JP5991591B2 - 振動低減装置 - Google Patents
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これは、シリンダー内で分割された流体(液体)に対してダンパー変位により圧力を加えてシリンダー径よりも小径のバイパス管を通して還流させるもので、ダンパー変位速度より還流速度が高速になることでバイパス管内の流体質量よりも大きな慣性質量効果が得られるものである。
図5(a)において符号1はシリンダー、2はピストン、3はロッドであって、シリンダー1内はピストン2によって第1流体室4と第2流体室5とに区画され、それら第1流体室4と第2流体室5とはバイパス管6により連通されている。
この流体式慣性質量ダンパーは、シリンダー1の一端(図5(a)において左端)およびロッド3の先端(同、右端)がそれぞれ相対振動する二部材(図示せず)に対して接続されるものであり、それによりたとえば図5(b)に示す構造モデルのように、シリンダー1が支持構造体7に対して接続され、ロッド3がその支持構造体7に対して相対振動する制振対象の構造体8に対して接続されてそれらの間に設置されるものである。
これは、同等サイズの慣性質量ダンパーをボールねじ機構を利用して構成する場合に容易に得られる数千tonもの慣性質量に比べて1%にもならない程度であり、その点でこの種の流体式慣性質量ダンパーは建物等の大規模な構造物を対象とする大容量の制振装置として適用することは困難であり現実的ではない。
したがって本発明の振動低減装置は、ダンパー両端間の相対速度に比べて流体の移動速度が拡大される効果と、回転慣性質量ダンパーにおける回転錘が高速回転することによる効果が相乗的に同時に得られるものであり、それにより特許文献1,2に示されるような従来一般的な流体式慣性質量ダンパーに比べて桁違いに大きな慣性質量が得られるものである。
本実施形態の振動低減装置は、基本的には図5に示した従来の流体式慣性質量ダンパーである振動低減装置と同様に、相対振動する二部材間に介装されてそれら二部材間に生じる相対振動を低減させるための振動低減装置であるが、上記従来の流体式慣性質量ダンパーの基本構成を踏襲しつつそのバイパス管6の一部を切除してそこに回転慣性質量ダンパー21を設置したことを主眼とする。
そして、それら第1サブピストン19および第2サブピストン20に対して上記のボールねじ機構23を構成しているボールねじ軸24の両端部がそれぞれ相対回転不能に連結されていて、そのボールねじ軸24は第1サブピストン19および第2サブピストン20とともにその全体が一体となって軸方向(図2(a)において左右方向)に往復移動可能とされている。
すなわち、二部材間の相対振動によってメインピストン12がメインシリンダー11に対して移動した際にはそれに従動して第1サブシリンダー17および第2サブシリンダー18内の流体が逆方向に高速で移動し、それに伴い、第1サブピストン19と第2サブピストン20およびそれらの間に連結されているボールねじ軸24の全体が軸方向に移動し、ボールねじ軸24に螺着されているボールナット25およびそれに連結されている回転錘22が高速で回転し、その結果、図5に示したような従来一般的な単なる流体式慣性質量ダンパーに比べて桁違いに大きな慣性質量が得られる。
すなわち、図3に示すように、上記のメインピストン12に、第1隔室14内の流体の圧力が所定のリリーフ圧となった際に流体を第1隔室14から第2隔室15に流出せしめる第1リリーフ弁41を設けるとともに、第2隔室15内の流体の圧力がリリーフ圧となった際に流体を第2隔室15から第1隔室14に流出せしめる第2リリーフ弁42を設けることにより、メインシリンダー11内における流体の圧力がリリーフ圧以上となることを防止でき、それによりダンパー負担力を頭打ちして過大な負担力が生じないようにすることができる。
すなわち、回転錘22とボールナット25との間に、ボールナット25から回転錘22に伝達されるトルクが所定の制限値を超えるまではトルクを伝達して回転錘22をボールナット25とともに一体回転させ、トルクが制限値を超えた時点で回転錘22をボールナット25に対して相対回転(空転)させてトルク伝達を制限するトルク制限機構45を介装したものであり、これによっても図3に示したものと同様にダンパー負担力を頭打ちして過大な負担力が生じないようにすることができる。
なお、この場合において、ボールねじ機構23に作用するトルクTと、ボールねじ軸24に作用する軸力Fとの間には、ボールねじ機構23のリードLdとして次式の関係がある(ねじ効率ηは0.95程度なので無視する)。
(1)従来の流体式慣性質量ダンパーに対し、ボールねじ機構23により回転錘22を回転させる構成の回転慣性質量ダンパー21を併用したことにより大きな慣性質量を付与できる。特に回転錘22を付加することによる寄与が大きいので第1サブシリンダー17および第2サブシリンダー18(従来のバイパス管6に相当)の長さを短くしても慣性質量はほとんど変化しない。
また、リリーフ弁を用いることで摩擦トルクを用いた場合に比べてリリーフ後の荷重増を抑制できる効果がある。
たとえば、上記実施形態では回転慣性質量ダンパー21におけるボールねじ機構23の構成として、ボールねじ軸24を回転不能かつボールナット25を回転可能としたうえで回転錘22をボールナット25に対して連結して回転錘22をボールナット25と一体に回転させる構成としたが、逆に、ボールねじ軸24を回転可能かつボールナット25を回転不能としたうえで回転錘22をボールねじ軸24に対して連結して回転錘22をボールねじ軸24と一体に回転させる構成としても同様の効果が得られる。
また、その場合においては、図4に示したように回転錘22とボールナット25との間にトルク制限機構45を介装することに代えて、同様のトルク制限機構45を回転錘22とボールねじ軸24との間に介装すれば良い。
12 メインピストン
13 ロッド
14 第1隔室
15 第2隔室
17 第1サブシリンダー
18 第2サブシリンダー
19 第1サブピストン
20 第2サブピストン
21 回転慣性質量ダンパー
22 回転錘
23 ボールねじ機構
24 ボールねじ軸
25 ボールナット
30 支持部材
31 ガイド溝
32 突条
33 軸受け部材
34 支持部材
41 第1リリーフ弁
42 第2リリーフ弁
45 トルク制限機構
Claims (6)
- 相対振動する二部材の間に介装されてその相対振動を低減させるための振動低減装置であって、
流体を封入したメインシリンダー内にメインピストンを軸方向に移動自在に装着し、該メインピストンに接続したロッドの先端部を前記メインシリンダーの一端部から延出せしめて、該ロッドの先端部を前記二部材の一方に対して接続するとともに、前記メインシリンダーの他端部を前記二部材の他方に対して接続し、
前記メインシリンダー内を前記メインピストンによって第1隔室と第2隔室とに区画し、前記メインシリンダーよりも小径の第1サブシリンダーの基端を前記第1隔室に対して連通せしめるとともに、該第1サブシリンダーと同径の第2サブシリンダーの基端を前記第2隔室に対して連通せしめ、
前記第1サブシリンダーおよび前記第2サブシリンダーの先端部どうしを同軸状態でかつ双方の先端どうしの間に間隔をおいた状態で対向配置して、それら第1サブシリンダー内および第2サブシリンダー内にそれぞれ第1サブピストンおよび第2サブピストンを前記メインピストンに従動させて軸方向に移動自在に装着し、
前記第1サブシリンダーおよび前記第2サブシリンダーの先端部相互間に、回転錘をボールねじ機構を介して回転させる構成の回転慣性質量ダンパーを前記第1サブピストンおよび前記第2サブピストンにより駆動可能に設置してなることを特徴とする振動低減装置。 - 請求項1記載の振動低減装置であって、
前記ボールねじ機構を、前記第1サブシリンダーおよび前記第2サブシリンダーに対して回転不能な状態で両端部が前記第1サブピストンおよび前記第2サブピストンに対してそれぞれ連結されたボールねじ軸と、前記メインシリンダーに対して回転可能かつ軸方向変位不能に支持されて前記ボールねじ軸に螺着されたボールナットにより構成し、前記回転錘を前記ボールナットに対して一体に回転可能に連結してなることを特徴とする振動低減装置。 - 請求項1記載の振動低減装置であって、
前記ボールねじ機構を、前記第1サブシリンダーおよび前記第2サブシリンダーに対して回転可能な状態で両端部が前記第1サブピストンおよび前記第2サブピストンに対してそれぞれ連結されたボールねじ軸と、前記メインシリンダーに対して回転不能かつ軸方向変位不能に支持されて前記ボールねじ軸に螺着されたボールナットにより構成し、前記回転錘を前記ボールねじ軸に対して一体に回転可能に連結してなることを特徴とする振動低減装置。 - 請求項1,2または3記載の振動低減装置であって、
前記メインピストンに、前記第1隔室内の前記流体の圧力が所定のリリーフ圧となった際に該流体を該第1隔室から前記第2隔室に流出せしめる第1リリーフ弁と、前記第2隔室内の前記流体の圧力が前記リリーフ圧となった際に該流体を該第2隔室から前記第1隔室に流出せしめる第2リリーフ弁を備えてなることを特徴とする振動低減装置。 - 請求項2記載の振動低減装置であって、
前記回転錘と前記ボールナットとの間に、前記ボールナットから前記回転錘に伝達されるトルクが所定の制限値を超えるまでは該トルクを伝達して前記回転錘を前記ボールナットとともに一体回転させ、前記トルクが前記制限値を超えた時点で前記回転錘を前記ボールナットに対して相対回転させてトルク伝達を制限するトルク制限機構を介装してなることを特徴とする振動低減装置。 - 請求項3記載の振動低減装置であって、
前記回転錘と前記ボールねじ軸との間に、前記ボールねじ軸から前記回転錘に伝達されるトルクが所定の制限値を超えるまでは該トルクを伝達して前記回転錘を前記ボールねじ軸とともに一体回転させ、前記トルクが前記制限値を超えた時点で前記回転錘を前記ボールねじ軸に対して相対回転させてトルク伝達を制限するトルク制限機構を介装してなることを特徴とする振動低減装置。
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