ところで、近年、ハイブリッド自動車等の駆動用電源として、リチウムイオン二次電池を用いることがある。具体的には、複数のリチウムイオン二次電池を収容ケース内に収容して、ハイブリッド自動車等の車両に搭載する。収容ケースとしては、例えば、複数のリチウムイオン二次電池を冷却する冷却媒体(気体)を収容ケースの内部に導入する冷却媒体導入口、及び、上記冷却媒体を収容ケースの外部に排出する冷却媒体排出口を有し、冷却媒体が流れる冷却媒体流路を構成するものが用いられる。
そして、リチウムイオン二次電池の温度上昇を抑制するために、送風機等を用いて、冷却媒体を、収容ケースの冷却媒体導入口から収容ケース内に導入させ、収容ケース内の冷却媒体流路を通して、冷却媒体排出口から外部に排出させるようにする。この過程で、リチウムイオン二次電池に冷却媒体を接触させることで、リチウムイオン二次電池を冷却させることができる。
ところで、リチウムイオン二次電池に異常が発生し、電池内圧が上昇して開弁圧(安全弁が開弁する電池内圧)に達すると、リチウムイオン二次電池に設けられている安全弁が開弁する。このとき、リチウムイオン二次電池の内部から、直径5μm以下の微粒子(例えば、カーボン微粒子やマンガン微粒子など)を含む粉塵が、外部(冷却媒体流路)に排出されることがあった。直径が5μmより大きい微粒子は、これを人間が吸入した場合、そのほとんどが、鼻、咽頭、気管、気管支で捕捉排泄されるが、直径が5μm以下の微粒子は、空気中に浮遊し、これを吸入した場合、肺に停留しやすいといわれている。このため、直径が5μm以下の微粒子を含む粉塵を、車室内や車外に飛散させることなく、冷却媒体流路内で捕捉することが求められていた。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、リチウムイオン二次電池の内部から排出された粉塵(直径5μm以下の微粒子を含む粉塵)を冷却媒体流路内で捕捉することができる電池システムを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、1又は複数のリチウムイオン二次電池と、上記1又は複数のリチウムイオン二次電池を収容する収容ケースであって、上記1又は複数のリチウムイオン二次電池を冷却する気体からなる冷却媒体を自身の内部に導入する冷却媒体導入口、及び、上記冷却媒体を自身の外部に排出する冷却媒体排出口を有し、上記冷却媒体が流れる冷却媒体流路を構成する収容ケースと、上記1又は複数のリチウムイオン二次電池の異常を検出する異常検出手段と、上記冷却媒体流路内に液体を噴霧する液体噴霧装置と、上記液体噴霧装置を制御する制御手段と、を備え、上記制御手段は、上記異常検出手段において上記1又は複数のリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、上記液体噴霧装置によって上記冷却媒体流路内に上記液体を噴霧させる電池システムであって、上記電池システムは、自動車の電源として当該自動車に搭載された電池システムであり、上記リチウムイオン二次電池は、安全弁を有し、上記冷却媒体排出口は、連結流路を介して上記自動車の室内に連結されており、上記液体噴霧装置は、上記冷却媒体排出口に設けられたノズルを有し、上記液体噴霧装置から噴霧された液体全体のうち、5〜100μmの範囲内の粒径を有する液滴が占める割合を、50%以上とする電池システムである。
上述の電池システムは、1又は複数のリチウムイオン二次電池(以下、単に、電池ともいう)の異常を検出する異常検出手段と、冷却媒体流路内に液体を噴霧する液体噴霧装置と、液体噴霧装置を制御する制御手段とを備える。そして、制御手段は、異常検出手段においてリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、液体噴霧装置によって冷却媒体流路内に液体を噴霧させる制御を行う。
このため、リチウムイオン二次電池の異常により、電池内圧が上昇して開弁圧に達し、リチウムイオン二次電池に設けられている安全弁が開弁して、リチウムイオン二次電池の内部から、直径5μm以下の微粒子(例えば、カーボン微粒子やマンガン微粒子など)を含む粉塵が、外部(冷却媒体流路)に排出された場合でも、液体噴霧装置によって冷却媒体流路内に噴霧した液体(霧状の液体)により、粉塵を冷却媒体流路内で捕捉することができる。
なお、異常検出手段において検出されるリチウムイオン二次電池の異常としては、例えば、当該電池に設けられている安全弁が開弁した異常、安全弁が開弁したと間接的に判断できる(推定できる)異常、安全弁の開弁に繋がる(電池内圧が上昇して開弁圧にまで達する危険性がある)異常が挙げられる。安全弁が開弁したと間接的に判断できる異常としては、例えば、過充電等により、電池温度や電池電圧が、電池内圧が開弁圧に達するときの値にまで上昇した異常が挙げられる。また、安全弁の開弁に繋がる異常としては、例えば、電池温度の異常な上昇、電池電圧値の異常な上昇または低下(過充電または過放電)などが挙げられる。また、リチウムイオン二次電池への衝撃を検知する手段を設け、リチウムイオン二次電池が破損しうる所定値以上の衝撃を検知したとき、リチウムイオン二次電池の異常(破損による異常)として検出するようにしても良い。
また、噴霧した液体の粒径は、5〜100μm(より好ましくは、10〜50μm)の範囲内が好ましい。粒径が5μm未満の場合は、粉塵を構成する微粒子(粒径が5μm以下)に対して小さいため、粉塵が吸着(捕捉)し難くなる傾向にある。
また、粒径が小さい液体のみでは、冷却媒体流路を構成する壁面(収容ケースの内壁面等)に当たってもはじかれ易く、冷却媒体流路を構成する壁面(収容ケースの内壁面等)を濡らし難くなる傾向にある。特に、粒径が5μm未満の液体のみでは、冷却媒体流路を構成する壁面(収容ケースの内壁面等)を濡らし難くなる傾向にある。このため、粒径が小さい(特に5μm未満)液体では、「冷却媒体流路を構成する壁面を濡らし、この濡れた壁面に粉塵を効果的に付着(吸着)させて捕捉すること」が難しくなる傾向にある。
従って、噴霧した液体の粒径は、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。
一方、噴霧した液体の粒径が大き過ぎると、沈降速度が大きくなり過ぎるため、冷却媒体流路内において空中を漂う時間が短くなり過ぎて、粉塵が吸着し難くなる傾向にある。特に、粒径が100μmより大きくなると、冷却媒体流路内において空中を漂う時間が極めて短くなり、粉塵を効果的に吸着(捕捉)することが難しくなる傾向にある。従って、噴霧した液体の粒径は、100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下である。
従って、上述の電池システムのように、前記液体噴霧装置から噴霧された液体全体のうち、5〜100μmの範囲内の直径を有する液体(霧状になった液滴)が占める割合が50%以上である(5〜100μmの範囲内の粒径の相対度数が0.5以上である)電池システムが好ましい。
さらに、上記の電池システムであって、前記液体噴霧装置から噴霧された液体全体のうち、10〜50μmの範囲内の直径を有する液体が占める割合が30%以上である(10〜50μmの範囲内の粒径の相対度数が0.3以上である)電池システムが好ましい。
さらに、上記の電池システムであって、前記冷却媒体の流速を制御する流速制御手段を備え、上記流速制御手段は、前記異常検出手段において前記1又は複数のリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、前記冷却媒体流路内における前記冷却媒体の流速を低減させる制御を行う電池システムとすると良い。
上述の電池システムでは、異常検出手段においてリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、流速制御手段が、冷却媒体流路内における冷却媒体の流速を低減させる制御を行う。具体的には、例えば、送風機(ブロワー)を用いて冷却媒体流路内に冷却媒体を流している場合は、送風機のファンの回転速度を低減(または回転を停止)させる制御を行う。
上述のように制御することにより、冷却媒体流路内における冷却媒体の流速が低減するので、リチウムイオン二次電池の異常により安全弁が開弁して、リチウムイオン二次電池の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が排出された場合には、この粉塵が冷却媒体流路を下流側に流れてゆき難くなる(冷却媒体流路外へ排出され難くなる)。これにより、液体噴霧装置によって冷却媒体流路内に噴霧した液体(霧状の液体)により、粉塵を冷却媒体流路内で捕捉しやすくなる。
さらに、上記の電池システムであって、前記流速制御手段は、前記異常検出手段において前記1又は複数のリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、前記冷却媒体流路内における前記冷却媒体の流れを実質的に停止させる制御を行う電池システムとすると良い。
上述の電池システムでは、異常検出手段においてリチウムイオン二次電池の異常が検出されたとき、流速制御手段は、冷却媒体流路内における冷却媒体の流れを実質的に停止させる制御を行う。ここで、「冷却媒体流路内における冷却媒体の流れを実質的に停止させる」とは、完全に停止させる場合の他、極僅かに冷却媒体の流れがあるが停止しているにほぼ等しい状態をも含むものである。具体的には、例えば、送風機(ブロワー)を用いて冷却媒体流路内に冷却媒体を流している場合は、送風機のファンの回転を完全に停止させる制御を行う場合が挙げられる。また、送風機のファンの回転を極低速にする制御するようにしても良い。また、送風機のファンについて、正回転と逆回転とを低速で交互に行うように制御しても良い。
上述のように制御することにより、冷却媒体流路内における冷却媒体の流れが実質的に停止するので、リチウムイオン二次電池の異常により安全弁が開弁して、リチウムイオン二次電池の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が排出された場合には、この粉塵が冷却媒体流路内を下流側に流れてゆくのを抑制することができる(冷却媒体流路外へ排出されるのを抑制できる)。これにより、液体噴霧装置によって冷却媒体流路内に噴霧した液体(霧状の液体)により、粉塵を冷却媒体流路内で捕捉しやすくなる。
さらに、上記いずれか一項に記載の電池システムであって、前記収容ケースの底部は、前記液体噴霧装置によって噴霧された後に当該底部の内面上に落ちた前記液体を、前記冷却媒体流路の外部に排出する液体排出口を有し、上記底部の内面は、前記液体排出口に向かって下方に傾斜する傾斜面を有する電池システムとすると良い。
上述の電池システムでは、収容ケースの底部が、液体噴霧装置によって噴霧された後に当該底部の内面上に落ちた液体を、冷却媒体流路(収容ケース)の外部に排出する液体排出口を有している。これにより、液体噴霧装置によって噴霧された後に収容ケースの底部内面上に落ちた液体を、適切に、冷却媒体流路(収容ケース)の外部に排出することができる。なお、液体排出口を通じて冷却媒体流路の外部に排出した液体は、回収専用の容器内に回収して保存するようにしても良いし、液体噴霧装置(その液体容器)に戻して再利用するようにしても良い。
さらに、上述の電池システムでは、収容ケースの底部の内面が、液体排出口に向かって下方(鉛直方向下方)に傾斜する傾斜面を有している。これにより、液体噴霧装置によって噴霧された後に収容ケースの底部の内面上に落ちた液体が、傾斜面の傾斜に沿って、液体排出口に向かって流れてゆくようになる。従って、収容ケースの底部の内面上に落ちた液体を、スムーズに、液体排出口から冷却媒体流路(収容ケース)の外部に排出することができる。
さらに、上記の電池システムであって、前記電池システムは、自動車の電源として当該自動車に搭載された電池システムであり、前記収容ケースは、上記自動車の室外に配置されてなり、前記冷却媒体導入口及び前記冷却媒体排出口は、連結流路を介して、上記自動車の室内に連結されてなり、前記液体排出口は、上記自動車の室外に位置する連結管を介して、上記自動車の室外に配置された容器に連結されてなる電池システムとすると良い。
上述の電池システムは、自動車の電源として当該自動車に搭載されている。この電池システムでは、収容ケースは自動車の室外に配置されているが、冷却媒体導入口及び冷却媒体排出口は、連結流路を介して自動車の室内に連結されている。すなわち、リチウムイオン二次電池を冷却する冷却媒体として、自動車の室内の空気を用いており、この冷却媒体を循環させている。従来、このような構造の場合、電池の安全弁が開弁して電池内部から粉塵が排出された場合、自動車の室内に戻ってゆく冷却媒体によって粉塵が自動車の室内に運ばれる虞があった。しかしながら、上述の電池システムでは、前述のように、液体噴霧装置により噴霧した液体により、粉塵を冷却媒体流路内で捕捉するので、粉塵が自動車の室内に運ばれるのを防止できる。
ところで、収容ケースの底部の内面上に落ちた液体には、電池内部から排出された粉塵(直径5μm以下の微粒子を含む粉塵)が含まれるので、この液体が自動車の室内に進入しないようにするのが好ましい。これに対し、上述の電池システムでは、液体排出口が、自動車の室外に位置する連結管を介して、自動車の室外に配置された容器に連結されている。すなわち、液体排出口から排出される液体の流路を全て自動車の室外に配置している。これにより、液体排出口から排出される液体が自動車の室内に進入しないようにできる。なお、「自動車の室外に配置された容器」は、回収専用の容器でも良いし、液体噴霧装置の液体容器であっても良い。
(実施形態)
次に、本発明の実施形態にかかる電池システム80について、図面を参照しつつ説明する。電池システム80は、図1に示すように、複数のリチウムイオン二次電池100(以下、電池100ともいう)と、これら(電池100)を収容する収容ケース40とを備えている。なお、電池システム80は、図示しない自動車の電源として当該自動車に搭載されている。電池100を収容した収容ケース40は、自動車の室外(床下)に配置されている。
収容ケース40は、上側収容部材20、下側収容部材30、上流側ダクト45、及び、下流側ダクト46を有している。上流側ダクト45は、収容ケース40内の電池100を冷却する気体からなる冷却媒体(以下、冷却ガスと称す)を収容ケース40の内部に導入するガス導入口(特許請求の範囲に記載の「冷却媒体導入口」に相当する)を構成している。また、下流側ダクト46は、冷却ガスを収容ケース40の外部に排出するガス排出口(特許請求の範囲に記載の「冷却媒体排出口」に相当する)を構成している。この収容ケース(上側収容部材20、下側収容部材30、上流側ダクト45、下流側ダクト46)は、冷却ガスが流れる冷却ガス流路Fを構成している。なお、本実施形態では、冷却ガスとして、自動車室内の空気Gを用いている。
電池100は、列置方向(図1において左右方向)に一列に配置されている。なお、それぞれの電池100は、その両端部底面(図2及び図3において左右端部下面)が、下側収容部材30の鍔部34,34(図4参照)の上に載置される態様で、収容ケース40内に配置されている。これらの電池100は、電気的に直列に接続されている。隣り合う電池100の間には、それぞれ、図示しない介在部材が配置されており、電池100と介在部材との間にも、空気G(冷却ガス)が流通可能(図1において上下方向に流通可能)な冷却ガス流路F(特許請求の範囲に記載の「冷却媒体流路」に相当する)が形成されている。
電池100は、図2及び図3に示すように、矩形箱状の電池ケース本体111と、電池ケース本体111の内部に収容された電極体150とを備えるリチウムイオン二次電池である。さらに、電池100は、電池ケース本体111の開口を閉塞する板状の電池ケース蓋113を備えている。電池ケース本体111と電池ケース蓋113とは、溶接により一体とされ、電池ケース110を構成している。
電池ケース蓋113の長手方向の中央部には、安全弁113jが設けられている。この安全弁113jは、電池ケース蓋113と一体的に形成されて、電池ケース蓋113の一部をなしている。安全弁113jは、電池ケース蓋113の他の部分よりも薄く形成されると共に、その上面には溝部113jvが形成されている。これにより、安全弁113jは、電池100(電池ケース110)の内圧(電池ケース100内の気体により生じる圧力)が所定の開弁圧に達した際に作動(開弁)する。即ち、安全弁113jは、電池100の内圧が開弁圧に達したときに、溝部113jvが破断することで開弁して、電池ケース110の内部のガスを外部に放出する。
電極体150は、帯状の正極板155、負極板156、及びセパレータ157を扁平形状に捲回した扁平型の捲回電極体である。
正極板155は、アルミニウム箔からなる正極基材と、この正極基材の表面の一部に配置された正極合材層とを有している。正極合材層は、正極活物質等を含んでいる。正極基材のうち、正極合材層が塗工されていない部位を、正極合材層未塗工部151bという(図3参照)。なお、本実施形態では、正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を用いている。
負極板156は、銅箔からなる負極基材と、この負極基材の表面の一部に配置された負極合材層とを有している。負極合材層は、負極活物質等を含んでいる。負極基材のうち、負極合材層が塗工されていない部位を、負極合材層未塗工部158bという。なお、本実施形態では、負極活物質として、カーボン(黒鉛)を用いている。
さらに、電池100は、電池ケース本体111の内部で電極体150に接続すると共に、電池ケース蓋113を貫通して外部に延出する電極端子部材(正極端子部材130及び負極端子部材140)を備えている。詳細には、正極端子部材130の電極体接続部134が、電極体150の正極合材層未塗工部151bに溶接されている。また、負極端子部材140の電極体接続部144が、電極体150の負極合材層未塗工部158bに溶接されている。
さらに、本実施形態の電池システム80は、図1に示すように、収容ケース40の上流側ダクト45に設けらた送風機(ブロワー)63と、この送風機63を制御する流速制御装置61を備えている。また、ガス導入口45は、送風機63及び図示しない連結管を介して、自動車室内に連結されている。また、ガス排出口46は、図示しない連結管を介して自動車室内に連結されている。すなわち、本実施形態の電池システム80では、電池100を冷却する冷却ガスとして、自動車室内の空気Gを用いており、この冷却ガスを循環させるようにしている。
具体的には、流速制御装置61の制御によって、送風機63の内部に設けられているファンを駆動(回転)させることにより、自動車室内の空気Gを、上流側ダクト45を通じて、収容ケース40の内部に供給する。収容ケース40の内部に供給された空気Gは、図1に矢印で示すように、電池100の上方から下方に向かって、電池100の間を通過してゆき、その後、下流側ダクト46を通じて、収容ケース40の外部に排出される。この間において、冷却ガスである空気Gが電池100に接触することで、電池100を冷却することができる。
さらに、本実施形態の電池システム80は、コントロールユニット50と、これに接続された抵抗測定装置71とを備えている(図1参照)。さらに、本実施形態の電池システム80では、各々の電池100の表面に、PTC素子73が接合されている。このPTC素子73は、温度変化に伴って自身の電気抵抗が変化する温度センサであり、電池100の温度が異常に上昇したとき、PTC素子73の電気抵抗が急激に増大する。各々の電池100に設けられているPTC素子73は、図示しない接続線によって電気的に直列に接続されて、抵抗測定装置71に接続されている。
電池システム80に含まれる電池100のいずれかにおいて異常昇温したときには、当該電池100のPTC素子73の抵抗値が飛躍的に上昇する。このとき、抵抗測定装置71において、PTC素子73の抵抗値の異常な上昇が検出され、これによって、いずれかの電池100において異常(異常昇温)が発生したことが検出される。次いで、異常検出信号が、抵抗測定装置71からコントロールユニット50に送信される。抵抗測定装置71からの異常検出信号を受信したコントロールユニット50は、電池システム80に含まれる電池100のいずれかにおいて異常昇温が発生したと判断する。
さらに、本実施形態の電池システム80は、液体噴霧装置10を備えている。この液体噴霧装置10は、液体容器11、噴射装置13、及び、ノズル15を有している。液体容器10内には、液体(本実施形態では、水)が収容されている。噴射装置13は、液体容器10内の液体を高圧でノズル15に供給して、ノズル15から液体を噴霧(霧状に噴射)させるための装置である。噴射装置13としては、例えば、公知のポンプやアキュームレータなどを用いることができる。ノズル15は、収容ケース40の上流側ダクト45及び下流側ダクト46に設けられており、供給された液体(水)を霧状に噴射するものである。これにより、液体噴霧装置10によって、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に、液体(水)を噴霧することができる。その結果、本実施形態では、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に霧状の液体(ミスト)を発生させることができる。
この液体噴霧装置10は、コントロールユニット50によって制御される。コントロールユニット50は、前述のように、電池システム80に含まれる電池100のいずれかにおいて異常昇温が発生したと判断すると、噴射装置13を作動させる。これにより、液体容器10内の液体がノズル15から噴霧され、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に液体を噴霧することができる。
なお、本実施形態では、抵抗測定装置71が、特許請求の範囲に記載の「異常検出手段」に相当する。また、コントロールユニット50が、特許請求の範囲に記載の「制御手段」に相当する。
ところで、電池100の温度が異常昇温するときは、電池100の内圧が上昇して開弁圧に達する危険性がある(可能性が高い)。電池100の安全弁113jが開弁すると、電池100の内部から、ガスと共に、直径5μm以下の微粒子(カーボン微粒子など)を含む粉塵が、電池外部(冷却ガス流路F内)に排出される虞がある。本実施形態の電池システム80では、前述のように、電池100を冷却する冷却ガスとして自動車室内の空気Gを用いており、この冷却ガスを循環させている。従来、このような構造の場合、電池の安全弁が開弁して電池内部から粉塵が排出された場合、自動車の室内に戻ってゆく冷却ガスによって粉塵が自動車の室内に運ばれる虞があった。
これに対し、本実施形態の電池システム80では、上述のように、液体噴霧装置10によって、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に液体を噴霧して、霧状の液体(ミスト)を発生させている。これにより、異常昇温した電池100の安全弁113jが開弁して、電池100の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が電池外部(冷却ガス流路F内)に排出された場合でも、冷却ガス流路F内に噴霧した液体(ミスト)により、その粉塵を冷却ガス流路F内で捕捉することができる。これにより、電池100内から排出された粉塵が、自動車室内や自動車の外部に飛散しないようにできる。
また、以下の理由により、液体を噴霧することにより収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に発生させる霧状の液体(ミスト)の粒径は、5〜100μmの範囲内(より好ましくは、10〜50μmの範囲内)が好ましい。
粒径が5μm未満の液体(ミスト)は、粉塵を構成する微粒子(粒径が5μm以下)に対して小さいため、粉塵が吸着(捕捉)し難くなる傾向にある。また、粒径が小さい液体(ミスト)は、冷却ガス流路Fを構成する壁面(収容ケース40の内壁面40b等)に当たってもはじかれ易く、冷却ガス流路Fを構成する壁面(収容ケース40の内壁面40b等)を濡らし難くなる傾向にある。特に、粒径が5μm未満の液体(ミスト)では、冷却ガス流路Fを構成する壁面を濡らし難くなる。このため、粒径が小さい(特に5μm未満)の液体(ミスト)では、冷却ガス流路Fを構成する壁面を濡らし、この濡れた壁面に粉塵を効果的に付着(吸着)させて捕捉することが難しくなる傾向にある。
従って、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に発生させる霧状の液体(ミスト)の粒径は、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。
一方、液体(ミスト)の粒径が大き過ぎると、沈降速度が大きくなり過ぎるため、冷却ガス流路F内において空中を漂う時間が短くなり過ぎて、粉塵が吸着し難くなる傾向にある。特に、粒径が100μmより大きくなると、冷却ガス流路F内において空中を漂う時間が極めて短くなり、粉塵を効果的に吸着(捕捉)することが難しくなる傾向にある。従って、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に発生させる霧状の液体(ミスト)の粒径は、100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下である。
これに対し、本実施形態の電池システム80では、液体噴霧装置10により液体を噴霧することで、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に、5〜100μmの範囲内の粒径を有する水滴を含む霧状の液体(ミスト)を発生させる。さらには、10〜50μmの範囲内の粒径を有する水滴を含む霧状の液体(ミスト)を発生させる。具体的には、液体噴霧装置10により液体を噴霧することで、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に、5〜100μmの範囲内の粒径を有する液滴(水滴)が全体に占める割合が50%以上である(5〜100μmの範囲内の粒径の相対度数が0.5以上である)霧状の液体(ミスト)を発生させることができる。詳細には、液体噴霧装置10により液体を噴霧することで、10〜50μmの範囲内の粒径を有する液滴(水滴)が全体に占める割合が30%以上である(10〜50μmの範囲内の粒径の相対度数が0.3以上である)霧状の液体(ミスト)を発生させることができる。
これにより、本実施形態の電池システム80では、異常昇温した電池100の安全弁113jが開弁して、電池100の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が電池外部(冷却ガス流路F内)に排出された場合において、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に噴霧した液体(ミスト)により、その粉塵を冷却ガス流路F内で適切に(効果的に)捕捉することができる。
具体的には、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に噴霧した液体(特に5〜100μmの範囲内の粒径の水滴)に、冷却ガス流路F内において空中を漂う粉塵を確実に吸着させることができる。さらには、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に噴霧した液体(特に、5〜100μmの範囲内の粒径の水滴)により、冷却ガス流路Fを構成する壁面を適切に濡らすことができる。具体的には、上側収容部材20の内壁面20b、下側収容部材30の内壁面30b、上流側ダクト45の内壁面45b、及び、下流側ダクト46の内壁面46bを、噴霧した液体(ミスト)により濡らすことができる。その結果、噴霧した液体(ミスト)で濡れた壁面に粉塵を効果的に付着(吸着)させて捕捉することができる。これにより、電池100内から排出された粉塵が、自動車室内や自動車の外部に飛散しないようにできる。
図6は、液体噴霧装置10によって液体を噴霧することにより、冷却ガス流路F内に発生させた霧状の液体(ミスト)の粒径分布図である。なお、この粒径分布のデータは、レーザー法(フランホーファー回折法)によって、冷却ガス流路F内に発生させた霧状の液体(ミスト)の粒径分析を行って得たものである。図6に示す粒径分布から、液体噴霧装置10によって、冷却ガス流路F内に、5〜100μmの範囲内(さらには、10〜50μmの範囲内)の粒径を有する水滴を含む霧状の液体(ミスト)を発生させることができることがわかる。
より具体的には、図6から、液体噴霧装置10から噴霧された液体(ミスト)全体のうち、5〜100μmの範囲内の直径を有する液体(霧状になった液滴)が占める割合が50%以上である(5〜100μmの範囲内の粒径の相対度数が0.5以上である)ことがわかる。詳細には、10〜50μmの範囲内の粒径を有する液体(霧状になった液滴)が全体に占める割合が30%以上である(10〜50μmの範囲内の粒径の相対度数が0.3以上である)ことがわかる。このように、5〜100μmの範囲内の粒径を有する液体(霧状になった液滴)が占める割合を高くすることで、効果的に、直径5μm以下の微粒子を含む粉塵を補足することができる。
また、本実施形態の電池システム80では、抵抗測定装置71において電池100の異常が検出されたとき、コントロールユニット50は、電池100の異常昇温が発生したと判断すると共に、流速制御装置61に対し、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れを実質的に停止させる旨の停止信号を送信する。この停止信号を受信した流速制御装置61は、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れを実質的に停止させる制御を行う。より具体的には、送風機63の内部に設けられているファンの回転を停止させる制御を行って、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れを実質的に停止させる。
これにより、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れが実質的に停止するので、電池100の安全弁113jが開弁して、電池100の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が排出された場合において、この粉塵が冷却ガス流路Fを下流側に流れてゆくのを抑制できる(冷却ガス流路F外へ排出されるのを抑制できる)。従って、電池100の内部から排出された粉塵を、収容ケース40内に止めておくことができる。これにより、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内(収容ケース40内)に噴霧した液体(ミスト)により、その粉塵を冷却ガス流路F内(収容ケース40内)で適切に捕捉することができる。なお、本実施形態では、流速制御装置61が、特許請求の範囲に記載の「流速制御手段」に相当する。
また、本実施形態の電池システム80では、下側収容部材30の底部31(収容ケース40の底部に相当する)が、液体排出口33を有している(図1、図4、図5参照)。これにより、液体噴霧装置10によって噴霧された後に下側収容部材30の底部31の内面32上に落ちた液体(液滴)を、液体排出口33を通じて、冷却ガス流路F(収容ケース40)の外部に排出することができる。なお、液体排出口33は、自動車室外に位置する連結管38を介して、自動車室外に配置された図示しない回収容器に連結されている。
これにより、液体噴霧装置10によって噴霧された後に下側収容部材30の底部31の内面32上に落ちた液体(液滴)を、適切に、冷却ガス流路F(収容ケース40)の外部に排出して、図示しない回収容器内に回収することができる。
しかも、図4及び図5に示すように、下側収容部材30の底部31の内面32は、液体排出口33に向かって下方(鉛直方向下方)に傾斜する傾斜面32b、32c、32d、32eを有している。これにより、液体噴霧装置10によって噴霧された後に下側収容部材30の底部31の内面32上に落ちた液体(液滴)が、傾斜面32b、32c、32d、32eの傾斜に沿って、液体排出口33に向かって流れてゆくようになる。従って、下側収容部材30の底部31の内面32上に落ちた液体を、スムーズに、液体排出口33から冷却ガス流路F(収容ケース40)の外部に排出することができる。
さらに、図1に示すように、上流側ダクト45の内底面45c及び下流側ダクト46の内底面46cは、下側収容部材30の底部31の内面32に向かって下方(鉛直方向下方)に傾斜する傾斜面となっている。これにより、液体噴霧装置10のノズル15から噴霧された後に上流側ダクト45の内底面45cまたは下流側ダクト46の内底面46c上に落ちた液体(液滴)は、下側収容部材30の底部31の内面32に向かって流れてゆくようになる。その後、その液体は、下側収容部材30の底部31の内面32上に落ちることで、傾斜面32b、32c、32d、32eの傾斜に沿って、液体排出口33に向かって流れてゆき、液体排出口33から冷却ガス流路F(収容ケース40)の外部に排出することができる。
ところで、下側収容部材30の底部31の内面32(収容ケース40の底部の内面)上に落ちた液体には、電池100の内部から排出された有害な粉塵が含まれるので、自動車の搭乗者の安全を確保するため、この液体が自動車の室内に進入しないようにする必要がある。
これに対し、本実施形態の電池システム80では、液体排出口33が、自動車の室外に位置する連結管38を介して、自動車の室外に配置された回収容器(図示なし)に連結されている。すなわち、液体排出口33から排出される液体の流路を全て自動車の室外に配置している。これにより、液体排出口33から排出される液体が自動車の室内に進入しないようにできるので、自動車の搭乗者の安全を確保することができる。
(変形形態1)
次に、本発明の変形形態1にかかる電池システム280について、図面を参照しつつ説明する。本変形形態1の電池システム280は、実施形態の電池システム80と比較して、リチウムイオン二次電池の異常を検出する方法(手段)が異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
実施形態では、各々の電池100の表面に、温度センサとしてのPTC素子73を配置した。そして、これらのPTC素子73を、図示しない接続線によって電気的に直列に接続して、抵抗測定装置71に接続した。これにより、抵抗測定装置71において、PTC素子73の抵抗値の異常な上昇が検出された場合には、コントロールユニット50において、電池システム80に含まれる電池100のいずれかにおいて異常昇温が発生したと判断し、液体噴霧装置10により冷却ガス流路F(収容ケース40)内に液体を噴霧するようにした。
これに対し、本変形形態1では、各々の電池100の表面にPTC素子73を配置することなく、各々の電池100の安全弁113jの表面に、電線273を接合している(図7、図8参照)。この電線273は、抵抗測定装置271に電気的に接続されている。なお、電線273としては、安全弁113jが開弁したとき(溝部113jvが破断したとき)に、当該安全弁に接合されている箇所において、溝部113jvと共に破断(断線)するものを用いている。
従って、電池システム280に含まれる電池100のいずれかにおいて、安全弁113jが開弁したときは、当該安全弁113に接合されている箇所において電線273が破断(断線)するので、抵抗測定装置71において電気抵抗値の異常な上昇が検出される。すなわち、抵抗測定装置271において、電気抵抗値の異常な上昇が検出されることで、電池100の異常(安全弁113jが開弁した異常)が検出される。このとき、異常検出信号が、抵抗測定装置271からコントロールユニット250に送信される。抵抗測定装置271からの異常検出信号を受信したコントロールユニット250は、電池システム280に含まれる電池100のいずれかにおいて安全弁113jが開弁したと判断する。
コントロールユニット250は、電池システム280に含まれる電池100のいずれかにおいて安全弁113jが開弁したと判断すると、噴射装置13を作動させる。これにより、液体容器10内の液体がノズル15から噴霧され、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に霧状の液体(ミスト)が発生する。この液体(ミスト)により、安全弁113jの開弁によって電池100の内部から電池外部(冷却ガス流路F内)に排出された粉塵(直径5μm以下の微粒子を含む粉塵)を、冷却ガス流路F内で適切に捕捉することができる。その結果、電池100内から排出された粉塵が、自動車室内や自動車の外部に飛散しないようにできる。
なお、本変形形態1では、抵抗測定装置271が、特許請求の範囲に記載の「異常検出手段」に相当する。また、コントロールユニット250が、特許請求の範囲に記載の「制御手段」に相当する。
(変形形態2)
次に、本発明の変形形態2にかかる電池システム380について、図面を参照しつつ説明する。本変形形態2の電池システム380は、実施形態の電池システム80と比較して、冷却ガス流路F内に冷却ガス(空気G)を流すための送風機(ブロワー)及びその設置場所、並びに、液体噴霧装置のノズルの数が異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
実施形態では、送風機(ブロワー)63を、収容ケース40の上流側ダクト45に設けた。これに対し、本変形形態2では、図9に示すように、送風機(ブロワー)65を、収容ケース40の下流側ダクト46に設けている。これにより、流速制御装置61の制御によって、送風機65の内部に設けられているファンを駆動(回転)させることにより、自動車室内の空気Gを吸引するようにして、上流側ダクト45を通じて、収容ケース40の内部に供給する。収容ケース40の内部に供給された空気Gは、図9に矢印で示すように、電池100の上方から下方に向かって、電池100の間を通過してゆき、その後、下流側ダクト46及び送風機65を通じて、収容ケース40の外部に排出される。この間において、冷却ガスである空気Gが電池100に接触することで、電池100を冷却することができる。
また、実施形態の液体噴霧装置10では、ノズル15を、収容ケース40の上流側ダクト45及び下流側ダクト46に設けた。これに対し、本変形形態2の液体噴霧装置310では、ノズル15を、下流側ダクト46にのみ設けている。このような液体噴霧装置310でも、ノズル15から液体(水)を噴霧することで、収容ケース40内(冷却ガス流路F内)に霧状の液体(ミスト)を発生させることができる。
本変形形態2の場合、主に、下流側ダクト46内に霧状の液体(ミスト)を漂わせることができ、且つ、下流側ダクト46の内壁面46b及び送風機65の内側(ファンなど)を、噴霧した液体(ミスト)により濡らすことができる。その結果、液体(ミスト)で濡れた下流側ダクト46の内壁面46b及び送風機65の内部(ファンなど)に、電池100の安全弁113jを通じて排出された粉塵を、効果的に付着(吸着)させて捕捉することができる。これにより、電池100内から排出された粉塵が、自動車室内や自動車の外部に飛散しないようにできる。
(変形形態3)
次に、本発明の変形形態3にかかる電池システム480について、図面を参照しつつ説明する。本変形形態3の電池システム480は、実施形態の電池システム80と比較して、収容ケースの形態、冷却ガス流路F内に冷却ガス(空気G)を流すための送風機(ブロワー)及びその設置場所、並びに、液体噴霧装置のノズルの数が異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
本変形形態3の収容ケース440は、実施形態の収容ケース40と異なり、下流側ダクト46を、電池100の列置方向(図10において左右方向)について、上流側ダクト45と同じ側(図10において左側)の下方に配置している。さらに、送風機(ブロワー)65を、収容ケース440の下流側ダクト46に設けている。
これにより、流速制御装置61の制御によって、送風機65の内部に設けられているファンを駆動(回転)させることにより、自動車室内の空気Gを吸引するようにして、上流側ダクト45を通じて、収容ケース440の内部に空気Gを供給する。収容ケース440の内部に供給された空気Gは、図10に矢印で示すように、電池100の上方から下方に向かって、電池100の間を通過してゆき、その後、下流側ダクト46及び送風機65を通じて、収容ケース440の外部に排出される。この間において、冷却ガスである空気Gが電池100に接触することで、電池100を冷却することができる。
また、本変形形態3の液体噴霧装置410では、実施形態の液体噴霧装置10と異なり、ノズル15を、下流側ダクト46にのみ設けている。このような液体噴霧装置310でも、収容ケース440内(冷却ガス流路F内)に、ノズル15から液体(水)を噴霧して霧状の液体(ミスト)を発生させることができる。本変形形態3でも、主に、下流側ダクト46内に霧状の液体(ミスト)を漂わせることができ、且つ、下流側ダクト46の内壁面46b及び送風機65の内側(ファンなど)を、噴霧した液体(ミスト)により濡らすことができる。その結果、液体(ミスト)で濡れた下流側ダクト46の内壁面46b及び送風機65の内部(ファンなど)に、電池100の安全弁113jを通じて排出された粉塵を、効果的に付着(吸着)させて捕捉することができる。これにより、電池100内から排出された粉塵が、自動車室内や自動車の外部に飛散しないようにできる。
さらに、本変形形態3の収容ケース440は、実施形態の収容ケース40と異なる下側収容部材430を有している。具体的には、本変形形態の下側収容部材430は、実施形態の下側収容部材30と比較して、液体排出口33の位置が異なっている。より具体的には、実施形態の下側収容部材30及び変形形態の下側収容部材430では、いずれも、液体排出口33を下流側ダクト46に近い位置に配置しているが、実施形態と変形形態では、前述のように下流側ダクト46の位置が異なっている(図10において左右反対)ため、液体排出口33の位置が異なっている。
このように、下流側ダクト46に近い位置(ノズル15に近い位置)に液体排出口33を配置することで、液体噴霧装置410のノズル15から噴霧された後に下側収容部材430の底部431の内面432上に落ちた液体(液滴)を、スムーズに液体排出口33に集めることができ、液体排出口33を通じて、冷却ガス流路F(収容ケース40)の外部に排出することができる。
(変形形態4)
次に、本発明の変形形態4にかかる電池システム580について、図面を参照しつつ説明する。本変形形態4の電池システム580は、変形形態3の電池システム480と比較して、収容ケースの上流側ダクト及び下流側ダクトの位置が異なり(反対にしている)、その他については同様である。従って、ここでは、変形形態3と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
本変形形態4の収容ケース540は、変形形態3の収容ケース440と異なり、上流側ダクト545を収容ケース540の下方側に配置し、下流側ダクト546を収容ケース540の上方側に配置している(図11参照)。そして、送風機(ブロワー)65を、下流側ダクト546に設けている。
これにより、流速制御装置61の制御によって、送風機65の内部に設けられているファンを駆動(回転)させることにより、自動車室内の空気Gを吸引するようにして、上流側ダクト545を通じて、収容ケース40の内部に空気Gを供給する。収容ケース40の内部に供給された空気Gは、図11に矢印で示すように、電池100の下方から上方に向かって、電池100の間を通過してゆき、その後、下流側ダクト546及び送風機65を通じて、収容ケース40の外部に排出される。この間において、冷却ガスである空気Gが電池100に接触することで、電池100を冷却することができる。
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態の電池システム80では、抵抗測定装置71において電池100の異常が検出されたとき、流速制御装置61によって、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れを実質的に停止させる制御を行うようにした。しかしながら、冷却ガス流路F内における冷却ガス(空気G)の流れを停止させることなく、冷却ガスの流速を低減させる制御を行うようにしても良い。具体的には、例えば、送風機63のファンの回転速度を低減させる制御を行うよにしても良い。
このように制御することにより、冷却ガス流路F内における冷却ガスの流速が低減するので、電池100の安全弁113jが開弁して、電池100の内部から直径5μm以下の微粒子を含む粉塵が排出された場合において、この粉塵が冷却ガス流路を下流側に流れてゆき難くなる(冷却ガス流路外へ排出され難くなる)。これにより、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路内に噴霧した液体(ミスト)により、粉塵を冷却ガス流路F内で捕捉しやすくなる。
また、実施形態の電池システム80では、「冷却ガス流路内における冷却ガスの流れを実質的に停止させる」制御として、送風機63の内部に設けられているファンの回転を完全に停止させる制御を行うようにした。しかしながら、送風機63のファンの回転を極低速にする制御するようにしても良い。また、送風機63のファンについて、正回転と逆回転とを低速で交互に行うように制御しても良い。このように制御しても、冷却ガス流路内における冷却ガスの流れを実質的に停止させることができる。
また、冷却ガス流路内における冷却ガスの流れを停止しなくても(送風機63のファンの回転を止めなくても)良い。この場合でも、冷却ガス流路内の空中を漂うミスト(霧状の液体)や、ミストで濡れたダクトの内壁面・送風機65の内側等で、粉塵を捕捉することができるので、自動車室内や自動車の外部に粉塵が飛散するのを防ぐことができる。
特に、電池100よりも冷却ガス流路の下流側に、液体噴霧装置のノズルを配置した場合には、冷却ガスの流れを停止しなくても、電池100から排出された粉塵を、効果的に捕捉することができる。電池100から排出された粉塵が、冷却ガスの流れに伴って、ノズルが位置する下流側に運ばれてくるからである。
また、収容ケース40内に配置されるリチウムイオン二次電池100の数は、複数に限定されず、1つであっても良い。
また、実施形態の電池システム80では、電池100の異常昇温が検出されたときに、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に液体(水)を噴霧するようにした。また、変形形態1の電池システム280では、電池100の安全弁113jが開弁したと判断したときに、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に液体(水)を噴霧するようにした。
しかしながら、このような場合に限らず、例えば、電池100の温度が所定温度(例えば、冷却ガスの温度)を上回ったときには、液体噴霧装置10によって冷却ガス流路F内に液体(水)を噴霧するようにしても良い。これにより、冷却ガスに加えて、液体(水)によっても、電池100を冷却することができる。すなわち、液体噴霧装置10によって噴霧した液体を、粉塵の補足のためだけに用いるのではなく、電池100の冷却液としても用いるようにしても良い。