JP2013158291A - 酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定方法およびその校正試料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法であって、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法。
【選択図】なし
Description
そこで、本発明が解決しようとする課題は、酵素サイクリング反応による被検液中のメバロン酸の測定方法において、メバロン酸をより正確に測定することのできる方法を提供することにある。
[1]
ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法であって、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法。
[2]
以下の1)〜3)の工程を含む、[1]記載の測定方法。
1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からメバロン酸量を求める工程
[3]
前処理がメバロン酸キナーゼにより行われる、[2]記載の測定方法。
[4]
酸を含む、安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液。
[5]
酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、[4]記載の溶液。
[6]
pHが4以下である、[4]または[5]記載の溶液。
[7]
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度が0.1mM以下である、[4]〜[6]のいずれか記載の溶液。
[8]
酸の濃度が0.1mMから100mMである、[4]〜[7]のいずれか記載の溶液。
[9]
酸が硫酸であり、さらに界面活性剤を含む、[4]〜[8]のいずれか記載の溶液。
[10]
校正試料が[4]〜[9]のいずれか記載の溶液である、[1]〜[3]のいずれか記載の測定方法。
[11]
酸を用いる、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイム溶液の安定化方法。
[12]
酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、[11]記載の安定化方法。
本実施の形態において、酸を含むことにより、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液において、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定性が向上したことが見出された。本実施の形態においては、かかる安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を、校正試料として用いることで、より正確に被検液中のメバロン酸量を測定することのできる方法を提供することができる。
したがって、酵素サイクリング反応でメバロン酸濃度を測定しようとする場合は既知濃度のメバロン酸を含む校正試料を用いて検量線を作成する必要がある。
i)校正試料と測定試料において、前処理によりメバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い吸光度を測定する工程
ii)校正試料と測定試料において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い吸光度を測定する工程
iii)校正試料においてi)とii)の吸光度差とメバロン酸濃度の関係から検量線を作成し、測定試料のi)とii)の吸光度差からメバロン酸濃度に変換する工程
具体的には、特許文献1の実施例26において、校正試料として、濃度既知(0nMおよび50nM)のメバロン酸溶液に対し、0nMの校正試料である場合の工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、50nMの校正試料である場合の工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、0nMと50nMにおけるそれぞれの吸光度差を利用して検量線を作成している。
そして、測定試料についても、工程i)と工程ii)における吸光度差を求め、吸光度差から被検液中のメバロン酸濃度を測定している。
ここで、吸光度差を用いて検量線を作成するのには、50nMにおける校正試料のメバロン酸溶液に対して、メバロン酸を消去すると、実質的に、50nMにおける吸光度の測定が0nMにおける吸光度の測定と同様の結果を与えることとなり、0nM−50nMの検量線を作成することができないことによる。
かかる方法は、工程ii)により測定される吸光度から、工程i)により測定される被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質による吸光度を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
しかしこの方法では、より正確にメバロン酸量を測定するという課題に対し、精度上の問題においてi)とii)の異なる工程においても、吸光度とメバロン酸濃度の関係は同じである、つまり同じ検量線を適用できるという前提に立っているが、その検証ができないことがある。また、検量線を作成できるのはi)とii)の吸光度差を計算したのちであり、一般的な自動分析機においてこのような複雑な検量方法による測定はできず、自動分析機で得られた測定データにさらに人による計算処理を加えることが必要となり、簡便性の点でも問題がある。
iv)校正試料と測定試料において、前処理によりメバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する工程
v)校正試料と測定試料において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する工程
vi)iv)とv)で測定されたメバロン酸量の差からメバロン酸濃度を測定する工程
ここで、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いた工程iv)における、「メバロン酸を消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質により、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
また、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いた工程v)における「メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の濃度と吸光度の関係から検量線を作成し、測定試料のメバロン酸濃度を検量線から測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸とメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質とにより、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
この方法は、校正試料としてメバロン酸以外の試料を用いていることにより、工程v)により測定される被検液中のメバロン酸量と、工程iv)により測定される被検液中のメバロン酸量とをそれぞれ測定することができ、そして、工程v)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程iv)により測定される被検液中のメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
特許文献1に記載された方法においては、工程i)と工程ii)の吸光度差に基づいてメバロン酸濃度を測定しているが、工程iv)及び工程v)それぞれにおけるメバロン酸濃度を測定した上でメバロン酸自体の量を測定することができるため、より正確な値として測定することができる。
反応式1:
反応式3:
反応式4:
食品の被検液としてはビール、ジュース、固形食品からの抽出液等が挙げられ、生体試料の被検液としては、血液、血漿、血清、血球などの細胞内液、尿、唾液、涙、組織抽出液が挙げられる。また、食品や生体試料に酸、塩基、金属イオン、糖類、アルコール類、アミノ酸類、タンパク質、界面活性剤、キレート剤、その他有機化合物などの添加物を適宜加えた溶液を被検液として被検液中のメバロン酸量が測定される。
酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する場合、得られる吸光度からメバロン酸濃度として測定する。この吸光度からメバロン酸濃度への変換は吸光度と濃度の関係を表す検量線を用いて行うが、この検量線を作成するために校正試料が必要となる。したがって、校正試料とは、本実施の形態においてはメバロン酸の量を決定するために用いる検量線を作成するための試料である。
本実施の形態において用いる校正試料は、測定対象物質であるメバロン酸の代わりに3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液であり、それを用いて酵素サイクリング反応を行うと得られる吸光度と同じ吸光度が得られる濃度のメバロン酸が含まれる校正試料の代用になるものである。よって、前処理によりメバロン酸を消去してから酵素サイクリング反応を行う場合においても、この3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む校正試料を用いるとメバロン酸を含んでなる校正試料ではできなかった検量線を作成することができる。
1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)で測定されたメバロン酸量の差からメバロン酸量を測定する工程
ここで、工程1)および工程2)において、検量線は、校正試料の濃度と吸光度の関係に基づいて測定されることが好ましい。
工程1)における、「メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質により、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
また、工程2)における「メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する」とは、被検液中に存在するメバロン酸とメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質とにより、酵素サイクリング反応が起きることで生じるシグナルを相当するメバロン酸量として表すことをいう。
この方法は、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程1)により測定される被検液中に存在するメバロン酸以外の酵素サイクリング反応の基質によるメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。すなわち、校正試料として3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを用いていることにより、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量と、工程1)により測定される被検液中のメバロン酸量とをそれぞれ測定することができ、そして、工程2)により測定される被検液中のメバロン酸量から、工程1)により測定される被検液中のメバロン酸量を控除することにより、被検液中のメバロン酸自体を測定することができる方法である。
本実施の形態のメバロン酸の測定方法により、より正確なメバロン酸量を測定することができる。なお、本実施の形態においては、工程3)のメバロン酸量を測定できるように、工程3)の前に工程1)と工程2)における被検液中のメバロン酸が測定されていればよいので、工程1)と工程2)の順番は限定されない。
また、前処理反応は酵素サイクリング反応中に生成するメバロン酸を消去してシグナルを減弱させるので、酵素サイクリング反応中には停止をしておく必要がある。
反応式5:
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液に酸を加えることで思いがけず安定化することを発見し、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料とすることを可能にした。したがって、本実施の形態においては、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化方法として、酸による安定化方法も提供される。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む校正試料は、使用時には溶液状態であるが、保存時は凍結乾燥状態、凍結状態であってもよい。
3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を酵素サイクリング反応によるメバロン酸測定の校正試料として用いる場合には、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度は、メバロン酸測定試薬におけるメバロン酸の測定範囲に合わせて設定されるが、酵素サイクリング反応による高感度な測定試薬の場合には0.1mM以下、0.01mM以下、0.001mM以下といった低濃度領域に設定される。低濃度であればあるほど、少しの量の変化でも変動率が大きくなるので、その安定性を維持することは大変重要なものになってくる。また、低濃度であればあるほど、容器、器具等への吸着による影響も大きくなるので、界面活性剤、ペプチド類、タンパク質、核酸類、アルコール類、有機溶媒等を加えて吸着の影響も最小化することが重要である。なお、ここで表記する0.1mMなどの3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の濃度はラセミ体としての濃度であるので、後述する実施例7であるように相当するR−メバロン酸の濃度としては表記した濃度の0.2−0.5倍程度になる。
そのような酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、酢酸からなる群から選ばれる酸が挙げられ、これらの酸を組み合わせて用いてもよい。
安定化させるために3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液に加える酸の濃度としてはpHを下げる効果があり、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAが分解または析出しない範囲であれば特に限定はされないが、酵素サイクリング反応の校正試料として用いる場合には酵素サイクリング反応に影響を及ぼさない程度として、好ましくは0.1mMから500mM、より好ましくは1mMから100mM、さらに好ましくは1mMから20mMである。
安定化させるために3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液に加える界面活性剤の濃度としては特に限定はされないが、酵素サイクリング反応の校正試料として用いる場合には酵素サイクリング反応に影響を及ぼさない程度として、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下である。
1)被検液中のメバロン酸を前処理により消去したのち、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)被検液中のメバロン酸を消去せずに被検液として、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として用いて酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からより正確なメバロン酸量を求める工程
によりメバロン酸量をより正確に測定することができるが、前処理が酵素法である、特にメバロン酸キナーゼである場合は、メバロン酸の測定精度がとても高くなりより有用である。工程2)においては、被検液中のメバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応が行われるが、メバロン酸の前処理による消去を行っていないということを意味している。
ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼは、反応式4として前述のように多段階反応を触媒するので基質となる物質が多く、メバロン酸、メバルデハイド、メバジルコエンザイムA、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAもが基質となるが、メバロン酸キナーゼによる特異性によって、工程1)においてメバロン酸が前処理により除去されて検出対象が限定されるため、工程2)における測定結果から工程1)における測定値の差分を取ることにより、理論上メバロン酸のみを正確に測定することができるからである。さらにまた、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼにメバロン酸に関係なくT−NADHを生成する酵素活性が内在またはハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼとは別に混在する場合でも、メバロン酸キナーゼによる特異性によって検出対象が限定されるため、メバロン酸のみを正確に測定できるようになる。
1)被検液中のメバロン酸をメバロン酸キナーゼにより消去したのち、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング法で被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)被検液中のメバロン酸を消去せずに被検液としてハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング法で3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液を校正試料として被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からより正確なメバロン酸量を求める工程
を含む測定法とすることができ、工程1)および工程2)の異なる工程において同一の校正試料を使って、それぞれの工程における検量線を作成することが可能になり、本実施の形態のメバロン酸の測定方法の精度が向上する。
<酢酸、クエン酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
DL−3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAナトリウム塩(シグマ:H6132)を精製水で溶解し0.01mMの3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を作製した。次に0.01mMの溶液0.05mLに0.95mLの希釈液を加えて0.0005mMの溶液を作製した。希釈液として、精製水(pH7.6)、2mM酢酸(pH4.0)、10mM酢酸(pH3.5)、100mM酢酸(pH3.0)、10mMクエン酸−クエン酸ナトリウム(pH4.0)、10mM MES(pH5.0)の6種類を用いた。それぞれの希釈液で希釈した6種類の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を希釈した当日と、37℃で2日保存後に以下の測定法で測定した。保存後の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量を保存前の量で除すことにより、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を求めた(表1)。
3μLのサンプル溶液に、37℃で90μLの第1測定試薬(0.46mM NADH、30mM炭酸水素ナトリウム、50mM Glycine、0.4mM塩化マグネシウム、0.4mM ATP、0.05%アジ化ナトリウム、0.072%Tween80、pH9.9)を加え、9分後に30μLの第2測定試薬(0.02%プロクリン300、110mM HEPES、25mM MES、10mM EDTA、2.4mMコエンザイムA、25mM T−NAD、23U/mLハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ、pH6.0)を加えてから、37℃12分間の波長410nmの吸光度変化[mABS]を測定した。
校正試料は100nMのRS−メバロン酸を用いて、測定は自動分析機BM9020(日本電子製)を用いて行った。また、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼは、特許文献1に記載されるように、Pseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)由来のハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものである。なお、Pseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)は土壌から分離され、Pseudomonas migulaeに近縁なPseudomonas sp.と同定され、平成20年11月13日に日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、受託番号FERM BP−11063が付与されている。
<塩酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表2記載の6種類の希釈液を用い、37℃で4日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表2)。
<硫酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表3および表4記載のそれぞれ6種類の希釈液を用い、37℃で3日保存後および10℃で8日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表3および表4)。0.1mM塩酸で約pH4であり、0.1mM硫酸で約pH3.7である。
<硫酸、塩酸、酢酸添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化>
実施例1と同様に表5記載の14種類の希釈液を用い、37℃で2日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表5)。
<硫酸およびTween80添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化(1)>
実施例1と同様に表6記載の7種類の希釈液を用い、37℃で2日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表6)。
<硫酸およびTween80添加による3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液の安定化(2)>
実施例1と同様に表7記載の13種類の希釈液を用い、37℃で5日保存後に、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA量の残存率を測定した(表7)。
<3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料として酵素サイクリング反応によるメバロン酸の測定>
被検液として51.6nMのメバロン酸水溶液、プール血清、50.8nMのメバロン酸を添加したプール血清、プール血漿、47.8nMのメバロン酸を添加したプール血漿を作製した。なお、ここでのメバロン酸濃度はR−メバロン酸濃度として表記してある。また、プール血清、プール血漿はコージンバイオからの購入品である。
DL−3−ヒドロキシー3−メチルグルタリルコエンザイムナトリウム塩(シグマ:H6132)を精製水で溶解後、10mM硫酸、0.1%Tween80で希釈して500nMの溶液を作製した。表8に示すように、この溶液を以下の前処理工程を含まない酵素サイクリング反応において、50nMのR−メバロン酸を含むメバロン酸溶液を校正試料として測定するとR−メバロン酸量として193.2nM相当することから、193.2nMの校正試料とした。
5μLの被検液に、37℃で150μLの第1測定試薬(0.7mM NADH、30mM炭酸水素ナトリウム、50mM Glycine、0.4mM塩化マグネシウム、0.4mM ATP、0.05%アジ化ナトリウム、0.072%Tween80、0.16U/mlメバロン酸キナーゼ、18%シュークロース、pH10.0)を加え、10分後に50μLの第2測定試薬(0.02%プロクリン300、110mM HEPES、25mM MES、10mM EDTA、2.4mM コエンザイムA、25mM T−NAD、120U/mlハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ、18%シュークロース、pH5.8)を加えてから、37℃12分間の波長405nmの吸光度変化[ABS]を測定した。測定は自動分析機7170S(日立製)で、表8に示すように上記の3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液を校正試料として用いて行った。また、ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼはPseudomonas sp.1−MV (FERM BP−11063)由来のハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものであり、メバロン酸キナーゼはSaccharomyces cerevisiae(NBRC1136)由来のメバロン酸キナーゼを遺伝子組み換えE.coliで発現、製造したものである(特許文献1)。
第1測定試薬にメバロン酸キナーゼを含まないこと以外は上記の前処理工程を含む酵素サイクリング反応と全く同じ測定を行った。
前処理工程を含む酵素サイクリング反応により測定されたメバロン酸量と前処理工程を含まない酵素サイクリング反応により測定されたメバロン酸量の差から被検液中のメバロン酸量を測定した(表9)。
Claims (12)
- ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼを用いた酵素サイクリング反応を行い、被検液中のメバロン酸を測定する方法であって、校正試料が3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを含む溶液である、測定方法。
- 以下の1)〜3)の工程を含む、請求項1記載の測定方法。
1)校正試料と被検液において、メバロン酸を前処理により消去したのち酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
2)校正試料と被検液において、メバロン酸を消去せずに酵素サイクリング反応を行い、校正試料の検量線を作成し、被検液中のメバロン酸を測定する工程
3)1)と2)の測定値の差からメバロン酸量を求める工程 - 前処理がメバロン酸キナーゼにより行われる、請求項2記載の測定方法。
- 酸を含む、安定性が向上した3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムA溶液。
- 酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、請求項4記載の溶液。
- pHが4以下である、請求項4または5記載の溶液。
- 3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイムAの濃度が0.1mM以下である、請求項4〜6のいずれか一項記載の溶液。
- 酸の濃度が0.1mMから100mMである、請求項4〜7のいずれか一項記載の溶液。
- 酸が硫酸であり、さらに界面活性剤を含む、請求項4〜8のいずれか一項記載の溶液。
- 校正試料が請求項4〜9のいずれか一項記載の溶液である、請求項1〜3のいずれか一項記載の測定方法。
- 酸を用いる、3−ハイドロキシメチルグルタリルコエンザイム溶液の安定化方法。
- 酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、および酢酸からなる群から選ばれるもの、またはその組み合わせである、請求項11記載の安定化方法。
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