JP2007016538A - 建築物に内蔵させる制震装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で簡易な制震構造を有して既存の建築物にも適用できる制震装置を提供する。
【解決手段】緩衝スプリング7と、緩衝スプリング7に直列接続されて全長を調整可能なターンバックル11とを備えた制震部材1を、建築物の梁や柱などの構造部材に固定して構成される制震装置である。緩衝スプリング7は、スプリング本体12の内部に、2つのU字状部材13,14が逆方向から内挿されて構成され、その開放終端13A,14Aがスプリング本体12に接続される一方、そのU字状基端13B,14Bは、可変長ロッド9を介して、ターンバックル11に接続されている。
【選択図】 図1
【解決手段】緩衝スプリング7と、緩衝スプリング7に直列接続されて全長を調整可能なターンバックル11とを備えた制震部材1を、建築物の梁や柱などの構造部材に固定して構成される制震装置である。緩衝スプリング7は、スプリング本体12の内部に、2つのU字状部材13,14が逆方向から内挿されて構成され、その開放終端13A,14Aがスプリング本体12に接続される一方、そのU字状基端13B,14Bは、可変長ロッド9を介して、ターンバックル11に接続されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、地震による大きな震動を有効に吸収して建築物の崩壊や家具の散乱を防止する制震装置に関する。
地震国とも呼ばれる日本では、大小の地震被害が繰り返し起きているのが実情である。そして、1995年の淡路阪神大震災などでは、二次的な火災もさることながら、一次的な家屋の倒壊による圧死の被害も多かったことが報告されている。
そこで、地震による被害を最小限に抑える研究が進められており、建造物における耐震構造や制震構造について、各種の提案がされている(例えば、特許文献1)。
特開2001−123696号公報
しかしながら、いずれの提案も簡易性に欠け、そのため既存の家屋に取り付けるには不向きであった。特に、制震構造については、新築家屋に要求されるだけでなく、むしろ、既存の建築物にこそ補充的に必要なのであるから、安価で取り付けが簡単であることが何より要求される。
この発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、安価で簡易な制震構造を有して既存の建築物にも適用できる制震装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、緩衝スプリングと、前記緩衝スプリングに直列に接続されて全長を調整可能な調整機構とを備えた制震部材を、建築物の構造部材に固定して構成される制震装置であって、前記緩衝スプリングは、スプリング本体の内部に、2つのU字状部材が逆方向から内挿されて構成され、前記2つのU字状部材それぞれの開放終端がスプリング本体に接続される一方、それぞれのU字状基端は、直接又は他の部材を介して、前記調整機構及び前記構造部材に接続されていることを特徴とする。
本発明では、独特の構造を有する緩衝スプリングによって制震構造を実現しているので、極めて簡易的であり、例えば、既存の建築物の壁を貼り変えるリフォーム工事に合わせて取り付けることができる。
すなわち、好ましくは、本発明の制震部材は、壁の中に収容されている。また、同一構成の一対の制震部材が建築物の筋交い方向に配置されて固定されているのが好ましい。この場合には緩衝スプリングのバネ定数を適宜に設定することによって、筋交いによる耐震構造と緩衝スプリングによる制震構造とを両立させることができる。
更に好ましくは、前記制震部材は、2本の可変長ロッドと、前記2本の可変長ロッドの端部を受け入れるネジ穴を備える調整機能とを備え、前記2本の可変長ロッドには互いに逆ネジとなるネジ山が形成されている。
上記した本発明によれば、安価で簡易な制震構造を有して既存の建築物にも適用できる制震装置を実現できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、第1実施例に係る制震装置EQUの概略構成を図示したものである。この制震装置EQUは、柱や梁などの建築物の構造部材に固定されるが、図示例では、柱FR1と梁FR2と土台FR3に固定され、これらで形成される壁の内部空間に直立状態で収容されている。
この制震装置EQUは、一対の制震部材1,1が、折り曲げ可能な2つの接続部材2,2によって連結されて構成されている。接続部材2は、制震部材1の突出軸3,3に軸支された2枚の薄板4,4と、2枚の薄板4,4を接続するヒンジ5とで構成されている。薄板4は、ヒンジ5に規制されつつ、突出軸3を中心に回転できるので(矢印参照)、一対の制震部材1,1を互いに近づけることができる。したがって、例えば、搬送状態では、2つの接続部材2が共に折り曲げられて、制震装置EQUが折り畳まれている。なお、この接続部材2は、必ずしも必須ではなく、各制震部材1Aを独立して建築物の必要箇所に取り付けるのも好適である。
何れにしても、制震部材1は、構造部材に固定される取付部6A,6Bと、一方側の取付部6Bに固定される緩衝スプリング7と、他方側の取付部6Aに固定される連結部8と、緩衝スプリング7と連結部8に接続される2つの可変長ロッド9,10と、可変長ロッド9,10の長さを調整可能なターンバックル11とで構成されている。この例では、取付部6Aは、梁FR2と柱FR1に固定され、取り付け部6Bは、土台FR3と柱FR1に固定されている。
図2は、緩衝スプリング7を詳細に図示した正面図(a)と斜視図(b)である。緩衝スプリング7は、コイル状に巻かれたスプリング本体12と、スプリング本体12に収容されている2つのU字状の内挿棒13,14とで構成されている。図示の通り、2つの内挿棒13,14は、互いに反対方向から、スプリング本体12の軸方向に内挿されている。
U字状の内挿棒13,14の開放端部13A,14Aは、折り返されてスプリング本体12の一方側終端に固定されている。また、内挿棒13,14の基端部13B,14Bは、スプリング本体12の他方側終端から突出している。そして、突出した基端部13B,14Bは、それぞれ、可変長ロッド9と取付部6Bに固定されている。
内挿棒13について更に詳細に説明すると次の通りである。U字状の内挿棒13を、可変長ロッド9に設けられた径方向穴9aに通した後、その内挿棒13の開放端部13A,13Aを、スプリング本体12の内側から突出させる。そして、開放端部13A,13Aを折り返してスプリング本体12に固定している。この状態では、内挿棒13の基端部13Bが、可変長ロッド9の径方向穴9aに位置するので、溶接などによって内挿棒13と可変長ロッド9を固定状態にする。
内挿棒14についてもほぼ同様である。U字状の内挿棒14を、取付部6Bに設けられた貫通穴15に通した後、その内挿棒14の開放端部14A,14Aを、スプリング本体12の内側から突出させる。そして、開放端部14A,14Aを折り返してスプリング本体12に固定している。この状態では、内挿棒14の基端部14Bが、取付部6Bの貫通穴15に位置しているので、溶接などによって内挿棒14と貫通穴15とを固定状態にする(図4参照)。
図3は、連結部8と可変長ロッド10と取付部6Aとの関係を示す斜視図である。連結部8は、連結本体部16と、連結本体部16から突出する2つの把持腕17,17とで構成されている。2つの把持腕17,17には、延設方向に直交する貫通穴17a,17aが形成されている。一方、連結本体部16には、延設方向に雌ネジ穴が形成されており、この雌ネジ穴に、可変長ロッド10に形成された雄ネジ10aがネジ込まれることで、連結部8と可変長ロッド10とが一体化されている。
取付部6Aは、構造部材への取付面18,19と、連結部8及び接続部材2が取り付けられる固定面20とが、互いに直交して一体的に形成されている。取付面18,19には、構造部材への取付穴18a,19aが設けられている。固定面20には、突出軸3(図1)が設けられて、突出軸3によって、接続部材2が回動可能に軸支されている。また、固定面20の連結部側の周縁20aは、円弧状に形成されており、その円弧に対応して回転中心位置に開口穴20bが形成されている。
連結部8を取付部6Aに取り付けるには、先ず、把持腕17,17が固定面20を把持するように、2つの把持腕17,17の間に、固定面20を受け入れる。そして、把持腕17の貫通穴17aと、固定面20の開口穴20bとを重合させて、そこにボルトBTを挿入して、反対側からナットNTを締め込む。この締め込み作業によって、連結部8と取付部6Aとはきつく一体化されることになる。
ターンバックル11は、軸方向に雌ネジ穴を設けて構成されており、その雌ネジ穴に可変長ロッド9,10に形成された雄ネジが螺合している。可変長ロッド9,10の雄ネジ及びターンバックル11の雌ネジは、一方が右ネジで他方が左ネジの関係にある。そのため、ターンバックル11を一方側に回転させると、可変長ロッド9と可変長ロッド10は共に長くなり、ターンバックル11を他方側に回転させると、可変長ロッド9と可変長ロッド10は共に短くなる。その結果、制振部材1の全長を、現場に合わせた最適長さに調整することが可能となる。
上記した図1に記載の制震装置EQUによれば、地震の震動によって建築物が震動したとしても、構造部材の変移を緩衝スプリング7によって吸収することができるので、箪笥やTVなどの大型家具の転倒を防止することができる。そのため、大きな地震においても、大型家具の転倒による圧死などを確実に防止することができる。
特に、実施例の緩衝スプリング7は、スプリング本体12と、スプリング本体12に収容されている2つのU字状の内挿棒13,14と、で構成されているので、制震部材1の軸方向から偏移した力が加わっても、スプリング本体12が屈曲してしまうおそれがない。すなわち、内挿棒13,14がスプリング本体12の屈曲を規制するので、緩衝スプリング7は、制震部材1の軸方向にのみ伸縮して有効な制震作用を発揮する。
以上、制震装置EQUの制震部材1が共に直立している第1実施例について説明したが、制震部材1を筋交いの方向に傾斜して設けるもの好適である。この場合には、第1実施例の緩衝スプリングよりバネ定数(荷重/伸び)高く設定して、限界荷重までは、制震部材1を筋交いとして機能させ、それ以上の荷重に対しては緩衝部材として機能させることができる。
図5(a)は、筋交い方向に制震部材1,1を設けた第2実施例の制震装置EQUを図示したものである。この制震装置EQUは、取付部6A,6Bによって、柱FR1と梁FR2と土台FR3に固定されており、壁の内部空間に収容されている。
一方、図5(b)は、第3実施例の制震装置EQUを図示したものであり、2本の柱に固定されて構成されている。この制震装置EQUの場合には、接続部材2’によって、上下の取付部6A’,6B’が接続されている。なお、上下の取付部6A’,6B’には、取付面18が不要であることは言うまでもない。
図6は、第4実施例の制震装置EQUを図示したものである。この実施例では、筋交い方向に設けた2本の緩衝スプリング7A,7B(7C,7D)によって制震部材1が構成されている。そして、4本の緩衝スプリング7A〜7Dの交差位置に連結部材CNが配置されている。なお、この実施例の場合には、長さ調整機構は存在しないため、対角線の長さに合わせた緩衝スプリングを用意するか、別に長さ調整機能を設ける必要がある。長さ調整機能を設ける場合、緩衝スプリング7C,7Dは必ずしも必須ではないので、緩衝スプリング7C,7Dに代えて、ターンバックル11を配置すれば良い。
以上、本発明の4つの実施例を具体的に説明したが、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではない。例えば、上記各構成の制震装置は、必ずしも直立させて設置する必要はなく、梁などに固定することで水平面上に設置しても良い。また、木造建築物に限定されるものではなく、鉄筋コンクリート製の建築物に適用することもできる。何れにしても、本発明によれば、地震時に構造部材が大きく偏移しても、その震動を確実に吸収して箪笥やTVなどの大型家具の転倒を防止することができる。
7 緩衝スプリング
11 調整機構(ターンバックル)
1 制震部材
EQU 制震装置
12 スプリング本体
13,14 U字状部材(内挿棒)
13A,14A 開放終端
13B,14B U字状基端
11 調整機構(ターンバックル)
1 制震部材
EQU 制震装置
12 スプリング本体
13,14 U字状部材(内挿棒)
13A,14A 開放終端
13B,14B U字状基端
Claims (4)
- 緩衝スプリングと、前記緩衝スプリングに直列に接続されて全長を調整可能な調整機構とを備えた制震部材を、建築物の構造部材に固定して構成される制震装置であって、
前記緩衝スプリングは、スプリング本体の内部に、2つのU字状部材が逆方向から内挿されて構成され、
前記2つのU字状部材それぞれの開放終端がスプリング本体に接続される一方、それぞれのU字状基端は、直接又は他の部材を介して、前記調整機構及び前記構造部材に接続されていることを特徴とする制震装置。 - 前記制震部材は、壁の中に収容されている請求項1に記載の制震装置。
- 同一構成の一対の制震部材が建築物の筋交い方向に配置されて固定されている請求項1又は2に記載の制震装置。
- 前記制震部材は、2本の可変長ロッドと、前記2本の可変長ロッドの端部を受け入れるネジ穴を備える調整機能とを備え、
前記2本の可変長ロッドには互いに逆ネジとなるネジ山が形成されている請求項1〜3の何れかに1項に記載の制震装置。
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