けられているので、これらの2つの制振ターンバックル10を180°の位相差で作動させることができる。したがって、壁体の振動を偏り無く効果的に減衰することができる。また、この壁体は、本実施形態による小型の制振ターンバックル10を適用したタイロッド12を筋交いに用いるので、壁体の厚みが比較的小さくて筋交いの設置スペースが小さくても、振動削減効果の高い制振機能が得られる。ここで、上記壁体は、枠体11が構造物の柱及び梁で形成されたものでもよく、枠体11が構造物と独立して形成されたものでもよい。
図7は、本実施形態の制振ターンバックル10を、構造物の部材としての庇に適用した例を示す図である。図7に示すように、庇14は、構造物の壁体15に、この壁体15の表面と直角を成して水平方向に張り出すように設置されている。壁体15の表面に設けられた吊プレート15aと、庇14の先端部分に設けられた支持プレート14aとの間に、タイロッド12が架け渡されている。上記壁体15の壁面と、庇14と、タイロッド12とで略直角三角形を成している。タイロッド12は、吊プレート15aと支持プレート14aとに各々ピン接続された2つのクレビス13と、一方のクレビス13に一端が接続された第1ロッド1と、他方のクレビス13に一端が接続された第2ロッド2と、第1ロッド1の他端と第2ロッド2の他端とを接続する制振ターンバックル10で形成されている。
この庇14は、地震等に起因して図7の上下方向に振動すると、吊プレート15aと支持プレート14aが互いに接近する方向と離隔する方向とに交互に変位を繰り返す。これに伴い、各プレート15a,14aに接続された第1ロッド1と第2ロッド2を介して、制振ターンバックル10の第1接続管3と第2接続管4が接近方向と離隔方向とに交互に変位を繰り返す相対直線運動を行う。この第1接続管3と第2接続管4の相対直線運動が、第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42と、フライホイール5の柱状部材51とで形成された運動変換機構6により、フライホイール5の回転運動に変換される。このフライホイール5の回転に伴う回転慣性力により、タイロッド12の第1ロッド1と第2ロッド2の振動と、庇14の振動が低減される。この庇14は、本実施形態の小型の制振ターンバックル10を適用したタイロッド12で支持されるので、美観に与える影響を抑えながら、効果的に振動を抑制することができる。また、この庇14を支持するタイロッド12は、本実施形態の軽量の制振ターンバックル10を用いているので、第1ロッド1や第2ロッド2の撓みを軽減でき、また、制振ターンバックル10そのものの振動を防止できる。
図8は、本実施形態の制振ターンバックル10を、構造物の部材としての張弦梁に適用した例を示す図である。図8に示すように、この張弦梁16は、上弦材としての梁本体17と、下弦材としての2つのタイロッド12,12とで大略構成されている。梁本体17の下側の両端に、接続プレート17a,17aが設けられると共に、梁本体17の下側の中央に、下方に向かって延在する棒状の束材18が設けられ、この束材18の先端に連結プレート18aが設けられている。上記梁本体17の両端の接続プレート17a,17aと、上記束材18の先端の連結プレート18aとの間に、2つのタイロッド12,12が架け渡されている。このタイロッド12は、接続プレート17a又は連結プレート18aにピン接続された2つのクレビス13と、一方のクレビス13に一端が接続された第1ロッド1と、他方のクレビス13に一端が接続された第2ロッド2と、第1ロッド1の他端と第2ロッド2の他端とを接続する制振ターンバックル10で形成されている。この張弦梁16は、両端が柱や桁に支持されて、例えば大スパン架構等に用いられる。
この張弦梁16は、地震荷重や風荷重や活荷重等が作用して梁本体17が図8の上下方向に振動すると、束材18が上下方向に移動し、接続プレート17aと連結プレート18aとが互いに接近する方向と離隔する方向とに交互に変位を繰り返す。これに伴い、各プレート17a,18aに接続された第1ロッド1と第2ロッド2を介して、制振ターンバックル10の第1接続管3と第2接続管4が接近方向と離隔方向とに交互に変位を繰り返す相対直線運動を行う。この第1接続管3と第2接続管4の相対直線運動が、第1接続管3の貫通螺旋溝31,32と、第2接続管4の貫通螺旋溝41,42と、フライホイール5の柱状部材51とで形成された運動変換機構6により、フライホイール5の回転運動に変換される。このフライホイール5の回転に伴う回転慣性力により、各タイロッド12の第1ロッド1と第2ロッド2の振動と、梁本体17及び束材18の振動が減衰される。この張弦梁16は、本実施形態の小型の制振ターンバックル10を適用したタイロッド12を下弦材に用いるので、美観に与える影響を抑えながら、効果的に振動を抑制することができる。また、張弦梁16の下弦材としてのタイロッドは、本実施形態の軽量の制振ターンバックル10を用いているので、第1ロッド1や第2ロッド2の撓みを軽減でき、また、制振ターンバックル10そのものの振動を防止できる。
上記実施形態において、制振ターンバックル10を、張力材としてのロッド1,2を接続するために用いたが、本発明の制振ターンバックルは、張力材としてのワイヤやピアノ線等を接続するために用いてもよい。
図9は、本発明の張力材用制振装置の第2実施形態としての制振ターンバックルを示す正面図であり、図10は、第2実施形態の制振ターンバックルの縦断面図であり、図11は、第2実施形態の制振ターンバックルの分解図である。この制振ターンバックル110は、タイロッドを構成する張力材としての第1ロッド1と第2ロッド2に接続され、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入すると共に、タイロッドに生じる振動と、このタイロッドが架け渡される部材の振動とを抑制するものである。
この制振ターンバックル110は、基端側が第1ロッド1に接続される第1接続部としての第1接続管103と、基端側が第2ロッド2に接続されると共に、先端部分が第1接続管103の先端部分に嵌合するように形成された第2接続部としての第2接続管104と、第1接続管103と第2接続管104を連結する保持部としての第1管状ゴム107及び第2管状ゴム108と、第1接続管103の先端部分と第2接続管104の先端部分とを取り囲むように配置された回転体としてのフライホイール105で形成されている。なお、図9及び10では、第1接続管103と第2接続管104が、相対変位範囲の中央の位置にある様子を示している。
第1接続管103は、大略円筒形状の管状体で形成され、図11の分解図に示すように、第1ロッド1に接続される基端部103aと、基端部103aに隣接して雄螺子131が形成された螺旋部103bと、螺旋部103bに隣接して第2接続管104に内嵌する嵌合部103cを有する。第1接続管103の内側には中心軸と同心の貫通孔が形成されており、この貫通孔は、基端部103aと螺旋部103bの基端側部分とにわたって形成された小径貫通孔133と、螺旋部103bの先端側部分から嵌合部103cの先端にわたって位置する大径貫通孔134で構成されている。小径貫通孔133には、第1ロッド1の先端部1aに設けられた雄螺子が螺合する雌螺子が設けられている。上記嵌合部103cには、軸方向に延在して係合具109を案内する案内溝132が設けられている。
第2接続管104は、大略円筒形状の管状体で形成され、図11の分解図に示すように、第2ロッド2に接続される基端部104aと、基端部104aに隣接して雄螺子141が形成された螺旋部104bと、螺旋部104bに隣接して第1接続管103に外嵌する嵌合部104cを有する。第2接続管104の内側には中心軸と同心の貫通孔が形成されており、この貫通孔は、基端部104aと螺旋部104bの基端側部分とにわたって形成された小径貫通孔143と、螺旋部103bの中央部分に形成された中径貫通孔144と、螺旋部104bの先端側部分から嵌合部104cの先端にわたって位置する大径貫通孔145で構成されている。この第2接続管104の大径貫通孔145内に、第1接続管103の嵌合部103cが軸方向に摺動可能に嵌合するように形成されている。小径貫通孔143には、第2ロッド2の先端部2aに設けられた雄螺子が螺合する雌螺子が設けられている。上記嵌合部104cには、軸方向に延在して係合具109を案内する案内溝142が設けられている。
上記係合具109は、第1接続管103の案内溝132と第2接続管104の案内溝142とに挿通されて径方向に延在する柱状部材で形成されている。この係合具109は、第1接続管103の案内溝132と第2接続管104の案内溝142とに係合した状態で軸方向に案内され、第1接続管103と第2接続管104との離散防止を行うと共に、第1接続管103と第2接続管104との中心軸回りの相対回転を防止する。なお、第1接続管103と第2接続管104との相対回転の防止は、第1接続管103及び第2接続管104の一方に軸方向に延在する溝を形成し、他方に凸状部を形成し、この凸状部を上記溝に沿って案内することにより行ってもよい。
上記第1接続管103の雄螺子131と、上記第2接続管104の雄螺子141は、互いに逆方向巻きに形成されている。また、上記第1接続管103の小径貫通孔133の雌螺子と、上記第2接続管104の小径貫通孔143の雌螺子は、互いに逆方向巻きに形成されている。
第1管状ゴム107は、第1接続管103の嵌合部103cと略同じ外径及び厚みを有するゴム製の筒状体で構成されている。この第1管状ゴム107は、第2接続管104の大径貫通孔145内に配置され、一端が第1接続管103の嵌合部103cの先端に固定される一方、他端が第2接続管104の大径貫通孔145と中径貫通孔144の間の段部に固定される。第2管状ゴム108は、第2接続管104の先端部分と略同じ外径及び厚みを有するゴム製の筒状体で構成されている。この第2管状ゴム108は、第1接続管103の嵌合部103cの外周側に配置され、一端が第2接続管104の先端に固定される一方、他端がフライホイール105の第1雌螺子151の端部に接離可能に当接される。
上記第1管状ゴム107は、この制振ターンバックル110により第1ロッド1及び第2ロッド2に所定の張力を導入したときに、第1接続管103と第2接続管104が、これらの第1接続管103と第2接続管104について予め想定される相対変位範囲の中央に位置するように、バネ定数が設定されている。更に、第1管状ゴム107は、第1接続管103と第2接続管104の予め想定される相対変位範囲において、バネ定数が線形であり、かつ、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように上記バネ定数が設定されている。ここで、第1接続管3と第2接続管4の予め想定される相対変位範囲とは、制振ターンバックル110が適用されるタイロッドにより接続される部材が、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1接続管3と第2接続管4に生じる相対変位範囲である。一方、上記第1管状ゴム108は、他端がフライホイール105の第1雌螺子151の端部に当接されるのみであり、第1ロッド1及び第2ロッド2に所定の張力が導入されたときは、第1接続管103及び第2接続管104に対する保持力を発揮しない。第1接続管103及び第2接続管104の相対変位の変動過程において、相対変位が静止位置よりも短くなると、第1管状ゴム108が圧縮され、第1接続管103及び第2接続管104に第1管状ゴム108の弾性力が付与される。なお、第1環状ゴム107及び第2管状ゴム108は、ゴム以外の例えばリングバネ等で構成されてもよく、第1ロッド1及び第2ロッド2に導入すべき所定の張力が導入されたときに第1接続管103と第2接続管104を相対変位範囲の中央に保持できれば、材料や形状や配置個数は特に限定されない。また、バネ定数が非線形の保持部を用いる場合、必ずしも第1接続管103と第2接続管104を相対変位範囲の中央に保持しなくてもよい。要は、保持部は、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように、第1接続管103と第2接続管104を接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持すればよい。
上記フライホイール105は、第1接続管103の嵌合部103cと第2接続管104の嵌合部104cを取り囲むように配置されたスリーブ状の円筒部材によって形成されている。このフライホイール105の内側面には、第1接続管103が挿入される側の端部に、第1接続管103の雄螺子131に螺合する第1雌螺子151が形成されている。また、このフライホイール105の内側面には、第2接続管104が挿入される側の端部に、第2接続管104の雄螺子141に螺合する第2雌螺子152が形成されている。上記第1雌螺子151と第2雌螺子152は、互いに逆方向巻きに螺旋切られている。フライホイール105の第1雌螺子151の奥側の端部には、第2管状ゴム108の端面が係止するフランジが設けられている。
このフライホイール105は、嵌合部103c,104cが互いに嵌合した第1接続管103と第2接続管104の外側に、第1接続管103の雄螺子131と第2接続管104の雄螺子141に第1雌螺子151と第2雌螺子152が各々螺合した状態で取り付けられている。上記第1接続管103の雄螺子131と、第2接続管104の雄螺子141と、フライホイール105の第1雌螺子151及び第2雌螺子152とで、第1接続管103と第2接続管104の相対直線運動をフライホイール105の回転運動に変換する運動変換機構106を構成している。
上記構成の制振ターンバックル110を用いて、以下のようにタイロッドが構成される。まず、タイロッドを架け渡す一方の部材に、第1ロッド1の一端に設けられたクレビスを接続する。また、タイロッドを架け渡す他方の部材に、第2ロッド2の一端に設けられたクレビスを接続する。次いで、第1ロッド1の他端にある先端部1aの雄螺子に、制振ターンバックル110の第1接続管103の小径貫通孔133の雌螺子を螺合させると共に、第2ロッド2の他端にある先端部2aの雄螺子に、制振ターンバックル110の第2接続管104の小径貫通孔143の雌螺子を螺合させる。上記第1ロッド1の雄螺子と第2ロッド2の雄螺子は、互いに逆方向巻きに形成された上記第1接続管103の小径貫通孔133の雌螺子と第2接続管104の小径貫通孔143の雌螺子に対応して、互いに逆方向巻きに形成されている。第1ロッド1に第1接続管103を螺合すると共に第2ロッド2に第2接続管104を螺合した後、制振ターンバックル110の全体を軸回りに回動させる。これにより、第1ロッド1と第2ロッド2を互いに接近する方向に引き寄せて、第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入する。制振ターンバックル110は、張力を導入しない初期状態では、第1管状ゴム107が収縮しており、第1接続管103と第2接続管104が接近して最も小さい相対直線変位を成す位置にある。この制振ターンバックル110を回動させて第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入すると、張力が増大するに伴い、第1管状ゴム107が伸長して第1接続管103と第2接続管104が遠ざかり、この第1接続管103と第2接続管104の相対直線変位が増大する。第1ロッド1と第2ロッド2に導入される張力が、部材を連結するための所定の張力に達し、制振ターンバックル110の回動を停止すると、第1接続管103と第2接続管104は相対変位範囲の略中央の位置に保持される。このとき、第1接続管103の雄螺子131の軸方向の半分がフライホイール105の第1雌螺子151と螺合すると共に、第2接続管104の雄螺子141の軸方向の半分がフライホイール105の第2雌螺子152と螺合するのが好ましい。こうして、制振ターンバックル110により、第1ロッド1と第2ロッド2が接続されると共に、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力が導入されて、部材間がタイロッドで連結される。
本実施形態の制振ターンバックル110は、タイロッドの振動や、このタイロッドが架け渡された部材の振動を、次のようにして抑制する。まず、地震荷重や風荷重や活荷重が作用して複数の部材の間に相対変位が生じると、これらの部材に連結された第1ロッド1と第2ロッド2の間に相対変位が生じ、これに応じて第1接続管103と第2接続管104が軸方向に相対直線運動を行う。第1接続管103と第2接続管104が相対直線運動を行うと、第1接続管103の雄螺子131と第2接続管104の雄螺子141とが互いに逆方向巻きに形成されていることにより、これらの雄螺子131,141に第1雌螺子151及び第2雌螺子152が螺合するフライホイール105が、第1接続管2と第2接続管4の同心軸回りに回動する。ここで、第1接続管103と第2接続管104が接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、フライホイール105が中心軸回りの一方向と他方向とに交互に回動する。このフライホイール105の回転慣性の質量効果により、第1ロッド1と第2ロッド2の相対変位による振動エネルギーと、部材の相対変位による振動エネルギーが減衰する。その結果、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1接続管103と第2接続管104が接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、第1環状ゴム107が収縮と伸長を繰り返し、第2管状ゴム108が伸縮を繰り返す。この第1環状ゴム107及び第2管状ゴム108の伸縮に伴う減衰作用により、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1環状ゴム107及び第2管状ゴム108により、振動に伴う衝撃が吸収される。
本実施形態の制振ターンバックル110によれば、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入したとき、第1管状ゴム107により、第1接続管103と第2接続管104を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持できる。これにより、第1接続管103と第2接続管104が接近方向に相対直線運動をしても、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となることを防止できる。したがって、上記第1接続管103と第2接続管104の相対直線運動を、効果的にフライホイール105の回転運動に変換でき、フライホイール105の回転慣性の質量効果によって第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動を効果的に低減できる。また、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となる機会を少なくできるので、第1ロッド1と第2ロッド2が一時的に零となって制振ターンバックル110の姿勢が変化し、制振ターンバックル110そのものが振動する不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル110は、フライホイール105が、互いに重複する第1接続管103の嵌合部103cと第2接続管104の嵌合部104cを取り囲む位置に配置されている。これにより、第1接続管103と第2接続管104とフライホイール105とを合わせた全体の寸法を比較的小型にできる。したがって、この制振ターンバックル110は、他の部材との位置関係による設置位置の制限を受け難く、比較的高い自由度で構造物に適用できる。また、この制振ターンバックル110は、比較的小型にできるので、構造物の美観を損ねる不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル110は、第1ロッド1及び第2ロッド2から実質的に引張力のみが伝達され、圧縮力を受けないので、比較的小さい強度の部品で構成できる。したがって、この制振ターンバックル110は、質量を小さくできるので、接続される第1ロッド1及び第2ロッド2に過大な撓みを生じさせる不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル110は、フライホイール105により、互いに重複する第1接続管103の嵌合部103cと第2接続管104の嵌合部104cを取り囲んで形成されているので、第1接続管103の先端部分と第2接続管104の先端部分を覆うケーシングが不要である。したがって、効果的に部品点数の削減と軽量化を図ることができる。
第2実施形態の制振ターンバックル110において、第1接続管103の雄螺子131及び第2接続管104の雄螺子141と、フライホイール105の第1雌螺子151及び第2雌螺子152との間に複数のボールを配置して、ボールねじを形成してもよい。
第2実施形態の制振ターンバックル110は、第1実施形態の制振ターンバックル10に替えて、図6の壁体や、図7の庇14や、図8の張弦梁16に適用可能である。
図12は、本発明の張力材用制振装置の第3実施形態としての制振ターンバックルを示す正面図であり、図13は、第3実施形態の制振ターンバックルの縦断面図であり、図14は、図12のD−D線における縦断面図である。この制振ターンバックル210は、タイロッドを構成する張力材としての第1ロッド1と第2ロッド2に接続され、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入すると共に、タイロッドに生じる振動と、このタイロッドが架け渡される部材の振動とを抑制するものである。
この制振ターンバックル210は、第1ロッド1に接続される第1接続部としての第1接続具203と、第2ロッド2に接続される第2接続部としての第2接続具204と、上記第1接続具203と第2接続具204の重複部分を収容するケーシング211と、第1接続具203と第2接続具204を連結する保持部としての第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208と、ケーシング211の両側に配置された円板状部材251を有する回転体としてのフライホイール205を備える。なお、図12乃至14では、第1接続具203と第2接続具204が、相対変位範囲の中央の位置にある様子を示している。
第1接続具203は、第1ロッド1の先端部1aに螺合する貫通孔232を有する基端部203aと、この基端部203aの先端に連なってラック231が形成された先端部203bを有する。第2接続具204は、第2ロッド2の先端部2aに螺合する貫通孔242を有する基端部204aと、この基端部204aの先端に連なってラック241が形成された先端部204bを有する。第1接続具203と第2接続具204は、軸方向視において略正方形に形成されている。第1接続具203の貫通孔232には、第1ロッド1の先端部1aの雄螺子に螺合する雌螺子が形成されている。第2接続具204の貫通孔242には、第2ロッド2の先端部2aの雄螺子に螺合する雌螺子が形成されている。上記第1接続具203の貫通孔232の雌螺子と、上記第2接続具204の貫通孔242の雌螺子は、互いに逆方向巻きに形成されている。上記第1接続具203と第2接続具204の先端部203b,204bは、高さ方向において一方の側に偏って形成され、他方の側を望む面にラック231,241が形成されている。これらの先端部203b,204bのラック231,241が形成された面を対向させるように、第1接続具203と第2接続具204が配置されている。
ケーシング211は、軸方向視において略正方形を成す角管体で形成され、第1接続具203と第2接続具204の先端部203b,204bと、基端部203a,204aの先端側部分を収容している。ケーシング211の軸方向両側の開口から、第1接続具203の基端部203aと、第2接続具204の基端部204aが、軸方向に夫々進退可能に突出している。
ケーシング211内には、第1接続具203の先端部203bの端面と、第2接続具204の基端部204aの先端面であって、高さ方向の他方の側に位置して第1接続具203の先端部203bの延長上に位置する部分との間に、第1板状ゴム207が連結されている。また、第2接続具204の先端部204bの端面と、第1接続具203の基端部203aの先端面であって、高さ方向の他方の側に位置して第2接続具204の先端部204bの延長上に位置する部分との間に、第2板状ゴム208が連結されている。第1板状ゴム207は、第1接続具203の先端部203bと略同じ幅及び厚みを有するゴム製の板状体で構成されている。第2板状ゴム208は、第2接続具204の先端部204bと略同じ幅及び厚みを有するゴム製の板状体で構成されている。
上記第1板状ゴム207と第2板状ゴム208は、この制振ターンバックル210により第1ロッド1及び第2ロッド2に所定の張力を導入したときに、第1接続具203と第2接続具204が、これらの第1接続具203と第2接続具204について予め想定される相対変位範囲の中央に位置するように、バネ定数が設定されている。更に、第1板状ゴム207と第2板状ゴム208は、第1接続具203と第2接続具204の予め想定される相対変位範囲において、バネ定数が線形であり、かつ、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように上記バネ定数が設定されている。ここで、第1接続具203と第2接続具204の予め想定される相対変位範囲とは、制振ターンバックル210が適用されるタイロッドにより接続される部材が、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1接続具203と第2接続具204に生じる相対変位範囲である。なお、保持部としての第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208は、ゴム以外の例えば板状のバネ等で構成されてもよく、第1ロッド1及び第2ロッド2に導入すべき所定の張力が導入されたときに第1接続具203と第2接続具204を相対変位範囲の中央に保持できれば、材料や形状や配置個数は特に限定されない。また、バネ定数が非線形の保持部を用いる場合、必ずしも第1接続具203と第2接続具204を相対変位範囲の中央に保持しなくてもよい。要は、保持部は、予め想定される地震や風や活荷重を受けて振動したときに、第1ロッド1及び第2ロッド2の張力の変動範囲が正の領域に収まるように、第1接続具203と第2接続具204を接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持すればよい。
上記フライホイール205は、上記ケーシング211の両側に配置された2つの円板状部材251,251と、上記ケーシング211を横断方向に貫通して上記2つの円板状部材251,251が両端に固定された回転軸252と、この回転軸252の中央に外嵌固定されて上記ケーシング211内に配置されたピニオン523を有する。なお、図14では、断面視のフライホイール205ではなく、平面視のフライホイール205を示している。上記ピニオン523は、上記第1接続具203の先端部203bと第2接続具204の先端部204bとの間に配置され、回転軸252の高さ方向の両側に位置する第1接続具203のラック231と第2接続具204のラック241に歯合している。上記第1接続具203のラック231と、上記第2接続具204のラック241と、上記ピニオン523とで、第1接続具203と第2接続具204の相対直線運動をフライホイール205の回転運動に変換する運動変換機構206を構成している。
上記構成の制振ターンバックル210を用いて、以下のようにタイロッドが構成される。まず、タイロッドを架け渡す一方の部材に、第1ロッド1の一端に設けられたクレビスを接続する。また、タイロッドを架け渡す他方の部材に、第2ロッド2の一端に設けられたクレビスを接続する。次いで、第1ロッド1の他端にある先端部1aの雄螺子に、制振ターンバックル210の第1接続具203の貫通孔232の雌螺子を螺合させると共に、第2ロッド2の他端にある先端部2aの雄螺子に、制振ターンバックル210の第2接続具204の貫通孔242の雌螺子を螺合させる。上記第1ロッド1の雄螺子と第2ロッド2の雄螺子は、互いに逆方向巻きに形成された上記第1接続具203の貫通孔232の雌螺子と第2接続具204の貫通孔242の雌螺子に対応して、互いに逆方向巻きに形成されている。第1ロッド1に第1接続具203を螺合すると共に第2ロッド2に第2接続具204を螺合した後、制振ターンバックル210の全体を軸回りに回動させる。これにより、第1ロッド1と第2ロッド2を互いに接近する方向に引き寄せて、第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入する。制振ターンバックル210は、張力を導入しない初期状態では、第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208が収縮しており、第1接続具203と第2接続具204が接近して最も小さい相対直線変位を成す位置にある。この制振ターンバックル210を回動させて第1ロッド1と第2ロッド2に張力を導入すると、張力が増大するに伴い、第1板状ゴム207と第2板状ゴム208が伸長して第1接続具203と第2接続具204が遠ざかり、この第1接続具203と第2接続具204の相対直線変位が増大する。第1ロッド1と第2ロッド2に導入される張力が、部材を連結するための所定の張力に達し、制振ターンバックル210の回動を停止すると、第1接続具203と第2接続具204は、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能であり、かつ、相対変位範囲の略中央に保持される。このとき、上記フライホイール205のピニオン523が、上記第1接続具203のラック231の軸方向の略中央と、上記第2接続具204のラック241の軸方向の略中央に位置するのが好ましい。こうして制振ターンバックル210により、第1ロッド1と第2ロッド2が接続されると共に、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力が導入されて、部材間がタイロッドで連結される。
本実施形態の制振ターンバックル210は、タイロッドの振動や、このタイロッドが架け渡された部材の振動を、次のようにして抑制する。まず、地震荷重や風荷重や活荷重が作用して複数の部材の間に相対変位が生じると、これらの部材に連結された第1ロッド1と第2ロッド2の間に相対変位が生じ、これに応じて第1接続具203と第2接続具204が軸方向に相対直線運動を行う。第1接続具203と第2接続具204が相対直線運動を行うと、第1接続具203の先端部203bのラック231と第2接続具204の先端部204bのラック241が軸方向に相対直線運動を行う。これにより、2つのラック231,241に歯合するピニオン253が、ラック231,241の相対直線運動の方向に応じた方向に回転駆動され、回転軸252を介して2つの円板状部材251,251が回転駆動される。ここで、第1接続具203と第2接続具204が接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、フライホイール205の円板状部材251が中心軸回りの一方向と他方向とに交互に回動する。このフライホイール205の回転慣性の質量効果により、第1ロッド1と第2ロッド2の相対変位による振動エネルギーと、部材の相対変位による振動エネルギーが減衰する。その結果、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1接続具203と第2接続具204が接近方向と離隔方向とに交互に変位することにより、第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208が収縮と伸長を繰り返す。この第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208の伸縮に伴う減衰作用により、第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動が低減する。また、第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208により、振動に伴う衝撃が吸収される。
本実施形態の制振ターンバックル210によれば、第1ロッド1と第2ロッド2に所定の張力を導入したとき、第1板状ゴム207及び第2板状ゴム208により、第1接続具203と第2接続具204を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持できる。これにより、第1接続具203と第2接続具204が接近方向に相対直線運動をしても、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となることを防止できる。したがって、上記第1接続具203と第2接続具204の相対直線運動を、効果的にフライホイール205の回転運動に変換でき、フライホイール205の回転慣性の質量効果によって第1ロッド1及び第2ロッド2と部材の振動を効果的に低減できる。また、第1ロッド1と第2ロッド2の引張力が零となる機会を少なくできるので、第1ロッド1と第2ロッド2が一時的に零となって制振ターンバックル210の姿勢が変化し、制振ターンバックル210そのものが振動する不都合を防止できる。
また、本実施形態の制振ターンバックル210は、フライホイール205の円板状部材251が、互いに高さ方向に重複する第1接続具203の先端部203bと第2接続具204の先端部203bの側方に配置されている。これにより、第1接続具203と第2接続具204とフライホイール205とを合わせた全体の寸法を比較的小型にできる。したがって、この制振ターンバックル210は、他の部材との位置関係による設置位置の制限を受け難く、比較的高い自由度で構造物に適用できる。また、この制振ターンバックル210は、比較的小型にできるので、構造物の美観を損ねる不都合を防止できる。
また、この制振ターンバックル210は、第1ロッド1及び第2ロッド2から実質的に引張力のみが伝達され、圧縮力を受けないので、比較的小さい強度の部品で構成できる。したがって、この制振ターンバックル210は、質量を小さくできるので、接続される第1ロッド1及び第2ロッド2に過大な撓みを生じさせる不都合を防止できる。
第3実施形態の制振ターンバックル210は、第1実施形態の制振ターンバックル10に替えて、図6の壁体や、図7の庇14や、図8の張弦梁16に適用可能である。
上記各実施形態において、本発明の張力材用制振装置をターンバックルに適用した場合について説明したが、本発明の張力材用制振装置は、ターンバックルの機能は必ずしも要しない。すなわち、本発明の張力材用制振装置は、所定の引張力が導入されるように張力材に接続されるのであれば、張力材の張力の調整機能は無くてもよい。本発明の張力材用制振装置は、張力材の振動又は張力材に接続された部材の振動を抑制する目的で、張力材に接続される種々の装置に適用可能である。
1 第1ロッド
2 第2ロッド
3 第1接続管
4 第2接続管
5 フライホイール
6 運動変換機構
7 第1管状ゴム
8 第2管状ゴム
10 制振ターンバックル
11 枠体
12 タイロッド
13 クレビス
14 庇
15 壁体
16 張弦梁
17 梁本体
18 束材
31,32 第1接続管の貫通螺旋溝
33 第1接続管の小径貫通孔
41,42 第2接続管の貫通螺旋溝
43 第2接続管の小径貫通孔
51 フライホイールの柱状部材
52 フライホイールの固定ピン
53 フライホイールの円筒部材
103 第1接続管
104 第2接続管
105 フライホイール
106 運動変換機構
107 第1管状ゴム
108 第2管状ゴム
110 制振ターンバックル
131 第1接続管の雄螺子
133 第1接続管の小径貫通孔
141 第2接続管の雄螺子
143 第2接続管の小径貫通孔
151 フライホイールの第1雌螺子
152 フライホイールの第2雌螺子
203 第1接続具
204 第2接続具
205 フライホイール
206 運動変換機構
207 第1板状ゴム
208 第2板状ゴム
210 制振ターンバックル
211 ケーシング
231 第1接続具のラック
232 第1接続具の貫通孔
241 第2接続具のラック
242 第2接続具の貫通孔
251 フライホイールの円板状部材
252 フライホイールの回転軸
253 フライホイールのピニオン

Claims (6)

  1. 複数の部材の間に架け渡される張力材と張力材との間、又は、上記張力材と部材との接続部に介設され、上記張力材及び部材の振動を抑制するための張力材用制振装置であって、
    一方が上記張力材に接続され、他方が上記張力材又は上記部材に接続され、軸方向に相対直線運動が可能な第1接続部及び第2接続部と、
    上記第1接続部と上記第2接続部とに重複する位置に配置された回転体と、
    上記第1接続部と上記第2接続部の相対直線運動を上記回転体の円運動に変換する運動変換機構と、
    上記張力材に張力が導入された状態で、上記第1接続部と上記第2接続部を、接近方向と離隔方向とに相対直線運動が可能なように保持する保持部と
    を備え
    上記保持部は、上記第1接続部と上記第2接続部との間に連結された弾性体を有することを特徴とする張力材用制振装置。
  2. 請求項1に記載の張力材用制振装置において、
    上記回転体は、上記第1接続部の先端部分と上記第2接続部の先端部分を取り囲むスリーブ状に形成されていることを特徴とする張力材用制振装置。
  3. 請求項に記載の張力材用制振装置において、
    上記第1接続部と第2接続部は、一方の先端部分の内側に他方の先端部分が嵌合した状態で相対直線運動が可能に形成され、
    上記運動変換機構は、上記第1接続部と上記第2接続部の嵌合部分に互いに逆方向巻きに形成された貫通螺旋溝と、上記回転体の内側に直径方向に延在して固定され、上記第1接続部の貫通螺旋溝と上記第2接続部の貫通螺旋溝とを貫通して配置された柱状部材とを有することを特徴とする張力材用制振装置。
  4. 請求項に記載の張力材用制振装置において、
    上記運動変換機構は、第1接続部の先端近傍の外周面と第2接続部の先端近傍の外周面とに夫々形成されて互いに逆方向巻きに螺旋切られた雄螺子と、上記回転体の内側面の両端部に夫々形成されて上記第1接続部の雄螺子と上記第2接続部の雄螺子とに各々螺合する雌螺子とを有することを特徴とする張力材用制振装置。
  5. 請求項1に記載の張力材用制振装置において、
    上記回転体は、上記第1接続部の先端部分と第2接続部の先端部分との側方に配置された円盤状部材と、この円盤状部材の中心に連結された回転軸とを有し、
    上記運動変換機構は、上記第1接続部の先端部分と上記第2接続部の先端部分とに対向して夫々形成されたラックと、上記第1接続部のラックと上記第2接続部のラックとに歯合すると共に上記回転体の回転軸に連結されたピニオンとを有することを特徴とする張力材用制振装置。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載の張力材用制振装置において、
    2つの上記張力材を接続するように設置され、
    上記第1接続部の基端部分と上記第2接続部の基端部分に雌螺子が夫々形成され、
    上記2つの張力材の先端に雄螺子が夫々形成され、
    上記第1接続部の雌螺子と第2接続部の雌螺子に、上記2つの張力材の先端の雄螺子を夫々螺合した状態で上記第1接続部及び第2接続部を軸回りに回転することにより、上記第1接続部及び第2接続部と上記2つの張力材との螺合長さを調整して上記2つの張力材に導入する張力を調整するように構成されていることを特徴とする張力材用制振装置。
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