JP5914966B2 - シューケース用油脂組成物 - Google Patents
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Description
本発明者らは、上記の問題に対し、当初は、シューケースへ還元糖やアミノ酸を加えることで、焼成時にメイラード反応を促進し、調製時点での焼き色を濃くすることで問題の解決を試みた。しかし、このような方法により焼き色を濃くすることは出来るものの、いわゆる焦げ臭が発生し、実用化は困難であった。
本願発明者らは、そもそもシューケースの経時的な白化がどのようなメカニズムで起こるかを検討した。その結果、驚くべきことに、経時的な白化は、全ての色が同じように白化して起こるのではなく、シューケースにおいては、特に赤色が顕著に低下し、それによりシューケース全体として白化したようにみえることを発見した。
(1)赤色色素を含有する、経時的白化防止用であるシューケース用油脂組成物。
(2)赤色色素がカロテノイド系色素である、(1)記載のシューケース用油脂組成物。
(3)(1)〜(2)何れか1に記載のシューケース用油脂組成物を用いたシューケース。
(4)(1)〜(2)いずれか1に記載のシューケース用油脂組成物を使用する、シューケースの経時的白化防止方法。
に関するものである。
なお、本発明において「赤色色素」という場合は、各種食品素材に元々極微量存在する、色素成分を指すものではなく、別途意図的に添加したものである。
油脂以外の原料としては、カゼイン等の乳蛋白、分離大豆蛋白等を使用することが出来る。また、他にも、香料や乳化剤などを、本発明の効果を妨げない範囲で適宜使用することが出来る。
設定された配合において、油脂および油脂に溶解する成分、たとえば油溶性乳化剤を油脂に溶解し油相とする。油相は、油脂が完全に溶解された状態とする。これは、油脂の融点に依存し、概ね55〜75℃である。
一方、設定された配合において、水および水に溶解する成分、たとえばカゼインナトリウムなどは水に混合し水相とする。
使用する赤色色素については、それが油溶性であれば油相へ添加するのが望ましく、水溶性であれば水相へ添加するのが望ましい。また、油相と水相を混合した調合液の段階で添加することも出来る。
シューケース配合の一例を表1に示す。
2.シューケース用油脂組成物が完全に溶け、煮立ってきたら 薄力粉を一度に入れ、 木ベラで手早くまとめてから火を消し、しっかり練り混ぜる。
3.解きほぐした卵を生地に少し加え、木ベラで手早く混ぜる。 卵が生地に馴染んで滑らかになったら、様子を見ながら、少しずつ加え混ぜ、生地を完成させる。
4.絞り袋に丸形の口金をつけ、ゴムベラで絞り袋に生地を入れてオーブンシートを敷いた天板に直径3cm程に絞り出し、表面全体に霧吹きで水を掛ける。
5.190〜210℃のオーブンで約15分焼く。充分に膨らんだら180℃前後に下げ、更に約15分焼く。
本発明のシューケース用油脂組成物を使用せず、他のシューケース用油脂組成物やバターを使用した場合は、当該シュークリームを冷蔵保管した際に、経時的に白化する。それにより、焼成直後には、好ましい焼き色を示していたものが、徐々に、やや白けた色に変化する。
これに対して、本発明のシューケース用油脂組成物を使用した場合は、当該シュークリームを冷蔵保管した場合も、経時的な白化は限定的であり、長時間、好ましい焼き色を維持することが出来る。
なお、赤色色素は微量であるため、赤色色素を規定量添加したシューケース用油脂組成物を別途調製し、使用することが簡便である。
以下に実施例を記載する。
実施例1、比較例1
表2の配合に従い、シューケース用油脂組成物を調製した。調製方法は、以下の「シューケース用油脂組成物の調製法」に従った。
・エステル交換油はパーム分別油、ナタネ油をランダムエステル交換した、融点32℃の油脂を使用した。
・パプリカ赤色色素は三栄源エフエフアイ株式会社製「パプリカオレオレジンNo.44489」を用いた。
1.油脂と乳化剤は溶解、混合し、油相とする。
2.水に精製塩、溶融塩を溶解させた後、カゼインナトリウムを溶解する。
3.油相を攪拌しながら水相を添加し、調合液とする。
4.調合液に香料および色素を添加する。
5.調合液を油脂組成物製造装置(コンビネーター)に供する。
6.得られた油脂組成物をダンボールケースに充填し、冷蔵する。
実施例2、比較例2〜3
表3に記載する配合にて、以下に記載する「シューケース調製法」に従い、シューケースを調製した。シューケース用油脂組成物は、表2「実施例1、比較例1」の配合により調製した油脂組成物をそれぞれ用いた。
得られたシューケースを、表4に記載する群にわけ、各1群にはカスタードクリーム(不二製油株式会社製「カスタード500R」)をそれぞれ60g充填した。その後、各1個ずつ透明のプラスチック袋(HEIKO社製)に入れ、2000ルクスの光を照射した。温度は3〜7℃で実施した。
一日ごとに、色彩色差計(CR-100 MINOLTA製)にて測定した。
得られた値を「経時的白化評価法」で評価した。
結果を表5、表6に示す。
1.強力粉と薄力粉はあらかじめふるいにかけた上、混合する。卵は割卵の上混合し、20±3℃へ保温する。
2.ミキサー用ボールへ水と各シューケース用油脂組成物を入れ、火にかける。
3.シューケース用油脂組成物が溶解し、沸騰した段階で火を止め、強力粉と薄力粉の混合物を添加し、略均一化するまで攪拌する。
4.ミキサーへセットし、攪拌しながら全卵を加える。この際、全卵が生地と一体化したことを確認の上、追加する。
5.全卵を全て入れてしまう直前に、炭酸アンモニウムを添加する。
6.略均一化した後、攪拌をやめる。ここで得られたものを「シュー用生地」と称する。
7.シュー用生地を絞り袋にいれ、焼成用天板に天板紙を敷いた上に、28±2gとなるように搾り出す。
8.生地に水を霧吹きでかけた後、220℃に設定したオーブンで17分間、さらに100℃に設定したオーブンで10分間焼成する。
1.「シューケース調製法」によりシューケースを調製する。
2.シューケース(ないしシュークリーム)を1個ずつ透明のプラスチック袋(HEIKO社製)に入れ、2000ルクスの光を照射する。温度は3〜7℃とする。
3.シューケース焼成日(「D+1」と称する)および4日目(「D+4」と称する)に、シューケースを袋から出し、シューケース表面を色彩色差計(CR-100 MINOLTA製)にて測定する。
4.白色を示すL値に関し、4日目の値を焼成日の値で割った値を求める。これを白化評価値と称する。
5.白化評価値が1.07を超えるものを「白化現象あり」と判断する。白化評価値が1.07未満であるものを「白化現象なし」と判断する。
6.「白化現象なし」と評価されたシューケースに使用されたシューケース用油脂組成物を、「経時的白化防止用」のシューケース用油脂組成物と称する。
・シューケースの白化現象は、シューケースへカスタードクリームを充填するか否かにかかわらず生じた。このことから、シューケースの白化現象は、充填物からの水分移行のみで生じているわけではない事が明らかとなった。
・シューケースを経時的に色彩色差計にて測定したところ、赤色が顕著に減少していることが明らかとなった。
・赤色色素を添加したシューケース用油脂組成物を使用してシューケースを調製すると、赤色の減少が抑えられると同時に、白化がおさえられていることがわかった。
・以上より、シューケースの白化現象は、シューケース用油脂組成物へ赤色色素を規定量添加することで防げることが明らかとなった。
Claims (3)
- カロテノイド系赤色色素を含有する、経時的白化防止用であるシューケース用油脂組成物。
- カロテノイド系赤色色素が、パプリカ赤色色素である、請求項1記載のシューケース用油脂組成物。
- 請求項1又は2記載のシューケース用油脂組成物を使用する、シューケースの経時的白化防止方法。
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