JP5914019B2 - 酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定方法およびその校正試料 - Google Patents

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Description

本発明は、酵素サイクリング反応による測定方法およびその校正試料に関する。
ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法において、被検液中にメバロン酸以外に酵素サイクリング反応の基質となる物質が存在する場合には前処理によりメバロン酸を消去した被検液と前処理をしない被検液で酵素サイクリング反応を行い、そのシグナルの差からメバロン酸量を正確に測定する方法が報告されている(特許文献1)。
国際公開第2010/082665号パンフレット
被検液中のメバロン酸を測定する方法において、前処理により被検液中のメバロン酸を消去してから酵素サイクリング反応を行う工程を含む場合、該工程の校正試料として、濃度が既知のメバロン酸溶液は前処理によりメバロン酸が消去されるため検量線を作成することができず、実質的に使用することができない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、酵素サイクリング反応による被検液中のメバロン酸の測定方法において、メバロン酸をより正確に測定することのできる方法を提供することにある。
また、特許文献1には、保存安定性など性能向上を目的として、メバロン酸、コエンザイムAまたは3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの標準物質に添加物を適宜加えてよいと記載されているものの、その添加物の具体的な成分および濃度、安定性向上の程度等詳細は開示されておらず、実現可能性は乏しいものであった。
本発明者らは、不安定な3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを安定化させる方法を見出したことにより、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて被検液中のメバロン酸を測定することのできる方法を見出し、本発明を完成した。
本発明は以下のとおりである。
[1]
ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法であって、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法。
[2]
以下の1)〜3)の工程を含む、[1]記載の測定方法。
1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からメバロン酸量を求める工程
[3]
前処理がメバロン酸キナーゼにより行われる、[2]記載の測定方法。
[4]
酸を含む、安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液。
[5]
酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、[4]記載の溶液。
[6]
pHが4以下である、[4]または[5]記載の溶液。
[7]
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度が0.1mM以下である、[4]〜[6]のいずれか記載の溶液。
[8]
酸の濃度が0.1mMから100mMである、[4]〜[7]のいずれか記載の溶液。
[9]
酸が硫酸であり、さらに界面活性剤を含む、[4]〜[8]のいずれか記載の溶液。
[10]
校正試料が[4]〜[9]のいずれか記載の溶液である、[1]〜[3]のいずれか記載の測定方法。
[11]
酸を用いる、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイム溶液の安定化方法。
[12]
酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、[11]記載の安定化方法。
本発明に従うと、酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定が正確になる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施の形態という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定方法は、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する際に、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法である。
本実施の形態において、酸を含むことにより、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液において、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定性が向上したことが見出された。本実施の形態においては、かかる安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を、校正試料として用いることで、より正確に被検液中のメバロン酸量を測定することのできる方法を提供することができる。
本実施の形態においては、特許文献1に記載されるメバロン酸の測定方法を用いてメバロン酸の測定を行うものであるが、その際に、校正試料として3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を用いることにより、より正確にメバロン酸を測定する方法を提供する。
一般に、測定試薬を用いて被検液中に存在する物質Aの量を吸光度、発光量、電気量等のシグナル量に変換することで測定する場合には、既知量の物質Aを含む被検液(校正試料またはキャリブレーターと呼ばれる)を用いて、シグナル量と物質Aの濃度の関係を表す検量線が必要である。検量線は直線近似で表されることもあるが、多次式近似、指数関数近似、スプライン近似で表されることもある。
したがって、酵素サイクリング反応でメバロン酸濃度を測定しようとする場合は既知濃度のメバロン酸を含む校正試料を用いて検量線を作成する必要がある。
例えば、特許文献1では、メバロン酸濃度を測定しようとする際には、被検液中のメバロン酸を除去したサンプルと除去しないサンプルの2つを準備し、それぞれのサンプルに下記反応式1および反応式2の反応を触媒する酵素を作用させ、それらの測定量の差から被検液中のメバロン酸を算出する方法として記載されている。そして、以下のi)、ii)、iii)の工程を含む測定方法としてメバロン酸溶液を校正試料として測定する場合が例示されている。
i)校正試料と測定試料において、前処理によりメバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い吸光度を測定する工程
ii)校正試料と測定試料において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い吸光度を測定する工程
iii)校正試料においてi)とii)の吸光度差とメバロン酸濃度の関係から検量線を作成し、測定試料のi)とii)の吸光度差からメバロン酸濃度に変換する工程
具体的には、特許文献1の実施例26において、校正試料として、濃度既知(0nMおよび50nM)のメバロン酸溶液に対し、0nMの校正試料である場合の工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、50nMの校正試料である場合の工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、0nMと50nMにおけるそれぞれの吸光度差を利用して検量線を作成している。
そして、測定試料についても、工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、吸光度差から被検液中のメバロン酸濃度を測定している。
ここで、吸光度差を用いて検量線を作成するのには、50nMにおける校正試料のメバロン酸溶液に対して、メバロン酸を消去すると、実質的に、50nMにおける吸光度の測定が0nMにおける吸光度の測定と同様の結果を与えることとなり、0nM−50nMの検量線を作成することができないことによる。
かかる方法は、工程ii)により測定される吸光度から、工程i)により測定される被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質による吸光度を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
しかしこの方法では、より正確にメバロン酸量を測定するという課題に対し、精度上の問題においてi)とii)の異なる工程においても、吸光度とメバロン酸濃度の関係は同じである、つまり同じ検量線を適用できるという前提に立っているが、その検証ができないことがある。また、検量線を作成できるのはi)とii)の吸光度差を計算したのちであり、一般的な自動分析機においてこのような複雑な検量方法による測定はできず、自動分析機で得られた測定データにさらに人による計算処理を加えることが必要となり、簡便性の点でも問題がある。
一方、以下のiv)、v)、vi)の工程による校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いた測定法においては、より正確にメバロン酸量を測定するという課題に対し、上記2つの問題点は解消される。
iv)校正試料と測定試料において、前処理によりメバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する工程
v)校正試料と測定試料において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する工程
vi)iv)とv)で測定されたメバロン酸量の差からメバロン酸濃度を測定する工程
ここで、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いた工程iv)における、「メバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質により、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
また、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いた工程v)における「メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸とメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質とにより、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
この方法は、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いていることにより、工程v)により測定される被検液中のメバロン酸量と、工程iv)により測定される被検液中のメバロン酸量とをそれぞれ測定することができ、そして、工程v)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程iv)により測定される被検液中のメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
特許文献1に記載された方法においては、工程i)と工程ii)の吸光度差に基づいてメバロン酸濃度を測定しているが、工程iv)及び工程v)それぞれにおけるメバロン酸濃度を測定した上でメバロン酸自体の量を測定することができるため、より正確な値として測定することができる。
ここで、工程iv)にはメバロン酸を消去する前処理工程があるため、校正試料としてメバロン酸溶液を用いることができないが、本実施の形態では、工程iv)の前処理により消去されずに、酵素サイクリング反応の基質になる3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAをメバロン酸測定の校正試料として用いることに着想した。そこで、その実現のための課題であった不安定な3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの溶液中での安定化できる方法を見出したことにより、本発明とすることができたものである。すなわち、工程iv)及び工程v)の校正試料として、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を用いることで、本発明のメバロン酸の測定方法を提供している。
本実施の形態において、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応とは、特許文献1に示される酵素サイクリング反応を意味し、下記反応式1および反応式2により示されるコエンザイムA存在下での酵素サイクリング反応である。
反応式1:
反応式2:
具体的には、下記反応式3で示されるように、酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下T−NADともいう)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NADHともいう)およびコエンザイムAの存在下でのハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応である。
反応式3:
反応式3は、より詳しくは下記反応式4で示される多段階反応である。
反応式4:
本実施の形態において、被検液とは測定対象であるメバロン酸が溶解している溶液のことであり、水、酸、塩基、金属イオン、糖類、アルコール類、アミノ酸類、タンパク質、界面活性剤、キレート剤、その他有機化合物を含む溶液が挙げられる。
食品の被検液としてはビール、ジュース、固形食品からの抽出液等が挙げられ、生体試料の被検液としては、血液、血漿、血清、血球などの細胞内液、尿、唾液、涙、組織抽出液が挙げられる。また、食品や生体試料に酸、塩基、金属イオン、糖類、アルコール類、アミノ酸類、タンパク質、界面活性剤、キレート剤、その他有機化合物などの添加物を適宜加えた溶液を被検液として被検液中のメバロン酸量が測定される。
本実施の形態においては、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いる。
酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する場合、得られる吸光度からメバロン酸濃度として測定する。この吸光度からメバロン酸濃度への変換は吸光度と濃度の関係を表す検量線を用いて行うが、この検量線を作成するために校正試料が必要となる。したがって、校正試料とは、本実施の形態においてはメバロン酸の量を決定するために用いる検量線を作成するための試料である。
本実施の形態において用いる校正試料は、測定対象物質であるメバロン酸の代わりに3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液であり、それを用いて酵素サイクリング反応を行うと得られる吸光度と同じ吸光度が得られる濃度のメバロン酸が含まれる校正試料の代用になるものである。よって、前処理によりメバロン酸を消去してから酵素サイクリング反応を行う場合においても、この3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む校正試料を用いるとメバロン酸を含んでなる校正試料ではできなかった検量線を作成することができる。
本実施の形態における酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定方法においては、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いるが、具体的には、以下の1)〜3)の工程からなるメバロン酸の測定方法を提供する。
1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)で測定されたメバロン酸量の差からメバロン酸量を測定する工程
ここで、工程1)および工程2)において、検量線は、校正試料の濃度と吸光度の関係に基づいて測定されることが好ましい。
工程1)における、「メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質により、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
また、工程2)における「メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸とメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質とにより、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
この方法は、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程1)により測定される被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質によるメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。すなわち、校正試料として3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを用いていることにより、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量と、工程1)により測定される被検液中のメバロン酸量とをそれぞれ測定することができ、そして、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程1)により測定される被検液中のメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
本実施の形態のメバロン酸の測定方法により、より正確なメバロン酸量を測定することができる。なお、本実施の形態においては、工程3)のメバロン酸量を測定できるように、工程3)の前に工程1)と工程2)における被検液中のメバロン酸が測定されていればよいので、工程1)と工程2)の順番は限定されない。
工程1)において、酵素サイクリング反応に先立ち被検液中のメバロン酸を消去する前処理としては、マスキング剤処理、吸着剤処理、酵素反応処理などが挙げられるが、酵素反応処理が簡便で好ましく、さらに好ましくはメバロン酸キナーゼによりメバロン酸を消去することである。
また、前処理反応は酵素サイクリング反応中に生成するメバロン酸を消去してシグナルを減弱させるので、酵素サイクリング反応中には停止をしておく必要がある。
酵素サイクリング反応に用いられるハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼは反応式1〜4で示される酵素サイクリング反応を触媒するものであれば動物由来、細菌由来のものなど、特に限定はされないが、例えば特許文献1記載の酵素サイクリング反応に用いられるシュードモナス属由来のハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼなどを使用することができる。
前処理に用いられるメバロン酸キナーゼは下記反応式5を触媒する酵素であれば動物由来、細菌由来のものなど、特に限定はされないが、例えば特許文献1記載の酵母由来のメバロン酸キナーゼなどを使用することができる。
反応式5:
前処理にメバロン酸キナーゼを用いる場合、酵素サイクリング反応中にメバロン酸キナーゼの反応を停止させる方法として、EDTA、EGTAなどのキレート剤添加、pHシフト、熱処理、メバロン酸キナーゼ阻害抗体添加などが挙げられ、続く酵素サイクリング反応に影響が少ない方法を選択すればよく、例えばキレート剤添加が好ましい。
本実施の形態においては、工程1)および工程2)においては校正試料として3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を用いている。一方、工程2)において、メバロン酸を使用することも可能であるが、工程1)では使用することができないため、工程1)と2)で別の校正試料が必要となる。本実施の形態におけるように、工程1)と2)で同じ校正試料を用いたほうが精度がよくなることは一般に推測される。
このように、本実施の形態においては、工程1)および工程2)においては校正試料として3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を用いることが着想されたものであるが、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAは高価であり、また、溶液で不安定であり、測定精度を考えると校正試料としては適さず、通常、これを校正試料にしようとは想到しないものであった。
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液に酸を加えることで思いがけず安定化することを発見し、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料とすることを可能にした。したがって、本実施の形態においては、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化方法として、酸による安定化方法も提供される。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む校正試料は、使用時には溶液状態であるが、保存時は凍結乾燥状態、凍結状態であってもよい。
校正試料としての安定性としては、安定であればあるほどよいが、例えば10℃で8日間保存して残存率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、または例えば37℃で2日間保存し残存率が17%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を酵素サイクリング反応によるメバロン酸測定の校正試料として用いる場合には、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度は、メバロン酸測定試薬におけるメバロン酸の測定範囲に合わせて設定されるが、酵素サイクリング反応による高感度な測定試薬の場合には0.1mM以下、0.01mM以下、0.001mM以下といった低濃度領域に設定される。低濃度であればあるほど、少しの量の変化でも変動率が大きくなるので、その安定性を維持することは大変重要なものになってくる。また、低濃度であればあるほど、容器、器具等への吸着による影響も大きくなるので、界面活性剤、ペプチド類、タンパク質、核酸類、アルコール類、有機溶媒等を加えて吸着の影響も最小化することが重要である。なお、ここで表記する0.1mMなどの3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の濃度はラセミ体としての濃度であるので、後述する実施例7であるように相当するR−メバロン酸の濃度としては表記した濃度の0.2−0.5倍程度になる。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液には、酸を加えることで安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液とすることができるが、好ましくはpHを5以下、より好ましく4以下、さらに好ましくは3以下にするように酸を添加すればよい。
そのような酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、酢酸からなる群から選ばれる酸が挙げられ、これらの酸を組み合わせて用いてもよい。
安定化させるために3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液に加える酸の濃度としてはpHを下げる効果があり、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAが分解または析出しない範囲であれば特に限定はされないが、酵素サイクリング反応の校正試料として用いる場合には酵素サイクリング反応に影響を及ぼさない程度として、好ましくは0.1mMから500mM、より好ましくは1mMから100mM、さらに好ましくは1mMから20mMである。
酸を加えて安定化させた3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液に界面活性剤、キレート剤、金属イオン、糖類、アミノ酸類、ペプチド類、タンパク質、核酸類、色素類、アルコール類、有機溶媒、防腐剤、塩基、緩衝液成分その他有機化合物などの添加物を適宜加えてもよく、酸として硫酸を用いた場合には、界面活性剤をさらに含むことが3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの安定化において好適である。
界面活性剤としては陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、DOCなどのステロイド骨格を持つ界面活性剤、n−Decyl−β−D−maltoside、n−Octyl−β−D−glucosideなどの糖骨格を持つ界面活性剤、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などの界面活性剤などを用いることができるが、好ましくは非イオン性界面活性剤であり、より好ましくはTritonX−100、TritonX−114、Tween20、Tween60、Tween80である。
安定化させるために3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液に加える界面活性剤の濃度としては特に限定はされないが、酵素サイクリング反応の校正試料として用いる場合には酵素サイクリング反応に影響を及ぼさない程度として、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下である。
キレート剤としてはEDTA、EGTA、IDA、NTPO、TPENなどが挙げられる。金属イオンとしてはナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、金、銀、銅などの金属イオンが挙げられる。糖類としてはグルコース、フルクトース、キシロース、イノシトール、ソルビトール、シュークロース、トレハロースなどの単糖類、多糖類が挙げられる。アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、オルニチン、ノルロイシンなどのDおよびLアミノ酸が挙げられる。ペプチド類としては、長さ2〜10程度のアミノ酸がつながったものとして、ジペプチド類、トリペプチド類、およびタンパク質のプロテアーゼ分解物などが挙げられる。タンパク質類としては、リゾチーム、アルブミン、セリシン、カゼイン、カタラーゼ、パーオキシダーゼなどが挙げられる。核酸類としてはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドが挙げられる。色素類としてはクロロフィル、クロロフィリン、タートラジン、メチレンブルー、メチルレッド、フェノールフタレインなどが挙げられる。アルコール類としてはメタノール、エタノール、オクタノールなどが挙げられる。ポリオール類としてはエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコールなどが挙げられる。有機溶媒としてはジメチルスルオキシド、ジメチルホルムアミド、フェノールなどが挙げられる。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、ケーソンCG、プロクリンなどの抗菌物質や静菌物質、カナマイシンなどの抗生物質などが挙げられる。
本実施の形態においては、以下の1)〜3)の工程
1)被検液中のメバロン酸を前処理により消去したのち、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)被検液中のメバロン酸を消去せずに被検液として、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からより正確なメバロン酸量を求める工程
によりメバロン酸量をより正確に測定することができるが、前処理が酵素法である、特にメバロン酸キナーゼである場合は、メバロン酸の測定精度がとても高くなりより有用である。工程2)においては、被検液中のメバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応が行われるが、メバロン酸の前処理による消去を行っていないということを意味している。
ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼは、反応式4として前述のように多段階反応を触媒するので基質となる物質が多く、メバロン酸、メバルデハイド、メバジルコエンザイムA、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAもが基質となるが、メバロン酸キナーゼによる特異性によって、工程1)においてメバロン酸が前処理により除去されて検出対象が限定されるため、工程2)における測定結果から工程1)における測定値の差分を取ることにより、理論上メバロン酸のみを正確に測定することができるからである。さらにまた、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼにメバロン酸に関係なくT−NADHを生成する酵素活性が内在またはハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼとは別に混在する場合でも、メバロン酸キナーゼによる特異性によって検出対象が限定されるため、メバロン酸のみを正確に測定できるようになる。
このように、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料とすることが可能となったことで、以下の1)〜3)の工程のうち、工程1)および工程2)において、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて、
1)被検液中のメバロン酸をメバロン酸キナーゼにより消去したのち、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)被検液中のメバロン酸を消去せずに被検液としてハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング法で3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からより正確なメバロン酸量を求める工程
を含む測定法とすることができ、工程1)および工程2)の異なる工程において同一の校正試料を使って、それぞれの工程における検量線を作成することが可能になり、本実施の形態のメバロン酸の測定方法の精度が向上する。
メバロン酸は生体内のコレステロール生合成系ではR−メバロン酸のみが利用され、同じく3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAはS−3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAのみが利用されるが、試薬としてはラセミ体で販売されている。本実施の形態においては、特に断らない限り、単にメバロン酸、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAといった場合、試薬としてはラセミ体のことを、生体内に存在するものを指す場合はで利用される異性体のことを意味する。また、表記される濃度も特に断らない限り同様である。
以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例等に限定されるものではない。
[実施例1]
<酢酸、クエン酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
DL−3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAナトリウム塩(シグマ:H6132)を精製水で溶解し0.01mMの3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を作製した。次に0.01mMの溶液0.05mLに0.95mLの希釈液を加えて0.0005mMの溶液を作製した。希釈液として、精製水(pH7.6)、2mM酢酸(pH4.0)、10mM酢酸(pH3.5)、100mM酢酸(pH3.0)、10mMクエン酸−クエン酸ナトリウム(pH4.0)、10mM MES(pH5.0)の6種類を用いた。それぞれの希釈液で希釈した6種類の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を希釈した当日と、37℃で2日保存後に以下の測定法で測定した。保存後の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量を保存前の量で除すことにより、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を求めた(表1)。
表1に示すように、pHが低いほど3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAは安定であることがわかり、精製水に比べ大幅に改善していることがわかる。
<ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの測定法>
3μLのサンプル溶液に、37℃で90μLの第1測定試薬(0.46mM NADH、30mM炭酸水素ナトリウム、50mM Glycine、0.4mM塩化マグネシウム、0.4mM ATP、0.05%アジ化ナトリウム、0.072%Tween80、pH9.9)を加え、9分後に30μLの第2測定試薬(0.02%プロクリン300、110mM HEPES、25mM MES、10mM EDTA、2.4mMコエンザイムA、25mM T−NAD、23U/mLハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ、pH6.0)を加えてから、37℃12分間の波長410nmの吸光度変化[mABS]を測定した。
校正試料は100nMのRS−メバロン酸を用いて、測定は自動分析機BM9020(日本電子製)を用いて行った。また、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼは、特許文献1に記載されるように、Pseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)由来のハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものである。なお、Pseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)は土壌から分離され、Pseudomonas migulaeに近縁なPseudomonas sp.と同定され、平成20年11月13日に日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、受託番号FERM BP−11063が付与されている。
[実施例2]
<塩酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表2記載の6種類の希釈液を用い、37℃で4日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表2)。
表2に示すように、1mM以上の塩酸添加により、ほぼ同等に安定であることがわかる。
[実施例3]
<硫酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表3および表4記載のそれぞれ6種類の希釈液を用い、37℃で3日保存後および10℃で8日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表3および表4)。0.1mM塩酸で約pH4であり、0.1mM硫酸で約pH3.7である。
表3および表4に示すように、塩酸と同様に10mMまでは硫酸濃度が高いほど3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAは安定であることがわかる。
[実施例4]
<硫酸、塩酸、酢酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表5記載の14種類の希釈液を用い、37℃で2日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表5)。
表5に示すように、塩酸と硫酸の安定化効果は同等であり、酢酸は少し劣ること、およびTween80は単独では安定化効果はないが、硫酸、塩酸とともに用いると弱いながら安定化効果があることがわかる。
[実施例5]
<硫酸およびTween80添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化(1)>
実施例1と同様に表6記載の7種類の希釈液を用い、37℃で2日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表6)。
表6に示すように、Tween80は単独では安定化効果はない、または不安定化効果があるが、硫酸とともに用いると安定化効果があることがわかる。また、50mM NaCl、5% glycerol、5% sucroseは、酸添加に比較して安定化効果がほとんどないことがわかる。
[実施例6]
<硫酸およびTween80添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化(2)>
実施例1と同様に表7記載の13種類の希釈液を用い、37℃で5日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表7)。
表7に示すように、硫酸濃度が2mMまでは高いほど安定化効果があり、37℃5日保存してもほとんど劣化しないようになった。
[実施例7]
<3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料として酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定>
被検液として51.6nMのメバロン酸水溶液、プール血清、50.8nMのメバロン酸を添加したプール血清、プール血漿、47.8nMのメバロン酸を添加したプール血漿を作製した。なお、ここでのメバロン酸濃度はR−メバロン酸濃度として表記してある。また、プール血清、プール血漿はコージンバイオからの購入品である。
<メバロン酸キナーゼによる前処理を含む、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定>
DL−3−ヒドロキシー3−メチルグルタリルコエンザイムナトリウム塩(シグマ:H6132)を精製水で溶解後、10mM硫酸、0.1%Tween80で希釈して500nMの溶液を作製した。表8に示すように、この溶液を以下の前処理工程を含まない酵素サイクリング反応において、50nMのR−メバロン酸を含むメバロン酸溶液を校正試料として測定するとR−メバロン酸量として193.2nM相当することから、193.2nMの校正試料とした。
(前処理工程を含む酵素サイクリング反応)
5μLの被検液に、37℃で150μLの第1測定試薬(0.7mM NADH、30mM炭酸水素ナトリウム、50mM Glycine、0.4mM塩化マグネシウム、0.4mM ATP、0.05%アジ化ナトリウム、0.072%Tween80、0.16U/mlメバロン酸キナーゼ、18%シュークロース、pH10.0)を加え、10分後に50μLの第2測定試薬(0.02%プロクリン300、110mM HEPES、25mM MES、10mM EDTA、2.4mM コエンザイムA、25mM T−NAD、120U/mlハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ、18%シュークロース、pH5.8)を加えてから、37℃12分間の波長405nmの吸光度変化[ABS]を測定した。測定は自動分析機7170S(日立製)で、表8に示すように上記の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料として用いて行った。また、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼはPseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)由来のハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものであり、メバロン酸キナーゼはSaccharomyces cerevisiae(NBRC1136)由来のメバロン酸キナーゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものである(特許文献1)。
(前処理工程を含まない酵素サイクリング反応)
第1測定試薬にメバロン酸キナーゼを含まないこと以外は上記の前処理工程を含む酵素サイクリング反応と全く同じ測定を行った。
(被検液中の正確なメバロン酸を計算する)
前処理工程を含む酵素サイクリング反応により測定されたメバロン酸量と前処理工程を含まない酵素サイクリング反応により測定されたメバロン酸量の差から被検液中のメバロン酸量を測定した(表9)。
プール血清およびプール血漿に添加されたメバロン酸量は測定値に精度よく反映されている。また、メバロン酸キナーゼにより消去された後に測定されるメバロン酸相当量、つまり、酵素サイクリング反応の基質にはなるがメバロン酸キナーゼの基質にはならない物質量は、プール血清ではメバロン酸を添加することに関係なく6.2〜6.6nMであり、プール血漿では同様に9.1〜9.2nMであり、本測定法ではこれらの影響が除かれて正確なメバロン酸測定ができていることを示すものである。つまり、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料とすることで精度よくメバロン酸が測定できていることがわかる。
比較のため同じ実験結果をもとに、特許文献1に記載されるように、前処理工程を含む酵素サイクリング反応により測定された吸光度と前処理工程を含まない酵素サイクリング反応により測定された吸光度の差から、メバロン酸溶液を校正試料として検量線を作成して被検液中のメバロン酸量を求めた(表10)。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料として用いたことで、メバロン酸溶液を校正試料として用いた場合に比して、より正確にメバロン酸濃度を測定することができることが分かった。
本発明によれば、メバロン酸を正確に測定することのできる方法を提供することができるので、病態診断等に産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法であって、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法。
  2. 以下の1)〜3)の工程を含む、請求項1記載の測定方法。
    1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
    2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
    3)1)と2)の測定値の差からメバロン酸量を求める工程
  3. 前処理がメバロン酸キナーゼにより行われる、請求項2記載の測定方法。
  4. ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法において、校正試料として用いるための、酸を含む、安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液。
  5. 酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、請求項4記載の溶液。
  6. pHが4以下である、請求項4または5記載の溶液。
  7. 3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度が0.1mM以下である、請求項4〜6のいずれか一項記載の溶液。
  8. 酸の濃度が0.1mMから100mMである、請求項4〜7のいずれか一項記載の溶液。
  9. 酸が硫酸であり、さらに界面活性剤を含む、請求項4〜8のいずれか一項記載の溶液。
  10. 校正試料が請求項4〜9のいずれか一項記載の溶液である、請求項1〜3のいずれか一項記載の測定方法。
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