JP6745193B2 - シュー用油脂組成物とそれを用いたシュー生地およびシュー皮の製造方法 - Google Patents

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本発明は、シュー用油脂組成物とそれを用いたシュー生地およびシュー皮の製造方法に関する。
シュー生地は、水と油脂を煮沸し、その中に穀粉を入れ、糊化させる第一加熱工程を経て、この糊状の加熱物に、卵液を入れ、その後焼成(第二加熱工程)することで、空隙のあるシュー皮独特の形状を形成している。
従来、カスタードクリームなどのフィリングをシュー皮の中に注入したシュー菓子は、広く消費者に好まれている。その中でも、近年ではフィリングとして、柔らかい食感や軽い食感のものが好まれてきている。
柔らかい食感のフィリングの例としては、卵と牛乳、小麦粉などで炊きあげたカスタードクリームに生クリームや合成クリームなどを起泡させたホイップクリームなどを混合したフィリングがある。軽い食感のフィリングの例としては、ホイップクリームがある。
このようなフィリングのソフト化にともない、シュー皮もソフトさや口溶けが良好なものが要求されている。シュー皮が硬い食感であり、また口溶けが悪いと、喫食した際に、中のフィリングが先になくなり、シュー皮だけが口中に残ってしまう。
従来、油脂に着目してシュー皮の食感改良を図った技術としては、特許文献1〜6が提案されている。
特開2004−267165号公報 特開2001−292698号公報 特開2016−077247号公報 特開2008−295414号公報 特開2014−057551号公報 特開2016−149941号公報
しかし、特許文献1、2のようにエステル交換油脂を使用しない場合や、特許文献3のように中鎖脂肪酸を使用した場合、縦横に体積があり、ふっくらとしたボリュームのある商品価値のある外観を満足しながら、柔らかい食感や軽い食感のフィリングを使用したときもシュー皮だけが口中に残らず、フィリングと同時に口中でなくなるような相性のよさや、ソフトさや口溶けを持つシュー皮を得ることが難しい。例えば特許文献3は、中鎖脂肪酸を使用しソフトさの改善を図っているが、膨化してもソフトさを維持できず、ボリュームのある外観が得られない。
特許文献4、5は、パーム系のエステル交換油脂の量が多く、またヨウ素価が高いため、縦横に体積があり、ふっくらとしたボリュームと、柔らかい食感や軽い食感のフィリングを使用したときに求められるようなソフトな食感が得られない。特許文献6は、ヨウ素価が高いエステル交換油脂であるため、特に、縦横に体積があり、ふっくらとした外観が得られず、ボリュームを満足できない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ボリュームのある外観を有し、シュー皮のソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良いシュー用油脂組成物とそれを用いたシュー生地およびシュー皮の製造方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のシュー用油脂組成物は、ヨウ素価が20以上60未満であり、パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂を油脂全体の質量に対して5質量%以上50質量%未満含有し、前記パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂以外の油脂として、ヨウ素価が30〜65である油脂を油脂全体の質量に対して50質量%超90質量%以下含有し、ヨウ素価が4以下である油脂の含有量が、油脂全体の質量に対して8質量%未満であることを特徴としている。
本発明のシュー生地は、前記シュー用油脂組成物を含有することを特徴としている。
本発明のシュー皮の製造方法は、前記シュー生地を焼成することを特徴としている。
本発明によれば、ボリュームのある外観を有し、シュー皮のソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良い。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.シュー用油脂組成物
以下、ヨウ素価が20以上60未満であり、パーム系油脂を原料に含む上記エステル交換油脂を「エステル交換油脂(A)」と表記し、上記ヨウ素価が30〜65である油脂を「油脂(B)」と表記し、上記ヨウ素価が4以下である油脂を「油脂(C)」と表記する。
本発明のシュー用油脂組成物に使用されるエステル交換油脂(A)は、ヨウ素価が20以上60未満である。ヨウ素価をこの範囲内にすることで、本発明のシュー用油脂組成物は、シュー皮がボリュームのある外観を有し、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良い。ヨウ素価が20以上であると、シュー皮が硬い食感とならず、口溶けも良好となる。この点を考慮すると、エステル交換油脂(A)のヨウ素価は、25以上が好ましく、35以上がより好ましい。ヨウ素価が60未満であると、シュー皮が柔らかくなり過ぎずに、口溶けが適度で、柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。また焼成品であるシュー皮の外観は、縦横ともに大きく膨化してふくらみのあるものとなり、商品価値を高めることができる。この点を考慮すると、エステル交換油脂(A)のヨウ素価は、58以下が好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物に使用されるエステル交換油脂(A)は、パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂である。パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂を使用することで、トランス脂肪酸量を低減した油脂配合においてエステル交換油脂(A)のヨウ素価を上記範囲内とすることが容易であり、シュー皮はボリュームのある外観を有し、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良い。この点を考慮すると、エステル交換油脂(A)は、その原料のうち、パーム系油脂がエステル交換油脂(A)の原料全体の質量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
パーム系油脂は、パーム油を起源とする油脂である。パーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油やこれらの硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部などを用いることができる。
エステル交換油脂(A)がパーム系油脂以外の油脂を原料に含む場合、このパーム系油脂以外の油脂としては、ラウリン系油脂が好ましい。このパーム系油脂と共にラウリン系油脂を原料に含むエステル交換油脂(A)は、原料がパーム系油脂単独であるエステル交換油脂(A)に比べて、ヨウ素が同一である条件では、ラウリン系油脂を原料に含むことで口溶けがさらに向上する。したがってパーム系油脂としてパーム油やパーム分別軟質油を原料とする原料がパーム系油脂単独であるエステル交換油脂(A)よりもヨウ素価を例えば10以上低くしても、原料がパーム系油脂単独であるエステル交換油脂(A)と同程度の口溶けが得られる。ここでラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換油脂(A)を製造するための、パーム系油脂を含む原料のエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定し固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、エステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(A)中における質量比(SUS/SSU)が0.45〜0.55の範囲内となる。
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂質量の0.05〜0.15質量%添加し、減圧下で80〜120℃に加熱し、0.5〜1.0時間攪拌することでエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(A)を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01〜10質量%添加し、40〜80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(A)を得ることができる。エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。
本発明のシュー用油脂組成物におけるエステル交換油脂(A)の含有量は、油脂全体の質量に対して5質量%以上50質量%未満である。エステル交換油脂(A)の含有量が5質量%以上であると、エステル交換油脂(A)の添加によって、油脂(B)と併用することによって、シュー皮はボリュームのある外観を有し、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。この点を考慮すると、エステル交換油脂(A)の含有量は、油脂全体の質量に対して8質量%以上が好ましい。エステル交換油脂(A)の含有量が50質量%未満であると、油脂(B)と併用することによって、シュー皮のソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。また焼成品であるシュー皮の外観は、縦横ともに大きく膨化してふくらみのあるものとなり、商品価値を高めることができる。この点を考慮すると、エステル交換油脂(A)の含有量は、油脂全体の質量に対して48質量%以下が好ましく、43質量%以下がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物に使用される油脂(B)は、エステル交換油脂(A)以外の油脂であり、ヨウ素価が30〜65である。ヨウ素価をこの範囲内にすることで、本発明のシュー用油脂組成物は、シュー皮がボリュームのある外観を有し、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良い。ヨウ素価が30以上であると、シュー皮が硬い食感とならず、口溶けも良好となる。この点を考慮すると、油脂(B)のヨウ素価は、40以上が好ましく、50以上がより好ましい。ヨウ素価が65以下であると、シュー皮が柔らかくなり過ぎずに、口溶けが適度で、柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。この点を考慮すると、油脂(B)のヨウ素価は、62以下が好ましく、58以下がより好ましい。
油脂(B)としては、特に限定されるものではないが、パーム油、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油や、必要に応じて硬化処理したものなどが挙げられる。これらの油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。油脂(B)は、エステル交換油脂(A)以外の油脂であればエステル交換油脂であってもよいが、油脂(B)としては非エステル交換油脂が好ましい。
これらの中でも、パーム系油脂、ラード系油脂が好ましい。パーム系油脂は上記したとおりであり、その中でも、パーム油、パーム分別油の中融点部(パーム分別中融点油)、軟質部(パーム分別軟質油)が好ましい。ラード系油脂としては、豚脂(ラード)、その分別油やこれらの硬化油などが挙げられ、その中でも、分別や硬化処理をしない豚脂(ラード)が好ましい。特に、油脂(B)として、パーム系油脂の1種または2種以上を単独で使用するか、あるいはパーム系油脂の1種または2種以上と、ラード系油脂の1種または2種以上とを組み合わせて使用することが好ましい。パーム系油脂の1種または2種以上と、ラード系油脂の1種または2種以上との質量比は、100:0〜30:70が好ましく、100:0〜50:50がより好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物における油脂(B)の含有量は、油脂全体の質量に対して50質量%超90質量%以下である。油脂(B)の含有量が50質量%超であると、油脂(B)の添加によって、エステル交換油脂(A)と併用することによって、シュー皮のソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。また焼成品であるシュー皮の外観は、縦横ともに大きく膨化してふくらみのあるものとなり、商品価値を高めることができる。この点を考慮すると、油脂(B)の含有量は、油脂全体の質量に対して52質量%以上が好ましく、57質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。油脂(B)の含有量が90質量%以下であると、エステル交換油脂(A)と併用することによって、シュー皮のソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。
本発明のシュー用油脂組成物は、ヨウ素価が4以下である油脂(C)の含有量が、油脂全体の質量に対して8質量%未満である。油脂(C)の含有量が8質量%未満にすることで、シュー皮が硬い食感とならず、口溶けも良好となり、柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好となる。この点を考慮すると、油脂(C)の含有量は、油脂全体の質量に対して5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
ここで、ヨウ素価が4以下である油脂(C)としては、極度硬化油が挙げられる。極度硬化油の原料油脂としては、菜種油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、豚脂(ラード)、牛脂、魚油や、それらの分別油、エステル交換油脂などが挙げられる。ヨウ素価が4以下である油脂(C)がエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂を極度硬化したものであってもよく、あるいは、極度硬化油を原料油脂としてエステル交換反応したものであってもよい。
本発明のシュー用油脂組成物は、油脂全体において、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が、トリグリセリドの2位に結合された脂肪酸全体の質量に対して30〜67質量%であることが好ましい。トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量がこの範囲内であると、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好なシュー皮を得るのに適している。これらの点が特に良好となることから、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、40〜67質量%がより好ましく、45〜67質量%がさらに好ましい。
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有する化合物である。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。上記に例示したような油脂に由来する、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位と3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドとしては、例えば、SOS型トリグリセリド、SOU型トリグリセリド(位置異性体も含む)、UOU型トリグリセリドなどが挙げられるが、特に限定されない。ここで「S」はトリグリセリドの構成脂肪酸である飽和脂肪酸、「U」はトリグリセリドの構成脂肪酸である不飽和脂肪酸、「O」はトリグリセリドの構成脂肪酸であるオレイン酸を意味する。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sである場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。飽和脂肪酸Sとしては、特に限定されないが、例えば、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)などが挙げられる。なお、上記の飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸Uである場合、炭素数14〜24の不飽和脂肪酸であることが好ましい。不飽和脂肪酸Uとしては、特に限定されないが、例えば、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)などが挙げられる。なお、上記不飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数を意味する。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位または3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸Sと不飽和脂肪酸Uである場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と不飽和脂肪酸(炭素数4〜24の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物は、油脂全体において、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量が、トリグリセリドに結合された脂肪酸全体の質量に対して37〜60質量%であることが好ましい。トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量がこの範囲内であると、トリグリセリドの構成脂肪酸のうち、融点の比較的低い不飽和脂肪酸と融点の比較的高い飽和脂肪酸の含有量が、結晶性において適度なものとなることから、ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好なシュー皮を得るのに適している。焼成品であるシュー皮の外観は、縦横ともに大きく膨化してふくらみのあるものとなり、商品価値を高めることができる点を考慮すると、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量は、トリグリセリドに結合された脂肪酸全体の質量に対して40質量%以上がより好ましく、さらにソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好なシュー皮を得るのに適している点を考慮すると、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量は、トリグリセリドに結合された脂肪酸全体の質量に対して45質量%がさらに好ましい。ソフトさと口溶けが良好で、かつ柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良好なシュー皮を得るのに適している点を考慮すると、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量は、トリグリセリドに結合された脂肪酸全体の質量に対して55質量%以下がより好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物は、エステル交換油脂(A)、油脂(B)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに油脂(C)以外の他の油脂(D)を含有してもよい。このような油脂(D)としては、常温(15〜25℃)において液状の油脂などが挙げられる。液状の油脂のヨウ素価は、例えば90〜130である。液状の油脂として、具体的には、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油や、パーム油、パーム核油、ヤシ油などの分別油などが挙げられる。
油脂(D)の含有量は、ソフトさ、シュー皮とフィリングとの相性、口溶けの点からは、3〜45質量%であることが好ましく、外観が向上する点からは、3〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物に使用される油脂は、油脂の構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、血液中におけるLDLコレステロール量が増加しうる。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては、油脂全体において、トリグリセリドの構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、トリグリセリドの脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。油脂におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3−2013 トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定でき、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(ヘプタデカン酸)との面積比により算出できる。
本発明のシュー用油脂組成物の形態は、特に限定されるものではないが、水相を含有する形態と、水相を実質的に含有しない形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型などが挙げられ、この場合の油相の含有量は、好ましくは60〜99.4質量%、より好ましくは65〜98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。
本発明のシュー用油脂組成物は、可塑性油脂であってもよく、可塑性油脂でなくともよいが、可塑性油脂である場合には、公知の方法により製造することができる。例えば水相を含有する形態のものは、油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサスなどの冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のものは、油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサスなどの冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機において、必要に応じて窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込むこともできる。また急冷捏和後に熟成(テンパリング)してもよい。
本発明のシュー用油脂組成物は、上記のように水相を含有する形態と、水相を実質的に含有しない形態をとることができるが、これらのいずれにおいても、それ以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、乳、乳製品、蛋白質、呈味剤(乳製品酵素処理物等)、アミノ酸、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、増粘剤、着色成分、フレーバー、乳化剤、酒類、酵素、粉末油脂などが挙げられる。乳としては、牛乳などが挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズなど)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどが挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白などの植物蛋白などが挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン等)などの多糖類や、ステビア、アスパルテームなどの甘味料などが挙げられる。抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物などが挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロンなどが挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)などが挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチンなどが挙げられる。フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバーなどが挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
2.シュー生地およびシュー皮の製造方法
本発明のシュー用油脂組成物を用いて、シュー生地およびシュー皮を、例えば以下のようにして製造することができる。
本発明のシュー用油脂組成物を、水と混合し、煮沸する。シュー生地は、穀粉を主成分とする他の焼成品に比べて、水分が多い配合が特徴である。材料がもたらす水分(主に水、卵)は、その水分は、オーブンなどで加熱されることによって水蒸気となり、その力で粘性のあるシュー生地を押し広げて、体積を増し、生地を大きくふくらませ、空洞を形成する。シュー生地を作製する際に、油脂がグルテンの形成を抑え、でんぷんの過剰な粘りを断ち切る。したがって煮沸した水と油脂組成物をあらかじめ混合して水に油脂を分散させておいてから小麦粉などの穀粉を加えると、糊化(α化)してでんぷんの粘りが出過ぎることがなく生地にのびの良さが加わる。また急激に粘りが強く出たでんぷん粒同士がくっついてダマができることを抑制できる。
煮沸した後、穀粉をさらに混合して穀粉を糊化させる。穀粉を添加して捏和し、一般のシュー皮と同様にシュー皮を形成するのに適した糊化状態にする。熱湯に穀粉を加えて加熱することによって、でんぷん粒が水を吸収し、ふくらんで柔らかくなり、糊のような粘りが出て、のびの良い生地となる。その後、オーブンなどで焼成する際にさらに糊化が進み、水分がある程度蒸発して焼きあがることで、ふっくらした生地となる。穀粉にまんべんなく水を吸収させて、一気に糊化が進む温度まで上げるためには、煮沸した熱湯の中に穀粉を一度に入れてよくかき混ぜて、ひとまとまりの生地を作ることが好ましい。でんぷんの糊化をより進めるために、熱湯に穀粉を加えてひとかたまりになった生地を、鍋などの中で火をかけながら混ぜる工程を含むことが好ましい。これにより、穀粉を加えて混ぜると一旦温度が下がるので、生地を再加熱して生地全体の温度を均一に上げ、さらに糊化を進めることができる。生地を火にかけて練る際には、生地の中心温度が80℃前後かそれ以上に達していることが好ましい。
穀粉を糊化させた後、得られた混合物と卵液とを混合する。卵液はミキシングしながら数回に分けて加えることが好ましく、これによりシュー生地を十分に乳化し、さらに卵液で硬さを調整して、なめらかなつやのあるシュー生地を得ることができる。卵液に含まれる卵黄は、油脂を生地中に分散させる乳化の役割を果たす。焼成段階では、卵液の水分が空洞の形成に寄与し、最終的には卵のタンパク質が加熱により固まって、ふくらんだ生地がその形を保てるように強固にする。
このようにして得られたシュー生地は、丸の口金をつけた絞り袋などにシュー生地を入れて、天板などの上に、所定の直径となる大きさに絞る。シュー生地の表面の乾燥を遅らせて、より大きくふくらませるために、オーブンなどに入れて焼成する前に全体に水を霧吹きしてもよい。また、表面に溶き卵などを塗り、乾燥を防ぐと共に、焼き色を濃くつけるようにしてもよい。
天板などの上に絞ったシュー生地は、オーブンなどにより焼成して、シュー皮が得られる。一例としては、上面185〜195℃、下面195〜205℃に設定したオーブンで焼成する。シュー生地がふくらんだ後、上面と下面の温度をある程度下げて、しっかりと焼き色がつくまで焼成を続けてもよい。シュー生地の表面に、オーブン内の熱い空気が直接当たり、水蒸気を閉じ込めるための薄い膜ができる。最も温度が上がりやすい生地底部が100℃に達すると、水が急激に水蒸気に変化して体積を増して生地を押し広げて空洞を作り始める。これが核となって空洞が大きくなり生地は薄くのびて、生地全体が大きくふくれる。生地表面が焼き固まる水と蒸気が空気を押し広げようとしても、それ以上生地がのびずに、ふくらみが抑えられる。中から生地を押し広げようとする水蒸気の圧力が強いため生地表面には亀裂ができ、そこから内部に閉じ込められていた水蒸気が逃げていき、亀裂の溝も焼き固まると、全体にかたさがあってしぼまないシューに焼きあがる。
シュー生地は、絞って玉にした状態で冷凍することも可能である。シュー生地を冷凍する場合は、−20〜−45℃の冷凍庫などを使用し、急速に冷凍することが好ましい。
シュー生地における本発明のシュー用油脂組成物の配合量は、特に限定されるものではないが、穀粉100質量部に対して70〜150質量部が好ましく、100〜140質量部がより好ましい。シュー生地における水(卵液を除く。)の配合量は、特に限定されるものではないが、穀粉100質量部に対して100〜250質量部が好ましく、120〜200質量部がより好ましい。シュー生地における卵液の配合量は、特に限定されるものではないが、穀粉100質量部に対して150〜300質量部が好ましく、200〜280質量部がより好ましい。
シュー生地に使用される穀粉としては、通常、焼成品の生地に配合されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉など)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉などが挙げられる。
シュー生地には、上記の成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において他の成分を適宜配合することができる。このような他の成分としては、例えば、乳、乳製品、蛋白質、糖質、増粘剤、乳化剤、膨張剤、卵加工品、塩類、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバーなどが挙げられる。乳としては、牛乳などが挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズなど)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどが挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白などの植物蛋白などが挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン)などの多糖類や、ステビア、アスパルテームなどの甘味料などが挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などが挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは水と混合し、煮沸する際に、あるいは卵液を混合し乳化する際に添加することが好ましい。
以上に説明した本発明のシュー生地を焼成して得られるシュー皮は、空洞を有するシュー皮にフィリングを充填してシュー菓子とすることができる。フィリングとしては、特に限定されるものではないが、柔らかい食感や軽い食感のフィリングが好ましく、本発明のシュー皮はソフトさと口溶けが良好で、このような柔らかい食感や軽い食感のフィリングとの相性が良い。
フィリングの「柔らかい食感」は、口に入れて舌と上顎で押し潰したときに、直後に流動性を感じる食感を含み、例えばとろとろとした食感を含む。フィリングの「軽い食感」は、口に入れて舌と上顎で押し潰したときに、直後に抵抗なく潰れる食感を含み、例えばふわふわとした食感を含む。
柔らかい食感のフィリングとしては、卵と牛乳、小麦粉などで炊きあげたカスタードクリームや、フラワーペーストなどの、澱粉を主体とするもの、クリームチーズなどの蛋白を主体とするものに、生クリームや合成クリームなどを起泡させたホイップクリームや、ヨーグルトを混合したフィリングなどが挙げられる。
軽い食感のフィリングとしては、例えば、生クリームや、合成クリームを、起泡させたもの(ホイップクリーム)や、これらクリームに、糖や呈味剤を添加し起泡させたものや、バタークリームなどが挙げられる。ホイップクリームは、その全般の中でも、軽い食感を指向した製品があり、糖や呈味剤などを混合し、起泡させたときの比重が、0.4〜0.55となるような、ホイップクリームをフィリングとした場合に本発明のシュー皮は好適である。
またシュー皮の表面や、シューの分割部分より露出したフィリングに、チョコレートや粉砂糖などの食材を被覆、ふりかけ、またはトッピングしたものであってもよい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)測定方法
油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
油脂における飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂のトリグリセリドの脂肪酸全体の質量を基準としている。
油脂におけるトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定した。なお、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂のトリグリセリドの2位脂肪酸全体の質量)を基準としている。
(2)シュー生地の作製
表1においてエステル交換油脂1〜9は次のものを使用した。
(エステル交換油脂1)
パーム油30質量%、パーム極度硬化油35質量%、パーム核極度硬化油35質量%、を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。エステル交換油脂1のヨウ素価は、17であった。
(エステル交換油脂2)
パーム油50質量%、パーム極度硬化油25質量%、パーム核油10質量%、パーム核極度硬化油15質量%を原料として、エステルエステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂2を得た。エステル交換油脂2のヨウ素価は、29であった。
(エステル交換油脂3)
パーム油60質量%、パーム極度硬化油15質量%、パーム核油20質量%、パーム核極度硬化油5質量%を原料として、エステルエステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂3を得た。エステル交換油脂3のヨウ素価は、36であった。
(エステル交換油脂4)
パーム油70質量%、パーム極度硬化油7.5質量%、パーム核油15質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%を原料として、エステルエステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂4を得た。エステル交換油脂4のヨウ素価は、40であった。
(エステル交換油脂5)
パーム油(ヨウ素価53)を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂5を得た。
(エステル交換油脂6)
パーム分別軟質油(ヨウ素価56)を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂6を得た。
(エステル交換油脂7)
パーム分別軟質油(ヨウ素価67)を原料として、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂7を得た。
(エステル交換油脂8)
パーム油72質量%、大豆油25質量%、ハイエルシン菜種極度硬化油3質量%を原料としてこれらを混合し、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂8を得た。エステル交換油脂8のヨウ素価は、70であった。
(エステル交換油脂9)
パームステアリン極度硬化油50質量%、パーム核オレイン極度硬化油50質量%を原料としてこれらを混合し、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂9を得た。エステル交換油脂9のヨウ素価は、2であった。
<シュー用マーガリンの作製>
表1に示す配合で各油脂を溶解、混合し、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを添加、溶解し油相とした。一方、水を80℃に加熱殺菌し、水相を得た。油相に、水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和し、シュー用マーガリンを可塑性油脂として得た。尚、表1の油脂配合は、質量%である。
〈シュー用マーガリンの配合〉
油脂 80質量部
グリセリン脂肪酸エステル 0.3質量部
水 19.7質量部
<シュー生地の作製>
(1) シュー用マーガリンと水とカゼインナトリウムをミキサーボールに加え煮沸させた。
(2) 火を止めた後、予め混ぜ合わせておいた穀粉(強力粉、薄力粉)をミキサーボールに一気に加え2分間練り合わせα化した。
(3) 卵液の90%を3回に分けて中高速で加え合わせた。
(4) 残りの卵液を徐々に加え、全て入れ終わったところで高速で2分間ミキシングした。
(5) 丸の口金を付けた絞り袋に生地を入れ、天板に生地10gを絞り出した。
(6) 絞り出したシュー生地を、上面195℃、下面200℃に設定したオーブンで15分間焼成し、シュー皮を得た。
〈シュー生地の配合〉
強力粉 80質量部
薄力粉 20質量部
シュー用マーガリン 130質量部
カゼインナトリウム 2質量部
水 110質量部
卵 210質量部
(3)評価
上記において焼成したシュー皮について次の評価を行った。
なお、以下官能評価のパネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[シュー皮のソフトさ]
上記において焼成したシュー皮に、フィリングとしてホイップクリーム(比重0.52、砂糖10%配合)を注入し、5℃の保管庫に1日保管したものを喫食し、口中でのソフトさをパネル10名で以下の基準により評価した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
[シュー皮とフィリングとの相性]
上記において焼成したシュー皮に、フィリングとしてホイップクリーム(比重0.52、砂糖10%配合)を注入し、5℃の保管庫に1日保管したものを喫食し、口中でのホイップクリームとの相性をパネル10名で以下の基準により評価した。
シュー皮とフィリングとの相性は、シュー皮だけが、口中に残らず、ホイップクリームと同時に口中でシュー皮がなくなることを良好であるとし判断し、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
[シュー皮の口溶け]
上記において焼成したシュー皮を20℃の恒温室に30分放置後、パネル10名で喫食し、口溶け感を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が良好であると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:パネル10名中2名以下が良好であると評価した。
[シュー皮の外観]
上記において焼成したシュー皮を20℃の恒温室に30分保管し、10個の試料について縦・横の最も大きな部位の長さをノギスで測定した平均値により、外観を以下の基準で評価した。
評価基準
○:縦の長さが、50mm以上、横の長さが80mm以上であり、
且つ縦/横の比率が0.75以上である。
△:縦の長さが、50mm以上、横の長さが80mm以上であり、
且つ縦/横の比率が0.75未満である。
×:縦の長さが、50mm未満、および/または、横の長さが80mm未満である。
上記の評価結果を表1に示す。
Figure 0006745193

Claims (3)

  1. ヨウ素価が20以上60未満であり、パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂を油脂全体の質量に対して5質量%以上50質量%未満含有し、
    前記パーム系油脂を原料に含むエステル交換油脂以外の油脂として、ヨウ素価が30〜65である油脂を油脂全体の質量に対して50質量%超90質量%以下含有し、
    ヨウ素価が4以下である油脂の含有量が、油脂全体の質量に対して8質量%未満であり、
    油脂全体において、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が、トリグリセリドの2位に結合された脂肪酸全体の質量に対して25.8〜67質量%であり、
    油脂全体において、トリグリセリドに結合された飽和脂肪酸の含有量が、トリグリセリドに結合された脂肪酸全体の質量に対して36.1〜60質量%であるシュー用油脂組成物。
  2. 請求項に記載のシュー用油脂組成物を含有するシュー生地。
  3. 請求項に記載のシュー生地を焼成するシュー皮の製造方法。
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