以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は図1は本発明の第1実施例としての燃料電池システム10の概略構成を示す説明図である。
燃料電池システム10は、燃料電池12を備え、この燃料電池12を第1冷却系20と第2冷却系40とで冷却する。この燃料電池システム10は、上記した第1冷却系20の他、燃料電池12へのガス供給を図る水素ガス供給系や空気供給系を備えるが、本発明の要旨とは直接関連しないので、その説明は省略する。また、燃料電池12は、電解質膜の両側にアノードとカソードの両電極を接合させた図示しない膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を備える発電モジュールを積層して構成されるが、この点についても本発明の要旨とは直接関連しないので、その説明は省略する。
第1冷却系20は、燃料電池12とラジエーター30とを、詳しくは燃料電池12の内部における電池内冷媒流路13とラジエーター30とを繋ぐ第1循環経路22と、当該経路に組み込まれた第1ポンプ28とを備える。そして、この第1冷却系20は、第1ポンプ28の駆動により冷媒を第1循環経路22に循環させ、ラジエーター30にて熱交換した冷却済み冷媒を電池内冷媒流路13に導き、燃料電池12の各セルを所定温度に冷却する。この場合、燃料電池12の運転時(発電運転時)における第1ポンプ28の駆動量、即ち冷媒の循環供給量は、燃料電池温度や発電状況に基づいて、制御装置50にて定められる。
第2冷却系40は、第1循環経路22におけるイン側の分岐点23inとアウト側の分岐点23outとを結ぶイオン交換経路32に、イオン交換器41と第2ポンプ42とを組み込んで備える。第2冷却系40は、イオン交換経路32と、分岐点23inからの分岐点下流経路22aと、分岐点23outまでの分岐点上流経路22bとで、電池内冷媒流路13とイオン交換器41とを含む冷媒の第2循環経路44(図2参照)を形成する。そして、この第2冷却系40は、第2ポンプ42の駆動により冷媒を第2循環経路44に循環させ、この第2循環経路44、詳しくはイオン交換経路32を通過する全ての冷媒を、イオン交換器41によるイオン除去に処し、イオン除去後の冷媒を電池内冷媒流路13に導く。こうして導かれた冷媒は、電池内冷媒流路13を通過する間に燃料電池12の各セルとの間で熱の授受を行う。
上記した第1冷却系20と第2冷却系40とは、共に燃料電池12の冷却に寄与するものの、第1冷却系20は電池冷却だけの機能を果たし、第2冷却系40にあっては、循環する冷媒からのイン除去を主機能とした上で、電池冷却の機能も果たす。これについては、後述する。こうした相違から、第1冷却系20と第2冷却系40では、次の点において相違する。
第1冷却系20は、第1循環経路22にラジエーター30を含み、このラジエーター30は、その内部に冷媒との熱交換を図るための屈曲或いは螺旋状等の熱交換流路を備える。一方、第2冷却系40は、第1循環経路22に分岐形成されたイオン交換経路32にイオン交換器41を含み、このイオン交換器41にあっては、筒状の冷媒通過管路しか備えない。しかも、図1に示すように、イオン交換器41は、燃料電池12の側に近接し、ラジエーター30については燃料電池12から離して設置されている。このため、第2冷却系40は、第2循環経路44の循環経路長を第1冷却系20における第1循環経路22の1/2〜1/4程度しか備えないことになる。よって、第2冷却系40の第2循環経路44を循環する冷媒の熱容量は、第1冷却系20の第1循環経路22を循環する冷媒の熱容量より小さくされていることになる。
また、上記した経路長の長短と機能の相違から、第2冷却系40の第2ポンプ42は、第1冷却系20に含まれる第1ポンプ28よりその冷媒循環能力(送り出し能力)は小さくて済む。このため、本実施例では、第2ポンプ42を12Vにて駆動する小容量の小型ポンプとし、第1ポンプ28については、24Vを駆動電圧とする大容量のポンプとした。
制御装置50は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、燃料電池システム10の種々の制御を司る。例えば、制御装置50は、図示しない負荷センサーからの入力を受けて燃料電池12への水素・空気の供給量を定め、その定めた供給量での水素供給と空気供給ができるよう、図示しないバルブ等を駆動制御する。この他、制御装置50は、燃料電池12の出口側において第1循環経路22に設けた温度センサー31や図示しないシステム起動スイッチ等からの入力を受けて、第1ポンプ28や第2ポンプ42を駆動制御する。
次に、上記した第1冷却系20と第2冷却系40による冷媒循環の様子を説明する。図2は第2冷却系40だけで冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図、図3は第1冷却系20と第2冷却系40とを併用して冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図、図4は第1冷却系20だけで冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図である。
図2に示す第2冷却系40だけでの冷媒循環では、第1冷却系20の第1ポンプ28は停止され、第2冷却系40の第2ポンプ42だけが駆動する。この第2ポンプ42は、イオン交換経路32の流路内冷媒を分岐点23inの側に向けて送り出す。分岐点23inに達した冷媒は、当該分岐点からラジエーター30の側と燃料電池12の側に別れて経路内を流れようとする。ところが、第1ポンプ28が停止されていること、および第1冷却系20の循環経路長が長くラジエーター30にあっては螺旋等の熱交換流路を有するために冷媒送り出しの抵抗(内部流路抵抗)が大きいことから、分岐点23inに達した冷媒は、当該分岐点からラジエーター30の側には流れず、燃料電池12の側に流れ込む。このため、第2ポンプ42は、分岐点下流経路22a、燃料電池12の電池内冷媒流路13、分岐点上流経路22bおよびイオン交換経路32の順に冷媒を第2循環経路44にて循環させる。こうした冷媒循環の際、第2循環経路44にて循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。
図3に示す第1冷却系20と第2冷却系40の併用循環では、第1ポンプ28と第2ポンプ42の両ポンプは駆動する。第1冷却系20の第1ポンプ28は、大容量であるため、経路長が長い第1循環経路22において、冷媒を支障なく循環させ、ラジエーター30により冷却された冷媒を燃料電池12に循環供給できる。これにより、燃料電池12の運転に伴う電池の温度上昇を抑制して、電池温度の維持を図ることができる。図3の併用循環では、第2冷却系40の第2ポンプ42も駆動していることから、分岐点23outに達した冷媒の一部は、イオン交換経路32を経て分岐点23inに達する。この分岐点23inでは、大容量の第1ポンプ28による冷媒送り出しにより、燃料電池12に向けて冷媒が流れているので、分岐点23inに達した冷媒は、当該分岐点から第1循環経路22に戻されて循環する。つまり、イオン交換経路32を通過する冷媒は、燃料電池12の通過の後にラジエーター30に達することなく燃料電池12を循環し、このイオン交換経路32には冷媒の熱交換機能を果たす機器が含まれていないことから、イオン交換経路32は、第1冷却系20におけるラジエーター30のバイパス機能を果たす。その上で、イオン交換経路32を通過する全ての冷媒は、イオン交換器41によるイオン除去に処される。
図4に示す第1冷却系20だけでの冷媒循環では、第1冷却系20の第1ポンプ28のみが駆動し、第2冷却系40の第2ポンプ42は停止している。このため、第1ポンプ28に送り出された全ての冷媒は、第1循環経路22のラジエーター30にて冷却された後に燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環する。よって、図3で示したように第2冷却系40によるラジエーター30のバイパスが無用な場合は、図4の冷媒循環を図ればよい。そして、制御装置50は、燃料電池12の運転期間において、電池冷却の状況によって図3の併用循環と図4の第1冷却系20だけの循環を使い分けることになる。
次に、燃料電池システム10の起動に当たって制御装置50が行う起動時冷媒循環制御について説明する。図5はシステム起動に伴ってなされる起動時冷媒循環制御の処理内容を示すフロート、図6は起動時冷媒循環制御におけるポンプ駆動の様子を示す説明図である。
図5の起動時冷媒循環制御は、図示しないシステム起動スイッチのオン操作に伴って開始され、まず、制御装置50は、温度センサー31(図1参照)の燃料電池温度(FC温度Tfc)を入力し(ステップS100)、そのFC温度Tfcが所定の比較温度(第1比較温度Tα)を超えているか否かを判定する。この起動時冷媒循環制御は、システム起動に伴うものであることから、燃料電池システム10は、それ以前に停止状態である。よって、FC温度Tfcは、システム停止期間が長ければ外気温にほぼ近くなり、図5の起動時冷媒循環制御の都度、同じとは限らない。こうしたことを考慮して、本実施例では、第1比較温度Tαについては、燃料電池12を起動させた後のその運転に伴う推定発熱量を勘案して定めた。例えば、この第1比較温度Tαを予め燃料電池温度ごとに定めてマップ状に記憶しておき、ステップS100のFC温度Tfcの入力と共に読み込むようにすればよい。そして、ステップS110にてFC温度Tfcがこの第1比較温度Tαに達していないと否定判定すれば、一旦、本ルーチンを終了する。なお、ステップS110では、システム起動スイッチのオン操作後の経過時間(発電時間)にて判定することもできる。
ステップS110で、FC温度Tfcがこの第1比較温度Tαに達していると肯定判定すれば、制御装置50は、第2ポンプ42に間欠運転の制御信号を出力し、当該ポンプを間欠的に運転させる(ステップS120)。これにより、図6に示すように、第2ポンプ42は間欠的に駆動するので、第2冷却系40では、ポンプの間欠駆動波形に即して、冷媒が循環供給する。この際、第1ポンプ28は停止したままである。よって、冷媒循環は、図2で示したように第2冷却系40だけでの循環となり、既述したように、循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。そして、冷媒は、電池内冷媒流路13の循環経由の際に、燃料電池12の各セルとの間で熱授受を行う。しかも、この冷媒循環は、間欠的であることから、循環停止の期間では、冷媒の流れがないので、各セルとの熱授受が効率的になされる。通常、システム起動時ではFC温度TfcがFC温度より低いので、上記の熱交換により、燃料電池12の各セルからは熱が奪われ、冷媒温度は上昇する。そして、この昇温した冷媒が第2冷却系40の第2循環経路44(図2参照)を循環する。
本実施例では、上記したように第2ポンプ42を間欠運転するに当たり、その際のポンプ出力を、第2ポンプ42を定常的に運転する場合のほぼ半分の出力とした。よって、間欠運転の一度当たりの冷媒送り量も少なくなるので、上記した各セルと冷媒との熱交換(熱奪取)を進めることができる。
ステップS120に続くステップS130では、制御装置50は、FC温度Tfcが所定の比較温度(第2比較温度Tβ)を超えているか否かを判定する。本実施例では、この第2比較温度Tβを、燃料電池12が定常運転している場合のFC温度(定常FC温度Tn)より若干低い温度に設定した。よって、ステップS130での判定は、燃料電池12の運転状況が定常運転に近づいているかの判定ともなる。
上記のステップS130でFC温度Tfcがこの第2比較温度Tβに達していないと否定判定すれば、一旦、本ルーチンを終了する。これにより、第2ポンプ42の間欠運転が継続されることになる。その一方、ステップS130でFC温度Tfcがこの第2比較温度Tβに達したと肯定判定すれば、制御装置50は、第2ポンプ42の運転の間欠運転から連続運転への切換(ステップS140)と、第1冷却系20の第1ポンプ28の駆動(連続運転)と(ステップS150)を順次行い、本ルーチンを終了する。つまり、制御装置50は、少なくとも、ステップS130にてFC温度Tfcが第2比較温度Tβに達したと肯定判定するまでの優先期間に亘って、第2冷却系40の第2循環経路44による燃料電池12への冷媒循環供給を先行して実行する。
この場合、ステップS140における第2ポンプ42の連続運転を、図6に示すように、それまでの間欠運転におけるポンプ出力を定常運定時のポンプ出力に徐々に上げるようにすることができる。そして、ステップS150の第1ポンプ28の駆動については、ステップS140の運転切換と当時に実行できるほか、この運転切換に遅延して行うようにすることもできる。つまり、図6に示すように、FC温度Tfcが定常FC温度Tnに達すると、第2ポンプ42についてはこれを定常運転とした上で、第1ポンプ28の駆動を行うようにできる。こうすれば、第2ポンプ42の運転を優先させる優先期間は、第1ポンプ28の駆動開始時点までとなる。
上記した起動時冷媒循環制御は、ステップS150での第1ポンプ28の駆動により終了するが、燃料電池12の冷媒による冷却は継続して必要となる。よって、起動時冷媒循環制御の終了後、制御装置50は、温度センサー31の検出したFC温度や燃料電池12の発電状況等に基づいて、第1ポンプ28の駆動制御、或いは、第2ポンプ42を併用した駆動制御を継続して冷媒の循環供給を図る。例えば、第1ポンプ28を駆動制御しつつ、第2ポンプ42についてもこれを定常出力で連続運転することができる。こうすれば、図3で説明したように第1冷却系20と第2冷却系40との冷媒循環により、燃料電池12の冷却効果を高めることができるほか、イオン交換経路32は、ラジエーター30のバイパス機能を果たした上で、イオン交換器41にてイオン除去が可能となる。この際、第2冷却系40の冷媒は、第2ポンプ42の送り出しにより第1冷却系20の流れに乗って第1冷却系20の冷媒に混ざるので、冷媒合流に際しての圧力損失を招かないようにできる。こうして第2ポンプ42を第1ポンプ28と併用して制御するに当たり、第1ポンプ28が例えば発電状況に応じて高回転数で回転している場合に、第2ポンプ42を駆動制御するようにすることもできる。また、図6に点線で示したように、第2ポンプ42を一時的に停止するように駆動制御することもできる。こうすれば、その停止の間の冷媒循環は、図4で示した第1冷却系20だけのものとなって、ラジエーター30で冷却済みの冷媒が全て燃料電池12を循環するので、燃料電池12の効率的な冷却が可能となる。
以上説明した本実施例の燃料電池システム10では、燃料電池12の起動に際して、FC温度Tfcが少なくとも第2比較温度Tβに達するまでの優先期間に亘り、第1ポンプ28を停止したまま第2ポンプ42を駆動することで、第2冷却系40による燃料電池12への冷媒の循環供給を先行して実行する(ステップS110〜120)。この優先期間における冷媒循環は、図2で説明したように第2ポンプ42が小容量ポンプであること等により、第2冷却系40の第2循環経路44だけでなされる。このため、この第2循環経路44を通過する全ての冷媒を、優先期間の当初から、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過させて、イオン除去に処する。よって、第2循環経路44を通過する冷媒に溶出しているイオンは、優先期間において効率よく除去されるので、電池内冷媒流路13はもとより当該流路を含む第2冷却系40の第2循環経路44では、優先期間において速やかに低導電率とされた冷媒が循環する状況となる。この結果、本実施例の燃料電池システム10によれば、冷媒が介在することで起きる燃料電池12の絶縁性低下を、燃料電池12の起動に際して早期のうちに高い実効性で回避できる。
そして、ステップS150にて第1ポンプ28の駆動による第1冷却系20での冷媒循環を開始した優先期間の経過後には、第2冷却系40による燃料電池12への冷媒の循環供給と共に、第1冷却系20による燃料電池12への冷媒の循環供給も行うことができる(図6参照)。このため、第1冷却系20に含まれるラジエーター30にて冷却済みの冷媒を燃料電池12に循環供給できるので、燃料電池12の運転に伴う電池の温度上昇を抑制して、電池温度の維持を図ることができる。しかも、本実施例の燃料電池システム10では、第1冷却系20による冷媒循環供給後において、第2冷却系40での冷媒循環供給を併用することで、燃料電池12を通過した一部の冷媒をラジエーター30をバイパスして燃料電池12に循環できる。このため、第1冷却系20においてラジエーター30をバイパスするバイパス流路を省略できる。この結果、ラジエーター30を、これをバイパスするバイパス流路がない分だけ燃料電池12に近接できるので、燃料電池システム10の搭載或いは設置スペースの省スペース化を図ることができる。図7は燃料電池システム10を車両200に搭載した様子を車両上方から概略的に示す説明図である。車両200の前方に当たるフード200Fの下方領域は、車両スタイルによっては狭くて機器設置に制約を受け得るが、本実施例の燃料電池システム10にあっては、図7に示すように、燃料電池12をラジエーター30に近づけてフード200Fの下方領域に支障なく搭載できる。なお、こうした搭載に当たっては、車体幅方向左右において車両前後に延びる図示しないサイドフレームに掛け渡された図示しないクロスフレームに、燃料電池12を載置固定すればよい。
また、本実施例の燃料電池システム10では、第2冷却系40の第2ポンプ42を燃料電池12の側に配設して、第2循環経路44(図2参照)を経路長を第1冷却系20の第1循環経路22より短くした。このため、第2循環経路44を循環する冷媒の熱容量を、ラジエーター30を含む第1循環経路22を循環する冷媒の熱容量より小さくした。このため、次のような効果を奏することができる。
図1に示すように、燃料電池12における電池内冷媒流路13は、積層された各セルに対応して冷媒循環するよう電池内で分岐している。このため、冷媒流入側と流路末端側とでは、冷媒循環の様子に違いが起き得る。このようにセル位置に応じた違いは、図示しないガス供給についても生じる。よって、ガス供給状況および冷媒循環状況の相違により、各セルの温度状況にも差が生じ得る。特に、それまで停止していた燃料電池12の起動当初では、セルごとの温度状況の差異は顕著となると予想される。
こうした状況を踏まえ、本実施例の燃料電池システム10では、先に説明した優先期間における第2冷却系40だけでの冷媒循環を、熱容量が小さい状況下で行うようにした。第2循環経路44を循環して電池内冷媒流路13に入り込んだ冷媒は、熱容量が小さい分だけ、各セルとの間で速やかに熱授受を行う。優先期間では、それ以前の運転停止により、通常、FC温度Tfcは外気温程度まで低下しているので、冷媒は、熱容量が小さい故に各セルから速やかに熱を奪った上で循環する。このため、例えば、電池内冷媒流路13の流路末端側のセルの温度が低いとしても、このセルおよび他のセルから熱を奪って昇温した冷媒がこの流路末端側のセルにも循環して流れることから、セルごとの温度を早期のうちに均一化できる。このことは、燃料電池12を早期のうちに安定化できることを意味する。そして、こうした第2循環経路44の小熱容量化は、第2ポンプ42を燃料電池12の側に設置して経路長を短くするだけで済み、簡便である。
しかも、本実施例の燃料電池システム10では、上記したように第2循環経路44の循環冷媒の熱容量を小さくした上で、優先期間における第2ポンプ42の駆動を間欠駆動とした(ステップS120、図6)。このため、電池内冷媒流路13では、冷媒循環は間欠的に起き(間欠循環)、循環停止の期間では冷媒が流れないようにして、各セルとの熱授受(熱奪取)をより効率的に行うことができるので、セルごとの温度均一化の実効性が高まる。これに加え、本実施例の燃料電池システム10では、優先期間における第2ポンプ42の間欠運転を、第2ポンプ42を定常的に運転する場合のほぼ半分のポンプ出力とした。よって、間欠運転の一度当たりの冷媒送り量を少なくした上で、流れない冷媒での熱奪取をより確実なものとして、セルごとの温度均一化の実効性をより高めることができる。例えば、燃料電池システム10を搭載した車両200が低温度環境下で停止していた場合、FC温度も低下して各セルも低温であるが、上記した優先期間における第2循環経路44の間欠循環により、各セルの温度を速やかに均一化でき、起動性を高めることができる。
また、本実施例の燃料電池システム10では、第1冷却系20の第1ポンプ28と第2冷却系40の第2ポンプ42とを、先行駆動を考慮して制御するだけで済むので、ポンプ制御という簡単な制御で、冷媒の速やかな低導電率化およびこれに伴う燃料電池12の絶縁性低下の回避を図ることができる。しかも、第2循環経路44については、既述したように小熱容量化としたので、第2ポンプ42については小吐出容量の小型ポンプとでき、システムの小型化を図ることができる。
次に、他の実施例について説明する。図8は図2相当図であり第2実施例の第2冷却系40Aとその冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図、図9は図3相当図であり第1冷却系20と第2冷却系40Aとを併用して冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図である。
図8に示すように、この実施例の燃料電池システム10Aでは、第2ポンプ42を分岐点23outの側に向くようイオン交換経路32に設置する。そして、第2循環経路44Aは、第2ポンプ42から、分岐点上流経路22b、電池内冷媒流路13および分岐点下流経路22aの順の経路として形成される。この実施例では、第2ポンプ42により、イオン交換経路32の流路内冷媒を分岐点23outの側に向けて送り出す。分岐点23outに達した冷媒は、当該分岐点からラジエーター30の側と燃料電池12の側に別れて経路内を流れようとする。ところが、第1ポンプ28が停止されていること、およびラジエーター30の既述した大きな内部流路抵抗のため、分岐点23outに達した冷媒は、当該分岐点からラジエーター30の側には流れず、燃料電池12の側に流れ込む。このため、第2ポンプ42は、分岐点上流経路22b、燃料電池12の電池内冷媒流路13、分岐点下流経路22aおよびイオン交換経路32の順に冷媒を第2循環経路44Aにて循環させる。こうした冷媒循環の際、第2循環経路44Aにて循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。つまり、図2で説明した第2循環経路44での冷媒循環と変わるものではない。
図9に示す第1冷却系20と第2冷却系40Aの併用循環では、第1ポンプ28と第2ポンプ42の両ポンプは駆動する。第1冷却系20の第1ポンプ28は、大容量であるため、経路長が長い第1循環経路22において、冷媒を支障なく循環させ、ラジエーター30により冷却された冷媒を燃料電池12に循環供給できる。これにより、燃料電池12の運転に伴う電池の温度上昇を抑制して、電池温度の維持を図ることができる。図9の併用循環では、第2冷却系40の第2ポンプ42も駆動していることから、分岐点23inに達した冷媒の一部は、イオン交換経路32を経て分岐点23outに達する。この分岐点23outでは、大容量の第1ポンプ28による冷媒送り出しにより、ラジエーター30に向けて冷媒が流れているので、分岐点23outに達した冷媒は、当該分岐点から第1循環経路22に戻されて循環する。このような冷媒循環がなされても、ラジエーター30で冷却済みの冷媒は、その大部分が分岐点23inを経て燃料電池12に流れ込むので、燃料電池12の冷却に支障はない。こうした冷媒循環の際、分岐点23inからイオン交換経路32に流れ込んだ全ての冷媒は、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。なお、第1冷却系20だけでの冷媒循環は、図4で説明した場合と同じである。
上記した実施例の燃料電池システム10Aにあっても、図5に示した起動時冷媒循環制御を行うことで、既述した効果を奏することができる。
次に、第1、第2の循環経路の経路構成を異なるものとした実施例について説明する。図10は図2相当図であり第3実施例の第2冷却系40Bとその冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図、図11は図3相当図であり第3実施例において第1冷却系20と第2冷却系40Bとを併用して冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図、図12は図4相当図であり第3実施例において第1冷却系20だけで冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図である。
図10に示すように、この実施例の燃料電池システム10Bでは、第1冷却系20における第1循環経路22と第2冷却系40Bにおける第2循環経路44Bとを、燃料電池12の電池内冷媒流路13に対してその両側から繋いでいる。つまり、第1冷却系20は、第1循環経路22を、燃料電池12の一方の側において、電池内冷媒流路13のインポート22inとアウトポート22outとに繋ぎ、電池内冷媒流路13に冷媒を循環供給する。第2冷却系40Bは、イオン交換器41と第2ポンプ42を含むイオン交換経路132を、燃料電池12の他方の側にて電池内冷媒流路13に繋ぎ、イオン交換経路132と電池内冷媒流路13の第2循環経路44Bを形成する。上記した経路接続を有することから、燃料電池システム10Bでは、ラジエーター30とイオン交換器41とを燃料電池12を挟んで配置することが可能である。なお、上記した経路接続を取れば、ラジエーター30とイオン交換器41とを燃料電池12の同じ側に配置することもできる。この点については、後述する。
この燃料電池システム10Bでは、第2ポンプ42により、イオン交換経路132の流路内冷媒を燃料電池12の電池内冷媒流路13における下流側、即ちアウトポート22outの側に向けて送り出す。アウトポート22outに達した冷媒は、当該ポートを通過してラジエーター30の側に経路内を流れようとする。ところが、第1ポンプ28が停止されていること、およびラジエーター30の既述した大きな内部流路抵抗のため、アウトポート22outに達した冷媒は、当該ポートからラジエーター30の側には流れず、燃料電池12の電池内冷媒流路13を通過する。電池内冷媒流路13を通過した冷媒は、図示するようにセルを通過してインポート22inの側に達するが、当該ポートにあっても第1ポンプ28の停止およびラジエーター30の内部抵抗により、イオン交換経路132に流れ出す。このため、第2ポンプ42は、イオン交換経路132とその両側で繋がった燃料電池12の電池内冷媒流路13とからなる第2循環経路44Bにて冷媒を循環させる。こうした冷媒循環の際、第2循環経路44Bにて循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。つまり、図2で説明した第2循環経路44での冷媒循環と変わるものではない。
図11に示す第1冷却系20と第2冷却系40Bの併用循環では、第1ポンプ28と第2ポンプ42の両ポンプは駆動する。第1冷却系20の第1ポンプ28と、第2冷却系40Bの第2ポンプ42とは、容量の大小で相違するものの、同時に駆動する。そして、第1ポンプ28で送り出された冷媒は、インポート22inから電池内冷媒流路13に流れ込む。この冷媒の流れは、上記した第2冷却系40Bのイオン交換器41による冷媒の流れと同じであるが、第1ポンプ28と第2ポンプ42の容量の相違から、電池内冷媒流路13に流れ込んだ冷媒は、当該流路を通過し、アウトポート22outを経てラジエーター30に流れる。つまり、第1冷却系20は、第1ポンプ28により第1循環経路22において冷媒を支障なく循環させ、ラジエーター30により冷却された冷媒を燃料電池12に循環供給する。これにより、燃料電池12の運転に伴う電池の温度上昇を抑制して、電池温度の維持を図ることができる。図11の併用循環では、第2冷却系40の第2ポンプ42も駆動していることから、インポート22inを経て電池内冷媒流路13に流れ込んだ冷媒の一部は、イオン交換経路132を経て電池内冷媒流路13に流れ込む。この場合の冷媒の流れは、第1冷却系20による冷媒の流れと同じであることから、イオン交換経路132を通過した冷媒は、大容量の第1ポンプ28による冷媒と合流して、ラジエーター30に向けて冷媒が流れる。このような冷媒循環がなされても、ラジエーター30で冷却済みの冷媒は、その大部分がインポート22inを経て燃料電池12に流れ込むので、燃料電池12の冷却に支障はない。こうした冷媒循環の際、第2冷却系40のイオン交換経路132に流れ込んだ全ての冷媒は、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。
図12に示す第1冷却系20だけでの冷媒循環では、第1冷却系20の第1ポンプ28のみが駆動し、第2冷却系40Bの第2ポンプ42は停止している。このため、第1ポンプ28に送り出された全ての冷媒は、第1循環経路22のラジエーター30にて冷却された後に燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環する。この場合、第2ポンプ42が停止していることから、第2冷却系40Bでの冷媒循環はなされない。
上記した実施例の燃料電池システム10Bにあっても、図5に示した起動時冷媒循環制御を行うことで、既述した効果を奏することができる。また、この燃料電池システム10Bでは、既述したように第1循環経路22と第2循環経路44B(詳しくは、イオン交換経路132)とを、燃料電池12の電池内冷媒流路13に対してその両側から繋いでいることから、ラジエーター30とイオン交換器41のレイアウトを次のようにすることもできる。図13は燃料電池システム10Bを車両200Aに搭載した様子を車両上方から概略的に示す説明図である。
図示するように、この車両200Aは、車両前方に当たるフード200Fの下方領域に、燃料電池12とイオン交換器41とラジエーター30とを並べて搭載する。そして、この燃料電池システム10Bでは、上記した経路接続により、ラジエーター30からの第1循環経路22を、車両後方側において燃料電池12に接続し、第2冷却系40Bのイオン交換経路132については、これを車両前方側で燃料電池12に接続した。こうした機器配置と経路接続を取ることで、車両200Aでは、ラジエーター30から燃料電池12に到る第1循環経路22の経路長を長くすることができる。燃料電池12は、その発電運転に当たり高電位となり得るが、第1循環経路22を長くすることで、当該経路の冷媒による絶縁抵抗を高めることができる。よって、ラジエーター30を含む第1冷却系20についての絶縁確保ができ、好ましい。
次に、第1循環経路22と第2循環経路44B(詳しくは、イオン交換経路132)とを電池内冷媒流路13に対してその両側から繋いだ他の実施例(第4実施例)について説明する。図14は図10相当図であり第4実施例の第2冷却系40Cとその冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図である。
図示するように、この第4実施例の燃料電池システム10Cでは、イオン交換経路132の流路内冷媒を燃料電池12の電池内冷媒流路13における上流側、即ちインポート22inの側に向けて送り出すよう、第2ポンプ42をイオン交換経路132に設置する。こうして配置した42により送り出されてインポート22inに達した冷媒は、当該ポートを通過してラジエーター30の側に経路内を流れようとする。ところが、第1ポンプ28が停止されていること、およびラジエーター30の既述した大きな内部流路抵抗のため、インポート22inに達した冷媒は、当該ポートからラジエーター30の側には流れず、燃料電池12の電池内冷媒流路13を通過する。電池内冷媒流路13を通過した冷媒は、図示するようにセルを通過してアウトポート22outの側に達するが、当該ポートにあっても第1ポンプ28の停止およびラジエーター30の内部抵抗により、イオン交換経路132に流れ出す。このため、第2ポンプ42は、イオン交換経路132とその両側で繋がった燃料電池12の電池内冷媒流路13とからなる第2循環経路44Cにて冷媒を循環させる。こうした冷媒循環の際、第2循環経路44Cにて循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。つまり、図2で説明した第2循環経路44での冷媒循環と変わるものではない。
上記した燃料電池システム10Cの第2冷却系40Cにおける冷媒の循環の向きは、燃料電池12の電池内冷媒流路13においては、第1冷却系20における冷媒の循環の向きと逆になる。よって、この燃料電池システム10Cでは、第1冷却系20と第2冷却系40Cの併用循環については、これを行わないようにし、先に説明した起動時冷媒循環制御(図5参照)においては、第2冷却系40Cでの優先的な冷媒循環(第2ポンプ42の間欠運転:ステップS120)を行った後に、第2ポンプ42を連続運転に切り換え(ステップS140)、所定時間の経過後に、第1ポンプ28による第1冷却系20での冷媒循環を行うようにすればよい。よって、第4実施例の燃料電池システム10Cにあっても、図5に示した起動時冷媒循環制御を行うことで、既述した効果を奏することができる。なお、燃料電池12の発電運転中においては、次のようにすることができる。つまり、発電運転中は、第1ポンプ28による第1冷却系20での冷媒循環を継続し、イオン除去の必要が生じた場合には、第1ポンプ28を停止して第2ポンプ42を駆動する。これにより、第2冷却系40Cでの冷媒循環の際に、イオン交換器41にてイオン除去を行うことができ、イオン除去後には、第2ポンプ42を停止して第1ポンプ28を駆動すればよい。
次に、燃料電池12の一方の側においてイオン交換経路132を電池内冷媒流路13に接続した場合の第2冷却系40についての絶縁対策を説明する。図15は第2冷却系40と燃料電池12の組み付けの様子を模式的に示す説明図である。
図示するように、第2冷却系40は、イオン交換器41と第2ポンプ42とを含むイオン交換経路132を燃料電池12の電池内冷媒流路13に接続するに当たり、イオン交換経路132の上下流端に、第1フラップ161と第2フラップ162を介在させる。第1フラップ161は、電池内冷媒流路13からイオン交換経路132に向けて流れ込む冷媒に押されて流路を開き、電池内冷媒流路13からイオン交換経路132に冷媒を導入させる。第2フラップ162は、イオン交換経路132を通過した冷媒に押されて流路を開き、イオン交換経路132を通過した冷媒を電池内冷媒流路13に導入させる。これら両フラップは、共に絶縁性であり、燃料電池12のエンドプレート12eに装着されている。そして、この第2冷却系40は、イオン交換経路132とこれに組み込まれたイオン交換器41と第2ポンプ42ごと、絶縁性のカバー150にて覆われている。
図15に示すように、第2冷却系40は、燃料電池12に近接した上で、イオン交換経路132をエンドプレート12eに接触させていることから、このイオン交換経路132は、運転に伴って発電する燃料電池12とほぼ同電位となる。しかしながら、上記のようにイオン交換経路132を絶縁性のカバー150で覆ったので、電池周囲に対する燃料電池12の絶縁を図ることができる。この場合、燃料電池12の全体を絶縁性のカバーで覆うようにし、当該電池カバーの一部で、イオン交換経路132を覆うようにすることもできる。
また、第1フラップ161と第2フラップ162の両フラップを絶縁性としたので、次の利点がある。燃料電池12の電池内冷媒流路13においても、当該冷媒流路の冷媒にイオンが溶出することが有り得る。冷媒非循環の際には、冷媒の流れがないので、上記の両フラップは、図示するように電池内冷媒流路13の出口側と入口側を閉鎖する。よって、電池内冷媒流路13の冷媒は当該流路内に閉じこめられ、イオン交換経路132の冷媒と混じり合わない。このため、イオン交換経路132における冷媒のイオン濃度は、電池内冷媒流路13の側からのイオン(冷媒)の入り込みがない分、変化しなくなるので、イオン交換器41の寿命を維持できる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記した実施例では、システム起動に伴う優先期間において第2ポンプ42を間欠駆動としたが、第2ポンプ42を連続運転させることもできる。この優先期間における第2ポンプ42のポンプ出力(間欠出力)についても、通常出力の半分程度としたが、通常出力で第2ポンプ42を運転(間欠運転)するようにすることもできる。
また、図5に示した起動時冷媒循環制御については、これをシステム起動の都度に行うことができるほか、システム起動以外のタイミングで実行するようにすることもできる。例えば、第1循環経路22或いはイオン交換経路32、もしくはその両者に導電率センサーを組み込み、当該センサーにより冷媒の導電率が、燃料電池の高電圧対処の要請から定まる所定の導電率に上昇すれば、この導電率上昇のタイミングで、図5の起動時冷媒循環制御と同等の処理、即ち、優先的に第2冷却系40による冷媒循環を図る処理を行うようにできる。こうすれば、システム停止中やシステムの運転中において何らかの原因で溶媒の導電率が高まっても、当該溶媒の低導電率化を図ることができる。この場合、上記した冷媒の導電率上昇検知に伴う優先的な第2冷却系40による冷媒循環と共に、イオン交換器41の交換の旨をランプやブザー等にて報知するようにすることもできる。
また、システム停止中において、その停止期間が長い場合や、停止時の大気温が低温となった場合には、第2冷却系40についてのみの冷媒循環を優先的に実行するようにすることもできる。システム停止中に外気温が高低繰り返し変動すると、燃料電池12の各セルでは、セル内の水(生成水)の蒸発・結露が繰り返され、端部側のセルに水が集まりやすい。ところが、上記したようにシステム停止中において第2冷却系40についてのみの冷媒循環を優先的に実行すれば、端部側セルへの水分集中を抑制でき、その後のシステム起動を円滑にできる。
また、次のような変形も可能である。図16はイオン交換経路132において冷媒の熱交換を図るようにした変形例を示す説明図である。図示するように、この第2冷却系40Dは、イオン交換経路132に小容量の熱交換機器170を備える。この熱交換機器170は、例えば車両暖房用の暖気パイプをイオン交換経路132に熱交換可能に配置したり、小容量のヒーターを内蔵したものであり、イオン交換経路132を通過する冷媒、即ち、既述した燃料電池12の起動時における起動時冷媒循環制御に際して、第2冷却系40Dの循環冷媒を予め暖める。これにより、起動時冷媒循環制御の際の燃料電池12の各セルの温度均一化をより早期のうちに達成できる。図16の変形例では、熱交換機器170をイオン交換器41の上流側に配設したので、イオン交換器41では、昇温した冷媒をイオン除去に処すので、除去効率が高まり、冷媒の低伝導率化の上から有益である。なお、熱交換機器170をイオン交換器41の下流側に設置したり、熱交換機器170の上下流にイオン交換器41を設置することもできる。
この他、図5に示した起動時冷媒循環制御をシステム起動とタイム差を持って行うようにすることもできる。図17は起動時冷媒循環制御をシステム起動とタイム差を持って行う場合の概略的な電気構成を示す説明図である。図示するように、燃料電池システム10は、燃料電池12にリレー181を介してDC/DCコンバーター182に接続し、DC/DCコンバーター182をシステムメインリレー183を介して2次電池184に接続して備える。第1ポンプ28と負荷185と12V用のDC/DCコンバーター186は、DC/DCコンバーター182とシステムメインリレー183とを結ぶ電源ラインに接続されている。第2ポンプ42は、DC/DCコンバーター186と12V用の小容量の電池187と接続され、このいずれかから12Vの電圧の印加を受けて駆動する。
こうした電気的な構成を取った上で、燃料電池システム10は、システム起動に当たり、リレー181により燃料電池12を電気的に遮断した状態で、優先的に第2ポンプ42を駆動して、既述したように第2冷却系40(図2)による冷媒循環を実行する。そして、図6において説明したFC温度Tfcが第1比較温度Tαに達すると、或いは第2ポンプ42の駆動後に短期の所定時間が経過すると、燃料電池システム10は、リレー181により燃料電池12を接続する。こうすれば、優先的な第2冷却系40による冷媒循環に伴う冷媒からのイオン除去が進んだ状態で、燃料電池12を起動でき、高電圧対処の実効性が高まる。つまり、第2ポンプ42の冷媒循環をシステム起動に先だって行うようにすることもできる。
こうした制御は、システムの起動の都度に行うことができるほか、ラジエーター30の保守点検に伴う交換時や、2週間から数ヶ月に亘るシステム運転が継続されたような状況下で行うようにすることもできる。こうした状況では、冷媒へのイオン溶出が進んでいると予想される。よって、システム起動より先に行う優先的な第2冷却系40(図2)の冷媒循環により、冷媒の低導電率化を回避した上で、システム起動を図ることができる。
また、上記実施例では、第1冷却系20と第2冷却系40で個別のポンプを有するようにしたが、各冷却系で共通のポンプを用いるようにすることもできる。図18は図2相当図であり共通のポンプで冷媒循環を行う変形例における第2冷却系40Eでの冷媒循環の様子を模式的に示す説明図、図19は図3相当図であり第1冷却系20と第2冷却系40Eとを併用して冷媒循環を行う様子を模式的に示す説明図である。
図18に示すように、この変形例の燃料電池システム10Eでは、第1循環経路22の上流側の第1三方弁191と下流側の第2三方弁192との間に、イオン交換経路32を組み込み、第1三方弁191より下流側の分岐点下流経路22aにポンプ193を有する。ポンプ193は、吐出容量を可変に構成された冷媒循環用のポンプであり、当該ポンプより上流側の冷媒を燃料電池12を経てその下流に送り出す。第1三方弁191と第2三方弁192は、第2冷却系40Eによる既述した優先期間においては、ラジエーター30の側の流路を閉鎖し、イオン交換経路32の冷媒通過を許可する(以下、第1流路調整)。第1冷却系20と第2冷却系40Eとを併用する場合には、ラジエーター30を含む第1冷却系20における冷媒通過流量が多くなるよう流路調整する(以下、第2流路調整)。
つまり、第2冷却系40Eは、分岐点下流経路22a、燃料電池12、分岐点上流経路22bおよびイオン交換経路32の順の経路となる第2循環経路44Eを形成する。この変形例では、優先期間において、ポンプ193は小容量吐出で駆動し、上記の両三方弁の第1流路調整により、ポンプ上流側のイオン交換経路32の流路内冷媒を上記の第2循環経路44Eにて循環させる。こうした冷媒循環の際、第2循環経路44Eにて循環する全ての冷媒は、燃料電池12の電池内冷媒流路13を循環経由した上で、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。つまり、図2で説明した第2循環経路44での冷媒循環と変わるものではない。
図19に示す第1冷却系20と第2冷却系40Eの併用循環では、ポンプ193は大容量吐出で駆動し、上記の両三方弁の第2流路調整により、第1冷却系20では、第1循環経路22において、冷媒を支障なく循環させ、ラジエーター30により冷却された冷媒を燃料電池12に循環供給できる。これにより、燃料電池12の運転に伴う電池の温度上昇を抑制して、電池温度の維持を図ることができる。図19の併用循環では、上記の両三方弁の第2流路調整により、イオン交換経路32の冷媒通過も可能である。よって、ポンプ193のポンプ駆動により、ポンプ上流側のイオン交換経路32の流路内冷媒は、第1三方弁191より下流で第1冷却系20の冷媒に合流して第2循環経路44Eにて循環する。このような冷媒循環がなされても、ラジエーター30で冷却済みの冷媒は、燃料電池12に流れ込むので、燃料電池12の冷却に支障はない。こうした冷媒循環の際、第2三方弁192から分流してイオン交換経路32に流れ込んだ全ての冷媒は、イオン交換器41を繰り返し通過して、イオン除去に処される。なお、第1冷却系20だけでの冷媒循環は、第1三方弁191と第2三方弁192はイオン交換経路32の側の流路を閉鎖し、ラジエーター30の冷媒通過を許可するので、この場合の冷媒循環は、図4で説明した場合と同じである。
上記した変形例の燃料電池システム10Eにあっても、図5に示した起動時冷媒循環制御を行うことで、既述した効果を奏することができる。