JP5914966B2 - シューケース用油脂組成物 - Google Patents

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本発明は、シューケース用油脂組成物に関する。
工業的規模で大量のシューケースを製造する場合には、シューケース専用の油脂組成物が使用される場合が多い。しかし、当該油脂組成物において、色素を検討したものは限られている。たとえば特許文献1では、「β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料」の使用について言及されている。しかし、これらの色素がどのような効果を示すのかについての記載はない。
特開2008−295414号公報
本発明の目的は、経時的な白化が抑制されたシューケースを簡易に調製できる、シューケース用油脂組成物を提供することにある。
近年、食品の保存技術の進歩により、それまでは製造後短時間で食されていたシュークリームのような食品も、数日間の賞味期限が設定されるようになった。それに伴い、それまでは問題とは認識されていなかった、シューケースの経時的白化が問題となることを見出した。
本発明者らは、上記の問題に対し、当初は、シューケースへ還元糖やアミノ酸を加えることで、焼成時にメイラード反応を促進し、調製時点での焼き色を濃くすることで問題の解決を試みた。しかし、このような方法により焼き色を濃くすることは出来るものの、いわゆる焦げ臭が発生し、実用化は困難であった。
さらに、本発明者らは、色素により「焼き色」を付与すべく、カラメル色素等の添加を試みた。しかし、焼き色を付与するために色素を添加しても、シューケースの自然な色調を再現することは困難であるし、また色素独特の異風味が感じられる場合もあり、実用化は困難であった。
本願発明者らは、そもそもシューケースの経時的な白化がどのようなメカニズムで起こるかを検討した。その結果、驚くべきことに、経時的な白化は、全ての色が同じように白化して起こるのではなく、シューケースにおいては、特に赤色が顕著に低下し、それによりシューケース全体として白化したようにみえることを発見した。
さらに、本願発明者らは、この発見に基づき、課題解決に向けて鋭意研究を続けた。そして、赤色色素をシューケース用油脂組成物に添加することにより、簡易に課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は
(1)赤色色素を含有する、経時的白化防止用であるシューケース用油脂組成物。
(2)赤色色素がカロテノイド系色素である、(1)記載のシューケース用油脂組成物。
(3)(1)〜(2)何れか1に記載のシューケース用油脂組成物を用いたシューケース。
(4)(1)〜(2)いずれか1に記載のシューケース用油脂組成物を使用する、シューケースの経時的白化防止方法。
に関するものである。
本発明によれば、経時的に白化しにくいシューケースを調製できる、シューケース用油脂組成物を得ることが出来、これを用いることで、経時的な白化を防止したシューケースを得ることができる。
本発明のシューケース用油脂組成物においては、赤色色素を含有させる必要がある。使用できる赤色色素としては天然系着色料としてはカロテノイド系、キノン系、アントシアニン系、フラボノイド系、ポルフィリン系、ベタシアニン系、アザフィロン系をあげることができ、合成系着色料としては各種食用タール色素を挙げることが出来る。これらの中から選ばれる1以上を用いることが出来る。これらのうち、特にカロテノイド系、アントシアニン系、フラボノイド系の色素がより望ましく、特に望ましくはカロテノイド系である。その中でも特にパプリカ由来色素が好ましい。
なお、本発明において「赤色色素」という場合は、各種食品素材に元々極微量存在する、色素成分を指すものではなく、別途意図的に添加したものである。
本発明のシューケース用油脂組成物は広くシューケース調製用に使用できるものであるが、特に経時的白化防止用として好適である。これは、シュークリームは調製したその日に食すのが一般的である一方、袋に詰められ、数日間の賞味期限が設定されるようなシュークリームにおいては、経時的な白化を防止する機能を必要とする場合があり、そのような用途に特に適することを示す。ここで、「経時的白化防止用」とは、実施例に記載する「経時的白化評価法」により評価した結果、シューケースの白化が抑えられているものをさす。
色素は通常、製剤として市販されており、製剤の方が取り扱いは易しい。食品用として使用される色素製剤では、その力価はほぼ一定の範囲にあるため、色素の使用量としては、色素製剤の量で規定することが出来る。本発明においては、赤色色素はシューケース用油脂組成物中0.003〜0.25重量%が望ましく、より望ましくは0.005〜0.13重量%であり、さらに望ましくは0.008〜0.08重量%である。赤色色素が多すぎると、不自然な色合いとなる場合があり、少なすぎると、効果が充分に発揮されない場合がある。
本発明のシューケース用油脂組成物において使用する油脂としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、やし油、パーム核油等の各種植物油脂、ならびに乳脂、牛脂、ラード等の各種動物油脂、あるいはこれらに分別、水素添加、エステル交換から選択される1または2以上の処理を施した加工油脂を挙げることが出来、これらの中から選ばれた1種または2種以上の油脂を適宜使用することができる。
油脂以外の原料としては、カゼイン等の乳蛋白、分離大豆蛋白等を使用することが出来る。また、他にも、香料や乳化剤などを、本発明の効果を妨げない範囲で適宜使用することが出来る。
本発明のシューケース用油脂組成物の調製法は、以下に例示するような、一般的な方法を採用することができる。
設定された配合において、油脂および油脂に溶解する成分、たとえば油溶性乳化剤を油脂に溶解し油相とする。油相は、油脂が完全に溶解された状態とする。これは、油脂の融点に依存し、概ね55〜75℃である。
一方、設定された配合において、水および水に溶解する成分、たとえばカゼインナトリウムなどは水に混合し水相とする。
使用する赤色色素については、それが油溶性であれば油相へ添加するのが望ましく、水溶性であれば水相へ添加するのが望ましい。また、油相と水相を混合した調合液の段階で添加することも出来る。
油相および水相それぞれの準備が終了した後、油相を攪拌しながら水相を添加することで、油中水型に乳化した「調合液」を得る。このとき、攪拌が不十分であったり、あるいは油相の温度が低すぎる場合は、乳化が反転する場合もあるので、十分に攪拌しかつ、十分な温度が必要である。
調合液はポンプにより送液し、適宜殺菌装置等を通過させた後、乳化油脂組成物の製造装置へ供される。油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される直前の段階で、調合液は溶解状態でかつ、40〜80℃であることが必要であり、より望ましくは50〜70℃であり、さらに望ましくは55〜65℃である。乳化油脂組成物の製造装置へ供される直前の調合液の温度が低すぎる場合は、その段階で油脂結晶が発生し、最終製品に粒状結晶が存在することがある。また、温度が高すぎる場合は、乳化油脂組成物の製造装置において余分の冷却エネルギーが必要となる場合がある。
乳化油脂組成物の製造装置としては、冷却機能を有する各種のものを使用することができる。具体的には、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の掻き取り式急冷混和機を備えた装置をあげることができる。これらの装置により、一例として、調合液を1〜8℃/秒の速度で、冷却装置の出口で3〜15℃まで冷却する。冷却速度は、より望ましくは1〜7℃/秒であり、更に望ましくは1〜5℃/秒である。冷却速度が遅すぎると、粒状結晶が発生しやすくなる場合があり、また冷却速度が速すぎると、不必要により大きな冷却エネルギーが必要となる場合がある。
冷却装置を出た乳化油脂組成物はピンマシンを通過後、ダンボールケース等に充填される。その後、冷蔵庫にて24〜48時間程度冷蔵された後出荷される。
本発明のシューケース用油脂組成物を使用したシューケースの調製は、常法に従うことが出来る。以下に一般的なシューケースの調製法を記載する。
シューケース配合の一例を表1に示す。
表1シューケース配合例
Figure 0005914966
1.鍋にシューケース用油脂組成物、水、を入れて中火にかけ、シューケース用油脂組成物を木ベラなどで崩しながら、温める。
2.シューケース用油脂組成物が完全に溶け、煮立ってきたら 薄力粉を一度に入れ、 木ベラで手早くまとめてから火を消し、しっかり練り混ぜる。
3.解きほぐした卵を生地に少し加え、木ベラで手早く混ぜる。 卵が生地に馴染んで滑らかになったら、様子を見ながら、少しずつ加え混ぜ、生地を完成させる。
4.絞り袋に丸形の口金をつけ、ゴムベラで絞り袋に生地を入れてオーブンシートを敷いた天板に直径3cm程に絞り出し、表面全体に霧吹きで水を掛ける。
5.190〜210℃のオーブンで約15分焼く。充分に膨らんだら180℃前後に下げ、更に約15分焼く。
以上により得られたシューケースに、適宜カスタードクリーム等を充填し、シュークリームとする。
本発明のシューケース用油脂組成物を使用せず、他のシューケース用油脂組成物やバターを使用した場合は、当該シュークリームを冷蔵保管した際に、経時的に白化する。それにより、焼成直後には、好ましい焼き色を示していたものが、徐々に、やや白けた色に変化する。
これに対して、本発明のシューケース用油脂組成物を使用した場合は、当該シュークリームを冷蔵保管した場合も、経時的な白化は限定的であり、長時間、好ましい焼き色を維持することが出来る。
なお、赤色色素は微量であるため、赤色色素を規定量添加したシューケース用油脂組成物を別途調製し、使用することが簡便である。
以下に実施例を記載する。
検討1「シューケース用油脂組成物の調製」
実施例1、比較例1
表2の配合に従い、シューケース用油脂組成物を調製した。調製方法は、以下の「シューケース用油脂組成物の調製法」に従った。
表2シューケース用油脂組成物の配合
Figure 0005914966
・エステル交換油はパーム分別油、ナタネ油をランダムエステル交換した、融点32℃の油脂を使用した。
・パプリカ赤色色素は三栄源エフエフアイ株式会社製「パプリカオレオレジンNo.44489」を用いた。
「シューケース用油脂組成物の調製法」
1.油脂と乳化剤は溶解、混合し、油相とする。
2.水に精製塩、溶融塩を溶解させた後、カゼインナトリウムを溶解する。
3.油相を攪拌しながら水相を添加し、調合液とする。
4.調合液に香料および色素を添加する。
5.調合液を油脂組成物製造装置(コンビネーター)に供する。
6.得られた油脂組成物をダンボールケースに充填し、冷蔵する。
検討2「シューケースの経時的白化の確認」
実施例2、比較例2〜3
表3に記載する配合にて、以下に記載する「シューケース調製法」に従い、シューケースを調製した。シューケース用油脂組成物は、表2「実施例1、比較例1」の配合により調製した油脂組成物をそれぞれ用いた。
得られたシューケースを、表4に記載する群にわけ、各1群にはカスタードクリーム(不二製油株式会社製「カスタード500R」)をそれぞれ60g充填した。その後、各1個ずつ透明のプラスチック袋(HEIKO社製)に入れ、2000ルクスの光を照射した。温度は3〜7℃で実施した。
一日ごとに、色彩色差計(CR-100 MINOLTA製)にて測定した。
得られた値を「経時的白化評価法」で評価した。
結果を表5、表6に示す。
表3 シューケース配合
Figure 0005914966
「シューケース調製法」
1.強力粉と薄力粉はあらかじめふるいにかけた上、混合する。卵は割卵の上混合し、20±3℃へ保温する。
2.ミキサー用ボールへ水と各シューケース用油脂組成物を入れ、火にかける。
3.シューケース用油脂組成物が溶解し、沸騰した段階で火を止め、強力粉と薄力粉の混合物を添加し、略均一化するまで攪拌する。
4.ミキサーへセットし、攪拌しながら全卵を加える。この際、全卵が生地と一体化したことを確認の上、追加する。
5.全卵を全て入れてしまう直前に、炭酸アンモニウムを添加する。
6.略均一化した後、攪拌をやめる。ここで得られたものを「シュー用生地」と称する。
7.シュー用生地を絞り袋にいれ、焼成用天板に天板紙を敷いた上に、28±2gとなるように搾り出す。
8.生地に水を霧吹きでかけた後、220℃に設定したオーブンで17分間、さらに100℃に設定したオーブンで10分間焼成する。
表4 試験各群
Figure 0005914966
表5 試験結果1(L(白))
Figure 0005914966
表6 試験結果2(a(赤))
Figure 0005914966
「経時的白化評価法」
1.「シューケース調製法」によりシューケースを調製する。
2.シューケース(ないしシュークリーム)を1個ずつ透明のプラスチック袋(HEIKO社製)に入れ、2000ルクスの光を照射する。温度は3〜7℃とする。
3.シューケース焼成日(「D+1」と称する)および4日目(「D+4」と称する)に、シューケースを袋から出し、シューケース表面を色彩色差計(CR-100 MINOLTA製)にて測定する。
4.白色を示すL値に関し、4日目の値を焼成日の値で割った値を求める。これを白化評価値と称する。
5.白化評価値が1.07を超えるものを「白化現象あり」と判断する。白化評価値が1.07未満であるものを「白化現象なし」と判断する。
6.「白化現象なし」と評価されたシューケースに使用されたシューケース用油脂組成物を、「経時的白化防止用」のシューケース用油脂組成物と称する。
「結果と考察」
・シューケースの白化現象は、シューケースへカスタードクリームを充填するか否かにかかわらず生じた。このことから、シューケースの白化現象は、充填物からの水分移行のみで生じているわけではない事が明らかとなった。
・シューケースを経時的に色彩色差計にて測定したところ、赤色が顕著に減少していることが明らかとなった。
・赤色色素を添加したシューケース用油脂組成物を使用してシューケースを調製すると、赤色の減少が抑えられると同時に、白化がおさえられていることがわかった。
・以上より、シューケースの白化現象は、シューケース用油脂組成物へ赤色色素を規定量添加することで防げることが明らかとなった。
本発明により、近年の食品保存技術の進歩により、顕在化すると思われるシューケースの白化現象を防ぐことが出来るようになった。これにより、賞味期限の長いシュークリーム等のシューケース利用食品においても、その白化現象を防ぐことで商品価値を向上させることが出来、菓子産業に大きく貢献するものである。

Claims (3)

  1. カロテノイド系赤色色素を含有する、経時的白化防止用であるシューケース用油脂組成物。
  2. カロテノイド系赤色色素が、パプリカ赤色色素である、請求項1記載のシューケース用油脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載のシューケース用油脂組成物を使用する、シューケースの経時的白化防止方法。
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